以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
まず、図1から図5を用いて本発明の一実施形態に係るトラクタ1の全体構成について説明する。
トラクタ1は、主として機体フレーム2、エンジン3、ボンネット4、マフラ5、トランスミッションケース6、前輪7、後輪8、フェンダ9、昇降装置10、キャビン11、座席12、アームレスト13、サイドコンソール14、ステアリングホイール21及びシート部材19等を具備する。
図1から図3に示す機体フレーム2は、複数の板材を適宜組み合わせて形成される枠状の部材である。機体フレーム2は、平面視略矩形状に形成される。機体フレーム2は、その長手方向を前後方向に向けてトラクタ1の前部に配置される。機体フレーム2の後部にはエンジン3が固定される。エンジン3はボンネット4に覆われる。ボンネット4の右側方には、エンジン3の排気ガスを排出するマフラ5が配置される。エンジン3の後部には、トランスミッションケース6が固定される。
機体フレーム2の前部は、フロントアクスル機構(不図示)を介して左右一対の前輪7に支持される。トランスミッションケース6の後部は、リアアクスル機構(不図示)を介して左右一対の後輪8に支持される。左右一対の後輪8は、概ね上方からフェンダ9によって覆われる。
トランスミッションケース6の後部には、昇降装置10が設けられる。昇降装置10には、各種の作業装置(例えば、耕運機等)を装着することができる。昇降装置10は油圧シリンダ等のアクチュエータによって、装着された作業装置を昇降させることができる。当該昇降装置10には、図示せぬPTO軸を介してエンジン3の動力を伝達することができる。
エンジン3の動力は、トランスミッションケース6に収容された変速装置(不図示)で変速された後、前記フロントアクスル機構を経て前輪7に伝達可能とされると共に、前記リアアクスル機構を経て後輪8に伝達可能とされる。エンジン3の動力によって前輪7及び後輪8が回転駆動され、トラクタ1は走行することができる。またエンジン3の動力によって、昇降装置10に装着された作業装置を駆動させることができる。
エンジン3の後方にはキャビン11が設けられる。キャビン11の内部には、運転者が搭乗する居住空間が形成される。キャビン11の略中央には、運転者が着座するための座席12が配置される。座席12のすぐ右側方には、アームレスト13が配置される。また、キャビン11の右側部(アームレスト13よりも右外側)には、サイドコンソール14が配置される。アームレスト13及びサイドコンソール14には、各種の操作具が適宜配置されている。
また、キャビン11の前部には、前輪7の切れ角を調節するためのステアリングホイール21が配置される。また、図4及び図5に示すように、ステアリングホイール21の下方(座席12の前下方)には、アクセルペダル15、右ブレーキペダル16R、左ブレーキペダル16L、連結解除ペダル17及びクラッチペダル18等の各種ペダルが配置される。アクセルペダル15、右ブレーキペダル16R及び左ブレーキペダル16Lは、ステアリングホイール21の左右中央部よりも右方に配置される(図5に示すステアリングホイールの左右中央部を通る直線L21参照)。また、連結解除ペダル17及びクラッチペダル18は、ステアリングホイール21の左右中央部よりも左方に配置される。アクセルペダル15、右ブレーキペダル16R、左ブレーキペダル16L、連結解除ペダル17及びクラッチペダル18は、運転者が踏むための踏付部15a・16a・17a・18aを有する。当該踏付部15a・16a・17a・18aは、後上方を向いた姿勢で配置される。
また、図3及び図4に示すように、キャビン11の左部(座席12の左前方)には、運転者以外の者(以下、「補助者」と称する)が着座するためのシート部材19が配置される。シート部材19は、補助者が着座可能な使用状態(図4に実線で示す状態)と、着座不能な不使用状態(図4に二点鎖線で示す状態)と、に切替可能に構成される。シート部材19は、使用状態において、座面19aが上方を向く姿勢で配置される。
次に、図4から図7を用いて、ステアリングホイール21の回動操作に応じて前輪7の切れ角を調整するためのステアリング装置20について説明する。
ステアリング装置20は、ステアリングホイール21及びステアリングポスト22を具備する。
図4及び図6に示すステアリングホイール21は、その軸線方向を前下方(後上方)に向けて配置され、軸線まわりに回動操作可能に構成される。
図4から図6に示すステアリングポスト22は、ステアリングホイール21を支持するためのものである。ステアリングポスト22は、ステアリングシャフト26、連結シャフト27、パワステユニット28、テレスコピック機構30、テレスコピックレバー40、チルト機構50、チルトレバー60及びカバー部材(上側カバー23、第一下側カバー24及び第二下側カバー25)を具備する。
図6に示すステアリングシャフト26は、ステアリングホイール21の回動操作に伴って、当該ステアリングホイール21と一体的に回動する軸状の部材である。ステアリングシャフト26は、その軸線方向をステアリングホイール21の軸線方向と同一方向に向けて配置される。ステアリングシャフト26は、その後上端部がステアリングホイール21に固定される。本実施形態に係るステアリングシャフト26は、伸縮可能に構成される。例えば、ステアリングシャフト26は、軸線方向に並んだ2つの軸状の部材が、スプライン結合によって連結されることによって、伸縮可能に構成される。
連結シャフト27は、ステアリングシャフト26の回動操作を後述するパワステユニット28へと伝達するための軸状の部材である。連結シャフト27は、軸線方向を前下方(後上方)へ向けて配置される。図6に示す状態において、連結シャフト27は、ステアリングシャフト26よりも後方へ倒れた姿勢で(前後方向に対する傾斜角度が小さくなるように)配置される。連結シャフト27の後上端部は、継手を介してステアリングシャフト26の前下端部と連結される(不図示)。これにより、連結シャフト27は、ステアリングシャフト26と一体的に回動可能に連結される。また、連結シャフト27は、ステアリングシャフト26と相対的に上下に揺動可能に連結される。連結シャフト27の前下端部は、ステアリングポスト22から突出し、継手27aを介してパワステユニット28と連結される。
図4及び図6に示すパワステユニット28は、ステアリングホイール21の回動操作を補助するためのものである。パワステユニット28は、前輪7を操向するシリンダへ作動油を供給可能に構成される(不図示)。本実施形態に係るパワステユニット28は、ボンネット4内に配置される。パワステユニット28には、ステアリングシャフト26及び連結シャフト27を介してステアリングホイール21の回動操作が伝達される。パワステユニット28は、伝達されたステアリングホイール21の回動方向や回動量に応じて前記シリンダへ適宜作動油を供給することで、前輪7を操向することができる。
図6に示すテレスコピック機構30は、ステアリングホイール21を、当該ステアリングホイール21の軸線方向に移動させるためのものである。テレスコピック機構30は、ステアリングシャフト26を外側から覆うように設けられる。テレスコピック機構30は、下側筒状部材31、上側筒状部材32及びロック部材33を具備する。
下側筒状部材31は、ステアリングシャフト26の下部を覆う略筒状の部材である。下側筒状部材31は、その軸線方向をステアリングシャフト26の軸線方向と同一方向に向けて配置され、ステアリングシャフト26を回動可能に支持する。下側筒状部材31は、その下端部が後述するチルト機構50の揺動部材52に固定される。
上側筒状部材32は、下側筒状部材31の上部に外嵌される略筒状の部材である。上側筒状部材32は、下側筒状部材31に対して軸線方向に相対移動可能に構成される。また、上側筒状部材32は、ステアリングシャフト26を回動可能に支持し、下側筒状部材31に対して相対移動することで、ステアリングシャフト26を伸縮可能に構成される。
ロック部材33は、ステアリングシャフト26の伸縮を規制するための略筒状の部材である。ロック部材33は、下側筒状部材31に外嵌されると共に、上側筒状部材32の前下方に配置される。ロック部材33は、下側筒状部材31の外周面を前下方及び後上方(下側筒状部材31の軸線方向)へ移動可能に構成される。ロック部材33は、後上方へ移動することで、ステアリングシャフト26の伸縮(上側筒状部材32の相対移動)を規制することができる。また、ロック部材33は、前下方へ移動することで、規制を解除することができる。なお、図6において、ロック部材33は、後上方へ移動(ステアリングシャフト26の伸縮を規制)している。
このように構成されたテレスコピック機構30において、後述するテレスコピックレバー40によってロック部材33による規制が解除されると、ステアリングシャフト26が伸縮可能な状態となる。この状態で、運転者は、ステアリングホイール21の軸線方向の位置を調整することができる。また、テレスコピック機構30は、ロック部材33によってステアリングシャフト26の伸縮を規制することで、ステアリングホイール21を調整した位置で保持することができる。
テレスコピックレバー40は、テレスコピック機構30でステアリングホイール21の位置を調整可能な状態と、調整不能な状態(調整した位置で保持する状態)と、に切り替えるためのものである。テレスコピックレバー40は、その左右方向における位置が、ステアリングホイール21の左右中央部と略同一の位置となるように配置される(図5に示すステアリングホイール21の左右中央部を通る直線L21参照)。本実施形態に係るテレスコピックレバー40は、上下に揺動操作可能に構成される。図6に示すテレスコピックレバー40は、最も上方へ揺動している。テレスコピックレバー40は、把持部41及びアーム42を具備する。
図4及び図6に示す把持部41は、運転者がテレスコピックレバー40を揺動操作するために握るものである。把持部41は、後述する上側カバー23の後方に配置され、後述するアーム42の後端部を覆うように設けられる。
アーム42は、把持部41とロック部材33とを連結する略板状の部材である。アーム42は、上側筒状部材32によって上下に揺動可能に支持される。アーム42は、揺動された方向に応じてロック部材33を前下方又は後上方(下側筒状部材31の軸線方向)に移動させることができる。
このように構成されるテレスコピックレバー40は、下方へ揺動操作されると、アーム42が下方へ揺動してロック部材33を前下方へ移動させる。これにより、テレスコピックレバー40は、ステアリングシャフト26を伸縮可能な状態にして、テレスコピック機構30でステアリングホイール21の位置を調整可能な状態にすることができる。
また、テレスコピックレバー40は、上方へ揺動操作されると、アーム42が上方へ揺動してロック部材33を後上方へ移動させる。これにより、テレスコピックレバー40は、ステアリングシャフト26を伸縮不能な状態にして、ステアリングホイール21を調整した位置で保持することができる。
図6に示すチルト機構50は、ステアリングホイール21を上下に揺動させるためのものである。チルト機構50は、ステアリングシャフト26と連結シャフト27との連結部分に設けられる。また、チルト機構50は、ステアリングポスト22内に設けられる。チルト機構50は、固定部材51、揺動部材52及び揺動軸53を具備する。
固定部材51は、車体に固定される略枠状の部材である。固定部材51は、適宜の部材を介して所定の位置(連結シャフト27の上部近傍)に配置される。
揺動部材52は、上下に揺動可能な略枠状の部材である。揺動部材52は、固定部材51の後上方において、後述する揺動軸53を介して固定部材51に支持される。前述の如く、揺動部材52には、テレスコピック機構30の下側筒状部材31が固定される。揺動部材52は、その左下端部にギヤ部(不図示)が形成されており、図6においては当該ギヤ部が所定の係合部材(不図示)と歯合している。こうして、揺動部材52は、図6に示す状態において、上下の揺動が規制された状態となっている。
揺動軸53は、ステアリングホイール21を揺動可能に支持するための軸状の部材である。揺動軸53は、軸線方向を左右方向に向けて配置される。揺動軸53は、固定部材51及び揺動部材52に挿通される。これにより、揺動軸53は、揺動部材52を固定部材51に対して上下に揺動可能に支持する。また、揺動軸53は、揺動部材52を介して、ステアリングホイール21、ステアリングシャフト26及びテレスコピック機構30等を上下に揺動可能に支持する。
このように構成されるチルト機構50は、後述するチルトレバー60によって揺動部材52の揺動の規制が解除されると、揺動部材52を介してステアリングホイール21を揺動可能な状態となる。これにより、図6及び図7に示すように、運転者は、チルト機構50によってステアリングホイール21等を上下に揺動させることができる。また、チルト機構50は、揺動部材52の揺動が規制されることで、ステアリングホイール21を揺動させた状態で保持することができる。
図5及び図6に示すチルトレバー60は、チルト機構50でステアリングホイール21を揺動可能な状態と、揺動不能な状態(揺動させた位置で保持する状態)と、に切り替えるためのものである。チルトレバー60は、その左右方向における位置が、ステアリングホイール21の左右中央部よりも左方に位置するように配置される(図5に示すステアリングホイール21の左右中央部を通る直線L21参照)。本実施形態に係るチルトレバー60は、前後に揺動操作可能に構成される。図6に示すチルトレバー60は、最も前方へ揺動している。チルトレバー60は、把持部61及びアーム62を具備する。
把持部61は、運転者がチルトレバー60を揺動操作するために握るものである。把持部61は、後述するアーム62の下端部を覆うように設けられる。
アーム62は、前後に揺動可能な部材である。アーム62は、複数の板状部材を適宜連結することによって構成される。アーム62は、前後に揺動可能に構成され、揺動された方向に応じて揺動部材52の揺動を規制、又は規制を解除することができる。
より詳細には、チルトレバー60が後方へ揺動操作されると、アーム62は、後方へ揺動されて揺動部材52の揺動の規制を解除する。これにより、チルトレバー60は、チルト機構50でステアリングホイール21を揺動可能な状態にすることができる。また、チルトレバー60が前方へ揺動操作されると、アーム62は、前方へ揺動されて揺動部材52の揺動を規制する。これにより、チルトレバー60は、ステアリングホイール21を揺動させた位置で保持することができる。
上側カバー23は、ステアリングポスト22の上部に設けられる部材である。上側カバー23は、ステアリングホイール21の前下方に配置されると共に、前下方(後上方)へ傾斜した姿勢で配置される。上側カバー23は、その後上端部がステアリングホイール21の前下端部に嵌め合わされ、テレスコピック機構30を外側から覆うように設けられる。また、上側カバー23の前下端部には、前下方(後上方)へ伸縮自在なゴムブーツ23aが設けられる。ゴムブーツ23aは、テレスコピック機構30によってステアリングホイール21が軸線方向に移動したときに、その移動方向に応じて適宜伸縮する。
第一下側カバー24は、ステアリングポスト22の下部のうち、左右中途部に設けられる部材である。第一下側カバー24は、上側カバー23(ゴムブーツ23a)の前下方に配置されると共に、前下方(後上方)へ傾斜した姿勢で配置される。第一下側カバー24は、チルト機構50を外側から覆うように設けられる。第一下側カバー24は、凹部24aを具備する。
凹部24aは、第一下側カバー24の後下面を前上方へと凹ませた部分である。凹部24aは、第一下側カバー24の左部に形成される。凹部24aは、ステアリングホイール21の左右中央部よりも左方に位置する(図5に示すステアリングホイール21の左右中央部を通る直線L21参照)。本実施形態においては、チルトレバー60のアーム62の下端部が第一下側カバー24の左部から突出するように設けられており、凹部24aには、当該チルトレバー60の把持部61が配置される。
第二下側カバー25は、ステアリングポスト22の左下部及び右下部に設けられる部材である。第二下側カバー25は、第一下側カバー24の左方及び右方にそれぞれ配置される。第二下側カバー25は、吹出口25a~25cを具備する。
吹出口25a~25cは、エアコンからの空調空気を吹き出すものである。吹出口25a~25cは、座席12側(後方)に向けて配置される。吹出口25aは、第二下側カバー25の左右内側における上部に設けられる。吹出口25bは、吹出口25aの左右外側方に設けられる。吹出口25cは、吹出口25aの下方に設けられる。吹出口25a~25cは、左右の第二下側カバー25にそれぞれ(合計6つ)設けられる。
このように構成されるステアリング装置20は、テレスコピック機構30及びチルト機構50によって、ステアリングホイール21を軸線方向に移動させることができると共に、上下に揺動させることができる。これにより、ステアリングホイール21の位置(前後位置及び高さ位置)を細かく調整することができるため、ステアリングホイール21を回動操作し易くすることができる。
ここで、ステアリングホイール21を下方へ揺動させた場合において、座席12に着座した運転者の足元(座席12の前下方の空間)を上側カバー23等が狭めてしまうことが懸念される。そこで、本実施形態に係るトラクタ1は、揺動軸53の位置を最適な位置に配置することで、運転者の足元が狭くなるのを抑制している。
以下では、図5及び図8を用いて、揺動軸53の位置について説明する。なお、図8においては、揺動軸53を見易くするために、揺動軸53を太い実線で記載している。
まず、揺動軸53の前後位置(前後方向における位置)について説明する。
図8に示すように、揺動軸53は、前後位置がアクセルペダル15、右ブレーキペダル16R、左ブレーキペダル16L、連結解除ペダル17及びクラッチペダル18の踏付部15a・16a・17a・18aの前後位置と同一の位置となるように配置される。具体的には、揺動軸53は、側面視において、揺動軸53の中心から下方へ延ばした仮想線L1が、踏み付けられる前の状態の踏付部15a・16a・17a・18aを通過するように配置される。
ここで、踏付部15a・16a・17a・18aは、運転者が踏み付け易くなるように、座席12に着座した運転者の足が届く程度に、座席12に近い位置に配置されている。本実施形態においては、このような踏付部15a・16a・17a・18aの前後位置と同一の位置に揺動軸53の前後位置が位置するようにすることで、揺動軸53を座席12に近づけることができる。これにより、揺動軸53からステアリングホイール21までの前後の距離が長くなり過ぎないようにすることができる。これによって、ステアリングシャフト26の軸線方向が上を向き易く(前後方向に対する上下の傾斜角度が大きくなり易く)なる。
これによれば、上側カバー23が上を向き易くなって、当該上側カバー23等が運転者の足元、具体的には、上側カバー23の後下方の空間を狭めてしまうのを抑制する(運転者の足元を広くする)ことができる。これによって、上側カバー23の下方に足を通し易くなって、運転者がトラクタ1に乗り降りし易くなる。
また、揺動軸53は、前後位置が踏付部15a・16a・17a・18aよりも後方(座席12側)ではなく、踏付部15a・16a・17a・18aの前後位置と同一の位置に配置されている。これによれば、ステアリングシャフト26の軸線方向の長さが短くなり過ぎないようにすることができる。これにより、運転者の足元を広くしながらも、ステアリングホイール21を揺動させたときに、ステアリングホイール21を上下にできるだけ大きく移動させる(揺動角度に応じた上下の移動量を大きくする)ことができる。
次に、揺動軸53の高さ位置(上下方向における位置)について説明する。
揺動軸53は、高さ位置がサイドコンソール14の前端部よりも高い位置に配置される。具体的には、揺動軸53は、側面視において、揺動軸53の中心を通ると共に前後方向に延びる仮想線L2が、サイドコンソール14の前端部の上方を通過するように配置される。
このような構成によれば、揺動軸53の高さ位置をサイドコンソール14の前端部に対して上に上げて運転者の足元、具体的には、揺動軸53の下方の空間を広くすることができる。これにより、運転者は、ステアリングポスト22(第一下側カバー24及び第二下側カバー25)とサイドコンソール14との間に足を通し易くなって、座席12から右方へ移動し易くなる。このため、運転者がキャビン11内を移動し易くなると共に、運転者がトラクタ1の右方から乗り降りし易くなる。
また、揺動軸53は、補助者が着座可能な使用状態のシート部材19の座面19aよりも高い位置に配置される。具体的には、揺動軸53は、側面視において、仮想線L2が、使用状態のシート部材19の座面19aの上方を通過するように配置される。
このような構成によれば、揺動軸53の高さ位置を座面19aに対して上に上げ、運転者及び補助者の足元(揺動軸53の下方の空間)を広くすることができる。また、運転者及び補助者の膝がステアリングポスト22(第一下側カバー24及び第二下側カバー25)に当たるのを抑制することができ、運転者及び補助者がキャビン11内を移動し易くなると共に、運転者及び補助者がトラクタ1の左方から乗り降りし易くなる。
また、本実施形態において、座面19aは、使用状態において、サイドコンソール14の前端部よりも高い位置に配置されている。このような座面19aよりも高い位置に揺動軸53を配置することによって、揺動軸53をより高い位置に配置することができるため、運転者の足元をより広くすることができる。
また、揺動軸53は、座席12の座面12aの前端部よりも高い位置に配置される。具体的には、本実施形態に係る座席12は、コンプレッサ(不図示)によって昇降可能(座面12aの高さ位置を調整可能)に構成されている。当該構成において、揺動軸53は、座席12が最も下降した状態(図8に示す状態)における座面12aの上方を、側面視において、仮想線L2が通過するように配置される。
このような構成によれば、揺動軸53の高さ位置を座面12aに対して上に上げ、運転者の足元(揺動軸53の下方の空間)を広くすることができる。これによって、運転者の膝がステアリングポスト22(第一下側カバー24及び第二下側カバー25)に当たるのを抑制することができる。これにより、トラクタ1の運転時に各種ペダルを操作し易くなると共に、運転者がキャビン11内を移動し易くなる。また、運転者がトラクタ1に乗り降りし易くなる。
また、本実施形態において、最も下降した座席12の座面12aの前端部は、使用状態のシート部材19の座面19aよりも高い位置に配置される。本実施形態においては、このような座席12の座面12aの前端部よりも高い位置に揺動軸53を配置することによって、揺動軸53をより高い位置に配置することができる。これにより、運転者の足元をより広くすることができる。
また、図5及び図8に示すように、揺動軸53は、吹出口25a~25cと同一の高さ、又は吹出口25a~25cよりも高い位置に配置される。具体的には、吹出口25a~25cのうち、左右内側の上部に配置される吹出口25aが最も高い位置に配置される。揺動軸53は、当該吹出口25aの開口部における上端部を、背面視において、仮想線L3が通過するように配置される。ここで、仮想線L3は、揺動軸53の中心を通ると共に左右方向に延びる直線である。また、揺動軸53は、吹出口25aを除く吹出口25b・25cの開口部における上端部の上方を、背面視において、仮想線L3が通過するように配置される。
このような構成によれば、揺動軸53の高さ位置を吹出口25a~25cに対して上に上げ、運転者の足元(揺動軸53の下方の空間)を広くすることができる。これによって、運転者の膝がステアリングポスト22(第一下側カバー24及び第二下側カバー25)に当たるのを抑制することができる。
また、本実施形態において、最も高い位置に配置される吹出口25aは、開口部の上端部が座席12の座面12aよりも高い位置に配置される。本実施形態においては、このような吹出口25aよりも高い位置に揺動軸53を配置することによって、揺動軸53をより高い位置に配置することができる。これにより、運転者の足元をより広くすることができる。
また、本実施形態に係るチルト機構50は、揺動軸53の位置だけではなく、ステアリングホイール21の揺動角度範囲(前後方向に対する上下の傾斜角度の範囲)を適宜設定することでも、運転者の足元が狭くなるのを抑制している。
具体的には、チルト機構50は、図7に示すステアリングホイール21を最も下方まで揺動させた(傾斜角度が最も小さい)状態において、ステアリングシャフト26の軸線方向(図7に示す線L26参照)が、連結シャフト27の軸線方向(図7に示す線L27参照)に対して略平行となるように構成される。なお、本実施形態において、「平行」とは、ステアリングシャフト26の軸線方向の傾斜角度(前後方向に対する上下の傾斜角度)が、連結シャフト27の軸線方向の傾斜角度(前後方向に対する上下の傾斜角度)と同一となることを指す。また、本実施形態(図7に示す状態)においては、ステアリングシャフト26の軸線方向が連結シャフト27の軸線方向に対して僅かに上を向いている(約1°傾斜角度が大きい)。本実施形態においては、このような状態を、「略平行」としている。
このように、ステアリングシャフト26の軸線方向が連結シャフト27の軸線方向に対して略平行となるように構成されることで、ステアリングホイール21を最も下方まで揺動させても、ステアリングシャフト26が連結シャフト27に対して下を向かないようにすることができる。これにより、座席12に着座した運転者の足元を、上側カバー23等が狭めてしまうのを抑制することができる。
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は、運転者が着座する座席12と、前記運転者が踏み付けるための踏付部15a・16a・17a・18aを有するアクセルペダル15、右ブレーキペダル16R、左ブレーキペダル16L、連結解除ペダル17及びクラッチペダル18(ペダル)と、前記座席12の前方に配置され、回動操作可能なステアリングホイール21と、前後方向の位置が、前記踏付部15a・16a・17a・18aと同一となるように、又は、前記踏付部15a・16a・17a・18aよりも前記座席12側に配置される揺動軸53を有し、当該揺動軸53を揺動中心として前記ステアリングホイール21を上下に揺動可能なチルト機構50と、を具備するものである。
このように構成することにより、座席12に着座した運転者の足元が狭くなるのを抑制することができる。
また、前記揺動軸53は、前記踏付部15a・16a・17a・18aに対して前後方向の位置が同一となるように配置されるものである。
このように構成することにより、ステアリングホイール21の揺動によって、当該ステアリングホイール21を上下方向へ大きく移動させることができる。
また、前記揺動軸53は、前記座席12の右方に配置されるサイドコンソール14の前端部よりも高い位置に配置されるものである。
このように構成することにより、揺動軸53の高さ位置を高くして、運転者の足元を広くすることができる。
また、前記座席12の左方に配置され、着座可能な使用姿勢と着座不能な不使用姿勢とに姿勢を変更可能なシート部材19をさらに具備し、前記揺動軸53は、前記使用姿勢の前記シート部材19の座面19aよりも高い位置に配置されるものである。
このように構成することにより、揺動軸53の高さ位置を高くして、運転席に着座した運転者の足元、及びシート部材19に着座した補助者の足元を広くすることができる。
また、ステアリングポスト22に設けられ、エアコンからの空調空気を吹き出す吹出口25a~25cをさらに具備し、前記揺動軸53は、前記吹出口25aと同一の高さ、又は、前記吹出口25b・25cよりも高い位置に配置されるものである。
このように構成することにより、揺動軸53の高さ位置を高くして、運転者の足元を広くすることができる。
また、前記揺動軸53は、前記座席12の座面12aの前端部よりも高い位置に配置されるものである。
このように構成することにより、揺動軸53の高さ位置を高くして、運転者の足元を広くすることができる。
また、前記ステアリングホイール21に固定され、前記ステアリングホイール21と一体的に回動操作されると共に前記揺動軸53を中心として揺動されるステアリングシャフト26(第一シャフト)と、前記ステアリングシャフト26を介して前記ステアリングホイール21の回動操作が伝達される連結シャフト27(第二シャフト)と、をさらに具備し、前記ステアリングシャフト26は、前記ステアリングホイール21を最も下方へ揺動させた状態において、自身の軸線方向が、前記連結シャフト27の軸線方向と平行となるように、又は、前記連結シャフト27の軸線方向よりも上方を向くように設けられるものである。
このように構成することにより、ステアリングホイール21を最も下方へ揺動させた場合でも、ステアリングシャフト26が運転者の足元を狭めてしまうのを抑制することができる。
また、ボンネット4内に配置され、前記ステアリングホイール21の回動操作を補助するパワステユニット28をさらに具備するものである。
このように構成することにより、パワステユニット28の分だけ居住空間を広くして、運転者の足元をより広くすることができる。
また、前記ステアリングホイール21の中心よりも左方に配置され、前記チルト機構50を操作するためのチルトレバー60(チルト操作具)をさらに具備するものである。
このように構成することにより、チルトレバー60が運転者の足に当たるのを効果的に抑制することができる。具体的には、図5に示すように、トラクタ1においては、ステアリングホイール21の中心よりも右方にアクセルペダル15や右ブレーキペダル16Rや左ブレーキペダル16L等が設けられているため、運転者は運転時に左足よりも右足を動かし易い。チルトレバー60によれば、当該運転者の右足に、チルトレバー60が当たるのを抑制することができる。
また、前記チルトレバー60は、ステアリングポスト22に形成された凹部24aに配置されるものである。
このように構成することにより、チルトレバー60を凹部24aに潜り込ませて、チルトレバー60が運転者の足に当たるのを効果的に抑制することができる。また、本実施形態に係るチルトレバー60は、前方(凹部24aが凹む方向)へ揺動することでステアリングホイール21を揺動不能な状態に切り替えるように構成されている。このような構成によれば、必要な場合(ステアリングホイール21を揺動させる場合)を除いて、常にチルトレバー60を凹部24aの前側(奥側)に潜り込ませておくことができる。これによって、運転者の足がチルトレバー60に当たるのを効果的に抑制することができる。
また、前記ステアリングホイール21を、当該ステアリングホイール21の軸線方向に移動可能なテレスコピック機構30と、前記チルトレバー60に対して左右にずれた位置に配置され、前記テレスコピック機構30を操作するためのテレスコピックレバー40(テレスコピック操作具)と、をさらに具備するものである。
このように構成することにより、チルトレバー60に対する距離を確保して、テレスコピックレバー40を設け易くすることができる。また、本実施形態に係るテレスコピックレバー40は、左右方向における位置が、ステアリングホイール21の中心よりも右方ではなく、ステアリングホイール21の中心と同一の位置に位置するように構成されている。これにより、チルトレバー60に対して左右の位置をずらしてチルトレバー60に対する距離を確保しながらも、テレスコピックレバー40が運転者の右足に当たるのを抑制することができる。
なお、本実施形態に係る作業車は、本発明に係るトラクタ1の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るアクセルペダル15、右ブレーキペダル16R、左ブレーキペダル16L、連結解除ペダル17及びクラッチペダル18は、本発明に係るペダルの実施の一形態である。
また、本実施形態に係るステアリングシャフト26は、本発明に係る第一シャフトの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る連結シャフト27は、本発明に係る第二シャフトの実施の一形態である。
また、本実施形態に係るチルトレバー60は、本発明に係るチルト操作具の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るテレスコピックレバー40は、本発明に係るテレスコピック操作具の実施の一形態である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態に係る作業車両はトラクタ1であるものとしたが、本発明に係る作業車両の種類はこれに限定されるものでない。本発明に係る作業車両は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。
また、揺動軸53の前後位置は、踏付部15a・16a・17a・18aと同一の位置であるものとしたが、少なくとも1つの踏付部と同一の位置、又は、少なくとも1つの踏付部よりも後方に位置していればよい。揺動軸53の前後位置は、例えば、クラッチペダル18の踏付部18aと同一の位置、又は、踏付部18aよりも後方(座席12側)に位置していれば、他の踏付部15a・16a・17aとの位置関係は問わない。
また、揺動軸53の高さ位置は、必ずしもサイドコンソール14の前端部、シート部材19の座面19a、吹出口25b・25c及び座席12の座面12aよりも高い位置に配置される必要はない。また、揺動軸53の高さ位置は、必ずしも吹出口25aと同一の位置である必要はない。
また、ステアリングホイール21が最も下方へ揺動した状態における、ステアリングシャフト26の軸線方向と連結シャフト27の軸線方向との関係は、任意に設定することができる。例えば、ステアリングホイール21が最も下方へ揺動した状態において、本実施形態のようにステアリングシャフト26の軸線方向が連結シャフト27の軸線方向に対して僅かに上を向く(略平行となる)のではなく、ステアリングシャフト26の軸線方向と連結シャフト27の軸線方向とが平行となってもよい。
また、パワステユニット28は、必ずしもボンネット4内に配置される必要はなく、例えば、キャビン11内に配置されていてもよい。
また、チルトレバー60が配置される位置は、本実施形態に限定されるものではなく、任意の位置に配置することができる。例えば、チルトレバー60は、テレスコピックレバー40の下方や右方に配置されていてもよい。また、チルトレバー60は、ステアリングポスト22の凹部24a以外の箇所に配置されていてもよい。