以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
また、車載レーダ装置を例にして、以下、説明するが、鉛直方向Dir_Eとは、路面に接しない自動車のタイヤ面に沿った上下の方向を意味し、水平方向Dir_Aとは、鉛直方向Dir_Eと直交する左右の方向を意味している。
(実施の形態1)
本発明者は、特許文献2に記載されている方法を、4つの受信アンテナに発展させることを考え、図28に示すような受信アンテナの配置に到達した。すなわち、図28は、本発明者が考えた受信アンテナの配置を示す図である。
図28において、破線で囲まれたRXANT1~RXANT4は、受信アンテナを示している。それぞれの受信アンテナは、パッチアンテナによって構成されている。受信アンテナRXANT1を例にして述べると、受信アンテナRXANT1は、鉛直方向Dir_E方向に沿って配置された4つのパッチPT_1~PT_4により構成されている。また、RCG1は、受信アンテナRXANT1の放射重心を示しており、PR1は、受信アンテナRXANT1から受信信号が取り出される端子を示している。このように、4つの受信アンテナを配置することにより、水平方向Dir_Aに配置されている受信アンテナRXANT1とRXANT3との中間に変換後アンテナを生成することが可能である。また、鉛直方向Dir_Eに配置されている受信アンテナRXANT2とRXANT4との中間に変換後アンテナを生成することが可能である。
その結果、水平方向Dir_Aおよび鉛直方向Dir_Eの両方で3つの受信信号を得ることが可能となり、等距離に2つの対象がある場合にも、これを分離して検出することが可能である。しかしながら、図28に示すように、鉛直方向Dir_Eに沿って、受信アンテナRXANT2およびRXANT4を配置することが必要となり、レーダ装置が大型化することが危惧される。
そのため、本発明者はさらに検討を続け、次に述べるレーダ装置の構成を考えた。
<レーダ装置の構成>
図1は、実施の形態1に係わるレーダ装置の構成を示すブロック図である。レーダ装置1は、受信系ブロックと送信系ブロックとを備えている。
受信系ブロックは、受信アンテナアレー2を構成するK個の受信アンテナRXANT1~RXANTKと、受信アンテナに対応したK個の受信器RXC1~RXCKと、受信器に対応したK個のA/D変換器ADC1~ADCKと、信号処理部CPUを備えている。送信系ブロックは、L個の送信アンテナTXANT1~TXANTLと、送信アンテナに対応したL個の送信器TXC1~TXCLと、信号生成器LO1とを備えている。信号生成器LO1によって生成された信号は、受信器RXC1~RXCKおよび送信器TXC1~TXCLの両方に供給されるため、信号生成器LO1は、受信系ブロックと送信系ブロックの両方に備えられていると見なすこともできる。
受信器RXC1~RXCKは、対応する受信アンテナRXANT1~RXANTKから入力された信号をダウンコンバートして、対応するA/D変換器ADC1~ADCKに出力する。このダウンコンバートの際に、受信器は、対応する受信アンテナから入力された信号と、信号生成器LO1からの信号との掛け合わせを実施する。掛け合わせにより得られた差分周波数の信号が、受信器から対応するA/D変換器に出力されることになる。
A/D変換器ADC1~ADCKは、入力した信号に対応するデジタルの中間周波信号IF1~IFKを信号処理部CPUへ出力する。信号処理部CPUでは、周波数弁別部FCONにおいて、入力した中間周波信号IF1~IFKに対してFFTなどの周波数弁別が実施される。周波数弁別部FCONは、弁別により得られたFFT解析結果FFT1~FFTKを、XY変換処理部XYCONに出力する。XY変換処理部XYCONは、XY変換処理により、FFT解析結果FFT1~FFTKを、水平方向のMA個(MA<K、L)の信号FFT_AZM1~FFT_AZMMAと、鉛直方向のME個(ME<K、L)の信号FFT_ELV1~FFT_ELVMEに変換する。
水平方向の信号FFT_AZM1~FFT_AZMMAは、角度検出処理部ANG_CAL(Azimuth)に供給され、鉛直方向の信号FFT_ELV1~FFT_ELVMEは、角度検出処理部ANG_CAL(Elevation)に供給される。角度検出処理部ANG_CAL(Azimuth)は、角度検出処理を実施することにより、水平方向の信号FFT_AZM1~FFT_AZMMAから、対象の水平方向の角度を検出し、検出信号Azimuthとして出力する。一方、角度検出処理部ANG_CAL(Elevation)は、角度検出処理を実施することにより、鉛直方向の信号FFT_ELV1~FFT_ELVMEから、対象の鉛直方向の角度を検出し、検出信号Elevationとして出力する。角度検出処理部ANG_CAL(Azimuth)およびANG_CAL(Elevation)で実施される角度検出処理としては、デジタル・ビームフォーミング処理やMUSICアルゴリズムなどが用いられる。
一方、送信器TXC1~TXCLは、信号生成器LO1からの信号を、対応する送信アンテナTXANT1~TXANTLに供給し、送信アンテナから無線信号を送信させる。なお、同図において、RP1~RPKは、受信アンテナの端子を示し、TP1~TPLは、送信アンテナの端子を示している。
<受信アンテナアレーの配置>
図2は、実施の形態1に係わる受信アンテナアレーの配置を示す図である。図2には、受信アンテナアレー2が、4つの受信アンテナRXANT1~RXANT4によって構成されている例が示されている。受信アンテナRXANT1~RXANT4のそれぞれは、直列的に接続された複数のパッチ(パッチアンテナ)を用いたシリーズフェッドアンテナにより構成されている。
1つのシリーズフェッドアンテナを構成する複数のパッチは、レーダ装置1が自動車等に設置されたときに、鉛直方向Dir_Eに沿って配列されている。図2では、鉛直方向にDir_Eに沿って配列された4つのパッチPT_1~PT_4によって、1つのシリーズフェッドアンテナが構成されている。図2では、受信アンテナRXANT1についてのみ、それを構成している4つのパッチに符号PT_1~PT_4が付されているが、他の受信アンテナRXANT2~RXANT4も同様である。また、受信アンテナRXANT2~RXANT4上に示した点RCG1~RCG4は、受信アンテナの放射重心を示している。本明細書においては、直列的に接続された複数のパッチ(図2では、4つのパッチPT1~PT4)においてアンテナの中心部分に配置された2つのパッチ(図2では、PT_2およびPT_3)の間の部分、すなわち、図2では破線で外形形状が示されたアンテナの中心部が、アンテナの放射重心となっている。
図2において、符号AZM1が付された一点鎖線は、水平方向Dir_Aに沿って延在する任意の水平基準線を示し、符号ELV1が付された一点鎖線は、鉛直方向Dir_Eに沿って延在する任意の鉛直基準線を示している。同図では、鉛直基準線ELV1は、受信アンテナRXANT2とRXANT3との間を延在するように設定されている。水平基準線AZM1と鉛直基準線ELV1とは直交している。同図に示すように、受信アンテナRXANT1~RXANT4のそれぞれは、鉛直基準線ELV1と平行し、水平基準線AZM1に沿って並ぶように配置されている。すなわち、受信アンテナRXANT1~RXANT4のそれぞれを構成する4つのパッチは、鉛直基準線ELV1と平行するように配列され、水平方向において異なる位置に配置されている。また、受信アンテナRXANT1~RXANT4のそれぞれの放射重心RCG1~RCG4が、鉛直方向Dir_Eにおいて異なる位置になるように、受信アンテナは配置されている。
水平基準線AZM1と鉛直基準線ELV1とによって生成される座標系を考えると、水平基準線AZM1と鉛直基準線ELV1とによって4象限が生成されることになる。実施の形態1においては、水平基準線AZM1と鉛直基準線ELV1とによって生成される4象限の全てに、受信アンテナRXANT1~RXANT4が配置される。次に、図3を用いて、受信アンテナRXANT1~RXANT4の配置をさらに詳しく説明する。放射重心RCG1~RCG4は、受信アンテナRXANT1~RXANT4の中心部に位置する。そのため、放射重心RCG1~RCG4は、対応する受信アンテナRXANT1~RXANT4の位置を表していることになる。理解を容易にするために、以下、放射重心を用いて受信アンテナ等の位置を説明する。
図3は、実施の形態1に係わる受信アンテナの放射重心の配置を示す図である。放射重心を用いて説明するために、図2に示した受信アンテナを構成する4つのパッチは、図3では省略し、図3には、受信アンテナRXANT1~RXANT4の放射重心RXANT1_R~RXANT4_Rのみが描かれている。また、図3において、鉛直基準線ELV1上の点E1~E3および水平基準線AZM1上の点A1~A3は、後で説明する変換後アンテナの放射重心を示している。同図および以下の図面では、受信アンテナの放射重心を、斜線で埋めた○で表し、変換後アンテナの放射重心を、●で表す。
図2に示したように、受信アンテナRXANT1~RXANT4を配置することにより、図3において、紙面の左下の第3象限QAD3には、受信アンテナRXANT1の放射重心RXANT1_Rが配置され、左上の第2象限QAD2には、受信アンテナRXANT2の放射重心RXANT_Rが配置されることになる。同様に、紙面の右下の第4象限QAD4には、受信アンテナRXANT3の放射重心RXANT3_Rが配置され、右上の第1象限QAD1には、受信アンテナRXANT4の放射重心RXANT4_Rが配置されることになる。
対象の水平方向の角度と鉛直方向の角度を検出するためには、水平方向に並んで配置された複数の受信アンテナと鉛直方向に並んで配置された複数の受信アンテナで受信された複数の信号が必要となる。例えば、対象の水平方向Dir_Aの角度を検出するためには、同じ水平基準線(AZM1)上に配置された複数の受信アンテナで受信された複数の信号が必要となる。同様に、対象の鉛直方向Dir_Eの角度を検出するためには、同じ鉛直基準線(ELV1)上に配置された複数の受信アンテナで受信された複数の信号が必要となる。
実施の形態1においては、異なる象限内に配置された複数の受信アンテナで受信した複数の信号を演算することにより、同じ水平基準線(AZM1)上または/および同じ鉛直線(ELV1)上に仮想的なアンテナ(以下、仮想的なアンテナを変換後アンテナと称する)を生成し、変換後アンテナで受信した信号と等価な信号を生成する。すなわち、水平基準線(AZM1)上および鉛直基準線(ELV1)上を除いた4つの象限内に、受信アンテナを配置することにより、水平基準線上および鉛直基準線上のそれぞれに複数の変換後アンテナを配置することが可能となり、受信アンテナアレー2が、水平方向および鉛直方向に大型化するのを抑制することが可能となる。
特に、実施の形態1では、受信アンテナを構成する複数のパッチが、鉛直方向に配置されているため、受信アンテナの鉛直方向が長くなる。そのため、同じ鉛直基準線上に複数の受信アンテナを配置すると、受信アンテナアレー2の鉛直方向が長くなる。実施の形態1によれば、鉛直基準線上および水平基準線上を除いた4つの象限内に受信アンテナを配置することにより、複数の変換後アンテナを同じ鉛直基準線上に形成することが可能となるため、鉛直方向に受信アンテナアレーが長くなるのを抑制することが可能である。すなわち、同じ鉛直方向に実際の受信アンテナを、複数配置することなく、鉛直方向の角度を検出できることから、従来に比べて角度分解能を高くできるだけでなく、鉛直方向の変換後アンテナの間隔を従来よりも狭くできるため、レーダ装置を小型化でき、さらに検出角度範囲も広くすることができる。
具体的に説明すると、図3において、水平基準線AZM1上に配置されている点A1およびA3と、鉛直基準線ELV1上に配置されている点E1およびE3と、水平基準線AZM1と鉛直基準線ELV1との交点に配置されている点A2,E2は、変換後アンテナの放射重心を示している。後で詳しく説明するが、仮想直線VLによって結ばれた複数の受信アンテナで受信した信号に基づいて、仮想直線VL上に、変換後アンテナが生成される。すなわち、変換後アンテナA1は、第2象限QAD2内に配置された受信アンテナRXANT2と第3象限QAD3内に配置された受信アンテナRXANT1で受信した信号に基づいて生成され、変換後アンテナA3は、第1象限QAD1内に配置された受信アンテナRXANT4と第4象限QAD4内に配置された受信アンテナRXANT3で受信した信号に基づいて生成される。
また、変換後アンテナE1は、第3象限QAD3内に配置された受信アンテナRXANT1と第4象限QAD4内に配置された受信アンテナRXANT3で受信した信号に基づいて生成され、変換後アンテナE3は、第1象限QAD1内に配置された受信アンテナRXANT4と第2象限QAD2内に配置された受信アンテナRXANT2で受信した信号に基づいて生成される。さらに、変換後アンテナA2、E2は、第2象限QAD2内に配置された受信アンテナRXANT2と第4象限QAD4内に配置された受信アンテナRXANT3で受信した信号に基づいて生成される。
<変換後アンテナの生成方法>
次に、上記した変換後アンテナの生成方法を、図4~図6を用いて説明する。
図4は、実施の形態1に係わるレーダ装置の構成を示すブロック図であり、図5および図6は、実施の形態1に係わる変換後アンテナの生成方法を説明するための説明図である。
図4は、図1に示したレーダ装置1から説明に必要な部分を取り出して、レーダ装置1として描いたブロック図である。すなわち、1つの変換後アンテナを生成するために、少なくとも2つの受信アンテナが要求されるため、2つの受信アンテナRXANT1、RXANT2を備えたレーダ装置1が、図4には描かれている。より具体的に述べると、図4に示したレーダ装置1は、2つの受信アンテナRXANT1、RXANT2と、2つの受信器RXC1、RXC2と、2つのA/D変換器ADC1、ADC2と、信号処理部CPUと、1つの送信アンテナTXANT1と、送信器TXC1と、信号生成器LO1とを備えている。
信号生成器LO1は、FMCW方式の信号を生成する。信号生成器LO1で生成された信号は、送信器TXC1から送信アンテナTXANT1の端子TP1に供給され、送信アンテナTXANT1から放射される。
送信アンテナTXANT1から放射された高周波信号は、対象で反射し、反射された信号は、受信アンテナRXANT1およびRXANT2で受信され、対応する受信器RXC1およびRXC2に入力される。受信器RXC1およびRXC2は、入力された受信信号をダウンコンバートする。このダウンコンバートのときに、信号生成器LO1からの信号と受信信号との差分周波数の信号が生成される。受信器RXC1およびRXC2でダウンコンバートされた信号は、対応するA/D変換器ADC1およびADC2に入力され、デジタルの中間周波信号IF1およびIF2が、A/D変換器ADC1およびADC2から出力される。
信号処理部CPUの周波数弁別部FCONで、中間周波信号IF1およびIF2に対する周波数弁別が実施され、FFT解析結果FFT1、FFT2が、XY変換処理部XYCONへ出力される。XY変換処理部XYCONは、変換後アンテナの信号VFFT1を出力する。この信号VFFT1は、図1に示した信号FFT_AZM1~FFT_AZMMAまたは信号FFT_ELV1~FFT_ELVMEの一部として、角度検出処理部ANG_CAL(Azimuth)またはANG_CAL(Elevation)に出力される。
図5には、図4に示した受信アンテナRXANT1、RXANT2と変換後アンテナの放射重心の配置が示されている。同図において、RXANT1_Rは、図4に示した受信アンテナRXANT1の放射重心を示し、RXANT2_Rは、受信アンテナRXANT2の放射重心を示している。また、図5において、VLは、受信アンテナRXANT1、RXANT2の放射重心RXANT1_R、RXANT2_R間を結ぶ仮想的な直線(仮想直線)である。仮想直線VL上であって、放射重心RXANT1_RとRXANT2_Rとの間に配置されている点VRXANT1_Rは、変換後アンテナVRXANT1の放射重心を示している。
FFT解析結果FFT1、FFT2は、複素数のデータである。このFFT解析結果をベクトル表記で表すと、図6に示すようになる。変換後アンテナVRXANT1の放射重心VRXANT1_Rを、仮想直線上VLであって、放射重心RXANT1_RとRXANT2_Rとの間の真ん中に生成する場合を考える。この場合には、変換後アンテナVRXANT1からの受信信号に基づいたFFT解析結果VFFT1のベクトルは、図6に示すように、FFT解析結果FFT1、FFT2のベクトルの間に挟まれ、中間に存在する。すなわち、変換後アンテナVRXANT1からの受信信号と等価な信号を、少なくとも2つの受信アンテナRXANT1、RXANT2からの受信信号に基づいて生成することが可能である。言い換えるならば、実際に配置した受信アンテナRXANT1、RXANT2からの受信信号に基づいて、仮想的に配置した変換後アンテナVRXANT1からの受信信号を等価的に生成することが可能である。
変換後アンテナは、受信アンテナ間を結ぶ仮想直線上に形成することが可能である。すなわち、受信アンテナRXANT1、RXANT2の放射重心を結ぶ仮想直線VL上であれば、図5に示すように、受信アンテナ間に変換後アンテナVRXANT1の放射重心を生成することも可能であるし、受信アンテナの外側に変換後アンテナVRXANT1_EXの放射重心VRXANT1_EX_Rを生成することも可能である。受信アンテナ間に変換後アンテナを生成する場合には、受信アンテナからの受信信号に基づいたFFT解析結果を用いた内挿法により、変換後アンテナからの受信信号に基づいたFFT解析結果を算出することが可能である。一方、受信アンテナの外側に変換後アンテナを生成する場合には、受信アンテナからの受信信号に基づいたFFT解析結果を用いた外挿法により、変換後アンテナからの受信信号に基づいたFFT解析結果を算出することが可能である。
以下、内挿法で、変換後アンテナからのFFT解析結果を生成する場合を、具体的に説明する。ここでは、図5に示すように、受信アンテナRXANT1の放射重心ANT1_Rと変換後アンテナVRXANT1の放射重視VRXANT1_Rとの間の距離がMで、受信アンテナRXANT2の放射重心ANT2_Rと変換後アンテナVRXANT1の放射重視VRXANT1_Rとの間の距離がNの場合を例にして説明する。すなわち、受信アンテナと変換後アンテナの距離の比が、M:Nの場合を説明する。
変換後アンテナVRXANT1からの受信信号に基づいたFFT解析結果VFFT1の値は、式(1)に示す複素数の演算により生成することができる。
式(1)に従って演算を実施することにより、任意の2つの受信アンテナを結ぶ仮想直線VL上であれば、どこにでも変換後アンテナを生成することが可能である。
次に、受信アンテナを複数配置したときに生成される変換後アンテナの具体例を、複数説明する。
<4つの受信アンテナを配置した具体例1>
図7は、実施の形態1に係わる受信アンテナアレーの配置を示す図である。また、図8は、実施の形態1に係わる受信アンテナと変換後アンテナの放射重心の配置を示す図である。図8には、図7に示した受信アンテナアレーに対応する放射重心が示されている。
実際の受信アンテナアレー2においては、図7に示すように、4つの受信アンテナRXANT1~RXANT4が、配置されている。各受信アンテナは、鉛直基準線ELV1に沿って配置された4つのパッチPT_1~PT_4により構成されている。受信アンテナRXANT1~RXANT4は、水平基準線AZM1に沿って配列されている。図7に示すように、各受信アンテナは、水平方向Dir_Aにおいて、互いに異なる位置に配置され、鉛直方向Dir_Eにおいて、それぞれの放射重心RCG1~RCG4が、異なる位置になるように配置されている。
図7に示すように、受信アンテナRXANT1~RXANT4を配置することにより、受信アンテナRXANT1~RXANT4の放射重心RXANT1_R~RXANT4_Rは、図8に示すように、水平基準線AZM1と鉛直基準線ELV1により形成される4象限QAD1~QAD4内に配置されることになる。すなわち、受信アンテナRXANT1の放射重心は第3象限QAD3内、受信アンテナRXANT2の放射重心は第2象限QAD2内、受信アンテナRXANT3の放射重心は第4象限QAD4内、受信アンテナRXANT4の放射重心は第1象限QAD1内に配置される。
図7に示したように受信アンテナを配置した場合、図8に示すように、水平方向Dir_Aにおいて隣接する受信アンテナの放射重心間の間隔は、全て等しくdAとなる。すなわち、放射重心RXANT1_RとRXANT2_Rとの間の水平方向の距離、放射重心RXANT2_RとRXANT3_Rとの間の水平方向の距離および放射重心RXANT3_RとRXANT4_Rとの間の水平方向の距離は、距離dAとなる。また、鉛直方向Dir_Eにおいて隣接する受信アンテナの放射重心間の間隔も、全て等しくdEとなる。すなわち、放射重心RXANT4_RとRXANT2_Rとの間の鉛直方向の距離、放射重心RXANT2_RとRXANT3_Rとの間の鉛直方向の距離および放射重心RXANT3_RとRXANT1_Rとの間の鉛直方向の距離は、距離dEとなる。
受信アンテナの放射重心は、受信アンテナの位置を表しているため、実際の受信アンテナRXANT1~RXANT4において、水平方向で隣接する受信アンテナ間の間隔は、全て間隔dAとなる。同様に、実際の受信アンテナRXANT1~RXANT4において、鉛直方向で隣接する受信アンテナ間の間隔は、全て間隔dEとなる。すなわち、受信アンテナRXANT1~RXANT4は、水平方向に等間隔に配置され、鉛直方向でも等間隔に配置されていることになる。
変換後アンテナの放射重心は、図8に示すように、水平基準線AZM1上および鉛直基準線ELV1上に生成する。すなわち、水平基準線AZM1上に、変換後アンテナの放射重心VRXANT_A1~A3を生成し、鉛直基準線ELV1上に、変換後アンテナの放射重心VRXANT_E1~E3を生成する。この場合、水平基準線AZM1と鉛直基準線ELV1とが交差する位置に形成される変換後アンテナは、鉛直および水平の両方の変換後アンテナとして機能することになる。すなわち、鉛直方向および水平方向の両方の角度を求める際に共通に用いられることになる。
図8に示した例では、変換後アンテナVRXANT1_A1からのFFT解析結果は、第2象限QAD2内に配置されている受信アンテナRXANT2(放射重心RXAMT2_R)からのFFT解析結果と、第3象限QAD3内に配置されている受信アンテナRXANT1(放射重心RXANT1_R)からのFFT解析結果とに基づいて生成される。すなわち、図8において、仮想直線VLで、互いに放射重心が結ばれている受信アンテナからのFFT解析結果に基づいて、仮想直線VL上の変換後アンテナのFFT解析結果が生成される。
以降、同様にして、変換後アンテナVRXANT1_A3からのFFT解析結果は、第1象限QAD1内に配置されている受信アンテナRXANT4(放射重心RXANT4_R)からのFFT解析結果と、第4象限QAD4内に配置されている受信アンテナRXANT3(RXANT3_R)からのFFT解析結果とに基づいて生成される。また、変換後アンテナVRXANT1_E1からのFFT解析結果は、第3象限QAD3内に配置されている受信アンテナRXANT1(放射重心RXANT1_R)からのFFT解析結果と、第4象限QAD4内に配置されている受信アンテナRXANT3(放射重心RXANT3_R)からのFFT解析結果とに基づいて生成される。さらに、変換後アンテナVRXANT1_E3からのFFT解析結果は、第1象限QAD1内に配置されている受信アンテナRXANT4(放射重心RXANT4_R)からのFFT解析結果と、第2象限QAD2内に配置されている受信アンテナRXANT2(放射重心RXAMT2_R)からのFFT解析結果とに基づいて生成される。
また、変換後アンテナVRXANT_A2、E2からのFFT解析結果は、第2象限QAD2内に配置されている受信アンテナRXANT2(放射重心RXANT2_R)からのFFT解析結果と、第4象限QAD4内に配置されている受信アンテナRXANT3(放射重心RXANT3_R)からのFFT解析結果とに基づいて生成される。
水平方向DIR_Aに沿って形成した変換後アンテナVRXANT_A1~A3からの受信信号に基づいたものと等価なFFT解析結果VFFT_A1~VFFT_A3の値は、式(2)~式(4)の複素数演算を行うことにより、生成することができる。ここで、FFT1~FFT4は、受信アンテナRXANT1~RXANT4(放射重心RXANT1_R~RXANT4_R)の受信信号に基づいたTTF解析結果を示している。
一方、鉛直方向DIR_Eに沿って形成した変換後アンテナVRXANT_E1~E3からの受信信号に基づいたものと等価なFFT解析結果VFFT_E1~VFFT_E3の値は、式(5)~式(7)の複素数演算を行うことにより、生成することができる。
対象の水平方向Dir_Aの角度は、生成したFFT解析結果VFFT_A1~VFFT_A3を用いて求め、対象の鉛直方向Dir_Eの角度は、生成したFFT解析結果VFFT_E1~VFFT_E3を用いて求める。すなわち、図1に示した角度検出処理部ANG_CAL(Azimuth)にFFT解析結果VFFT_A1~VFFT_A3が供給され、角度検出処理部ANG_CAL(Elevation)にFFT解析結果VFFT_E1~VFFT_E3が供給され、それぞれの角度検出処理部で、デジタル・ビームフォーミング処理やMUSICアルゴリズムなどを用いて、対象の角度を求め、出力する。
図8に示した配置の受信アンテナアレー2によれば、変換後アンテナも等間隔(間隔dA、間隔dE)で生成することができ、角度検出が容易である。また、変換後アンテナの間隔は、実際に受信アンテナを配置した間隔dA、dEよりも狭くすることができる。すなわち、変換後アンテナの間隔は、水平方向では4dA/5となり、鉛直方向も4dE/5で表される。実際の受信アンテナの間隔に比べて、変換後アンテナの間隔を狭くすることができるため、検出する角度範囲が広がるだけでなく、アンテナ利得も増大させることができる。
<4つの受信アンテナを配置した具体例2>
受信アンテナアレー2が、4つの受信アンテナRXANT1~RXANT4を備えることは、図7および図8を用いて説明した具体例1と同じであるが、象限QAD1~QAD4内における4つの受信アンテナRXANT1~RXANT4の位置が、具体例1とは異なっている。
図9は、実施の形態1に係わる受信アンテナと変換後アンテナの放射重心の配置を示す図である。具体例2において、具体例1と同様に受信アンテナRXANT1、RXANT2,RXANT3およびRXANT4(放射重心RXANT1_R~RXANT4_R)は、図8に示したように、第3象限QAD3内、第2象限QAD2内、第4象限QAD4内および第1象限QAD1内に配置されている。しかしながら、図9に示すように、各象限内において、放射重心の位置が、図8と異なるように、受信アンテナRXANT1~RXANT4は配置されている。
各象限内における放射重心の位置が、図8と異なるため、水平基準線AZM1上および鉛直基準線ELV1上に形成される変換後アンテナの放射重心VRXANT_A1_R~A3_RおよびVRXANT_E1_R~E3_Rの位置は、図8と異なる。しかしながら、実際の受信アンテナRXANT1~RXANT4において、水平方向で隣接した受信アンテナの間隔および鉛直方向で隣接した受信アンテナの間隔は、図8と同じで、間隔dAおよびdEとなっている。すなわち、受信アンテナアレー2において、受信アンテナRXANT1~RXANT4は、水平方向および鉛直方向で等間隔に配置されている。
具体例2のように受信アンテナRXANT1~RXANT4を配置した場合、水平方向Dir_Aに沿って生成される変換後アンテナVRXANT_A1~A3からの受信信号に基づいたFFT解析結果と等価なFFT解析結果VFFT_A1~VFFT_A3の値は、式(8)~式(10)の複素数演算により生成することができる。ここでも、FFT1~FFT4は、受信アンテナRXANT1~RXANT4の受信信号に基づいたTTF解析結果を示している。
一方、鉛直方向DIR_Eに沿って生成される変換後アンテナVRXANT_E1~E3からの受信信号に基づいたものと等価なFFT解析結果VFFT_E1~VFFT_E3の値は、式(11)~式(13)の複素数演算を行うことにより、生成することができる。
例2においても、例1と同様に、対象の水平方向の角度は、FFT解析結果VFFT_A1~VFFT_A3により求めることができ、対象の鉛直方向の角度は、FFT解析結果VFFT_E1~VFFT_E3により求めることができる。対象の角度を求める構成は、具体例1と同じであるため、説明は省略する。
具体例2のように、受信アンテナを配置した場合も、変換後アンテナは、等間隔に生成される。そのため、角度検出が容易である。一方、具体例2の場合には、水平方向における変換後アンテナの間隔は、4dA/3で表され、鉛直方向における変換後アンテナの間隔も、4dE/3で表される。そのため、実際の受信アンテナの間隔(間隔dA、間隔dE)に比べて、変換後アンテナの間隔を広くすることができる。そのため、必要なアンテナの間隔よりも狭い間隔で実際の受信アンテナを配置することが可能となり、受信アンテナアレー2の小型化を図ることが可能である。
すなわち、実施の形態1によれば、水平基準線上および鉛直基準線上の任意の位置に、変換後アンテナを生成することが可能であり、要求に応じて、アンテナ利得の増大または受信アンテナアレー2の小型化を図ることが可能である。
<6つの受信アンテナを配置した具体例3>
図10は、実施の形態1に係わる受信アンテナアレーの配置を示す図である。また、図11は、実施の形態1に係わる受信アンテナおよび変換後アンテナの放射重心の配置を示す図である。図11には、図10に示したように受信アンテナアレー2を構成した場合の受信アンテナおよび変換後アンテナの放射重心が示されている。
図10では、6つの受信アンテナRXANT1~RXANT6によって、受信アンテナアレー2が構成されている。図10においても、各受信アンテナは、図2で説明した受信アンテナと同様に、鉛直方向Dir_Eに沿って配列された複数のパッチ(PT_1~PT_4)により構成されている。図2と同様に、受信アンテナRXANT1~RXANT6は、水平方向Dir_Aに配列されているが、水平方向において全く異なる位置に配置されている。また、鉛直方向Dir_Eにおける受信アンテナRXANT1~RXANT6の位置も、互いに異なっている。
受信アンテナRXANT1~RXANT6において、水平方向Dir_Aで隣接する受信アンテナの間隔は、同じになっており、鉛直方向Dir_Eで隣接する受信アンテナの間隔も同じとなっている。
図10に示すように、受信アンテナRXANT1~RXANT6を配置した場合、受信アンテナRXANT1~RXANT6の放射重心RXANT1_R~RXANT6_Rは、図11に示すように配置される。すなわち、第1象限QAD1内に、受信アンテナRXANT4およびRXANT6の放射重心RXANT4_RおよびRXANT6_Rが配置され、第2象限QAD2内に、受信アンテナRXANT2の放射重心RXANT2_Rが配置される。また、第3象限QAD3内に、受信アンテナRXANT1およびRXANT3の放射重心RXANT1_RおよびRXANT3_Rが配置され、第4象限QAD4内に、受信アンテナRXANT5の放射重心RXANT5_Rが配置されることになる。
受信アンテナRXANT1~RXANT6からの受信信号に基づいて、水平基準線AZM1上および鉛直基準線ELV1上に、変換後アンテナVRXANT_A1~A5およびVRXANT_E1~E5が生成される。これにより、変換後アンテナVRXANT_A1~A5の放射重心VRXANT_A1_R~A5_Rが、水平基準線AZM1上に形成され、変換後アンテナVRXANT_E1~E5の放射重心VRXANT_E1_R~E5_Rが、鉛直基準線ELV1上に形成されることになる。
変換後アンテナからのFFT解析結果は、上記したのと同様に、仮想直線VLで結ばれた受信アンテナのFFT解析結果に基づいて生成される。なお、図面が複雑になるのを避けるために、図11には、受信アンテナRXANT4とRXANT5の放射重心間を結ぶ仮想直線についてのみ符号VLが付されている。
図11においても、符号dAは、水平方向で隣接する受信アンテナの間隔を示し、符号dEは、鉛直方向で隣接する受信アンテナの間隔を示している。図10および図11においても、受信アンテナアレー2において、水平方向および鉛直方向に、受信アンテナが等間隔(間隔dA、dE)で配置されている。
6つの受信アンテナRXANT1~RXANT6で受信され、周波数解析することにより得られたFFT解析結果FFT1~FFT6に基づいて、式(14)~式(23)の複素数演算を行う。この演算により、水平方向Dir_Aに沿って生成される変換後アンテナVRXANT_A1~A5および鉛直方向Dir_Eに沿って生成される変換後アンテナ放射重心VRXANT_E1~E5からの受信信号を周波数解析することにより得られるFFT解析結果を等価な結果を得ることができる。
対象の水平方向Dir_Aの角度は、生成したFFT解析結果VFFT_A1~VFFT_A5を用いて求め、対象の鉛直方向Dir_Eの角度は、生成したFFT解析結果VFFT_E1~VFFT_E5を用いて求める。対象の角度を求める構成は、具体例1と同じであるため、説明は省略する。
図10に示した配置の受信アンテナアレー2によれば、変換後アンテナも、水平方向Dir_Aおよび鉛直方向Dir_Eのそれぞれにおいて、等間隔で生成することができ、角度検出が容易である。また、変換後アンテナの間隔は、実際に受信アンテナを配置した間隔dA、dEよりも広くすることができる。すなわち、変換後アンテナの間隔は、水平方向では9dA/8で表され、鉛直方向も9dE/8で表される。実際の受信アンテナの間隔に比べて、変換後アンテナの間隔を広くすることができる。そのため、必要なアンテナの間隔よりも狭い間隔で実際の受信アンテナを配置することが可能となり、受信アンテナアレーの小型化を図ることが可能である。
また、具体例3によれば、水平方向Dir_Aおよび鉛直方向Dir_Eの両方で、変換後アンテナを5つ生成することができるため、具体例1および2よりも多くの対象、すなわち3つよりも多くの対象を別々に識別することが可能である。
<6つの受信アンテナを配置した具体例4>
図12は、実施の形態1に係わる受信アンテナアレーの配置を示す図である。また、図13は、実施の形態1に係わる受信アンテナおよび変換後アンテナの放射重心の配置を示す図である。図13は、図12に示すように、受信アンテナRXANT1~RXANT6を配置した場合の受信アンテナおよび変換後アンテナの放射重心を示している。
図10および図11を用いて説明した具体例3においては、受信アンテナアレー2において設定した水平基準線AZM1と鉛直基準線ELV1と、4象限を形成する水平基準線AZM1と鉛直基準線ELV1が、それぞれ同一の方向となっていた。すなわち、受信アンテナアレー2において設定した水平基準線AZM1と4現象を形成する水平基準線AZM1とが、一致し、水平方向Dir_Aに沿って延在していた。同様に、受信アンテナアレー2において設定した鉛直基準線ELV1と4現象を形成する鉛直基準線ELV1とが、一致し、鉛直方向Dir_Eに沿って延在していた。
これに対して、図12および図13を用いて説明する具体例4においては、4象限を形成する2つの基準線(以下、水平基準線AZM11および鉛直基準線EVL11、または第2仮想基準線および第1仮想基準線とも称する)は、受信アンテナアレー2に設定した水平基準線AZM1および鉛直基準線EVL1とは異なり、水平方向Dir_Aおよび鉛直方向Dir_Eとの間で所定の角度で延在している。また、水平基準線AZM11は、鉛直基準線EVL11と交差しているが、直交しておらす、水平基準線AZM11と鉛直基準線EVL11との間は所定の角度で交差している。すなわち、具体例4は、4現象を形成する水平基準線AZM11および鉛直基準線ELV11は、受信アンテナアレー2において設定される水平基準線AZM1および鉛直基準線ELV1と同じでなくてもよいことを示している。また、4象限を形成する水平基準線AZM11および鉛直基準線ELV11は、必ずしも直交することが必要でないことを示している。
図12は、図10と類似しているので、相異点を主に説明する。図12においては、受信アンテナアレー2に配置されている6つの受信アンテナRXANT1~RXANT6の位置が、図10とは異なっている。しかしながら、水平方向Dir_Aにおいて隣接する受信アンテナ間の間隔は同じ間隔dAであり、鉛直方向Dir_Eにおいて隣接する受信アンテナ間の間隔も同じ間隔dEである。
図12に示したように受信アンテナRXANT1~RXANT6を配置することにより、受信アンテナRXANT1~RXANT6の放射重心RXANT1_R~RXANT6_Rは、図13に示すように配置されることになる。
4象限を形成する水平基準線AZM11および鉛直基準線ELV11は、図13に示すように、水平方向Dir_Aおよび鉛直方向Dir_Eに対して所定の角度だけ傾いている。すなわち、水平基準線AZM11の傾き角度は、水平方向Dir_Aに対して、アークタンジェント(2dE/7dA)「Atan(2dE/7dA)」であり、鉛直基準線ELV11の傾き角度は、鉛直方向Dir_Eに対して、アークタンジェント(2dA/7dE)「Atan(2dA/7dE)」である。また、水平基準線AZM11と鉛直基準線ELV11とは、直交していない。
この傾いた水平基準線AZM11と鉛直基準線ELV11とによって、4象限が形成される。形成された4象限QAD1~QAD4内に配置されている受信アンテナからの受信信号に基づいて、傾いた水平基準線AZM11上および鉛直基準線ELV11上に変換後アンテナVRXANT_A1~A5およびVRXANT_E1~E5が生成される。図13には、生成される変換後アンテナVRXANT_A1~A5およびVRXANT_E1~E5の放射重心が、VRXANT_A1_R~A5_RおよびVRXANT_E1_R~E5_Rとして示されている。
水平基準線AZM11と鉛直基準線ELV11の両方が、傾くことにより、隣接する変換後アンテナの距離を等間隔にすることが可能である。すなわち、水平基準線AZM11上に生成される変換後アンテナVRXANT_A1~A5の放射重心VRXANT_A1_R~A5_Rは、図13に示すように等間隔になり、鉛直基準線ELV11上に生成される変換後アンテナVRXANT_E1~E5の放射重心VRXANT_E1_R~E5_Rも、図13に示すように等間隔になる。
この具体例4においても、受信アンテナRXANT1~RXANT6からの受信信号に基づいたFFT解析結果FFT1~FFT6を基にして、式(24)~式(33)の複素数演算を行うことにより、変換後アンテナVRXANT_A1~A5およびVRXANT_E1~E5からの受信信号に基づいたFFT解析結果と等価な結果を生成することができる。
水平基準線AZM11に沿った対象の角度は、生成したFFT解析結果VFFT_A1~VFFT_A5を用いて求め、鉛直基準線ELV11に沿った対象の角度は、生成したFFT解析結果VFFT_E1~VFFT_E5を用いて求める。対象の角度を求める構成は、具体例1と同じであるため、説明は省略する。
この具体例4では、具体例1~3と異なり、対象の角度は、水平方向Dir_Aとの間で所定の角度だけ傾いた水平基準線AZM11における角度を検出することができる。また、鉛直方向についても同様に、具体例4によれば、鉛直方向Dir_Eとの間で所定の角度だけ傾いた鉛直基準線ELV11における角度を検出することができる。
また、具体例3と同様に、具体例4によれば、水平基準線AZM11および鉛直基準線ELV11に沿って、それぞれ5つの変換後アンテナを生成することができるため、3つ以上の対象を識別することができる。
図13に示したように、水平基準線AZM11および鉛直基準線ELV11の両方において、変換後アンテナを等間隔に生成することができ、角度検出を容易にすることができる。この場合、水平基準線AZM11上に生成される変換後アンテナの間隔は、式(34)で表され、鉛直基準線ELV11上に生成される変換後アンテナの間隔は、式(35)で表される。
水平基準線AZM11と鉛直基準線ELV11とが直交しない例を説明したが、これに限定されるものではない。水平基準線AZM11および鉛直基準線ELV11は、それぞれ独立に、水平方向Dir_Aおよび鉛直方向Dir_Eとの間で任意の角度に設定することが可能である。従って、直交するように、水平基準線AZM11と鉛直基準線ELV11を設定してもよい。また、この具体例4によれば、受信アンテナアレー2において、実際の受信アンテナRXANT1~RXANT5を、水平基準線AZM1および鉛直基準線ELV1に合わせて配置しても、水平基準線AZM1および鉛直基準線ELV1とは異なる水平基準線AZM11および鉛直基準線ELV11における対象の角度を検出することが可能である。
<8つの受信アンテナを配置した具体例5>
図14は、実施の形態1に係わる受信アンテナアレーの配置を示す図である。また、図15は、実施の形態1に係わる受信アンテナおよび変換後アンテナの放射重心の配置を示す図である。図15には、図14に示したように受信アンテナアレー2を構成した場合の受信アンテナおよび変換後アンテナの放射重心が示されている。
具体例5においては、受信アンテナアレー2に、8つの受信アンテナRXANT1~RXANT8が配置されている。受信アンテナRXANT1~RXANT8のそれぞれの構成は、具体例1で説明した受信アンテナと同じである。具体例1と同様に、図14においても、受信アンテナRXANT1~RXANT8は、水平基準線AZM1に沿って配列されている。
具体例5においては、8つの受信アンテナRXANT1~RXANT8が、それぞれ4つの受信アンテナを備えた2つのグループに分けられている。すなわち、受信アンテナRXANT1~RXANT4を備える第1グループと、受信アンテナRXANT5~RXANT8を備える第2グループに分けられている。それぞれのグループに含まれる受信アンテナにおいては、鉛直方向Dir_Eにおける受信アンテナの位置が全て異なっている。
この具体例5においては、鉛直基準線ELV1は、第1グループと第2グループの間で無く、第1グループに含まれる受信アンテナRXANT2とRXANT3との間を延在するように設定されている。すなわち、鉛直基準線ELV1は、受信アンテナアレー2の中心から外れるように設定されている。
そのため、図15に示す第3象限QAD3には、受信アンテナRXANT1の放射重心RXANT1_Rが配置され、第2象限QAD2には、受信アンテナRXANT2の放射重心RXANT2_Rが配置されている。また、第1象限QAD1には、受信アンテナRXANT4、RXANT6およびRXANT8の放射重心RXANT4_R、RXANT6_RおよびRXANT8_Rが配置されている。さらに、第4象限QAD4には、受信アンテナRXANT3、RXANT5およびRXANT7の放射重心RXANT3_R、RXANT5_RおよびRXANT7_Rが配置されている。
それぞれのグループに含まれる受信アンテナにおいて、水平方向Dir_Aで隣接する受信アンテナは、水平方向に等間隔に配置されている。この間隔は、dAである。また、それぞれのグループに含まれる受信アンテナにおいて、鉛直方向Dir_Eで隣接する受信アンテナは、鉛直方向に等間隔に配置されている。この間隔は、dEである。具体例5では、水平方向Dir_Aにおいて、隣接する第1グループ内の受信アンテナRXANT4と、第2グループ内の受信アンテナRXANT5との間の水平方向の間隔は、間隔dAではなく、2倍の間隔(2dA)となっている。すなわち、水平方向において、第1グループと第2グループの間は、間隔2dAとなっている。
図15に示すように、仮想直線VLによって結ばれている2つの受信アンテナを用いて、水平基準線AZM1上および鉛直基準線EVL1上に、変換後アンテナVXANT_A1~A7(放射重心VXANT_A1_R~A7_R)およびVRXANT_E1~E3(放射重心心VXANT_E1_R~E3_R)を生成する。すなわち、受信アンテナRXANT1~RXANT8からの受信信号に基づいたFFT解析結果FF1~FFT8を用いて、式(36)~式(45)の複素数演算を行う。これにより、変換後アンテナVXANT_A1~A7およびVXANT_E1~E3からの受信信号に基づいたTTF解析結果と等価なTTF解析結果VFFT_A1~A7およびVFFT_E1~E3を生成する。
対象の水平方向Dir_Aの角度は、生成したFFT解析結果VFFT_A1~VFFT_A7を用いて求め、対象の鉛直方向Dir_Eの角度は、生成したFFT解析結果VFFT_E1~VFFT_E3を用いて求める。対象の角度を求める構成は、具体例1と同じであるため、説明は省略する。
具体例5によれば、第1グループに含まれる受信アンテナRXANT4と第2グループに含まれる受信アンテナRXANT5を用いて、第1グループと第2グループとの間に変換後アンテナVRXANT_A4(放射重心VRXANT_A4_R)を生成することができる。そのため、水平方向Dir_Aに生成される変換後アンテナVRXANT_A1~A7を等間隔に配置することが可能である。また、具体例3等と同様に、鉛直方向Dir_Eに生成される変換後アンテナVRXANT_E1~E3も等間隔に配置することが可能である。そのため、角度検出が容易である。具体例5においては、水平方向に生成される変換後アンテナの間隔は、4dA/3であり、鉛直方向に生成される変換後アンテナの間隔は、4dE/3である。具体例5によれば、変換後アンテナの間隔を、実際の受信アンテナの間隔よりも広くすることが可能である。そのため、受信アンテナアレー2に配置する受信アンテナの間隔を、要求される受信アンテナの間隔よりも狭くすることが可能となり、小型化を図るホトが可能である。
<8つの受信アンテナを配置した具体例6>
図16は、実施の形態1に係わる受信アンテナアレーの配置を示す図である。また、図17は、実施の形態1に係わる受信アンテナおよび変換後アンテナの放射重心の配置を示す図である。図17には、図16に示したように受信アンテナアレー2を構成した場合の受信アンテナおよび変換後アンテナの放射重心が示されている。
具体例6においては、受信アンテナアレー2に、8つの受信アンテナRXANT1~RXANT8が配置されている。受信アンテナRXANT1~RXANT8のそれぞれの構成は、具体例1で説明した受信アンテナと同じである。具体例1と同様に、図16においても、受信アンテナRXANT1~RXANT8は、水平基準線AZM1に沿って配列されている。
水平基準線AZM1に沿って配列された8つの受信アンテナRXANT1~RXANT8は、鉛直方向DIr_Eにおいて、互いに異なる位置に配置されている。水平方向Dir_Aにおいて、隣接する受信アンテナの水平方向の間隔は、等間隔となっている。水平方向の間隔は、dAである。一方、鉛直方向において、隣接する受信アンテナの鉛直方向の間隔は、受信アンテナアレー2の外周側に配置された受信アンテナRXANT1およびRXANT8を除いて、等間隔となっている。鉛直方向の等間隔の間隔は、dEである。
図16に示すように受信アンテナを配置すると、受信アンテナRXANT1~RXANT8の放射重心RXANT1_R~RXANT8_Rは、図17に示すように配置される。具体例6では、鉛直基準線ELV1は、受信アンテナRXANT4とRXANT5との間を延在するように設定されている。
これにより、設定された鉛直基準線ELV1と水平基準線AZM1とにより形成される4象限のうち、第1象限QAD1には、図17に示すように、受信アンテナRXANT5、RXANT7(放射重心RXANT5_R、RXANT7_R)が配置され、第2象限QAD2には、受信アンテナRXANT1、RXANT3(放射重心RXANT1_R、RXANT3_R)が配置されることになる。また、図17に示すように、第3象限QAD3には、受信アンテナRXANT4(放射重心RXANT4_R)が配置され、第4象限QAD4には、受信アンテナRXANT6、RXANT8(放射重心RXANT6_R、RXANT8_R)が配置されることになる。
水平基準線AZM1上および鉛直基準線ELV1上に、変換後アンテナVRXANT_A1~A7(放射重心VRXANT_A1_R~A7_R)およびVRXANT_E1~E5(放射重心VRXANT_E1_R~E5_R)が生成されるように、仮想直線VLで結ばれた互いに異なる象限内の受信アンテナのFFT解析結果FFT1~FFT8を用いて、式(46)~式(57)の複素数演算を行う。この演算を行うことにより、変換後アンテナVRXANT_A1~A7およびVRXANT_E1~E5からの受信信号に基づいたFFT解析結果と等価なFFT解析結果VFFT_A1~A7およびVFFT_E1~E5を生成することができる。
対象の水平方向Dir_Aの角度は、生成したFFT解析結果VFFT_A1~VFFT_A7を用いて求め、対象の鉛直方向Dir_Eの角度は、生成したFFT解析結果VFFT_E1~VFFT_E5を用いて求める。対象の角度を求める構成は、具体例1と同じであるため、説明は省略する。
具体例6によれば、水平方向Dir_Aに生成される変換後アンテナVRXANT_A1~A7を等間隔に配置することが可能であり、鉛直方向Dir_Eに生成される変換後アンテナVRXANT_E1~E3も等間隔に配置することが可能である。そのため、角度検出が容易である。具体例6においては、水平方向に生成される変換後アンテナの間隔は、9dA/8であり、鉛直方向に生成される変換後アンテナの間隔は、9dE/8である。具体例6においても、変換後アンテナの間隔を、実際の受信アンテナの間隔よりも広くすることが可能である。そのため、受信アンテナアレー2に配置する受信アンテナの間隔を、要求される受信アンテナの間隔よりも狭くすることが可能となり、小型化を図るホトが可能である。
<MIMO(Multiple-Input and MultipleOutput)レーダ装置>
図18は、実施の形態1に係わるレーダ装置のアンテナの配置を示す図である。また、図19は、実施の形態1に係わるアンテナの放射重心の配置を示す図である。
図18には、受信アンテナアレーと送信アンテナを含むアンテナの構成が示されている。受信アンテナアレー2の例として、図18には、図2で示した受信アンテナアレーが示されている。同図においては、受信アンテナアレー2に加えて、水平方向Dir_Aで、受信アンテナアレー2を挟むように、2つの送信アンテナTXANT1、TXANT2が追加されている。
受信アンテナアレー2を構成する受信アンテナには、送信アンテナTXANT1とTXANT2から、時分割の送信信号や位相変調された送信信号が入力される。これにより、MIMOレーダ装置を構成することができる。
受信アンテナアレー2において、図18に示すように受信アンテナRXANT1~RXANT4を配置することにより、図2および図3で説明したように、4象限QAD1~QAD4内に受信アンテナが配置され、水平基準線AZM1上および鉛直基準線ELV1上に変換後アンテナが形成される。すなわち、図19に示すように、第2象限QAD2内に受信アンテナRXANT2(放射重心RXANT2_R)が配置され、第3象限QAD3内に受信アンテナRXANT1(放射重心RXANT2_R)が配置され、第4象限QAD4内に受信アンテナRXANT3(放射受信RXANT3_R)が配置され、第1象限QAD1内に受信アンテナRXANT4(放射重心RXANT4_R)が配置される。
これらの受信アンテナRXANT1~RXANT4によって、図2および図3で説明したように、水平基準線AZM1上に変換後アンテナVRXANT_A1~A3(放射重心VRXANT_A1_R~A3_R:図3では、A1~A3)が生成されることになる。また、鉛直基準線ELV1上には、変換後アンテナVRXANT_E1~E3(放射重心VRXANT_E1_R~AE_R:図3では、E1~E3)が生成されることになる。
MIMOレーダ装置を構成するように、送信アンテナTXANT1およびTXANT2が追加されているため、仮想アンテナRXANT1’~RXANT4’が生じる。仮想アンテナRXANT1’~RXANT4’(放射重心RXANT1’_R~RXANT4’_R)は、受信アンテナRXANT1~RXANT4(放射重心RXANT1_R~RXANT4_R)と同様な配置パターンで、第1象限QAD1および第4象限QAD4内に配置されることになる。この仮想アンテナRXANT1’~RXANT4’に基づいて、水平基準線AZM1上に変換後アンテナRXANT_A5~RXANT_A7(放射重心RXANT_A5_R~RXANT_A7_R)を生成する。すなわち、仮想直線VLで結ばれ、異なる象限内に配置されている仮想アンテナからの受信信号に基づいたFFT解析結果を複素数演算することにより、水平基準線AZM1上に生成される変換後アンテナからの受信信号に基づいたFFT解析結果と等価なFFT解析結果を生成する。
また、受信アンテナRXANT4(放射重心RXANT4_R)と仮想アンテナRXANT1’(放射重心RXANT1’_R)は、異なる象限内に配置され、仮想直線VLで結ぶことができるため、実際の受信アンテナRXANT4と仮想アンテナRXANT1’とを用いて、水平基準線AZM1上に変換後アンテナVRXANT_A4(放射重心VRXANT_A4_R)が生成される。すなわち、受信アンテナRXANT4と仮想アンテナRXANT1’のFFT解析結果を複素数演算することにより、変換後アンテナVRXANT_A4のFFT解析結果と等価なFFT解析結果を生成する。
これにより、図19に示すように、水平基準線AZM1上には、7つの変換後アンテナVRXANT_A1~A7(放射重心VRXANT_A1_R~A7_R)が生成されることになる。この場合、図19に示すように、変換後アンテナは、等間隔に配置されている。
従来のMIMOレーダ装置では、隣接する受信アンテナ間の間隔をdAとし、受信アンテナの数をNとし、2つの送信アンテナ間の距離をdtrxとした場合、dtrx=dA×Nの関係が成立する必要がある。従って、送信アンテナと受信アンテナを隣接させて、コンパクトにアンテナを配置しようとすると、送信アンテナと受信アンテナの距離が短くなり、送受信間の干渉が大きくなったり、アンテナ利得が低下すると言う問題がある。
これに対して、図18および図19に示した構成では、図19で示したように、受信アンテナと仮想アンテナを用いて、変換後アンテナVRXANT_A4(放射重心VRXANT_A4_R)が配置される。そのため、送信アンテナ間の距離は、dtrx=dA×(N+1)となり、従来に比べて受信アンテナ間隔分広くすることができる。また、図18に示すように、受信アンテナを等間隔に配置することができるため、受信アンテナを効率よく配置して小型化も図ることが可能である。
図20は、実施の形態1に係わるレーダ装置による解析の結果を示す図である。同図において、横軸は水平および鉛直(Azimuth、Elevation)の角度を示し、縦軸はデジタル・ビームフォーミングのパワーを示している。図20において、破線は、従来のレーダ装置でターゲット(対象)の角度を求めたデジタル・ビームフォーミングによる解析例を示す波形である。ターゲットは、レーダ装置からの距離が3m、水平角度が30度、鉛直角度が15度に配置されている。従来のレーダ装置は、水平に3つ、鉛直にも3つの合計6つの受信アンテナが配置されている。そのため、水平角度も鉛直角度も求めることができるが、6つの受信アンテナがあるため、レーダ装置が大型化していた。
図20において、実線は、図1に示したレーダ装置1において、受信アンテナの構成を図2に示したようにしたときの解析波形を示している。ターゲットは従来のレーダ装置と同じである。この場合も、ターゲットの角度は、デジタル・ビームフォーミングにより解析している。図20から理解されるように、従来に比べて受信アンテナ数は6から4に削減されているにも関わらず、同等の解析結果が得られている。すなわち、少ない受信アンテナ数で水平と鉛直の両方の角度が検出できるため、レーダ装置を小型し、さらにはレーダ装置に必要なMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)の数も低減できることからコストも低減することができる。
なお、図20において、Azimuthの波形は、30度付近でピークとなり、Elevationの波形は、15度付近でピークとなっているため、ターゲットの水平角度および鉛直角度は、正しく検知されていることが分かる。
(実施の形態2)
<レーダシステム>
図21は、実施の形態2に係わるレーダシステムの構成を示すブロック図である。レーダシステム3は、レーダ装置1と処理装置4とを備えている。処理装置4は、レーダ装置1から検出信号Azimuth、Elevationが供給され、供給された検出信号を処理する。レーダ装置1は、図1で説明したレーダ装置に類似しているので、相異点を主に説明する。実施の形態2に係わるレーダ装置1は、図1に示したレーダ装置に対して、モード切替制御器MRR/SRR_CONと、MIMO制御器MIMO_CONが追加されている。また、レーダ装置1では、送信アンテナがTXANT1~TXANT3の3つになっており、送信アンテナに対応する送信器も、TXC1~TXC3の3つとなっている。
モード切替制御器MRR/SRR_CONは、至近距離まで検知する近距離検知(SRR:Short Range Radar)モード(以下、SRRモードと称する)と、中距離を検知する中距離検知(MRR:Middle Range Radar)モード(以下、MRRモードと称する)とを切り替える制御器である。モード切り替え制御器MRR/SRR_CONは、送信器RXC1~TXC3と信号生成器LO1に接続されている。MIMO制御器MIMO_CONは、送信器TXC1、TXC2と、XY変換処理部XYCONとに接続されている。
実施の形態2に係わるレーダ装置1においては、送信は2チャンネルで構成されている。すなわち、レーダ装置1は、送信アンテナTXANT1、TXANT2および送信器TXC1、TXC2を用いる送信チャンネルと、送信アンテナTXANT3および送信器TXC3を用いる送信チャンネルとを備えている。SRRモードが指定されると、モード切替制御器MRR/SRR_CONは、送信器TXC1およびTXC2をオン状態にし、送信器TXC3をオフ状態にする。一方、MRRモードが指定されると、モード切替制御器MRR/SRR_CONは、送信器TXC3をオン状態にし、送信器TXC1およびTXC2をオフ状態にする。すなわち、検知距離に応じて、送信アンテナTXANT1とTXANT2により構成された第1送信アンテナと、送信アンテナTXANT3により構成された第2送信アンテナとが切り替えられることになる。また、モード切替制御器MRR/SRR_CONは、SRRモードとMRRモードとで、信号生成器LO1が生成する信号を変更する。MRRモードとSRRモードでは、アンテナに求められる指向性や送信出力の大きさが異なるが、このように2つの送信チャンネルで構成することにより、2つのモードを一つのレーダシステム3で実現することができる。
SRRモードでは、オン状態にされた2つの送信器TXC1、TXC2を用いてMIMOレーダ装置を構成する。MIMOレーダ装置とすることで、角度検知精度を向上させることができる。MIMOレーダ装置を実現するために、送信器TXC1とTXC2は、時系列でオン/オフされるか、あるいは信号生成器LO1からの信号によって、送信器TXC1およびTXC2から出力される信号に位相変調が掛けられる。
次に、図21に示した受信アンテナRXANT1~RXANTKおよび送信アンテナTXANT1~TXANT3の構成を、図22を用いて説明する。ここでは、受信アンテナとして4つの受信アンテナRXANT1~RXANT4が設けられている例を説明する。
図22は、実施の形態2に係わるアンテナの配置を示す図である。図22は、図18に類似している。主な相異点は、図18に示した送信アンテナTXANT2の外側に、送信アンテナTXANT3が追加されていることである。送信アンテナTXANT3は、送信アンテナTXANT1、TXANT2に比べて大きくなっている。すなわち、送信アンテナTXANT3は、鉛直方向Dir_Eに沿って配列された2つのパッチ列を備え、それぞれのパッチ列が、互いに接続された6つのパッチPT_1~PT_6によって構成されている。送信アンテナを大きくすることにより、利得を大きくすることが可能である。そのため、MRRモードに際に、送信アンテナTXANT3を用いることにより、アンテナの利得を大きくすることが可能である。図22において、NDR1~NDR4は、受信アンテナの出力ノードを示し、NDT1~NDT3は、送信アンテナTXANT1~TXANT3の入力ノードを示している。この出力ノードNDR1~NDR4および入力ノードNDT1~NDT3は、あとで図25を用いて説明する。
図示しないが、さらに多くの送信チャンネルを設けることで、近距離と中距離だけでなく、アンテナ利得の高いアンテナを用いた遠距離や、輻射ビームを絞った狭角照射モードなどにも対応させることが可能である。このようにモードに応じて、変調周波数波形と出力する送信チャンネルを切り替えることで、一つのレーダシステムで至近距離から中距離、さらには遠距離まで検知することができるようになり、低価格のレーダシステムを提供することが可能となる。
SRRモードとMRRモードの切り替えは、予め定めたシーケンシャルに応じて切り替えるようにする方法や、車載用レーザシステムであれば自動車の速度(以下、自車速と称する)に応じて切り替える方法などがある。次にそれぞれの方法を適用する場合を、図面を用いて説明する。
図23は、実施の形態2に係わるモード切り替えを説明するためのタイミングチャート図である。図23では、MRRモードとSRRモードとが交互に切り替えられる。図21に示したレーダシステム3においては、モード切替制御器MRR/SRR_CONが、図23に示したタイミングチャートに従って、モードの切り替えを行う。また、SRRモードとMRRモードとの間に遷移期間SWを設け、この遷移期間SW中に、変調の設定と送信の設定を、切り替える先のモードに合わせるようにする。このようなタイミングチャートで切り替えることで、至近距離から中距離までを常時検知することが可能となる。
図24は、実施の形態2に係わるモード切り替えを説明するためのタイミングチャート図である。図24では、レーダシステム3を搭載した自動車の速度(Vehicle Speed)を基準として、MRRモードとSRRモードとを切り替える。すなわち、自車速が閾値を超えているか否かに応じて、MRRモードとSRRモードとが切り替えられる。閾値近辺で自車速が変化する場合、モード切り替えが頻繁に起こってしまう。そのため、図24の例では、閾値にヒステリシスが設けられている。
自車速が、第1の閾値Sp-TH1以上のときは、MRRモードに設定される。ここから自車速が第2の閾値Sp-TH2を下回った場合に、MRRモードからSPPモードに切り替える。逆に自車速が第2の閾値Sp-TH2以下から第1の閾値Sp-TH1を上回った場合に、SPPモードに切り替える。このように自車速に応じてモードを切り替えることで、そのときの自車速で、走行時に検知すべき対象を的確に検知できるようになる。図24の場合も、モード切り替えの期間には、遷移期間SWが設けられており、遷移期間SWにおいて、切り替え先のモードに合わせて、変調の設定と送信の設定を切り替える。
図25は、実施の形態2に係わるアンテナとMMICとの配置を示す図である。同図は、左右が反転されているが、図22に示したアンテナの配置を示している。すなわち、受信アンテナRXANT1~RXANT4を挟むように、送信アンテナTXANT1とTXANT2が配置され、さらに送信アンテナTXANT2の外側に大きな送信アンテナTXANT3が配置されている。同図において、5は、受信アンテナおよび送信アンテナに接続された受信器RXC1~RXC4および送信器TXC1~TXC3を備えたMMICを示している。
図25において、RXC1_T~RXC4_Tは、受信器RXC1~RXC4の入力端子を示し、TXC1_T~TXC3_Tは、送信器TXC1~TXC3の出力端子を示している。受信アンテナRXANT1~RXANT4の出力ノードNDR1~NDR4は、配線Nr1~Nr4を介して対応する受信器の入力端子RXC1_T~RXC4_Tに電気的に接続され、送信アンテナTXANT1~TXANT3の入力ノードNDT1~NDT3は、配線Nx1~Nx3を介して対応する送信器の出力端子TXC1_T~TXC3_Tに電気的に接続されている。
図25においては、受信アンテナRXANT1~RXANT4の出力ノードと、対応する出力端子RXC1_T~RXC4_Tとの間の直線距離が互いに異なっている。図25では、受信アンテナと対応する出力端子との間を伝達する信号の遅延が互いに等しくなるように、配線Nr1~Nr4の長さが設定されている。例えば、受信アンテナRXANT3は、受信アンテナRXANT4に比べて、対応する出力端子との間の直線距離が短くなっている。そのため、配線Nr3は、大きく屈曲するように形成されている。このようにすることにより、受信器と受信アンテナとの間の信号の伝達遅延が、互いに等しくなる。
送信アンテナTXANT1、TXANT2と、対応する出力端子TXC1_T、TXC2_Tとの間の直線距離も、互いに異なっている。送信アンテナTXANT1、TXANT2と、対応する送信器の出力端子との間を伝達する信号の遅延を互いに等しくするように、配線Nx1、Nx2の長さが設定されている。また、送信アンテナTXANT3は、送信アンテナTXANT1、TXANT2に比べて大きいため、送信アンテナTXANT3の入力ノードNDT3に付随する容量が大きくなる。この容量を考慮して、送信アンテナTXANT3と対応する送信器との間を伝達する信号の遅延が、送信アンテナTXANT1、TXANT2と対応する送信器との間の信号遅延と等しくなるように、配線Nx3の長さが設定されている。
実施の形態1および2においては、鉛直基準線および水平基準線を除く、4象限内のそれぞれに少なくとも1つの受信アンテナを配置する例を説明した。しかしながら、異なる2つの象限内のそれぞれに、少なくとも1つの受信アンテナを配置することにより、2つの受信アンテナを結ぶ仮想直線上に変換後アンテナを形成することが可能である。上記した複素数演算により、変換後アンテナからのFFT解析結果と等価な結果を生成するが、演算は、内挿法(または外挿法)の演算であるため、演算量の増加を抑制することが可能である。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。