JP7021750B2 - 窒化ガリウム結晶膜の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、上記HVPEよりも高い成長速度にて窒化ガリウム結晶膜を製造できる方法として、三塩化ガリウム(GaCl3)ガスとアンモニア(NH3)ガスとの反応によって窒化ガリウム結晶膜を成膜する方法が開示されている。
HVPE及びTHVPEでは、原料ガスの種類の違いだけでなく、用いるキャリアガスの種類にも違いがある。具体的には、HVPEでは、キャリアガスとして、水素(H2)ガス、又は、水素ガスと窒素ガス(N2)との混合ガスが用いられるのに対し、THVPEでは、キャリアガスとして不活性ガスが用いられる。
HVPEによる窒化ガリウム結晶膜の製造は、ある程度確立された技術であるのに対し、THVPEは、HVPEよりも新しい技術である。
従って、THVPEによる窒化ガリウム結晶膜の製造条件には未知の部分が残っており、それだけに、製造条件を更に改善できる可能性がある。
<1> 基板上に、不活性ガスからなるキャリアガスと、GaCl3ガスと、ハロゲンガスと、NH3ガスと、を供給することにより、前記基板上に窒化ガリウム結晶膜を成長させる成長工程を含み、
前記成長工程において、前記基板上における前記GaCl3ガスの分圧に対する前記ハロゲンガスの分圧の比を分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕とした場合に、分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕が0.20以上である
窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
<2> 前記分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕が、0.30以上である<1>に記載の窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
<3> 前記分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕が、2.50以下である<1>又は<2>に記載の窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
<4> 前記成長工程は、前記基板上への前記GaCl3ガスの供給と、前記基板上への前記ハロゲンガスの供給と、を実質的に同時に開始する<1>~<3>のいずれか1つに記載の窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
<5> 前記成長工程は、前記基板上に、不活性ガスからなるキャリアガス、GaCl3ガス、及びハロゲンガスを含む混合ガスと、不活性ガスからなるキャリアガス及びNH3ガスを含む混合ガスと、を供給する<1>~<4>のいずれか1つに記載の窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
<6> 前記ハロゲンガスが、Cl2ガスである<1>~<5>のいずれか1つに記載の窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
<7> 前記成長工程における前記基板の温度が、1200℃~1550℃である<1>~<6>のいずれか1つに記載の窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示の製造方法は、従来のTHVPEによる窒化ガリウム結晶膜の製造方法と比較して、成長速度(即ち、単位時間当たりの膜厚増大量)が高いという効果が奏される。
上記効果が奏される理由は明らかではないが、以下の推定理由が考えられる。但し、本開示の製造方法は、以下の推定理由によって限定されることはない。
GaCl3(g)+NH3(g)→ GaN(s)+3HCl(g)
ここで、(g)は気体(ガス)を表し、(s)は固体を表す。
上記反応は、反応速度が高いため、本来目的とする基板上だけでなく、基板に到達する前の気相中でも起こる場合がある。上記反応が基板上で起こった場合には、GaN(s)が、目的物である窒化ガリウム結晶膜(以下、「GaN結晶膜」ともいう)として生成される。一方、上記反応が気相中で起こった場合には、GaN(s)が、GaN粒子として生成される(例えば、後述の実験例5、並びに、図4及び図5参照)。
即ち、THVPEによるGaN結晶膜の製造において、上記反応が気相中で起こった場合には、原料ガスであるGaCl3ガスの一部が、目的物であるGaN結晶膜ではなくGaN粒子の生成に消費される。即ち、原料ガスであるGaCl3ガスの一部が無駄に消費される(以上、例えば後述の実験例5参照)。
更に、本発明者等は、分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕が0.20以上である場合に、気相中での上記反応(即ち、GaN粒子の生成)が抑制されることも知見した。
即ち、本開示の製造方法では、基板上に、GaCl3ガスに加えてハロゲンガスを供給し、かつ、分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕を0.20以上とすることにより、気相中において、GaCl3ガスと反応しようとするNH3ガスと、ハロゲンガス(例えば、Cl2ガス)と、によって分子(例えばアダクト体)が生成されると考えられる。この分子の生成により、「GaCl3(g)+NH3(g)→ GaN(s)+3HCl(g)」の反応が抑制され、気相中でのGaNの生成が起こらなくなると考えられる。
その後、基板上にGaCl3が到達して吸着し、かつ、多量に存在するNH3ガスが基板上に拡散することにより、基板上でGaCl3とNH3とが反応し、基板上にGaN結晶膜が成長すると考えられる。
本開示の製造方法では、このようにして、原料ガス(GaCl3)の無駄な消費が抑えられ、原料ガス(GaCl3)が目的物であるGaN結晶膜の成長に効率よく利用されると考えられる。その結果、従来のTHVPEによる窒化ガリウム結晶膜の製造方法と比較して、成長速度が上昇すると考えられる。
本開示の製造方法は、THVPEによる窒化ガリウム結晶膜の製造装置として公知の装置を用いて実施できる。
製造装置の具体例については後述する。
本開示の製造方法において、ハロゲンガスは、1種のみからなる単独のガスであってもよいし、2種以上からなる混合ガスであってもよい。
なお、言うまでもないが、ハロゲン化水素ガス(HClガス、HBrガス、HIガス等)は、ここでいう「ハロゲンガス」の概念には包含されない。
GaN結晶膜の成長速度をより上昇させる観点から、分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕は、好ましくは0.30以上である。
分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕は、例えば3.00以下である。
GaN結晶膜の成長速度をより上昇させる観点から、分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕は、好ましくは2.50以下であり、より好ましくは2.00以下である。
基板上へのGaCl3ガスの供給と基板上へのハロゲンガスの供給とを実質的に同時に開始することにより、基板上へのGaCl3ガスの供給よりも前に基板上へのハロゲンガスの供給を開始した場合と比較して、ハロゲンガスによる基板のエッチングがより抑制され、このエッチングに起因するGaN結晶膜の結晶欠陥の発生がより抑制される。
また、基板上へのGaCl3ガスの供給と基板上へのハロゲンガスの供給とを実質的に同時に開始することにより、基板上へのGaCl3ガスの供給よりも後に基板上へのハロゲンガスの供給を開始した場合と比較して、気相中でのGaN生成反応がより抑制され、その結果、基板上でのGaN結晶膜の成長速度がより向上する。
上記ガス放出部材は、少なくともGaCl3ガス及びハロゲンガスを基板に向けて放出する部材であればよく、GaCl3ガス及びハロゲンガスに加えてキャリアガスを基板に向けて放出しても構わない。上記ガス放出部材は、更に、アンモニアガスを基板に向けて放出しても構わない。
ガス放出部材の一例としては、後述するガス放出部材20(図1)が挙げられる。
この態様によれば、気相中でのGaCl3ガスとNH3ガスとの反応がより抑制される。
混合ガスAにおける不活性ガス、及び、混合ガスBにおける不活性ガスの各々の好ましい態様は、それぞれ前述のとおりである。
成長温度は、好ましくは1200℃~1550℃である。
本開示の製造方法は、THVPEによる窒化ガリウム結晶膜の製造装置として、公知の装置を特に制限なく用いて実施できる。
以下、本開示の製造方法に用いる窒化ガリウム結晶膜の製造装置の一例を示すが、本開示の製造方法に用いる窒化ガリウム結晶膜の製造装置は、以下の一例には限定されない。
図1に示すGaN結晶膜製造装置100は、THVPEによる窒化ガリウム結晶膜の製造装置である。
サセプタ104は、筐体102の内壁の長手方向一端側に、回転軸105を介し、回転可能に支持されている。
サセプタ104には基板10が装着され、この基板10上(図1では基板10の左側の面上)にGaN結晶膜が成長する。
サセプタ104の材質としては、セラミックス(例えば、窒化珪素と窒化ホウ素との複合焼結体等)等が挙げられる。
GaN結晶膜の成長は、このヒーター106により、基板10を含む成長部全体を加熱した状態で行う。ヒーター106としては、例えば、高周波加熱方式によるヒーター(高周波発信コイル等)を用いることができる。
また、ヒーター106に代えて、又は、ヒーター106に加えて、成長部における筐体102の内壁に、不図示の加熱手段(例えば、pBNコートカーボン等の誘導加熱装置等)を設け、この加熱手段によって成長部の加熱を行ってもよい。
また、成長部における筐体102の内壁及び/又は外壁には、筐体102自体の温度が上がり過ぎないようにするための不図示の冷却手段(水冷装置、空冷装置、等)を備えていてもよい。
ここで、成長温度とは、成長工程における基板10の温度を意味する。
成長温度は、好ましくは1200℃~1550℃である。
ここで、原料ガスとは、GaN結晶膜の原料となるガスを意味する。
原料ガスは、具体的には、GaN結晶膜のGa源となるGaCl3ガス、及び、GaN結晶膜のN源となるNH3ガスである。
以下、この点を詳述する。
中央放出部12は、GaCl3供給管22の一端側に連通されている。GaCl3供給管22の他端側は、不図示のGaCl3ガス生成部に接続されている。
GaCl3供給管22の途中には、ハロゲンガス供給管24の一端が接続されている。ハロゲンガス供給管24の他端側は、不図示のハロゲンガス供給手段に接続されている。
GaCl3供給管22には、GaCl3ガス生成部(不図示)で生成されたGaCl3ガスが、キャリアガスCGとともに供給される。
GaCl3供給管22には、更に、ハロゲンガス供給管24を経由してハロゲンガスとしてのCl2ガスが供給される。このCl2ガスは、キャリアガスに希釈された状態で供給されてもよい。GaCl3供給管22内では、GaCl3ガス、Cl2ガス、及びキャリアガスCGが混合され、混合ガスとなる。この混合ガスが、中央放出部12に送られ、中央放出部12から基板10に向けて放出される。
GaCl3供給管22にハロゲンガスを供給する方法としては、例えば、後述するGaCl3ガス生成装置40(図3)において、Cl2導入口44から導入するCl2ガスを過剰量(即ち、GaCl3ガスの生成に必要な量よりも過剰な量)とすることにより、生成されたGaCl3ガスと、余剰のCl2ガスと、キャリアガスCGと、の混合ガスを、反応管42の下流側に輸送する方法、等が挙げられる。
不活性ガスとしては、窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、又は窒素ガスが好ましい。
ガリアガスBGとしては、前述のキャリアガスCGと同様の、不活性ガスが用いられる。
ガス放出部材20において、バリアガスBGは、GaCl3ガスとNH3ガスとの間に配置されている。バリアガスBGの機能は、ガス放出部材20の出口付近において、GaCl3ガスとNH3ガスとが反応してGaN粒子が形成されることを抑制する機能である。
バリアガスBGは、機能が異なること以外は、キャリアガスCGと実質的に同じガスである。
中間放出部14には、バリアガスBGに加え、ハロゲンガスを流通させても構わない。
外周放出部16には、不図示のNH3供給手段により、NH3ガスが、キャリアガスCGとともに供給される。
GaCl3ガス及びCl2ガスは、GaCl3ガス及びCl2ガスを含む混合ガスの形態で排出される。
前述のとおり、Cl2ガスは、気相中でのGaCl3ガス及びNH3ガスの反応を抑制し、これにより、GaN結晶膜の成膜速度を高める機能を有する。
パージガスPGは、機能が異なること以外は、キャリアガスCGと実質的に同じガス(即ち、不活性ガス)である。
例えば、筐体102内に、全圧及び/又は各ガスの分圧を測定するための圧力測定手段(例えば圧力計)、雰囲気温度及び/又は基板温度を測定するための温度測定手段(温度計、熱伝対等)、を備えていてもよい。
また、各配管が、各ガスの供給及び供給の停止を行うためのバルブを備えていてもよい。
この一例では、筐体102の排出口108は常時開放したままとし、筐体102内にパージガスPGも常時流通させたままとする。この状態を初期状態とする。
まず、ガス放出部材20の中間放出部14に、バリアガスBGを供給し、供給されたバリアガスBGを中間放出部14から基板10に向けて放出させる。
次に、ガス放出部材20の外周放出部16に、NH3ガス及びキャリアガスCGを供給し、供給されたNH3ガス及びキャリアガスCGを外周放出部16から基板10に向けて放出させる。
次に、成長部を加熱することにより、基板10を、所望とする成長温度にまで加熱する。
基板10が所望とする成長温度にまで昇温された後、GaCl3供給管22へのGaCl3ガス及びキャリアガスCGの供給(以下、「供給1」とする)と、ハロゲンガス供給管24を経由したGaCl3供給管22へのCl2ガス(又はキャリアガスに希釈されたCl2ガス)の供給(以下、「供給2」とする)と、を開始する。この際、供給1の開始と供給2の開始とのタイミングを調整することにより、基板10上へのGaCl3ガスの供給と基板10上へのCl2ガスの供給とを、実質的に同時に開始する。これにより、基板10上へのGaN結晶膜の製造(即ち、成長工程)を開始する。この状態で、所望とする時間、GaN結晶膜の製造を行う。
GaN結晶膜の製造の終了は、上述した、GaCl3ガス及びキャリアガスCGの供給と、Cl2ガス及びキャリアガスCGの供給と、を実質的に同時に停止することにより行う。
GaN結晶膜の製造装置(GaN結晶膜製造装置)において、GaCl3ガス生成部としては、固体GaCl3を原料とするGaCl3ガス生成装置A、及び、液体Gaを原料とするGaCl3ガス生成装置Bが挙げられる。
固体GaCl3を原料とするGaCl3ガス生成装置Aとしては、固体GaCl3から生成した蒸気としてGaCl3ガスを生成させるGaCl3ガス生成装置Aを用いることができる。
図2に示すように、GaCl3ガス生成装置Aの一例であるGaCl3ガス生成装置30は、内部にGaCl3(s)(即ち、固体GaCl3)を収容する容器32を備える。
容器32は、ヒーター等の加熱手段(不図示)を備えている。固体GaCl3が加熱されることにより、GaCl3(s)から生成した蒸気として、GaCl3ガスが生成される。
容器32は、キャリアガスCGが供給される供給管33と、生成されたGaCl3ガスをキャリアガスCGとともに排出する排出管34と、を備える。
この際、排出管34とGaCl3供給管22とを一体の部材としてもよいし、排出管34とGaCl3供給管22とを別々の部材とし、両者を接続させてもよい。
液体Gaを原料とするGaCl3ガス生成装置Bとしては、例えば、液体GaとCl2ガスとを反応(以下、「第1段反応」ともいう)させてGaClガス(即ち、一塩化ガリウム)を生成させ(以下、「第1工程」ともいう)、次いでこのGaClガスとCl2ガスとを反応(以下、「第2段反応」ともいう)させてGaCl3ガスを生成させるGaCl3ガス生成装置Bを用いることができる。
かかるGaCl3ガス生成装置Bについては、国際公開第2011/142402号等の公知文献を適宜参照できる。
図3に示すように、GaCl3ガス生成装置Bの一例であるGaCl3ガス生成装置40は、Cl2及びキャリアガスCGが供給される反応管42と、反応管42内に配置され、Ga(l)(即ち、液体Ga)を収容する容器であるGaボート46と、を備える。
反応管42には、Gaボート46に対して下流側(Cl2及びキャリアガスCGの流通方向についての下流側。以下同じ。)に、Cl2導入口44が設けられている。Cl2導入口44は、反応管42に、Cl2ガスを導入するための導入口である。このCl2ガスは、キャリアガスに希釈された状態で導入されてもよい。
GaCl3ガス生成装置40では、反応管42の一端側からCl2及びキャリアガスCGが供給され、供給されたCl2とGa(l)とが反応し、GaClガスが生成される(第1段反応)。生成されたGaClガスは下流側に輸送され、輸送されたGaClガスとCl2導入口44から導入されたCl2ガスとが反応し、GaCl3ガスが生成される(第2工程)。
第2工程で得られたGaCl3ガスは、キャリアガスCGとともに、反応管42の更に下流側に輸送される。
この際、反応管42とGaCl3供給管22とを一体の部材としてもよいし、反応管42とGaCl3供給管22とを別々の部材とし、両者を接続させてもよい。
第2ゾーンの反応(第2段反応):GaCl(g)+Cl2(g)→GaCl3(g)
反応温度T1の上限は、例えば1100℃、好ましくは1000℃である。
第2ゾーン(第2段反応)における反応温度T2には特に限定はなく、広範囲の温度を選択することができるが、反応温度T2の下限は第1ゾーンから供給されるGaClが反応管の管壁に析出しない程度の温度とすることが好ましい。このような観点から、反応温度T2は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、500℃以上であることが特に好ましい。
反応温度T2の上限は、例えば1100℃、好ましくは1000℃である。
但し、前述のとおり、意図的に、生成されたGaCl3ガスと余剰のCl2ガスとキャリアガスCGとの混合ガスを反応管42の下流側に輸送する場合には、Cl2供給口44から供給されるCl2の量(モル数)を、第1ゾーンから第2ゾーンに供給されるGaClのモル数に対して過剰量としてもよい。
前述したGaN結晶膜製造装置100(図1)及びGaCl3ガス生成装置30(図2)を用い、固体GaCl3を原料としてGaCl3ガスを生成させ、生成したGaCl3ガスを原料として用いてGaN結晶膜を製造した。
GaCl3ガス生成装置30の排出管34は、GaN結晶膜製造装置100のGaCl3供給管22に接続した。
GaN結晶膜製造装置100において、ガス放出部材20における各ガスの出口と、基板10と、の距離は、80mmとした。
キャリアガスCG、バリアガスBG、及びパージガスPGとしては、いずれもN2ガスを用いた。
バリアガスBGの流量は6L/minとし、パージガスPGの流量は8L/minとし、筐体102内の圧力は大気開放(1atm)とした。
基板10としては、サファイア(0001)基板を用いた。
まず、GaN結晶膜製造装置100(図1参照)において、ガス放出部材20の中間放出部14にバリアガスBGを導入し、導入したバリアガスBGを中間放出部14から基板10に向けて放出した。
次に、ガス放出部材20の外周放出部16に、NH3ガス及びキャリアガスCGの混合ガスを導入し、導入した混合ガスを外周放出部16から基板10に向けて放出した。この際、外周放出部16内において、NH3ガスの圧力(以下、「NH3供給圧a1」とする)が0.4atmとなり、NH3ガス及びキャリアガスCGの混合ガスの圧力が1atmとなり、NH3ガス及びキャリアガスCGの混合ガスの流量(以下、「流量a1」とする)が10L/minとなるように調整した。
条件1では、GaCl3供給管22に連通しているガス放出部材20の中央放出部12から、GaCl3ガス、Cl2ガス、及びキャリアガスCGの混合ガスを、基板10に向けて放出した。
条件1(Cl2ガス有り)では、GaCl3供給管22へのGaCl3ガス及びキャリアガスCGの供給開始と、ハロゲンガス供給管24を経由したGaCl3供給管22への100%Cl2ガスの供給開始と、のタイミングを調整することにより、基板10上へのGaCl3ガスの供給(即ち、ガス放出部材20の中央放出部20からのGaCl3ガスの放出)と、基板10上へのCl2ガスの供給(即ち、ガス放出部材20の中央放出部20からのCl2ガスの放出)と、を実質的に同時に開始した。
ガス総流量(L/min)(条件1)
=流量a1+流量b1+流量c1+バリアガスBGの流量+パージガスPGの流量
=10L/min+10L/min+0.2L/min+6L/min+8L/min
=34.2L/min
=NH3供給圧a1×(流量a1/ガス総流量)
=0.4atm×(10/34.2)
=0.117atm
=GaCl3供給圧b1×(流量b1/ガス総流量)
=2.7×10-2atm×(10/34.2)
=7.89×10-3atm
=Cl2供給圧c1×(流量c1/ガス総流量)
=1atm×(0.2/34.2)
=5.85×10-3atm
=5.85×10-3atm/7.89×10-3atm
=0.74
条件2の場合、分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕は、言うまでもなく、0である。
条件1(Cl2ガス有り)の場合、GaN結晶膜の成長速度は400μm/hであった。
条件2(Cl2ガス無し)の場合、GaN結晶膜の成長速度は36μm/hであった。
前述したGaN結晶膜製造装置100(図1)及びGaCl3ガス生成装置40(図3)を用い、液体Gaを原料としてGaCl3ガスを生成させ、生成したGaCl3ガスを原料として用いてGaN結晶膜を製造した。
GaCl3ガス生成装置40の反応管42に対する下流側に、GaN結晶膜製造装置100のGaCl3供給管22を接続した。
GaN結晶膜製造装置100において、ガス放出部材20における各ガスの出口と、基板10と、の距離は、80mmとした。
キャリアガスCG、バリアガスBG、及びパージガスPGとしては、いずれもN2ガスを用いた。
バリアガスBGの流量は6L/minとし、パージガスPGの流量は8L/minとし、筐体102内の圧力は大気開放(1atm)とした。
基板10としては、サファイア(0001)基板を用いた。
まず、GaN結晶膜製造装置100(図1参照)において、ガス放出部材20の中間放出部14にバリアガスBGを導入し、導入したバリアガスBGを中間放出部14から基板10に向けて放出した。
次に、ガス放出部材20の外周放出部16に、NH3ガス及びキャリアガスCGの混合ガスを導入し、導入した混合ガスを外周放出部16から基板10に向けて放出した。この際、外周放出部16内において、NH3ガスの圧力(以下、「NH3供給圧a2」とする)が0.3atmとなり、NH3ガス及びキャリアガスCGの混合ガスの圧力が1atmとなり、NH3ガス及びキャリアガスCGの混合ガスの流量(以下、「流量a2」とする)が10L/minとなるように調整した。
次に、反応管42内のGaボート46上に、Cl2ガス及びキャリアガスCGの混合ガスを導入した。この際、Gaボート46上において、Cl2ガスの圧力が2×10-2atmとなり、Cl2ガス及びキャリアガスCGの総圧力が1atmとなり、Cl2ガス及びキャリアガスCGの混合ガスの流量が5L/minとなるように調整した。これにより、第1段反応によりGaClガスが生成される。
第1段反応により、Cl2ガスの2倍のモル数(即ち、2倍の分圧)のCaClガスが生成される。このように、反応によってガスのモル数が変化することを、以下では「モルチェンジ」と称する。このモルチェンジのため、圧力一定(1atm)の下では、単位時間当たりの容積(即ち、流量)が変化することになる。
第1段反応の前のCl2ガス及びキャリアガスCGの分圧は、それぞれ、0.02atm及び0.98atmである。第1段反応でのモルチェンジにより、仮想的に全圧が1atmから1.02atmに増大する。実際は、全圧1atmを維持したまま、ガス流量が、5L/minから5.1L/minに増大する(計算式:5L/min×1.02=5.1L/min)。これにより、実際の全圧1atm下でのGaClガスの圧力は、下記計算式のとおり、0.0392atmとなる。
全圧1atm下でのGaClガスの圧力
=4×10-2atm/(5.1/5)
=4×10-2atm/1.02
=0.0392atm
上述した第1段反応を行った状態で、Cl2導入口44から、純度100%のCl2ガス(圧力1atm)を導入し、第2段反応により、GaCl3ガスを生成させた。生成したGaCl3ガスとキャリアガスCGの混合ガスとの混合ガスを、GaN結晶膜製造装置100(図1)のGaCl3供給管22に輸送した。
Cl2導入口44から導入するCl2ガスのモル数は、上述したGaClガスのモル数と等しくなるようにした。詳細には、純度100%のCl2ガス(圧力1atm)の流量は、0.02L/minとした(計算式:0.0392×5.1=0.02L/min)。
第2段反応では、モルチェンジにより、ガスのモル数(分圧)が1/2に減少する。本実施例2の条件では、第2段反応において、「生成されたGaCl3ガスの分圧=GaClガスの分圧=Cl2導入口44から導入したCl2ガスの分圧」の関係が成り立つ。
従って、GaCl3供給管22内において、GaCl3ガスの圧力(以下、「GaCl3供給圧b2」とする)は3.92×10-2atmとなり、GaCl3ガス及びキャリアガスCGの混合ガスの流量(以下、「流量b2」とする)は5.1L/minとなる。
条件1では、GaCl3供給管22に連通しているガス放出部材20の中央放出部12から、GaCl3ガス、Cl2ガス、及びキャリアガスCGの混合ガスを、基板10に向けて放出した。
条件1(Cl2ガス有り)では、GaCl3供給管22へのGaCl3ガス及びキャリアガスCGの供給開始と、ハロゲンガス供給管24を経由したGaCl3供給管22への100%Cl2ガスの供給開始と、のタイミングを調整することにより、基板10上へのGaCl3ガスの供給(即ち、ガス放出部材20の中央放出部20からの放出)と、基板10上へのハロゲンガスの供給(即ち、ガス放出部材20の中央放出部20からの放出)と、を実質的に同時に開始した。
ガス総流量(L/min)(条件1)
=流量a2+流量b2+流量c2+バリアガスBGの流量+パージガスPGの流量
=10L/min+5.1L/min+0.2L/min+6L/min+8L/min
=29.3L/min
=NH3供給圧a2×(流量a2/ガス総流量)
=0.3atm×(10/29.3)
=1.02×10-1atm
=GaCl3供給圧b2×(流量b2/ガス総流量)
=3.92×10-2atm×(5.1/29.3)
=6.82×10-3atm
=Cl2供給圧c2×(流量c2/ガス総流量)
=1atm×(0.2/29.3)
=6.83×10-3atm
=6.83×10-3atm/6.82×10-3atm
=1.00
条件2の場合、分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕は、言うまでもなく、0である。
条件1(Cl2ガス有り)の場合、GaN結晶膜の成長速度は360μm/hであった。
条件2(Cl2ガス無し)の場合、GaN結晶膜の成長速度は35μm/hであった。
実験例1(固体GaCl3原料)をベースとし、表1に示す条件A及び条件Bの各々の場合について、表1に示す各分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕におけるGaN結晶膜の成長速度(μm/n)を測定した。
結果を表1に示す。表1中、「N.D.」は、測定結果無し(No Data)を意味する。
実験例1(固体GaCl3原料)をベースとし、表2に示す条件C(Cl2有り)及び条件D(Cl2無し)の各々の場合について、基板上でのGaCl3分圧と、GaN結晶膜の成長速度(μm/n)との関係を測定した。
結果を表2に示す。
一方、条件C(Cl2有り;分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕=1.00)の場合には、Ga源であるGaCl3の分圧の増大に伴い、成長速度がほぼ単調に増大した。この理由は、GaCl3ガスに加えてCl2ガスが存在することにより、気相中でのGaCl3ガスとNH3ガスとの反応(即ち、GaN粒子の生成)が抑制され、その結果、GaCl3の分圧を増大させた場合の増大させた分のGaCl3ガスが、GaN結晶膜の成長速度の増大に効果的に寄与したためと考えられる。
実験例1(固体GaCl3原料)をベースとし、成長温度が1300℃であり、基板上でのGaCl3分圧PGaCl3が4.5×10-3atmであり、基板上におけるNH3ガスの分圧PNH3が0.1atmであり、分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕が0である条件(即ち、Cl2ガスを用いない条件)で、基板上にGaN結晶膜の成長を1時間行った。
その後、基板が装着されているサセプタを目視で観察し、外観写真を撮影した(図4)。
この図4に示すサセプタには、図4でいう左端に基板10が装着されている(後述の図6及び7も同様)。
図4に示すように、サセプタ104の外周(詳細には、点線の丸で囲った領域Xを含む領域)に、黄白色の粉末(以下、「黄白色粉末」ともいう)が厚く付着していた。
次に、図4中、点線の丸で囲った領域Xの黄白色粉末について、He-Cdレーザー(325nm)を用い、室温でフォトルミネッセンス(PL)スペクトル測定を行った。結果を図5に示す。
図5に示すように、PLスペクトルでは、GaNの不純物と欠陥との複合発光に由来する1.88eVのピークと、GaNのバンド端付近の発光に由来する3.40eVのピークと、が観測された。
以上の結果から、サセプタの外周に付着していた黄白色粉末は、GaN粒子であることが確認された。
その後、基板が装着されているサセプタを目視で観察し、外観写真を撮影した(図6及び図7)。
図7は、分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕が1.00である条件で基板上へのGaN結晶膜の製造を行った場合のサセプタの外観写真である。
この結果から、基板上へのGaN結晶膜の成長工程(分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕が0.20以上である条件)では、気相中におけるGaCl3ガスとNH3ガスとの反応(即ち、黄白色粉末である、GaN粒子の生成)が抑制されることが確認された。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
Claims (7)
- 基板上に、不活性ガスからなるキャリアガスと、GaCl3ガスと、ハロゲンガスと、NH3ガスと、を供給することにより、前記基板上に窒化ガリウム結晶膜を成長させる成長工程を含み、
前記成長工程において、前記基板上における前記GaCl3ガスの分圧に対する前記ハロゲンガスの分圧の比を分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕とした場合に、分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕が0.20以上である
窒化ガリウム結晶膜の製造方法。 - 前記分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕が、0.30以上である請求項1に記載の窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
- 前記分圧比〔PHalogen/PGaCl3〕が、2.50以下である請求項1又は請求項2に記載の窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
- 前記成長工程は、前記基板上への前記GaCl3ガスの供給と、前記基板上への前記ハロゲンガスの供給と、を実質的に同時に開始する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
- 前記成長工程は、前記基板上に、不活性ガスからなるキャリアガス、GaCl3ガス、及びハロゲンガスを含む混合ガスと、不活性ガスからなるキャリアガス及びNH3ガスを含む混合ガスと、を供給する請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
- 前記ハロゲンガスが、Cl2ガスである請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
- 前記成長工程における前記基板の温度が、1200℃~1550℃である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の窒化ガリウム結晶膜の製造方法。
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