JP2020128474A - 潜熱蓄熱材組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ミョウバンを主成分とする潜熱蓄熱材に対し、過冷却現象の発現を、より確実に抑制して、蓄えていた潜熱を放熱することができる潜熱蓄熱材組成物を提供する。【解決手段】本開示の一態様として、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材10を主成分に、該潜熱蓄熱材10の物性を調整する添加剤20を配合してなる潜熱蓄熱材組成物1において、潜熱蓄熱材10は、第1のミョウバンであり、添加剤20は、融液状態にある第1のミョウバンに対し、結晶化の誘起を促す過冷却防止剤21であり、過冷却防止剤21は、第1のミョウバンより高融点の第2のミョウバンである。【選択図】図1

Description

本開示は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材に、この潜熱蓄熱材の過冷却現象を抑える添加剤を配合した潜熱蓄熱材組成物に関する。
潜熱蓄熱材(PCM:Phase Change Material)は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して蓄熱または放熱を行う物性を有しており、本来廃棄される排熱を蓄熱し、蓄えた熱を必要に応じて取り出すことで、エネルギが無駄なく有効に活用できる。潜熱蓄熱材となる物質は、数多く存在するが、その中でも、ミョウバン系の潜熱蓄熱材は、蓄熱性能に優れていることから、広い分野での応用が期待されている。
他方、潜熱蓄熱材には、融液状態から凝固点以下に冷却しても結晶化しない過冷却現象が生じてしまうことがある。過冷却現象が発現すると、一度融解した潜熱蓄熱材は、融液状態のまま凝固せず、潜熱を放熱できなくなり、融液に衝撃を与える等の過冷却防止機構を設けない限り、潜熱蓄熱材に蓄えた潜熱の時間差利用が不可能になってしまう。このような過冷却現象を防ぐため、一般的には、特許文献1に例示されているように、過冷却防止剤が、潜熱蓄熱材と共に配合される。過冷却防止剤は、融液状態にある潜熱蓄熱材の結晶化の誘起を促す添加剤である。
特許文献1は、主成分とするミョウバン系の潜熱蓄熱材であるアンモニウムミョウバン(融点94〜95℃)に、その過冷却防止剤として、弗化カルシウム(CaF)結晶と硫黄(S)結晶との混合物を加えた蓄熱材である。特許文献1は、弗化カルシウム結晶と硫黄結晶との混合物を、かごの中に収容して、アンモニウムミョウバン溶液の中に吊り下げる手段や、または弗化カルシウム結晶と硫黄結晶を、直にアンモニウムミョウバンの溶液中に投入する手段を採っている。特許文献1では、何れの手段でも、アンモニウムミョウバンの溶液の過冷却現象を解除するにあたり、アンモニウムミョウバンの溶液中で、弗化カルシウム結晶と硫黄結晶とを、互いに接触または近接させておくことが、核生成を行う上で必要になっている。
特公昭57−349号公報
しかしながら、特許文献1では、過冷却防止剤は、弗化カルシウム結晶と硫黄結晶との混合物であるため、各々の結晶を混ぜ合わせる調整が適切な状態で行われていないと、過冷却現象を解除するのに必要な核が、アンモニウムミョウバンの融液中で生成し難くなってしまう虞がある。加えて、過冷却防止剤は、弗化カルシウム結晶と硫黄結晶との混合物であり、互いに接触または近接させておくことが、核生成を行う上で必要になっているため、特許文献1の蓄熱材を、例えば、自動車への車載、給食や弁当等の保温輸送等の用途で使用する場合、移動時に、弗化カルシウム結晶と硫黄結晶とが、大きく互いに離間してしまい、過冷却防止剤として機能しなくなる虞もある。それ故に、弗化カルシウム結晶と硫黄結晶との混合物を過冷却防止剤とした特許文献1の蓄熱材は、使い勝手の良くない技術である。
本開示は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ミョウバンを主成分とする潜熱蓄熱材に対し、過冷却現象の発現を、より確実に抑制して、蓄えていた潜熱を放熱することができる潜熱蓄熱材組成物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材を主成分に、該潜熱蓄熱材の物性を調整する添加剤を配合してなる潜熱蓄熱材組成物において、前記潜熱蓄熱材は、第1のミョウバンであり、前記添加剤は、融液状態にある前記第1のミョウバンに対し、結晶化の誘起を促す過冷却防止剤であり、前記過冷却防止剤は、前記第1のミョウバンより高融点の第2のミョウバンであること、を特徴とする。
この態様によれば、ミョウバンの過冷却現象を抑制するのに必要な核として、ミョウバン(潜熱蓄熱材)の結晶核が生成されるようになる。そのため、潜熱蓄熱材の結晶化が、過冷却防止剤に基づくミョウバンの結晶核の生成によって、誘起され、潜熱蓄熱材組成物は、融液状態からの冷却過程において、潜熱蓄熱材の融点と凝固点の乖離を抑制しつつ、蓄えていた潜熱を放熱することができる。
特に、潜熱蓄熱材として使用される第1のミョウバンと、過冷却防止剤として使用される第2のミョウバンとは、ともにミョウバンである。そのため、第2のミョウバンから構成される過冷却防止剤は、第1のミョウバンから構成される潜熱蓄熱材と格子定数や結合性が一致しているので、第1のミョウバンから構成される潜熱蓄熱材に対する過冷却防止剤の条件を満たしている。
したがって、ミョウバンを主成分とする潜熱蓄熱材に対し、過冷却現象の発現をより確実に抑制して、蓄熱していた潜熱を放熱することができる。
上記の態様においては、潜熱蓄熱材組成物全体の重量に占める前記第2のミョウバンの配合比率は、10wt%以下であること、が好ましい。
この態様によれば、潜熱蓄熱材組成物全体の重量に占める第2のミョウバンの配合比率は、第1のミョウバンの高い蓄熱量を損なわないために、10wt%以下となっている。これにより、潜熱蓄熱材組成物を、より確実に、融液状態から冷却する過程において、潜熱蓄熱材の融点と凝固点の乖離を抑制するので、ミョウバンを主成分とする潜熱蓄熱材における過冷却現象の発現を抑制できる。
上記の態様においては、前記第1のミョウバンと前記第2のミョウバンは、それぞれ、1価の陽イオンの硫酸塩と3価の金属イオンの硫酸塩の複塩から成る無機塩結晶であり、前記1価の陽イオンは、アンモニウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオンのうちのいずれかであり、前記3価の金属イオンは、鉄イオン(III)、アルミニウムイオン、クロムイオン(III)のうちのいずれかであること、が好ましい。
この態様によれば、市場で幅広く流通して入手し易く安価であるミョウバンが使用されるので、コストが低減される。
上記の態様においては、前記第1のミョウバンは、鉄ミョウバン十二水和物(FeNH(SO・12HO)であり、前記第2のミョウバンは、アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)、カリウムミョウバン十二水和物(AlK(SO・12HO)、ナトリウムミョウバン十二水和物(AlNa(SO・12HO)、のうちのいずれかであること、が好ましい。
この態様によれば、コストを低減しながら、より確実に、ミョウバンを主成分とする潜熱蓄熱材における過冷却現象の発現を抑制できる。
本開示の潜熱蓄熱材組成物によれば、ミョウバンを主成分とする潜熱蓄熱材に対し、過冷却現象の発現を、より確実に抑制して、蓄えていた潜熱を放熱することができる。
本実施形態の潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。 サンプルNo.1の潜熱蓄熱材の放熱試験結果を示すグラフである。 サンプルNo.2〜4の潜熱蓄熱材組成物の放熱試験結果を示すグラフである。 サンプルNo.1の潜熱蓄熱材とサンプルNo.2〜4の潜熱蓄熱材組成物の放熱開始温度の一覧を示す表である。
(実施形態)
以下、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物について詳細に説明する。潜熱蓄熱材組成物は、熱供給源から提供された熱を潜熱蓄熱材に一時的に蓄えた後、熱需要先で、潜熱蓄熱材に蓄えた潜熱の熱エネルギを、その時間差をもって活用する目的で用いられる。このような潜熱蓄熱材組成物は、所定の収容手段の空間内に収容された充填容器(図示省略)に、漏れのない態様で、液密かつ気密に充填され、充填された充填容器の内外で、潜熱の出入りを利用して、蓄えた熱を必要に応じて取り出すことができ、蓄熱とその放熱のサイクルを複数回繰り返して使用される。
潜熱蓄熱材組成物は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材を主成分に、この潜熱蓄熱材の物性を調整する添加剤を配合して構成されている。本実施形態では、潜熱蓄熱材は、第1のミョウバンである。添加剤は、融液状態にある第1のミョウバンに対し、結晶化の誘起を促す過冷却防止剤である。また、本実施形態では、過冷却防止剤は、潜熱蓄熱材として使用する第1のミョウバンよりも融点の高い第2のミョウバンである。そして、潜熱蓄熱材組成物全体の重量に占める第2のミョウバンの配合比率は、10wt%以下である。
なお、ミョウバンは、1価の陽イオンの硫酸塩(M (SO))と、3価の金属イオンの硫酸塩(MIII (SO)との複塩の総称であり、MIII(SO・nHO(nは0以上)の化学式で表される無機塩結晶である。
次に、潜熱蓄熱材組成物の構成について、実施例を挙げて、具体的に説明する。
(実施例)
図1に示すように、本実施例に係る潜熱蓄熱材組成物1は、潜熱蓄熱材10と添加剤20を配合した蓄熱材である。
潜熱蓄熱材10は、本実施例では、第1のミョウバンとして、鉄ミョウバン十二水和物(硫酸アンモニウム鉄(III)・12水和物、FeNH(SO・12HO)の単種である。そして、この鉄ミョウバン十二水和物の融点は、40℃である。なお、以下の説明において、鉄ミョウバン十二水和物は、単に「鉄ミョウバン」と称する場合もある。
添加剤20は、過冷却防止剤21であり、本実施例では、第1のミョウバンよりも融点の高い第2のミョウバンである。第2のミョウバンとしては、例えば、アンモニウムミョウバン十二水和物(硫酸アンモニウムアルミニウム・12水和物、AlNH4(SO・12HO)、カリウムミョウバン十二水和物(硫酸カリウムアルミニウム・12水和物、AlK(SO・12HO)、ナトリウムミョウバン十二水和物(硫酸ナトリウムアルミニウム・12水和物、AlNa(SO・12HO)のうちいずれかである。
なお、以下の説明において、アンモニウムミョウバン十二水和物は単に「アンモニウムミョウバン」と称する場合もあり、カリウムミョウバン十二水和物は単に「カリウムミョウバン」と称する場合もあり、ナトリウムミョウバン十二水和物は単に「ナトリウムミョウバン」と称する場合もある。
また、アンモニウムミョウバン十二水和物の融点は93.5℃であり、カリウムミョウバン十二水和物の融点は92.5℃であり、ナトリウムミョウバン十二水和物の融点は60℃である。
<検証実験の実施>
次に、潜熱蓄熱材10における過冷却現象の抑制にあたり、過冷却防止剤21の効果を検証する目的で、実験を行った。実験は、前述した実施例に係る潜熱蓄熱材組成物1を50g、アルミラミネート袋に真空状態で封入したサンプルで行われた。
<実験方法>
実験では、恒温槽内で、はじめにサンプル内の潜熱蓄熱材組成物1または潜熱蓄熱材10(以下、「潜熱蓄熱材組成物1等」と言う。)を、恒温槽内のヒータで60℃に加熱する。そして、潜熱蓄熱材組成物1等が完全に融解した融液状態になったことを事前に確認した後、ヒータの作動をオフにした。次に、恒温槽の扉を閉めたまま、潜熱蓄熱材組成物1等の状態温度を測定しながら、恒温槽内の温度を60℃から10℃/hの速度で0℃まで降下させて、融液状態にある潜熱蓄熱材組成物1等を、完全な固体状態になるまで冷却した。全実験とも、ヒータの作動をオフに切り替えると同時に、潜熱蓄熱材組成物1等の状態温度の測定を開始し、潜熱蓄熱材組成物1等に温度変化がほとんどなくなるまで、そのまま継続的に温度測定を行った。併せて、恒温槽内の雰囲気温度の測定も行った。
各実験の条件は、以下の通りである。
<実験1の条件>
・サンプル1;潜熱蓄熱材10
・潜熱蓄熱材10;鉄ミョウバン十二水和物
・添加剤20;配合せず
・潜熱蓄熱材10と過冷却防止剤21との配合割合(wt%);100:0
<実験2の条件>
・サンプル2:潜熱蓄熱材組成物1
・潜熱蓄熱材10;鉄ミョウバン十二水和物
・添加剤20;過冷却防止剤21
・過冷却防止剤21;アンモニウムミョウバン十二水和物
・潜熱蓄熱材10と過冷却防止剤21との配合割合(wt%);95:5
<実験3の条件>
・サンプル3:潜熱蓄熱材組成物1
・潜熱蓄熱材10;鉄ミョウバン十二水和物
・添加剤20;過冷却防止剤21
・過冷却防止剤21;カリウムミョウバン十二水和物
・潜熱蓄熱材10と過冷却防止剤21との配合割合(wt%);95:5
<実験4の条件>
・サンプル4:潜熱蓄熱材組成物1
・潜熱蓄熱材10;鉄ミョウバン十二水和物
・添加剤20;過冷却防止剤21
・過冷却防止剤21;ナトリウムミョウバン十二水和物
・潜熱蓄熱材10と過冷却防止剤21との配合割合(wt%);95:5
<実験結果>
実験1の結果では、図2に示すように、温度測定開始後、恒温槽内の雰囲気温度は、時間の経過と共に下がり続けた。他方で、実施例に係るサンプル1の潜熱蓄熱材10(鉄ミョウバン)の温度は、恒温槽内の雰囲気温度が11℃付近(=温度T0a)となった時刻t0aになるまで、時間の経過と共に下がり続けた。そして、時刻t0a以降に、サンプル1の潜熱蓄熱材10の温度は、緩やかに変化するようになって、ゆっくりとした降温速度で下がりはじめた。そして、時刻t0bに到達すると、サンプル1の潜熱蓄熱材10の温度は、恒温槽内の雰囲気温度が0℃付近(=温度T0b)で、ほぼ一致するようになった。このように、時刻t0aから時刻t0bまでの間、サンプル1の潜熱蓄熱材10において、潜熱蓄熱材10に蓄えていた潜熱放熱の挙動が確認された。
このようにして、サンプル1の潜熱蓄熱材10(鉄ミョウバン)の放熱開始温度は、図4に示すように、11℃であった。
これに対し、実験2〜4の結果では、図3に示すように、温度測定開始後、恒温槽内の雰囲気温度は、時間の経過と共に下がり続けた。他方で、実施例に係るサンプル2〜4の潜熱蓄熱材組成物1の温度は、恒温槽内の雰囲気温度が22〜24℃付近(=T1a)となった時刻t1aになるまで、時間の経過と共に下がり続けた。そして、時刻t1a以降に、サンプル2〜4の潜熱蓄熱材組成物1の温度は、緩やかに変化するようになって、ゆっくりとした降温速度で下がりはじめた。そして、時刻t1bに到達すると、サンプル2〜4の潜熱蓄熱材組成物1の温度は、恒温槽内の雰囲気温度が0℃付近(=T1b)で、ほぼ一致するようになった。このように、時刻t1aから時刻t1bまでの間、サンプル2〜4の潜熱蓄熱材組成物1において、潜熱蓄熱材組成物1に蓄えていた潜熱放熱の挙動が確認された。
このようにして、サンプル2〜4の潜熱蓄熱材組成物1の放熱開始温度は、図4に示すように、22〜24℃であった。詳しくは、サンプル2の潜熱蓄熱材組成物1(鉄ミョウバン+アンモニウムミョウバン)の放熱開始温度は、22.1℃であった。また、サンプル3の潜熱蓄熱材組成物1(鉄ミョウバン+カリウムミョウバン)の放熱開始温度は、24℃であった。サンプル4の潜熱蓄熱材組成物1(鉄ミョウバン+ナトリウムミョウバン)の放熱開始温度は、22.5℃であった。
<考察>
潜熱蓄熱材は、その融点以上の加熱により、固体状態から融液状態への相変化時に、潜熱を蓄えて蓄熱を行い、融点以下の温度で冷却する過程において、融液状態から固体状態への相変化時に、蓄えている潜熱を外部に放熱する。実験1では、サンプル1の潜熱蓄熱材10は、鉄ミョウバンの単種だけが配合されていた。そのため、サンプル1において、潜熱蓄熱材10の融液の温度が、融点40℃より低い温度まで冷却されていると、理論上、元々40℃以上の融液状態にあった鉄ミョウバンは本来、固体状態への相変化により、蓄えている潜熱を外部に放熱し、この放熱に伴って、潜熱蓄熱材10の状態温度は、一時的に上昇するはずである。
しかしながら、実験結果より、温度が11℃になるまで潜熱蓄熱材10からの潜熱放熱の挙動が存在しないことから、潜熱蓄熱材10で、融点40℃より低い温度になっても、固体状態への相変化を起こさない過冷却現象が発現していることが判った。このことから、実験1のサンプル1では、このような過冷却現象を抑制するのに必要な核が鉄ミョウバン(潜熱蓄熱材10)の融液に存在せず、また、過冷却防止剤も配合されていないことから、潜熱蓄熱材10に過冷却現象が発現したものと考えられる。
これに対し、実施2〜4に係るサンプル2〜4では、何れも、潜熱蓄熱材組成物1を冷却し続ける中で、潜熱蓄熱材組成物1の状態温度が、その融点を下回りながらも、22℃〜24℃になった時点で、緩やかに変化するようになって、ゆっくりとした降温速度で下がり始めた。そして、潜熱蓄熱材組成物1の状態温度がそれまでほぼ同じような温度傾向にあった雰囲気温度に対して温度差を持つようになり、過冷却現象が抑制されていることが判った。このことから、実施2〜4に係るサンプル2〜4では、潜熱蓄熱材組成物1において、過冷却現象の発現が抑制された上で、融液状態から固体状態への相変化に伴う潜熱放熱により、潜熱蓄熱材組成物1自体が加熱されたものと考えられる。
換言すれば、潜熱蓄熱材組成物1では、何れも共通して、潜熱蓄熱材10以外に、第2のミョウバンからなる過冷却防止剤21が配合されており、この過冷却防止剤21により、過冷却現象を抑制するのに必要な核が、鉄ミョウバンの潜熱蓄熱材10の融液に存在している。そのため、鉄ミョウバンの潜熱蓄熱材10で、過冷却現象の発現が抑制されているものと考えられる。
さらに詳しくは、融解したミョウバンが凝固する過程では、まず融液中にミョウバンの結晶の核が形成される。続いて、結晶の核を起点としてミョウバンの結晶が成長する。そして、最終的に、結晶成長が融液全体に波及して凝固が完了する。これに対し、過冷却現象は、融液を冷却しても結晶の核が形成されないために発生する。
ここで、過冷却防止剤は結晶核の代わりとなり、結晶成長の起点となる役割を果たす。そして、この過冷却防止剤の条件として、ベース材料との格子定数や結合性が一致することであると一般的に言われている。また、ミョウバン(ミョウバン結晶の水和物)は、いずれの物質においても同種の立方晶の結晶構造をとり、格子定数はおよそ1.22nmである。そのため、各ミョウバンは、2種類の結晶の格子定数の一致度合を表す格子整合性が高い。また、各ミョウバンは、結晶構造が同じであるため、結合性も一致しており、過冷却防止剤として機能し易いということが想定される。
そこで、本実施形態では、潜熱蓄熱材10として使用する第1のミョウバンよりも融点の高い第2のミョウバンを過冷却防止剤21として使用することにより、過冷却防止剤21が潜熱蓄熱材10に対する過冷却防止剤として機能し易くなったものと考えられる。
(本実施形態の潜熱蓄熱材組成物の作用・効果)
次に、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1の作用・効果について説明する。本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材10を主成分に、該潜熱蓄熱材10の物性を調整する添加剤20を配合してなる潜熱蓄熱材組成物である。そして、潜熱蓄熱材10は、第1のミョウバンである。また、添加剤20は、融液状態にある第1のミョウバンに対し、結晶化の誘起を促す過冷却防止剤21である。そして、本実施形態では、過冷却防止剤21は、第1のミョウバンより高融点の第2のミョウバンである。
これにより、ミョウバンの過冷却現象を抑制するのに必要な核として、ミョウバン(潜熱蓄熱材10)の結晶核が生成されるようになる。そのため、潜熱蓄熱材10の結晶化が、過冷却防止剤21に基づくミョウバンの結晶核の生成によって、誘起され、潜熱蓄熱材組成物1は、融液状態からの冷却過程において、潜熱蓄熱材10の融点と凝固点の乖離を抑制しつつ、蓄えていた潜熱を放熱することができる。
特に、本実施形態では、潜熱蓄熱材10として使用される第1のミョウバンと、過冷却防止剤21として使用される第2のミョウバンとは、ともにミョウバンであるので、同種の立方晶の結晶構造をとり、格子定数がほぼ同じである。そのため、潜熱蓄熱材10として使用される第1のミョウバンと、過冷却防止剤21として使用される第2のミョウバンとは、格子整合性が高い。また、潜熱蓄熱材10として使用される第1のミョウバンと、過冷却防止剤21として使用される第2のミョウバンとは、結晶構造が同種であるため、結合性も一致している。そのため、第2のミョウバンは、第1のミョウバンから構成される潜熱蓄熱材10に対する過冷却防止剤21として機能し易い。
このように、第2のミョウバンから構成される過冷却防止剤21は、第1のミョウバンから構成される潜熱蓄熱材10と格子定数や結合性が一致しているので、第1のミョウバンから構成される潜熱蓄熱材10に対する過冷却防止剤の条件を満たしている。
そのため、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1によれば、ミョウバンを主成分とする潜熱蓄熱材10に対し、過冷却現象の発現をより確実に抑制して、蓄熱していた潜熱を放熱することができる、という優れた効果を奏する。
また、ミョウバンは、パラフィンの倍程度の蓄熱量を有しており、不燃性かつ安全性が高い効果を奏する。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1では、当該潜熱蓄熱材組成物1全体の重量に占める第2のミョウバンの配合比率は、10w%以下である。これにより、潜熱蓄熱材組成物1を、より確実に、融液状態から冷却する過程において、潜熱蓄熱材10の融点と凝固点の乖離を抑制するので、第1のミョウバンを主成分とする潜熱蓄熱材10における過冷却現象の発現を抑制できる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1では、第1のミョウバンは、鉄ミョウバン十二水和物である。また、第2のミョウバンは、アンモニウムミョウバン十二水和物、カリウムミョウバン十二水和物、ナトリウムミョウバン十二水和物のうちのいずれかである。このようにして、市場で幅広く流通して入手し易く安価であるミョウバンが使用されるので、コストを低減しながら、より確実に、潜熱蓄熱材10における過冷却現象の発現を抑制できる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1は、過冷却防止剤21が失活しない温度域で繰り返し使用することが可能であるので、例えば災害時の蓄熱マットや住宅建材に適用できる。
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
また、第1のミョウバンと第2のミョウバンは、それぞれ、1価の陽イオンの硫酸塩と3価の金属イオンの硫酸塩の複塩から成る無機塩結晶である。そして、1価の陽イオンは、アンモニウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオンのうちのいずれかであればよい。また、3価の金属イオンは、鉄イオン(III)、アルミニウムイオン、クロムイオン(III)のうちのいずれかであればよい。
例えば、第2のミョウバンは第1のミョウバンより高融点であるとする条件のもと、第1のミョウバンと第2のミョウバンは、それぞれ、以下に示すものの何れかであってもよい。
(1)鉄ミョウバン十二水和物
(2)アンモニウムミョウバン十二水和物
(3)カリウムミョウバン十二水和物
(4)ナトリウムミョウバン十二水和物
(5)クロムミョウバン十二水和物(硫酸カリウムクロミウム(III)・12水和物、CrK(SO・12HO、融点89℃)
(6)ルビジウムミョウバン十二水和物(硫酸アンモニウムルビジウム・12水和物、AlRb(SO・12HO、融点99℃)
1 潜熱蓄熱材組成物
10 潜熱蓄熱材
20 添加剤
21 過冷却防止剤
T0a 温度
T0b 温度
T1a 温度
T1b 温度
時刻 t0a
時刻 t0b
時刻 t1a
時刻 t1b

Claims (4)

  1. 相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱またはその放熱を行う潜熱蓄熱材を主成分に、該潜熱蓄熱材の物性を調整する添加剤を配合してなる潜熱蓄熱材組成物において、
    前記潜熱蓄熱材は、第1のミョウバンであり、
    前記添加剤は、融液状態にある前記第1のミョウバンに対し、結晶化の誘起を促す過冷却防止剤であり、
    前記過冷却防止剤は、前記第1のミョウバンより高融点の第2のミョウバンであること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  2. 請求項1の潜熱蓄熱材組成物において、
    当該潜熱蓄熱材組成物全体の重量に占める前記第2のミョウバンの配合比率は、10wt%以下であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  3. 請求項1または2の潜熱蓄熱材組成物において、
    前記第1のミョウバンと前記第2のミョウバンは、それぞれ、1価の陽イオンの硫酸塩と3価の金属イオンの硫酸塩の複塩から成る無機塩結晶であり、
    前記1価の陽イオンは、アンモニウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオンのうちのいずれかであり、
    前記3価の金属イオンは、鉄イオン(III)、アルミニウムイオン、クロムイオン(III)のうちのいずれかであること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  4. 請求項3の潜熱蓄熱材組成物において、
    前記第1のミョウバンは、鉄ミョウバン十二水和物(FeNH(SO・12HO)であり、
    前記第2のミョウバンは、アンモニウムミョウバン十二水和物(AlNH(SO・12HO)、カリウムミョウバン十二水和物(AlK(SO・12HO)、ナトリウムミョウバン十二水和物(AlNa(SO・12HO)、のうちのいずれかであること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
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