JP7054998B2 - 塗膜および塗膜付き基材 - Google Patents
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Description
本発明者らは、特許文献1に記載された塗料を用いて得られる塗膜は、60度鏡面光沢度および85度鏡面光沢度の少なくとも一方が大きいのを知見した。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できるのを見出した。
上記塗膜表面における、算術平均粗さが5.0μm以上であり、二乗平均平方根粗さが3.0~9.0μmであることを特徴とする塗膜。
[2]上記光沢調整剤の平均粒子径が、8.6~12μmである、[1]の塗膜。
[3]上記含フッ素重合体が、フルオロオレフィンに基づく単位および親水性基を有する単量体に基づく単位を含む、[1]または[2]の塗膜。
[4]上記親水性基が水酸基またはカルボキシ基である、[3]の塗膜。
[5]上記光沢調整剤が、シリカ粒子である、[1]~[4]のいずれかの塗膜。
[6]上記フッ素系塗料の全固形分質量に対して、上記含フッ素重合体を10~95質量%含み、上記光沢調整剤を0.01~20質量%含む、[1]~[5]のいずれかの塗膜。
[7]上記塗膜表面における、60度鏡面光沢度が6以下であり、85度鏡面光沢度が15以下である、[1]~[6]のいずれかの塗膜。
[8]基材と、上記基材の表面上に配置された[1]~[7]のいずれかの塗膜とを有する、塗膜付き基材。
[9]含フッ素重合体、および、平均粒子径が8.6~12μmである光沢調整剤を含むフッ素系塗料であって、上記フッ素系塗料の全質量に対して、上記含フッ素重合体を5~90質量%含み、上記光沢調整剤を0.01~10質量%含むことを特徴とするフッ素系塗料。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」の総称である。
「単位」とは、単量体が重合して直接形成された、上記単量体1分子に由来する原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。「単量体に基づく単位」は、以下、単に「単位」ともいう。なお、重合体が含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、重合体の製造に際して使用する成分の仕込み量から決定できる。
「平均粒子径」は、レーザー回折法を測定原理とした公知の粒度分布測定装置(Sympatec社製、商品名「Helos-Rodos」等。)を用いて測定される、体積基準の粒度分布より算出される累積頻度50%における値である。
「酸価」と「水酸基価」は、それぞれ、JIS K 0070-3(1992)の方法に準じて測定される値である。
「数平均分子量」および「重量平均分子量」は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される値である。「数平均分子量」は「Mn」ともいい、「重量平均分子量」は「Mw」ともいう。
塗料の「固形分質量」とは、塗料が溶媒を含む場合に、塗料から溶媒を除去した質量である。
<測定条件>
使用機器:超深度形状測定顕微鏡(キーエンス社製、商品名「VK-8510」)
測定方法:非接触式、共焦点原理レーザー顕微鏡
対物レンズ倍率:50倍
RUN MODE:白黒超深度
カラー表示:高低画面
ピッチ:1μm
本塗膜は、60度鏡面光沢度および85度鏡面光沢度の両方の値が小さい。その理由の詳細は明らかではないが、RaおよびRMSが大きくなると(すなわち、塗膜表面に凹凸が存在する状態)、60度鏡面光沢度および85度鏡面光沢度が小さくなるため、結果として塗膜の光沢感が小さくなる。しかし、RMSが大きくなりすぎると(すなわち、塗膜表面の凹凸が偏在する状態)、60度における入射光が効率的に乱反射せず、部分的に全反射するため、60度鏡面光沢度が大きくなると考えられる。
すなわち、塗膜表面の表面粗さのうち、RaおよびRMSの両方が所定値を満たせば、60度鏡面光沢度および85度鏡面光沢度の両方の値が小さくなり、多様な角度から観察した場合であっても、照明等の映り込みがより少なく、光沢性が低い塗膜が得られるのを、本発明者らは見出した。
含フッ素重合体は、フッ素原子を有する重合体であればよく、フルオロオレフィンに基づく単位(以下、「単位F」ともいう。)および親水性基を有する単量体(以下、「単量体1」ともいう。)に基づく単位(以下、「単位1」ともいう。)を含むのが好ましい。
フルオロオレフィンの具体例としては、CF2=CF2、CF2=CFCl、CF2=CHF、CH2=CF2、CF2=CFCF3、CF2=CHCF3、CF3CH=CHF、CF3CF=CH2が挙げられ、共重合性の観点から、CF2=CFCl、CF3CH=CHF、CF3CF=CH2が好ましい。フルオロオレフィンは、1種を単独使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
単位Fの含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、本塗膜の耐候性の観点から、20~70モル%が好ましく、40~60モル%がより好ましい。
式中の記号は、以下の意味を示す。
X11は、CH2=CH-、CH(CH3)=CH-またはCH2=C(CH3)-であり、CH2=CH-またはCH(CH3)=CH-が好ましい。
Y11は、カルボキシ基またはカルボキシ基を有する炭素数1~12の1価の飽和炭化水素基であり、カルボキシ基または炭素数1~10のカルボキシアルキル基が好ましい。
X12は、CH2=CHO-またはCH2=CHCH2O-である。
Y12は、水酸基を有する炭素数2~12の1価の飽和炭化水素基である。1価の飽和炭化水素基は、直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。また、1価の飽和炭化水素基は、環構造からなっていてもよく、環構造を含んでいてもよい。
1価の飽和炭化水素基は、炭素数2~6のアルキル基または炭素数6~8のシクロアルキレン基を含むアルキル基が好ましい。
単量体12の具体例としては、CH2=CHO-CH2-cycloC6H10-CH2OH、CH2=CHCH2O-CH2-cycloC6H10-CH2OH、CH2=CHOCH2CH2OH、CH2=CHCH2OCH2CH2OH、CH2=CHOCH2CH2CH2CH2OH、CH2=CHCH2OCH2CH2CH2CH2OHが挙げられる。なお、「-cycloC6H10-」はシクロへキシレン基を表し、「-cycloC6H10-」の結合部位は、通常1,4-である。
単量体1は、1種を単独使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本塗料が硬化剤を含む場合、単位1の親水性基が架橋点となって、含フッ素重合体間の架橋反応が硬化剤を介して進行し、本塗膜の硬度が向上するので、その耐候性、耐水性、耐薬品性、耐熱性等の塗膜物性が向上する。
単位1の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、1~35モル%が好ましく、5~25モル%がより好ましく、5~20モル%が特に好ましい。
X2は、CH2=CHC(O)O-、CH2=C(CH3)C(O)O-、CH2=CHOC(O)-、CH2=CHCH2OC(O)-、CH2=CHO-またはCH2=CHCH2O-であり、本塗膜の耐候性に優れる観点から、CH2=CHOC(O)-、CH2=CHCH2OC(O)-、CH2=CHO-またはCH2=CHCH2O-が好ましい。
1価の炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基が好ましく、炭素数2~12のアルキル基、炭素数6~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~12のアラルキル基がより好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基が挙げられる。
シクロアルキル基の具体例としては、シクロヘキシル基が挙げられる。
アラルキル基の具体例としては、ベンジル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
単量体2の具体例としては、エチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、ピバル酸ビニルエステル、ネオノナン酸ビニルエステル(HEXION社製、商品名「ベオバ9」)、ネオデカン酸ビニルエステル(HEXION社製、商品名「ベオバ10」)、安息香酸ビニルエステルtert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
含フッ素重合体が単位2を含む場合、単位2の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、1~70モル%が好ましく、10~50モル%がより好ましい。
含フッ素重合体のMnは、本塗膜の加工性の観点から、2000~40000が好ましく、5000~30000がより好ましく、7000~20000が特に好ましい。
含フッ素重合体が酸価を有する場合、含フッ素重合体の酸価は、本塗膜の意匠性の観点から、1~150mgKOH/gが好ましく、3~100mgKOH/gがより好ましく、5~50mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体が水酸基価を有する含フッ素重合体である場合、含フッ素重合体の水酸基価は、本塗膜の意匠性の観点から、1~200mgKOH/gが好ましく、20~150mgKOH/gがより好ましく、40~100mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体は、水酸基価および酸価の少なくとも一方を有していればよく、両方を有していてもよい。含フッ素重合体が、水酸基価および酸価の両方を有する場合、水酸基価および酸価の合計は、1~200mgKOH/gが好ましく、40~100mgKOH/gが好ましい。
含フッ素重合体の含有量は、本塗料の全質量に対して、5~90質量%が好ましく、15~80質量%がより好ましく、20~50質量%が特に好ましい。含フッ素重合体の含有量が上記範囲内にあれば、本塗膜の耐候性がより向上する。
含フッ素重合体は、1種を単独使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
光沢調整剤の具体例としては、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、クレー、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウム等を構成材料とする無機粒子、ならびに、オレフィン樹脂、フッ素樹脂、アミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂およびシリコーン樹脂等を構成材料とする有機樹脂粒子が挙げられる。これらの中でも、本塗膜表面のRaおよびRMSが調整しやすくなる観点、および耐熱性に優れる観点から、無機粒子が好ましく、シリカを構成材料とする無機粒子(すなわち、シリカ粒子)がより好ましい。
光沢調整剤は、市販品を用いてもよく、具体例としては、MIZUKASIL P-801、P-510、P-803、P-527、P-603、P-73、P-78A、P-705、P-707、P-709、P-50、NP-8、P-802Y、P-832、P-87、No.30、C-002、C-402、C-484(以上全て水澤化学工業社製)、ACEMATT 810、HK125、HK450、TS100、3300(以上全てエボニック社製)が挙げられる。
特に、本塗料の全質量に対して、上記光沢調整剤を0.0.1~10質量%含み、かつ、上記含フッ素重合体を5~90質量%含む場合において、本塗膜の光沢性を好適に調整できる。
含フッ素重合体が水酸基を有する場合の硬化剤は、イソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物が好ましい。
含フッ素重合体がカルボキシ基を有する場合の硬化剤は、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基またはβ-ヒドロキシアルキルアミド基を、1分子中に2以上有する化合物が好ましい。
含フッ素重合体が水酸基およびカルボキシ基の両方を有する場合は、イソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物と、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基またはβ-ヒドロキシアルキルアミド基を1分子中に2以上有する化合物と、を併用するのが好ましい。
ポリイソシアネート単量体は、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、および芳香族ポリイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネート誘導体は、ポリイソシアネート単量体の多量体または変性体が好ましい。
脂環族ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
ブロック化剤は、活性水素を有する化合物であり、具体例としては、アルコール、フェノール、活性メチレン、アミン、イミン、酸アミド、ラクタム、オキシム、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ピリミジン、グアニジンが挙げられる。
本塗料が硬化剤を含む場合、硬化剤の含有量は、本塗料中の含フッ素重合体100質量部に対して、1~100質量部が好ましく、1~50質量部が特に好ましい。
なお、自己硬化性の樹脂を用いる場合、硬化剤は必須ではない。
本塗料は、熱硬化型、熱可塑型、常温乾燥型または常温硬化型等のいずれの硬化形式の塗料であってもよい。
有機溶剤の具体例としては、石油系混合溶剤(トルエン、キシレン、エクソンモービル社製ソルベッソ100、エクソンモービル社製ソルベッソ150等)、芳香族炭化水素溶剤(ミネラルスピリット等)、エステル溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン溶剤(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アルコール溶剤(エタノール、tert-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール等)が挙げられる。有機溶剤は、1種を単独使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本塗料が塗料溶媒を含む場合、塗料溶媒の含有量は、本塗料の全質量に対して、1~99質量%が好ましく、1~60質量%がより好ましく、1~40質量%が特に好ましい。
本塗膜表面におけるRaは5.0μm以上であり、RMSは3.0~9.0μmである。これにより、60度鏡面光沢度および85度鏡面光沢度の両方の値を小さくできる。
本塗膜表面におけるRaは、5.0μm以上であり、60度鏡面光沢度および85度鏡面光沢度の両方の値をバランスよく小さくできる観点から、5.2μm以上が好ましく、5.5μm以上が特に好ましい。本塗膜表面におけるRaは、本塗膜の意匠性の観点から、9.0μm以下が好ましく、8.0μm以下が特に好ましい。
本塗膜表面におけるRMSは、3.0~9.0μmであり、60度鏡面光沢度および85度鏡面光沢度の両方の値をバランスよく小さくするとともに、本塗膜の意匠性を確保する観点から、3.5~8.5μmが好ましく、5.5~8.0μmが特に好ましい。
本塗膜表面におけるRMSが9.0μm以下であれば、本塗膜表面の凹凸が不均一になりすぎず、かつ充分な凹凸が形成されるため、入射光が効率的に、かつ均一に乱反射され、本塗膜の意匠性に優れる。
本塗膜表面における最大高低差(Rz)は、本塗膜の意匠性の観点から、65~140μmが好ましく、70~130μmがより好ましく、75~100μmが特に好ましい。Rzが上記範囲内にあれば、本塗膜の光沢性を抑制しつつ、本塗膜の凹凸が強調されすぎないため、意匠性に優れる。なお、Rzは、RaおよびRMSと同様の装置を用いて測定できる。
本塗料は、本塗料の全固形分質量に対して、上述した含フッ素重合体を10~95質量%含み、上述した光沢調整剤を0.01~20質量%含むのが好ましい。また本塗料は、本塗料の全固形分質量に対して、上述した含フッ素重合体を15~85質量%含み、上述した光沢調整剤を1~10質量%含むのが特に好ましい。このことで、含フッ素重合体中に光沢調整剤が良好に分散し、上記Ra、RMS、Rz等を好適に調節できる。
本塗膜表面における60度鏡面光沢度は、6以下が好ましく、上記効果がより発揮される観点から、5以下が特に好ましい。また、本塗膜表面における60度鏡面光沢度は、0.1以上が好ましく、1以上が特に好ましい。
本塗膜表面における85度鏡面光沢度は、15以下が好ましく、上記効果がより発揮される観点から、10以下が特に好ましい。また、本塗膜表面における85度鏡面光沢度は、0.1以上が好ましく、1以上が特に好ましい。
本発明の塗膜付き基材は、基材上に本塗料を塗布して、本塗膜を形成することで製造できる。本塗料は、基材の表面に直接塗布してもよく、基材の表面に公知の表面処理を施した上に塗布してもよい。
上記表面処理の具体例としては、基材表面の研磨、サンダー処理、封孔処理、ブラスト処理、化成処理、プライマー処理および下塗り剤の塗布が挙げられる。
なかでも、家電製品、家具、建材および自動車部品等の外装部材用途においては、基材として、鉄、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、チタン等の金属板(金属基材)が好ましく、アルミニウムが特に好ましい。
金属板(アルミニウム等)を基材として用いる場合、塗膜密着性や耐食性の観点から、その表面に化成処理皮膜が形成された金属板が好ましい。化成処理の具体例としては、塗布クロメート処理、電解クロメート処理、クロムフリー処理およびリン酸塩処理が挙げられる。
本塗料の塗布方法の具体例としては、静電塗装法、刷毛塗り、ローラー塗り、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、インクジェット法、および、コンマコーター法が挙げられる。
塗装層の硬化方法としては、使用する基材の耐熱性および硬化剤の種類によって、例えば、常温乾燥、強制乾燥、焼き付け乾燥を適宜採用できる。
本塗膜の膜厚は、通常0.5~200μmであり、0.5~100μmがより好ましく、1~60μmがさらに好ましく、20~40μmが特に好ましい。本塗膜の膜厚が上記範囲内であれば、本塗膜のRa、RMSおよびRz等を好適に調整できる。
また、本発明のフッ素系塗料から形成されてなる塗膜の、上記塗膜表面における、算術平均粗さが5.0μm以上であり、二乗平均平方根粗さが3.0~9.0μmである。
本発明のフッ素系塗料の好適態様は、上述した本塗膜の形成に用いる本塗料と同様であるので、その説明を省略する。また、本発明のフッ素系塗料から形成されてなる塗膜は、上述した本塗膜と同様であるので、その説明を省略する。
また、例8~11は実施例であり、例12~14は比較例である。
オートクレーブに、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)(18.9g)、エチルビニルエーテル(EVE)(18.2g)、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)(11.6g)、キシレン(55.8g)、エタノール(15.7g)、炭酸カリウム(1.1g)、tert-ブチルペルオキシピバレート(PBPV)の50質量%キシレン溶液(0.7g)、およびクロロトリフルオロエチレン(CTFE)(58.2g)を導入して、撹拌下、65℃にて15時間重合した。オートクレーブ内溶液をろ過し、得られたろ液を減圧留去して、含フッ素重合体1を含む溶液(含フッ素重合体濃度60質量%)を得た。
含フッ素重合体1は、含フッ素重合体1が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位、CHVEに基づく単位、EVEに基づく単位、HBVEに基づく単位を、この順に50モル%、15モル%、25モル%、10モル%含む重合体であった。また、含フッ素重合体1は、水酸基価が52mgKOH/gであり、Tgが37℃であり、Mnが20000であった。
オートクレーブに、EVE(31.2g)、HBVE(12.6g)、キシレン(55.8g)、エタノール(15.7g)、炭酸カリウム(1.1g)、PBPVの50質量%キシレン溶液(0.7g)、およびCTFE(63.1g)を導入して、撹拌下、65℃にて15時間重合した。オートクレーブ内溶液をろ過し、得られたろ液を減圧留去して、含フッ素重合体2を含む溶液(含フッ素重合体濃度60質量%)を得た。
含フッ素重合体2は、含フッ素重合体2が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位、EVEに基づく単位、HBVEに基づく単位を、この順に50モル%、40モル%、10モル%含む重合体であった。また、含フッ素重合体2は、水酸基価が57mgKOH/gであり、Tgが23℃であり、Mnが20000であった。
オートクレーブに、CHVE(25.2g)、EVE(21.6g)、キシレン(55.8g)、エタノール(15.7g)、炭酸カリウム(1.1g)、PBPVの50質量%キシレン溶液(0.7g)、およびCTFE(58.2g)を導入して、撹拌下、65℃にて15時間重合した。オートクレーブ内溶液をろ過し、得られたろ液を減圧留去して、含フッ素重合体3を含む溶液(含フッ素重合体濃度60質量%)を得た。
含フッ素重合体3は、含フッ素重合体2が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位、CHVEに基づく単位、EVEに基づく単位を、この順に50モル%、20モル%、30モル%含む重合体であった。また、含フッ素重合体2は、Tgが44℃であり、Mnが15000であった。
(例1~7)
表1に記載の成分のうち、光沢調整剤以外を混合し、ビーズミルにて分散したのち、光沢調整剤を混合してフッ素系塗料1~6を得た。フッ素系塗料7については、光沢調整剤を混合しなかった。なお、表1中の数字は、フッ素系塗料の全質量に対する、各成分の質量%である。また、表中に記載の成分の詳細は以下の通りである。
着色剤:酸化チタン
硬化剤:ブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する化合物
溶剤 :キシレン
分散剤:ブロック共重合体を含む分散剤
増粘剤:脂肪酸アマイドペースト
酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤
硬化触媒:スズ系の硬化触媒
光安定剤:ヒンダードアミン系化合物
消泡剤:アクリル重合体とシリコーンを含む溶液
光沢調整剤1:ACEMATT TS100(シリカ粒子、平均粒子径9.5μm、エボニック社製)
光沢調整剤2:ACEMATT 3300(シリカ粒子、平均粒子径9.5μm、エボニック社製)
光沢調整剤3:Mizukasil P-510(シリカ粒子、平均粒子径10μm、水澤化学工業社製)
光沢調整剤4:Mizukasil P-526(シリカ粒子、平均粒子径6.5μm、水澤化学工業社製)
光沢調整剤5:Mizukasil P-78F(シリカ粒子、平均粒子径18μm、水澤化学工業社製)
(例8)
ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂とを含むプライマー塗料を、バーコーターを用いて、クロメート処理された基材(アルミニウム板)に塗布して、プライマー層を有するプライマー板(乾燥膜厚5μm)を得た。
次いで、フッ素系塗料1を、バーコーターを用いて、上記プライマー板のプライマー層上に塗布し、230℃にて60秒間乾燥させて、フッ素系塗料1から形成されてなる塗膜を形成し、基材上に、プライマー層と、フッ素系塗料1からなる塗膜とがこの順に積層された2層の複合塗膜(プライマー層とフッ素系塗料1からなる層との合計乾燥膜厚31μm)を有する塗膜付きアルミニウム板1を得た。塗膜付きアルミニウム板1を試験片1として、後述の通り評価した。結果を表2に示す。
フッ素系塗料1を、フッ素系塗料2~7に変更する以外は例8と同様にして、試験片2~7を得て、後述の通り評価した。結果を表2に示す。
試験片における塗膜表面の表面粗さを、以下の基準に従って評価した。表面粗さの算術平均粗さ(Ra)は、超深度形状測定顕微鏡(商品名「VK-8510」、対物レンズ50倍、キーエンス(株)製)にて測定した。
○:Raが5.0μm以上である。
×:Raが5.0μm未満である。
試験片における塗膜表面の表面粗さを、以下の基準に従って評価した。表面粗さの二乗平均平方根粗さ(RMS)は、超深度形状測定顕微鏡(商品名「VK-8510」、対物レンズ50倍、キーエンス(株)製)にて測定した。
○:RMSが3.0~9.0μmである。
×:RMSが3.0μm未満、またはRMSが9.0μm超である。
(塗膜の60度鏡面光沢度)
試験片における塗膜表面の60度鏡面光沢度を、JIS K 5600-4-7によって測定し、以下の基準に従って評価した。60度鏡面光沢度は、変角光沢計(商品名「UGV-6P」、入反射角60度、スガ試験機(株)製)にて測定した。
○:60度鏡面光沢度が6以下である。
△:60度鏡面光沢度が6超8未満である。
×:60度鏡面光沢度が8以上である。
試験片における塗膜表面の85度鏡面光沢度を、JIS K 5600-4-7によって測定し、以下の基準に従って評価した。85度鏡面光沢度は、変角光沢計(商品名「UGV-6P」、入反射角85度、スガ試験機(株)製)にて測定した。
○:85度鏡面光沢度が15以下である。
×:85度鏡面光沢度が15超である。
試験片における塗膜の意匠性を目視で評価した。
○:塗膜表面がフラットであり、一様に艶がない。
△:塗膜表面がフラットであるが、塗膜表面の面積の1%未満に光沢の縞が見られる。
×:塗膜表面に不均一な凹凸が目視できるか、または、塗膜表面の面積の1%以上に光沢の縞が見られる。
Claims (8)
- 含フッ素重合体および光沢調整剤を含むフッ素系塗料を用いてなる塗膜であって、
前記塗膜表面における、算術平均粗さが5.0μm以上であり、二乗平均平方根粗さが5.5~9.0μmであることを特徴とする塗膜。 - 前記光沢調整剤の平均粒子径が、8.6~12μmである、請求項1に記載の塗膜。
- 前記含フッ素重合体が、フルオロオレフィンに基づく単位および親水性基を有する単量体に基づく単位を含む、請求項1または2に記載の塗膜。
- 前記親水性基が水酸基またはカルボキシ基である、請求項3に記載の塗膜。
- 前記光沢調整剤が、シリカ粒子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の塗膜。
- 前記フッ素系塗料の全固形分質量に対して、前記含フッ素重合体を10~95質量%含み、前記光沢調整剤を0.01~20質量%含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の塗膜。
- 前記塗膜表面における、60度鏡面光沢度が6以下であり、85度鏡面光沢度が15以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の塗膜。
- 基材と、前記基材の表面上に配置された請求項1~7のいずれか1項に記載の塗膜とを有する、塗膜付き基材。
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