JP7011388B2 - 溝構造のめっき方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溝構造のめっき方法に関する。
従来、記録紙等の被記録媒体に液滴状のインクを吐出して被記録媒体に画像や文字を記録する装置として、インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタがある。例えば、インクジェットヘッドは、吐出チャネル及びダミーチャネルが交互に並設されたアクチュエータプレートを備えている。各チャネルのうち、吐出チャネルの内面には共通電極が形成され、ダミーチャネルの内側面には個別電極が形成されている。共通電極及び個別電極は、それぞれ外部配線に接続されている。
アクチュエータプレートは、圧電体(例えばPZT)からなり、このアクチュエータプレートに電圧をかけて変形させることで、吐出チャネル内のインクを吐出させる。アクチュエータプレートは、圧電体に溝構造を形成し、無電解めっきを行うことで、電極を溝内部に形成したものがある。
例えば特許文献1には、無電解めっきで導電パターンを形成する方法において、パラジウム等の触媒をパターン状に形成し、触媒を塗布する際の溶剤を加熱により除去し、その後、無電解めっきを行うことが記載されている。
特開2006-6835号公報
ところで、アクチュエータプレートは、ラインアンドスペース(L/S)の微細化を図るために、溝幅を狭めることが望まれている。例えば、アクチュエータプレートの溝は、溝深さ200~300μmに対し、溝幅は40μm程度である。このような溝内にも、めっきによる電極を一様に形成する必要がある。
しかし、溝構造の溝幅が狭くなると、触媒付与時等に溝内部の液交換が難しくなり、触媒及び触媒以外の物質(未反応物質等)が溝内に浮遊する。この浮遊物は、めっき時にめっきダマを形成する原因となる。また、溝表面の触媒上を浮遊物が被覆すると触媒反応を阻害する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、溝構造のめっき方法において、溝幅が狭くても溝内に浮遊物が残り難くし、めっき不良の発生を抑制することを目的とする。
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、基材の溝構造を含む表面にエッチングを行う前処理工程と、前記前処理工程後に前記基材の表面に触媒を付与する触媒付与工程と、前記触媒付与工程後に前記基材の表面を洗浄液で洗浄する水洗工程と、前記水洗工程後に、前記基材に形成されている溝の内面を含む前記基材の表面の洗浄液を乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程後に前記基材の表面にめっきを行うめっき工程と、を備え、前記めっき工程では、インクジェットヘッドのアクチュエータプレートに形成されているチャネルの内面にめっきを行い、めっき膜を形成し、前記触媒付与工程では、前記基材の表面に還元剤を吸着後、前記基材の表面に触媒を還元析出させる、溝構造のめっき方法を提供する。
求項に記載した発明は、前記触媒付与工程では、前記基材を塩化すず水溶液に浸漬させた後、前記基材を塩化パラジウム水溶液に浸漬させる。
請求項に記載した発明は、前記めっき工程は、前記基材をめっき液に浸漬させて、20~400Hzの周波数で振動させる工程を含む。
請求項に記載した発明は、前記水洗工程は、前記基材を洗浄液に浸漬させて、20~400Hzの周波数で振動させる工程を含む。
請求項に記載した発明は、前記触媒付与工程、水洗工程および乾燥工程のセットを複数回行う。
請求項1に記載した発明によれば、前処理工程や触媒付与工程で溝内に浮遊物が浸入し、この浮遊物が水洗工程で除去しきれなかった場合でも、水洗後の乾燥工程により浮遊物が溝壁面に付着して捕獲される。すなわち、溝幅が狭くても溝内に浮遊物が残り難くなる。このため、浮遊物によるめっきダマの発生を抑制し、かつ溝表面の触媒反応を良好にして、めっき不良の発生を抑えることができる。 また、乾燥工程を設けて浮遊物の残存を抑えることで、より多くの触媒を付与でき、溝底部にもしっかりとめっきを行うことができる。このため、溝内部にめっきの薄い部分が発生することを抑制し、品質を安定させて歩留まりを向上させることができる。
また、浮遊物を捕獲してめっきダマの発生を抑制することで、水洗条件を緩和して生産性を向上させることができる。
また、溝幅を狭めることが要求されるインクジェットヘッドのアクチュエータプレートに対し、溝幅が狭くてもめっき不良の発生を抑えることができる。
また、二液による触媒付与工程を行っても溝内に未反応物質が残り難くなり、浮遊物によるめっき不良の発生を抑えることができる。
請求項に記載した発明によれば、塩化すず水溶液および塩化パラジウム水溶液の二液により、基材の表面に触媒を良好に付与することができる。
請求項に記載した発明によれば、めっき工程で基材を20~400Hzの周波数で振動させることで、基材表面に金属イオンが新たに供給されて、基材表面にめっき膜をむらなく形成することができる。
請求項に記載した発明によれば、水洗工程で基材を20~400Hzの周波数で振動させることで、基材の表面に付着した異物および気泡を良好に除去し、溝内に一様にめっきを施すことができる。
請求項に記載した発明によれば、触媒付与工程、水洗工程および乾燥工程のセットを複数回行うことで、より多くの触媒を付与でき、溝内に一様なめっきを施すことができる。
また、複数回に分けて触媒付与工程と乾燥工程とを行うことで、一回の触媒付与工程で発生する溝内の浮遊物の量を抑えることができる。この点でも、浮遊物によるめっき不良の発生を抑えることができる。また、触媒を満遍なく付与して膜厚不足を低減することができる。
本発明の実施形態におけるプリンタの概略構成図である。 上記プリンタのインクジェットヘッドの第一断面図である。 上記インクジェットヘッドの第二断面図である。 上記インクジェットヘッドの分解斜視図である。 上記インクジェットヘッドのアクチュエータプレートの製造方法を示すフローチャートである。 図5の電極形成工程の詳細を示すフローチャートである。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明の溝構造のめっき方法を、プリンタのインクジェットヘッドのアクチュエータプレートに適用した例を説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1はプリンタ1の要部の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ1は、インクが収容されたインクタンク4と、被記録媒体に液滴状のインクを吐出するインクジェットヘッド5と、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させるインク循環装置6と、を備えている。インク循環装置6は、循環流路23と、加圧ポンプ24と、吸引ポンプ25と、を備えている。循環流路23は、インクジェットヘッド5にインクを供給するインク供給管21と、インクジェットヘッド5からインクを排出するインク排出管22と、を備えている。
図2は、インクジェットヘッド5の第一断面図、図3は、インクジェットヘッド5の第二断面図である。
図2、図3に示すように、インクジェットヘッド5は、後述する吐出チャネル54におけるチャネル延在方向の先端部からインクを吐出する(エッジシュート)。インクジェットヘッド5は、いわゆるエッジシュートのうち、インクタンク4との間でインクを循環させる循環式(縦循環式)のヘッドである。また、インクジェットヘッド5は、複数のノズル孔(噴射孔)83,84が二列に亘って形成された二列タイプのヘッドである。
インクジェットヘッド5は、第1ヘッドチップ40A及び第2ヘッドチップ40Bと、流路プレート41と、入口マニホールド42と、スペーサプレート43と、ノズルプレート44と、を備えている。
ここで、図中X方向は、被記録媒体の搬送方向、図中Y方向は、被記録媒体におけるX方向と直交する幅方向、図中Z方向はX方向及びY方向と直交する高さ方向をそれぞれ示す。以下の説明では、Z方向のうち、インクジェットヘッド5のノズルプレート44側を下、ノズルプレート44とは反対側を上ということがある。また、以下の説明では、Y方向のうち、インクジェットヘッド5の中心に向かう側を内、インクジェットヘッド5の中心から離間する側を外ということがある。各ヘッドチップ40A,40Bは互いに共通の構成を有し、以下、単にヘッドチップ40として説明する。
図4は、インクジェットヘッド5の分解斜視図である。
図2~図4に示すように、ヘッドチップ40は、アクチュエータプレート51と、カバープレート52と、を有している。
アクチュエータプレート51は、分極方向が厚さ方向(Y方向)で異なる2枚の圧電基板を積層した積層基板とされている(いわゆる、シェブロン基板)。圧電基板は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等からなるセラミックス基板が好適に用いられている。アクチュエータプレート51は、基材(めっき前部材)にめっきによって電極61,63および配線62を形成したものである。基材は、PZT基板の表裏一側面にチャネル54,55となる溝構造を形成している。
アクチュエータプレート51の表面(Y方向の内側に位置する面)の側には、少なくとも表面上で開口する複数の吐出チャネル54および複数のダミーチャネル55が形成されている。吐出チャネル54はインクが充填される噴射チャネルであり、ダミーチャネル55はインクが充填されないチャネルである。各チャネル54,55は、Z方向に沿って直線状に形成されている。吐出チャネル54とダミーチャネル55とは、X方向に間隔をあけて交互に形成されている。吐出チャネル54とダミーチャネル55との間は、アクチュエータプレート51からなる駆動壁56によって画成されている。
吐出チャネル54は、上端部がアクチュエータプレート51内で終端し、下端部がアクチュエータプレート51における下端面で開口している。吐出チャネル54は、下側に位置し、溝深さが一様とされた延在部54aと、延在部54aから上方に連なり、上方に向かうに従い溝深さが浅くなる切り上がり部54bと、を有している。
ダミーチャネル55は、Y方向における溝深さがZ方向の全体に亘って一様に形成されている。ダミーチャネル55は、アクチュエータプレート51をZ方向に貫通し、Z方向の両端部がアクチュエータプレート51におけるZ方向の両端面でそれぞれ開口している。ダミーチャネル55は、アクチュエータプレート51をY方向に貫通している。
図4に示すように、吐出チャネル54の内面には、共通電極61が形成されている。共通電極61は、吐出チャネル54の内面全体(X方向の両内側面54cおよびY方向の底面54d)に形成されている。
アクチュエータプレート51のうち、吐出チャネル54に対して上方に位置する部分(以下、尾部という。)の表面には、共通配線62が形成されている。共通配線62は、Z方向に延びる帯状に形成されている。共通配線62は、下端部が共通電極61に接続され、上端部が尾部上で終端している。
アクチュエータプレート51の駆動壁56のうち、各ダミーチャネル55を画成する面(ダミーチャネル55の内側面55a)には、個別電極63が形成されている。個別電極63は、ダミーチャネル55におけるX方向で対向する一対の内側面55aにそれぞれ形成されている。同一のダミーチャネル55内で対向する一対の個別電極63同士は、互いに電気的に分離されている。また、各個別電極63は、ダミーチャネル55の内側面55a全体(Y方向及びZ方向の全体)に亘って形成されている。
[アクチュエータプレートの製造方法]
図5は、アクチュエータプレート51の製造方法を示すフローチャートである。
図5に示すように、アクチュエータプレート51の製造方法は、マスクパターン形成工程S10と、チャネル形成工程S20と、電極形成工程S30と、を備えている。各工程は、複数のアクチュエータプレート51を切出し可能なウェハに対してなされる。
マスクパターン形成工程S10では、電極形成工程S30で用いるマスクパターンを形成する。具体的に、アクチュエータプレート51の表面に感光性ドライフィルム等のマスク材料を貼り付ける。その後、フォトリソグラフィ技術を用いてマスク材料をパターニングする。マスク材料は、アクチュエータプレート51の表面に塗布等により形成してもよい。
チャネル形成工程S20では、図示しないダイシングブレード等により、アクチュエータプレート51の表面に対して切削加工を行う。具体的には、アクチュエータプレート51の表面上に、複数のチャネル54,55がX方向に間隔をあけて平行に並ぶように形成する。
なお、上述したマスクパターン形成工程S10及びチャネル形成工程S20は、マスクパターンを所望の形状に形成することができれば工程の順番が逆になってもよい。
図6は、電極形成工程S30の詳細を示すフローチャートである。
電極形成工程S30は、前処理工程S31と、第一触媒付与工程S32と、第一水洗工程S33と、第一乾燥工程S34と、第二触媒付与工程S35と、第二水洗工程S36と、第二乾燥工程S37と、めっき工程S38と、を備えている。
前処理工程S31では、脱脂、エッチングおよび脱鉛を行う。例えば、脱脂は、有機溶剤に基材を浸漬して行う。エッチングは、基材の溝構造が形成された表面を所定の粗さに加工する。脱鉛は、脱鉛作用を有する処理液、例えば硝酸水溶液に基材を浸漬して行う。
第一触媒付与工程S32は、アクチュエータプレート51を塩化第1錫水溶液に浸漬させ、アクチュエータプレート51の表面に塩化第1錫を吸着させる(センシタイジング処理)。その後、アクチュエータプレート51を塩化パラジウム水溶液に浸漬させ、アクチュエータプレート51の表面に塩化パラジウムを吸着させる(アクチベーティング処理)。これにより、アクチュエータプレート51の表面に吸着した塩化パラジウムと、前記センシタイジング処理で吸着した塩化第1錫との間で酸化還元反応が生じることで、アクチュエータプレート51の表面に触媒として金属パラジウムが析出される。
第一水洗工程S33は、第一触媒付与工程S32後のアクチュエータプレート51の表面を純水等の洗浄液で洗い流し、表面上および溝内の浮遊物を除去する。
第一水洗工程S33は、ウェハを低周波(例えば20Hz~400Hz、好ましくは50Hz~150Hz)で振動させる工程を含んでいる。
例えば、第一水洗工程S33では、複数のウェハをホルダーに固定し、ホルダーに連結する支持アームを振動発生器に接続する。洗浄槽に洗浄液を充填し、ウェハ表面のチャネル延在方向を上下方向に向けてウェハを洗浄液に浸漬する。そして、振動発生器を駆動して支持アームを上下方向に、周波数が20Hz~400Hzの第一の低周波で0.1mm~5mmのストロークで振動させる。従って、ウェハは洗浄液の中で20Hz~400Hzの第一の低周波で、上下方向でありチャネル延在方向と平行に振動する。その結果、水洗工程によりウェハ表面から微細な異物や気泡を除去することができ、めっき工程S38により形成するめっき膜の品質が向上する。即ち、ピンホールの無いめっき膜をむらなく簡便に形成することができる。
第一乾燥工程S34は、第一水洗工程S33後のアクチュエータプレート51を乾燥させ、第一水洗工程S33で取りきれなかった浮遊物を除去する、あるいは基板表面に付着させる。特に、アクチュエータプレート51のように、多数の細かな溝を有する溝構造体の場合、溝幅が狭く溝内部の液交換が難しい。触媒及び触媒以外の物質(未反応物質等)が溝内に浮遊すると、単に水洗を行うだけでは、溝内に入り込んだ浮遊物(分子)の除去は困難である。これに対し、触媒付与工程に乾燥工程が含まれることで、浮遊物が溝壁面に付着し捕獲されるため、浮遊した状態の分子がなくされる。第一乾燥工程S34は、アクチュエータプレート51を、例えば60~100℃で10~30分加熱することでなされる。
第一乾燥工程S34の後、第一触媒付与工程S32、第一水洗工程S33および第一乾燥工程S34のセットを繰り返すように、第二触媒付与工程S35、第二水洗工程S36および第二乾燥工程S37を行う。触媒付与工程を複数回行うことで、溝内により多くの触媒を付与可能としつつ、一度の触媒付与工程で発生する浮遊物の量を抑えることができる。第二水洗工程S36は、第一水洗工程S33同様、ウェハを低周波振動させる工程を含んでいる。第二乾燥工程S37は、アクチュエータプレート51を、例えば60~100℃で10~30分加熱することでなされる。
めっき工程S38は、アクチュエータプレート51をめっき液に浸漬して行う(無電解めっき)。アクチュエータプレート51のうち、触媒が付与された部分には、金属被膜が析出される。これにより、アクチュエータプレート51のうち、チャネル54,55の内面には、めっきによる共通電極61及び個別電極63がそれぞれ一様に形成される。めっき工程S34で使用する電極金属としては、例えば、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Cu(銅)、Au(金)等が好ましく、特にNiを用いることが好ましい。
めっき工程S38では、複数のアクチュエータプレート51を切出し可能なウェハをめっき槽に浸漬させる。前記ウェハは、厚さ方向で間隔を空けて複数並んだ状態で、めっき槽に浸漬される。各ウェハは、複数のアクチュエータプレート51のチャネル延在方向を一方向に揃えている。複数のウェハは、各々のチャネル延在方向を一方向に揃えて並んだ状態で、めっき槽に浸漬される。
複数のウェハは、めっき槽に浸漬された状態で振動される。これにより、基材の表面に付着した異物および気泡を除去可能となる。このとき、複数のウェハは、厚さ方向と直交する面沿い方向で、かつチャネル延在方向で低周波振動される。すなわち、めっき工程S38は、ウェハを低周波(例えば20Hz~400Hz、好ましくは50Hz~150Hz)で振動させる工程を含んでいる。
例えば、めっき工程S38では、第一水洗工程S33と同様、複数のウェハをホルダーに固定し、ホルダーに連結する支持アームを振動発生器に接続する。めっき槽に無電解めっき液を満たし、ウェハ表面のチャネル延在方向を上下方向に向けてウェハを無電解めっき液に浸漬する。そして、振動発生器を駆動して支持アームを上下方向に、周波数が20Hz~200Hzの第二の低周波で0.1mm~5mmのストロークで振動させる。従って、ウェハは無電解めっき液の中で20Hz~200Hzの第二の低周波で、上下方向でありチャネル延在方向と平行に振動する。その結果、無電解めっき液の金属イオンが消費されるウェハ表面に金属イオンが新たに供給されて、ウェハ表面にめっき膜をむらなく形成することができる。
なお、ウェハに第二の低周波の振動を加える際に、無電解めっきを開始してから所定時間の経過後、例えば1分~5分経過後に振動発生器を駆動してウェハを振動させるのが好ましい。無電解めっきの開始直後に振動を加えると、ウェハ表面に付着するめっき触媒がウェハ表面から脱落し、めっき膜の膜厚にむらが生ずることがある。
ウェハをウェハ表面と平行な方向に振動させるので、ウェハ表面に凹部、例えば多数の凹凸や溝(チャネル)が存在する場合でも、凹凸や溝に金属イオンが回り込みやすくなるので、凹部の側面や底面にめっき膜を析出させることができる。特に、実施形態では、ウェハの振動方向をウェハ表面の溝の長手方向と平行な方向に振動させている。これにより、水洗工程S33,S36においては溝の内側面や底面に付着する異物や気泡を除去することができ、無電解めっき工程S38においては溝の底部に新しい無電解めっき液を供給することができる。
以上説明したように、上記実施形態における溝構造のめっき方法は、基材の溝構造を含む表面にエッチングを行う前処理工程S31と、前記前処理工程S31後に前記基材の表面に触媒を付与する触媒付与工程S32,S35と、前記触媒付与工程S32,S35後に前記基材の表面を洗浄液で洗浄する水洗工程S33,S36と、前記水洗工程S33,S36後に前記基材の表面の洗浄液を乾燥させる乾燥工程S34,S37と、前記乾燥工程S34,S37後に前記基材の表面にめっきを行うめっき工程S38と、を備えるものである。
この構成によれば、前処理工程S31や触媒付与工程S32,S35で溝内に浮遊物が浸入し、この浮遊物が水洗工程S33,S36で除去しきれなかった場合でも、水洗後の乾燥工程S34,S37により浮遊物が溝壁面に付着して捕獲される。すなわち、溝幅が狭くても溝内に浮遊物が残り難くなる。このため、浮遊物によるめっきダマの発生を抑制し、かつ溝表面の触媒反応を良好にして、めっき不良の発生を抑えることができる。
また、乾燥工程S34,S37を設けて浮遊物の残存を抑えることで、より多くの触媒を付与でき、溝底部にもしっかりとめっきを行うことができる。このため、溝内部にめっきの薄い部分が発生することを抑制し、品質を安定させて歩留まりを向上させることができる。
また、浮遊物を捕獲してめっきダマの発生を抑制することで、水洗条件を緩和して生産性を向上させることができる。
また、上記溝構造のめっき方法においては、前記触媒付与工程S32,S35では、前記基材の表面に還元剤を吸着後、前記基材の表面に触媒を還元析出させるので、二液による触媒付与工程S32,S35を行っても溝内に未反応物質が残り難くなり、浮遊物によるめっき不良の発生を抑えることができる。
具体的に、上記溝構造のめっき方法においては、前記触媒付与工程S32,S35では、前記基材を塩化すず水溶液に浸漬させた後、前記基材を塩化パラジウム水溶液に浸漬させる、という工程により、基材の表面に触媒を互い密着性で良好に付与することができる。
また、上記溝構造のめっき方法においては、前記めっき工程S38は、前記基材をめっき液に浸漬させて低周波振動させる工程を含むので、基材表面に金属イオンが新たに供給されて、基材表面にめっき膜をむらなく形成することができる。
また、上記溝構造のめっき方法においては、前記水洗工程S33,S36は、前記基材を洗浄液に浸漬させて低周波振動させる工程を含むので、基材の表面に付着した異物および気泡を良好に除去し、溝内に一様にめっきを施すことができる。
また、上記溝構造のめっき方法においては、前記触媒付与工程S32,S35、水洗工程S33,S36および乾燥工程S34,S37は複数回行われるので、より多くの触媒を付与でき、溝内に一様なめっきを施すことができる。
また、複数回に分けて触媒付与工程S32,S35と乾燥工程S34,S37とを行うことで、一回の触媒付与工程で発生する溝内の浮遊物の量を抑えることができる。この点でも、浮遊物によるめっき不良の発生を抑えることができる。また、触媒を満遍なく付与して膜厚不足を低減することができる。
そして、上記溝構造のめっき方法においては、インクジェットヘッド5のアクチュエータプレート51に形成されているチャネル54,55の内面にめっきを行うので、溝幅を狭めることが要求されるインクジェットヘッド5のアクチュエータプレート51に対し、溝幅が狭くてもめっき不良の発生を抑えることができる。
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上述した実施形態では、アクチュエータプレート51にシェブロン基板を用いた例について説明したが、これに限らない。例えば、分極方向が厚さ方向で同一の圧電基板をアクチュエータプレートとして用いても構わない。
上述した実施形態では、エッジシュートのインクジェットヘッド5に適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、吐出チャネルにおけるチャネル延在方向の中央部からインクを吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドに本発明を適用してもよい。
上述した実施形態では、プリンタ1のインクジェットヘッド5に適用した例について説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等のインクジェットヘッドであってもよい。さらに、インクジェットヘッド以外の溝構造への適用も可能である。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。
S31 前処理工程
S32 第一触媒付与工程
S33 第一水洗工程
S34 第一乾燥工程
S35 第二触媒付与工程
S36 第二水洗工程
S37 第二乾燥工程
S38 めっき工程
5 インクジェットヘッド
51 アクチュエータプレート
54 吐出チャネル
55 ダミーチャネル

Claims (5)

  1. 基材の溝構造を含む表面にエッチングを行う前処理工程と、
    前記前処理工程後に前記基材の表面に触媒を付与する触媒付与工程と、
    前記触媒付与工程後に前記基材の表面を洗浄液で洗浄する水洗工程と、
    前記水洗工程後に、前記基材に形成されている溝の内面を含む前記基材の表面の洗浄液を乾燥させる乾燥工程と、
    前記乾燥工程後に前記基材の表面にめっきを行うめっき工程と、
    を備え、
    前記めっき工程では、インクジェットヘッドのアクチュエータプレートに形成されているチャネルの内面にめっきを行い、めっき膜を形成し、
    前記触媒付与工程では、前記基材の表面に還元剤を吸着後、前記基材の表面に触媒を還元析出させる、
    溝構造のめっき方法。
  2. 前記触媒付与工程では、前記基材を塩化すず水溶液に浸漬させた後、前記基材を塩化パラジウム水溶液に浸漬させる、
    請求項に記載の溝構造のめっき方法。
  3. 前記めっき工程は、前記基材をめっき液に浸漬させて、20~400Hzの周波数で振動させる工程を含む、
    請求項1または2に記載の溝構造のめっき方法。
  4. 前記水洗工程は、前記基材を洗浄液に浸漬させて、20~400Hzの周波数で振動させる工程を含む、
    請求項1からの何れか一項に記載の溝構造のめっき方法。
  5. 前記触媒付与工程、水洗工程および乾燥工程のセットを複数回行う、
    請求項1からの何れか一項に記載の溝構造のめっき方法。
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