JP7031180B2 - 交流電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
第1インバータは、第1電源(11)の直流電力を交流電力に変換し、各3相巻線の一端に供給する。
第2インバータは、第2電源(12)の直流電力を交流電力に変換し、各3相巻線の他端に供給する。
制御部は、制御モード判定部(41)と、駆動モード判定部(42)と、マルチ空間ベクトル変調部(43)と、を有する。
駆動モード判定部は、第1インバータのみを駆動する「片側駆動モード」、又は、第1インバータ及び第2インバータの両方を駆動する「両側駆動モード」を選択する。
好ましくは、演算された出力が第1インバータのみの駆動での出力限界以下であり、且つ、両側駆動モードの実施を要求する両側駆動要求が入力されているとき、駆動モード判定部は、両側駆動モードを選択する。また、演算された出力が第1インバータのみの駆動での出力限界以下であり、且つ、両側駆動要求が入力されていないとき、駆動モード判定部は、片側駆動モードを選択する。
(一実施形態)
本実施形態の交流電動機の制御装置は、ハイブリッド自動車や電気自動車のような電動車両の動力源であるモータジェネレータ(以下「MG」)を駆動するシステムにおいて、3相交流電動機であるMGの通電を制御する装置である。実施形態中の「MG」及び「MG制御装置」は、「交流電動機」及び「交流電動機の制御装置」に相当する。
MG80は、U相巻線81、V相巻線82及びW相巻線83を有する永久磁石式同期型の3相交流電動機である。ハイブリッド車両に適用される場合、MG80は、駆動輪を駆動するためのトルクを発生する電動機としての機能、及び、エンジンや駆動輪から伝わる車両の運動エネルギにより駆動されて発電可能な発電機としての機能を有する。
回転角センサ85は、レゾルバ等により構成され、MG80の回転角θmを検出する。回転角θmは、電気角換算部86で電気角θeに換算され、制御部50に取得される。なお、電気角換算部86は制御部50の内部に設けられてもよい。
2台のインバータ60、70は、2つの電源11、12から個別に直流電力が入力される。第1電源11は、第1インバータ60を経由してMG80と電力を授受可能であり、第2電源12は、第2インバータ70を経由してMG80と電力を授受可能である。
例えば第1インバータ60からMG80への電力経路に、3相巻線81、82、83に通電される相電流を検出する電流センサ84が設けられる。図1の例では、V相電流iv及びW相電流iwが検出されるが、どの2相又は3相の電流が検出されてもよい。また、電流センサ84は、第2インバータ70からMG80への電力経路に設けられてもよい。
第1電圧センサ86は、第1電源11から第1インバータ60に入力されるシステム電圧Vsys1を検出する。第2電圧センサ87は、第2電源12から第2インバータ70に入力されるシステム電圧Vsys2を検出する。
第1インバータ60は、上下アームの6つのスイッチング素子61-66がブリッジ接続されている。スイッチング素子61、62、63は、それぞれU相、V相、W相の上アームのスイッチング素子であり、スイッチング素子64、65、66は、それぞれU相、V相、W相の下アームのスイッチング素子である。
第2インバータ70は、上下アームの6つのスイッチング素子71-76がブリッジ接続されている。スイッチング素子71、72、73は、それぞれU相、V相、W相の上アームのスイッチング素子であり、スイッチング素子74、75、76は、それぞれU相、V相、W相の下アームのスイッチング素子である。
各スイッチング素子61-66、71-76は、例えばIGBTで構成され、低電位側から高電位側へ向かう電流を許容する還流ダイオードが並列に接続されている。
また、いずれかのインバータ60、70で、3相の上アーム素子をオンし下アーム素子をオフするか、又は、3相の上アーム素子をオフし下アーム素子をオンする制御を「3相オンスイッチング制御」という。3相オンスイッチング制御がされると、MG80の3相巻線81、82、83は、そのインバータの回路を介して中性点が結合され、そのインバータからは電力が供給されない状態となる。つまり、3相オンスイッチング制御が行われることにより、そのインバータの駆動は実質的に停止する。
第1インバータ60のみを駆動するモードを「片側駆動モード」といい、第1インバータ60及び第2インバータ70の両方を駆動するモードを「両側駆動モード」という。両側駆動モードでは、2台のインバータ60、70のスイッチング制御により、2つの電源11、12を直列化することで、高出力を得ることができる。
制御部50が決定したスイッチング出力は、第1ドライブ回路56を通じて第1インバータ60へのゲート信号として出力され、また、第2ドライブ回路57を通じて第2インバータ70へのゲート信号として出力される。
以下、インバータのシステム電圧Vsysに対するMG80への印加電圧の比を「電圧利用率」という。詳しくは、MG80への印加電圧は基本波成分の実効値であり、制御においては、電圧指令ベクトルの振幅に反映される。
0.61 =(√6)/4
0.707=1/(√2)
0.78 =(√6)/π
正弦波制御モード及び過変調制御モードでは、電流フィードバック制御方式により、出力電流検出値と電流指令値との偏差に基づき、MG80に印加される交流電圧の振幅及び位相が制御される。
矩形波制御モードでは、MG80への印加電圧の振幅が固定されるため、トルクフィードバック制御方式により、トルク推定値とトルク指令値との偏差に基づき、矩形波電圧パルスの位相制御が行われる。
このように制御部50は、MG80に印加される電圧の電圧利用率に応じて3つの制御モードを切り替え、インバータ60、70のスイッチング出力を決定する。
(正弦波制御モード)
図2に示すように、正弦波制御モードに対応する制御部50は、一般的な電流フィードバック制御の構成として、電流指令演算部21、電流減算器22、PI演算部23、dq変換部29を有する。また、制御部50は、本実施形態に特有の構成として、αβ変換部26、制御モード判定部41、駆動モード判定部42、及び、マルチ空間ベクトル変調部(図中「MSVM」)43を有する。
dq変換部29は、電流センサ84から取得した相電流iv、iwを、電気角θeを用いてdq軸電流id、iqに座標変換し、フィードバックする。
電流減算器22は、d軸電流減算器221及びq軸電流減算器222を含む。d軸電流減算器221は、d軸電流idとd軸電流指令値id*との偏差であるd軸電流偏差Δidを算出する。q軸電流減算器222は、q軸電流iqとq軸電流指令値iq*との偏差であるq軸電流偏差Δiqを算出する。
αβ変換部26は、電気角θeを用いて、回転座標系のdq軸電圧指令値vd、vqを固定座標系の2軸直交交流座標であるαβ軸の電圧指令値Vα、Vβに変換し、マルチ空間ベクトル変調部43に出力する。
マルチ空間ベクトル変調部43の詳細な構成や、片側駆動及び両側駆動の場合における各インバータ60、70のスイッチング出力の違い等については後述する。
駆動モード判定部42は、両側駆動要求dual_req*、及び、制御モード判定部41が判定した制御モードに基づいて、片側駆動モード又は両側駆動モードを選択する。
図3に示すように、過変調制御モードに対応する制御部50は、図2に対し、αβ変換部26とマルチ空間ベクトル変調部43との間に振幅補正部27を有する点が異なる。
振幅補正部27は、電圧指令の正弦波成分の振幅が正弦波制御での最大振幅より大きくなるようにαβ軸電圧指令値Vα、Vβを補正し、補正後の電圧指令値Vαc、Vβcをマルチ空間ベクトル変調部43に出力する。それ以外の構成は正弦波制御モードと同様である。
図4に示すように、トルクフィードバック制御方式による矩形波制御モードに対応する制御部50は、トルク推定部31、トルク減算器32、PI演算部33、振幅演算部34、dq軸電圧指令演算部35、αβ変換部36、振幅制限部37を有する。また、図4の制御部50は、図2、図3と同様に、dq変換部29、制御モード判定部41、駆動モード判定部42、及び、マルチ空間ベクトル変調部43を有する。
トルク減算器32は、トルク推定値trq_estとトルク指令値trq*との差であるトルク偏差Δtrqを算出する。
PI演算部33は、トルク偏差Δtrqを0に収束させるように、電圧指令ベクトルの位相VΨをPI演算する。
振幅演算部34は、システム電圧Vsys1、Vsys2に基づいて電圧指令ベクトルの振幅Vampを演算する。
αβ変換部36は、図2、図3のαβ変換部26と同様に、回転座標系のdq軸電圧指令値vd、vqを固定座標系の2軸直交交流座標であるαβ軸の電圧指令値Vα、Vβに変換する。
振幅補正部37は、電圧指令ベクトルの振幅が矩形波制御の振幅となるようにαβ軸電圧指令値Vα、Vβを制限し、制限後の電圧指令値Vαr、Vβrをマルチ空間ベクトル変調部43に出力する。
マルチ空間ベクトル変調部の説明にあたり、まず、2台のインバータ60、70による空間ベクトル変調パターンを図5、図6に示す。表中の「1」は、上アーム素子がオン、下アーム素子がオフであることを示し、「0」は、上アーム素子がオフ、下アーム素子がオンであることを示す。
一般に、1台の3相インバータの電圧ベクトルは、ゼロ電圧ベクトルV0、V7と有効電圧ベクトルV1~V6とを含む8通りの電圧ベクトルV0~V7で表される。有効電圧ベクトルV1、V3、V5の方向は、それぞれ、+U軸方向、+V軸方向、+W軸方向に相当し、有効電圧ベクトルV4、V6、V2の方向は、それぞれ、-U軸方向、-V軸方向、-W軸方向に相当する。
「Vnm」は、形式的には、8×8=64通り考えられる。ただし、図5、図6には、現実的に意味の無い12通りのパターンを除外し、残り52通りのパターンを記載する。なお、除外するパターンには、あえて削除線を記す。
除外パターンの一つ目は、第1インバータ60の下アームを3相オンして中性点結合しつつ、第2インバータ70に有効電圧ベクトルV1~V6を生成させる「V01、V02・・・V06」である。本実施形態では、第1インバータ60を第2インバータ70よりも優先して駆動することを前提とするため、これらのパターンを想定する意味は無い。
マルチ空間ベクトル座標は二重の正六角形を呈しており、内側の正六角形を「第1の正六角形」、外側の正六角形を「第2の正六角形」と記す。第2の正六角形は、第1の正六角形の各頂点から第1の正六角形の一辺の長さを延長した点を結んで得られる。
マルチ空間ベクトル座標は、第1の正六角形の内側に定義され、破線ハッチングが付された「第1空間ベクトル領域」、及び、第2の正六角形の内側で第1の正六角形の外側を囲む領域として定義される「第2空間ベクトル領域」を含む。
第2空間ベクトル領域は、第1インバータ60及び第2インバータ70の両方を駆動する両側駆動モードでのスイッチング出力決定に用いられる。
第1インバータ60の出力を有効電圧ベクトルV1~V6とし、第2インバータ70の出力をゼロ電圧ベクトルV0又はV7とすると、第1空間ベクトル領域の頂点は、デュアル電圧ベクトルVnm(n=1~6、m=0、7)により表される。例えば、第6セクターと第1セクターとの境界の頂点は、V10又はV17で表される。
第2空間ベクトル領域の頂点・・・各1パターン×6
第2空間ベクトル領域の辺の中点・・・各2パターン×6
第1空間ベクトル領域の頂点・・・各5パターン×6
中心(ゼロ電圧ベクトル)・・・4パターン
図10に、駆動モード判定を含めた電動機駆動制御の全体処理を示す。S1~S6は、1台のインバータを用いた通常の電動機制御と基本的に同様である。
S1の指令算出ステップで制御部50は、電流フィードバック制御の場合、トルク指令trq*に基づきdq軸電流指令id*、iq*を算出する。トルクフィードバック制御の場合、トルク指令trq*をそのまま用いる。
また、制御部50は、S3で、MG80の電気角θe及び相電流iv、iwをセットで取得し、S4で、それらの値に基づいて相電流iv、iwをdq変換する。
さらに制御部50は、S5で、電流フィードバック制御又はトルクフィードバック制御により、dq軸電圧指令vd、vqを演算する。
S6の出力演算ステップでは、システム電圧Vsys1、Vsys2、及び、電圧指令ベクトルの振幅に基づいて、2台のインバータ60、70の出力が演算される。
S8では、両側駆動要求dual_req*が入力されているか否か判断される。両側駆動要求dual_req*が駆動モード判定部42に入力されている場合、第1インバータ60のみでの片側駆動が可能な状態であっても、第2インバータ70を併用する両側駆動が優先される。
一方、S7でYES、又はS8でYESと判断されたとき、駆動モード判定部42は、S9dにて両側駆動モードを選択する。すると制御部50は、S20で、第1インバータ60、第2インバータ70ともに通常スイッチング制御して両側駆動を実行する。
制御部50は、S11で、第2インバータ70の上アーム又は下アームを3相オンすることにより中性点結合するとともに、第1インバータ60の通常スイッチング制御に移行する。通常スイッチング制御の具体的なステップは、S12~S19に示される。
制御モード判定部41は、S12でYESの場合、正弦波制御モードを選択し、S12でNO且つS13でYESの場合、過変調制御モードを選択する。また、制御モード判定部41は、S13でNOの場合、矩形波制御モードを選択する。
過変調制御モードが選択されると、S14bでdq軸からαβ軸への座標変換がされ、S15で振幅補正がされた後、S18で、マルチ空間ベクトル変調により過変調制御用のスイッチング出力が決定される。
矩形波制御モードが選択されると、S14cでdq軸からαβ軸への座標変換がされ、S16で振幅制限がされた後、S19で、マルチ空間ベクトル変調により矩形波制御用のスイッチング出力が決定される。
最初に図13を参照し、空間ベクトル座標と電圧利用率との関係について説明する。図中、電圧利用率を「vuf」と記す。
図13には、1台のインバータについて、正六角形の空間ベクトル領域に3つの同軸円C1、C2、C3が描かれている。最も内側の円C1を「内側の内接円」、2番目の円C2を「外側の内接円」、最も外側の円C3を「外接円」と呼ぶ。なお、「外側の内接円」は幾何学的にも正六角形の内接円であるのに対し、「内側の内接円」及び「外接円」は、幾何学的な意味での正六角形の内接円及び外接円とは少しずれている。ただし、本明細書では、説明の便宜上、それらを「内接円」及び「外接円」と呼ぶこととする。
外側の内接円の半径は、電圧利用率0.707(=1/(√2))に相当し、3次高調波を含んだ場合と同等の正弦波出力によって得られる。この値が、一般的な空間ベクトル変調の出力限界である。電圧利用率0.707以下に相当する「外側の内接円の内側の領域」を「正弦波領域」と定義する。
電圧利用率0.707~0.78に相当する「外側の内接円と外接円との間の領域」を「過変調領域」と定義する。また、電圧利用率0.78に相当する外接円上を「矩形波領域」と定義する。電圧利用率0.78は、矩形波制御モードでのインバータの出力限界に相当する。
なお、正六角形の頂点を通る幾何学的に本来の外接円の半径は、現実の電圧利用率としては存在しない0.816(=√(3/2))という値に相当する。つまり、矩形波出力の電圧利用率は、瞬間的には正六角形の頂点を通る値(=0.816)となるが、平均的にはそれより小さい値(=0.78)になる、と解釈される。
次に、図14-図16を参照し、第1インバータ60のみで片側駆動を行う場合のスイッチング出力決定について、<出力決定パターン1>として説明する。出力決定パターン1は、図10のフローチャートのS7でNO、S8でNOと判断され、S9sに移行した場合に用いられ、詳しくは図11のフローチャートに対応する。
制御部50は、図11のS11にて、出力する必要の無い第2インバータ70の上アーム又は下アームを3相オンとして中性点結合し、第1インバータ60のみによるインバータ1台相当の駆動を行う。制御モード判定部41は、S12、S13にて、第1インバータ60の制御モードを電圧利用率に応じて選択する。
area1の空間ベクトル座標において、原点は、ゼロ電圧ベクトルVnに相当する。また、α軸に一致する方向の電圧ベクトルをVkと表し、α軸に対し60°の方向の電圧ベクトルをVmと表す。さらに、第1空間ベクトル領域の頂点に向かう電圧ベクトルに添え字1を付し、第2空間ベクトル領域の頂点及び辺の中点に向かう電圧ベクトルに添え字2を付す。
Vk2は、Vk1を2倍した電圧ベクトルであり、電圧ベクトルV14に相当する。
Vm1は、電圧ベクトルV20、及び、V20と等価の電圧ベクトル群を包含する。
Vm2は、Vm1を2倍した電圧ベクトルであり、電圧ベクトルV25に相当する。
Vmk2(又はVkm2)は、Vk1とVm1とを合成した電圧ベクトルである。
以上のVk1、Vk2、Vm1、Vm2、Vmk2、Vnの6個の電圧ベクトルを基本電圧ベクトルとする。基本電圧ベクトルは、原点から、area1を構成する4つのセクターの6つの頂点に向かうベクトルであり、セクターの各頂点位置に記載される。以下、セクターの頂点を表す記号として、基本電圧ベクトルの記号を用いる場合がある。
空間ベクトル変調では、空間ベクトルスイッチング周期Tsにおける各電圧ベクトルの時間配分を規定することにより、スイッチング出力が決定される。図14(b)、図15(b)、図16(b)には、各制御モードにおける時間配分の考え方を示す。
続いて、各制御モードについて、順に詳しく説明する。
図14(a)では、電圧指令ベクトルVcomの終点は、第1セクター内にある。第1インバータ60は、正弦波制御モードにより、空間ベクトル変調スイッチング周期Ts内に、第1セクターの頂点をなす電圧ベクトルVk1、Vm1、及びゼロ電圧ベクトルVnが各々の時間配分で出力される。
空間ベクトル変調スイッチング周期Tsから各電圧ベクトルVk1、Vm1の配分比dk1、dm1に相当する時間が出力された後の残りの時間は、ゼロ電圧ベクトルVnによって埋められる。つまり、図14(b)に示すように、ゼロ電圧ベクトルVnの出力時間(dn×Ts)は、下式により表される。
dn×Ts=Ts-dk1×Ts-dm1×Ts
図15(a)では、電圧指令ベクトルVcomの終点は、空間ベクトル変調の出力限界を超過し、過変調領域に属する。時間配分の考え方は、正弦波制御モードと同様である。
図15(b)の「補正前」に示すように、ゼロ電圧ベクトルVnの配分比dnをゼロとしても、電圧ベクトルVk1、Vm1の配分時間の合計が、スイッチング周期Tsに収まらなくなる。
図16(a)では、電圧指令ベクトルVcomの終点は、第1空間ベクトル領域の外接円で表され、第1インバータ60の出力限界である矩形波領域に達する。矩形波制御モードでは電気角180°間パルス出力する必要があり、時間配分の考え方を適用できない。
そこで、過変調制御モードと同様に、第1セクターをゼロ電圧ベクトルVnに対して2等分した<1a>、<1b>の2ゾーンが想定され、電圧指令ベクトルVcomがどちらのゾーンに含まれるかが判断される。図16(a)の例では、電圧指令ベクトルVcomは<1a>側に含まれる。そして、図16(b)に示すように、電圧指令ベクトルVcomが属する側の電圧ベクトル成分(この例ではVk1)のみがスイッチング出力される。
矩形波制御では、電圧利用率0.78に相当する外接円上にある電圧ベクトルの位相に応じて、各相のスイッチング素子が一方の180°区間でオンし、他方の180°区間でオフすることが要求される。
図17(a)には、第1インバータ60のみでの片側駆動を想定し、第1空間ベクトル領域における各相のスイッチング切替わりの境目を示す。切替わりの境目は、各セクターを2等分する直線で示される。ここで、α軸方向を0°とし、反時計回りに電気角θeを定義する。すると、θe=0°、60°、120°、180°、240°、360°の各電圧ベクトルは、(100)、(110)、(010)、(011)、(001)、(101)で表される。
V相は、30°<θe<210°の180°区間でオンし、-150°(=210°)<θe<30°の180°区間でオフする。
W相は、150°<θe<330°の180°区間でオンし、-30°(=330°)<θe<150°の180°区間でオフする。
よって、電気角位相に対するスイッチング出力パターンは、図17(b)に表される。
次に、図18-図21を参照し、演算された出力が第1インバータ60のみの駆動での出力限界を超えているため両側駆動を行う場合のスイッチング出力決定について、<出力決定パターン2>として説明する。出力決定パターン2は、図10のフローチャートのS7でYESと判断され、S9dに移行した場合に用いられ、詳しくは図12のフローチャートに対応する。
制御部50は、第1インバータ60を矩形波制御モードで制御し、且つ、電圧利用率に応じて選択された制御モードにより第2インバータ70を駆動する。
両側駆動の場合、2台のインバータ60、70のシステム電圧Vsys1、Vsys2の和に対する電圧指令ベクトルVcomの振幅の比率がMG80の電圧利用率として算出される。したがって、MG80の電圧利用率は、第1インバータ60及び第2インバータ70の両方の駆動状態によって決まる。第1インバータ60が矩形波制御モードだからといって、MG80の電圧利用率が0.78になるとは限らない。
両側駆動モードの出力決定パターン2では、第2空間ベクトル領域を含めたマルチ空間ベクトル座標を用いてスイッチング出力パターンが決定される。出力範囲の考え方は、第1インバータ60のみが駆動される片側駆動モードの出力決定パターン1と同様である。
図19では、電圧指令ベクトルVcomの終点は、第7セクター内にある。第1インバータ60は、矩形波制御モードにより、電圧ベクトルVk1のみが出力される。第2インバータ70は、正弦波制御モードにより、空間ベクトル変調スイッチング周期Ts内に、第7セクターの頂点をなす3つの電圧ベクトルVk1、Vm1、Vmk2が各々の時間配分で出力される。時間配分の考え方は、図14(b)に示す片側駆動の正弦波制御モードの場合と同様である。
よって、電圧指令ベクトルVcomは、第1インバータ60に対する電圧ベクトルVk1と、第2インバータ70に対する第7セクターの電圧ベクトルVm1、Vk1、Vmk2との合成で表現される。
図20では、電圧指令ベクトルVcomの終点は、空間ベクトル変調の出力限界を超過し、過変調領域に属する。第1インバータ60に電圧ベクトルVk1が出力されると共に、電圧ベクトルVk1の終点から電圧指令ベクトルVcomの終点に向かう成分が、第24セクターの頂点をなす3つの電圧ベクトルVk1,Vk2,Vmk2の合成で表現される。
出力超過及び時間配分の補正の考え方は、図15(a)、図15(b)に示す片側駆動の過変調制御モードの場合と同様である。つまり、第24セクターが<24a>及び<24b>の2ゾーンに2等分され、電圧指令ベクトルVcomが属する方の頂点の電圧ベクトルを用いて時間配分が補正される。
図21では、電圧指令ベクトルVcomの終点は、空間ベクトル変調の出力限界を超過し、矩形波領域に至る。そのため、第1インバータ60及び第2インバータ70の両方の出力波形が矩形波になるようスイッチング出力が決定され、MG80の電圧利用率として最大の値である0.78が出力される。
この場合、第1インバータ60及び第2インバータ70が一つのインバータと見なされる。そして、第1、第7、第8及び第24セクターを合わせたarea1の三角形領域において、ゼロ電圧ベクトルVnを除く電圧ベクトルVk2,Vm2を用いて、第1インバータ60及び第2インバータ70のスイッチング出力パターンが決定される。
すなわち、片側駆動の場合は第1セクターが2等分されたのと同様に、両側駆動の場合は電圧ベクトルVmk2が2等分の位置となり、第1セクター及び第7セクターが2等分される。したがって、片側駆動の場合と同じ考え方が適用され、スイッチング出力波形は矩形波として決定される。
次に、図22-図24を参照し、第1インバータ60を出力限界まで駆動させない状態で第2インバータ70を併用して両側駆動を行う場合のスイッチング出力決定について、<出力決定パターン3>として説明する。出力決定パターン3は、図10のフローチャートのS7またはS8でYESと判断され、S9dに移行した場合に用いられ、詳しくは図12のフローチャートに対応する。
図22-24の各図において、電圧指令ベクトルVcomは、始点から最短距離となる直線で描くことができるが、直線でなくとも表現可能である。
図22では、電圧指令ベクトルVcomの終点は、第7セクター内にある。第1インバータ60は、正弦波制御モードにより電圧ベクトルVk1、Vm1、Vnが出力される。第2インバータ70は、正弦波制御モードにより、空間ベクトル変調スイッチング周期Ts内に、第7セクターの頂点をなす3つの電圧ベクトルVk1、Vm1、Vmk2が各々の時間配分で出力される。時間配分の考え方は、図14(b)に示す片側駆動の正弦波制御モードの場合と同様である。
よって、電圧指令ベクトルVcomは、第1インバータ60に対する第1セクターの電圧ベクトルVk1、Vm1、Vnと、第2インバータ70に対する第7セクターの電圧ベクトルVm1、Vk1、Vmk2との合成で表現される。
図23は、図22に対し、第1インバータ60が過変調制御モードで制御される点が異なるのみであり、第2インバータ70が正弦波制御モードで制御される点は同様である。したがって、図22の説明が援用される。
図24では、電圧指令ベクトルVcomの終点は、第24セクターを超過し、過変調領域に属する。第1インバータ60は、過変調制御モードにより、電圧ベクトルVk1、Vm1、Vnが過変調補正後の時間配分で出力される。第2インバータ70は、過変調制御モードにより、空間ベクトル変調スイッチング周期Ts内に、第24セクターの頂点をなす3つの電圧ベクトルVk1、Vk2、Vmk2が各々、過変調補正後の時間配分で出力される。
よって、電圧指令ベクトルVcomは、第1インバータ60に対する第1セクターの電圧ベクトルVk1、Vm1、Vnと、第2インバータ70に対する第24セクターの電圧ベクトルVk1、Vk2、Vmk2との合成で表現される。
以上のように本実施形態のMG制御装置は、2電源2インバータシステムにおけるインバータのスイッチングパターンに着目し、このシステムに特化したマルチ空間ベクトル変調を行うものである。本実施形態は、空間ベクトル変調方式において、片側駆動モード又は両側駆動モードの選択と、正弦波制御モード、過変調制御モード、矩形波制御モードの選択とにより、及び、各インバータのスイッチング出力パターンを適切に決定することができる。したがって、高出力、高効率の電動機制御を実現することができる。
(a)上記実施形態では、2台のインバータのうち優先して駆動される側のインバータが「第1インバータ」とされ、補助的に駆動される側のインバータが「第2インバータ」とされる。本実施形態では、少なくとも電動機制御が連続的に行われる短期間のスパンにおいては、2台の役割は固定して考えられる。
ただし、例えば車両の駆動停止等により電動機制御が一旦停止された後の再起動時等において、第1インバータ及び第2インバータの役割は、適宜、交代してもよい。例えば再起動時の電源及びインバータのイニシャルチェックの結果に基づき、通電特性により余裕のある方が、その期間における第1インバータとして選択されてもよい。その他、種々の理由により、第1インバータと第2インバータとを適宜交代してよく、その役割や手段は限定しない。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
41・・・制御モード判定部、
42・・・駆動モード判定部、
43・・・マルチ空間ベクトル変調部、
50・・・制御部、
60・・・第1インバータ、
70・・・第2インバータ、
80・・・MG(モータジェネレータ、交流電動機)、
81、82、83・・・3相巻線。
Claims (3)
- 2つの電源から個別に直流電力が入力される2台のインバータを用いて、中性点がオープンである3相巻線(81、82、83)を有する交流電動機(80)の通電を制御する制御装置であって、
第1電源(11)から入力される直流電力を交流電力に変換し、各前記3相巻線の一端に供給する第1インバータ(60)と、
第2電源(12)から入力される直流電力を交流電力に変換し、各前記3相巻線の他端に供給する第2インバータ(70)と、
前記交流電動機に対するトルク指令に基づいて前記2台のインバータから前記交流電動機への出力を演算し、前記第1インバータを前記第2インバータよりも優先して駆動することを前提として、演算された出力に応じて前記2台のインバータのスイッチング出力を決定する制御部(50)と、
を備え、
前記制御部は、
前記電源から前記インバータに入力されるシステム電圧(Vsys1、Vsys2)に対する前記交流電動機への印加電圧の比である電圧利用率に応じて、前記インバータを駆動する制御モードとして、電流フィードバック制御方式による正弦波制御モード、電流フィードバック制御方式による過変調制御モード、又は、トルクフィードバック方式による矩形波制御モードを選択する制御モード判定部(41)と、
前記第1インバータのみを駆動する片側駆動モード、又は、前記第1インバータ及び前記第2インバータの両方を駆動する両側駆動モードを選択する駆動モード判定部(42)と、
第1の正六角形の内側に定義される第1空間ベクトル領域、及び、前記第1空間ベクトル領域の各頂点から前記第1の正六角形の一辺の長さを延長した点を結んで得られる第2の正六角形の内側で前記第1の正六角形の外側を囲む領域として定義される第2空間ベクトル領域を含み、前記第1インバータ及び前記第2インバータの電圧ベクトルが合成されるマルチ空間ベクトル座標を用いて、前記第1インバータ及び前記第2インバータのスイッチング出力を決定するマルチ空間ベクトル変調部(43)と、
を有し、
演算された出力が前記第1インバータのみの駆動での出力限界を超えているとき、前記駆動モード判定部は、前記両側駆動モードを選択し、
前記制御部は、前記第1インバータを矩形波制御モードで制御し、且つ、電圧利用率に応じて選択された前記正弦波制御モード、前記過変調制御モード又は前記矩形波制御モードのいずれかにより前記第2インバータを駆動する交流電動機の制御装置。 - 演算された出力が前記第1インバータのみの駆動での出力限界以下であり、且つ、前記両側駆動モードの実施を要求する両側駆動要求が入力されているとき、前記駆動モード判定部は、前記両側駆動モードを選択し、
前記制御部は、電圧利用率に応じて選択された前記正弦波制御モード又は前記過変調制御モードのいずれかにより前記第1インバータ及び前記第2インバータを駆動する請求項1に記載の交流電動機の制御装置。 - 演算された出力が前記第1インバータのみの駆動での出力限界以下であり、且つ、前記両側駆動要求が入力されていないとき、前記駆動モード判定部は、前記片側駆動モードを選択し、
前記制御部は、前記第2インバータの3相の上アーム素子をオンし下アーム素子をオフするか、又は、3相の上アーム素子をオフし下アーム素子をオンして3相巻線の中性点を結合し、且つ、電圧利用率に応じて選択された前記正弦波制御モード、前記過変調制御モード又は前記矩形波制御モードのいずれかにより前記第1インバータを駆動する請求項2に記載の交流電動機の制御装置。
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