JP4189207B2 - 化粧材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電離放射線硬化性樹脂層によって耐摩耗性等の表面強度を有すると共に、艶消しシリカによって表面の艶を落とした化粧材に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙、樹脂シート、板材等の各種基材を化粧した化粧材が、建築物内装材、建具等の各種用途で使用されているが、耐摩耗性等の表面強度を得る場合、化粧材表面には2液硬化型ウレタン樹脂や電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂による樹脂層を設けることが多い。また、硬化性樹脂として電離放射線硬化性樹脂は、2液硬化型ウレタン樹脂等に比べて、瞬時硬化が可能で生産性に優れる、溶剤乾燥が不要で厚盛りができる、更にその結果、模様状の盛り上げ印刷もできる、等の種々の利点を有する。また、樹脂層の形成は、ドクターブレードとグラビア版を用いれば(グラビア塗工、グラビア印刷)、セル容積を制御することで樹脂層に厚さ変化を付けられ、豊かな意匠表現も可能となる。
【0003】
ただ、グラビア塗工或いはグラビア印刷に於いては、長時間、運転しているとドクター筋が発生してくる。ドクター筋は、ドクターブレードがその幅方向に均一に摩耗してくれれば良いのだが、そうでは無く、先端が局所的に削り取られ、先端を横切る様な溝状傷(ドクターダメージ)が発生し、この部分でインキ掻き取りが不十分となる為に発生する。この様なドクター筋は、ドクターブレードの交換を早目に行えば回避でき、また、ドクターブレードとして、旧来の鋼製ドクターブレードに代えてセラミックドクターを使用することで改善する。
【0004】
また、ドクター筋は、インキ乃至は塗液の組成面でも、その改善が試みられている。例えば、ロゼット状結晶をもつ無機顔料(特殊軽質炭酸カルシウム)を含有させたり(特許文献1)、水性インキにてN−ベンゾイルアミノアルカン酸アミン塩を含有させたり(特許文献2)、ポリカーボネート系樹脂等の球状の充填剤を含有させたり(特許文献3)、した組成物が提案されている。
【0005】
しかし、インキ乃至は塗液が、艶消しシリカ等の艶消し剤を含有している場合には、ドクター筋が特に発生し易かった。艶消しシリカは、化粧材表面の高艶が嫌われる等、艶を落とした表面(文字通りの艶消しの面の他、艶は有るが低艶の面等も含む)が要求される場合に使われ、従って、化粧材表面の樹脂層は、艶消し剤を添加した艶調整樹脂層として構成する(特許文献4等参照)。なお、艶消し剤としては各種あるが、なかでも艶消し効果が大きい点、コスト等の点で、艶消しシリカが最も一般的である。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−51549号公報
【特許文献2】
特開平6−220385号公報
【特許文献3】
特開平11−277685号公報(段落〔0013〕)
【特許文献4】
特許第2856862号公報(請求項2、第3頁右欄第48行〜第4頁左欄第8行)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く、艶消しシリカの添加は、ドクター筋が発生し易くなるという問題があったが、艶調整樹脂層を特に電離放射線硬化性樹脂で、それも無溶剤で形成する場合には、より顕著であった。しかも、電離放射線硬化性樹脂の場合、それ単体では塗膜面が高艶になり易くて、そのままでは艶を下げるのが難しく、高艶が嫌われる用途では艶消し剤を添加せざるを得ず、ドクター筋を改善し生産し易くする事は不可避の問題であった。
なお、艶消し剤添加が、電離放射線硬化性樹脂の場合にドクター筋発生に結びつき易い理由は、2液硬化型ウレタン樹脂等を溶剤希釈して用いる場合には、溶剤乾燥に伴う塗膜体積収縮で艶消し剤が表面に浮き出すリフトアップ効果が艶消しに寄与するが、無溶剤の場合はリフトアップ効果が無い為に、その分、艶消し剤の添加量や粒径を大き目にする必要があるからである。また、無溶剤の場合は、塗布後のレベリング効果が少ない為に、ドクター筋がそのまま残り易いというのも原因である。なお、ドクター筋はセラミックドクターの使用で改善はするが、艶消しシリカ添加による差が無くなるものではない。
【0008】
すなわち、本発明の課題は、耐摩耗性等の表面強度と共に、艶消しシリカによって表面艶を落とした、電離放射線硬化性樹脂による艶調整樹脂層を設けた化粧材にて、ドクター筋を改善する事である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の化粧材は、基材上に、艶消しシリカを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物からなる艶調整樹脂層を設けた化粧材において、
艶消しシリカが脂肪酸系ワックスで表面処理された平均粒径8〜15μmのシリカである構成とした。
【0010】
この様な構成とすることにより、艶調整樹脂層が艶消し剤として艶消しシリカを含有していても、脂肪酸系ワックスで表面処理されている為に、艶調整樹脂層を(ドクターブレードとグラビア版を用いたグラビア塗工乃至はグラビア印刷により)形成する時の、ドクター筋を改善できる。
また、艶消しシリカの平均粒径を8〜15μmとすることにより、十分な艶消し効果が得られ、ドクター筋の発生を抑制できる。
【0011】
本発明の化粧材は、上記構成に於いて、更に前記艶消しシリカが、平均粒径8.7〜15μmのシリカである構成とした。実施例で確認されているように、艶消しシリカの平均粒径を8.7〜15μmとすることにより、十分な艶消し効果が得られ、ドクター筋の発生を抑制できる。
本発明の化粧材は、上記構成に於いて、更に前記艶調整樹脂層が、水酸化マグネシウム、又は水酸化アルミニウムを含有する構成とした。水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムはそれぞれ艶消し効果を補充する作用を有していることが知られている。
本発明の化粧材は、上記構成に於いて、更に前記艶調整樹脂層の厚みが、10〜15μmである構成とした。前記艶調整樹脂層の厚みが、10〜15μmであると均一厚さの場合では耐摩耗性等の優れた表面強度が得られ、また、模様状に形成する場合には盛り上げ印刷で豊かな表面凹凸意匠が得られる。
【0012】
また、本発明の化粧材は、上記構成に於いて更に、艶調整樹脂層が模様状に部分的に形成され、該艶調整樹脂層による表面凹凸意匠を有する構成とした。この様な構成とすれば、表面凹凸意匠によってより高意匠な意匠表現ができる。なお、該表面凹凸意匠を有する艶調整樹脂層は、グラビア印刷による盛り上げ印刷で形成でき、グラビア印刷では、スクリーン印刷に比べて厚さ変化も付けられる為に、この点でもより高意匠な意匠表現ができる化粧材となる。そして、この様なグラビア印刷ならではの意匠表現に於いて、ドクター筋を改善できる。
【0013】
また、本発明の化粧材の製造方法は、上記いずれかの構成の化粧材の製造方法として、艶調整樹脂層を形成するに際して、電離放射線硬化性樹脂組成物を無溶剤で、ドクターブレードとグラビア版とを用いて形成する様にした。
【0014】
この様な構成の製造方法とすることで、化粧材の艶調整樹脂層が艶消し剤として艶消しシリカを含有していても、艶調整樹脂層を、ドクターブレードとグラビア版を用いたグラビア塗工乃至はグラビア印刷により形成する時の、ドクター筋を改善できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について実施の形態を説明する。
【0016】
〔概要〕
図1は本発明による化粧材10を、その一形態で例示する断面図である。同図の如く、本発明の化粧材10は、少なくとも、基材1と、その上に形成された、艶消しシリカを含有する電離放射線硬化性樹脂の架橋硬化物からなる艶調整樹脂層2とを有し、且つ該艶調整樹脂層2が含有する艶消しシリカに、脂肪酸系ワックスで表面処理された艶消しシリカを用いた構成の化粧材である。
【0017】
なお、化粧材10は、通常は同図の如く、基材1に艶調整樹脂層2を形成する前に、該基材1の艶調整樹脂層2側には、絵柄等の意匠表現の為に装飾層3を印刷等により形成しておく。なお、もちろんだが、用途、意匠表現等によって、この装飾層3は省略できるが、設ける方がより高意匠となる点で好ましい。なお、基材1は、シート状、板状等、各種形態が可能であり、シート状の場合には、化粧材は化粧シート、化粧紙等と呼ばれ、板状の場合は化粧板等と呼ばれる。
【0018】
〔艶調整樹脂層〕
先ず、艶調整樹脂層2は、化粧材表面に耐摩耗性等の表面物性を与えると共に、化粧材の表面艶を調整して低艶や艶消し等とする為の層である。本発明では、この艶調整樹脂層2を、少なくとも、電離放射線硬化性樹脂と、脂肪酸系ワックスで表面処理された艶消しシリカとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の、架橋硬化物として形成する。艶消しシリカとして脂肪酸系ワックスによる表面処理シリカを用いることで、艶消しシリカを含有しているにも拘わらず、ドクター筋の発生が改善される。なお、脂肪酸系ワックスとしては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が用いられる。
【0019】
なお、艶消しシリカの粒径は小さいほどドクター筋は少なくなるが、艶消し効果も低下する。一方、艶消し効果は、同じ粒径でも艶調整樹脂層の厚さが薄いほど増す。従って、艶消しシリカの粒径は、必要な艶調整樹脂層の厚さ、要求される艶消し度合い等を勘案して、適宜選択すると良い。
【0020】
例えば、艶調整樹脂層の厚さとして、(均一厚さの場合では耐摩耗性等の優れた表面強度が得られ、また、模様状に形成する場合には盛り上げ印刷で豊かな表面凹凸意匠が得られる)10〜15μmの場合では、艶消し効果を得るには、艶消しシリカの粒径は平均粒径で8μm以上のものを選択すると良い。一方、平均粒径の最大は、ドクター筋発生、艶消し効果等を勘案すると、15μm程度である。従って、艶消しシリカの粒径としては、通常、平均粒径で8〜15μm程度が好ましい。この範囲未満では、十分な艶消し効果が得られず、この範囲超過では(脂肪酸系ワックスで表面処理した艶消しシリカを用いたとしても)ドクター筋が発生し易くなる。
【0021】
また、艶消しシリカの添加量も小さいほどドクター筋は発生し難くなるが、艶消し効果も低下する。この為、添加量は、通常、樹脂分100質量部に対して、5〜20質量部、より好ましくは10〜20質量部程度とするのが良い。この範囲未満では、十分な艶消し効果が得られず、この範囲超過では(水酸化マグネシウム等を含有させたとしても)ドクター筋が発生し易くなる。
【0022】
そして、本発明によれば、上記の如き構成の艶調整樹脂層を、ドクターブレードとグラビア版とを用いてグラビア塗工乃至はグラビア印刷方式により形成する場合に、艶調整樹脂層の材料として、電離放射線硬化性樹脂組成物を無溶剤で使用しても、その改善効果が得られる。この為、艶調整樹脂層は、容易に厚く形成できるので、全面に形成する場合では塗装感等が得やすく、また、部分的に形成する場合では、部分的に模様状に形成した艶調整樹脂層の有無による表面凹凸意匠を表現できる。後者の場合、それは盛り上げ印刷となるが、スクリーン印刷を利用した盛り上げ印刷では、形成部分の厚さは均一となってしまうが、グラビア版の場合では形成部分の厚さも、版のセル容積変化で、変化させることができ、より高意匠な表面凹凸意匠が可能となる。なお、全面塗工のグラビア塗工(印刷)の場合でも、セル容積変化で艶調整樹脂層の厚さを変化させても良く、この場合、艶調整樹脂層を着色する等すれば画像の階調表現もできる。
【0023】
なお、電離放射線硬化性樹脂組成物に用いる電離放射線硬化性樹脂としては、従来公知のものを用途に応じて適宜使用すれば良い。
電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、分子中にラジカル重合性不飽和結合又はカチオン重合性官能基を有する、プレポリマー(所謂オリゴマーも包含する)及び/又はモノマーを適宜混合した電離放射線により硬化可能な組成物が好ましくは用いられる。なお、ここで電離放射線とは、分子を架橋硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられる。
【0024】
上記プレポリマー又はモノマーは、具体的には、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物からなる。これらプレポリマー、モノマーは、単体で用いるか、或いは複数種混合して用いる。なお、ここで、例えば、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。また、電離放射線硬化性樹脂としては、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましくは用いられる。
【0025】
分子中にラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が使用できる。分子量としては、通常250〜100,000程度のものが用いられる。
【0026】
分子中にラジカル重合性不飽和基を有するモノマーの例としては、単官能モノマーでは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等がある。また、多官能モノマーでは、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。
【0027】
分子中にカチオン重合性官能基を有するプレポリマーの例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーがある。
チオールとしては、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールがある。また、ポリエンとしては、ジオールとジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したもの等がある。
【0028】
なお、紫外線又は可視光線にて架橋硬化させる場合には、電離放射線硬化性樹脂に光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル類を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることができる。
なお、これらの光重合開始剤の添加量としては、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部程度である。
【0029】
なお、電離放射線の線源としては、紫外線源としては、超高圧水銀燈、高圧水銀燈、低圧水銀燈、カーボンアーク燈、ブラックライト型螢光燈、メタルハライドランプ等の光源が使用される。紫外線の波長としては通常190〜380nmの波長域が主として用いられる。
また、電子線源としては、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは、100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射するものが使用される。電子線の照射線量は、通常20〜150kGy程度である。
【0030】
本発明の艶調整樹脂層は、上記の様な電離放射線硬化性樹脂と、少なくとも、脂肪酸系ワックスで表面処理した艶消しシリカと、を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物を用いて形成するが、該電離放射線硬化性樹脂組成物中には、物性調整等の為に更に必要に応じ適宜、熱可塑性樹脂、その他公知の各種添加剤、例えば、充填剤、分散安定剤、沈降防止剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤等を添加しても良い。例えば、熱可塑性樹脂としは、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
なお、艶調整樹脂層は、その下に装飾層がある場合は、通常それが透視可能な様に透明(含む半透明、着色透明)とするが、不透明層(着色又無着色)とする場合もある。
【0031】
また、電離放射線硬化性樹脂組成物としては、無溶剤で使用するのが、溶剤乾燥や溶剤後処理等が不要で、残留溶剤の問題も無い点等で、好ましいが、物性調整の為に、溶剤を添加しても良い。但し、上記の観点からはなるべく少なく、例えば樹脂分100質量部に対して20質量部以下とするのが好ましい。また、この様な溶剤分の少ない溶剤含有量範囲にて、本発明のドクター筋改善効果はより効果的に享受できる。
【0032】
艶調整樹脂層は、上記の如き電離放射線硬化性樹脂組成物(すなわち、少なくとも、電離放射線硬化性樹脂と、脂肪酸系ワックスで表面処理された艶消しシリカとを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物)を、好適には無溶剤の組成物で、ドクターブレードとグラビア版とを用いて形成するが、部分的に形成する場合や全面だか厚さ変化を付ける場合はグラビア印刷となり、全面厚さ均一に形成する場合はグラビア塗工となる。
なお、艶調整樹脂層の厚さは、表面強度、意匠(塗装感、透明感、表面凹凸意匠感)等の要求物性に応じて適宜厚さとすれば良く特に制限は無いが、例えば1〜50μm程度、一般的には2〜30μm程度である。但し、電離放射線硬化性樹脂を用いた艶調整樹脂層の場合は、厚さを厚くし易い利点があり、この点では、厚さは10μm以上である。また、この様な厚さが厚い領域にて、本発明のドクター筋改善効果はより効果的に享受できる。
【0033】
〔基材〕
次に、基材1としては、例えば、紙、樹脂シート等のシートの他、板、立体物等と、基材の形状、材質、その他特性等は特に制限は無く、化粧材の基材として従来公知の各種基材を用途に応じて使用することができる。
【0034】
基材の材質は、例えば、紙系、木質系、金属系、無機非金属系(セラミック系、非セラミックス窯業系等)、樹脂系等である。また、インキ浸透性のあるもの(紙、不織布等)、インキ浸透性の無いもの(樹脂シート等)、いずれでも良い。中でも紙や樹脂シート(フィルム)は代表的であり、これらを基材として用いれば、本発明の化粧材は化粧シートとなり得る。
【0035】
また、紙系以外の繊維質の基材としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロン、硝子等の繊維からなる不織布等も用いられる。不織布は前記紙系の場合と同様に、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)させたものでも良い。
【0036】
樹脂系の基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、三酢酸セルロース、セロハン、ポリカーボネート等の樹脂等の樹脂材料がある。これら樹脂は、シート、板、立体物として使用される。
また、樹脂系の基材としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂からなる熱硬化性樹脂板、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の樹脂を、硝子繊維不織布、布帛、紙、その他各種繊維質基材に含浸硬化させて複合化した所謂FRP(繊維強化プラスチック)板、等の樹脂板も有る。
【0037】
また、木質系の基材としては、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等の木質材料がある。木質系の基材では、シート、板、立体物として使用される。
また、金属系の基材としては、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の金属材料がある。金属系の基材は、シート(箔)、板、立体物として使用される。
また、無機非金属系の基材としては、例えば、押し出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(硝子繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、ケイ酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非セラミックス窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス系材料等がある。無機非金属系の基材は、主として板や立体物として使用される。
【0038】
また、基材としては、例えば、上記各種材料の2種以上を接着剤、熱融着等の公知の手段により積層して複合化した基材等も挙げられる。例えば、樹脂含浸紙やFRP等はその一例でもある。
また、一旦、シート状の基材を用いて化粧シートとして化粧材を作製し、この化粧シートを、別の基材(シート、板、立体物)に接着剤等を適宜用いて貼着して積層したものも本発明の化粧材であり、該化粧材の基材は2種以上の材料が積層された構成の一例である。
【0039】
また、基材のその他特性とは、例えばイキン浸透性の有無等である。例えば、インキ浸透性の無い基材は、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン系樹脂等による樹脂シート等であり、インキ浸透性の有る基材は、例えば印刷用純白紙、紙間強化紙、硬化性樹脂を含浸させた含浸紙等の紙類、織布、不織布等のその他の繊維質基材である。
また、インキ浸透性を有する基材の場合、その浸透性が支障を来す際は、基材上に、予め公知の目止め樹脂層(シーラー層)を形成しておくのが好ましい。目止め樹脂層には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が使用される。また、後述する装飾層のうち全面ベタの層を目止め機能を兼用させることもできる。
【0040】
なお、基材の厚さは、形状、材質、用途等にもよるが、例えば紙系の様な繊維質基材を使用する場合は、一般に坪量50〜150g/m2程度、厚さでは50〜300μm程度である。
【0041】
〔装飾層〕
装飾層3を設ければ、該層で絵柄を表現する等して、より高意匠な化粧材にできる。但し、この場合、装飾層を設ける位置は艶調整樹脂層の下側、より好ましくは艶調整樹脂層と基材との間とするのが、装飾層に対する耐摩耗性等の耐久性の点で好ましい。
【0042】
装飾層3は、インキ(又は塗料)を用いて、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェットプリント等の従来公知の印刷法、塗工法等で絵柄を表現した層等として形成する。絵柄としては、木目模様、石目模様、砂目模様、梨地模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮絞模様、文字、幾何学模様、全面ベタ、或いはこれら二種以上の組合せ等を用いる。なお、全面ベタの場合は、ロールコート、グラビアコート等の公知の塗工法で形成しても良い。
【0043】
なお、装飾層の形成に用いるインキ(又は塗液)は、一般的なインキ(又は塗液)同様に、バインダー等からなるビヒクル、顔料や染料等の着色剤、これに適宜加える各種添加剤からなる。バインダーの樹脂には、例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の単体又はこれらを含む混合物を用いる。着色剤としては、例えば、チタン白、亜鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、カドミウムレッド、黄鉛、チタンイエロー、コバルトブルー、群青等の無機顔料、アニリンブラック、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の有機顔料、二酸化チタン被覆雲母、貝殻、真鍮、アルミニウム等の鱗片状箔粉等の光輝性顔料、或いはその他染料等を着色剤として使用する。
【0044】
また、全面ベタの場合は、着色剤として、チタン白、カーボンブラック(墨)、金属箔粉顔料等の高隠蔽性のものを添加することにより、被着体等の色調を隠蔽する隠蔽層としての機能を、装飾層に持たせるられる。
【0045】
〔その他の層〕
また、必要に応じ更に適宜、上記した艶調整樹脂層、基材、装飾層、以外の層を設けても良い。例えば、基材が紙等で浸透性の場合に基材への浸透を抑制するシーラー層、層間の密着性強化を図るプライマー層等である。シーラー層、プライマー層等は、化粧材に於ける従来公知の材料及び方法によって形成すれば良い。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を用いたインキ或いは塗料で、グラビア印刷等の印刷法、ロールコート等の塗工法で形成する。
【0046】
〔用途〕
なお、本発明による化粧材の用途は、特に制限は無く、例えば、箪笥、キャビネット、机、食卓等の家具、床、壁、天井等の建築物内装材、扉、扉枠、窓枠等の建具、回縁、幅木等の造作部材等に用いる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によって、更に具体的に説明する。なお、文中及び表中、「部」とあるのは「質量部」の意味である。
【0048】
〔実施例1〕
先ず、坪量50g/m2の樹脂含浸紙からなる基材上に、バインダー樹脂にニトロセルロース系樹脂を用いた着色インキを使用して、灰色の全面ベタ柄で隠蔽層を兼用する装飾層をグラビア印刷して形成した。
【0049】
次いで、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物からなる無溶剤のインキを用いて、セラミックドクターと図2の(拡大)平面図の様な模様のグラビア版を用いたグラビア印刷(盛り上げ印刷)後、電子線照射でインキを硬化させて架橋硬化物として艶調整樹脂層を、前記装飾層形成面側に設けて所望の化粧材を得た。化粧材は、艶調整樹脂層によって艶が全艶から落ち、該層によって表面凹凸意匠が付与された。艶調整樹脂層の内容と評価結果は表1に纏めて示す。
【0050】
電離放射線硬化性樹脂組成物
エポキシアクリレートプレポリマー 24部
希釈モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート) 76部
微粒子シリカ(平均粒径0.5μm) 0.5部
艶消しシリカ(平均粒径8.7μm) 10部
(ステアリン酸系ワックス表面処理シリカ)
水酸化アルミニウム(平均粒径2.5μm) 5部
分散剤 0.4部
滑剤(シリコーン系) 1.2部
【0051】
〔比較例1〕
実施例1において、艶調整樹脂層形成用の無溶剤のインキとして、表面処理未処理の艶消しシリカを含有させた下記電離放射線硬化性樹脂組成物を用いた他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0052】
電離放射線硬化性樹脂組成物
エポキシアクリレートプレポリマー 24部
希釈モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート) 76部
微粒子シリカ(平均粒径0.5μm) 0.5部
艶消しシリカ(平均粒径8.7μm) 10部
(表面処理未処理のシリカ)
水酸化アルミニウム(平均粒径2.5μm) 5部
分散剤 0.4部
滑剤(シリコーン系) 1.2部
【0053】
〔性能評価〕
ドクター筋の発生状況を目視観察して評価した。筋っぽさが全くないものは良好(○)、筋っぽさがあるが許容限度以上のものはやや良好(△)、筋が酷くて許容限度以下(NG)のものは不良(×)とした。なお、表面の艶は60度の艶をグロスメータで測定した。
【0054】
【表1】
【0055】
結果は、表1の如く、艶消しシリカに脂肪酸系ワックス処理品を用いた実施例1ではドクター筋が良好〜やや良好(○〜△)レベルであった。これに対して、表面処理されていない通常の艶消しシリカを用いた比較例1では、ドクター筋はやや良好〜不良(△〜×)レベルで実施例1に対して劣った。
【0056】
【発明の効果】
(1)本発明の化粧材によれば、艶調整樹脂層が艶消し剤として艶消しシリカを含有していても、艶調整樹脂層を(ドクターブレードとグラビア版を用いたグラビア塗工乃至はグラビア印刷により)形成する時の、ドクター筋を改善できる。
(2)更に、艶調整樹脂層を模様状に部分的に形成された表面凹凸意匠を有するものとすれば、より高意匠な意匠表現ができる。そして、スクリーン印刷に比べて厚さ変化も付けられるグラビア印刷ならでは盛り上げ印刷による高意匠表現に於いて、ドクター筋を改善できる。
(3)また、本発明の化粧材の製造方法によれば、化粧材の艶調整樹脂層が艶消し剤として艶消しシリカを含有していても、艶調整樹脂層を、ドクターブレードとグラビア版を用いたグラビア塗工乃至はグラビア印刷により形成する時の、ドクター筋を改善できる。しかも、盛り上げ印刷とする場合、スクリーン印刷では不可能な厚さ変化も付けられる、グラビア印刷ならではの意匠表現に於いてドクター筋を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による化粧材の一形態を例示する断面図。
【図2】艶調整樹脂層を盛り上げ印刷時のグラビア版の版模様の拡大平面図。
【符号の説明】
1 基材
2 艶調整樹脂層
3 装飾層
10 化粧材
Claims (6)
- 基材上に、艶消しシリカを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物からなる艶調整樹脂層を設けた化粧材において、
艶消しシリカが脂肪酸系ワックスで表面処理された平均粒径8〜15μmのシリカである、化粧材。 - 前記艶消しシリカが、平均粒径8.7〜15μmのシリカである請求項1に記載の化粧材。
- 記艶調整樹脂層が、水酸化マグネシウム、又は水酸化アルミニウムを含有する請求項1又は2に記載の化粧材。
- 前記艶調整樹脂層の厚みが、10〜15μmである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化粧材。
- 前記艶調整樹脂層が模様状に部分的に形成され、該艶調整樹脂層による表面凹凸意匠を有する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化粧材。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の化粧材の製造方法であって、
艶調整樹脂層を形成するに際して、電離放射線硬化性樹脂組成物を無溶剤で、ドクターブレードとグラビア版とを用いて形成する、化粧材の製造方法。
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