JP2004195903A - 化粧材 - Google Patents

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Abstract

【課題】繊維質基材上に架橋硬化性樹脂の表面保護層を設けた化粧材について、耐溶剤性を改善する。
【解決手段】少なくとも、紙等からなる繊維質基材1上に、架橋硬化性樹脂の架橋硬化物からなる表面保護層2が積層された化粧材10に対して、繊維質基材と表面保護層との間に、平均粒径が3.0μm以上の粒径大なる充填剤と、平均粒径が0.5μm以下の粒径小なる充填剤を樹脂バインダー中に含有する耐溶剤性層3を設ける。なお、通常更に意匠上、耐溶剤性層と表面保護層間に絵柄印刷層4を設ける。更に、表面保護層中にも充填剤を含有させれば、耐溶剤性の他、耐摩耗性等の表面強度も改善する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、壁等の建築物内装材、扉等の建具や家具等の表面材等に用いる化粧紙等の化粧材に関する。特に、耐溶剤性に優れた化粧材に関する。
【0002】
【従来の技術】
シート状或いは板状の化粧材が、建築物内装材、建具等の各種用途に使用されてきた。通常、化粧材には、耐摩耗性、耐汚染性等の表面物性が要求される。その為、化粧材の表面には、2液硬化型樹脂や電離放射線硬化性樹脂等の架橋硬化性樹脂の架橋硬化物による表面保護層を全面に設けた構成とすることが多い。例えば、化粧紙等では、紙からなる繊維質基材上に不飽和ポリエステル樹脂やアクリレート系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂による塗料を電子線や紫外線等の電離放射線で架橋硬化させることで表面保護層を設けている(特許文献1、特許文献2参照)。また、表面保護層に、モノマーやプレポリマー等からなる電離放射線硬化性樹脂を用いると、2液硬化型ウレタン樹脂等に比べて、その高い架橋性から、耐摩耗性等の表面強度により優れた化粧材が得られる。
【0003】
【特許文献1】
特公昭49−31033号公報
【特許文献2】
特許第2856862号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、基材が繊維質基材の場合には、表面保護層に架橋硬化性樹脂の架橋硬化物を用いたとしても、化粧材として要求される耐溶剤性等の物性を満たすのが困難となる場合があった。特に、架橋硬化性樹脂に電離放射線硬化性樹脂を用いた場合、熱硬化性樹脂と比較して、架橋硬化前の樹脂の分子量が低く、塗料を繊維質基材に塗工した際に、繊維質基材の空隙に塗料が浸透するため、耐溶剤性不足の問題は顕著であった。また通常は、意匠上、絵柄印刷層を維質基材と表面保護層間に設けることが多いが、耐溶剤性が不足すると、絵柄消失という見た目にも目立つ問題として現れた。
【0005】
すなわち、本発明の課題は、繊維質基材上に架橋硬化性樹脂の表面保護層を設けた化粧材について、耐溶剤性を改善する事である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の化粧材では、少なくとも、繊維質基材上に、架橋硬化性樹脂の架橋硬化物からなる表面保護層が積層されてなる化粧材に於いて、繊維質基材と表面保護層との間に、平均粒径が3.0μm以上の粒径大なる充填剤と、平均粒径が0.5μm以下の粒径小なる充填剤を樹脂バインダー中に含有する耐溶剤性層を有する構成とした。
【0007】
この様な構成とすることで、粒径が大小異なる充填剤を樹脂バインダー中に含有させた耐溶剤性層によって、表面保護層形成時の架橋硬化性樹脂による塗液が繊維質基材中に染み込み難くなる為か、耐溶剤性が改善し良好となる。
【0008】
また、本発明の化粧材は、上記構成に於いて更に、表面保護層が充填剤を含有する構成とした。
この様な構成とすることで、表面保護層形成時の塗液自体の繊維質基材への浸透が充填剤によって抑制され、耐溶剤性が改善する。
【0009】
また、本発明の化粧材は、上記いずれかの構成に於いて更に、表面保護層が電離放射線硬化性樹脂の架橋硬化物であり、電離放射線硬化性樹脂として3官能以上のアクリレート系モノマーを用いた構成とした。
この様な構成とすることで、表面保護層となる架橋硬化物の架橋密度が上がる事によって、耐溶剤性が改善する。
【0010】
また、本発明の化粧材は、上記構成に於いて更に、3官能以上のアクリレート系モノマーとして、エトキシ変性モノマーを用いた構成とした。
この様な構成とすることによって、モノマーの反応性が良いので、表面保護層となる架橋硬化物の架橋密度が上がる事によって、耐溶剤性が改善する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
〔概要〕
図1は、本発明による化粧材10をその一形態で説明する断面図である。図1に例示する化粧材10は、繊維質基材1と表面保護層2との間に本発明特有の耐溶剤性層3を有し、更に、この耐溶剤性層3と表面保護層2間に絵柄印刷層4を有する構成である。繊維質基材1は例えば紙等である。また、表面保護層2は電離放射線硬化性樹脂等の架橋硬化性樹脂の架橋硬化物として形成される。そして、本発明の特徴的な構成層である耐溶剤性層3は、平均粒径が3.0μm以上の粒径大なる充填剤と、平均粒径が0.5μm以下の粒径小なる充填剤を樹脂バインダー中に含有する層として形成される。
【0013】
なお、絵柄印刷層4は、要求される意匠次第では省略することもできるが、高意匠になる点で設けた方が好ましい。しかも、絵柄印刷層を有する構成に於いて、目立ち易い柄模様消失の改善と言う形態で、耐溶剤性改善効果がより顕著に得られる。ところで、絵柄印刷層を設ける場合、繊維質基材と耐溶剤性層との間も可能ではあるが、繊維質基材表面の凹凸による柄抜け等を防げる点で、表面保護層2と耐溶剤性層4間に設ける方が好ましい。
【0014】
以下、各層毎に順に詳述していく。
【0015】
〔繊維質基材〕
繊維質基材1は、繊維質からなる基材であり、紙が代表的であるが、この他、不織布、或いはこれらの積層体等でも良い。紙としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、硫酸紙、和紙等が使用される。また、不織布としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロン、硝子等の繊維からなる不織布が使用される。紙や不織布の坪量は、通常20〜100g/m2程度である。また、繊維質基材の厚み(積層体の場合は総厚み)は、通常25〜500μm程度である。
また、紙や不織布は、その繊維間乃至は他層との層間強度を強化したり、ケバ立ち防止の為、更に、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)させたものでも良い。
なお、繊維質基材に紙(或いは不織布も)を用いた化粧材は、化粧紙と呼ばれる。
【0016】
〔表面保護層〕
表面保護層2は、化粧材の最表面層として設ける層であり、電離放射線硬化性樹脂等の架橋硬化性樹脂を架橋硬化させた架橋硬化物として形成する。架橋硬化性樹脂としては、代表的には電離放射線硬化性樹脂があり、また耐溶剤性層の効果も大きいが、この他、エポキシ樹脂等、メラミン樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂でも良い。また、架橋硬化性樹脂に電離放射線硬化性樹脂を用いた場合は、熱硬化性樹脂に比べて、その高い架橋性によって耐摩耗性等の表面強度をより優れたものに出来る利点も得られる。
【0017】
なお、表面保護層は通常、無着色透明とするが着色透明、半透明等としても良い。それは、表面保護層の下側に通常は設ける絵柄印刷層を透視可能とする為であり、絵柄印刷層が無い等、透視の必要が無いならば不透明でも良い。
【0018】
表面保護層は電離放射線硬化性樹脂等の架橋硬化性樹脂(組成物)を、グラビアコート、ロールコート等の塗工法、或いは、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷等の印刷法、等の公知の膜形成法によって、耐溶剤性層、さらに通常は絵柄印刷層を設けた繊維質基材上に施した後、電離放射線照射によって架橋硬化させて形成することができる。表面保護層の厚みは、塗工量で言えば通常1〜30g/m2(固形分基準)程度である。
なお、電離放射線硬化性樹脂(組成物)は、塗工適性、印刷適性調整等の為に、適宜溶剤を添加しても良い。
【0019】
電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、分子中にラジカル重合性不飽和結合又はカチオン重合性官能基を有する、プレポリマー(所謂オリゴマーも包含する)及び/又はモノマーを適宜混合した電離放射線により架橋硬化可能な組成物が好ましくは用いられる。なお、ここで電離放射線とは、分子を重合させて架橋させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を意味し、通常は、電子線(EB)、又は紫外線(UV)が一般的である。
【0020】
上記プレポリマー又はモノマーは、具体的には、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物からなる。これらプレポリマー、モノマーは、単体で用いるか、或いは複数種混合して用いる。なお、ここで、例えば、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。また、電離放射線硬化性樹脂としては、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましくは用いられる。
【0021】
分子中にラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等が使用できる。分子量としては、通常250〜100,000程度のものが用いられる。
なお、本明細書に於ける表記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。また、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物を総称して、単にアクリレート(化合物)とも呼ぶ。
【0022】
分子中にラジカル重合性不飽和基を有するモノマーの例としては、単官能モノマーでは、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等がある。また、多官能モノマーでは、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート等もある。
【0023】
分子中にカチオン重合性官能基を有するプレポリマーの例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーがある。
チオールとしては、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールがある。また、ポリエンとしては、ジオールとジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したもの等がある。
【0024】
なかでも、電離放射線硬化性樹脂としては、特に、3官能、4官能等の3官能以上のアクリレート系モノマーを含有する樹脂組成物を用いるのが、表面保護層となる架橋硬化物の架橋密度が上がり耐溶剤性が改善する点で好ましい。更に、3官能以上のアクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、等のエトキシ変性モノマーを用いるのが、モノマーの反応性が良い結果、該架橋密度が上がって耐溶剤性が改善する点で好ましい。
【0025】
なお、紫外線にて架橋硬化させる場合には、電離放射線硬化性樹脂に光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル類を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることができる。
なお、これらの光重合開始剤の添加量としては、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部程度である。
【0026】
なお、上記電離放射線硬化性樹脂には、更に必要に応じて、その他の樹脂として電離放射線非硬化性樹脂、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂を、添加しても良い。
【0027】
また、上記電離放射線硬化性樹脂等の架橋硬化性樹脂には、更に必要に応じて、アルミナ、アルミノシリケート、焼成カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤、シリコーン樹脂、ワックス等の滑剤、顔料や染料等の着色剤、安定剤、防カビ剤等を含有させても良い。
【0028】
特に充填剤を含有させる事により、表面保護層形成時の架橋硬化性樹脂(組成物)からなる塗液自体が繊維質基材へ浸透し難くする効果が得られ耐溶剤性改善に繋がる他、表面保護層の耐摩耗性等の表面強度を向上させる効果も得られる。
【0029】
なお、電離放射線の電子線源としては、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは、200〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射するものが使用される。また、紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用される。
【0030】
〔耐溶剤性層〕
耐溶剤性層3は、該耐溶剤性層の上方に形成される絵柄印刷層や表面保護層の耐溶剤性を向上させる為に設ける樹脂層である。本発明者は、この耐溶剤性層として樹脂バインダー中に充填剤を含有させ、しかもその充填剤の平均粒径が3.0μm以上の粒径大なる充填剤と、平均粒径が0.5μm以下の粒径小なる充填剤とを併用することで、耐溶剤性を改善できる事を見出し、本発明に至ったものである。耐溶剤性が改善する理由は定かではないが、想像するに、繊維質基材表面の大きな孔と小さな孔の両方をこれら大小の充填剤が目止めして、表面保護層形成用の塗料の繊維質基材空隙への浸透を抑制し、その結果、表面保護層の塗膜を緻密化することにより、耐溶剤性が改善するものと思われる。
【0031】
耐溶剤性層の樹脂バインダー中に含有させる充填剤として、平均粒径が大なる充填剤のみでも耐溶剤性改善効果が得られず、また逆に、平均粒径が小なる充填剤のみでも耐溶剤性改善効果が得られない。また、平均粒径が相対化的に大きい充填剤と平均粒径が相対的に小さい充填剤とを含有させたとしても、各々の平均粒径が上記条件から外れていると、耐溶剤性改善効果が十分に得られない(表1参照)。すなわち、平均粒径が大なる充填剤の該平均粒径としては3.0μm以上が好ましく、平均粒径が小なる充填剤の該平均粒径としては0.5μm以下が好ましい。但し、平均粒径が大なる充填剤は、絵柄印刷層を耐溶剤性層上に設ける構成では、絵柄印刷層の印刷時の柄抜け等に対する印刷適性の点で、その平均粒径は5.0μm以下とするのが好ましい(つまり平均粒径3.0〜5.0μmの範囲)。
【0032】
平均粒径が大なる充填剤、及び小なる充填剤の種類としては特に制限は無いが、例えばシリカ、炭酸カルシウム、硫酸マグシネウム、クレー等が挙げられる。また、平均粒径が小なる充填剤としては、該粒径条件を満たせば、微粒子タイプのシリカ等の無機粉体の他、酸化チタン等の無機系顔料、或いは、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、ハンザイエロー、パーマネントレッド等のアゾ系顔料等の公知の着色顔料でも良い。着色顔料を用いた場合には、その着色機能により耐溶剤性層を着色層とすることもできる。なお、平均粒径が大なる充填剤、平均粒径が小なる充填剤の添加量は、適宜調整するが、樹脂バインダー100質量部当り、各々1〜50質量部程度である。
【0033】
耐溶剤性層の樹脂バインダーに用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の各種樹脂の中から、要求される物性、塗工適性等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル共重合体等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂の樹脂である。なお、これら樹脂は、単体又は複数樹脂の混合物として用いる。
【0034】
耐溶剤性層の形成方法は、インキ或いは塗液を用いて、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷等の印刷法、或いは、グラビアコート、ロールコート等の塗工法等、従来公知の形成方法で形成すれば良い。なお、耐溶剤性層の厚みは、塗工量で言えば、通常0.5〜5g/m2(固形分基準)程度である。
【0035】
〔絵柄印刷層〕
化粧材としては、繊維質基材と表面保護層の2層のみでも良いが、通常は、またより好ましくは、意匠性を高める為に何らかの装飾処理が施された構成とする。なお、この様な装飾処理は従来公知の各種装飾処理を適宜採用すれば良い。例えば、繊維質基材と表面保護層の2層が主体の層構成でも、着色紙等の繊維質基材の着色、表面保護層中への着色剤の添加等の装飾処理は可能である。しかしながら、柄パターンによる、より高意匠な表現が可能な点では、柄パターンを印刷で表現した絵柄印刷層を設けるのが好ましい。絵柄印刷層は、耐溶剤性、耐摩耗性等の耐性の点で、繊維質基材と表面保護層間が好ましく、更には、耐溶剤性層との関係では耐溶剤性層と表面保護層間に設けるのが柄抜け等の印刷不良の発生も防げる点で好ましい。
【0036】
絵柄印刷層の形成方法、材料、その絵柄等の内容は特に制限は無く、用途に応じたものとすれば良い。絵柄印刷層は、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェット印刷、昇華転写印刷、転写印刷等の従来公知の印刷法等で形成すれば良い。
【0037】
絵柄印刷層の絵柄は、パターン状の絵柄が代表的であり、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮絞模様、文字、記号、幾何学模様、或いはこれら2種以上の組み合わせ等である。
なお、絵柄印刷層として全面ベタ柄層を設ける場合には、前述した耐溶剤性層中に着色剤を添加することで、耐溶剤性層で全面ベタ柄層を兼用しても良く、製造時の色数を減らせる利点も得られる。
【0038】
なお、絵柄印刷層の形成に用いるインキの樹脂としては、従来公知のインキを適宜採用すれば良い。例えばインキの樹脂としては、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル共重合体等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の単体又はこれらを含む混合物を用いる。該インキの着色剤としては、チタン白、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、黄鉛、群青等の無機顔料、アニリンブラック、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料、二酸化チタン被覆雲母、アルミニウム等の箔粉等の光輝性顔料、或いはその他染料等を用いる。
【0039】
〔その他の装飾処理:表面凹凸意匠〕
上述した絵柄印刷層等以外の装飾処理として、ここで更に、表面凹凸意匠を表現する一構成を説明しておく。ここで説明する装飾処理は、表面保護層形成用の塗液(或いはインキ)に対して、その浸透性の高低のパターンを下地として設けてから、表面保護層を形成する事で凹凸模様を賦形する技術である(図2、及び特開2001−328228号公報等参照)。例えば、繊維質基材1上に、耐溶剤性層3と絵柄印刷層4を設けた上に、適宜樹脂液を全面に塗工して浸透抑制層5を形成し、この上に、浸透性をパターン状に付与する為にシリカ等の充填剤を添加したインキを印刷してパターン状の浸透性柄層6を形成する。浸透性柄層6は例えば、導管溝柄等の適宜凹凸模様の絵柄を表現した層である。そして、この上に、表面保護層とする塗液を全面に塗工すれば、浸透性柄層6上の部分の塗液は該浸透性柄層内部に浸透するが、浸透抑制層5上の部分の塗液は浸透しないので、表面保護層2の表面に浸透性柄層6上を凹部とした凹凸模様7が賦形されるというものである。また、この凹凸模様賦形技術によれば、賦形された凹凸模様7の凹部内部は粗面とする事もできるので、凸部と凹部との艶差の意匠を表現する事もできる(図2参照)。
【0040】
〔被着基材〕
上述した、繊維質基材上に耐溶剤性層、表面保護層等を設けた構成の化粧材は、更に間に適宜公知の接着剤を介して、種々の被着基材の表面に貼着することができる。この結果得られるものも本発明の化粧材であり、その形態によって、一般に化粧板、化粧部材、化粧製品等とも呼ばれる。なお、上記接着剤としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の樹脂を用いることができる。
【0041】
上記被着基材としては、特に制限は無い。例えば、被着基材の材質は、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等である。具体的には、無機非金属系では、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(硝子繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、硅酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス等の無機質材料等がある。また、金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料がある。また、木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等がある。また、プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料がある。
被着基材の形状としては、平板、曲面板、多角柱等任意である。
【0042】
〔用途〕
また、本発明の化粧材の用途は特に限定されるものではないが、上記の如き被着基材の表面に貼着し、壁、天井等の建築物内装材、扉、扉枠、窓枠等の建具の表面材、回縁、幅木等の造作部材の表面材、箪笥、キャビネット等の家具の表面材等に用いる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳述する。なお、以下、「部」とあるのは、「質量部」の意味である。
【0044】
〔実施例1:大小粒径〕
建材薄紙(一般紙グレード、坪量30g/m2)からなる繊維質基材1上に、バインダー樹脂となるアクリル樹脂20部に対して、粒径小なる充填剤(着色剤も兼用)として平均粒径0.3μmの酸化チタン40部、及び粒径大なる充填剤として平均粒径3.0μmのシリカ20部を分散させたインキをグラビア印刷して白色隠蔽性の耐溶剤性層3を固形分塗布量換算厚さ2g/m2で全面に形成した。更にこの上に、着色剤を含む硝化綿樹脂系インキをグラビア印刷して木目柄パターンの絵柄印刷層4を形成した。更に絵柄印刷層側の面全面に、下記組成の電子線硬化型樹脂塗液をグラビアオフセット法にて施した後、電子線を照射して塗膜を架橋硬化させて、固形分塗布量換算厚さが4g/m2で無着色透明な表面保護層2を形成し、図1の断面図の如き化粧材10を得た。なお、充填剤の内容と耐溶剤性評価結果は、表1に纏めて示す。
【0045】
電子線硬化型樹脂塗液の組成:
アクリレート系3官能モノマー 50部
アクリレート系2官能モノマー 30部
シリコーンメタクリレート 0.6部
シリカ(平均粒径6μm) 30部
【0046】
〔実施例2:大小粒径〕
実施例1に於いて、耐溶剤性層に含有させる充填剤を、粒径小なる充填剤(着色剤も兼用)として平均粒径0.3μmの酸化チタン40部、粒径大なる充填剤として平均粒径3.5μmのシリカ20部、に変更した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0047】
〔実施例3:大小粒径〕
実施例1に於いて、耐溶剤性層に含有させる充填剤を、粒径小なる充填剤(着色剤も兼用)として平均粒径0.5μmの酸化チタン40部と、粒径大なる充填剤として平均粒径3.0μmのシリカ20部と、に変更した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0048】
〔比較例1:大小粒径各々無し〕
実施例1に於いて、耐溶剤性層に含有させた粒径大及び粒径小の各々の充填剤を、未含有とした他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0049】
〔比較例2:大粒径のみ〕
実施例1に於いて、耐溶剤性層に含有させる充填剤を、粒径大なる充填剤となる平均粒径3.5μmのシリカ60部のみとし、粒径小なる充填剤を省略した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0050】
〔比較例3:小粒径のみ〕
実施例1に於いて、耐溶剤性層に含有させる充填剤を平均粒径0.6μmのシリカ60部のみとした他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0051】
〔比較例4:小粒径同士〕
実施例1に於いて、耐溶剤性層に含有させる充填剤を、平均粒径0.3μmの酸化チタン40部と、平均粒径0.5μmのシリカ20部とに、変更した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0052】
〔比較例5:小粒径と大粒径〕
実施例1に於いて、耐溶剤性層に含有させる充填剤を、粒径小なる充填剤(着色剤も兼用)となる平均粒径0.3μmの酸化チタン40部と、平均粒径1.5μmのシリカ20部とに、変更した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0053】
〔比較例6:小粒径と大粒径〕
実施例1に於いて、耐溶剤性層に含有させる充填剤を、粒径小なる充填剤(着色剤も兼用)となる平均粒径0.3μmの酸化チタン40部と、平均粒径2.5μmのシリカ20部とに、変更した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0054】
〔比較例7:小粒径と大粒径〕
実施例1に於いて、耐溶剤性層に含有させる充填剤を、平均粒径0.6μmのシリカ40部と、平均粒径3.0μmのシリカ20部とに、変更した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
【0055】
〔性能評価〕
実施例及び比較例にて作成した各化粧材について、耐溶剤性を評価した。耐溶剤性の評価は、単位面積当りの荷重0.745N(76gf/cm2)の条件で、メチルエチルケトンを染み込ませたガーゼにて化粧材表面を擦る耐溶剤性試験にて、絵柄印刷層の絵柄が取られるまでの回数で評価した。
【0056】
【表1】
Figure 2004195903
【0057】
表1の如く、本発明が規定する大小粒径の充填剤を含有させた耐溶剤性層を設けた各実施例は、全て耐溶剤性の回数が250回と良好であった。しかしながら、単に大きい粒径と小さい粒径の充填剤を含有させただけで粒径サイズが本発明の条件を満たさないもの(比較例4〜7)、或いは、大きい粒径のみのもの(比較例2)、小さい粒径のみのもの(比較例3)、或いはどちらも含有させないものは(比較例1)、最大でも150回(比較例7)と、何れの比較例も実施例に比べて劣った。
【0058】
【発明の効果】
(1)本発明の化粧材によれば、繊維質基材上に設けた表面保護層等の層の耐溶剤性が改善し良好となる。
(2)更に、表面保護層に充填剤を含有させれば、表面保護層形成時の塗液自体の繊維質基材への浸透が該充填剤によって抑制され耐溶剤性を改善する。
(3)更に、表面保護層に電離放射線硬化性樹脂、それも3官能以上のアクリレート系モノマーを用いれば、表面保護層となる架橋硬化物の架橋密度が上がり耐溶剤性が改善する。
(4)なお、3官能以上のアクリレート系モノマーとしてエトキシ変性モノマーを用いれば、モノマーの反応性が良いので、表面保護層となる架橋硬化物の架橋密度が上がり耐溶剤性が改善する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧材をその一形態で例示する断面図。
【図2】本発明の化粧材の別の一形態を例示する断面図。
【符号の説明】
1 繊維質基材
2 表面保護層
3 耐溶剤性層
4 絵柄印刷層
5 浸透抑制層
6 浸透性柄層
7 凹凸模様
10 化粧材

Claims (4)

  1. 少なくとも、繊維質基材上に、架橋硬化性樹脂の架橋硬化物からなる表面保護層が積層されてなる化粧材に於いて、
    繊維質基材と表面保護層との間に、平均粒径が3.0μm以上の粒径大なる充填剤と、平均粒径が0.5μm以下の粒径小なる充填剤を樹脂バインダー中に含有する耐溶剤性層を有する、化粧材。
  2. 表面保護層が充填剤を含有する請求項1記載の化粧材。
  3. 表面保護層が電離放射線硬化性樹脂の架橋硬化物であり、電離放射線硬化性樹脂として3官能以上のアクリレート系モノマーを用いた請求項1又は2に記載の化粧材。
  4. 3官能以上のアクリレート系モノマーとして、エトキシ変性モノマーを用いた、請求項3記載の化粧材。
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