JP7067750B1 - 親綱支柱及びクランプ補強冶具 - Google Patents
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Abstract
Description
通常、親綱を仮設足場に設置する際に使用される支柱は、所定の作業が終了した段階で撤去されるものであるため、仮設足場から容易に取り外すことができる構造でなければならない。その一方で、この支柱は、親綱にある程度の負荷が加わった場合でも容易には外れないような状態で仮設足場に取り付けられていることが必要である。
特許文献1に開示された発明は、下端に連結部が設置されて被取付部材の延長方向に沿って並べられる複数の手摺支柱の間に親綱が展張される手摺装置であって、親綱の展張方向に対して直交する補強フレームが手摺支柱と連結部の間に架設された構造となっている。
特許文献2に開示されたパラペット用スタンションは、親綱又はロープの一端を係止するリングが上端に設置された長尺な支柱と、この支柱の下部の一側から略水平に突出した水平突出腕と、支柱と略平行に垂下して、水平突出腕に上端部が固定又は摺動自在に取り付けられる垂直腕を備えている。また、支柱の下部の一端側に設けられた第1当接座の両側が垂直腕に対向するように支柱の左右側から突出し、垂直腕の下部の両脇に設けられた支持部材から突出長を調整自在に2個の調整ボルトが水平に並べて設けられている。さらに、各調整ボルトの先端には第1当接座に対向するように押圧当接板が設けられるとともに、水平突出腕の付け根付近の下面には水平突出腕の左右側から両側が突出した第2当接座が設けられている。そして、第1当接座、第2当接座をパラペットの外側及び頂部に当てた状態で、横に並んだ2個の調整ボルトの各押圧当接板をパラペットの内側に当てるように各調整ボルトの突出長を調整することにより、第1当接座、押圧当接板及び第2当接座とでパラペットを挟持する構造となっている。
特許文献3に開示された発明は、板材を挟持するためのクランプと、支柱の下端に取り付けられた連結金具と、クランプの上面に立設された雄ネジと、この雄ネジに取り付けられた第1のナットからなる仮設用衝撃吸収冶具であって、連結金具が、支柱の下端に対し下方へ突出するように設置されるとともに第1の貫通孔が設けられた矩形状の平板材からなる軸板と、この軸板の第1の貫通孔に挿通された連結用ボルトと、この連結用ボルトに取り付けられた第2のナットと、側面視L字をなして軸板に平行をなすように設置された取付部と支柱の長手方向と直交するように設置された連結部を有する一対の連結板を備えている。また、一対の連結板は、雄ネジと第1のナットによって連結部がクランプの上面に固定されるとともに、軸板と直交するように第1の貫通孔に挿通された状態の連結用ボルトを挿通可能に第2の貫通孔が取付部に設けられている。そして、連結用ボルトは、軸板の第1の貫通孔と一対の連結板の第2の貫通孔に挿通された状態で第2の貫通孔から突出した部分に第2のナットが取り付けられた構造となっている。
特許文献2に開示された考案に係るパラペット用スタンションは、バラペットの長手方向の荷重に対する強度は高められた構造となっているが、2本の調整ボルトの先端に設けられた第1当接座と押圧当接座ではパラペットを挟持する力が十分でないため、パラペットの長手方向と平行な鉛直平面内で支柱を回転させるようなモーメントが発生した場合に、支柱がパラペットから外れてしまう可能性が高い。
特許文献3に開示された発明は、水平に設置されたH鋼のフランジなどに取り付けて使用されるものであるが、H鋼の長手方向と平行に親綱を展張して使用する場合を想定した構造となっているため、H鋼の長手方向と直交するように親綱を展張した場合、板材に対するクランプの保持力が不足して、支柱本体が板材から外れてしまう可能性がある。
なお、フランジが鉛直平面と平行をなし、かつ、水平に設置されたH鋼に本発明の親綱支柱が設置される場合、当該フランジが上述の「鉛直平面と平行に設置された板状部材」に相当する。また、本発明における「鉛直方向と平行に設置される支柱本体」には、「鉛直方向と略平行に設置される支柱本体」が含まれ、「鉛直方向と平行に設置された板状部材」には、「鉛直方向と略平行に設置された板状部材」が含まれる。さらに、本発明において「仮想平面と板状部材が直交する」状態には「仮想平面と板状部材が略直交する」状態が含まれる。
上記構造の親綱支柱では、締付ボルトと受けボルトによって板状部材が挟持された状態でクランプが上方へ引っ張られた場合、締付ボルトと受けボルトが第1の脚部及び第2の脚部に保持された部分を中心として先端部が下方へ移動するように傾動し、締付ボルトと受けボルトの先端部と板状部材の接触面積が広くなるため、両者の間に大きな摩擦力が発生する結果、クランプの保持力が強まる。したがって、第2の発明においては、従来の親綱支柱に比べて支柱本体が板状部材から外れ難いという第1の発明の作用がより一層発揮される。
上記構造の親綱支柱では、締付ボルトと受け側パッドによって板状部材が挟持された状態でクランプが上方へ引っ張られた場合、ネジ部材の軸部が受け側パッドのネジ挿通孔を変形させながら上方へ移動することに伴って座金が第2の脚部と一体となって上方へ移動する結果、座金が楔としての機能を発揮し、受け側パッドを板状部材の方へ押し付けるという作用を有する。
上記構造の親綱支柱では、締付ボルトと受け側パッドによって板状部材が挟持された状態でクランプが上方へ引っ張られた場合、ネジ部材の軸部が受け側パッドのネジ挿通孔を変形させながら上方へ移動することに伴い、受け側パッドに対して第2の脚部が相対的に上方へ移動する結果、第2の脚部によって受け側パッドが板状部材の方へ押し付けられるという作用を有する。
なお、本発明においては、2枚の支持板に切り欠きを設け、この切り欠きを利用して2枚の支持板を十字に組む場合だけでなく、一方の支持板を2つに切断し、その切断片を他方の支持板に接合するなどして、上端側又は下端側から見た場合にそれらの支持板が十字をなす場合も、上述の「十字に組まれた状態」に含まれるものとする。また、本発明において「2枚の支持板のうちの一方が仮想平面と平行をなすように配置されている」状態には、「2枚の支持板のうちの一方が仮想平面と略平行をなすように配置されている」状態も含まれる。
第3の発明では、2枚の支持板のうちの一方が仮想平面と平行をなすように配置されていることから、当該支持板は板状部材の長手方向と直交し、他方の支持板は板状部材の長手方向と平行をなすことになる。この場合、板状部材の長手方向と直交する支持板は、板状部材と直交する鉛直平面内における曲げに対する連結金具の剛性を高め、板状部材の長手方向と平行な支持板は、板状部材と平行な鉛直平面内における曲げに対する連結金具の剛性を高めるように作用する。すなわち、第3の発明においては、板状部材の長手方向と直交する鉛直平面内における曲げ及び板状部材の長手方向と平行な鉛直平面内における曲げに対する連結金具の剛性が高いため、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、板状部材に対して親綱の展張方向が直交する場合又は平行な場合のいずれであっても、連結金具が破損し難いという作用を有する。
上記構造の親綱支柱においては、第5の発明の作用に加え、連結金具とクランプが固定ボルトによって着脱自在に連結されるという作用を有する。
なお、本発明における「環状部材」には、単体では完全な環状をなしているとは言えないものの、支柱本体の上部に接続された部分を併せると環状をなす場合のような「略環状をなす部材」も含まれる。また、「2つの環状部材が平面視十字をなす」状態には、「2つの環状部材が平面視略十字をなす」状態も含まれる。
第7の発明では、2つの環状部材のうちの一方が仮想平面と平行をなすように配置されていることから、支柱本体が板状部材に設置された場合、一方の環状部材は板状部材の長手方向と直交し、他方の環状部材は板状部材の長手方向と平行をなした状態となる。この場合、1つの板状部材に設置された2本の親綱支柱において、板状部材の長手方向と平行な各環状部材に親綱の両端をそれぞれ取り付けると、板状部材の長手方向と平行をなすように親綱が展張される。一方、2つの板状部材にそれぞれ設置された2本の親綱支柱において、板状部材の長手方向と直交する各環状部材に親綱の両端をそれぞれ取り付けると、板状部材の長手方向と直交するように親綱が展張される。
なお、本発明における「鉛直方向と平行に設置される支柱本体」には、「鉛直方向と略平行に設置される支柱本体」が含まれ、「鉛直方向と平行に設置された板状部材」には、「鉛直方向と略平行に設置された板状部材」が含まれる。また、本発明において「仮想対称面と直交する仮想平面」状態には「仮想対称面と略直交する仮想平面」が含まれる。
上記構造のクランプ補強冶具においては、クランプに締付ボルトが設けられた従来の親綱支柱に取り付けることにより、板状部材に対する保持力が強まるという作用を有する。
上記構造のクランプ補強冶具では、冶具用締付ボルトと冶具用受けボルトによって板状部材が挟持された状態で冶具クランプが上方へ引っ張られた場合、冶具用締付ボルトと冶具用受けボルトが第1の冶具脚部及び第2の冶具脚部に保持された部分を中心として先端部が下方へ移動するように傾動し、冶具用締付ボルトと冶具用受けボルトの先端部と板状部材の接触面積が広くなるため、両者の間に大きな摩擦力が発生する結果、冶具クランプの保持力が増大する。したがって、第9の発明においては、クランプに締付ボルトが設けられた親綱支柱に取り付けることにより、板状部材の保持力が強まるという第8の発明の作用がより一層発揮される。
なお、本発明の親綱支柱は、高所作業が行われる建設現場や工事現場等において、作業者の命綱を係留するための親綱を設置する際に用いられるものであり、本発明のクランプ補強冶具は、本発明の親綱支柱と同じ用途に用いられる従来の親綱支柱に取り付けられるものである。したがって、本明細書では、実際に本発明の親綱支柱や従来の親綱支柱がH鋼のフランジなどに取り付けられた状態を想定して、「上面」や「下面」あるいは「上向き」などの表現を用いている。すなわち、この「上」又は「下」の記載は、鉛直上下方向における上方側、又は、下方側をそれぞれ意味している。
図1(a)及び図1(b)に示すように、本発明の親綱支柱1aは、角筒状の金属製部材からなり、鉛直方向と平行をなすように設置される支柱本体10と、下向きに開口し、水平に設置されたH鋼において鉛直方向と平行をなすフランジを挟持するクランプ2aと、このクランプ2aの上側に設置されるとともに支柱本体10の下端10aに取り付けられる連結金具3を備えている。支柱本体10は、親綱23(図9(a)又は図9(b)を参照)の一端がそれぞれ取り付けられる2つの環状の把持部12a、12bが平面視略十字をなすとともに、後述する締付ボルト18及び受けボルト19の中心軸18b、19bが配置される仮想平面28a(図5(b)参照)と直交するように把持部12aが上端10bに設置され、仮想平面28aと平行をなすように把持部12bが上端10bに設置された上部支柱11aと、下端10aの近傍の側面10cに把持部12cが設けられ、上部支柱11aが上方からスライド自在に挿入される下部支柱11bからなる。また、支柱本体10の互いに平行な一対の側面10c,10cには、連結具13が横架されている。
なお、本実施例では、上部支柱11aが下部支柱11bに挿入される構造となっているが、上部支柱11aに下部支柱11bが挿入される構造であっても良い。また、上部支柱11aと下部支柱11bはいずれも筒状であるが、挿入される方のみを筒状とし、挿入する方を中実構造とすることもできる。また、把持部12a、12bは、図1(a)及び図1(b)に示した構造に限定されるものではなく、例えば、単体では完全な環状をなしているとは言えないものの、支柱本体10の上部に接続された部分を併せると環状をなす場合のように、略環状をなす部材によって形成されたものであっても良い。
連結金具3(図1(a)又は図1(b)参照)は、支柱本体10の下端10aから上部支柱11aの内部に挿設される金属製の角筒体4を備えており、角筒体4の互いに平行な一対の側面4a,4aには、上部支柱11aの一対の連結孔14a、14a及び下部支柱11bの一対の連結孔14b、14bとともにネジ13aを挿通可能に一対の連結孔4b,4bが設けられている。
クランプ2aが連結された連結金具3(図1(a)又は図1(b)参照)の角筒体4が図2(a)に示すように支柱本体10の下端10aから上部支柱11aの内部に挿設された状態で、上部支柱11aの一対の連結孔14a、14a及び下部支柱11bの一対の連結孔14b、14bと角筒体4の一対の連結孔4b,4bに連結具13のネジ13aが挿通されている場合、支柱本体10からクランプ2a及び連結金具3を分離することはできない。
一方、図2(b)に示すように、上部支柱11aの一対の連結孔14a、14a及び下部支柱11bの一対の連結孔14b、14bと角筒体4の連結孔4b,4bにネジ13aが挿通されていない状態であれば、支柱本体10からクランプ2a及び連結金具3を分離することができる。
また、親綱支柱1aでは、運搬や保管をする際にクランプ2a及び連結金具3を支柱本体10から取り外して嵩張らない状態にすることができる。さらに、親綱支柱1aでは、クランプ2aや連結金具3が破損した場合には支柱本体10から取り外すことができるため、クランプ2aや連結金具3の交換が容易である。なお、支柱本体10が破損した場合には、その支柱本体10からクランプ2aや連結金具3を取り外して、別の支柱本体10に付け替えるなどしてクランプ2aや連結金具3を再利用することが可能である。
図3及び図4に示すように、連結金具3は、図2を用いて既に説明した角筒体4と、角筒体4の下端4cに上面5aが接合され、角筒体4が上部支柱11a及び下部支柱11bに連結されることによって支柱本体10の下端10aに設置される略矩形状の基板5と、平面視略同一形状をなし、十字に組まれた状態(図3参照)で上端6a、7aが基板5の下面5bに接合される2枚の支持板6、7と、四隅にそれぞれ固定ボルト挿通孔8aを有し、支持板6、7の下端6b、7bが上面8bに接合される略矩形状の連結板8を備えている。そして、連結金具3が支柱本体10に取り付けられた状態でクランプ2aがH鋼のフランジなどの板状部材に取り付けられた際に、2枚の支持板6、7は一方が板状部材と平行をなすように配置されている。
支持板6、7は平面視した場合に等脚台形の下辺の両側が対称軸を中心として対称に切り取られた形状をなしており、支持板6では下端6bから上端6aに向かって対称軸と平行に切り欠き6cが設けられるとともに、支持板7では上端7aから下端7bに向かって対称軸と平行に切り欠き7cが形成されている。そして、切り欠き6c、7cは対称軸を中心として対称に、かつ、両者の長さの合計が上端6aから下端6b及び上端7aから下端7bまでの距離と等しくなるように形成されている。
なお、本実施例では支持板6、7が切り欠き6c、7cを利用して十字に組まれる構造となっているが、切り欠き6c、7cを設ける代わりに支持板6、7のいずれかを対称軸の位置で2つに切断し、支持板の切断によって生成される2つの切断片を他方の支持板の中心軸の位置に各切断面を接合することにより、中心軸と平行な方向に見た場合に十字をなす構造とすることもできる。
図5(a)及び図5(b)に示すように、クランプ本体15は、第1の脚部20及び第2の脚部21が対向するように3つずつ設けられており、上面15aには、固定ボルト17(図6参照)の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が内周面に形成された4つの固定ボルト孔16aが設けられている。また、第1の脚部20及び第2の脚部21には、締付ボルト18(図6参照)及び受けボルト19(図6参照)の雄ネジ部にそれぞれ螺合する雌ネジ部が内周面に形成された締付ボルト孔16b及び受けボルト孔16cが設けられている。
本実施例では、クランプ本体15に3つずつ設けられた第1の脚部20及び第2の脚部21のそれぞれに対して締付ボルト孔16bや受けボルト孔16cが形成されているが、第1の脚部20及び第2の脚部21を図5(a)に示すように3つずつに分ける代わりに、それぞれ1つに繋がった形状として、1つの第1の脚部20に3つの締付ボルト孔16bを設けるとともに、1つの第2の脚部21に3つの受けボルト孔16cを設けた構造としても良い。
このように、親綱支柱1aにおいては、連結金具3に対してクランプ2aが着脱自在に連結される構造であるため、運搬や保管をする際に連結金具3からクランプ2aを取り外すことにより、嵩張らない状態にすることができる。また、締付ボルト18と受けボルト19のセット数や各セットの間隔がクランプ2aとは異なるクランプを複数個準備しておき、用途に応じて適切なクランプを選択して、連結金具3に取り付けることもできる。
なお、クランプ本体15の締付ボルト孔16b(図5(a)参照)、受けボルト孔16c(図5(a)参照)及び固定ボルト孔16a(図5(a)及び図5(b)参照)にそれぞれ螺入される締付ボルト18、受けボルト19及び固定ボルト17には、ハイテンションボルトが用いられている。また、締付ボルト18及び受けボルト19の先端部には、平面視円形をなすパッド18a、19aがそれぞれ取り付けられている。すなわち、クランプ2aは3セットの締付ボルト18及び受けボルト19の先端部に取り付けられたパッド18a、パッド19aによってH鋼のフランジ22aを挟持する構造となっている。
さらに、締付ボルト18及び受けボルト19は、鉛直方向と平行に設置される支柱本体10と平行であって、かつ、クランプ2aが板状部材に取り付けられた際に板状部材と直交する同一の仮想平面28a(図5(b)参照)内に中心軸18b、19bが配置されている。なお、中心軸18b及び19bは、締付ボルト18及び受けボルト19の各先端部が上を向くように、フランジ22aに直交する方向(水平方向)に対して傾斜した状態となっている。また、3セットの締付ボルト18及び受けボルト19は、中心軸18b、19bがそれぞれ配置される3つの仮想平面28a(図5(b)参照)が互いに平行をなすように設置されている。
なお、図7(a)及び図7(c)ではH鋼のフランジ22aを破線で示し、図7(b)及び図7(d)ではH鋼のフランジ22aを実線で示している。また、図7(b)及び図7(d)ではフランジ22aが締付ボルト18及び受けボルト19(図6参照)によって挟持される箇所(P1~P5)を破線の丸印で示し、当該箇所の中心同士を結んだ線を実線で示している。
クランプ2aに対して上方へ引っ張る力が加わった場合、クランプ2aとフランジ22aの間には下向きの摩擦力が発生する。このとき、1セットの締付ボルト18及び受けボルト19(図6参照)によって発生する摩擦力の大きさをFとすると、クランプ2aに3セットの締付ボルト18及び受けボルト19(図6参照)が設けられている場合には、図7(b)に示すようにP1~P3において大きさFの下向きの摩擦力がそれぞれ発生するため、クランプ2aには全体として3Fの大きさの下向きの摩擦力が作用する。
一方、図7(c)に示すようにクランプ2bに2セットの締付ボルト18及び受けボルト19(図6参照)が設けられている場合、図7(d)に示すようにP4及びP5において大きさFの下向きの摩擦力がそれぞれ発生するため、クランプ2bには全体として大きさ2Fの摩擦力が下向きに作用する。
すなわち、3セットの締付ボルト18及び受けボルト19(図6参照)が設けられているクランプ2aでは、上向きの力が加わった際に2セットの締付ボルト18及び受けボルト19(図6参照)が設けられているクランプ2bに作用する摩擦力よりも大きな摩擦力が作用する。
なお、親綱支柱1aはクランプ2aに3セットの締付ボルト18及び受けボルト19(図6参照)が設けられているのに対し、従来の親綱支柱は、通常、1セット又は2セットの締付ボルト18や受けボルト19(図6参照)に相当する挟持手段を備えている。したがって、親綱支柱1aは、このような構造の従来の親綱支柱において発生する摩擦力よりも大きな摩擦力がフランジ22aとクランプ2aの間に発生する。すなわち、親綱支柱1aは従来の親綱支柱よりもクランプ2aの保持力が強いことから、従来の親綱支柱に比べて支柱本体10が板状部材から外れ難いという作用を有する。したがって、本発明の親綱支柱1aは安全性に優れている。
一方、図7(c)に示したクランプ2bに対して矢印Aで示す方向へ回転させるようなモーメントが加わった場合、それを打ち消すように、P5において締付ボルト18及び受けボルト19(図6参照)とフランジ22aの間に発生する摩擦力によってP4の中心の周りにクランプ2bを矢印Aと逆の方向へ回転させようとするモーメントが発生する。このモーメントの大きさをM2とし、図7(d)に示すようにP4P5間の距離をL2とすると、M2は式(2)で表される。
すなわち、3セットの締付ボルト18及び受けボルト19(図6参照)が設けられているクランプ2aでは、クランプ2aに対して矢印Aで示す方向へ回転させるモーメントが加わった際にそれを打ち消すように発生するモーメントが、2セットの締付ボルト18及び受けボルト19(図6参照)が設けられているクランプ2bに発生するモーメントよりも大きい。したがって、親綱支柱1aは、締付ボルト18及び受けボルト19(図6参照)に相当する2セットの挟持手段を備えている従来の親綱支柱と比べて、クランプ2aに対して矢印Aで示す方向へ回転させるモーメントが加わった際にそれを打ち消すような大きなモーメントが発生することから、従来の親綱支柱に比べて支柱本体10がフランジ22aから外れ難いという作用を有する。これにより、安全性に優れるという親綱支柱1aに関する前述の効果がより一層発揮される。
なお、本実施例ではクランプ2aに対して矢印A(図7(a)参照)で示す方向へ回転させるモーメントが加わった場合について説明したが、クランプ2aに対して矢印Aの方向と逆の方向へ回転させるモーメントが加わった場合でも、それを打ち消すように、従来の親綱支柱よりも大きなモーメントが発生するという親綱支柱1aの作用は同様に発揮される。
図8(a)に示すように、締付ボルト18及び受けボルト19によってH鋼のフランジ22aが挟持された状態でクランプ2aが上方へ引っ張られた場合、先端部が上を向くように第1の脚部20及び第2の脚部21にそれぞれ取り付けられた締付ボルト18及び受けボルト19は、第1の脚部20及び第2の脚部21に保持された部分を中心として矢印Bで示すように傾動する。これにより、図8(b)に示すようにパッド18a、19aのフランジ22aに対する接触面積が広くなり、締付ボルト18及び受けボルト19とフランジ22aの間に大きな摩擦力が発生するため、クランプ2aの保持力が強まる。したがって、親綱支柱1aでは、従来の親綱支柱に比べて支柱本体10がフランジ22aから外れ難いという前述の作用及び安全性に優れるという前述の効果がより一層発揮される。
図9(a)に示すように2本の親綱支柱1a、1aをH鋼22のフランジ22aに設置して、フランジ22aの長手方向と平行をなす一対の把持部12a、12aに親綱23の両端をそれぞれ取り付けると、フランジ22aの長手方向と平行をなすように親綱23が展張される。一方、図9(b)に示すように2本のH鋼22、22が互いに平行をなし、かつ、各フランジ22aが鉛直平面に平行となるように水平に設置されるとともに、H鋼22、22に設置された親綱支柱1a、1aにおいてフランジ22aの長手方向と直交する一対の把持部12b、12bに親綱23の両端をそれぞれ取り付けると、フランジ22aの長手方向と直交するように親綱23が展張される。すなわち、親綱支柱1aは、仮想平面28aと直交する把持部12aと、仮想平面28aと平行をなす把持部12bを備えているため、フランジ22aの長手方向と平行をなすように親綱23を展張する場合及びフランジ22aの長手方向と直交するように親綱23を展張する場合のいずれの場合にも用いることが可能である。
図9(a)に示すように2本の親綱支柱1a、1aの間に展張された親綱23に命綱を係留した状態でH鋼22の上を歩いていた作業者が足を踏み外すなどしてH鋼22から落下すると、急激に作業者の体重が親綱23に加わる。その結果、支柱本体10には、親綱23に引っ張られることにより、フランジ22aがクランプ2aによって保持された部分を中心として支柱本体10を回転させるようなモーメントが発生する。
このように、親綱支柱1aは親綱23の展張方向がH鋼22のフランジ22aと平行な場合又は親綱23の展張方向がH鋼22のフランジ22aと直交する場合のいずれであっても、連結金具3が破損し難いため、長期間使用することができる。なお、本実施例では、親綱支柱1bに親綱支柱1aと同じ連結金具3が用いられているが、連結金具3とは異なる構造の連結金具が親綱支柱1bに用いられている場合にも親綱支柱1aに関する上述の作用及び効果は同様に発揮される。
図10(a)及び図10(b)並びに図11(a)及び図11(b)に示すように、親綱支柱1bは図1(a)及び図1(b)に示した親綱支柱1aがクランプ2aの代わりに、2セットの締付ボルト18(図11(b)参照)を有するクランプ2cを備えた構造となっている。すなわち、親綱支柱1bは、下向きに開口し、2本の締付ボルト18(図11(b)参照)が設けられたクランプ2cと、このクランプ2cを構成するクランプ本体25(図11(a)及び図11(b)参照)の上面25a(図11(a)及び図11(b)参照)に着脱自在に連結される連結金具3と、この連結金具3が下端10aに取り付けられて鉛直方向と平行に設置される支柱本体10を備えており、H鋼のフランジなどのように鉛直方向と平行に設置された板状部材に設置された状態で使用されるものである。
クランプ2cは、図11(a)及び図11(b)に示すように第1の脚部26及び第2の脚部27が対向するように2つずつ設けられており、上面25aに固定ボルト17(図6参照)の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が内周面に形成された4つの固定ボルト孔(図示せず)が設けられたクランプ本体25と、第1の脚部26に設けられた締付ボルト孔(図示せず)に螺入され、先端部にパッド18aが取り付けられた締付ボルト18を備えている。なお、本実施例では、親綱支柱1bに親綱支柱1aと同じ連結金具3が用いられるとともにクランプ2cが用いられているが、連結金具3とは異なる構造の連結金具が親綱支柱1bに用いられている場合や親綱支柱1bがクランプ2cの代わりにクランプ2bを備えている場合にも以下に説明するクランプ補強冶具24の作用及び効果は同様に発揮される。
冶具用締付ボルト32及び冶具用受けボルト33は、仮想対称面28c(図12(b)及び図12(c)を参照)と直交し、かつ、支柱本体10が鉛直方向と平行をなすように設置された親綱支柱1bにクランプ補強冶具24が取り付けられた際に鉛直方向と平行をなす仮想平面28b(図12(a)参照)内に中心軸32b、33b(図12(b)参照)が配置されている。そして、中心軸32b及び33bは、冶具用締付ボルト32及び冶具用受けボルト33の各先端部が上を向くように仮想対称面28cと直交する方向に対して傾斜した状態となっている。
このような状態でクランプ補強冶具24が取り付けられた親綱支柱1bをH鋼のフランジなどの板状部材に設置した場合、クランプ2cの2本の締付ボルト18に加え、2セットの冶具用締付ボルト32及び冶具用受けボルト33によって板状部材が挟持されるため、板状部材を保持する力が強まる。したがって、クランプ補強冶具24を親綱支柱1bに取り付けることによれば、支柱本体10を板状部材から外れ難くすることができる。
また、冶具用締付ボルト32と冶具用受けボルト33によって板状部材が挟持された状態で冶具クランプ29が上方へ引っ張られた場合、冶具用締付ボルト32と冶具用受けボルト33が第1の冶具脚部34及び第2の冶具脚部35に保持された部分を中心として先端部が下方へ移動するように傾動し、冶具用締付ボルト32と冶具用受けボルト33の先端部に取り付けられているパッド32a、33aと板状部材の接触面積が広くなるため、両者の間に大きな摩擦力が発生する。その結果、冶具クランプ29の保持力が増大する。これにより、板状部材を保持する力がさらに強まり、クランプ2cが板状部材からより一層外れ難くなるため、親綱支柱1bの使用時の安全性が高まる。
すなわち、板状部材に設置される従来の親綱支柱に本発明のクランプ補強冶具を用いることによれば、親綱支柱におけるクランプが板状部材から外れ難くなるため、親綱支柱の使用時の安全性を高めることが可能である。
図15(b)及び図15(c)に示すようにクランプ2dは、クランプ2aにおいてクランプ本体15の第2の脚部21に受けボルト孔16c(図5(a)参照)が設けられる代わりにネジ孔16d及び凹状の保持部16e(いずれも図16(d)を参照)が設けられるとともに、受けボルト19及びパッド19aの代わりに、皿ネジ37、受け側パッド38及び座金39を備えている。
図16(e)に示すようにクランプ本体15の第2の脚部21の内面21aには、平面視矩形状をなし、所定の深さを有する保持部16eが座金39の一部を内部に配置可能に設けられている。また、図16(f)に示すように座金39は、平面視矩形状をなし、第1の接触面39aと第2の接触面39bが平行でなく(すなわち、第1の接触面39aを含む平面と第2の接触面39bを含む平面が第1の切断平面と第2の切断へ面がなす角度と同じ角度をなすように配置された状態であって)、第1の接触面39a及び第2の接触面の略中央に皿ネジ37の挿通孔39cが設けられている。すなわち、座金39は側面視楔状をなしている。
図16(g)に示すように座金39は、挿通孔39cに皿ネジ37の軸部37bが挿通されるとともに、受け側パッド38の接触面38b(前述の第2の切断平面による切断面に相当)(図16(b)及び図16(c)を参照)に対して第1の接触面39aが接触可能な状態であって、かつ、側面視した場合に幅の狭い側が上を向くように保持部16eに設置される。
受け側パッド38のネジ挿通孔38aを平面視した場合の輪郭線を構成する上記2つの円弧のうちの一方は、その中心が受け側パッド38の中心軸(前述の球の中心を通り、しかも第1の切断平面に垂直な直線)上に位置するように形成されている。そのため、皿ネジ37の中心軸37cが受け側パッド38の中心軸と一致するように軸部37bが受け側パッド38のネジ挿通孔38aに挿通された場合、図17(a)に示すように皿ネジ37の軸部37bは、上記一方の円弧内に配置される。
このように座金39が受け側パッド38に対して相対的に上方へ移動すると、第1の接触面39aに接触面38bが接触している受け側パッド38は座金39が楔としての機能を発揮する結果、座金39からフランジ22aの方へ押し付けられるような力を受けることになる。これにより、クランプ2dの保持力が強まるため、親綱支柱1cでは、親綱支柱1aに比べて支柱本体10がフランジ22aから外れ難いという作用及び安全性に優れるという効果がより一層発揮される。
図18(b)及び図18(c)に示すようにクランプ2eは、クランプ2dにおいてクランプ本体15の第2の脚部21に凹状の保持部16e(図16(d)及び図16(e)を参照)が設けられる代わりに凹状のガイド部16f(図19(d)及び図19(E)を参照)が設けられるとともに、受け側パッド38及び座金39の代わりに、受け側パッド40を備えている。
図19(e)に示すようにクランプ本体15の第2の脚部21の内面21aには、所定の深さを有するガイド部16fが受け側パッド40の凸部40dの一部を内部に配置可能に設けられている。なお、ガイド部16fは底面と第1の脚部20の間隔が第2の脚部21の先端側へ向かうほど狭くなるように形成されている。
受け側パッド40のネジ挿通孔40aを平面視した場合の輪郭線は、皿ネジ37の軸部37bの半径よりも大きな半径を有する2つの円弧によって形成されているが、2つの円弧の接続部分の間隔は皿ネジ37の軸部37bの太さよりも狭くなっている。そして、受け側パッド40の接触面40bは平面視矩形状をなすとともに、この矩形を構成する4辺のうちの2辺が上記円弧の中心同士を結ぶ線分と平行をなすように形成されている。
また、受け側パッド40のネジ挿通孔40aを平面視した場合の輪郭線を構成する上記2つの円弧のうちの一方は、その中心が受け側パッド40の中心軸(前述の球の中心を通り、しかも第1の切断平面に垂直な直線)上に位置するように形成されている。そのため、皿ネジ37の中心軸37cが受け側パッド40の中心軸と一致するように軸部37bが受け側パッド40のネジ挿通孔40aに挿通された場合、図20(a)に示すように皿ネジ37の軸部37bは、上記一方の円弧内に配置される。
また、図20(b)に示すように受け側パッド40は、接触面40b(図19(b)及び図19(c)を参照)に対して第2の脚部21のガイド部16fの底面が接触するとともに、凸部40dを側面視した場合に幅の狭い側が下を向くように設置される。
Claims (6)
- 鉛直方向と平行に設置された板状部材に設置される親綱支柱であって、
対向する第1の脚部及び第2の脚部を有して下向きに開口するクランプ本体と、
前記第1の脚部に設けられた締付ボルト孔に螺入された締付ボルトと、前記第2の脚部に装着されて前記板状部材を前記締付ボルトとともに挟持する受け側パッドと、この受け側パッドに設けられたネジ挿通孔に挿通されるネジ部材と、このネジ部材の挿通孔を有し、側面視楔状をなす座金と、からなるクランプと、
このクランプの上側に設置された連結金具と、
この連結金具が下端に取り付けられて長手方向が前記鉛直方向と平行をなすように設置される支柱本体と、を備え、
前記締付ボルトは、前記支柱本体と平行な仮想平面内に中心軸が配置され、
前記クランプは前記板状部材に対して前記仮想平面と前記板状部材が直交するように取り付けられ、
前記第2の脚部には、前記ネジ部材が螺入されるネジ孔と、前記座金の一部を内部に配置可能な凹状の保持部が設けられ、
前記ネジ挿通孔は、平面視した場合の輪郭線が、少なくとも一方が前記ネジ部材の軸部の半径よりも大きな半径を有する2つの円が一部を重なり合わせたような形状をなすとともに、最も間隔の狭い箇所が前記ネジ部材の前記軸部の太さよりも狭く、
前記座金は、側面視した場合に幅の狭い側が上を向くように前記保持部に設置されていることを特徴とする親綱支柱。 - 前記クランプは、前記座金を備える代わりに、前記受け側パッドの前記第2の脚部に対向する面に凸部が形成されるとともに、この凸部を上下方向へ案内するガイド部が前記第2の脚部に設けられ、
前記凸部は側面視楔状をなし、
前記ガイド部は、底面と前記第1の脚部の間隔が前記第2の脚部の先端側へ向かうほど狭くなるように形成されており、
前記受け側パッドは前記凸部を側面視した場合に幅の狭い側が下を向くように設置されていることを特徴とする請求項1に記載の親綱支柱。 - 前記連結金具は、
前記支柱本体の前記下端に設置された基板と、
十字に組まれた状態で上端が前記基板の下面に接合された2枚の支持板と、
下面が前記クランプ本体に連結されるとともに2枚の前記支持板の下端が上面に接合された連結板と、を備えており、前記クランプの上側に設置された状態において2枚の前記支持板のうちの一方が前記仮想平面と平行をなすように配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の親綱支柱。 - 前記クランプ本体は、固定ボルトが螺入される固定ボルト孔が上面に設けられており、
前記連結板は、前記固定ボルトが挿通される固定ボルト挿通孔が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の親綱支柱。 - 下向きに開口し、締付ボルトが設けられたクランプと、このクランプの上面に着脱自在に連結される連結金具と、この連結金具が下端に取り付けられて鉛直方向と平行に設置される支柱本体と、を備え、鉛直方向と平行に設置された板状部材に設置される親綱支柱に取り付けられるクランプ補強冶具であって、
仮想対称面を挟んで対向するように配置された第1の冶具脚部及び第2の冶具脚部を有し、下向きに開口する冶具クランプ本体と、
前記第1の冶具脚部に設けられた冶具用締付ボルト孔に螺入された冶具用締付ボルトと、
前記第2の冶具脚部に装着されて前記板状部材を前記冶具用締付ボルトとともに先端部同士で挟持する冶具用受けボルトと、からなる一対の冶具クランプと、
一対の前記冶具クランプの上部同士を繋ぐ連結部材と、を備え、
一対の前記冶具クランプは、前記連結部材が前記クランプの前記上面に設置された際に前記締付ボルトの両側にそれぞれ配置され、
前記冶具用締付ボルト及び前記冶具用受けボルトは、前記仮想対称面と直交する同一の仮想平面内にそれぞれの中心軸が配置され、
前記連結部材は、前記クランプと前記連結金具の間に着脱自在に設置され、
前記連結金具は、前記連結部材を介して前記クランプに連結されることを特徴とするクランプ補強冶具。 - 前記冶具用締付ボルト及び前記冶具用受けボルトは、前記先端部が上を向くように前記中心軸が前記仮想対称面と直交する方向に対して傾斜した状態で設置されていることを特徴とする請求項5に記載のクランプ補強冶具。
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