本発明の態様に係るビーム走査装置、ビーム走査方法、およびパターン描画装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
図1は、実施の形態の基板(被照射体である対象物)FSに露光処理を施す露光装置EXを含むデバイス製造システム10の概略構成図である。なお、以下の説明においては、特に断りのない限り、重力方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定し、図に示す矢印にしたがって、X方向、Y方向、およびZ方向を説明する。
デバイス製造システム10は、例えば、電子デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイ、フレキシブル配線、フレキシブル・センサ等を製造する製造ラインが構築された製造システムである。以下、電子デバイスとしてフレキシブル・ディスプレイを前提として説明する。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等がある。デバイス製造システム10は、可撓性のシート状の基板(シート基板)FSをロール状に巻いた図示しない供給ロールから基板FSが送出され、送出された基板FSに対して各種処理を連続的に施した後、各種処理後の基板FSを図示しない回収ロールで巻き取る、いわゆる、ロール・ツー・ロール(Roll To Roll)方式の構造を有する。基板FSは、基板FSの移動方向が長手方向(長尺)となり、幅方向が短手方向(短尺)となる帯状の形状を有する。各種処理後の基板FSは、複数の電子デバイスが長尺方向に沿って連なった状態となっており、多面取り用の基板となっている。前記供給ロールから送られた基板FSは、順次、プロセス装置PR1、露光装置EX、および、プロセス装置PR2等で各種処理が施され、前記回収ロールで巻き取られる。
なお、X方向は、水平面内において、プロセス装置PR1から露光装置EXを経てプロセス装置PR2に向かう方向(搬送方向)である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板FSの幅方向(短尺方向)である。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(上方向)であり、重力が働く方向と平行である。
基板FSは、例えば、樹脂フィルム、若しくは、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、基板FSの厚みや剛性(ヤング率)は、露光装置EXの搬送路を通る際に、基板FSに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。基板FSの母材として、厚みが25μm~200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルムは、好適なシート基板の典型である。
基板FSは、プロセス装置PR1、露光装置EX、および、プロセス装置PR2で施される各処理において熱を受ける場合があるため、熱膨張係数が顕著に大きくない材質の基板FSを選定することが好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって熱膨張係数を抑えることができる。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、または、酸化ケイ素等でもよい。また、基板FSは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
ところで、基板FSの可撓性(flexibility)とは、基板FSに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、その基板FSを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、基板FSの材質、大きさ、厚さ、基板FS上に成膜される層構造、温度、湿度等の環境等に応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、本実施の形態によるデバイス製造システム10内の搬送路に設けられる各種の搬送用ローラ、回転ドラム等の搬送方向転換用の部材に基板FSを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、基板FSを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲といえる。
プロセス装置PR1は、露光装置EXで露光処理される基板FSに対して前工程の処理を行う。プロセス装置PR1は、前工程の処理を行った基板FSを露光装置EXへ向けて送る。この前工程の処理により、露光装置EXへ送られる基板FSは、その表面に感光性機能層(感光層)が形成された基板(感光基板)FSとなっている。
この感光性機能層は、溶液として基板FS上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジスト(液状またはドライフィルム状)であるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板FS上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)や半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、薄膜トランジスタ(TFT)等を構成する電極、半導体、絶縁、或いは接続用の配線や電極となるパターン層を形成することができる。感光性機能層として、感光性還元剤を用いる場合は、基板FS上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板FSを直ちにパラジウムイオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にする場合、露光装置EXへ送られる基板FSは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものであってもよい。
本実施の形態においては、露光装置EXは、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるラスタースキャン方式の露光装置であり、プロセス装置PR1から供給された基板FSの被照射面(感光面)に対して、ディスプレイ用の電子デバイス、回路または配線等のための所定のパターンに応じた光パターンを照射する。後で詳細に説明するが、露光装置EXは、基板FSを+X方向(副走査の方向)に搬送しながら、露光用のビームLBのスポット光SPを、基板FSの被照射面上で所定の走査方向(Y方向)に1次元に走査(主走査)しつつ、スポット光SPの強度をパターンデータ(描画データ)に応じて高速に変調(オン/オフ)する。これにより、基板FSの被照射面に電子デバイス、回路または配線等の所定のパターンに応じた光パターンが描画露光される。つまり、基板FSの副走査と、スポット光SPの主走査とで、スポット光SPが基板FSの被照射面上で相対的に2次元走査されて、基板FSに所定のパターンが描画露光される。なお、電子デバイスは、複数のパターン層(パターンが形成された層)が重ね合わされることで構成されるので、露光装置EXによって各層に対応したパターンが露光される。
プロセス装置PR2は、露光装置EXで露光処理された基板FSに対しての後工程の処理(例えばメッキ処理や現像・エッチング処理等)を行う。この後工程の処理により、基板FS上に電子デバイスのパターン層が形成される。なお、電子デバイスは、複数のパターン層が重ね合わされることで構成されるので、デバイス製造システム10の各処理によって第1層にパターンが形成された後、再度、デバイス製造システム10の各処理を経ることで、第2層にパターンが形成される。
次に、露光装置EXについて詳しく説明する。露光装置EXは、温調チャンバーECV内に格納されている。この温調チャンバーECVは、内部を所定の温度に保つことで、内部において搬送される基板FSの温度による形状変化を抑制する。温調チャンバーECVは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1、SU2を介して製造工場の設置面Eに配置される。防振ユニットSU1、SU2は、設置面Eからの振動を低減する。この設置面Eは、工場の床面自体であってもよいし、水平面を出すために床面上に設置される設置土台(ペデスタル)上の面であってもよい。露光装置EXは、基板搬送機構12と、光源装置(パルス光源装置)14と、露光ヘッド16と、制御装置18と、複数のアライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)とを少なくとも備えている。
基板搬送機構12は、プロセス装置PR1から搬送される基板FSを、露光装置EX内で所定の速度で搬送した後、プロセス装置PR2に所定の速度で送り出す。この基板搬送機構12によって、露光装置EX内で搬送される基板FSの搬送路が規定される。基板搬送機構12は、基板FSの搬送方向の上流側(-X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラR1、テンション調整ローラRT1、回転ドラム(円筒ドラム)DR、テンション調整ローラRT2、駆動ローラR2、および、駆動ローラR3を有している。
エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置PR1から搬送される基板FSの幅方向(Y方向であって基板FSの短尺方向)における位置を調整する。つまり、エッジポジションコントローラEPCは、所定のテンションが掛けられた状態で搬送されている基板FSの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm~数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、基板FSを幅方向に移動させて、基板FSの幅方向における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPCは、基板FSが掛け渡されるローラと、基板FSの幅方向の端部(エッジ)の位置を検出する図示しないエッジセンサ(端部検出部)を有し、エッジセンサが検出した検出信号に基づいて、エッジポジションコントローラEPCの前記ローラをY方向に移動させて、基板FSの幅方向における位置を調整する。駆動ローラR1は、エッジポジションコントローラEPCから搬送される基板FSの表裏両面を保持しながら回転し、基板FSを回転ドラムDRへ向けて搬送する。なお、エッジポジションコントローラEPCは、回転ドラムDRに巻き付く基板FSの長尺方向が、回転ドラムDRの中心軸AXoに対して常に直交するように、基板FSの幅方向における位置とともに、基板FSの進行方向における傾き誤差を補正するように、エッジポジションコントローラEPCのローラの回転軸とY軸との平行度を適宜調整してもよい。
回転ドラムDRは、Y方向に延びるとともに重力が働くZ方向と交差した方向に延びた中心軸AXoと、中心軸AXoから一定半径の円筒状の外周面とを有し、外周面(円周面)に倣って基板FSの一部を長尺方向に支持しつつ、中心軸AXoを中心に回転して基板FSを+X方向に搬送する。回転ドラムDRは、露光ヘッド16からのビームLB(スポット光SP)が投射される基板FS上の露光領域(部分)をその円周面で支持する。回転ドラムDRのY方向の両側には、中心軸AXoの回りを回転するように環状のベアリングで支持されたシャフトSftを有する。このシャフトSftは、制御装置18によって制御される図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられることで中心軸AXo回りに回転する。なお、便宜的に、中心軸AXoを含み、YZ面と平行な面を中心面Pocと呼ぶ。
駆動ローラR2、R3は、基板FSの搬送方向(+X方向)に沿って所定の間隔をあけて配置されており、露光後の基板FSに所定の弛み(あそび)を与えている。駆動ローラR2、R3は、駆動ローラR1と同様に、基板FSの表裏両面を保持しながら回転し、基板FSをプロセス装置PR2へ向けて搬送する。駆動ローラR2、R3は、回転ドラムDRに対して搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、この駆動ローラR2は、駆動ローラR3に対して、搬送方向の上流側(-X方向側)に設けられている。テンション調整ローラRT1、RT2は、-Z方向に付勢されており、回転ドラムDRに巻き付けられて支持されている基板FSに長尺方向に所定のテンションを与えている。これにより、回転ドラムDRにかかる基板FSに付与される長尺方向のテンションを所定の範囲内に安定化させている。なお、制御装置18は、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機等)を制御することで、駆動ローラR1~R3を回転させる。
光源装置14は、光源(パルス光源)を有し、パルス状のビーム(パルス光、レーザ)LBを射出するものである。このビームLBは、370nm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光であり、ビームLBの発光周波数をFeとする。光源装置14が射出したビームLBは、露光ヘッド16に入射する。光源装置14は、制御装置18の制御にしたがって、発光周波数FeでビームLBを発光して射出する。なお、光源装置14として、赤外波長域のパルス光を発生する半導体レーザ素子、ファイバー増幅器、増幅された赤外波長域のパルス光を紫外波長域のパルス光に変換する波長変換素子(高調波発生素子)等で構成されるファイバーアンプレーザ光源を用いてもよい。その場合、発光周波数(発振周波数)Feが数百MHzで、1パルス光の発光時間がピコ秒程度の高輝度な紫外線のパルス光を得ることができる。
露光ヘッド16は、ビームLBがそれぞれ入射する複数のビーム走査装置MD(MD1~MD6)を備えている。露光ヘッド16は、回転ドラムDRの円周面で支持されている基板FSの一部分に、複数のビーム走査装置MD1~MD6によって、所定のパターンを描画する。露光ヘッド16は、同一構成の複数のビーム走査装置MD1~MD6を配列した、いわゆるマルチビーム型の露光ヘッドとなっている。露光ヘッド16は、基板FSに対して電子デバイス用のパターン露光を繰り返し行うことから、パターンが露光される露光領域W(1つの電子デバイスの形成領域)は、基板FSの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられている(図3参照)。
図2にも示すように、奇数番のビーム走査装置(ビーム走査ユニット)MD1、MD3、MD5は、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の上流側(-X方向側)に配置され、且つ、Y方向に並列して配置されている。偶数番のビーム走査装置(ビーム走査ユニット)MD2、MD4、MD6は、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の下流側(+X方向側)に配置され、且つ、Y方向に並列して配置されている。奇数番のビーム走査装置MD1、MD3、MD5と、偶数番のビーム走査装置MD2、MD4、MD6とは、中心面Pocに対して対称に設けられている。
ビーム走査装置MDは、光源装置14からのビームLBを基板FSの被照射面上でスポット光SPに収斂させるように投射しつつ、そのスポット光SPを基板FSの被照射面上で所定の直線的な描画ラインSLnに沿って1次元に走査する。複数のビーム走査装置MD1~MD6の描画ライン(走査線)SLnは、図2、図3に示すように、Y方向(基板FSの幅方向、走査方向)に関して互いに分離することなく、継ぎ合わされるように設定されている。以下、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)に入射するビームLBを、LB1~LB6と表す場合がある。この各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)に入射するビームLB(LB1~LB6)は、所定の方向に偏光した直線偏光(P偏光またはS偏光)のビームであり、本実施の形態では、P偏光のビームが入射するものとする。また、ビーム走査装置MD1の描画ラインSLnをSL1、ビーム走査装置MD2~MD6の描画ラインSLnをSL2~SL6と表す場合がある。
図3に示すように、複数のビーム走査装置MD1~MD6の全部で露光領域Wの幅方向の全てをカバーするように、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は走査領域を分担している。これにより、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は、基板FSの幅方向に分割された複数の領域毎にパターンを描画することができる。例えば、1つのビーム走査装置MDによるY方向の走査幅(描画ラインSLnの長さ)を30~60mm程度とすると、奇数番のビーム走査装置MD1、MD3、MD5の3個と、偶数番のビーム走査装置MD2、MD4、MD6の3個との計6個のビーム走査装置MDをY方向に配置することによって、描画可能なY方向の幅を180~360mm程度に広げている。各描画ラインSL1~SL6の長さは、原則として同一とする。つまり、描画ラインSL1~SL6の各々に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査距離は同一とする。
なお、実際の描画ラインSLn(SL1~SL6)は、スポット光SPが被照射面上を実際に走査可能な最大の長さよりも僅かに短く設定される。例えば、主走査方向(Y方向)の描画倍率が初期値(倍率補正無し)の場合にパターン描画可能な描画ラインSLnの最大長を50mmとすると、スポット光SPの被照射面上での最大走査長は、描画ラインSLnの走査開始点側と走査終了点側の各々に0.5mm程度の余裕を持たせて、51mm程度に設定されている。このように設定することによって、スポット光SPの最大走査長51mmの範囲内で、50mmの描画ラインSLnの位置を主走査方向に微調整したり、描画倍率を微調整したりすることが可能となる。
描画ラインSL1~SL6は、中心面Pocを挟んで、回転ドラムDRの周方向に2列に配置される。奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5は、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の上流側(-X方向側)の基板FSの被照射面上に位置する。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6は、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板FSの被照射面上に位置する。描画ラインSL1~SL6は、基板FSの幅方向、つまり、回転ドラムDRの中心軸AXoに沿って略平行となっている。
描画ラインSL1、SL3、SL5は、基板FSの幅方向(走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に配置されている。描画ラインSL2、SL4、SL6も同様に、基板FSの幅方向(走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に配置されている。このとき、描画ラインSL2は、基板FSの幅方向において、描画ラインSL1と描画ラインSL3との間に配置される。同様に、描画ラインSL3は、基板FSの幅方向において、描画ラインSL2と描画ラインSL4との間に配置にされる。描画ラインSL4は、基板FSの幅方向において、描画ラインSL3と描画ラインSL5との間に配置され、描画ラインSL5は、基板FSの幅方向において、描画ラインSL4と描画ラインSL6との間に配置される。
奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5の各々に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査方向は、一次元の方向となっており、同じ方向となっている。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6の各々に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査方向は、一次元の方向となっており、同じ方向となっている。この描画ラインSL1、SL3、SL5に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査方向と、描画ラインSL2、SL4、SL6に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査方向とは互いに逆方向となっている。詳しくは、この描画ラインSL1、SL3、SL5に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査方向は-Y方向であり、描画ラインSL2、SL4、SL6に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査方向は+Y方向である。これにより、描画ラインSL1、SL3、SL5の描画開始位置(描画開始点の位置)と、描画ラインSL2、SL4、SL6の描画開始位置とはY方向に関して隣接(または一部重複)する。また、描画ラインSL3、SL5の描画終了位置(描画終了点の位置)と、描画ラインSL2、SL4の描画終了位置とはY方向に関して隣接(または一部重複)する。Y方向に隣り合う描画ラインSLnの端部同士を一部重複させる場合は、例えば、各描画ラインSLnの長さに対して、描画開始位置、または描画終了位置を含んでY方向に数%以下の範囲で重複させるとよい。
なお、この描画ラインSLnの副走査方向の幅は、スポット光SPのサイズ(直径)φに応じた太さである。例えば、スポット光SPのサイズφが3μmの場合は、各描画ラインSLnの幅も3μmとなる。スポット光SPは、所定の長さ(例えば、スポット光SPのサイズφの半分)だけオーバーラップするように、描画ラインSLnに沿って照射されてもよい。また、Y方向に隣り合う描画ラインSLn(例えば、描画ラインSL1と描画ラインSL2)同士を互いに隣接させる場合(継ぐ場合)も、所定の長さ(例えば、スポット光SPのサイズφの半分)だけオーバーラップさせるのがよい。
本実施の形態の場合、光源装置14からのビームLBがパルス光であるため、主走査の間に描画ラインSLn上に投射されるスポット光SPは、ビームLBの発振周波数Feに応じて離散的になる。そのため、ビームLBの1パルス光によって投射されるスポット光SPと次の1パルス光によって投射されるスポット光SPとを、主走査方向にオーバーラップさせる必要がある。そのオーバーラップの量は、スポット光SPのサイズφ、スポット光SPの走査速度、ビームLBの発振周波数Feによって設定されるが、スポット光SPの強度分布がガウス分布で近似される場合、スポット光SPのピーク強度の1/e2(または1/2)で決まる実効的な径サイズφに対して、φ/2程度オーバーラップさせるのがよい。したがって、副走査方向(描画ラインSLnと直交した方向)に関しても、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの1回の走査と、次の走査との間で、基板FSがスポット光SPの実効的なサイズφのほぼ1/2以下の距離だけ移動するように設定することが望ましい。また、基板FS上の感光性機能層への露光量の設定は、ビームLB(パルス光)のピーク値の調整で可能であるが、ビームLBの強度を上げられない状況で露光量を増大させたい場合は、スポット光SPの主走査方向の走査速度の低下、ビームLBの発振周波数Feの増大、或いは基板FSの副走査方向の搬送速度の低下等のいずれかによって、スポット光SPの主走査方向または副走査方向に関するオーバーラップ量を実効的なサイズφの1/2以上に増加させればよい。
各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は、少なくともXZ平面において、ビームLB(LB1~LB6)が基板FSの被照射面に対して垂直となるように、ビームLB(LB1~LB6)を基板FSに向けて照射する。つまり、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は、XZ平面において、回転ドラムDRの中心軸AXoに向かって進むように、すなわち、被照射面の法線と同軸(平行)となるように、ビームLB(LB1~LB6)を基板FSに対して照射(投射)する。また、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は、描画ラインSLn(SL1~SL6)に照射するビームLB(LB1~LB6)が、YZ平面と平行な面内では基板FSの被照射面に対して垂直となるように、ビームLB(LB1~LB6)を基板FSに向けて照射する。すなわち、被照射面でのスポット光SPの主走査方向に関して、基板FSに投射されるビームLB(LB1~LB6)はテレセントリックな状態で走査される。ここで、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)によって規定される描画ラインSLn(SL1~SL6)の中点(中心点)を通って基板FSの被照射面と垂直な線(または光軸とも呼ぶ)を、照射中心軸Le(Le1~Le6)と呼ぶ。
この各照射中心軸Le1~Le6は、XZ平面において、描画ラインSL1~SL6と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。奇数番のビーム走査装置MD1、MD3、MD5の各々の照射中心軸Le1、Le3、Le5は、XZ平面において同じ方向となっており、奇数番のビーム走査装置MD2、MD4、MD6の各々の照射中心軸Le2、Le4、Le6は、XZ平面において同じ方向となっている。また、XZ平面において、照射中心軸Le1、Le3、Le5と照射中心軸Le2、Le4、Le6とは、中心面Pocに対しての角度が±θとなるように設定されている(図4参照)。
図2に示すように、回転ドラムDRの両端部には、回転ドラムDRの外周面の周方向の全体に亘って環状に形成された目盛を有するスケール部SD(SDa、SDb)が設けられている。このスケール部SD(SDa、SDb)は、回転ドラムDRの外周面の周方向に一定のピッチ(例えば、20μm)で凹状または凸状の格子線を刻設した回折格子であり、インクリメンタル型スケールとして構成される。このスケール部SD(SDa、SDb)は、中心軸AXo回りに回転ドラムDRと一体に回転する。また、このスケール部SD(SDa、SDb)と対向するように、複数のエンコーダ(スケール読取ヘッド)ECが設けられている。このエンコーダECは、回転ドラムDRの回転位置を光学的に検出するものである。回転ドラムDRの-Y方向側の端部に設けられたスケール部SDaに対向して、2つのエンコーダEC(EC1a、EC2a)が設けられ、回転ドラムDRの+Y方向側の端部に設けられたスケール部SDbに対向して、2つのエンコーダEC(EC1b、EC2b)が設けられている。
エンコーダEC(EC1a、EC1b、EC2a、EC2b)は、スケール部SD(SDa、SDb)に向けて計測用の光ビームを投射し、その反射光束(回折光)を光電検出することにより、スケール部SD(SDa、SDb)の周方向の位置変化に応じた検出信号を制御装置18に出力する。制御装置18は、その検出信号を不図示のカウンタ回路で内挿補間してデジタル処理することにより、回転ドラムDRの角度変化、すなわち、その外周面の周方向の位置変化をサブミクロンの分解能で計測することができる。制御装置18は、回転ドラムDRの角度変化から、基板FSの搬送速度も計測することができる。
エンコーダEC1a、EC1bは、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の上流側(-X方向側)に設けられており、XZ平面において、照射中心軸Le1、Le3、Le5と同じ線上に配置されている。つまり、XZ平面において、エンコーダEC1a、EC1bから投射される計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と中心軸AXoとを結ぶ線が、照射中心軸Le1、Le3、Le5と同じ線上に配置されている。同様に、エンコーダEC2a、EC2bは、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、XZ平面において、照射中心軸Le2、Le4、Le6と同じ線上に配置されている。つまり、XZ平面において、エンコーダEC2a、EC2bから投射される計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と中心軸AXoとを結ぶ線が、照射中心軸Le2、Le4、Le6と同じ線上に配置されている。
なお、基板FSは、回転ドラムDRの両端のスケール部SDa、SDbより内側に巻き付けられている。スケール部SD(SDa、SDb)の外周面は、回転ドラムDRに巻き付けられた基板FSの外周面と同一面となるように設定されている。つまり、スケール部SD(SDa、SDb)の外周面の中心軸AXoからの半径(距離)と、回転ドラムDRに巻き付けられた基板FSの外周面の中心軸AXoからの半径(距離)とが同一となるように設定されている。これにより、エンコーダEC(EC1a、EC1b、EC2a、EC2b)は、回転ドラムDRに巻き付いた基板FSの被照射面と同じ径方向の位置でスケール部SD(SDa、SDb)を検出することができ、計測位置と処理位置(スポット光SPの走査位置等)とが回転ドラムDRの径方向で異なることで生じるアッベ誤差を小さくすることができる。
ただし、被照射体としての基板FSの厚さは十数μm~数百μmと大きく異なるため、スケール部SD(SDa、SDb)の外周面の半径と、回転ドラムDRに巻き付けられた基板FSの外周面の半径とを常に同一にすることは難しい。そのため、図2に示したスケール部SD(SDa、SDb)の場合、その外周面(スケール面)の半径は、回転ドラムDRの外周面の半径と一致するように設定される。さらに、スケール部SDを個別の円盤で構成し、その円盤(スケール円盤)を回転ドラムDRのシャフトSftに同軸に取り付けることも可能である。その場合も、アッベ誤差が許容値内に収まる程度に、スケール円盤の外周面(スケール面)の半径と回転ドラムDRの外周面の半径とを揃えておくのがよい。
図1に示したアライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)は、図3に示すように、基板FSの形成されたアライメントマークMK(MK1~MK4)を検出するためのものであり、Y方向に沿って複数(本実施の形態では、4つ)設けられている。アライメントマークMK(MK1~MK4)は、基板FSの被照射面上の露光領域Wに描画される所定のパターンと、基板FSとを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)は、回転ドラムDRの円周面で支持されている基板FS上で、アライメントマークMK(MK1~MK4)を検出する。アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)は、露光ヘッド16からのビームLB(LB1~LB6)のスポット光SPによる基板FS上の被照射領域よりも基板FSの搬送方向の上流側(-X方向側)に設けられている。
アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)は、アライメント用の照明光を基板FSに投射する光源と、基板FSの表面のアライメントマークMK(MK1~MK4)を含む局所領域の拡大像を得る観察光学系(対物レンズを含む)と、その拡大像を基板FSが搬送方向に移動している間に高速シャッターで撮像するCCD、CMOS等の撮像素子とを有する。アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)が撮像した撮像信号は制御装置18に送られる。制御装置18は、撮像信号の画像解析と、撮像した瞬間の回転ドラムDRの回転位置の情報(図2に示したスケール部SDを読み取るエンコーダECにより計測)とに基づいて、アライメントマークMK(MK1~MK4)の位置を検出して、基板FSの位置を検出する。なお、アライメント用の照明光は、基板FS上の感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば、波長500~800nm程度の光である。
アライメントマークMK1~MK4は、各露光領域Wの周りに設けられている。アライメントマークMK1、MK4は、露光領域Wの基板FSの幅方向の両側に、基板FSの長尺方向に沿って一定の間隔Dhで複数形成されている。アライメントマークMK1は、基板FSの幅方向の-Y方向側に、アライメントマークMK4は、基板FSの幅方向の+Y方向側にそれぞれ形成されている。このようなアライメントマークMK1、MK4は、基板FSが大きなテンションを受けたり、熱プロセスを受けたりして変形していない状態では、基板FSの長尺方向(X方向)に関して同一位置になるように配置される。さらに、アライメントマークMK2、MK3は、アライメントマークMK1とアライメントマークMK4の間であって、露光領域Wの+X方向側と-X方向側との余白部に基板FSの幅方向(短尺方向)に沿って形成されている。アライメントマークMK2は、基板FSの幅方向の-Y方向側に、アライメントマークMK3は、基板FSの+Y方向側に形成されている。さらに、基板FSの-Y方向の側端部に配列されるアライメントマークMK1と余白部のアライメントマークMK2とのY方向の間隔、余白部のアライメントマークMK2とアライメントマークMK3のY方向の間隔、および基板FSの+Y方向の側端部に配列されるアライメントマークMK4と余白部のアライメントマークMK3とのY方向の間隔は、いずれも同じ距離に設定されている。これらのアライメントマークMK(MK1~MK4)は、第1層のパターン層の形成の際に一緒に形成されてもよい。例えば、第1層のパターンを露光する際に、パターンが露光される露光領域Wの周りにアライメントマーク用のパターンも一緒に露光してもよい。なお、アライメントマークMKは、露光領域W内に形成されてもよい。例えば、露光領域W内であって、露光領域Wの輪郭に沿って形成されてもよい。
アライメント顕微鏡ALG1は、対物レンズによる観察領域(検出領域)Vw1内に存在するアライメントマークMK1を撮像するように配置される。同様に、アライメント顕微鏡ALG2~ALG4は、対物レンズによる観察領域Vw2~Vw4内に存在するアライメントマークMK2~MK4を撮像するように配置される。したがって、複数のアライメント顕微鏡ALG1~ALG4は、複数のアライメントマークMK1~MK4の位置に対応して、基板FSの-Y方向側からアライメント顕微鏡ALG1~ALG4の順で設けられている。アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)は、X方向に関して、露光位置(描画ラインSL1~SL6)とアライメント顕微鏡ALGの観察領域Vw(Vw1~Vw4)との距離が、露光領域WのX方向の長さよりも短くなるように設けられている。なお、Y方向に設けられるアライメント顕微鏡ALGの数は、基板FSの幅方向に形成されるアライメントマークMKの数に応じて変更可能である。また、観察領域Vw1~Vw4の基板FSの被照射面上の大きさは、アライメントマークMK1~MK4の大きさやアライメント精度(位置計測精度)に応じて設定されるが、100~500μm角程度の大きさである。
図4は、露光装置EXの要部拡大図である。露光装置EXは、複数の光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)と、本体フレームUBとをさらに備える。光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)は、光源装置14からのビームLB(LB1~LB6)をビーム走査装置MD(MD1~MD6)に導く。光導入光学系BDU1は、ビームLB1をビーム走査装置MD1に導き、光導入光学系BDU2は、ビームLB2をビーム走査装置MD2に導く。同様に、光導入光学系BDU3~BDU6は、ビームLB3~LB6をビーム走査装置MD3~MD6に導く。光源装置14からのビームLBは、図示しないビームスプリッタ、或いはスイッチング用の光偏向器等の光学部材によって、各光導入光学系BDU1~BDU6に分岐して入射、或いは選択的に入射される。光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)は、ビーム走査装置MD(MD1~MD6)によって基板FSの被照射面上に投射されるスポット光SPの強度をパターンデータに応じて高速に変調(オン/オフ)する描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)を有する。描画用光学素子AOMは、音響光学変調器(Acousto-Optic Modulator)である。このパターンデータは、制御装置18の図示しない記憶領域に記憶されている。
本体フレームUBは、複数の光導入光学系BDU1~BDU6と複数のビーム走査装置MD1~MD6を保持する。本体フレームUBは、複数の光導入光学系BDU1~BDU6を保持する第1フレーム部Ub1と、複数のビーム走査装置MD1~MD6を保持する第2フレーム部Ub2とを有する。第1フレーム部Ub1は、第2フレーム部Ub2によって保持された複数のビーム走査装置MD1~MD6の上方(+Z方向側)で、複数の光導入光学系BDU1~BDU6を保持する。奇数番の光導入光学系BDU1、BDU3、BDU5は、奇数番のビーム走査装置MD1、MD3、MD5の位置に対応して、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の上流側(-X方向側)に配置されるように、第1フレーム部Ub1に保持されている。偶数番の光導入光学系BDU2、BDU4、BDU6は、同様に、偶数番のビーム走査装置MD2、MD4、MD6の位置に対応して、中心面Pocに対して基板FSの搬送方向の下流側(+X方向側)に配置されるように、第1フレーム部Ub1に保持されている。この光導入光学系BDUの構成については後で詳細に説明する。
第1フレーム部Ub1は、複数の光導入光学系BDU1~BDU6を下方(-Z方向側)から支持する。第1フレーム部Ub1には、複数の光導入光学系BDU1~BDU6に対応して複数の開口部Hs(Hs1~Hs6)が設けられている。この複数の開口部Hs1~Hs6によって、複数の光導入光学系BDU1~BDU6から射出されるビームLB1~LB6が第1フレーム部Ub1によって遮られることなく、対応するビーム走査装置MD1~MD6に入射する。つまり、光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)から射出するビームLB(LB1~LB6)は、開口部Hs(Hs1~Hs6)を通って、ビーム走査装置MD(MD1~MD6)に入射する。
第2フレーム部Ub2は、ビーム走査装置MD(MD1~MD6)の各々を照射中心軸Le(Le1~Le6)回りに回転可能に保持する。つまり、第2フレーム部Ub2によって、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は、照射中心軸Le(Le1~Le6)の回りに回転することができる。この第2フレーム部Ub2によるビーム走査装置MDの保持構造については後で詳細に説明する。
図5は、光導入光学系BDUの光学的な構成を示す詳細図、図6は、描画用光学素子AOMによる光路の切り換え(ビームLBのオン/オフ)を説明する概略説明図である。奇数番の光導入光学系BDU1、BDU3、BDU5と、偶数番の光導入光学系BDU2、BDU4、BDU6とは、中心面Pocに対して対称に設けられている。なお、各光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)は、同一の構成を有することから、光導入光学系BDU1についてのみ説明し、他の光導入光学系BDUについての説明を省略する。
光導入光学系BDU1は、描画用光学素子AOM1の他に、光学レンズ系G1、G2と、反射ミラーM1~M5とを有する。描画用光学素子AOM1には、描画用光学素子AOM1内でビームウエストとなるようにビームLB1が入射する。描画用光学素子AOM1は、図6に示すように、制御装置18からの駆動信号(高周波信号)がオフ(ロー)の状態ときは、入射したビームLB1を吸収体ABに透過し、制御装置18からの駆動信号(高周波信号)がオン(ハイ)の状態のときは、入射したビームLB1を回折させた1次回折光を反射ミラーM1に向かわせる。吸収体ABは、ビームLB1の外部への漏れを抑制するためにビームLB1を吸収する光トラップである。制御装置18は、描画用光学素子AOM1に印加すべき駆動信号(高周波信号)をパターンデータに応じて高速にオン/オフ(ハイ/ロー)にすることによって、ビームLB1が反射ミラーM1に向かうか(描画用光学素子AOM1がオン)、吸収体ABに向かうか(描画用光学素子AOM1がオフ)がスイッチングされる。このことは、基板FSの被照射面上でみると、ビーム走査装置MD1から被照射面(基板FS)に到達するビームLB1のスポット光SPの強度が、パターンデータに応じて高レベルと低レベル(例えば、ゼロレベル)のいずれかに高速に変調されることを意味する。
パターンデータは、スポット光SPの走査方向(Y方向)に沿った方向を行方向とし、基板FSの搬送方向(X方向)に沿った方向を列方向とするように2次元に分解された複数の画素データで構成されているビットマップデータである。この画素データは、「0」または「1」の1ビットのデータである。「0」の画素データは、基板FS上に照射するスポット光SPの強度を低レベルにすることを意味し、「1」の画素データは、基板FS上に照射するスポット光SPの強度を高レベルにすることを意味する。したがって、制御装置18は、画素データが「0」の場合は、オフの駆動信号(高周波信号)を、光導入光学系BDU1の描画用光学素子AOM1に出力し、画素データが「1」の場合は、オンの駆動信号(高周波信号)を描画用光学素子AOM1に出力する。このパターンデータの1列分の画素データの数は、被照射面上での画素の寸法と描画ラインSLnの長さとに応じて決まり、1画素の寸法はスポット光SPのサイズφによって決まる。先に説明したように、被照射面上で続けて照射されるスポット光SPをサイズφの1/2程度だけオーバーラップさせる場合、1画素の寸法はスポット光SPのサイズφ程度、或いはそれ以上に設定される。例えば、スポット光SPの実効的なサイズφが3μm(オーバーラップ量は1.5μm)の場合、1画素の寸法は3μm角程度、或いはそれ以上に設定される。したがって、より微細なパターンを描画するためには、スポット光SPの実効的なサイズφをより小さくして、1画素の寸法を小さく設定することになる。したがって、スポット光SPをサイズφの1/2程度だけオーバーラップさせる場合、描画ラインSL1に沿って投射されるスポット光SPの数(パルス数)はパターンデータの1列分の画素データの数の2倍となる。このパターンデータは、図示しないメモリに記憶されていている。なお、1列分の画素データを画素データ列Dwと称する場合があり、パターンデータは、複数の画素データ列Dw(Dw1、Dw2、・・・、Dwn)が列方向に並んだビットマップデータである。
詳しく説明すると、制御装置18は、パターンデータの画素データ列(1列分の画素データ)Dw(例えば、Dw1)を読み出し、ビーム走査装置MD1によるスポット光SPの走査と同期して、読み出した画素データ列Dw1の画素データに応じた駆動信号を光導入光学系BDU1の描画用光学素子AOM1に順次出力する。具体的には、描画ラインSL1に沿ってスポット光SPの2パルス分が投射されるタイミングごとに、読み出した画素データ列Dw1のうち選択する1画素分のデータを行方向に沿ってずらしていき、選択した1画素分のデータに応じた駆動信号を描画用光学素子AOM1に順番に出力する。これにより、基板FSの照射面上に照射されるスポット光SPの2パルス毎に、その強度が画素データに応じて変調される。制御装置18は、スポット光SPの走査が終了すると、次の列の画素データ列Dw2を読み出す。そして、ビーム走査装置MD1のスポット光SPの走査の開始に伴って、読み出した画素データ列Dw2の画素データに応じた駆動信号を光導入光学系BDU1の描画用光学素子AOM1に順次出力する。このようにして、スポット光SPの走査を開始する度に、次の列の画素データ列Dwの画素データに応じた駆動信号を描画用光学素子AOM1に順次出力する。これにより、パターンデータに応じたパターンを描画露光することができる。なお、パターンデータは、ビーム走査装置MD毎に設けられている。
描画用光学素子AOM1からのビームLB1は、ビーム成形用の光学レンズ系G1を介して、吸収体ABまたは反射ミラーM1に入射する。つまり、描画用光学素子AOM1がオンであっても、オフであっても、描画用光学素子AOM1を通過したビームLB1は光学レンズ系G1を透過する。描画用光学素子AOM1がオンに切り換えられて、反射ミラーM1にビームLB1が入射すると、ビームLB1は、図5中の反射ミラーM1~M5によって光路が折り曲げられて、反射ミラーM5からビーム走査装置MD1に向かって射出する。このとき、反射ミラーM5は、照射中心軸Le1と同軸になるようにビームLB1を射出する。つまり、光導入光学系BDU1からのビームLB1の軸線がビーム走査装置MD1に設定された照射中心軸Le1と同軸になってビーム走査装置MD1に入射するように、光導入光学系BDU1の反射ミラーM1~M5によってその光路が折り曲げられている。なお、反射ミラーM4と反射ミラーM5との間には、ビーム成形用の光学レンズ系G2が設けられている。なお、少なくとも複数のビーム走査装置MD(MD1~MD6)から構成される露光ヘッド16と光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)とは、本実施の形態の描画装置を構成する。また、本体フレームUBも描画装置の一部を構成してもよい。
次に、図7(および図5)を参照してビーム走査装置MDの光学的な構成について説明する。なお、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は、同一の構成を有することから、ビーム走査装置MD1についてのみ説明し、他のビーム走査装置MDについては説明を省略する。また、図7(および図5)においては、照射中心軸Le(Le1)と平行する方向をZt方向とし、Zt方向と直交する平面上にあって、基板FSがプロセス装置PR1から露光装置EXを経てプロセス装置PR2に向かう方向をXt方向とし、Zt方向と直交する平面上であって、Xt方向と直交する方向をYt方向とする。つまり、図7(および図5)のXt、Yt、Ztの3次元座標は、図1のX、Y、Zの3次元座標を、Y軸を中心にZ軸方向が照射中心軸Le(Le1)と平行となるように回転させた3次元座標である。
図7に示すように、ビーム走査装置MD1内には、ビームLB1の入射位置から被照射面(基板FS)までのビームLB1の進行方向に沿って、反射ミラーM10、ビームエキスパンダーBE、反射ミラーM11、偏光ビームスプリッタBS1、反射ミラーM12、像シフト光学部材(平行平板)SR、偏向調整光学部材(プリズム)DP、フィールドアパーチャFA、反射ミラーM13、λ/4波長板QW、シリンドリカルレンズCYa、反射ミラーM14、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、反射ミラーM15、シリンドリカルレンズCYbが設けられる。さらにビーム走査装置MD1内には、被照射面(基板FS)からの反射光を偏光ビームスプリッタBS1を介して検出するための光学レンズ系G10および光検出器DT1が設けられる。
ビーム走査装置MD1に入射するビームLB1は、-Zt方向に向けて進み、XtYt平面に対して45°傾いた反射ミラーM10に入射する。このビーム走査装置MD1に入射するビームLB1の軸線は、照射中心軸Le1と同軸になるように反射ミラーM10に入射する。反射ミラーM10は、ビームLB1をビーム走査装置MD1に入射させる入射光学部材として機能し、入射したビームLB1を、Xt軸と平行に設定される光軸AXaに沿って反射ミラーM11に向けて-Xt方向に反射する。したがって、光軸AXaはXtZt平面と平行な面内で照射中心軸Le1と直交する。反射ミラーM10で反射したビームLB1は、光軸AXaに沿って配置されるビームエキスパンダーBEを透過して反射ミラーM11に入射する。ビームエキスパンダーBEは、透過するビームLB1の径を拡大させる。ビームエキスパンダーBEは、集光レンズBe1と、集光レンズBe1によって収斂された後に発散するビームLB1を平行光にするコリメートレンズBe2とを有する。
反射ミラーM11は、YtZt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1(光軸AXa)を偏光ビームスプリッタBS1に向けて-Yt方向に反射する。偏光ビームスプリッタBS1の偏光分離面は、YtZt平面に対して45°傾いて配置され、P偏光のビームを反射し、P偏光と直交する方向に偏光した直線偏光(S偏光)のビームを透過するものである。ビーム走査装置MD1に入射するビームLB1は、P偏光のビームなので、偏光ビームスプリッタBS1は、反射ミラーM11からのビームLB1を-Xt方向に反射して反射ミラーM12側に導く。
反射ミラーM12は、XtYt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を、反射ミラーM12から-Zt方向に離れた反射ミラーM13に向けて-Zt方向に反射する。反射ミラーM12で反射されたビームLB1は、Zt軸と平行な光軸AXcに沿って像シフト光学部材SR、偏向調整光学部材DP、およびフィールドアパーチャ(視野絞り)FAを通過して、反射ミラーM13に入射する。像シフト光学部材SRは、ビームLB1の進行方向(光軸AXc)と直交する平面(XtYt平面)内において、ビームLB1の断面内の中心位置を2次元的に調整する。像シフト光学部材SRは、光軸AXcに沿って配置される2枚の石英の平行平板Sr1、Sr2で構成され、平行平板Sr1は、Xt軸回りに傾斜可能であり、平行平板Sr2は、Yt軸回りに傾斜可能である。この平行平板Sr1、Sr2がそれぞれ、Xt軸、Yt軸回りに傾斜することで、ビームLB1の進行方向と直交するXtYt平面において、ビームLB1の中心の位置を2次元に微小量シフトする。この平行平板Sr1、Sr2は、制御装置18の制御の下、図示しないアクチュエータ(駆動部)によって駆動する。
偏向調整光学部材DPは、反射ミラーM12で反射されて像シフト光学部材SRを通ってきたビームLB1の光軸AXcに対する傾きを微調整するものである。偏向調整光学部材DPは、光軸AXcに沿って配置される2つの楔状のプリズムDp1、Dp2で構成され、プリズムDp1、Dp2の各々は独立して光軸AXcを中心に360°回転可能に設けられている。2つのプリズムDp1、Dp2の回転角度位置を調整することによって、反射ミラーM12に達するビームLB1の軸線と光軸AXcとの平行出し、または被照射面(基板FS)に達するビームLB1の軸線と照射中心軸Le1との平行出しが行われる。なお、2つのプリズムDp1、Dp2によって偏向調整された後のビームLB1は、ビームLBの断面と平行な面内で横シフトしている場合があり、その横シフトは先の像シフト光学部材SRによって元に戻すことができる。このプリズムDp1、Dp2は、制御装置18の制御の下、図示しないアクチュエータ(駆動部)によって駆動する。
このように、像シフト光学部材SRと偏向調整光学部材DPとを通ったビームLB1は、フィールドアパーチャFAの円形開口を透過して反射ミラーM13に達する。フィールドアパーチャFAの円形開口は、ビームエキスパンダーBEで拡大されたビームLB1の断面内の強度分布の裾野部分をカットする絞りである。フィールドアパーチャFAの円形開口を口径が調整可能な可変光彩絞りにすると、スポット光SPの強度(輝度)を調整することができる。
反射ミラーM13は、XtYt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を反射ミラーM14に向けて+Xt方向に反射する。反射ミラーM13で反射したビームLB1は、λ/4波長板QWおよびシリンドリカルレンズCYaを介して反射ミラーM14に入射する。反射ミラーM14は、入射したビームLB1をポリゴンミラー(回転多面鏡、走査用偏向部材)PMに向けて反射する。ポリゴンミラーPMは、入射したビームLB1を、Xt軸と平行な光軸AXfを有するfθレンズFTに向けて+Xt方向側に反射する。ポリゴンミラーPMは、ビームLB1のスポット光SPを基板FSの被照射面上で走査するために、入射したビームLB1をXtYt平面と平行な面内で偏向(反射)する。具体的には、ポリゴンミラーPMは、Zt軸方向に延びる回転軸AXpと、回転軸AXpの周りに形成された複数の反射面RP(本実施の形態では8つの反射面RP)とを有する。回転軸AXpを中心にこのポリゴンミラーPMを所定の回転方向に回転させることで反射面RPに照射されるパルス状のビームLB1の反射角を連続的に変化させることができる。これにより、1つの反射面RPによってビームLB1の反射方向が偏向され、基板FSの被照射面上に照射されるビームLB1のスポット光SPを走査方向(基板FSの幅方向、Yt方向)に沿って走査することができる。
つまり、1つの反射面RPによって、ビームLB1のスポット光SPを描画ラインSL1に沿って走査することができる。このため、ポリゴンミラーPMの1回転で、基板FSの被照射面上にスポット光SPが走査される描画ラインSL1の数は、反射面RPの数と同じ8本となる。ポリゴンミラーPMは、モータ等を含むポリゴン駆動部RMによって一定の速度で回転する。ポリゴン駆動部RMによるポリゴンミラーPMの回転は、制御装置18によって制御される。先に説明したように、描画ラインSL1の実効的な長さ(例えば50mm)は、このポリゴンミラーPMによってスポット光SPを走査することができる最大走査長(例えば51mm)以下の長さに設定されており、初期設定(設計上)では、最大走査長の中央に描画ラインSL1の中心点(照射中心軸Le1が通る)が設定されている。
例えば、描画ラインSL1の実効的な長さを50mmとし、実効的なサイズφが4μmのスポット光SPを2.0μmずつオーバーラップさせながらスポット光SPを描画ラインSL1に沿って基板FSの被照射面上に照射する場合は、1回の走査で照射されるスポット光SP(パルス光)の数は、25000(=50mm/2.0μm)となる。また、基板FSの副走査方向の送り速度(搬送速度)Vtを8mm/秒とし、副走査方向についてもスポット光SPの走査が2.0μmの間隔で行われるものとすると、描画ラインSL1に沿った1回の走査開始時点と次の走査開始時点との時間差Tpxは、250μ秒(=2.0μm/(8mm/秒))となる。この時間差Tpxは、8反射面RPのポリゴンミラーPMが1面分の角度45°(=360°/8)だけ回転する時間である。この場合、ポリゴンミラーPMの1回転の時間は、2.0m秒(=8×250μ秒)に設定されるので、ポリゴンミラーPMの回転速度Vpは毎秒500回転(=1/2.0m秒)、すなわち3万rpmに設定される。
一方、ポリゴンミラーPMの1反射面RPで反射したビームLB1が有効にfθレンズFTに入射する最大入射画角(スポット光SPの最大走査長に対応)は、fθレンズFTの焦点距離と最大走査長によっておおよそ決まってしまう。一例として、8反射面RPのポリゴンミラーPMの場合、1反射面RP分の回転角度45°のうちで実走査に寄与する回転角度の比率(走査効率αp)は約1/3程度であり、fθレンズFTの最大入射画角(±15°の範囲、つまり30°の範囲)に対応する。そのため、描画ラインSL1に沿ったスポット光SPの1走査の実効的な時間Tssは、Tss≒Tpx/3となり、先の数値例の場合、時間Tssは83.33・・・μ秒となる。したがって、この時間Tssの間に、25000のスポット光SP(パルス光)を照射する必要があるので、光源装置14からのパルス状のビームLBの発光周波数Feは、Fe=25000回/83.333・・・μ秒=300MHzとなる。
以上のことから、スポット光SPのサイズφ(μm)、光源装置14の発光周波数Fe(Hz)に加えて、描画ラインSLnの長さをLBL(μm)、スポット光SPのオーバーラップ率をUo(0<Uo<1)、基板FSの搬送速度をVt(μm/秒)、ポリゴンミラーPMの反射面RP数をNp、ポリゴンミラーPMの1反射面RP当たりの走査効率をαp(0<αp<1)とし、φ・(1-Uo)=YP(μm)すると、ポリゴンミラーPMの回転速度Vp(rps)は、Vp=Vt/(Np・YP)で表され、発光周波数Fe(Hz)は、Fe=LBL・Vt/(αp・YP2)で表される。この2つの関係式を搬送速度Vtでまとめてみると、
Vt=(Vp・Np・YP)=(Fe・αp・YP2/LBL)
となる。したがって、この関係が満たされるように、基板FSの搬送速度Vt(μm/秒)、ポリゴンミラーPMの回転速度Vp(rps)、光源装置14の発光周波数Fe(Hz)が調整される。
再び図7についての説明に戻り、シリンドリカルレンズCYaは、ポリゴンミラーPMによる走査方向(回転方向)と直交する非走査方向(Zt方向)に関して、入射したビームLB1をポリゴンミラーPMの反射面RP上にスリット状に収斂する。母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYaによって、反射面RPがZt方向に対して傾いている場合(XtYt平面の法線に対する反射面RPの傾き)があっても、その影響を抑制することができ、基板FSの被照射面上に照射されるビームLB1の照射位置がXt方向にずれることを抑制する。
Xt軸方向に延びる光軸AXfを有するfθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって反射されたビームLB1を、XtYt平面において、光軸AXfと平行となるように反射ミラーM15に投射するテレセントリック系のスキャンレンズである。ビームLB1のfθレンズFTへの入射角θは、ポリゴンミラーPMの回転角(θ/2)に応じて変わる。fθレンズFTは、反射ミラーM15およびシリンドリカルレンズCYbを介して、その入射角θに比例した基板FSの被照射面上の像高位置にビームLB1を投射する。焦点距離をfoとし、像高位置をyとすると、fθレンズFTは、y=fo・θ、の関係を満たすように設計されている。したがって、このfθレンズFTによって、ビームLB1をYt方向(Y方向)に正確に等速で走査することが可能になる。fθレンズFTへの入射角θが0度のときに、fθレンズFTに入射したビームLB1は、光軸AXf上に沿って進む。
反射ミラーM15は、入射したビームLB1を、シリンドリカルレンズCYbを介して基板FSに向けて-Zt方向に反射する。fθレンズFTおよび母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYbによって、基板FSに投射されるビームLB1が基板FSの被照射面上で直径数μm程度(例えば、3μm)の微小なスポット光SPに収斂される。また、基板FSの被照射面上に投射されるスポット光SPは、ポリゴンミラーPMによって、Yt方向に延びる描画ラインSL1によって1次元走査される。なお、fθレンズFTの光軸AXfと照射中心軸Le1とは、同一の平面上にあり、その平面はXtZt平面と平行である。したがって、光軸AXf上に進んだビームLB1は、反射ミラーM15によって-Zt方向に反射し、照射中心軸Le1と同軸になって基板FSに投射される。本実施の形態において、少なくともfθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって偏向されたビームLB1を基板FSの被照射面に投射する投射光学系として機能する。また、少なくとも反射部材(反射ミラーM11~M15)および偏光ビームスプリッタBS1は、反射ミラーM10から基板FSまでのビームLB1の光路を折り曲げる光路偏向部材として機能する。この光路偏向部材によって、反射ミラーM10に入射するビームLB1の入射軸と照射中心軸Le1とを略同軸にすることができる。XtZt平面に関して、ビーム走査装置MD1内を通るビームLB1は、略U字状またはコ字状の光路を通った後、-Zt方向に進んで基板FSに投射される。
このように、基板FSがX方向に搬送されている状態で、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)によって、ビームLB(LB1~LB6)のスポット光SPを走査方向(Y方向)に一次元に走査することで、スポット光SPを基板FSの被照射面に相対的に2次元走査することができる。したがって、基板FSの露光領域Wに所定のパターンを描画露光することができる。なお、描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)を、光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)に設けるようにしたが、ビーム走査装置MD内に設けるようにしてもよい。この場合は、反射ミラーM10と反射ミラーM14との間に描画用光学素子AOMを設けるとよい。
光検出器DT1は、入射した光を光電変換する光電変換素子を有する。回転ドラムDRの表面には、予め決められた基準パターンが形成されている。この基準パターンが形成された回転ドラムDR上の部分は、ビームLBの波長域に対して低めの反射率(10~50%)の素材で構成され、基準パターンが形成されていない回転ドラムDR上の他の部分は、反射率が10%以下の材料または光を吸収する材料で構成される。そのため、基板FSが巻き付けられていない状態(または基板FSの透明部を通した状態)で、回転ドラムDRの基準パターンが形成された領域にビーム走査装置MD1からビームLB1のスポット光SPを照射すると、その反射光が、シリンドリカルレンズCYb、反射ミラーM15、fθレンズFT、ポリゴンミラーPM、反射ミラーM14、シリンドリカルレンズCYa、λ/4波長板QW、反射ミラーM13、フィールドアパーチャFA、偏向調整光学部材DP、像シフト光学部材SR、および、反射ミラーM12を通過して偏光ビームスプリッタBS1に入射する。ここで、偏光ビームスプリッタBS1と基板FSとの間、具体的には、反射ミラーM13とシリンドリカルレンズCYaとの間には、λ/4波長板QWが設けられている。これにより、基板FSに照射されるビームLB1は、このλ/4波長板QWによってP偏光から円偏光のビームLB1に変換され、基板FSから偏光ビームスプリッタBS1に入射する反射光は、このλ/4波長板QWによって、円偏光からS偏光に変換される。したがって、基板FSからの反射光は偏光ビームスプリッタBS1を透過し、光学レンズ系G10を介して光検出器DT1に入射する。
このとき、光導入光学系BDU1の描画用光学素子AOM1をオンにした状態で、つまり、パルス状のビームLB1が連続してビーム走査装置MD1に入射される状態で、回転ドラムDRを回転してビーム走査装置MD1がスポット光SPを走査することで、回転ドラムDRの外周面には、スポット光SPが2次元的に照射される。したがって、回転ドラムDRに形成された基準パターンの画像を光検出器DT1によって取得することができる。
具体的には、光検出器DT1から出力される光電信号の強度変化を、スポット光SPのパルス発光のためのクロックパルス信号(光源装置14内で作られる)に応答して、各走査時間ごとにデジタルサンプリングすることでYt方向の1次元の画像データとして取得する。さらに回転ドラムDRの回転角度位置を計測するエンコーダECの計測値に応答して、副走査方向の一定距離(例えばスポット光SPのサイズφの1/2)ごとにYt方向の1次元の画像データをXt方向に並べることにより、回転ドラムDRの表面の2次元の画像情報を所得する。制御装置18は、この取得した回転ドラムDRの基準パターンの2次元の画像情報に基づいて、ビーム走査装置MDの描画ラインSL1の傾きを計測する。この描画ラインSL1の傾きとは、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)間における相対的な傾きであってもよく、回転ドラムDRの中心軸AXoに対する傾き(絶対的な傾き)であってもよい。なお、同様にして、各描画ラインSL2~SL6の傾きも計測することができることはいうまでもない。
ビーム走査装置MD1のポリゴンミラーPMの周辺には、図8に示すように原点センサ20が設けられている。原点センサ20は、各反射面RPによるスポット光SPの走査開始を示すパルス状の原点信号SHを出力する。原点センサ20は、ポリゴンミラーPMの回転位置が、反射面RPによるスポット光SPの走査が開始される直前の所定位置に来ると、原点信号SHを出力する。ポリゴンミラーPMは、有効走査角度範囲θsで、基板FSに投射されるビームLB1を偏向することができる。つまり、ポリゴンミラーPMで反射したビームLB1の反射方向(偏向方向)が有効走査角度範囲θs内になると、反射したビームLB1がfθレンズFTに入射する。したがって、原点センサ20は、反射面RPで反射されるビームLB1の反射方向が有効走査角度範囲θs内に入る直前の所定位置にポリゴンミラーPMの回転位置が来ると原点信号SHを出力する。ポリゴンミラーPMが1回転する期間で、スポット光SPの走査が8回行われるので、原点センサ20もこの1回転する期間で8回原点信号SHを出力することになる。この原点センサ20が検出した原点信号SHは制御装置18に送られる。原点センサ20が原点信号SHを出力してから、スポット光SPの描画ラインSL1に沿った走査が開始される。
原点センサ20は、これからスポット光SPの走査(ビームLBの偏向)を行う反射面RPの隣りの反射面RP(本実施の形態では、ポリゴンミラーPMの回転方向の1つ手前の反射面RP)を用いて、原点信号SHを出力する。各反射面RPを区別するため、便宜上、図8において、ビームLB1の偏向を行っている反射面RPをRPaで表し、その他の反射面RPを、反時計方向回り(ポリゴンミラーPMの回転方向とは反対の方向回り)に、RPb~RPhで表す。
原点センサ20は、半導体レーザ等の非感光性の波長域のレーザビームBgaを射出する光源部22と、光源部22からのレーザビームBgaを反射させてポリゴンミラーPMの反射面RPbに投射するミラー24、26とを備えるビーム送光系20aを有する。また、原点センサ20は、受光部28と、反射面RPbで反射したレーザビームBgaの反射光(反射ビームBgb)を受光部28に導くミラー30、32と、ミラー32で反射された反射ビームBgbを微小なスポット光に集光するレンズ系34とを備えるビーム受光系20bを有する。受光部28は、レンズ系34によって集光された反射ビームBgbのスポット光を受光する光電変換素子を有する。ここで、レーザビームBgaがポリゴンミラーPMの各反射面RPに投射される位置は、レンズ系34の瞳面(焦点の位置)となるように設定されている。
ビーム送光系20aとビーム受光系20bとは、ポリゴンミラーPMの回転位置が、反射面RPによるスポット光SPの走査が開始される直前の所定位置になったときに、ビーム送光系20aが射出したレーザビームBgaの反射ビームBgbを受光することができる位置に設けられている。つまり、ビーム送光系20aとビーム受光系20bとは、スポット光SPの走査を行う反射面RPが所定の角度位置になったときに、ビーム送光系20aが射出したレーザビームBgaの反射ビームBgbを受光することができる位置に設けられている。なお、図8の符号Msfは、回転軸AXpと同軸に配置されたポリゴン駆動部RMの回転モータのシャフトである。
受光部28内の前記光電変換素子の受光面の直前には、微小幅のスリット開口を備えた遮光体が設けられている(図示略)。反射面RPbの角度位置が、所定の角度範囲内の間は、反射ビームBgbがレンズ系34に入射して、反射ビームBgbのスポット光が受光部28内の前記遮光体上を一定方向に走査する。その走査中に、遮光体のスリット開口を透過した反射ビームBgbのスポット光が前記光電変換素子で受光され、その受光信号が増幅器で増幅されてパルス状の原点信号SHとして出力される。
原点センサ20は、上述したように、ビームLBを偏向する(スポット光SPを走査する)反射面RPaより、回転方向の1つ手前の反射面RPbを用いて原点信号SHを検出する。そのため、隣り合う反射面RP(例えば、反射面RPaと反射面RPb)同士の各なす角ηjが設計値(反射面RPが8つの場合は135度)に対して誤差を持っていると、その誤差のばらつきによって、図9に示すように、原点信号SHの発生タイミングが反射面RP毎に異なってしまう場合がある。
図9においては、反射面RPbを用いて発生した原点信号SHをSH1とする。同様に、反射面RPc、RPd、RPe、・・・を用いて発生した原点信号SHをSH2、SH3、SH4、・・・とする。ポリゴンミラーPMの隣り合う反射面RP同士のなす角ηjが設計値の場合は、各原点信号SH(SH1、SH2、SH3、・・・)の発生タイミングの間隔は、時間Tpxとなる。この時間Tpxは、ポリゴンミラーPMが反射面RPの1面分回転するのに要する時間である。しかしながら、図9においては、ポリゴンミラーPMの反射面RPのなす角ηjの誤差によって、反射面RPc、RPdを用いて発生した原点信号SHのタイミングが、正規の発生タイミングに対してずれている。また、原点信号SH1、SH2、SH3、SH4、・・・が発生する時間間隔Tp1、Tp2、Tp3、・・・は、ポリゴンミラーPMの製造誤差により、μ秒オーダーでは一定ではない。図9に示すタイムチャートにおいては、Tp1<Tpx、Tp2>Tpx、Tp3<Tpx、となっている。なお、反射面RPの数をNp、ポリゴンミラーPMの回転速度をVpとすると、時間Tpxは、Tpx=1/(Np×Vp)、で表される。例えば、回転速度Vpが3万rpm(=500rps)で、ポリゴンミラーPMの反射面RP数Npが8とすると、時間Tpxは、250μ秒となる。なお、図9では、説明をわかり易くするため、各原点信号SH1、SH2、SH3、・・・、の発生タイミングのずれを誇張して表している。
したがって、ポリゴンミラーPMの隣り合う反射面RP同士の各なす角ηjの誤差によって、各反射面RP(RPa~RPh)によって描画されるスポット光SPの基板FSの被照射面上の描画開始点(走査開始点)の位置が主走査方向にばらつく。これにより、描画終了点の位置も主走査方向にばらつく。つまり、各反射面RPによって描画されるスポット光SPの描画開始点および描画終了点の位置がX方向に沿って直線的にならない。このスポット光SPの描画開始点および描画終了点の位置が主走査方向にばらつく要因は、Tp1、Tp2、Tp3、・・・=Tpx、とならないからである。
そこで、本実施の形態では、図9に示すタイムチャートのように、1つのパルス状の原点信号SHが発生してから時間Tpx後を描画開始点として、スポット光SPの描画を開始する。つまり、原点信号SHが発生してから時間Tpx後に、制御装置18は、ビーム走査装置MD1にビームLB1を入射する光導入光学系BDU1の描画用光学素子AOM1に、画素データ列Dwの画素データに応じた駆動信号(オン/オフ)を順次出力する。これにより、原点信号SHの検出に用いた反射面RPbと実際にスポット光SPを走査する反射面RPとを同一の反射面にすることができる。
具体的に説明すると、制御装置18は、原点信号SH1が発生してから時間Tpx後に、光導入光学系BDU1の描画用光学素子AOM1に、画素データ列Dw1の画素データに応じた駆動信号を順次出力する。これにより、原点信号SH1の検出に用いた反射面RPbでスポット光SPを走査することができる。次に、制御装置18は、原点信号SH2が発生してから時間Tpx後に、光導入光学系BDU1の描画用光学素子AOM1に、画素データ列Dw2の画素データに応じた駆動信号を順次出力する。これにより、原点信号SH2の検出に用いた反射面RPcでスポット光SPを走査することができる。このように、原点信号SHの検出に用いた反射面RPを用いてスポット光SPの走査を行うことで、ポリゴンミラーPMの隣り合う反射面RP同士の各なす角ηjに誤差があった場合であっても、各反射面RP(RPa~RPh)によって描画されるスポット光SPの基板FSの被照射面上の描画開始点および描画終了点の位置が主走査方向にばらつくことを抑制することができる。
そのためには、ポリゴンミラーPMが45度回転する時間Tpxが、μ秒オーダーで正確であること、つまり、ポリゴンミラーPMの速度がむらなく精密に等速度で回転させる必要がある。そのように精密に等速度でポリゴンミラーPMを回転させた場合は、原点信号SHの発生に用いられた反射面RPは、常に、時間Tpx後には正確に45度だけ回転してビームLB1をfθレンズFTに向かって反射する角度になっている。したがって、ポリゴンミラーPMの回転等速性を高め、1回転中の速度ムラも極力低減させることで、原点信号SHの発生に用いられる反射面RPの位置とビームLB1を偏向してスポット光SPを走査するために用いられる反射面RPの位置とを異ならせることができる。これにより、原点センサ20の配置の自由度が向上し、剛性が高く安定な構成の原点センサを設けることができる。また、原点センサ20が検出対象とする反射面RPは、ビームLB1を偏向する反射面RPの回転方向の1つ手前としたが、ポリゴンミラーPMの回転方向の手前であればよく、1つ手前に限られない。この場合、原点センサ20が検出対象とする反射面RPを、ビームLB1を偏向する反射面RPの回転方向のn(1以上の整数)だけ手前にする場合は、原点信号SHが発生してからn×時間Tpx後に描画開始点を設定すればよい。
さらに、原点センサ20から発生する原点信号SH1、SH2、SH3、・・・、の各々に対して、描画開始点をn×時間Tpx後に描画開始点を設定することで、描画ラインSL1毎に対応した画素データ列の読み出し動作、データ転送(通信)動作、或いは補正計算等の処理時間に余裕が生じる。そのため、画素データ列の転送ミス、画素データ列の誤りや部分的な消失を確実に回避することができる。
なお、ポリゴンミラーPMの反射面RPの数Npを8とし、回転数(回転速度)Vpを3.6万rpm、走査効率をαp≦1/3、基板FS上でのスポット光SPの実効的な径φを3μm、描画ラインSL1の長さLBLを50mm、および、副走査方向(Xt方向)の描画ラインSL1のピッチ(間隔)YPをスポット光SPの径φに対するオーバーラップ率Uo(0<Uo<1)から、YP=φ・(1-Uo)にすると、描画ラインSL1上でのスポット光SPの1回の走査時間Tssは、Tss=αp×Tpx=αp×1/(Np×Vp)=1/1.44(m秒)、となる。スポット光SPの描画ラインSL1上での走査速度Vssは、Vss=LBL/Tss=720(m/秒)、となる。また、オーバーラップ率Uoが1/2の場合、つまり、スポット光SPをサイズφの1/2だけオーバーラップさせる場合は、基板FSの副走査速度(搬送速度)Vtは、Vt=YP/Tpx=φ×Np×Vp×(1-Uo)=7200μm/秒、となり、オーバーラップ率Uoが2/3の場合、つまり、スポット光SPをサイズφの2/3だけオーバーラップさせる場合は、Vt=4800μm/秒、となる。なお、詳しくは説明しないが、ビーム走査装置MD2~MD6にも、同様に原点センサ20が設けられている。
図10は、第2フレーム部Ub2によるビーム走査装置MDの保持構造を示す断面図である。なお、ビーム走査装置MDの保持構造は、各ビーム走査装置MDで同一であることから、ビーム走査装置MD1の保持構造についてのみ説明し、他のビーム走査装置MDの保持構造については説明を省略する。図10においても、図7と同様、Xt、Yt、Ztの3次元座標を用いて説明する。
ビーム走査装置MD1は、光学的な構成部材(反射ミラーM10~M15、ビームエキスパンダーBE、偏光ビームスプリッタBS1、像シフト光学部材SR、偏向調整光学部材DP、フィールドアパーチャFA、λ/4波長板QW、シリンドリカルレンズCYa、CYb、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、光学レンズ系G10、および、光検出器DT1)を図7のように支持するとともに、照射中心軸Le1の回りに回転可能な支持フレーム40を有する。支持フレーム40は、ビーム走査装置MD1内を通るビームLB1の光路に対応して、略U字状またはコ字状の形状を有する。支持フレーム40は、XtYt平面と平行であってZt方向に離れて略並行に配置された2枚の平行支持部42、44と、2枚の平行支持部42、44の一端を塞ぐ閉塞支持部46とを有する。閉塞支持部46は、平行支持部42、44の-Xt方向側に設けられている。ビーム走査装置MDの光学的な構成部材(反射ミラーM10、・・・ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、反射ミラーM15、シリンドリカルレンズCYb等)は、支持フレーム40の外周面に沿って配置されている。
図示は省略するが、反射ミラーM10、M11、ビームエキスパンダーBE、偏光ビームスプリッタBS1、光学レンズ系G10、および、光検出器DT1は、平行支持部42の+Zt方向側の面で支持されている。同様に図示は省略するが、像シフト光学部材SR、偏向調整光学部材DP、およびフィールドアパーチャFAは、閉塞支持部46の-Xt方向側の面で支持されている。さらに図示は省略するが、λ/4波長板QW、シリンドリカルレンズCYa、CYb、反射ミラーM14、M15、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、および、原点センサ20は、平行支持部44の-Zt方向側の面で支持されている。反射ミラーM12は、平行支持部42の+Zt方向側の面、または、閉塞支持部46の-Xt方向側の面で支持され、反射ミラーM13は、閉塞支持部46の-Xt方向側の面、または、平行支持部44の-Zt方向側の面で支持されている。支持フレーム40(特に、平行支持部44)は、ポリゴン駆動部RM(回転モータ)を支持することでポリゴンミラーPMを支持している。
2枚の平行支持部42、44の閉塞支持部46が設けられていない他端側には、描画装置の一部を構成する円筒(円管)状の支柱部材BX1が挿入された状態で設けられている。平行支持部42、44の各々と支柱部材BX1との間には、環状ベアリング48が介装されている。支柱部材BX1は、第2フレーム部Ub2に固定された状態で支持されている。したがって、支持フレーム40は、本体フレームUBの第2フレーム部Ub2に対して支柱部材BX1の回りに回転可能となる。なお、支柱部材BX1の中心軸は、照射中心軸Le1と同軸になるように、描画装置の一部である環状ベアリング48の外輪部は平行支持部42、44の各々に固定され、環状ベアリング48の内輪部は支柱部材BX1の外周面に固定される。2ヶ所の環状ベアリング48のうち、+Zt方向側の平行支持部42と支柱部材BX1の間の環状ベアリング48は、例えば、背面組合せのアンギュラ玉軸受で構成され、-Zt方向側の平行支持部44と支柱部材BX1の間の環状ベアリング48は深溝玉軸受で構成される。ビーム走査装置MD1(支持フレーム40を含む)は、全体の重心位置から+X(+Xt)方向に外れたところで支柱部材BX1によって、中心面Pocに対してθだけ傾いた状態(図1、図4)で支持される。このように、ビーム走査装置MD1は、照射中心軸Le1の位置に設けた支柱部材BX1(第2フレーム部Ub2)に片持ち方式で支持される。
ビーム走査装置MD1は、支持フレーム40を第2フレーム部Ub2に対して回転させる駆動機構50を有する。駆動機構50は、2枚の平行支持部42、44の間の空間に設けられている。これにより、ビーム走査装置MD1をコンパクトにすることができる。この駆動機構50を、図11も参照して詳しく説明する。駆動機構50は、リニアアクチュエータ52と、可動部材54と、被従動部材56と、バネ58、60とを有する。リニアアクチュエータ52、可動部材54、および、バネ58は、XtYt平面と平行な板状の駆動支持部材62の上に支持されている。この駆動支持部材62の+Xt方向の端部には、YzZt平面と平行に+Zt方向に板状に延設された鉛直部62aが一体に設けられる。鉛直部62aは、第2フレーム部Ub2のYtZt平面と平行な側面Ub2aに固定される。さらに、第2フレーム部Ub2の側面Ub2aには、円管状の支柱部材BX1の中心線が照射中心軸Le1と同軸になるように支柱部材BX1を嵌合保持するU字型の凹部Ubxが形成されている。凹部Ubx内に嵌合された支柱部材BX1は、駆動支持部材62の鉛直部62aと凹部Ubxとによって挟み込まれるようにして固定される。
被従動部材56は、支持フレーム40の閉塞支持部46の内面側(+Xt方向の側面)に固定された状態で支持されている。被従動部材56は、リニアアクチュエータ52の直線的な推力を受けて回動する可動部材54の一部と当接して、-Yt方向の力を受けるように構成される。これによって、ビーム走査装置MD1の全体が、支柱部材BX1(照射中心軸Le1)の回りに回転する。
その構成と動作をさらに詳しく説明する。リニアアクチュエータ52は、Xt方向に進退可能なロッド52aを有し、制御装置18の制御によって、ロッド52aをXt方向に進退させる。ロッド52aのXt方向の移動位置は高精度なリニアエンコーダ等によって計測され、その計測値は、制御装置18に送られる。可動部材54は、駆動支持部材62に設けられた回転軸54aを中心に回転可能である。可動部材54は、ロッド52aの先端のローラ52bと当接する第1接触部54bと、被従動部材56のXtZt平面と平行な端面部と当接するローラ(第2接触部)54cとを有する。引っ張りバネ58は、ロッド52aの先端のローラ52bと可動部材54の第1接触部54bとが常時当接するように、第1接触部54bを+Xt方向に付勢する。したがって、引っ張りバネ58の一端は駆動支持部材62に固定され、他端は可動部材54の第1接触部54bの近傍に固定されている。引っ張りバネ60は、可動部材54に回転自在に軸支されたローラ(第2接触部)54cと、被従動部材56のXtZt平面と平行な端面部とが常時当接するように、可動部材54のローラ54cを被従動部材56側に引き寄せるような付勢力を発生する。したがって、引っ張りバネ60の一端は可動部材54のローラ54cの軸部に固定され、他端は被従動部材56に固定されている。
リニアアクチュエータ52のロッド52aがXt方向の移動ストロークの中点位置にある状態のとき、ローラ52bと当接する可動部材54の第1接触部54bの接触面と、ローラ54cと当接する被従動部材56の前記端面部の接触面とは、XtYt平面内で直交するように設定される。また、図11のように、リニアアクチュエータ52のロッド52aが中立位置にあるとき、照射中心軸Le1を通ってXt軸と平行な線分Pmcを設定すると、XtYt平面内においてビーム走査装置MD1の重心点はほぼ線分Pmc上にくるように設定される。さらに、可動部材54の回転軸54aとローラ54cの軸も、線分Pmc上に位置するように配置される。
リニアアクチュエータ52がロッド52aを図11の中立位置から-Xt方向に移動すると、可動部材54の第1接触部54bがバネ58の付勢力に抗してロッド52aの先端のローラ52bによって押圧されるので、回転軸54aを中心に可動部材54が、図11の紙面において反時計回りに回転する。これにより、可動部材54のローラ54cが被従動部材56を-Yt方向に押圧する。したがって、ビーム走査装置MD1(支持フレーム40)の閉塞支持部46側は、照射中心軸Le1を中心に-Yt方向側に回転(-θzt回転とも呼ぶ)する。また、リニアアクチュエータ52が、図11の中立位置からロッド52aを+Xt方向に移動すると、バネ58の付勢力によって可動部材54の第1接触部54bがローラ52bとの当接状態を保って+Xt方向側に移動する。これによって、可動部材54が回転軸54aを中心に図11の紙面において時計回りに回転し、可動部材54のローラ54cが+Yt方向に移動する。このとき、バネ60の付勢力によって被従動部材56がローラ54cとの当接状態を保って+Yt方向に移動する。したがって、ビーム走査装置MD1の閉塞支持部46側は、照射中心軸Le1を中心に+Yt方向側に回転(+θzt回転とも呼ぶ)する。
本実施の形態では、可動部材54の回転軸54aから第1接触部54bまでの距離が、可動部材54の回転軸54aからローラ54cの軸までの距離よりも長く設定されるので、リニアアクチュエータ52のロッド52aのXt方向の移動量が縮小されて、被従動部材56のYt方向の移動量となる。さらに、ビーム走査装置MD1の機械的な回転中心である円管状の支柱部材BX1の中心線(照射中心軸Le1)から、回転駆動力が付与される被従動部材56までの距離が長く取れるので、リニアアクチュエータ52のロッド52aの単位移動量に対するビーム走査装置MD1の回転角度量を十分に小さくすることができ、ビーム走査装置MD1の回転角度設定を高い分解能(μrad)で制御できる。
以上の図10(或いは図4)に示した構成のように、各ビーム走査装置MD1~MD6は、装置本体(第2フレーム部Ub2)に対して、円管状の支柱部材BX1と環状ベアリング48とによって、各照射中心軸Le1~Le6と同軸に回転可能に軸支される。したがって、各ビーム走査装置MD1~MD6は、基板FS上に形成される各描画ラインSL1~SL6の直上付近で装置本体に保持され、各ビーム走査装置MD1~MD6の閉塞支持部46側は機械的に拘束されないような構成(装置本体や本体フレームUB等に強固に締結されない状態)になっている。
そのため、仮に各ビーム走査装置MD1~MD6の構造体となる支持フレーム40(特に2枚の平行支持部42、44)が温度変化等によって熱膨張した場合でも、各ビーム走査装置MD1~MD6は、図10、図11中では主に-Xt方向(閉塞支持部46側)に熱膨張することになるので、各描画ラインSL1~SL6が回転ドラムDRの外周面に沿った方向に変動することが抑制される。すなわち、図3中に示した奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5と偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6とのX方向の間隔を、温度変化による構造体の熱変形に関らず、ミクロンオーダーで一定距離に保てるといった利点もある。さらに、各ビーム走査装置MD1~MD6を支持する第2フレーム部Ub2や支柱部材BX1を、低熱膨張係数の金属材料(インバー等)やガラスセラミックス材料(商品名:ゼロデュア等)とすることで、さらに熱的に安定な構造にすることができる。
したがって、本実施の形態では、図10(或いは図4)に示した円管状の支柱部材BX1と環状ベアリング48が、支持フレーム40(すなわち、ビーム走査装置MD全体)を装置本体である第2フレーム部Ub2に対して照射中心軸Le(Le1~Le6)の回りに回転可能に支持する回転支持機構に相当する。併せて、本実施の形態では、図10に示した上下2ヶ所の環状ベアリング48が、支持フレーム40(すなわち、ビーム走査装置MD全体)の装置本体(第2フレーム部Ub2)への支持部分を照射中心軸Le(Le1~Le6)から所定の半径(ここでは環状ベアリング48の外周の半径)内の領域に制限して、支持フレーム40を装置本体に結合するための結合部材に相当する。なお、図10のような構造において、支持フレーム40(ビーム走査装置MD全体)を装置本体(第2フレーム部Ub2)に対してθzt回転させる必要が無く、支持フレーム40を第2フレーム部Ub2に強固に結合してよい場合は、環状ベアリング48を省略して円管状の支柱部材BX1の上端部を平行支持部42に結合し、支柱部材BX1の下端部を平行支持部44に結合すればよい。この場合も、照射中心軸Le(Le1~Le6)から所定半径を有する円管状の支柱部材BX1が結合部材として機能する。
図12は、図4(または図10、図11)で示した第2フレーム部Ub2に、支柱部材BX1と駆動支持部材62とが取り付けられる様子を示す斜視図である。第2フレーム部Ub2はY方向に延設された角柱状の部材であり、その-X方向の側面Ub2aと+X方向の側面Ub2bは、それぞれYZ平面に対して角度±θ(図4参照)だけ傾くように形成されている。第2フレーム部Ub2の側面Ub2aには、Zt方向に延びる奇数番の照射中心軸Le1、Le3、Le5の各々と同軸になるように、円管状の支柱部材BX1が嵌入するU字型の凹部Ubxが、側面Ub2aの上下を貫通するように形成されている。同様に、第2フレーム部Ub2の側面Ub2bにも、Zt方向に延びる偶数番の照射中心軸Le2、Le4、Le6の各々と同軸になるように、円管状の支柱部材BX1が嵌入するU字型の凹部Ubxが、側面Ub2bの上下を貫通するように形成されている。そして、駆動支持部材62と一体化された鉛直部62a(図10、図11参照)は、第2フレーム部Ub2の側面Ub2a、Ub2bに形成された凹部Ubxの各々をふさぐように、側面Ub2a、Ub2bに固定される。このような構造の第2フレーム部Ub2は、回転ドラムDR、アライメント顕微鏡ALG1~ALG4等を支持する露光装置EXの本体フレーム(本体コラムBFa、BFb)上に設置するための第3フレーム部Ub3に結合される。
図13は、図12で示した第3フレーム部Ub3を露光装置EXの本体コラムBFa、BFbに取り付ける構造を示す斜視図である。先の図4では、第2フレーム部Ub2が本体フレームUBの第1フレーム部Ub1の下部に懸架状態で設けられているが、ここでは第2フレーム部Ub2を本体フレームUBの一部であって、回転ドラムDRを軸支する本体コラムBFa、BFbに載せるようにした。第3フレーム部Ub3は、図4中の本体フレームUBの第2フレーム部Ub2を中央に固設するY方向に延設された角柱状の水平部と、Y方向の両端の各々でZ方向に延設された角柱状の脚部とで構成される門型構造を有する。第3フレーム部Ub3の両側の脚部は、Y方向に間隔をあけて設置される露光装置EXの本体コラムBFa、BFb(本体フレームUBとも結合されている)上に支持される。本体コラムBFa、BFbは、図12では図示を省略してあるが、図2または図4に示した回転ドラムDRのY方向の両端に突出したシャフトSftを、第2フレーム部Ub2から一定距離だけ-Z方向に離れた位置でベアリングを介して軸支する。なお、本体コラムBFa、BFbの上端面は、Y方向に一定の幅(例えば5cm以上)を有するように形成されている。
第3フレーム部Ub3の一方の脚部、ここでは+Y方向側の脚部は、本体コラムBFa上に台座500を介して固設されるが、Z方向に長めに形成した第3フレーム部Ub3の+Y方向側の脚部を、直接、本体コラムBFa上に固設してもよい。第3フレーム部Ub3の-Y方向側の脚部の下端面には、Y軸と平行な稜線となるようなV字状の溝が形成されたコマ部材501が固定され、本体コラムBFbの上面には、コマ部材501のV字溝に嵌合する鋼球502がその位置で転動可能に支持されている。したがって、コマ部材501と鋼球502は、V字溝に沿ったY方向のみに相対移動する自由度を持つ。さらに、第3フレーム部Ub3の-Y方向側の脚部の側面の突出部Ub4と本体コラムBFbとの間には、コマ部材501のV字溝が常に鋼球502に当接するような付勢力を与える引っ張りバネ503が設けられ、第3フレーム部Ub3(および第2フレーム部Ub2)を-Z方向に付勢する。
本実施の形態の場合、第2フレーム部Ub2には、同一構造の6つのビーム走査装置MD1~MD6が、中心面Poc(図4、図5参照)に関して左右対称に3つずつ設けられるため、6つのビーム走査装置MD1~MD6で構成される露光ヘッド16全体の重心点は、X方向に関しては、中心面Pocに近い位置にある。したがって、露光ヘッド16全体の荷重を支える第3フレーム部Ub3の脚部には、X方向に傾いた方向の応力が発生し難く、第3フレーム部Ub3および第2フレーム部Ub2の変形発生を抑えられるので、露光ヘッド16全体を所定の位置に安定的に保持することができる。
さらに、本体コラムBFa、BFbを、高価な低熱膨張係数の金属ではなく、一般的な鉄鋳造材料、軽金属(アルミ)等で構成した場合、本体コラムBFa、BFbの各々の上端部のY方向の距離が、環境温度の変化や発熱部品(モータ、AOM、電気基板等)の影響を受けて、数ミクロン程度の範囲で変動することが考えられる。或いは、回転ドラムDRのシャフトSftの僅かの偏心、シャフトSftに接続されるモータや減速機の軸ブレ、シャフトSftを軸支するベアリングの取付け具合等によって、回転ドラムDRの回転周期に合わせて、本体コラムBFa、BFbにY方向の応力が発生し、本体コラムBFa、BFbのY方向の間隔が数ミクロン程度の範囲で変動する場合もある。そのような本体コラムBFa、BFbの変動があった場合でも、図13のように、Y方向に自由度を持たせたコマ部材501と鋼球502とで第3フレーム部Ub3および第2フレーム部Ub2を支持しているので、そのような変動があっても、第3フレーム部Ub3および第2フレーム部Ub2を変形させるおそれが回避される。
先に説明したように、ビーム走査装置MD1~MD6は、それぞれ図7で示した光検出器DT1と回転ドラムDRの表面に形成された基準パターンとを使って、描画ラインSL1~SL6の傾斜角度(傾斜誤差)を自己計測することができる。そこで、制御装置18は、計測した各描画ラインSLn(SL1~SL6)の傾斜角度に基づいて、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)のリニアアクチュエータ52を駆動させることができる。これにより、各描画ラインSLn(SL1~SL6)を相対的に平行にする、若しくは、各描画ラインSLn(SL1~SL6)を回転ドラムDRの中心軸AXoと平行にすることができる。また、制御装置18は、アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)を用いて検出した基板FS上のアライメントマークMK(MK1~MK4)の位置に基づいて、回転ドラムDRに巻き付けられている基板FSの歪み、若しくは、露光領域Wの歪みを検出し、それに応じて各ビーム走査装置MD(MD1~MD4)のリニアアクチュエータ52を駆動させてもよい。これにより、下層に形成されたパターンと新たに露光する所定のパターンとの重ね合わせ精度が向上する。
図14は、露光ヘッド16によって所定のパターンが露光される露光領域Wの歪みの状態を示す図である。露光領域Wの歪みは、回転ドラムDRに巻き付けられて搬送される基板FSが歪んでいることによって発生する。また、基板FSが歪んでいなくても、下層のパターン層の形成時に、基板FSが歪んで搬送されたことによって基板FSの露光領域W自体が歪むこともある。
図14に示すように、露光領域Wが歪んでいるため、形成されたアライメントマークMK(MK1~MK4)の位置の配列も直線的ではなく、歪んだ状態となっている。なお、点線で示す露光領域W´は、歪みが殆どない理想の露光領域を示している。制御装置18は、アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)を用いて検出した基板FS上のアライメントマークMK(MK1~MK4)の位置に基づいて、露光領域Wの歪みを推定し、露光領域Wの歪みの状態に合わせて、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)のリニアアクチュエータ52を駆動させる。なお、露光領域Wに対して描画ラインSL1~SL6による描画露光が開始された直後においては、図3で示したアライメント顕微鏡ALG1~ALG4の各観察領域Vw1~Vw4より+X方向側にあるアライメントマークMK2、MK3の位置は検出できているが、各観察領域Vw1~Vw4より上流側(-X方向側)に位置するアライメントマークMK2、MK3の位置は、基板FSが送られて描画露光が進行していかないとできない。したがって、制御装置18は、例えば、基板FSの長尺方向に並んだ1つ手前の露光領域Wの周囲に付随したアライメントマークMK1~MK4の各位置の検出結果から求めた歪み量および歪み傾向から、現在パターンを露光する露光領域Wの歪みを推定してもよい。
このように、本実施の形態においては、描画ラインSLnの中点(特定点)を基板FSの被照射面に対して垂直に通る照射中心軸Leの回りに、ビーム走査装置MDを高精度に回転させることができるので、描画ラインSLnの傾きを簡単に且つ精密に調整することができる。このように、描画ラインSLnは、描画ラインSLnの中点を中心に、基板FSの被照射面上で回転することになるので、描画ラインSLnのX(Xt)方向、Y(Yt)方向の位置変動を最小限にしつつ、描画ラインSLnの傾きを簡単に調整することができる。例えば、描画ラインSLnとは離れた位置を中心点として描画ラインSLnを回転させると、その中心点を中心として円弧を描くように描画ラインSLnの位置が大きく移動してしまうが、本実施の形態では、描画ラインSLnの両端(走査開始点と走査終了点)の各位置変動を最小限にすることができる。つまり、描画ラインSLnの傾き調整による両端の位置変動は、描画ラインSLnの中点に対して対称となる。
また、特許文献1のような複雑な傾き調整を行う必要がないので、傾き調整に起因して主走査方向と副走査方向の位置ずれが生じることもない。描画ラインSLnの傾きを調整しても、ビーム走査装置MDのシリンドリカルレンズCYbと基板FSの被照射面との距離は一定なので、特許文献1のように複雑な傾き調整を行う必要がなく、傾き調整に起因して主走査方向の倍率ずれが生じることもない。
なお、照射中心軸Leは、描画ラインSLn上の任意の点(特定点)を基板FSの被照射面に対して垂直に通る軸であってもよい。この場合は、描画ラインSLnは、描画ラインSLn上の任意の点を中心に回転することになるが、中心点を描画ラインSLnとは離れた位置に設定する場合に比べ、描画ラインSLnの位置変動(横シフト)を小さくすることができる。
さらに本実施の形態では、描画ラインSLnの中点を垂直に通る照射中心軸Leと略同軸となるように、ビーム走査装置MDの反射ミラーM10にビームLBを入射させるので、ビーム走査装置MDが照射中心軸Le回りにθzt回転した場合であっても、反射ミラーM10上に入射するビームLBの位置は変わらない。したがって、ビーム走査装置MDをθzt回転させた場合であっても、ビーム走査装置MD内を通るビームLBの光路は変わらず、ビームLBは、ビーム走査装置MD内を規定通り正しく通過する。これにより、ビーム走査装置MDをθzt回転させても、ビームLB1のけられ等によってスポット光SPが基板FSに被照射面に投射されなかったり、傾き調整後の描画ラインSLnから外れた位置にスポット光SPが投射されるといった問題が生じない。
ビーム走査装置MDの支持フレーム40によって、光学的な構成部材(反射ミラーM10~M15、シリンドリカルレンズCYa、CYb、ポリゴンミラーPM、および、fθレンズFT等)が支持され、支持フレーム40は、第2フレーム部Ub2に対して回転可能に支持されている。そして、第2フレーム部Ub2に支持されたリニアアクチュエータ52を電気的に制御することができるので、検出されたアライメントマークMKの位置や、計測した描画ラインSLnの固有の傾きに応じて、描画ラインSLnの傾きを電気的に自動で調整することができる。
ところで、図7に示したビーム走査装置MD(MD1~MD6)の光学構成では、描画ラインSLn(SL1~SL6)の回転中心を描画ラインSLnの中点に設定したが、それに限られるものではなく、描画ラインSLn上であれば、中点からずれていてもよい。具体的には、図7(および図10、図11)の構成において、例えば、光軸AXaに沿って配置される反射ミラーM10、ビームエキスパンダーBE、反射ミラーM11、および円管状の支柱部材BX1(および環状ベアリング48)を、図7(図11)の位置から+Yt方向に平行移動させればよい。
[変形例]
上記実施の形態は、以下のような変形も可能である。
(変形例1)図15は、変形例1におけるビーム走査装置MDの光学的な構成を示す図である。図7と同様の構成については同一の参照符号を付し、その説明を省略する。なお、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は、同一の構成を有することから、ビーム走査装置MD1についてのみ説明し、他のビーム走査装置MDについては説明を省略する。
ビーム走査装置MD1は、反射ミラーM10、ビームエキスパンダーBE、反射ミラーM20、ビームスプリッタBS2、反射ミラーM21、偏光ビームスプリッタBS3、λ/4波長板QW、反射ミラーM22~M24、シリンドリカルレンズCYa、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、反射ミラーM15、シリンドリカルレンズCYb、光検出器DT1、および、位置検出器DT2を有する。なお、図15では、像シフト光学部材SRと偏向調整光学部材DPとを省略してある。
ビーム走査装置MD1に入射するビームLB1は、-Zt方向に向けて進み、反射ミラーM10に入射する。このビーム走査装置MD1に入射するビームLB1は、照射中心軸Le1と同軸になるように反射ミラーM10に入射する。入射光学部材として機能する反射ミラーM10は、入射したビームLB1を反射ミラーM20に向けて-Xt方向に反射する。反射ミラーM10で反射したビームLB1は、ビームエキスパンダーBEを透過して反射ミラーM20に入射する。
反射ミラーM20は、入射したビームLB1を反射ミラーM21に向けて-Zt方向に反射する。反射ミラーM20を反射したビームLB1は、ビームスプリッタBS2に入射する。ビームスプリッタBS2は、入射したビームLB1の一部を反射ミラーM21に向けて透過し、入射したビームLB1の残部を位置検出器DT2に向けて反射する。ビームスプリッタBS2は、反射するビームLB1の光量よりも多くの光量を反射ミラーM21に向けて透過する。例えば、透過する光量と反射する光量との比は9対1である。
反射ミラーM21は、入射したビームLB1を反射ミラーM22に向けて+Xt方向に反射する。反射ミラーM21を反射したビームLB1は、偏光ビームスプリッタBS3およびλ/4波長板QWと透過して反射ミラーM22に入射する。偏光ビームスプリッタBS3は、P偏光のビームを透過し、S偏光のビームLB1と反射する。ビーム走査装置MD1に入射するビームLB1は、P偏光のビームなので、偏光ビームスプリッタBS3は、反射ミラーM21からのビームLB1を反射ミラーM22に向けて透過する。
反射ミラーM22~M24によって光路が折り曲げられたビームLB1は、シリンドリカルレンズCYaを通過してポリゴンミラーPMに入射する。シリンドリカルレンズCYaの母線はXtYt平面と平行に設定され、ビームLB1は、Zt軸と平行な回転軸を有するポリゴンミラーPMの反射面RP上にXtYt平面と平行な方向にスリット状に延びて集光される。ポリゴンミラーPMは、入射したビームLB1を偏向してfθレンズFTに向けて+Xt方向側に反射する。ポリゴンミラーPMは、ポリゴン駆動部(モータ)RMによって一定の速度で回転する。Xt軸方向に延びる光軸AXfを有するfθレンズFTは、反射ミラーM15およびシリンドリカルレンズCYbを介して、その入射角に比例した基板FSの被照射面上の像高位置にビームLB1のスポット光SPを投射する。反射ミラーM15は、入射したビームLB1を、シリンドリカルレンズCYbを介して基板FSに向けて-Zt方向に反射する。
fθレンズFTおよび母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYbによって、基板FSに投射されるビームLB1が基板FSの被照射面上で直径数μm程度(例えば、3μm)の微小なスポット光SPに収斂される。ここでも、少なくともfθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって偏向されたビームLB1を基板FSの被照射面に投射する投射光学系として機能する。また、少なくとも反射部材(反射ミラーM15、M20~M24)は、反射ミラーM10から基板FSまでのビームLB1の光路を折り曲げる光路偏向部材として機能する。この光路偏向部材によって、反射ミラーM10に入射するビームLB1の入射軸と、描画ラインSL1の中点をZt方向に通る照射中心軸Le1とを略同軸にすることができる。
回転ドラムDR(または基板FS)からの反射光は、シリンドリカルレンズCYb、反射ミラーM15、fθレンズFT、ポリゴンミラーPM、シリンドリカルレンズCYa、反射ミラーM24~M22、および、λ/4波長板QWを通過して偏光ビームスプリッタBS3に入射する。ここで、偏光ビームスプリッタBS3と基板FSとの間、具体的には、偏光ビームスプリッタBS3と反射ミラーM22との間に設けられたλ/4波長板QWにより、基板FSに照射されるビームLB1はP偏光から円偏光のビームLB1に変換され、基板FSから偏光ビームスプリッタBS3まで戻ってくる円偏光の反射光は、このλ/4波長板QWによって、円偏光からS偏光のビームLB1に変換される。したがって、基板FSからの反射光は偏光ビームスプリッタBS3を反射して光検出器DT1に入射する。これにより、上記実施の形態と同様の手法で、ビーム走査装置MD1の描画ラインSL1の固有の傾きを検出することができる。
また、位置検出器DT2は、入射したビームLB1の中心位置を検出するものであり、例えば、4分割センサが用いられる。この4分割センサは、4つのフォトダイオード(光電変換素子)を有し、4つのフォトダイオードの各々が受光した受光量の差(信号レベルの差分)を用いて、ビームLB1の進行方向と直交するXtZt平面において、ビームLB1の中心位置を検出する。これにより、ビームLB1が所望の位置に対してずれているか否かを判断することができる。反射ミラーM10とビームスプリッタBS2との間に、上記実施の形態で説明した像シフト光学部材SRや偏向調整光学部材DPを設けてもよい。これにより、制御装置18は、位置検出器DT2の検出結果に基づいて、ビームLB1の中心位置や傾きを調整することができる。
(変形例2)図16は、変形例2におけるビーム走査装置MDの光学的な構成を示す図である。図16においては、図7または図15と異なる部分についてのみ図示しており、ポリゴンミラーPMより反射ミラーM10側の光学系については図示を省略している。図7または図15と同様の構成については同一の参照符号を付し、その説明を省略する。なお、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は、同一の構成を有することから、ビーム走査装置MD1についてのみ説明し、他のビーム走査装置MDについては説明を省略する。
ビーム走査装置MD1は、照射中心軸Le1を中心(描画ラインSL1の中点を中心)に描画ラインSL1を回転させる像回転光学系IRを有する。像回転光学系IRは、照射中心軸Le1の回りを回転することで、描画ラインSL1を回転させる。像回転光学系IRは、シリンドリカルレンズCYbと基板FSの被照射面との間に設けられている。この像回転光学系IRとして、例えば、イメージローテータを用いることができる。シリンドリカルレンズCYbから像回転光学系IRに入射するビームLB1の走査軌跡の中点を通るビームLB1の入射軸は、照射中心軸Le1と略同軸となるように像回転光学系IRが設けられている。これにより、像回転光学系IRは、照射中心軸Le1を中心に描画ラインSL1を回転させることができる。この像回転光学系IRは、制御装置18によって制御される図示しないアクチュエータ(駆動部)によって、照射中心軸Le1の回りを回転する。
この像回転光学系IRは、図示しないが、例えば、図10に示した支持フレーム40の平行支持部44の一部に回転可能に支持させることができる。したがって、支持フレーム40(ビーム走査装置MD1)が照射中心軸Le1の回りに回転可能な構造になっていなくても、像回転光学系IRを照射中心軸Le1の回りに回転することで、描画ラインSL1の傾きを調整することができる。また、支持フレーム40(ビーム走査装置MD1)を照射中心軸Le1の回りに回転可能な構成にするとともに、像回転光学系IRも支持フレーム40(ビーム走査装置MD1)に対して独立して照射中心軸Le1の回りにθzt回転するようにしてもよい。
このように、ビーム走査装置MD1の照射中心軸Le1回りの回転の他に、像回転光学系IRを単独で照射中心軸Le1回りに回転させることができるので、例えば、像回転光学系IRで描画ラインSL1の傾きの粗調整を行った後、ビーム走査装置MD1全体の回転で描画ラインSL1の傾きの微調整を行うことができる。したがって、描画ラインSL1の傾き調整の精度を向上させることができる。なお、照射中心軸Le1が、描画ラインSL1上の任意の点を基板FSの被照射面に対して垂直に通る軸である場合は、それに対応して照射中心軸Le1は、シリンドリカルレンズCYbから像回転光学系IRに入射するビームLB1の走査軌跡の任意の点を通るようにしてもよい。
(変形例3)上記変形例2においては、ビーム走査装置MD(MD1~MD6)を照射中心軸Le(Le1~Le6)回りに回転させるようにしたが、ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は、照射中心軸Le(Le1~Le6)の回りを回転しなくてもよい。この場合、第2フレーム部Ub2は、ビーム走査装置MD(MD1~MD6)の支持フレーム40を回転不能に固定した状態で保持してもよい。ビーム走査装置MD(MD1~MD6)が照射中心軸Le(Le1~Le6)の回りに回転しなくても、図16に示した像回転光学系IRによって、描画ラインSLn(SL1~SL6)を、照射中心軸Le(Le1~Le6)を中心に回転させることができるからである。
(変形例4)図17A、図17Bは、変形例4におけるビーム走査装置MDの光学的な構成を示す図である。図17A、図17Bにおいては、図7と同様の構成については同一の参照符号を付し、その説明を省略する。なお、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は、同一の構成を有することから、ビーム走査装置MD1についてのみ説明し、他のビーム走査装置MDについては説明を省略する。また、図17Aは、本変形例4のビーム走査装置MD1をXtZt平面と平行な面内でみたものであり、図17Bは、本変形例4のビーム走査装置MD1をYtZt平面と平行な面内でみたものである。
ビーム走査装置MD1は、シリンドリカルレンズCYa、反射部材RF、fθレンズFT、ポリゴンミラーPM、および、シリンドリカルレンズCYbを有する。ビーム走査装置MD1に-Zt方向に進んで入射するビームLB1は、描画ラインSL1の中点をZt軸と平行に通る照射中心軸Le1と同軸になるように設定される。本変形例4では、ビームLB1の光路中のビーム走査装置MD1の手前にレンズ系GLaが設けられ、基板FSの表面と光学的に共役な面CjpでビームLB1がスポット光に集光される。共役面Cjpで集光したビームLB1は等方的に発散しながら、照射中心軸Le1に沿ってシリンドリカルレンズCYaに入射する。シリンドリカルレンズCYaは、Xt方向に屈折力を有するように、母線がYt軸と平行になるように設定される。また、シリンドリカルレンズCYaを透過した直後のビームLB1は、Xt方向に関してはほぼ平行光束に収束され、Yt方向に関しては発散した状態のまま-Zt方向に進む。
反射部材RFの上側の反射面Rf1(XtYt平面に対して45°傾斜)は、シリンドリカルレンズCYaを介して入射したビームLB1が、fθレンズFTの光軸AXfよりも上側の視野領域に光軸AXfと平行に入射するように、ビームLB1を-X方向に反射する。fθレンズFTの上側(+Zt方向側)の視野領域を透過したビームLB1は、ポリゴンミラーPMの反射面RP(Zt軸と平行)に入射する。ポリゴンミラーPMの反射面RPは、Zt方向に関しては、光軸AXfと同じ高さ位置に設置され、fθレンズFTの瞳面epfの位置またはその近傍の位置に設定される。そのために、ポリゴンミラーPMの回転軸AXpとfθレンズFTの光軸AXfとは、XtZt平面と平行な面内で直交するように設定されている。シリンドリカルレンズCYaとfθレンズFTとによって、ポリゴンミラーPMに入射するビームLB1は、ポリゴンミラーPMによる走査方向(回転方向)と直交する非走査方向(Zt方向)に関して反射面RP上で収斂し、反射面RP上にYt軸と平行な方向に延びたスリット状の分布となって投射される。
ポリゴンミラーPMの反射面RPがZt軸と平行(XtZt平面内では光軸AXfと垂直)であるため、fθレンズFTの光軸AXfよりも上側(+Zt方向側)の視野領域を通ってポリゴンミラーPMの反射面RPに達し、そこで+Xt方向側に反射されるビームLB1は、fθレンズFTの光軸AXfよりも下側(-Zt方向側)の視野領域を通って、反射部材RFの下側の反射面Rf2(XtYt平面に対して45°傾斜)に向かう。したがって、ポリゴンミラーPMに入射するビームLB1の光路と、ポリゴンミラーPMで反射するビームLBの光路は、XtZt平面内では、光軸AXfに関して対称になる。反射部材RFの下側の反射面Rf2で反射されて-Zt方向に進むビームLB1は、母線がYt方向と平行で、Xt方向に屈折力を有するシリンドリカルレンズCYbを通って、基板FS上でスポット光SPとなるように収斂される。
図17A、図17Bに示す変形例4におけるビーム走査装置MD1の構成において、共役面Cjpから基板FS(被照射面)までのビームLB1の光路は、ポリゴンミラーPMの反射面RP(瞳面epf)に関して対称的な系となっているため、基板FS上に投射されるスポット光SPは、共役面Cjpに集光されたビームLB1のスポット光の像として結像されたものとなる。したがって、ポリゴンミラーPMの1つの反射面RPが光軸AXfと正確に直交するような角度になった場合、fθレンズFTからポリゴンミラーPMの反射面RPに入射するビームLB1と、そのビームLB1が反射面RPで反射してfθレンズFTに入射するビームLB1とは、XtYt平面内では、同一の光路を通ることになる。この場合、反射部材RFの下側の反射面Rf2に照射されるビームLB1は、反射面Rf2のYt方向の中央部になり、基板FSに投射されるビームLB1のスポット光SPは、描画ラインSL1上の中点(照射中心軸Le1が通る点)に位置する。
ポリゴンミラーPMの回転軸AXpを中心とする回転によって、ポリゴンミラーPMの反射面RPがXtYt平面内で光軸AXfと垂直な状態から僅かに傾くと、ポリゴンミラーPMの反射面RPで反射されて、fθレンズFTを通って反射部材RFの下側の反射面Rf2に達するビームLB1は、ポリゴンミラーPMの回転に応じて反射面Rf2上でYt方向にシフトする。これにより、図17A、図17Bに示す変形例4のビーム走査装置MD1でも、描画ラインSL1に沿ってスポット光SPを1次元走査することができる。なお、図17A、図17Bの構成では、反射部材RFの上側の反射面Rf1と下側の反射面Rf2とは描画ラインSL1に沿ったビームLB1の走査範囲をカバーするように、Yt方向に細長く形成されているが、反射面Rf1と反射面Rf2を別々の平面ミラーで構成する場合は、上側の反射面Rf1を形成する平面ミラーは、Yt方向の寸法をレンズ系GLaから入射するビームLB1の径をカバーする程度に小さくしてもよい。
シリンドリカルレンズCYaは、ビームLB1をビーム走査装置MD1に入射させる入射光学部材として機能する。fθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって偏向されたビームLB1を基板FSの被照射面に投射する投射光学系として機能する。また、少なくとも、反射部材RFの反射面Rf1と反射面Rf2は、シリンドリカルレンズCYaから基板FSまでのビームLB1の光路を折り曲げる光路偏向部材として機能する。この光路偏向部材によって、シリンドリカルレンズCYaに入射するビームLB1の入射軸と照射中心軸Le1とを略同軸にすることができる。
また、図17A、図17Bに示すビーム走査装置MD1の光学的な構成部材(シリンドリカルレンズCYa、CYb、反射部材RF、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT等)は、図10、図11に示した支持フレーム40と同様に、照射中心軸Le1を中心として回転可能な支持フレームに支持される。変形例4の構成においても、ビーム走査装置MD1が照射中心軸Le1回りにθzt回転しても、シリンドリカルレンズCYaに入射するビームLBの位置は変わらない。したがって、ビーム走査装置MD1をθzt回転させた場合であっても、ビーム走査装置MD1内を通るビームLBの光路は変わらず、ビームLBは、ビーム走査装置MD1内を規定通り正しく通過する。これにより、ビーム走査装置MD1をθzt回転させても、ビームLB1のけられ等によってスポット光SPが基板FSの表面(被照射面)に投射されなかったり、傾き調整後の描画ラインSLnから外れた位置にスポット光SPが投射されるといった問題が生じない。
(変形例5)図18A、図18Bは、変形例5におけるビーム走査装置MDの光学的な構成を示す図である。図18A、図18Bにおいては、図17A、図17Bと同様の構成については同一の参照符号を付し、その説明を省略する。なお、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は、同一の構成を有することから、ビーム走査装置MD1についてのみ説明し、他のビーム走査装置MDについては説明を省略する。また、図18Aは、本変形例5のビーム走査装置MD1をXtYt平面と平行な面内でみたものであり、図18Bは、本変形例5のビーム走査装置MD1をYtZt平面と平行な面内でみたものである。
変形例5によるビーム走査装置MD1は、図17A、図17Bに示す変形例4によるビーム走査装置MD1に対して、照射中心軸Le1を描画ラインSL1の中点の位置から+Yt方向に平行移動させた点が異なる。そのために、ビーム走査装置MD1に入射する前のビームLB1を共役面Cjpに集光するレンズ系GLaと、シリンドリカルレンズCYaとが一体に+Yt方向に平行移動して配置される。変形例5の場合、ポリゴンミラーPMが時計回りに回転すると、ポリゴンミラーPMの反射面RPで反射されて、fθレンズFTを通って反射部材RFの下側の反射面Rf2に照射されるビームLB1は、-Yt方向に走査される。
このように、先の図17A、図17Bに示す変形例4の構成を、図18A、図18Bに示す変形例5のように変えても、照射中心軸Le1の延長線を描画ラインSL1上の任意の点(特定点)を通るように設定し、ビーム走査装置MD1を照射中心軸Le1の回りにθzt回転させるとともに、ビーム走査装置MD1(シリンドリカルレンズCYa)に入射するビームLB1を照射中心軸Le1と同軸に設定することによって、ビーム走査装置MD1をθzt回転させたとしても、スポット光SPを描画ラインSL1に沿って正確に走査することができる。また、図18A、図18Bに示す構成から明らかであるが、ビーム走査装置MD1(シリンドリカルレンズCYa)に入射するビームLB1のXtYz平面内での位置は、描画ラインSL1に沿った位置であれば、Yt方向のどの位置であってもよい。したがって、シリンドリカルレンズCYaの母線方向の寸法を延ばしておけば、ビーム走査装置MD1(シリンドリカルレンズCYa)に入射するビームLB1のXtYz平面内での位置を自由に変更でき、ビームLB1の導光路の設定の自由度が上がるといった利点がある。さらに、ビーム走査装置MD1(シリンドリカルレンズCYa)に入射するビームLB1のXtYz平面内での位置を、Yt方向に関しては自由に設定できるので、ビーム走査装置MD1の機械的な回転中心軸(照射中心軸Le1)と入射するビームLB1の軸線との同軸性を、Yt方向に関しては高精度に一致させることができる。
(変形例6)図19、図20は、変形例6におけるビーム走査装置MDの光学的な構成を示す図である。図19、図20においては、図7と同様の構成については同一の参照符号を付し、その説明を省略する。なお、各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)は、同一の構成を有することから、ビーム走査装置MD1についてのみ説明し、他のビーム走査装置MDについては説明を省略する。また、図7においては、fθレンズFTの光軸AXfと平行する方向をXt方向としたため、図19、図20においても、fθレンズFTの光軸AXfと平行する方向をXt方向とし、スポット光SPの走査方向をYt(Y)方向とし、これらのXt方向とYt方向と直交する方向をZt方向として説明する。
図19は、本変形例6のビーム走査装置MD1をXtYt平面と平行な面内でみたものであり、本変形例6では、ビーム走査装置MD1に入射するビームLB1の軸線(照射中心軸Le1)が、fθレンズFTの光軸AXfと同軸となるように設定される。すなわち、本変形例では、fθレンズFTの後に、ビームLB1を折り曲げるミラー(反射面)を設けずに、fθレンズFTから射出してシリンドリカルレンズCYbを通った走査ビームを、そのまま基板FSに投射するように構成する。
図19において、光源装置14から射出されて描画用光学素子AOM1で強度変調(オン/オフ)されたビームLB1は、レンズ系G30、ミラーM30、M31、および、レンズ系G31を介してシリンドリカルレンズCYaに導かれる。ビーム走査装置MD1に入射するビームLB1は、照射中心軸Le1と同軸になるように設定される。シリンドリカルレンズCYaに入射するビームLB1は所定の断面直径を有する平行光束に成形される。シリンドリカルレンズCYaから反射ミラーM14で反射されてポリゴンミラーPMの反射面RPに達するビームLB1は、XtYt平面内では平行光束のままで、Zt方向についてはシリンドリカルレンズCYaによって収斂した光束となる。ポリゴンミラーPMで反射(偏光)したビームLB1は、fθレンズFT、シリンドリカルレンズCYbを通って、基板FSの表面(被照射面)にスポット光SPとして集光される。なお、図19において、fθレンズFTの光軸AXfと照射中心軸Le1は一致してXt軸と平行になるように設定され、それらの延長線は回転ドラムDRの中心軸(回転中心軸)AXoと直交する。
本変形例6のビーム走査装置MD1を支持する本体フレーム300は、描画ラインSL1に沿って走査されるビームLB1が通るような開口部300Aが形成され、ビーム走査装置MD1は、光軸AXf(照射中心軸Le1)からの半径が開口部300Aを含むような大きさの環状ベアリング301を介して、本体フレーム300に回転可能に支持される。環状ベアリング301の中心線は光軸AXf(照射中心軸Le1)と同軸になるように設定されるので、ビーム走査装置MD1は光軸AXf(照射中心軸Le1)を中心にして、Xt軸回りに回転する。この回転をθxt回転と呼ぶ。
図20は、図19に示した変形例6のビーム走査装置MDを複数配置する様子を、XZ平面と平行な面内でみたものであり、本体フレーム300には、奇数番のビーム走査装置MD1、MD3、MD5の各々からの走査ビームを通す開口部300Aが、Y方向に一定の間隔をあけて設けられ、偶数番のビーム走査装置MD2、MD4、MD6の各々からの走査ビームを通す開口部300Bが、Y方向に一定の間隔をあけて設けられる。また、図20の変形例6では、回転ドラムDRに巻き付けられる基板FSが、-X方向に水平に搬送されて回転ドラムDRの上部から約半周分だけ巻き付けられた後、回転ドラムDRの下部で離脱して+X方向に搬送される。したがって、ここでは、回転ドラムDRの中心軸AXoを含む中心面Pocは、XY平面と平行になる。
この変形例6の構成においても、環状ベアリング301によるビーム走査装置MDの各々の機械的な回転中心が照射中心軸Le1~Le6となるように設定され、各ビーム走査装置MDに入射するビームLB1~LB6が、それぞれの照射中心軸Le1~Le6と同軸になるように導かれるので、先の実施の形態や各変形例と同様に、各ビーム走査装置MDが照射中心軸Le1~Le6の各々の回りにθxt回転しても、レンズ系G30に入射するビームLB1~LB6の姿勢位置は変わらない。したがって、各ビーム走査装置MDをθxt回転させた場合であっても、各ビーム走査装置MD内を通るビームLBの光路は変わらず、ビームLBはビーム走査装置MD内を規定通り正しく通過する。これにより、各ビーム走査装置MDをθxt回転させても、ビームLB1~LB6のけられ等によってスポット光SPが基板FSの表面(被照射面)に投射されなかったり、傾き調整後の描画ラインSL1~SL6から外れた位置にスポット光SPが投射されたりといった問題が生じない。
レンズ系G30は、ビームLB(LB1~LB6)をビーム走査装置MD(MD1~MD6)に入射させる入射光学部材として機能する。fθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって偏向されたビームLB1を基板FSの被照射面に投射する投射光学系として機能する。また、反射部材(反射ミラーM14、M30、M31)は、レンズ系G30から基板FSまでのビームLB(LB1~LB6)の光路を折り曲げる光路偏向部材として機能する。
〔描画ラインの回転調整に伴う継ぎ誤差〕
ところで、上記実施の形態および各変形例において、ビーム走査装置MDのθzt回転(またはθxt回転)によって描画ラインSLnの傾きを調整した場合は、描画ライン上の描画開始点と描画終了点とが調整前の位置に対してずれることになる。図21は、一例として、初期状態でYt軸と平行なビーム走査装置MD1の描画ラインSL1をXtYt平面(被照射面)内で反時計回りに角度θssだけ回転させた様子を示す。図21は説明のために角度θssを誇張して図示したもので、実際に回転可能な角度θssの最大値は±2°程度と極めて小さい。図21において、調整前の描画ラインSL1の中点をCCとすると、Zt方向に延びる照射中心軸Le1は中点CCを通るように設定され、描画ラインSL1は照射中心軸Le1と一致したビーム走査装置MD1の機械的な回転中心軸を中心としてθzt回転(傾斜)するように設定されているものとする。さらに、描画ラインSL1の描画開始点をST、描画終了点をSEとすると、描画開始点STから描画終了点SEまでの長さLBLがYt方向に関する実際のパターン描画幅となる。したがって、描画開始点STから中点CCまでの長さLBhと、中点CCから描画終了点SEまでの長さLBhとは等しく、LBh=LBL/2になっているものとする。
描画ラインSL1が初期状態から角度θssだけ回転すると、Yt軸に対して傾いた描画ラインSL1aになる。調整後の描画ラインSL1aの描画開始点STaは、初期の描画開始点STから(ΔXSa,ΔYSa)だけ位置ずれし、調整後の描画ラインSL1aの描画終了点SEaは、初期の描画終了点SEから(ΔXEa,ΔYEa)だけ位置ずれする。この位置ずれは、隣りのビーム走査装置MD2の描画ラインSL2で描画されるパターンとの継ぎ誤差となる。例えば、隣りのビーム走査装置MD2の描画ラインSL2が描画ラインSL1aに対して+Yt方向側に位置し、初期の描画開始点STで継ぎ露光する必要がある場合は、調整後の描画ラインSL1aの描画開始点STaを矢印Arの方向に微少にシフトさせる必要がある。この矢印Arのようなシフトは、図9で説明した原点信号SHの発生から時間Tpx後に描画データの書き出しを行うタイミングを、僅かに早めることによって実現できる。
ここで、位置ずれ量ΔYSaは、LBh・(1-cos(θss))となり、矢印Arに沿ったシフト量(長さ)をΔArとすると、位置ずれ量ΔYSaとシフト量ΔArは、ΔYSa=ΔAr・cos(θss)となるので、シフト量ΔArは、以下のように表される。
ΔAr=〔LBh・(1-cos(θss))〕/cos(θss)・・・(1)
例えば、長さLBLが50mm(LBh=25mm)の場合、角度θssが±0.5°のときのシフト量ΔArは約0.95μmとなり、角度θssが±1.0°のときのシフト量ΔArは約3.8μmとなり、角度θssが±2.0°のときのシフト量ΔArは約15.2μmとなり、角度θssの変化とシフト量ΔArの変化とは2次関数的な関係になる。したがって、調整された角度θssに応じてシフト量ΔArを算出し、そのシフト量ΔArに対応した時間ΔTpx(=ΔAr/スポット光SPの走査速度Vss)だけ、図9で説明した時間Tpxを短くして描画データの書き出しを開始すればよい。
また、隣りのビーム走査装置MD2の描画ラインSL2が描画ラインSL1aに対して-Yt方向側に位置し、初期の描画終了点SEで継ぎ露光する必要がある場合は、調整後の描画ラインSL1aの描画終了点SEaを矢印Afの方向に微少にシフトさせる必要がある。この場合も、矢印Afの方向のシフト量ΔAfは、先の式(1)と同様に、
ΔAf=〔LBh・(1-cos(θss))〕/cos(θss)・・・(2)
で求められる。図21のように、中点CC(Le1)が精密にビーム走査装置MD1の回転中心に設定されている場合、シフト量ΔArとシフト量ΔAfの絶対値は等しくなる。シフト量ΔAfの方向は、描画ラインSL1a上のスポット光SPの走査方向と同じなので、この場合は、調整された角度θssに応じたシフト量ΔAfに対応した時間ΔTpx(=ΔAr/スポット光SPの走査速度Vss)だけ、図9で説明した時間Tpxを長くして描画データの書き出しを開始すればよい。
さらに、角度θssだけ調整された後の描画ラインSL1aの描画開始点STaは、初期の描画開始点STに対して-Xt方向にΔXSaだけ位置ずれし、描画終了点SEaは初期の描画終了点SEに対して+Xt方向にΔXEaだけ位置ずれする。このようなXt方向(副走査方向)の位置ずれ誤差ΔXSa、ΔXEaは、回転ドラムDRの回転角度位置を計測するエンコーダECの計測値(カウンタの出力値)に対して、誤差ΔXSaまたはΔXEaのオフセットを加えた値に応答して各描画ラインSLnの描画を開始することで補正できる。このような微細な補正のために、エンコーダEC(およびスケール部SD)による回転ドラムDRの回転角度位置の計測分解能(カウンタ回路の1カウント当りの基板FSの移動量)は、スポット光SPのサイズφの1/2以下、望ましくは1/10以下に設定される。
以上の図21による説明では、初期状態でYt軸と平行なビーム走査装置MD1の描画ラインSL1をXtYt平面(被照射面)内で反時計回りに角度θssだけ回転させる際に、照射中心軸Le1は中点CCを通るように設定され、描画ラインSL1(すなわち、ビーム走査装置MD1)は照射中心軸Le1を中心としてθzt回転(傾斜)するように設定されているものとした。しかしながら、ビーム走査装置MD1の機械的な回転中心軸(以下、Mrpと呼ぶ)を決める円管状の支柱部材BX1、環状ベアリング48等の取付け誤差や、ビームLB1のビーム走査装置MD1への入射位置の誤差等によって、描画ラインSL1の中点CC(照射中心軸Le1)とビーム走査装置MD1の機械的な回転中心軸MrpとのXtYt平面内での2次元的な位置ずれ誤差ΔA(ΔAx,ΔAyとする)があると、その位置ずれ誤差ΔAによる影響が、図21中の誤差(ΔXSa,ΔYSa)、誤差(ΔXEa,ΔYEa)に加味される。
その様子を、図22を用いて説明する。図22は、図21のように状態に対して、ビーム走査装置MD1の機械的な回転中心軸(第1の回転中心軸)Mrpと描画ラインSL1の中点CC(照射中心軸Le1)とが、相対的に位置ずれ誤差ΔA(ΔAx,ΔAy)を持った場合の様子を、誇張して示す図である。なお、この場合は、ビーム走査装置MD1に入射するビームLB1の入射軸は、回転中心軸Mrpと同軸である。図22において、図21で説明した符号や記号については、説明を省略する。図22のように、調整前の初期状態においてYt軸と平行だった描画ラインSL1は、中点CC(Le1)の位置から誤差(ΔAx,ΔAy)だけシフトした回転中心軸Mrpを中心に、角度θssだけ傾いた描画ラインSL1bとなる。描画ラインSL1bは、誤差(ΔAx,ΔAy)の影響により、図21で示した描画ラインSL1aをXtYt平面内で平行移動させたものとなる。したがって、調整後の描画ラインSL1bの描画開始点STbは、図21の状態での描画開始点STaに対して-Xt方向に誤差ΔXcc、+Yt方向に誤差ΔYccだけずれる。同様に、調整後の描画ラインSL1bの描画終了点SEbは、図21の状態での描画終了点SEaに対して-Xt方向に誤差ΔXcc、+Yt方向に誤差ΔYccだけずれ、調整後の描画ラインSL1bの中点CC´(Le1´)も、図21の状態での描画ラインSL1の中点CC(Le1)に対して-Xt方向に誤差ΔXcc、+Yt方向に誤差ΔYccだけずれる。
したがって、調整後の描画ラインSL1bの描画開始点STbは、初期の描画開始点STに対して、Xt方向に(ΔXSa+ΔXcc)、Yt方向に(ΔYSa-ΔYcc)だけ位置ずれし、調整後の描画ラインSL1bの描画終了点SEbは、初期の描画終了点SEに対して、Xt方向に(ΔXEa-ΔXcc)、Yt方向に(ΔYEa+ΔYcc)だけ位置ずれする。回転中心軸Mrpと初期の描画ラインSL1の中点CC(Le1)とが誤差(ΔAx,ΔAy)の位置ずれを持つことによる誤差分(ΔXcc,ΔYcc)は、初期の描画ラインSL1の中点CCを原点(0,0)とすると、以下のように表される。
ΔXcc=-ΔAy・sin(θss)+ΔAx・(1-cos(θss))・・・(3)
ΔYcc=ΔAy・(1-cos(θss))+ΔAx・sin(θss) ・・・(4)
この図22のように、ビームLB1の入射軸線と回転中心軸Mrpとが一致していて、回転中心軸Mrpと描画ラインSL1の中点CC(Le1)とが、XtYt平面内で誤差(ΔAx,ΔAy)だけシフトしている場合は、先の図21で説明したように、描画ラインSL1bのシフト量ΔAr、ΔAfを計算して、それに対応した時間ΔTpxだけ、図9で説明した時間Tpxを短くしたり、長くしたりしてパターンデータ(描画データ)の書き出しタイミングを補正すればよい。ただし、調整後の描画ラインSL1bの描画開始点STbから描画終了点SEbまでの長さLBL(例えば50mm)は、スポット光SPの最大走査長(例えば51mm)の範囲内である必要がある。また、副走査方向(Xt方向)についても、回転ドラムDRの回転角度位置を計測するエンコーダECの計測値(カウンタの出力値)に対して、誤差(ΔXSa+ΔXcc)または(ΔXEa-ΔXcc)のオフセットを加えた値に応答して各描画ラインSLnの描画を開始することで補正できる。なお、図21、図22では、照射中心軸Le1が描画ラインSLnの中点CCを通る態様を例にして説明したが、先の変形例5のように、照射中心軸Le1が描画ラインSLn上の任意の点を通るものであってもよい。この場合であっても、描画ラインSLnのシフト量ΔAr、ΔAfの算出原理は同じである。
ところで、例えば、先の変形例5(図18A、図18B)のように、ビーム走査装置MD1に入射するビームLB1のXtYz平面内での位置をYt方向にずらす場合、ビーム走査装置MD1の機械的な回転中心軸Mrpおよび照射中心軸Le1を、描画ラインSL1の描画開始点STと一致した位置、または極めて近い位置に設定すると、描画ラインSL1を角度θss傾けたとしても、調整後の描画開始点STbは初期の描画開始点STの位置からほとんど変化しない。そのため、調整後の描画開始点STbが隣の描画ラインと継がれる場合、描画ラインSL1bのスポット光SPの走査方向に関する位置調整(図9で説明した時間Tpxの調整)を不要にすることもできる。
また、ビーム走査装置MD1の機械的な回転中心軸Mrpと照射中心軸Le1とは、XtYt平面内において所定の許容範囲ΔQ(ΔBx,ΔBy)内で同軸であることがよい。その許容範囲ΔQは、例えば、ビーム走査装置MD1を機械的に所定の角度θsmだけ傾けたとき、調整後の描画ラインSL1bの描画開始点STb(または描画終了点SEb)の実際の位置(実位置Apo)と、許容範囲ΔQをゼロと仮定した場合にビーム走査装置MD1を角度θsmだけ傾けたときの描画ラインSL1bの描画開始点STb(または描画終了点SEb)の設計上の位置(設計位置Dpo)との差分量が、スポット光SPの走査方向(図21中の矢印ArやAf)またはYt方向に関して、例えば、スポット光SPのサイズφ以内となるように設定される。ここで、所定の角度θsmは、ビーム走査装置MD1が機械的に回転可能な上限角度(例えば±2°)に設定することができる。各ビーム走査装置MD(MD1~MD6)の照射中心軸Le(Le1~Le6)と回転中心軸Mrpとを所定の許容範囲ΔQ内で同軸にするために、図5に示す各光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)の反射ミラーM1~M5の間に、図7に示すような像シフト光学部材SRおよび偏向調整光学部材DPのうち少なくとも一方を設けるようにしてもよい。なお、支柱部材BX1の中心軸は、回転中心軸Mrpと同軸、または、回転中心軸Mrpおよび照射中心軸Leと所定の許容範囲ΔQで同軸となるように設定されている。
また、ビーム走査装置MDに入射するビームLBの入射軸が、回転中心軸Mrpと一致するように、ビーム走査装置MDにビームLBを入射させたが、ビーム走査装置MDに入射するビームLBの入射軸と回転中心軸Mrpとが所定の許容範囲ΔQ内で同軸であってもよい。例えば、ビーム走査装置MDに入射するビームLBの入射軸が、照射中心軸Leと一致するとともに、回転中心軸Mrpと所定の許容範囲ΔQ内で同軸であってもよい。
また、変形例2、3における像回転光学系IRも同様に、像回転光学系IRの機械的な回転中心軸(第2の回転中心軸)が照射中心軸Leと所定の許容範囲ΔQ内で同軸となっていればよい。この場合、fθレンズFTから像回転光学系IRに入射するビームLBの走査軌跡の中点を通るビームLBの入射軸と像回転光学系IRの機械的な回転中心軸とは所定の許容範囲ΔQ内で同軸となるように設定されている。
以上に説明した実施の形態や各変形例の構成では、露光装置本体に対して回転可能なビーム走査装置MDには、光源装置14が搭載されていないが、従来の装置(特許文献1)のように、半導体レーザーダイオード、LED等の小型の固体光源を、ビーム走査装置MD(例えば支持フレーム40)内に設け、その固体光源を描画データに基づいてパルス発光するように制御してもよい。その場合、図5、図6に示した描画用光学素子AOMは不要となる。
さらに、上記各実施の形態や各変形例では、描画データに基づいたスポット光SPの強度変調(オン/オフ)を、例えば、図5中の光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)内に設けた描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)で行うようにしたが、光源装置14をファイバーアンプレーザ光源とする場合は、ファイバーアンプに入射する前の赤外波長域の種光(パルス光)の強度を、描画データに基づいてバースト波状に変調することによって、光源装置14から出力される紫外線のパルスビーム自体を描画データに応じてバースト波状に変調させてもよい。その場合、光導入光学系BDU内に設けた描画用光学素子AOMは、光源装置14からのビームLBをビーム走査装置MDに導くか否かの選択用光学素子(スイッチング素子AOMと呼ぶ)として使われる。そのためには、ビーム走査装置MDの各々のポリゴンミラーPMの回転速度を一致させるとともに、その回転角度の位相も所定の関係を保つように同期制御する必要がある。さらに、光源装置14からのビームLBが、ビーム走査装置MDの各々のスイッチング素子AOMを順番に透過するようなビーム送光系(ミラー等)を設け、ポリゴンミラーPMの原点信号SHに応答して、描画ラインSLn上のスポット光SPの1回の走査期間だけ、各スイッチング素子AOMのうちのいずれか1つを順番にオン状態にするような同期制御とするのがよい。
なお、上記実施の形態および各変形例の露光装置EXでは、回転ドラムDRによって湾曲に支持されている基板FSに対してビーム走査装置MDによるスポット光SPの描画露光を行ったが、平面状に支持されている基板FSに対してスポット光SPの描画露光を行うものでもよい。つまり、ビーム走査装置MDは、平面状に支持されている基板FSに対してスポット光SPの描画露光を行ってもよい。この基板FSを平面状に支持する機構は、国際公開第2013/150677号パンフレットに開示されているものを用いることができる。簡単に説明すると、環状ベルトが巻き付けられた複数のローラによって、環状ベルトが基板FSを支持する領域では平面状となるように規定される。そして、環状ベルトの平面状となっている領域において、搬送されてくる基板FSが環状ベルトに密着して支持される。環状ベルトは、所定の方向に環状に搬送されているので、環状ベルトは、支持している基板FSを基板FSの搬送方向に搬送することができる。
(第2の実施の形態)
図23は、第2の実施の形態によるビーム走査装置MD’の構成を示し、図23のビーム走査装置MD’は、先の図5、図7、図10等に示したビーム走査装置MDn(MD1~MD6)の各々と置き換え可能な構成となっている。図23のビーム走査装置MD’を構成する部材に関しては、先のビーム走査装置MDnの部材と同じものには同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。本第2の実施の形態によるビーム走査装置MD’は、光導入光学系(ビーム分配光学系とも呼ぶ)BDUn(BDU1~BDU6)内の描画用光学素子AOMn(AOM1~AOM6)の後で集光されるビームLBn(LB1~LB6)を入射する単一モードの光ファイバーSMFで伝送されるビームLBn(LB1~LB6)を導入するように構成される。
光ファイバーSMFの射出端Pboは、ビーム走査装置MDnの反射ミラーM10の+Zt方向に固定され、射出端Pboで収斂したビームLB1は所定の開口数(NA)で発散しながら、反射ミラーM10で反射して、ビームエキスパンダーBEを構成する集光レンズBe1とコリメートレンズBe2に入射する。ビームLB1は、集光レンズBe1とコリメートレンズBe2の間の集光位置Pb1で集光した後、再び発散するビームLB1となってコリメートレンズBe2に入射して平行光束に変換される。コリメートレンズBe2から射出したビームLB1は、先の図7と同様に、反射ミラーM12、像シフト光学部材SR、偏向調整光学部材DP、フィールドアパーチャFA、反射ミラーM13、λ/4波長板QW、シリンドリカルレンズCYa、反射ミラーM14、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、反射ミラーM15、およびシリンドリカルレンズCYbを介して、基板FS上にスポット光SPとして集光される。スポット光SPが形成される面(基板FSの表面)は、集光位置Pb1および射出端PBoと光学的に共役な関係になっている。なお、図23では、図7で示したミラーM11、偏光ビームスプリッタBS1、レンズ系G10、光検出器DT1は省略してある。
本第2の実施の形態においても、ビーム走査装置MD’は全体として照射中心軸Le1を中心に所定の角度範囲で回動可能なように支柱部材BX1に軸支されているが、光ファイバーSMFの射出端Pboは、照射中心軸Le1からずれた任意の位置に固定することができる。紫外波長域のビームを高速に走査してパターン描画する場合、基板FS上の感光性機能層の感度によっては、ビームのエネルギー(スポット光の単位面積当たりの照度)を相当に高くしておく必要がある。そのため、図23のように単一モードの光ファイバーSMFを使った光伝送では、光ファイバーの紫外線に対する耐性が確保できないこともある。しかしながら、感光性機能層が、紫外波長域よりも長い波長、例えば500nm台~700nm台の波長の光に感度を有する場合は、図23のように、単一モードの光ファイバーSMFによる光伝送が可能となる。
図23の光ファイバーSMFの不図示の入射端は、先の図5で示した光導入光学系BDUn内の描画用光学素子AOMnの後の分岐用のミラーM1の後に配置される。具体的には、ミラーM1で反射された描画用のビームLBnを集光レンズによって所定のNA(開口数)で集光するビームに変換し、その集光点(ビームウェスト位置)に、光ファイバーSMFの入射端を固定しておけばよい。