JP7045634B2 - 固体電解コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents
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前記多孔質焼結体の表面に形成された誘電体層と、
前記誘電体層の表面に形成された固体電解質層と、
を含むコンデンサ素子を備え、
前記固体電解質層は、導電性高分子と、絶縁性の親水性高分子とを含み、
前記親水性高分子は、前記固体電解質層において、前記誘電体層側よりも前記誘電体層とは反対側で分布量が少ない、固体電解コンデンサに関する。
前記多孔質焼結体を準備する工程と、
前記多孔質焼結体を化成処理して、前記多孔質焼結体の表面に前記誘電体層を形成する工程と、
前記誘電体層の表面に、導電性高分子と、絶縁性の親水性高分子とを含む前記固体電解質層を形成する工程と、を含み、
前記固体電解質層を形成する工程は、前記誘電体層に、前記導電性高分子の前駆体と前記親水性高分子とを含む第1重合液を付着させ、前記親水性高分子の存在下で前記前駆体を重合して、前記導電性高分子と前記親水性高分子とを含む被膜を形成する第1工程と、前記第1工程の後に、前記被膜に、前記導電性高分子の前駆体を含む第2重合液を付着させ、前記前駆体を重合して、前記固体電解質層を形成し、前記陽極体と前記誘電体層と前記固体電解質層とを含むコンデンサ素子を得る第2工程と、を含む、固体電解コンデンサの製造方法に関する。
[固体電解コンデンサの製造方法]
固体電解コンデンサの製造方法は、多孔質焼結体を準備する工程と、多孔質焼結体の表面に誘電体層を形成する工程と、誘電体層の表面に、固体電解質層を形成する工程(固体電解質層を形成してコンデンサ素子を得る工程)と、を含む。
多孔質焼結体である陽極体は、弁作用金属を含む粉末(例えば、弁作用金属の粉末、弁作用金属を含む合金もしくは化合物の粉末)を焼結することにより得ることができる。例えば、弁作用金属の粉末とともに、陽極体と接続させる陽極リードの埋設部を粉末中に埋め込むようにして型に入れ、加圧により成形し、焼結することにより陽極リードの一部が植設された陽極体を形成することができる。成形の際の圧力は特に限定されない。焼結は、減圧下で行なうことが好ましい。弁作用金属の粉末には、必要に応じて、ポリアクリルカーボネートなどのバインダを混合してもよい。
本工程では、多孔質焼結体を化成処理することにより、多孔質焼結体の表面に、誘電体層を形成する。化成処理により、多孔質焼結体が陽極酸化されることで誘電体層が形成される。化成処理は、公知の方法により行えばよい。具体的には、電解水溶液(例えば、リン酸水溶液)が満たされた化成槽に、多孔質焼結体を浸漬し、電圧を印加して陽極酸化を行うことにより、多孔質焼結体の表面に弁作用金属の酸化被膜からなる誘電体層を形成することができる。電解水溶液としては、リン酸水溶液に限らず、硝酸、酢酸、硫酸などの水溶液を用いることができる。
本工程では、誘電体層の表面に、導電性高分子と、絶縁性の親水性高分子とを含む固体電解質層を形成する。この工程は、誘電体層に、導電性高分子の前駆体と親水性高分子とを含む第1重合液を付着させ、親水性高分子の存在下で前駆体を重合して、導電性高分子と親水性高分子とを含む被膜を形成する第1工程と、第1工程の後に、被膜に、導電性高分子の前駆体を含む第2重合液を付着させ、前駆体を重合して、固体電解質層を形成する。
導電性高分子の前駆体の重合は、電解重合で行なってもよいが、化学重合で行うことが好ましい。
これにより、高容量を確保しながら、誘電体層が薄くても誘電体層の修復性が高まり、漏れ電流の発生を抑制することができる。
第1工程では、親水性高分子の存在下で導電性高分子の前駆体を重合させることで、導電性高分子を含む固体電解質層の誘電体層側の表面近傍に、親水性高分子を含有させる。第1工程では、親水性高分子の存在下で、第1重合液中の前駆体を重合できればよい。例えば、誘電体層が形成された陽極体を第1重合液に浸漬させて取り出し(もしくは、第1重合液を誘電体が形成された陽極体に塗布し)、次いで、加熱することにより誘電体層上で前駆体を重合させる。加熱温度は、前駆体などの第1重合液の構成成分の種類に応じて決定できる。
第1重合液は、導電性高分子の前駆体および親水性高分子などの構成成分を、液状媒体に溶解または分散させることにより調製できる。
なお、第1工程に先立って、誘電体層が形成された陽極体を、導電性高分子の前駆体を含む処理液で、前処理してもよい。処理液に含まれる前駆体は、第1重合液に含まれる前駆体と同じであることが好ましい。ただし、第1重合液を陽極体や誘電体層の表面の凹凸に浸透させ易い観点からは、処理液は、絶縁性の親水性高分子を含まないことが好ましい。処理液には、必要に応じて、シラン化合物を添加してもよい。シラン化合物としては、第1重合液について例示したものから選択できる。
処理液は、導電性高分子の前駆体を液状媒体に溶解または分散させることにより調製される。液状媒体としては、第1重合液について例示したものから選択すればよい。
第2工程では、導電性高分子の前駆体を重合させることで、固体電解質層の誘電体層とは反対側の表面近傍における親水性高分子の分布量を少なくする。第2重合液は、親水性高分子を含まないか、含む場合でも、親水性高分子の濃度は、第1重合液中における親水性高分子の濃度よりも低いことが好ましい。固体電解質層の誘電体層とは反対側の表面近傍に含まれる親水性高分子は、漏れ電流の抑制にはほとんど寄与せず、ESRが増加する。よって、第2重合液が親水性高分子を含まないことが好ましい。
第2重合液は、重合により固体電解質層を形成する際に使用される重合液に用いる公知の添加剤を含むことができる。
固体電解質層の表面には、通常、陰極層が形成される。陰極層は、カーボン層と金属ペースト層とで構成され、カーボンペーストおよび銀ペーストを順次、塗布することにより、形成することができる。カーボン層は、黒鉛などの導電性炭素材料を含む組成物により構成される。金属ペースト層は、例えば、銀粒子と樹脂とを含む組成物により構成される。ただし、陰極層の構成は、これに限られず、集電機能を有する構成であればよい。
陰極層には、陰極リードが接続される。陰極リードは、陰極層に導電性接着材を塗布し、この導電性接着材を介して陰極層に接合される。
このようにして形成されるコンデンサ素子は、外装体を用いて封止される。具体的には、コンデンサ素子および外装体の材料樹脂(例えば、未硬化の熱硬化性樹脂およびフィラー)を金型に収容し、トランスファー成型法、圧縮成型法等により、コンデンサ素子を外装体で封止する。このとき、コンデンサ素子から引き出された陽極リードおよび陰極リードの一部を、それぞれ金型から露出させる。成型の条件は特に限定されず、使用される熱硬化性樹脂の硬化温度等を考慮して、適宜、時間および温度条件を設定すればよい。
本発明の一実施形態に係る固体電解コンデンサは、多孔質焼結体である陽極体と、多孔質焼結体の表面に形成された誘電体層と、誘電体層の表面に形成された固体電解質層と、を含むコンデンサ素子を備える。固体電解質層は、導電性高分子と、絶縁性の親水性高分子とを含み、親水性高分子は、固体電解質層において、誘電体層側よりも誘電体層とは反対側で分布量が少ない。このような固体電解コンデンサは、例えば、上述の製造方法により得ることができるが、この場合に限らない。
固体電解コンデンサの他の構成については、製造方法の説明を参照できる。
固体電解コンデンサ20は、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を封止する外装体11と、外装体11の外部にそれぞれ露出する陽極端子7および陰極端子9と、を備える。コンデンサ素子10は、多孔質焼結体である陽極体1と、陽極リード2と、陽極体1の表面に形成された誘電体層3と、誘電体層の表面に形成された固体電解質層5と、を有する。コンデンサ素子10は、さらに、固体電解質層5の表面を覆う陰極層6を有している。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
下記の要領で固体電解コンデンサを作製した。
(1)陽極体の準備
弁作用金属として、一次粒子の平均粒子径D50が約0.1μm、二次粒子の平均粒子径が約0.2μmであるタンタル金属粒子を用いた。このタンタル金属の粉末と、タンタルからなる陽極リードの一部とを、陽極リードの一部を粉末中に埋め込むようにして型に入れ、加圧成形し、焼結した。このようにして、陽極リードの一部(埋設部)が埋め込まれた陽極体を形成した。
電解水溶液であるリン酸水溶液が満たされた化成槽に、陽極体と陽極リードの一部を浸漬し、陽極リードの他の部分(延出部)を化成槽の陽極体に接続した。そして、陽極酸化を行うことにより、陽極体の表面(孔の内壁面を含む多孔質焼結体の表面)および陽極リードの一部の表面に、酸化タンタル(Ta2O5)の均一な誘電体層を形成した。陽極酸化は、0.02質量%リン酸水溶液を用いて、化成電圧37Vで行った。
(第1工程)
3,4-エチレンジオキシチオフェン(導電性高分子のモノマー)と、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、ポリアクリル酸ナトリウム(親水性高分子、Mw:300,000)とを、1-ブタノールに溶解させ、次いで、パラトルエンスルホン酸第二鉄(ドーパント)を添加し、混合することにより、溶液を調製した。得られた溶液を撹拌しながら、1-ブタノールに溶かした硫酸第二鉄と過硫酸ナトリウム(酸化剤)とを添加して混合することにより、溶液状の第1重合液を調製した。第1重合液において、ポリアクリル酸ナトリウムの濃度は0.5質量%であった。
3,4-エチレンジオキシチオフェン(導電性高分子のモノマー)と、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとを、1-ブタノールに溶解させ、次いで、パラトルエンスルホン酸第二鉄(ドーパント)を添加し、混合することにより、溶液を調製した。得られた溶液を撹拌しながら、1-ブタノールに溶かした硫酸第二鉄と過硫酸ナトリウム(酸化剤)とを添加して混合することにより、溶液状の第2重合液を調製した。
固体電解質層の表面に、カーボンペーストを塗布することにより、カーボン層を形成した。次に、カーボン層の表面に、銀ペーストを塗布することにより、銀ペースト層を形成した。こうして、カーボン層と銀ペースト層とで構成される陰極層を形成して、コンデンサ素子を得た。
得られたコンデンサ素子を外装体により封止して、図1に示す固体電解コンデンサを完成させた後、以下に示す評価を行った。
得られた固体電解コンデンサ(n=60)について、静電容量を測定した。静電容量は、LCRメータを用いて、120Hzで測定した。
得られた固体電解コンデンサ(n=60)について、漏れ電流を測定した。漏れ電流は、陽極体と陰極層との間に電圧を印加し、電圧の印加から30秒後に測定した。このとき、印加電圧が0Vから2Vずつ大きくして38Vまでの条件で測定を行なった。
印加電圧が14V(≒実使用上の電圧)のときの漏れ電流値を求めた。
実施例1で用いた第2重合液を、第1工程の第1重合液として用いるとともに、実施例1で用いた第1重合液を、第2工程の第2重合液として用いた。つまり、比較例1の第1重合液は、ポリアクリル酸ナトリウムを含まず、第2重合液がポリアクリル酸ナトリウムを含む。これらの以外は、実施例1と同様にして、固体電解コンデンサを作製し、評価を行なった。実施例1と同様に14Vの印加電圧における漏れ電流値を求めた。
第1重合液中のポリアクリル酸ナトリウムの濃度を2.5質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解コンデンサを作製し、評価を行なった。
第2重合液中のポリアクリル酸ナトリウムの濃度を2.5質量%としたこと以外は、比較例1と同様にして、固体電解コンデンサを作製し、評価を行なった。
実施例2の第1重合液と、比較例2の第2重合液とを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解コンデンサを作製し、評価を行なった。
第1重合液中のポリアクリル酸ナトリウムの濃度を5.0質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体電解コンデンサを作製し、評価を行なった。
第2重合液中のポリアクリル酸ナトリウムの濃度を5.0質量%としたこと以外は、比較例1と同様にして、固体電解コンデンサを作製し、評価を行なった。
実施例1で用いた第2重合液を、第1工程の第1重合液、および第2工程の第2重合液として用いた。つまり、比較例5の第1重合液および第2重合液は、ポリアクリル酸ナトリウムを含まない。これらの以外は、実施例1と同様にして、固体電解コンデンサを作製し、評価を行なった。
実施例および比較例における結果を表1に示す。表1には、重合液中の親水性高分子の濃度についても記載した。
Claims (8)
- 多孔質焼結体である陽極体と、前記多孔質焼結体の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層の表面に形成された固体電解質層と、を含むコンデンサ素子を備える固体電解コンデンサを製造する方法であって、
前記多孔質焼結体を準備する工程と、
前記多孔質焼結体を化成処理して、前記多孔質焼結体の表面に前記誘電体層を形成する工程と、
前記誘電体層の表面に、導電性高分子と、シランカップリング剤またはその加水分解反応物と、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩とを含む前記固体電解質層を形成する工程と、を含み、
前記固体電解質層を形成する工程は、
前記誘電体層に、第1導電性高分子の前駆体と、第1シランカップリング剤とを含み、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩を含まない前処理液を付着させる前処理工程と、
前記前処理工程の後に、前記前処理液が付着した前記誘電体層に、第2導電性高分子の前駆体と、第2シランカップリング剤と、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩とを含む第1重合液を付着させ、前記第1シランカップリング剤、前記第2シランカップリング剤、および前記ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩の存在下で、前記第1導電性高分子の前駆体および前記第2導電性高分子の前駆体を重合して、前記第1導電性高分子と、前記第2導電性高分子と、前記第1シランカップリング剤またはその加水分解反応物と、前記第2シランカップリング剤またはその加水分解反応物と、前記ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩とを含む被膜を形成する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記被膜に、第3導電性高分子の前駆体を含む第2重合液を付着させ、前記第3導電性高分子の前駆体を重合して、前記固体電解質層を形成し、前記陽極体と前記誘電体層と前記固体電解質層とを含む、コンデンサ素子を得る第2工程と、
を含み、
前記第2重合液は、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩を含まないか、もしくは前記第1重合液に比べて低い濃度でポリ(メタ)アクリル酸またはその塩を含む、固体電解コンデンサの製造方法。 - 前記第1シランカップリング剤は、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびメルカプトプロピルトリメトキシシランからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記第2シランカップリング剤は、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびメルカプトプロピルトリメトキシシランからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1または2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記第2重合液は、第3シランカップリング剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記第3シランカップリング剤は、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびメルカプトプロピルトリメトキシシランからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項4に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記第1重合液中の前記ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩の濃度は、0.1質量%以上5質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記誘電体層を形成する工程において、前記化成処理を、40V以下の電圧を印加した状態で行なう、請求項1~6のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記第1工程を複数回繰り返し、
その後に、前記第2工程を1回以上行なう、請求項1~7のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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