JP7069701B2 - 吸湿性に優れた繊維構造体およびそれを用いた衣料 - Google Patents

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本発明は、海島型複合繊維とポリウレタン系弾性繊維を含む、吸湿性に優れた繊維構造体に関するものである。より詳しくは、吸湿性と放湿性を兼ね備え、発汗時の蒸れ感、べたつき感と発汗後の汗冷え感が軽減されており、着用快適性、着用感、吸湿性の洗濯耐久性に優れ、衣料用途に好適に用いることができる繊維構造体に関するものである。
ポリエステル繊維は、安価であり、機械的特性に優れているため、衣料用途において広く用いられている。しかし、吸湿性に乏しいため、夏場の高湿時には蒸れ感の発生、冬場の低湿時には静電気の発生など、着用快適性の観点において解決すべき課題を有している。
一方、綿やレーヨンなどのセルロース系繊維は、吸湿性、吸水性に優れるため、汗をかいていない状態や少量の発汗時には蒸れ感やべたつき感が無く、快適であるため、ポリエステル繊維同様、衣料用途において広く用いられている。しかしながら、夏場や運動時など多量の発汗時には、セルロース系繊維が汗を吸って繊維中に保持する上に、汗を乾燥しにくいため、発汗後の汗冷え感という課題を有している。
上記ポリエステル繊維の課題を解決するため、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与する方法について、これまでに種々の提案がなされている。吸湿性を付与するための一般的な方法として、ポリエステルへの親水性化合物の共重合や親水性化合物の添加などが挙げられ、親水性化合物の一例としてポリエチレングリコールが挙げられる。
例えば、特許文献1では、芯にポリエチレングリコールが共重合されたポリエステル、鞘にポリエチレンテレフタレートを配置した芯鞘型複合繊維が提案されている。この提案では、芯に吸湿性ポリマーを配置することにより、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与している。
また、特許文献2では、島にポリエチレングリコールが共重合されたポリエステル、海にポリエチレンテレフタレートを配置した海島型複合繊維、特許文献3では、島にポリエチレングリコールが共重合されたポリアミド、海にポリエチレンテレフタレートを配置した海島型複合繊維が提案されている。これらの提案では、島に吸湿性ポリマーを配置することにより、ポリエステル繊維へ吸湿性を付与している。
特開2001-172374号公報 特開平8-198954号公報 特開2016-69770号公報
しかしながら、特許文献1記載の方法では、染色等の熱水処理において芯成分の吸湿性ポリマーが体積膨潤することに伴い、鞘成分が割れてしまう。そのため、この鞘成分が割れた部分を起点として芯成分の吸湿性ポリマーが溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下するという課題があった。また、鞘成分が割れて、芯成分の吸湿性ポリマーの一部が繊維表面に露出しているため、衣服として着用した場合にぬめりやべとつきを感じ、着用快適性に劣るものであった。さらには、得られる繊維構造体は、伸縮性に乏しく、たるみ感があり、着用感に劣るものであった。
特許文献2記載の方法では、繊維横断面において、繊維直径に対する最外層の海成分の厚みが小さいため、染色等の熱水処理において島成分の吸湿性ポリマーが体積膨潤することに伴い、海成分が割れてしまう。そのため、特許文献1記載の方法と同様に、この海成分が割れた部分を起点として島成分の吸湿性ポリマーが溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下するという課題があった。また、海成分が割れて、島成分の吸湿性ポリマーの一部が繊維表面に露出しているため、衣服として着用した場合にぬめりやべとつきを感じ、着用快適性に劣るものであった。さらには、得られる繊維構造体は、伸縮性に乏しく、たるみ感があり、着用感に劣るものであった。
特許文献3では、繊維横断面において、繊維直径に対する最外層の海成分の厚みを大きくすることで、特許文献2で課題であった、熱水処理における海成分の割れを抑制し得ることを提案している。この提案では、染色等の熱水処理における海成分の割れは抑制傾向にあり、熱水処理後の吸湿性の低下も改善傾向にあった。しかしながら、得られる繊維構造体は、伸縮性に乏しく、たるみ感があり、着用感に劣るものであった。また、吸湿性ポリマーを構成するポリエチレングリコールは、光や熱、もしくは酸化剤として作用する塩素系漂白剤によって容易に酸化分解するため、長期保管、タンブラー乾燥、洗濯などの一般的な衣料の取り扱いにおいて、ポリエチレングリコールの酸化分解が進み、吸湿性が低下してしまうという別の課題を特許文献3記載の方法は有するものであった。
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、吸湿性と放湿性を兼ね備え、発汗時の蒸れ感、べたつき感と発汗後の汗冷え感が軽減されており、着用快適性、着用感、吸湿性の洗濯耐久性に優れ、衣料用途に好適に採用できる繊維構造体を提供することにある。
上記の本発明の課題は、海成分がポリエステル系ポリマー、島成分が吸湿性を有するポリマーであり、繊維横断面において、最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)が0.05~0.25である海島型複合繊維と、ポリウレタン系弾性繊維を含む繊維構造体であり、ポリウレタン系弾性繊維を3~20重量%含み、繊維構造体の吸湿率差(ΔMR)が1.5~8.0%であることを特徴とする繊維構造体によって解決することができる。なお、最外層厚みとは、繊維の半径と、最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円の半径との差であり、最外層に存在する海成分の厚みを表す。
また、繊維構造体の吸湿速度が5~30mg/(g・分)であること、放湿速度が5~30mg/(g・分)であること、洗濯前後における繊維構造体の吸湿率差(ΔMR)の変化率が-15~15%であることが好ましい。
さらには、海島型複合繊維の繊維直径Rが6~15μmであること、海島型複合繊維の吸湿率差(ΔMR)が2.0~10.0%であることが好適に採用できる。
また、上記の繊維構造体を少なくとも一部に用いることを特徴とする衣料に好適に採用できる。
本発明によれば、吸湿性と放湿性を兼ね備え、発汗時の蒸れ感、べたつき感と発汗後の汗冷え感が軽減されており、着用快適性、着用感、吸湿性の洗濯耐久性に優れる繊維構造体を提供することができるため、特に衣料用途において好適に用いることができる。
図1は、(a)~(m)が本発明の海島型複合繊維の断面形状の一例を示す図である。 図2は、本発明の海島型複合繊維の製造方法で用いる海島複合口金の一例であって、図2(a)は海島複合口金を構成する主要部分の正断面図、図2(b)は分配プレートの一部の横断面図、図2(c)は吐出プレートの横断面図である。 図3は、分配プレートの一例の一部である。 図4は、分配プレートにおける分配溝および分配孔配置の一例である。
本発明の繊維構造体は、海成分がポリエステル系ポリマー、島成分が吸湿性を有するポリマーであり、繊維横断面において、最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)が0.05~0.25である海島型複合繊維と、ポリウレタン系弾性繊維を含む繊維構造体であり、ポリウレタン系弾性繊維を3~20重量%含み、繊維構造体の吸湿率差(ΔMR)が1.5~8.0%である。なお、最外層厚みとは、繊維の半径と、最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円の半径との差であり、最外層に存在する海成分の厚みを表す。
一般的に、吸湿性を有するポリマー(以下、単に吸湿性ポリマーと称する場合もある)は、染色等の熱水処理によって体積膨潤しやすく、また、熱水へ溶出しやすいという性質を有している。例えば、吸湿性ポリマーが、親水性の共重合成分を共重合したポリマーである場合、熱水処理によって親水性の共重合成分が溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下するという課題がある。
これに対し、芯に吸湿性ポリマーを配置した芯鞘型複合繊維では、染色等の熱水処理によって芯に配置した吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴い、芯成分と鞘成分の界面に応力が集中し、鞘成分の割れが生じる。この鞘成分が割れた部分を起点として、芯に配置した吸湿性ポリマーが溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下する。
また、島に吸湿性ポリマーを配置した海島型複合繊維においても、芯鞘型複合繊維と同様の課題が生じる。すなわち、芯鞘型複合繊維の鞘成分の厚みと比べ、従来技術により得られる海島型複合繊維の最外層の海成分の厚みは非常に薄いものであったため、染色等の熱水処理によって島に配置した吸湿性ポリマーの体積膨潤により、容易に海成分の割れが生じる。この海成分が割れた部分を起点として、島に配置した吸湿性ポリマーが溶出し、熱水処理後に吸湿性が低下する。
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、吸湿性ポリマーの分散配置により、体積膨潤に伴う応力を分散させ、かつ最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)を特定の範囲にした場合に初めて、上記課題を解決し、熱水処理後においても高い吸湿性を発現する海島型複合繊維を得ることに成功した。さらに本発明では、この熱水処理後においても高い吸湿性を発現する海島型複合繊維と、ポリウレタン系弾性繊維を含む繊維構造体とすることで、発汗時の蒸れ感、べたつき感と発汗後の汗冷え感が軽減されており、着用快適性、着用感に優れ、特に衣料用途において好適に用いることができる繊維構造体を得ることに成功した。
本発明の海島型複合繊維の海成分はポリエステル系ポリマーである。疎水性のポリエステル系ポリマーを用いることで、島成分の吸湿性ポリマーによる吸湿性と、海成分のポリエステル系ポリマーによるドライ感を両立でき、発汗時の蒸れ感、べたつき感と発汗後の汗冷え感が軽減された着用快適性に優れる繊維構造体を得ることができる。ポリエステル系ポリマーの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートは、機械的特性や耐久性に優れ、繊維構造体を製造時の工程通過性や取り扱い性が良好であり、使用時の耐久性にも優れるため好ましい。また、ポリエチレンテレフタレートはポリエステル繊維特有のハリ、コシ感が得られるため、特に好適に採用できる。
本発明のポリエステル系ポリマーは、カチオン可染性ポリエステルであることも好適に採用できる。ポリエステルがスルホン酸基などのアニオン部位を有していれば、カチオン部位を有するカチオン染料との相互作用により、カチオン可染性を有する。海島型複合繊維の海成分がカチオン可染性ポリエステルであれば、鮮明な発色性を示すとともに、ポリウレタン系弾性繊維との混用において染料汚染を防止できるため好ましい。カチオン可染性ポリエステルの共重合成分の具体例として、5-スルホイソフタル酸金属塩があり、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明におけるカチオン可染性ポリエステルは、全ジカルボン酸成分に対し、5-スルホイソフタル酸金属塩を0.1~6.0mol%共重合していることが好ましい。5-スルホイソフタル酸金属塩の共重合率が0.1mol%以上であれば、カチオン染料との相互作用により、海島型複合繊維の海成分であるポリエステル系ポリマーが鮮明な発色性を示し、繊維構造体の発色性も良好となるため好ましい。5-スルホイソフタル酸金属塩の共重合率は0.5mol%以上であることがより好ましく、1.0mol%以上であることが更に好ましい。一方、5-スルホイソフタル酸金属塩の共重合率が6.0mol%以下であれば、海島型複合繊維の海成分であるポリエステル系ポリマーの耐熱性に優れるため、得られる海島型複合繊維の色調や機械的特性が良好となり、品位や使用時の耐久性に優れる繊維構造体が得られるため好ましい。5-スルホイソフタル酸金属塩の共重合率は5.0mol%以下であることがより好ましく、4.0mol%以下であることが更に好ましい。
本発明の海島型複合繊維の島成分は、吸湿性を有するポリマーである。吸湿性を有するポリマーの具体例として、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリアミド、熱可塑性セルロース誘導体、ポリビニルピロリドンなどの吸湿性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、共重合成分としてポリエーテルを含むポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミドは吸湿性に優れるため好ましい。特にポリエーテルエステルは耐熱性に優れ、得られる海島型複合繊維の色調や機械的特性が良好となり、品位や使用時の耐久性に優れる繊維構造体が得られるため好ましい。
本発明の海島型複合繊維の島成分は、フェノール系酸化防止剤を含有していることが好ましい。例えば、海島型複合繊維の島成分の吸湿性ポリマーが共重合成分としてポリエーテルを含む場合、ポリエーテルは光や熱によって容易に酸化分解するため、フェノール系酸化防止剤を含有していれば、長期保管やタンブラー乾燥などによるポリエーテルの酸化分解が抑制され、海島型複合繊維を用いた繊維構造体の吸湿性の耐久性が向上するため好ましい。また、洗濯時に塩素系漂白剤のように酸化剤として作用する漂白剤を用いた場合においても、フェノール系酸化防止剤を含有していれば、ポリエーテルの酸化分解が抑制され、海島型複合繊維を用いた繊維構造体の吸湿性の洗濯耐久性が向上するため好ましい。
本発明におけるフェノール系酸化防止剤は、フェノール構造を有したラジカル連鎖反応禁止剤であり、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(例えば、BASF製Irganox1010)、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン(例えば、ADEKA製アデカスタブAO-330)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]-ウンデカン(例えば、住友化学製スミライザーGA-80、ADEKA製アデカスタブAO-80)、1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(例えば、東京化成工業製THANOX1790、CYTEC製CYANOX1790)は、酸化分解抑制効果が高いため、好適に採用できる。
本発明におけるフェノール系酸化防止剤の含有量は、海島型複合繊維の島成分を100重量部とした場合、1.0~10.0重量部であることが好ましい。フェノール系酸化防止剤の含有量が1.0重量部以上であれば、海島型複合繊維の酸化分解を抑制することができ、海島型複合繊維を用いた繊維構造体の吸湿性の洗濯耐久性が向上するため好ましい。フェノール系酸化防止剤の含有量は1.5重量部以上であることがより好ましく、2.0重量部以上であることが更に好ましい。一方、フェノール系酸化防止剤の含有量が10.0重量部以下であれば、フェノール系酸化防止剤が海島型複合繊維の繊維特性に与える影響が少なく、繊維構造体の風合いを損なうことがないため好ましい。フェノール系酸化防止剤の含有量は8.0重量部以下であることがより好ましく、6.0重量部以下であることが更に好ましい。
本発明の海島型複合繊維は、海成分および/または島成分に副次的添加物を加えて種々の改質が行われたものであってもよい。副次的添加剤の具体例として、相溶化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、熱安定剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの副次的添加物は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
本発明の海島型複合繊維の海成分/島成分の複合比率(面積比)は、50/50~90/10であることが好ましい。本発明における海島型複合繊維の海成分/島成分の複合比率(面積比)とは、実施例記載の方法で算出される値を指す。海島型複合繊維の海成分の複合比率が50%以上であれば、海成分のポリエステル系ポリマーによるハリ、コシ感やドライな感触が得られるため好ましい。また、吸湿時や吸水時の島成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う海成分の割れが抑制されるため、染色等の熱水処理時に熱水への島成分の吸湿性を有するポリマーの溶出による繊維構造体の吸湿性の低下が抑制されるため好ましい。海島型複合繊維の海成分の複合比率は55%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。一方、海島型複合繊維の海成分の複合比率が90%以下、すなわち島成分の複合比率が10%以上であれば、島成分の吸湿性ポリマーによる吸湿性が発現し、吸湿性に優れた繊維構造体が得られるため好ましい。海島型複合繊維の海成分の複合比率は85%以下であることがより好ましく、80%以下であることが更に好ましい。
本発明の海島型複合繊維の繊維直径Rは、6~15μmであることが好ましい。本発明における繊維直径Rとは、実施例記載の方法で算出される値を指す。海島型複合繊維の繊維直径Rが6μm以上であれば、使用時に毛羽の発生が少なく、繊維構造体の耐久性に優れるため好ましい。海島型複合繊維の繊維直径Rは7μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることが更に好ましい。一方、海島型複合繊維の繊維直径Rが15μm以下であれば、繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。海島型複合繊維の繊維直径Rは13μm以下であることがより好ましく、11μm以下であることが更に好ましい。
本発明の海島型複合繊維は、繊維横断面において、最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)が0.05~0.25である。本発明における最外層厚みとは、繊維の半径と、最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円の半径との差であり、最外層に存在する海成分の厚みを表す。本発明における最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)とは、実施例記載の方法で算出される値を指す。海島型複合繊維のT/Rが0.05以上であれば、繊維直径に対する最外層の厚みが十分確保されるため、染色等の熱水処理によって、島に配置した吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う海成分の割れを抑制することができ、海成分の割れに起因した吸湿性ポリマーの溶出が抑制され、熱水処理後においても繊維構造体が高い吸湿性を発現する。海島型複合繊維のT/Rは0.07以上であることがより好ましく、0.09以上であることが更に好ましく、0.10以上であることが特に好ましい。一方、海島型複合繊維のT/Rが0.25以下であれば、繊維直径に対する最外層の厚みによって、島に配置した吸湿性ポリマーの体積膨潤が損なわれず、吸湿性ポリマーによる吸湿性が発現し、吸湿性の高い繊維構造体を得ることができる。海島型複合繊維のT/Rは0.22以下であることがより好ましく、0.20以下であることが更に好ましい。
本発明の海島型複合繊維は、繊維横断面における島成分の配置に関して特に制限がなく、繊維構造体の用途や要求特性に応じて適宜選択することができる。図1(a)~(m)は本発明の海島型複合繊維の断面形状の一例であるが、これらに限定されない。
本発明の海島型複合繊維は、繊維横断面における島成分の形状に関して特に制限がなく、繊維構造体の用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の海島型複合繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、繊維構造体の用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の海島型複合繊維の吸湿率差(△MR)は、2.0~10.0%であることが好ましい。本発明における海島型複合繊維の吸湿率差(△MR)とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。△MRとは、軽い運動後の衣服内温湿度を想定した温度30℃、湿度90%RHにおける吸湿率と、外気温湿度として温度20℃、湿度65%RHにおける吸湿率の差である。すなわち、△MRは吸湿性の指標であり、△MRの値が高いほど、発汗時の蒸れ感、べたつき感が軽減され、繊維構造体の着用快適性が向上する。海島型複合繊維の△MRが2.0%以上であれば、本発明の繊維構造体を衣料として用いた場合に、発汗時の衣服内の蒸れ感、べたつき感が少なく、着用快適性が向上するため好ましい。海島型複合繊維の△MRは2.5%以上であることがより好ましく、3.0%以上であることが更に好ましく、4.0%以上であることが特に好ましい。一方、海島型複合繊維の△MRが10.0%以下であれば、繊維構造体を製造時の工程通過性や取り扱い性が良好であり、使用時の耐久性にも優れるため好ましい。海島型複合繊維の△MRは9.0%以下であることがより好ましく、8.0%以下であることが更に好ましく、7.0%以下であることが特に好ましい。
本発明の海島型複合繊維は、繊維の形態に関して特に制限がなく、繊維構造体の用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープル、紡績糸などのいずれであってもよく、仮撚や撚糸などの加工が施されていてもよい。海島型複合繊維に仮撚加工が施されている場合、繊維構造体へ嵩高性と柔軟性を付与することができ、着用感が向上するため、本発明の繊維構造体を衣料として用いる場合に、特に好適に採用できる。
本発明の海島型複合繊維の製造方法として、公知の溶融紡糸方法、延伸方法、仮撚などの捲縮加工方法を用いることができるが、海島複合口金については下記のとおり、特開2011-174215号公報に記載の海島複合口金を用いることが好ましい。
本発明では、海島複合口金として、例えば、特開2007-100243号公報に開示されているパイプ群が配置された従来公知のパイプ型海島複合口金を用いて製造してもよい。しかしながら、従来のパイプ型海島複合口金では、最外層の海成分の厚みは150nm程度が技術の限界であり、本発明の必須要件である繊維横断面における最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)を満たすことが困難である。そのため、本発明では、特開2011-174215号公報に記載の海島複合口金を用いた方法が好適に用いられる。
本発明に用いる海島複合口金の一例として、図2~4に示す部材で構成される海島複合口金について説明する。図2(a)~(c)は、本発明に用いる海島複合口金の一例を模式的に説明するための説明図であって、図2(a)は海島複合口金を構成する主要部分の正断面図、図2(b)は分配プレートの一部の横断面図、図2(c)は吐出プレートの一部の横断面図である。図2(b)および図2(c)は図2(a)を構成する分配プレートおよび吐出プレートであって、図3は分配プレートの平面図、図4は本発明における分配プレートの一部の拡大図であり、それぞれが一つの吐出孔に関わる溝および孔として記載したものである。
以下、複合ポリマー流が計量プレート、分配プレートを経て形成され、吐出プレートの吐出孔から吐出されるまでの過程を説明する。紡糸パック上流からポリマーA(島成分)とポリマーB(海成分)が、図2の計量プレートのポリマーA用計量孔(9-(a))およびポリマーB用計量孔(9-(b))に流入し、下端に穿設された孔絞りによって計量された後、分配プレートに流入される。分配プレートでは、計量孔9から流入したポリマーを合流するための分配溝10(図3:10-(a)、10-(b))とこの分配溝の下面にはポリマーを下流に流すための分配孔11(図4:11-(a)、11-(b))が穿設されている。また、複合ポリマー流の最外層に海成分であるポリマーBから構成される層を形成するため、図3に示すような分配孔を底面に穿設した環状溝16が設置される。
この分配プレートから吐出されたポリマーAおよびポリマーBによって構成された複合ポリマー流は、吐出導入孔12から吐出プレート8に流入される。次に、複合ポリマー流は、所望の径を有した吐出孔に導入する間に縮小孔13によって、ポリマー流に沿って断面方向に縮小され、分配プレートで形成された断面形態を維持して、吐出孔14から吐出される。海島複合口金から吐出された繊維糸条は、公知の溶融紡糸方法に従い、冷却固化後、ローラーで引き取られた後、ワインダーで巻き取られる。
本発明の繊維構造体は、ポリウレタン系弾性繊維を3~20重量%含む。ポリウレタン系弾性繊維を含むことで、繊維構造体に適度な伸縮性と適度な繊維間空隙を付与することができる。そのため、本発明の繊維構造体を衣料として用いた場合に、繊維構造体が身体の動きにスムーズに追従し、着用感が向上する。また、繊維間空隙の付与により、後述する繊維構造体の目付、厚さ、通気性を適正な範囲に制御することで、発汗時の蒸れ感、べたつき感と発汗後の汗冷え感を軽減することができ、繊維構造体の着用快適性が向上する。ポリウレタン系弾性繊維が3重量%以上であれば、繊維構造体に伸縮性を付与することができ、繊維構造体を衣料として用いた場合に、身体の動きにスムーズに追従するとともに、たるみ感が軽減されるため、着用感が向上する。ポリウレタン系弾性繊維は5重量%以上であることがより好ましく、7重量%以上であることが更に好ましい。一方、ポリウレタン系弾性繊維が20重量%以下であれば、繊維構造体の伸縮性が強くなり過ぎず、圧迫感が軽減されるため、優れた着用感を維持することができる。また、繊維間空隙を維持できるため、発汗時の蒸れ感、べたつき感と発汗後の汗冷え感を軽減することができる。ポリウレタン系弾性繊維は17重量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であることが更に好ましい。
本発明のポリウレタン系弾性繊維の具体例として、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオールをジオール成分、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートをジイソシアネート成分、エチレンジアミン等をジアミン成分としたポリエーテル系ポリウレタン系弾性繊維や、ポリカプロラクトンやアジピン酸/1,6ヘキサンジオール/ネオペンチルグリコールからなるポリエステル等からなるポリエステルジオールとブタンジオール等の脂肪族ジオール等をジオール成分、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートをジイソシアネート成分としたポリエステル系ポリウレタン系弾性繊維などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の繊維構造体の吸湿率差(ΔMR)は、1.5~8.0%である。本発明における繊維構造体の吸湿率差(△MR)とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。本発明の繊維構造体の吸湿率差(ΔMR)は、精練、中間セット、染色および仕上げセットという一連の工程を通過後の値である。前記のとおり、従来の海島型複合繊維は、島成分の吸湿性ポリマーが、染色等の熱水処理によって体積膨潤し、容易に海成分の割れを引き起こしてしまう。この海成分が割れた部分を起点として、島成分の吸湿性ポリマーが溶出するため、熱水処理後に吸湿性が低下するという課題があった。これに対し、本発明の海島型複合繊維は、染色等の熱水処理後においても、海成分の割れが抑制されており、海成分の割れに起因した吸湿性ポリマーの溶出が抑制されているため、従来の海島型複合繊維と異なり、熱水処理後においても繊維構造体が高い吸湿性を発現する。繊維構造体の△MRが1.5%以上であれば、繊維構造体を衣料として用いた場合に、発汗時の衣服内の蒸れ感、べたつき感が少なく、着用快適性が向上する。繊維構造体の△MRは2.0%以上であることがより好ましく、2.5%以上であることが更に好ましく、3.0%以上であることが特に好ましい。一方、繊維構造体の△MRが8.0%以下であれば、繊維構造体を製造時の工程通過性や取り扱い性が良好であり、使用時の耐久性にも優れる。繊維構造体の△MRは7.5%以下であることがより好ましく、7.0%以下であることが更に好ましく、6.5%以下であることが特に好ましい。
本発明の繊維構造体の洗濯前後における吸湿率差(ΔMR)の変化率は、-15~15%であることが好ましい。本発明における繊維構造体の洗濯前後における吸湿率差(ΔMR)の変化率とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。繊維構造体の洗濯前後における吸湿率差(ΔMR)の変化率が-15%以上であれば、洗濯による繊維構造体の吸湿性の低下が抑制されており、繊維構造体の吸湿性の洗濯耐久性に優れるため好ましい。繊維構造体の洗濯前後における吸湿率差(ΔMR)の変化率は、-10%以上であることがより好ましく、-5%以上であることが更に好ましい。一方、繊維構造体の洗濯前後における吸湿率差(ΔMR)の変化率が15%以下であれば、洗濯による繊維構造体の吸湿性の向上が抑制されているため、海島型複合繊維の島に配置した吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う海成分の割れを抑制することができ、海成分の割れに起因した吸湿性ポリマーの溶出が抑制され、繊維構造体の吸湿性の洗濯耐久性に優れるため好ましい。繊維構造体の洗濯前後における吸湿率差(ΔMR)の変化率は、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。
本発明の繊維構造体の吸湿速度は、5~30mg/(g・分)であることが好ましい。本発明における吸湿速度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。繊維構造体の吸湿速度が5mg/(g・分)以上であれば、発汗時の衣服内の蒸れ感、べたつき感が少なく、着用快適性が向上するため好ましい。繊維構造体の吸湿速度は7mg/(g・分)以上であることがより好ましく、10mg/(g・分)以上であることが更に好ましい。一方、繊維構造体の吸湿速度が30mg/(g・分)以下であれば、繊維構造体を製造時の工程通過性や取り扱い性が良好であり、使用時の耐久性にも優れるため好ましい。繊維構造体の吸湿速度は27mg/(g・分)以下であることがより好ましく、25mg/(g・分)以下であることが更に好ましい。
本発明の繊維構造体の放湿速度は、5~30mg/(g・分)であることが好ましい。本発明における放湿速度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。繊維構造体の放湿速度が5mg/(g・分)以上であれば、発汗後の衣服内の汗冷え感が少なく、着用快適性が向上するため好ましい。繊維構造体の放湿速度は10mg/(g・分)以上であることがより好ましく、15mg/(g・分)以上であることが更に好ましい。一方、繊維構造体の放湿速度が30mg/(g・分)以下であれば、繊維構造体を製造時の工程通過性や取り扱い性が良好であり、使用時の耐久性にも優れるため好ましい。繊維構造体の放湿速度は27mg/(g・分)以下であることがより好ましく、25mg/(g・分)以下であることが更に好ましい。
本発明の繊維構造体の目付は、80~200g/mであることが好ましい。本発明における繊維構造体の目付とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。繊維構造体の目付が80g/m以上であれば、繊維構造体は薄地でありながら、機械的特性が良好となり、繊維構造体を製造時の工程通過性や取り扱い性が良好であり、使用時の耐久性にも優れるため好ましい。繊維構造体の目付は90g/m以上であることがより好ましく、100g/m以上であることが更に好ましい。一方、繊維構造体の目付が200g/m以下であれば、繊維構造体の軽量性が維持されており、本発明の繊維構造体を衣料として用いた場合に、着用時の重量感が少なく、良好な着用感を得ることができるため好ましい。繊維構造体の目付は170g/m以下であることがより好ましく、150g/m以下であることが更に好ましい。
本発明の繊維構造体の厚さは、0.30~0.90mmであることが好ましい。本発明における繊維構造体の厚さとは、実施例記載の方法で測定される値を指す。繊維構造体の厚さが0.30mm以上であれば、繊維構造体は薄地でありながら、機械的特性が良好となり、繊維構造体を製造時の工程通過性や取り扱い性が良好であり、使用時の耐久性にも優れるため好ましい。繊維構造体の厚さは0.33mm以上であることがより好ましく、0.35mm以上であることが更に好ましい。一方、繊維構造体の厚さが0.90mm以下であれば、繊維構造体は厚地でありながら、本発明の海島型複合繊維の効果により、発汗時の蒸れ感、べたつき感と発汗後の汗冷え感を軽減できるため好ましい。また、本発明の繊維構造体を衣料として用いた場合に、着用時の重量感が少なく、良好な着用感を得ることができるため好ましい。繊維構造体の厚さは0.80mm以下であることがより好ましく、0.70mm以下であることが更に好ましく、0.60mm以下であることが特に好ましい。
本発明の繊維構造体の通気性は、50~200cm/cm・sであることが好ましい。本発明における繊維構造体の通気性とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。繊維構造体の通気性が50cm/cm・s以上であれば、汗の蒸散性に優れ、本発明の繊維構造体を衣料として用いた場合に、発汗時の蒸れ感、べたつき感を軽減できるため好ましい。繊維構造体の通気性は70cm/cm・s以上であることがより好ましく、90cm/cm・s以上であることが更に好ましい。一方、繊維構造体の通気性が200cm/cm・s以下であれば、繊維構造体の機械的特性が良好となり、繊維構造体を製造時の工程通過性や取り扱い性が良好であり、使用時の耐久性にも優れるため好ましい。繊維構造体の通気性は170cm/cm・s以下であることがより好ましく、150cm/cm・s以下であることが更に好ましい。
本発明の繊維構造体の形態は、特に制限がなく、公知の方法に従い、織物、編物、パイル布帛、不織布などにすることができる。また、本発明の繊維構造体は、いかなる織組織または編組織であってもよく、平織、綾織、朱子織、二重織あるいはこれらの変化織や、経編、緯編、丸編、レース編あるいはこれらの変化編などが好適に採用できる。
本発明の繊維構造体は、海島型複合繊維とポリウレタン系弾性繊維へ他の繊維を混繊、混紡、交織、交編してもよい。他の繊維の具体例として、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維、レーヨン系繊維、アセテート系繊維、綿、麻、絹、ウールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の繊維構造体は、必要に応じて、染色してもよく、染料として分散染料、カチオン染料を好適に採用することができる。本発明における染色方法は、特に制限がなく、公知の方法に従い、チーズ染色機、液流染色機、ドラム染色機、ビーム染色機、ジッガー、高圧ジッガーなどを好適に採用することができる。また、本発明では、染料濃度や染色温度に関して特に制限がなく、公知の方法を好適に採用できる。さらには、必要に応じて、染色加工前に精練を行ってもよく、染色加工後に還元洗浄を行ってもよい。
本発明の繊維構造体は、吸湿性と放湿性を兼ね備え、発汗時の蒸れ感、べたつき感と発汗後の汗冷え感が軽減されており、着用快適性、着用感、吸湿性の洗濯耐久性に優れるものである。そのため、快適性が要求される衣料用途において好適に用いることができる。衣料用途の具体例として、インナーシャツ、タンクトップ、キャミソール、ストッキング、タイツ、スパッツ、トランクス、ブリーフ、ショーツなどの下着や、Tシャツ、ポロシャツ、カットソー、パジャマ、ブラウス、ブルゾン、作業着、スラックス、パンツ、スカートなどの上着などの一般衣料、スポーツ用インナーシャツ、スポーツ用シャツ、スポーツ用パンツなどのスポーツ衣料などが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、肌に直接触れるインナーシャツ、キャミソールなどの下着や、身体の動きへスムーズに追従することが求められるスポーツ用インナーシャツ、スポーツ用シャツなどのスポーツ衣料に好適に採用できる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法で求めた。
A.海/島複合比率(面積比)
実施例によって得られた編地から抜き取った海島型複合繊維をエポキシ樹脂で包埋し、Reichert製FC・4E型クライオセクショニングシステムで凍結し、ダイヤモンドナイフを具備したReichert-Nissei ultracut N(ウルトラミクロトーム)で切削した。その後、切削面すなわち繊維横断面を、日立製作所製透過型電子顕微鏡(TEM)H-7100FA型を用いて1000倍で観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。得られた写真から無作為に単糸10本を抽出し、画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)を用いて、各単糸において島成分の総面積と繊維横断面の面積を求め、下記式によって各単糸の島比率と海比率を算出し、海/島複合比率(面積比)とした。なお、抽出した全ての単糸について海/島複合比率(面積比)を算出し、その平均値を海/島複合比率(面積比)とした。
島比率=島成分の総面積÷繊維横断面の面積×100
海比率=100-島比率 。
B.最外層厚みT
上記Aに記載の海/島複合比率(面積比)と同様の方法で繊維横断面を観察し、単糸の全体像が観察できる最も高い倍率で顕微鏡写真を撮影した。得られた写真において、画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)を用いて、繊維横断面の輪郭に2点以上で接する真円の半径を繊維の半径として求め、さらに図1中の4のように海島構造の外周に配置された島成分と2個以上接するように外接する真円(外接円)の半径を求めた。得られた写真から無作為に単糸10本を抽出し、繊維の半径および海島構造部分の外接円の半径を同様に求め、それぞれの単糸において繊維の半径と海島構造部分の外接円の半径の差を算出し、その平均値を最外層厚みT(nm)とした。
C.繊維直径R
上記Aに記載の海/島複合比率(面積比)と同様の方法で繊維横断面を観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。得られた写真から無作為に単糸10本を抽出し、画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)を用いて、抽出した全ての単糸の繊維直径を測定し、その平均値を繊維直径R(μm)とした。繊維横断面は必ずしも真円とは限らないため、真円ではない場合には、繊維横断面の外接円の直径を繊維直径として採用した。
D.T/R
T/Rは、上記Bで算出した最外層厚みT(nm)と、上記Cで算出した繊維直径R(μm)を用いて下記式により算出した。
T/R=T/(R×1000) 。
E.海島型複合繊維の吸湿率差(△MR)
実施例で用いた海島型複合繊維を試料とし、始めに60℃で30分熱風乾燥した後、温度20℃、湿度65%RHに調湿されたエスペック製恒温恒湿機LHU-123内に24時間静置し、ポリマーの重量W1(g)を測定後、温度30℃、湿度90%RHに調湿された恒温恒湿機内に24時間静置し、ポリマーの重量W2(g)を測定した。その後、105℃で2時間熱風乾燥し、絶乾後のポリマーの重量W3(g)を測定した。ポリマーの重量W1、W3を用いて下記式により絶乾状態から温度20℃、湿度65%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR1(%)を算出し、ポリマーの重量W2、W3を用いて下記式により絶乾状態から温度30℃、湿度90%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR2(%)を算出した後、下記式によって吸湿率差(△MR)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を吸湿率差(△MR)とした。
MR1(%)={(W1-W3)/W3}×100
MR2(%)={(W2-W3)/W3}×100
吸湿率差(△MR)(%)=MR2-MR1 。
F.目付
目付は、実施例によって得られた編地を試料とし、JIS L1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)8.3.2(A法)に準じて算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を目付(g/m)とした。
G.厚さ
厚さは、実施例によって得られた編地を試料とし、JIS L1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)8.4(A法)に準じて算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を厚さ(mm)とした。
H.通気性
通気性は、実施例によって得られた編地を試料とし、JIS L1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)8.26.1(A法)に準じて算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を通気性(cm/cm・s)とした。
I.繊維構造体の吸湿率差(△MR)
吸湿率(%)は、実施例によって得られた編地を試料とし、JIS L1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)8.10の水分率に準じて算出した。始めに、編地を60℃で30分熱風乾燥した後、温度20℃、湿度65%RHに調湿されたエスペック製恒温恒湿機LHU-123内に編地を24時間静置し、編地の重量W1(g)を測定後、温度30℃、湿度90%RHに調湿された恒温恒湿機内に編地を24時間静置し、編地の重量W2(g)を測定した。その後、編地を105℃で2時間熱風乾燥し、絶乾後の編地の重量W3(g)を測定した。編地の重量W1、W3を用いて下記式により絶乾状態から温度20℃、湿度65%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR1(%)を算出し、編地の重量W2、W3を用いて下記式により絶乾状態から温度30℃、湿度90%RH雰囲気下に24時間静置したときの吸湿率MR2(%)を算出した後、下記式によって吸湿率差(△MR)を算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を吸湿率差(△MR)とした。
MR1(%)={(W1-W3)/W3}×100
MR2(%)={(W2-W3)/W3}×100
吸湿率差(△MR)(%)=MR2-MR1 。
J.洗濯前後における吸湿率差(ΔMR)の変化率
洗濯は、実施例によって得られた編地を試料とし、JIS L0217:1995(繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法)103法に準じて行い、洗剤として花王製アタック、漂白剤として花王製ハイター(2.3ml/L)を加え、10回洗濯後に60℃のタンブラー乾燥機で30分間乾燥した。洗濯10回とタンブラー乾燥1回を1セットとし、計10セット繰り返して洗濯を行った。この洗濯後の編地を試料とし、上記Iと同様の方法で編地の吸湿率差(△MR)を測定し、洗濯後の吸湿率差(ΔMR)を算出した。上記Iで算出した編地の吸湿率差(△MR)を洗濯前の吸湿率差(ΔMR)とし、下記式によって洗濯前後における吸湿率差(ΔMR)の変化率を算出した。
洗濯前後における吸湿率差(ΔMR)の変化率(%)={洗濯後の吸湿率差(ΔMR)-洗濯前の吸湿率差(ΔMR)}÷洗濯前の吸湿率差(ΔMR)×100 。
K.吸湿速度、放湿速度
吸湿速度、放湿速度は、実施例によって得られた編地を試料とし、下記方法に準じて測定した。始めに、編地を約10cm×約10cmに裁断後、温度25℃、湿度40%RHに調湿されたエスペック製恒温恒湿機LHU-123内に編地を24時間静置し、編地の重量W1(g)を測定後、温度25℃、湿度80%RHに調湿された恒温恒湿機内に編地を1分間静置し、編地の重量W2(g)を測定した。続いて、温度25℃、湿度80%RHに調湿された恒温恒湿機内に編地を24時間静置し、編地の重量W3(g)を測定後、温度25℃、湿度40%RHに調湿された恒温恒湿機内に編地を1分間静置し、編地の重量W4(g)を測定した。なお、吸湿速度、放湿速度それぞれについて、測定は1試料につき5回行い、その平均値を吸湿速度、放湿速度とした。
吸湿速度(mg/(g・分))={(W2-W1)/W1}×1000
放湿速度(mg/(g・分))={(W3-W4)/W3}×1000 。
L.蒸れ感
蒸れ感の着用試験のため、実施例によって得られた編地を縫製して半袖インナーを作製し、被験者10名に対し、作製した半袖インナーと、その上から綿製の長袖Yシャツを着用させた。続いて、夏の屋外環境を想定した温度30℃、湿度90%RHの室内において、椅子に30分間座って安静に過ごした後の半袖インナー内部の状況を被験者10名の合議によって、「吸湿性に極めて優れ、蒸れを感じない」を◎、「吸湿性に優れ、蒸れをほぼ感じない」を○、「吸湿性に劣り、蒸れを感じる」を△、「吸湿性に極めて劣り、蒸れを強く感じる」を×とし、◎、○を合格とした。
M.べたつき感
べたつき感の着用試験のため、被験者10名に対し、上記Lで作製した半袖インナーと、その上から綿製の長袖Yシャツを着用させた。続いて、夏の屋外環境を想定した温度30℃、湿度90%RHの室内において、10分間歩行を続けた後の半袖インナー内部の状況を被験者10名の合議によって、「ドライ感に極めて優れ、べたつきを感じない」を◎、「ドライ感に優れ、べたつきをほぼ感じない」を○、「ドライ感に劣り、べたつきを感じる」を△、「ドライ感に極めて劣り、べたつきを強く感じる」を×とし、◎、○を合格とした。
N.汗冷え感
汗冷え感の着用試験のため、被験者10名に対し、上記Lで作製した半袖インナーと、その上から綿製の長袖Yシャツを着用させた。続いて、上記Mと同様に、夏の屋外環境を想定した温度30℃、湿度90%RHの室内において10分間歩行を続けた後、冷房の効いた屋内環境を想定した温度25℃、湿度65%RHの室内へ速やかに移動し、椅子に30分間座って安静に過ごした後の半袖インナー内部の状況を被験者10名の合議によって、「発汗後の乾きが極めて速く、汗冷えを感じない」を◎、「発汗後の乾きが速く、汗冷えをほぼ感じない」を○、「発汗後の乾きが遅く、汗冷えを感じる」を△、「発汗後の乾きが極めて遅く、汗冷えを強く感じる」を×とし、◎、○を合格とした。
O.着用感
着用感については、被験者10名に対し、上記Lで作製した半袖インナーを着用させ、被験者10名の合議によって、「重量感が無く、圧迫感、たるみ感のいずれも無く、着用感に極めて優れる」を◎、「重量感がほぼ無く、圧迫感、たるみ感のいずれもほぼ無く、着用感に優れる」を○、「重量感、圧迫感、たるみ感のいずれかがあり、着用感に劣る」を△、「重量感、圧迫感、たるみ感のいずれかが強くあり、着用感に極めて劣る」を×とし、◎、○を合格とした。
実施例1
5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩を1.5mol%および数平均分子量1000g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG1000)1.0重量%を共重合したポリエチレンテレフタレート(IV=0.66)を海成分とし、数平均分子量3400g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG4000S)を50重量%共重合したポリブチレンテレフタレート100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤として、1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(CYTEC製Cyanox1790)を1.0重量部添加して事前に溶融混練したポリマーを島成分として用いた。海成分、島成分をそれぞれ150℃で12時間真空乾燥した後、島成分を30重量%、海成分を70重量%の配合比でエクストルーダー型複合紡糸機へ供給して別々に溶融させ、紡糸温度285℃において、図2(a)に示した海島複合口金を組み込んだ紡糸パックに流入させ、吐出孔から複合ポリマー流を吐出量25g/分で吐出させて紡出糸条を得た。なお、吐出プレート直上の分配プレートには、島成分用として1つの吐出孔当たり18の分配孔が穿設されており、図3の15に示される海成分用の環状溝には円周方向1°毎に分配孔が穿設されたものを使用した。また、吐出導入孔長は5mm、縮小孔の角度は60°、吐出孔径0.18mm、吐出孔長/吐出孔径は2.2、吐出孔数は72のものである。この紡出糸条を風温20℃、風速20m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、2700m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、ワインダーで巻き取って92dtex-72fの未延伸糸を得た。その後、延伸仮撚機(加撚部:フリクションディスク式、ヒーター部:接触式)を用いて、得られた未延伸糸をヒーター温度140℃、倍率1.4倍の条件で延伸仮撚し、海島型複合繊維として66dtex-72fの仮撚糸を得た。
得られた海島型複合繊維と、ポリウレタン系弾性繊維として東レ・オペロンテックス製“ライクラ”(登録商標)T-327C(22dtex)を用いて、釜径34インチ、ゲージ数28本/インチの丸編機にて、海島型複合繊維97重量%、ポリウレタン系弾性繊維3重量%の混率で交編して、天竺組織の生機編地を得た。
得られた生機編地を炭酸ナトリウム1.5g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS-20 0.5g/Lを含む水溶液中、80℃で20分間精練後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。精練後の編地を190℃で1分間乾熱セットし、乾熱セット後の編地に対して、カチオン染料として日本化薬製Kayacryl Blue 2RL-EDを1.0重量%加え、pHを4.0に調整した染色液中、浴比1:100、染色温度120℃、染色時間30分の条件で染色した。続いて、染色後の編地を流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。その後、160℃で1分間乾熱セットして仕上げセットを行い、編地を得た。得られた編地の布帛特性の評価結果を表1に示す。
実施例2~5、比較例1、2
実施例1において、海島型複合繊維とポリウレタン系弾性繊維の混率を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様に編地を作製した。得られた編地の布帛特性の評価結果を表1に示す。
比較例1では、ポリウレタン系弾性繊維の混率が高いため、半袖インナーとして着用した場合に圧迫感を強く感じ、着用感に極めて劣るものであった。また、ポリウレタン系弾性繊維の混率が高く、通気性が低いため、汗の蒸散性が低く、発汗時に蒸れ感、べたつき感を感じ、さらには半袖インナー内部に残留した汗により汗冷え感を感じるものであった。比較例2では、半袖インナーとして着用した場合に蒸れ感、べたつき感、汗冷え感を感じないものの、ポリウレタン系弾性繊維を含まないため、たるみ感を強く感じ、着用感に極めて劣るものであった。
実施例6~9、比較例3
実施例3において、海島型複合繊維の最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)を表2に示すとおり変更した以外は、実施例3と同様に編地を作製した。得られた編地の布帛特性の評価結果を表2に示す。
比較例3では、海島型複合繊維のT/Rが大きいため、島成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤が抑制されてしまい、海島型複合繊維および編地の吸湿性が低く、半袖インナーとして着用した場合に蒸れ感、べたつき感を感じるものであった。
比較例4
実施例3において、特開2007-100243号公報に記載の従来公知のパイプ型海島複合口金(1つの吐出孔当たりの島数18個)を用いて作製した海島型複合繊維を用いた以外は、実施例3と同様に編地を作製した。得られた編地の布帛特性の評価結果を表2に示す。
比較例4で用いた海島型複合繊維は、従来公知のパイプ型海島複合口金を用いて作製したため、得られた繊維の最外層の厚みが薄く、すなわちT/Rが小さく、編地を染色する際の熱水処理において島成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う海成分の割れが極めて多いものであった。この海成分の割れにより、染色時に島成分の吸湿性ポリマーが溶出し、染色後に吸湿性が大きく低下するため、編地の吸湿性は低いものであった。また、海成分の割れにより、島成分の吸湿性ポリマーの一部が表面に露出しているため、編地はぬめりやべとつきを有するものであった。そのため、半袖インナーとして着用した場合に蒸れ感、べたつき感を強く感じ、さらには半袖インナー内部に残留した汗により汗冷え感を感じるものであった。
比較例5
実施例3において、海島型複合繊維の代わりに、芯鞘複合口金を用いて作製した芯鞘型複合繊維(66dtex-72fの仮撚糸)を用いた以外は、実施例3と同様に編地を作製した。なお、比較例5においては、表2に記載の海成分、島成分はそれぞれ、鞘成分、芯成分に相当する。得られた編地の布帛特性の評価結果を表2に示す。
比較例5で用いた芯鞘型複合繊維は、編地を染色する際の熱水処理において芯成分の吸湿性ポリマーの体積膨潤に伴う鞘成分の割れが極めて多いものであった。この鞘成分の割れにより、染色時に芯成分の吸湿性ポリマーが溶出し、染色後に吸湿性が大きく低下するため、編地の吸湿性は低いものであった。また、鞘成分の割れにより、芯成分の吸湿性ポリマーの一部が表面に露出しているため、編地はぬめりやべとつきを有するものであった。そのため、半袖インナーとして着用した場合に蒸れ感、べたつき感を強く感じ、さらには半袖インナー内部に残留した汗により汗冷え感を強く感じるものであった。
実施例10、11、比較例6
実施例3において、海島型複合繊維の海/島複合比率を表3に示すとおり変更し、断面形状を図1(e)に示すとおり変更した以外は、実施例3と同様に編地を作製した。得られた編地の布帛特性の評価結果を表3に示す。
比較例6で用いた海島型複合繊維は吸湿性が低いため、編地の吸湿性も低く、半袖インナーとして着用した場合に蒸れ感、べたつき感を強く感じ、さらには半袖インナー内部に残留した汗により汗冷え感を感じるものであった。
実施例12、13
実施例3における海島型複合繊維を、実施例12では84dtex-24fの仮撚糸、実施例13では84dtex-48fの仮撚糸に変更した以外は、実施例3と同様に編地を作製した。得られた編地の布帛特性の評価結果を表3に示す。
実施例14~18
実施例3における海島型複合繊維の島成分を、実施例14では数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)を50重量%共重合したポリブチレンテレフタレート、実施例15では数平均分子量8300g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)を30重量%共重合したポリエチレンテレフタレート、実施例16では数平均分子量3400g/molのポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG4000S)を30重量%共重合したナイロン6、実施例17ではアルケマ製“PEBAX”(登録商標)MH1657、実施例18では東レ製PAS-40Nに変更し、フェノール系酸化防止剤の量を実施例14、15では4.0重量部に変更し、断面形状を実施例14~18において図1(d)に示すとおり変更した以外は、実施例3と同様に編地を作製した。得られた編地の布帛特性の評価結果を表4に示す。
実施例19、20
実施例14における海島型複合繊維の海成分を、実施例19ではポリエチレンテレフタレート、実施例20ではポリブチレンテレフタレートに変更し、得られた生機編地の精練から仕上げセットまでを下記に示すとおり変更した以外は、実施例14と同様に編地を作製した。得られた編地の布帛特性の評価結果を表4に示す。
得られた生機編地を炭酸ナトリウム1.5g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS-20 0.5g/Lを含む水溶液中、80℃で20分間精練後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。精練後の編地を190℃で1分間乾熱セットし、乾熱セット後の編地に対して、分散染料として日本化薬製Kayalon Polyester Blue UT-YAを1.3重量%加え、pHを5.0に調整した染色液中、浴比1:100、染色温度130℃、染色時間60分の条件で染色後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。続いて、染色後の編地を水酸化ナトリウム2g/L、亜ジチオン酸ナトリウム2g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS-20 0.5g/Lを含む水溶液中、浴比1:100、80℃で20分間還元洗浄後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。その後、還元洗浄後の編地を160℃で1分間乾熱セットして仕上げセットを行い、編地を得た。
実施例21~23
実施例14におけるフェノール系酸化防止剤の種類と量を、実施例21では3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]-ウンデカン(ADEKA製アデカスタブAO-80)を6.3重量部、実施例22ではペンタエリスリトール-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(BASF製Irganox1010)を5.0重量部、実施例23ではフェノール系酸化防止剤を無添加に変更した以外は、実施例14と同様に編地を作製した。得られた編地の布帛特性の評価結果を表5に示す。
実施例24、25
実施例3の海成分における5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩の共重合率を、実施例24では0.5mol%、実施例25では5.0mol%に変更した以外は、実施例3と同様に編地を作製した。得られた編地の布帛特性の評価結果を表5に示す。
比較例7、8
実施例19において海島型複合繊維の代わりに、比較例7ではポリエチレンテレフタレート(66dtex-72fの仮撚糸)、比較例8では綿(英式綿番手60Sの紡績糸)を用いた以外は、実施例19と同様に編地を作製した。得られた編地の布帛特性の評価結果を表5に示す。
比較例7ではポリエチレンテレフタレートを用いたため、編地の吸湿性が低く、半袖インナーとして着用した場合に蒸れ感、べたつき感を強く感じ、さらには半袖インナー内部に残留した汗により汗冷え感を感じるものであった。比較例8では綿を用いたため、編地の吸湿性が高く、半袖インナーとして着用した場合に蒸れ感、べたつき感を感じないものであった。しかしながら、綿は吸水性が高い反面、乾燥しにくいため、綿が汗を吸って繊維中に保持し、汗冷え感を強く感じるものであった。また、綿を用いた場合には編地が厚地となるため、重量感があり、着用感に劣るものであった。
Figure 0007069701000001
Figure 0007069701000002
Figure 0007069701000003
Figure 0007069701000004
Figure 0007069701000005
本発明の繊維構造体は、吸湿性と放湿性を兼ね備え、発汗時の蒸れ感、べたつき感と発汗後の汗冷え感が軽減されており、着用快適性、着用感、吸湿性の洗濯耐久性に優れる。そのため、衣料用途に好適に用いることができる。
1.海成分
2.島成分
3.繊維直径
4.最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円
5.最外層厚み
6.計量プレート
7.分配プレート
8.吐出プレート
9-(a).計量孔1
9-(b).計量孔2
10-(a).分配溝1
10-(b).分配溝2
11-(a).分配孔1
11-(b).分配孔2
12.吐出導入孔
13.縮小孔
14.吐出孔
15.環状溝

Claims (6)

  1. 海成分がポリエステル系ポリマー、島成分が吸湿性を有するポリマーであり、前記吸湿性を有するポリマーはフェノール系酸化防止剤を含有するポリエーテルエステルであり、前記フェノール系酸化防止剤の含有量は前記ポリエーテルエステル100重量部に対して1.0~10.0重量部であり、繊維横断面において、最外層厚みTと繊維直径Rの比(T/R)が0.05~0.25である海島型複合繊維と、ポリウレタン系弾性繊維を含む繊維構造体であり、ポリウレタン系弾性繊維を3~20重量%含み、繊維構造体の吸湿率差(ΔMR)が1.5~8.0%であることを特徴とする繊維構造体。
    なお、最外層厚みとは、繊維の半径と、最外周に配置された島成分の頂点を結んだ外接円の半径との差であり、最外層に存在する海成分の厚みを表す。
  2. 繊維構造体の吸湿速度が5~30mg/(g・分)であり、放湿速度が5~30mg/(g・分)であることを特徴とする請求項1項に記載の繊維構造体。
  3. 洗濯前後における繊維構造体の吸湿率差(ΔMR)の変化率が-15~15%であることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維構造体。
  4. 海島型複合繊維の繊維直径Rが6~15μmであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の繊維構造体。
  5. 海島型複合繊維の吸湿率差(ΔMR)が2.0~10.0%であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の繊維構造体。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の繊維構造体を少なくとも一部に用いることを特徴とする衣料。
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