JP7040017B2 - トナー用ポリエステル樹脂、その製造方法、およびトナー - Google Patents
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Description
本願は、2016年12月7日に、日本出願された特願2016-237581号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
結着樹脂のTVOCを低減する方法としては、例えば、結着樹脂の製造時の減圧反応時間を長くして結着樹脂の残留モノマーを除去する方法(特許文献1)、ポリエステル樹脂に起因する揮発成分(脂肪族ジオール成分)の量を調整する方法(特許文献2)などが提案されている。
特許文献2に記載のように、脂肪族ジオール成分の量を調整する方法では、ポリエステル樹脂の低TVOC化に限界があった。さらに、特許文献3,4,5,6には、TVOCに関する記載はない。
[1] ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物およびエチレングリコールを含む多価アルコールと、多価カルボン酸を含む単量体混合物を、化合物Aの存在下で重縮合するポリエステル樹脂の製造方法であって、多価カルボン酸と前記化合物Aが、酸と反応する官能基、アルコールと反応する官能基及びエステル基のいずれかと炭素数12以上の炭化水素基を有し、多価アルコールを、単量体中のカルボキシル基を1としたときの水酸基の数が1.20以下となる量で用いる、トナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
[2] 前記化合物Aの量が、全原料中0.1質量%以上3質量%未満である、[1]に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
[3] 酸成分100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドが45モル部以下で、チタン系触媒の存在下で重縮合反応を行う、[1]または[2]に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
[4] 酸成分100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が30モル部以下であり、テレフタル酸が70モル部以下である、[1]または[2]に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
[5] 酸成分に由来するカルボキシ基の数とアルコール成分に由来する水酸基の数との比率(水酸基/カルボキシ基)が1.09以下であり、酸成分100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイドが45モル部以下である、[1]または[2]に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
[6] 酸成分と酸成分100モル部に対して90~150モル部のアルコール成分とを含む単量体と、化合物Aとの混合物を反応させて得られたトナー用ポリエステル樹脂であって、前記化合物Aが、酸と反応する官能基、アルコールと反応する官能基及びエステル基のいずれかと炭素数12以上の炭化水素基を有し、前記アルコール成分としてビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物およびエチレングリコールを含み、揮発性有機化合物の総量(TVOC)が380ppm以下である、トナー用ポリエステル樹脂。
[7] 前記化合物Aが、前記混合物中に0.1質量%以上3質量%未満である、[6]に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
[8] チタン系触媒の存在下での反応物であり、酸成分100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物由来の構成単位が45モル部以下である、[6]または[7]記載のトナー用ポリエステル樹脂。
[9] 酸成分100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物由来の構成単位が30モル部以下であり、テレフタル酸由来の構成単位が70モル部以下である、[6]または[7]に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
[10] 酸成分に由来するカルボキシ基の数とアルコール成分に由来する水酸基の数との比率(水酸基/カルボキシ基)が1.09以下である単量体混合物の重縮合物であり、酸成分100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物由来の構成単位が45モル部以下である、[6]または[7]に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
[11] [6]から[10]のいずれかに記載のトナー用ポリエステル樹脂を含有する、トナー。
本発明のトナー用ポリエステル樹脂(以下、単に「ポリエステル樹脂」ともいう。)は、エチレングリコール由来の構成成分と、炭素数12以上の炭化水素基由来の構成成分と、チタン元素を含有し、TVOC380ppm以下である。
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と、多価アルコールとして少なくともエチレングリコールを原料として用いて製造される。
多価カルボン酸としては、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸が挙げられる。
2価のカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の異性体(具体的には1,4-、1,5-、1,6-、1,7-、2,5-、2,6-、2,7-、2,8-)、およびこれらの低級アルキルエステル;コハク酸、セバシン酸、イソデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、フランジカルボン酸、およびこれらのモノメチル、モノエチル、ジメチル、ジエチルエステルや、これらの酸無水物;フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、およびこれらのエステル誘導体;アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、およびこれらのエステル誘導体などが挙げられる。
テレフタル酸、イソフタル酸の低級アルキルエステルの例としては、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジブチル、イソフタル酸ジブチルなどが挙げられる。
これらのうち、2価のカルボン酸としては、トナーの保存性、ハンドリング性およびコストに優れる点で、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、反応性に優れる点で、イソフタル酸がより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、後述の3価以上のカルボン酸と併用してもよい。
これらのうち、3価以上のカルボン酸としては、ハンドリング性およびコストに優れる点で、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸、ピロメリット酸無水物が好ましい。
多価アルコールとしては、少なくともエチレングリコールを用いる。エチレングリコールを用いることで、生産性良く樹脂を得ることができる。
一方、エチレングリコールはVOCに該当する。多価アルコールとしてエチレングリコールのみを用いると、ポリエステル樹脂の生産性には優れるが、TVOCの高いポリエステル樹脂が得られやすいため、他のアルコールと併用することが好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、下記一般式(i)で表される化合物が挙げられる。
R1およびR2はそれぞれ同一または異なって、炭素数2または3のアルキレン基である。
xおよびyは、アルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す数であり、x、yともに1以上である。また、x+y=2~6が好ましく、2~3がより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうち、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールが好ましい。
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、分子末端等に炭素数12以上の炭化水素基を有する。前記炭化水素基を有することで、トナー化時に配合するワックスとの相溶性が向上し、得られるトナーの定着性、耐オフセット性、耐久性が良好となる。また、炭素数12以上の炭化水素基に由来する構造は、全構成成分中の0.1~5質量%であることが好ましい。0.1質量%以上であることにより上記の効果を奏し、5質量%以下であることにより、樹脂製造時の反応性、得られるトナーの保存安定性が良好となる傾向にある。
上記分子末端等に炭素数12以上の炭化水素基を有するポリエステル樹脂を得るには、酸と反応する官能基、アルコールと反応する官能基及びエステル基のいずれかと炭素数12以上の炭化水素基を有する化合物(化合物A)の存在下で、多価カルボン酸および多価アルコールを重縮合すればよい。酸またはアルコールと反応する官能基またはエステル基としては、特に制限されないが、カルボキシル基またはその無水物、水酸基、グリシジル基、アルコキシ基、イソシアネート基、及びエステル基等が挙げられる。中でもカルボキシル基またはその無水物、水酸基、エステル基が好ましく、より好ましくはカルボキシル基、水酸基、エステル基である。
上記の化合物Aとしては、以下の物質が挙げられ、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
ミリスチン酸(炭素数13)、パルミチン酸(炭素数15)、ステアリン酸(炭素数17)、オレイン酸(炭素数17)、ベヘン酸(炭素数21)等の脂肪族カルボン酸;ラウリルアルコール(炭素数12)、ステアリルアルコール(炭素数18)等の脂肪族アルコール;ライスワックス(ひとつの炭化水素基の炭素数は18程度~34程度の脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル)、カルナバワックス(ひとつの炭化水素基の炭素数16~34)、日油社WEPシリーズなどのエステルワックスのうちひとつの炭化水素基の炭素数が12以上のもの、東洋アドレ社ユニシッドシリーズなどの末端酸変性ポリエチレンのうち炭素数12以上のもの;東洋アドレ社ユニリンシリーズなどの末端アルコール変性ポリエチレンのうち炭素数12以上のもの;酸化ポリエチレンのうち、エポレンE-10J(炭素数100以上のポリエチレンの酸化処理物)、リコワックスPED-822等の炭素数12以上のもの。
ポリエステル樹脂は、公知のポリエステル樹脂の製造方法を用いて製造することができる。例えば、多価カルボン酸および多価アルコール等の原料、触媒等を反応容器に投入し、加熱昇温して、エステル化反応またはエステル交換反応を行い、反応で生じた水またはアルコールを除去する。その後引き続き重縮合反応を実施するが、このとき反応装置内を徐々に減圧し、150mmHg(20kPa)以下、好ましくは15mmHg(2kPa)以下の真空下でジオール成分を留出除去させながら重縮合を行う。
チタン系触媒としては、例えばアルコキシ基を有するチタンアルコキシド化合物、カルボン酸チタン、カルボン酸チタニル、カルボン酸チタニル塩、チタンキレート化合物などが挙げられる。
アルコキシ基を有するチタンアルコキシド化合物としては、例えばテトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラペントキシチタン、テトラオクトキシチタンなどが挙げられる。
カルボン酸チタン化合物としては、例えば蟻酸チタン、酢酸チタン、プロピオン酸チタン、オクタン酸チタン、シュウ酸チタン、コハク酸チタン、マレイン酸チタン、アジピン酸チタン、セバシン酸チタン、ヘキサントリカルボン酸チタン、イソオクタントリカルボン酸チタン、オクタンテトラカルボン酸チタン、デカンテトラカルボン酸チタン、安息香酸チタン、フタル酸チタン、テレフタル酸チタン、イソフタル酸チタン、1,3-ナフタレンジカルボン酸チタン、4,4-ビフェニルジカルボン酸チタン、2,5-トルエンジカルボン酸チタン、アントラセンジカルボン酸チタン、トリメリット酸チタン、2,4,6-ナフタレントリカルボン酸チタン、ピロメリット酸チタン、2,3,4,6-ナフタレンテトラカルボン酸チタンなどが挙げられる。
チタン系触媒の中でも、常温で液体のものは、反応時に系内にて均一に分散しやすいため、反応性が高まりTVOCを低減しやすい傾向にある。また、常温で液体のものは、得られる樹脂の透明性を高めやすい傾向にある点においても好ましい。上記チタン系触媒の中で、テトラブトキシチタンが特に好ましい。また、チタン系触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
その他、本発明の効果を損なわない範囲で、ジブチルスズオキシド等の有機スズ、酸化スズ、2エチルヘキサンスズ等の無機スズ、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム水和物、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなどを併用しても良い。
上記化合物Aの添加量は、全構成成分中の0.1質量%以上3質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以上2.5質量%以下がより好ましい。0.1質量%以上であることにより上記の効果を奏し、3質量%未満であることにより、樹脂製造時の反応性、得られるトナーの保存安定性が良好となり、TVOC量も低減する傾向にある。
酸、アルコールと反応する官能基またはエステル基の具体例、および上記化合物Aの具体例は前述したとおりである。
0.1モル部以上45モル部以下でチタン系触媒の存在下で重縮合反応を行うことにより、生産性が高く、かつTVOCを低減しやすい傾向にある。
酸成分100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が30モル部以下であると、生産性向上や環境への影響を改善できる傾向にあり、テレフタル酸が70モル部以下であると、TVOCが低減しやすい傾向にある。
酸成分100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が30モル部以下であると、生産性が良く、かつ環境面に配慮された樹脂となりやすい。また、テレフタル酸が70モル部以下であると、TVOCが低減したトナー用ポリエステル樹脂が得られる。
前記酸成分に由来するカルボキシ基の数とアルコール成分に由来する水酸基の数との比率(水酸基/カルボキシ基)が1.00以上1.09以下が更に好ましい。
前記酸成分に由来するカルボキシ基の数とアルコール成分に由来する水酸基の数との比率(水酸基/カルボキシ基)が0.90以上1.09以下であると、TVOCを低減しやすい傾向にある。
酸成分100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が0.1モル部以上45モル部以下であると、生産性が良く、環境への影響を改善できる傾向にある。
前記、酸成分と酸成分100モル部に対して100モル部以上140モル部以下のアルコール成分とを含む単量体がより好ましい。酸成分と酸成分100モル部に対して90モル部以上150モル部以下のアルコール成分とを含む単量体を有することにより、生産性が向上し、かつTVOCを低減しやすい傾向にある。
また、重縮合工程の時間(重縮合反応時間および取り出し時間の合計)が短いほど、ポリエステル樹脂の分解や、臭気の要因となる揮発分の副生成を抑制できる傾向にある。
ポリエステル樹脂のTVOCは、380ppm以下であり、330ppm以下が好ましく、300ppm以下がより好ましい。ポリエステル樹脂等の結着樹脂は、通常、トナー中に90質量%以下程度含まれる。ポリエステル樹脂のTVOCが380ppm以下であれば、前記ポリエステル樹脂を含有するトナーのTVOCは、概ね300ppm以下となるので、TVOCが十分に低減されたトナーが得られる。
ポリエステル樹脂のTVOCは、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて測定することができる。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、以下のようにして求める。すなわち、示差走差熱量計を用い、昇温速度5℃/分で測定したときのチャートの低温側のベースラインと、ガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度を求め、これをTgとする。
ポリエステル樹脂の軟化温度は、フローテスターを用いて測定することができる。
ポリエステル樹脂の酸価とは、試料1g当たりのカルボキシル基を中和するのに必要な水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したもので、単位:mgKOH/gで示される。
ポリエステル樹脂の水酸基価とは、試料1gあたりの水酸基を中和するのに必要なカルボキシル基を中和するのに必要な水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したもので、単位:mgKOH/gで示される。
しかも、本発明のポリエステル樹脂であれば、樹脂の製造時の減圧反応時間を長くして残留単量体を除去したりする必要がなく、また反応性の高いエチレングリコールを用いているので、生産性が高い。
さらには、分子末端等に炭素数12以上の炭化水素骨格を有しているため、トナー化時に添加するワックスの分散性を高めることができる。
本発明のポリエステル樹脂は、トナー用のバインダー樹脂として好適であり、本発明のポリエステル樹脂を用いれば、TVOCが十分に低減され、かつワックス分散性の良いトナーを得ることができる。
本発明のトナーは、上述した本発明のトナー用ポリエステル樹脂を含む。
本発明のポリエステル樹脂の含有量は、トナー100質量%中、5~90質量%が好ましい。
また、本発明のトナーは、必要に応じて着色剤、荷電制御剤、離型剤、流動改質剤、磁性体、本発明のポリエステル樹脂以外の樹脂(他のバインダー樹脂)などの配合物を含んでいてもよい。
トナーをカラートナーとして用いる場合、イエロー系着色剤としてはベンジジンイエロー、モノアゾ系染顔料、縮合アゾ系染顔料などが挙げられ、マゼンタ系着色剤としてはキナクリドン、ローダミン系染顔料、モノアゾ系染顔料などが挙げられ、シアン系着色剤としてはフタロシアニンブルーなどが挙げられる。
着色剤の含有量は特に制限されないが、トナーの色調や画像濃度、熱特性に優れる点から、トナー100質量%中、2~10質量%が好ましい。
トナーをカラートナーとして用いる場合、荷電制御剤としては無色ないし淡色で、トナーへの色調障害が少ないものが適しており、このような荷電制御剤としては、例えばサリチル酸またはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等との金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物などが挙げられる。さらに、スチレン系、アクリル酸系、メタクリル酸系、スルホン酸基を有するビニル重合体を荷電制御剤として用いてもよい。
荷電制御剤の含有量は、トナー100質量%中、0.5~5質量%が好ましい。荷電制御剤の含有量が0.5質量%以上であればトナーの帯電量が十分なレベルとなる傾向にあり、5質量%以下であれば荷電制御剤の凝集による帯電量の低下が抑制される傾向にある。
離型剤の融点は、上記トナー性能を考慮して適宜決定すればよい。
離型剤の含有量は特に制限されないが、上記のトナー性能を左右することから、トナー100質量%中、0.3~15質量%が好ましい。離型剤の含有量の下限値は、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が特に好ましい。また、離型剤の含有量の上限値は、13質量%以下がより好ましく、12質量%以下が特に好ましい。
これらの添加剤の含有量は、トナー100質量%中、0.05~10質量%が好ましい。これらの添加剤の含有量が0.05質量%以上であればトナーの性能改質効果が十分に得られる傾向にあり、10質量%以下であればトナーの画像安定性が良好となる傾向にある。
磁性体の含有量は特に制限されないが、トナーの粉砕性に大きく影響を与えるため、トナー100質量中、3~70質量%が好ましい。磁性体の含有量が3質量%以上であればトナーの帯電量が十分なレベルとなる傾向にあり、70質量%以下であればトナーの定着性や粉砕性が良好となる傾向にある。磁性体の含有量の上限値は、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
キャリアとしては、例えば鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉等の磁性物質、それらの表面に樹脂コーティングを施したもの、磁性キャリアなどが挙げられる。樹脂コーティングキャリアのための被覆樹脂としては、例えばスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、それらの樹脂の混合物などが挙げられる。
キャリアの使用量は、トナー100質量部に対して、500~3000質量部が好ましい。キャリアの使用量が500質量部以上であればかぶり等が発生しにくくなる傾向にあり、3000質量部以下であれば定着画像の濃度が十分なものとなる傾向にある。
本実施例で示されるポリエステル樹脂の評価方法は以下の通りである。
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、示差走差熱量計(島津製作所社製、「DSC-60」)を用いて、昇温速度5℃/minにおけるチャートのベースラインと吸熱カーブの接線との交点から測定した。測定試料は10mg±0.5mgをアルミパン内に計量し、ガラス転移温度以上の100℃で10分融解後、ドライアイスを用いて急冷却処理したサンプルを用いて行った。
ポリエステル樹脂の軟化温度は、フローテスター(島津製作所社製、「CFT-500D」)を用いて、1mmφ×10mmのノズル、荷重294N、昇温速度3℃/minの等速昇温下で、樹脂サンプル1.0g中の1/2量が流出したときの温度を測定し、これを軟化温度とした。
ポリエステル樹脂の酸価は、以下のようにして測定した。
測定サンプル約0.2gを枝付き三角フラスコ内に精秤し(a(g))、ベンジルアルコール20mLを加え、窒素雰囲気下として230℃のヒーターにて15分加熱し測定サンプルを溶解した。室温まで放冷後、クロロホルム20mL、クレゾールレッド溶液数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定した(滴定量=b(mL)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=c(mL))、以下の式に従って酸価を算出した。
酸価(mgKOH/g)={(b-c)×0.02×56.11×p}/a
ポリエステル樹脂の水酸基価は、JIS K 0070-1992 に基づき、測定した。
ポリエステル樹脂のTVOCは、以下のようにして測定した。
測定サンプル約10mg(9.9mg以上、10.1mg未満)を精秤し、測定サンプルから揮発成分を加熱脱着装置内で130℃にて10分間加熱抽出した後、冷却モジュールにてトラップ(濃縮)した。次いで、急速加熱した後、GC-MSに供試し、TVOCを定量した。測定装置、測定条件、定量方法は以下の通りである。
・加熱脱着装置:ゲステル株式会社製、「加熱脱着導入システム TDS A/TDS 2/CIS 4」
・GC-MS:アジレント・テクノロジー株式会社製、「GC/MS 6890N/5975」
・試料加熱温度:50℃(0.5min)→50℃/min→130℃(10min)
・クライオフォーカスおよび急速加熱条件:-30℃(0.5min)→12℃/sec→130℃(10min)
・インターフェイス:130℃
・キャリアガス:ヘリウム
・Desorpthopn Mode:スプリットレス
・カラム:フロンティア・ラボ株式会社製、「UA-5(30min×0.25mmI.D.膜厚0.25μm)
・カラム温度:35℃(3min)→10℃/min→330℃(7min)
・キャリアガス:ヘリウム(流量1.0ml/min)
・注入口モード:ソルベントベント(ベント流量50ml/min、スプリットベントライン流量30min/min@0.02min)
・トランスファーライン温度:280℃
・イオン化法:EI
・イオン化電圧:70V
・イオン化電流:300μA
・スキャンレンジ:29~550amu
得られたクロマトグラムにおいて、n-ヘキサンおよびn-ヘキサデカンのピーク溶出時間の間に検出される成分について、エチレングリコール(EG)を除く各成分のピーク面積総和を、予め作成しておいたトルエン溶液(1000ppm、上記GC条件およびMS条件にて、注入量1μl)の測定結果(ピーク面積)より、トルエン換算濃度として算出した。
EGについては、EGのピーク面積を、予め作成しておいたEG溶液(1000ppm、上記GC条件およびMS条件にて、注入量1μl)の測定結果(ピーク面積)より、EG濃度として算出した。
EGを除く各成分の面積総和の濃度と、EGの濃度の和の値をTVOCとした。
ワックス分散性は以下のように評価した。
樹脂95部、融点84℃のポリエチレンワックス5部をドライブレンドにて混合した後、二軸押出機(池貝社製PCM-29)にて混練し、板状のサンプルを採取した。サンプルの小片を、樹脂の軟化温度に設定したプレス機にて熱プレスして薄膜状とし、顕微鏡にて観察した。
3cm角視野にて薄膜の顕微鏡観察を実施し以下の基準でワックス分酸性を評価した。
A:任意の100μm四方の範囲内に3μm以上の粒子径のワックスが認められない。
B:任意の100μm四方の範囲内に3μm以上の粒子径のワックスが認められる。
表1に示す仕込み組成の多価カルボン酸と、多価アルコールと、炭素数12以上の炭化水素基およびその末端に酸または水酸基と反応する官能基を有する物質と、触媒とを、蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。なお、触媒の量は、全原料に対する量(ppm)である。
次いで、反応容器中の撹拌翼の回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持してエステル化反応を行った。反応系からの水の留出がなくなりエステル化反応が終了した後、反応系内の温度を下げて240℃に保ち、反応容器内を約40分かけて減圧し、真空度を133Paとし、反応系から多価アルコールを留出させながら重縮合反応を行った。
反応とともに反応系の粘度が上昇し、粘度上昇とともに真空度を上昇させ、撹拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮合反応を実施した。そして、所定のトルクを示した時点で撹拌を停止し、反応系を常圧に戻し、窒素により加圧して反応物を反応容器から取り出し(吐出し)、ポリエステル樹脂を得た。
得られたポリエステル樹脂の物性(ガラス転移温度、軟化温度、酸価)の測定、および樹脂評価(TVOC、ワックス分散性)を実施した。これらの結果を表1に示す。
・ジオールA:ビスフェノールAのプロピレンオキサイド誘導体(PO2.3モル付加体)
・ジオールB:ビスフェノールAのエチレンオキサイド誘導体(EO2.3モル付加体)・エポレン E-10J:ウエストレイクケミカル社 酸化PEワックス
実施例1、5と比較例1の比較により、炭素数12以上の炭化水素基、および末端にカルボキシル基または水酸基と反応する官能基またはエステル基を有する化合物の存在下で重合することにより、得られるポリエステル樹脂のワックス分散性が向上することが確認できた。
実施例1、4と比較例1の比較により、重合時にチタン系触媒を用いることで、得られる樹脂のTVOC量が低減することが確認できた。
比較例2は、アルコール比率が高く、アルコール成分が余剰となりやすい為、TVOC量が増加した。
Claims (9)
- ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物およびエチレングリコールを含む多価アルコールと、多価カルボン酸を含む単量体混合物を、
化合物Aの存在下で重縮合するポリエステル樹脂の製造方法であって、化合物Aが、酸と反応する官能基、アルコールと反応する官能基及びエステル基のいずれかと炭素数12以上の炭化水素基を有し、
前記化合物Aの量が、全原料中0.1質量%以上3質量%未満であり、前記化合物Aがライスワックス、及び酸化ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
酸成分100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が5モル部以上45モル部以下であり、
酸成分100モル部に対して、多価アルコールが90モル部以上150モル部以下であり、前記多価アルコールのうちエチレングリコールが69モル部以上99モル部以下であり、
前記多価カルボン酸100モル部におけるテレフタル酸の割合が60モル部以上100モル部以下であり、
多価カルボン酸と多価アルコールの量を、
単量体中のカルボキシル基を1としたときの水酸基の数が1.20以下となる量で用いる、
トナー用ポリエステル樹脂の製造方法。 - チタン系触媒の存在下で重縮合反応を行う、請求項1に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
- 酸成分100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が30モル部以下であり、テレフタル酸が70モル部以下である、請求項1または2に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
- 酸成分に由来するカルボキシ基の数とアルコール成分に由来する水酸基の数との比率(水酸基/カルボキシ基)が1.09以下である、請求項1または2に記載のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
- 酸成分と酸成分100モル部に対して90モル部以上150モル部以下のアルコール成分とを含む単量体と、
化合物Aとの混合物を反応させて得られたトナー用ポリエステル樹脂であって、
前記酸成分が多価カルボン酸を含み、
前記化合物Aが、酸と反応する官能基、アルコールと反応する官能基及びエステル基のいずれかと炭素数12以上の炭化水素基を有し、
前記アルコール成分としてビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物およびエチレングリコールを含み、
揮発性有機化合物の総量(TVOC)が380ppm以下であり、
前記化合物Aの量が、全原料中0.1質量%以上3質量%未満であり、
前記化合物Aがライスワックス、及び酸化ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
酸成分由来の構成単位100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物由来の構成単位が5モル部以上45モル部以下であり、エチレングリコール由来の構成単位が69モル部以上99モル部以下であり、
前記多価カルボン酸由来の構成単位100モル部におけるテレフタル酸由来の構成単位の割合が60モル部以上100モル部以下である、
トナー用ポリエステル樹脂。 - チタン系触媒の存在下での反応物である、請求項5に記載のトナー用ポリエステル樹脂。
- 酸成分由来の構成単位100モル部に対して、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物由来の構成単位が30モル部以下であり、
テレフタル酸由来の構成単位が70モル部以下である、
請求項5に記載のトナー用ポリエステル樹脂。 - 酸成分に由来するカルボキシ基の数とアルコール成分に由来する水酸基の数との比率(水酸基/カルボキシ基)が1.09以下である単量体混合物の重縮合物である、
請求項5に記載のトナー用ポリエステル樹脂。 - 請求項5から8のいずれか一項に記載のトナー用ポリエステル樹脂を含有する、トナー。
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