JP7009022B2 - 炭素繊維強化シート状成形材料、その製造方法及び成形品 - Google Patents
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Description
CFRP成形品は、プリプレグと呼ばれる連続した強化繊維にマトリックス樹脂を含浸した中間基材を積層し、高温高圧釜で加熱加圧することによりマトリックス樹脂を硬化させるオートクレーブ成形や、あらかじめ部材形状に賦形した連続繊維基材にマトリックス樹脂を含浸および硬化させるRTM(レジントランスファーモールディング)成形等で得ることが一般的である。これらの成形法では連続繊維を使用するため、優れた機械的特性を有するものの、3次元形状やリブ、ボス形状といった細かい凹凸を有する複雑な形状の形成や、材料積層や硬化に時間を要するため成形サイクルに課題がある。
これに対してシートモールディングコンパウンド(以下、SMCともいう)は繊維長が短い不連続繊維を使用するため、一般に連続繊維を使用した成形品に比べて繊維強化樹脂製構造体の機械的特性が低くなるという問題があるものの、材料を流動させて型内に充填させるため、オートクレーブ成形やRTM成形では困難な細かい凹凸を有する複雑な形状を形成するのに好適であり、材料を流動させるが故材料積層にかかる時間を短縮することができ成形サイクルも短い。これまで強化繊維に炭素繊維を使用したカーボンファイバーSMC(以下、CSMCともいう)においては、繊維長が短い故に低下する機械的特性を向上させる製造方法や、物性のばらつきを低減する製造方法(例えば特許文献1及び2参照)に主眼が置かれてきた。
しかし、SMC工法においては、成形時に材料を流動させるため流動方向に炭素繊維が配向し、繊維配向は成形品の反りや変形の原因となる。また成形品の冷却過程において、炭素繊維とマトリックス樹脂の線膨張係数に大きな乖離があることも成形品の反り、変形の原因となっている。炭素繊維は高い剛性をもつため従来のガラス繊維を使用したSMCと比較しこうした反りや変形は大きくなる。
このような課題に対して、成形材料に低収縮化剤や充填材を添加する技術が開発されている(例えば特許文献3参照)。しかしこのような技術では、自動車外板への適用を想定し、極めて平滑な状態(一般に「クラスA」と呼ばれる状態)の達成に主眼が置かれており、構造部材への適用は想定されていなかった。
<反り標準偏差の測定方法>
JIS B7513(1992年)に規定された精密定盤上に3つの治具を設置する。治具は同じ高さとし、治具を設置する位置は一辺が210mmの正三角形の3つの頂点とする。該成形材料を105~210mm角で切出して圧縮成形した成形板(300×300mmの正方形(α)、厚さ2mm)を、成形板の重心と上記正三角形の重心とが一致するように治具にのせる。3点支持された成形板において、正方形(β)(280×280mm)を、正方形(α)及び(β)の重心が一致し、かつ、(α)、(β)の各辺が平行となるように配置したときの、正方形(β)の1つの頂点を該精密定盤面を基準とするハイトゲージを用いてゼロ点に設定し、正方形(β)の他の3つの頂点及び4つの辺の中点並びに成形板の重心の各位置においてゼロ点に対する高さを測定する。
ゼロ点及び各測定点を該定盤面をXY平面、ハイトゲージにより測定された高さをZとするXYZ座標で表し、最小二乗法で近似される回帰平面を求める。ゼロ点及び各測定点におけるZ座標の実測値と回帰平面によるZの近似値との差を偏差(δ)、ゼロ点及び各測定点の合計数をnとしたときの、次式で算出される値(σ)を反り標準偏差とする。
σ=√((Σδ2)/n)
上記炭素繊維(d)は、繊維長が5~60mmの不連続繊維であることが好ましい。
上記炭素繊維(d)は、任意に炭素繊維束を100本サンプリングしその繊維束の幅をノギスで小数点以下第一位まで測定し平均値を求めた際の平均繊維束幅が1~10mmであることが好ましい。
上記炭素繊維強化シート状成形材料は、更に充填材(e)を含むことが好ましい。
上記炭素繊維強化シート状成形材料は、上記(a)~(c)及び(e)成分を含む樹脂組成物の、JIS K6901(2008年)により測定する25℃における粘度が、0.5~15Pa・sであることが好ましい。
本発明は更に、炭素繊維強化シート状成形材料を製造する方法であって、上記製造方法は、熱硬化性ポリマー(a)、ビニル単量体(b)及び熱可塑性ポリマー(c)を含む成分を混合する工程と、上記混合工程により得られた樹脂組成物を炭素繊維(d)に含浸させる工程とを含み、上記熱硬化性ポリマー(a)は、ビニルエステルを含み、上記炭素繊維(d)の使用量は、成形材料100質量%に対して35~60質量%である炭素繊維強化シート状成形材料の製造方法でもある。
本発明の炭素繊維強化シート状成形材料(以下、単に「成形材料」ともいう)は、熱硬化性ポリマー(a)、ビニル単量体(b)、熱可塑性ポリマー(c)及び炭素繊維(d)を含有する。必要に応じ、更に他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよく、各含有成分はそれぞれ1種又は2種以上を使用することができる。以下では、熱硬化性ポリマー(a)を「(a)成分」とも称す。他の成分も同様である。
炭素繊維(d)の配合量として好ましくは40~55質量%である。
この範囲にあることで、成形材料の粘度がより適切なものとなって作業性により優れたものとすることが可能になる。
上記(a)~(c)及び(e)成分を含む樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
SMC製造方法においては、シートの厚みが0.5mm以上であればより均一な成形材料を得ることができる。また、シートの厚みが4mm以下であれば樹脂組成物をより充分に含浸させることができ、フクレが発生することをより充分に抑制することができる。
1)熱硬化性ポリマー(a)
熱硬化性ポリマー(a)は、ビニルエステルを含むものである。
本発明の成形材料は、ビニルエステルと後述する熱可塑性ポリマー(c)とを組み合わせることにより、成形品のそりや変形をより充分に抑制することができる。
上記ビニルエステルは、エポキシ化合物と、不飽和一塩基酸との反応により得られるものであることが好ましい。
脂肪族型エポキシ化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールポリグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。これらの中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
脂環式エポキシ化合物としては、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物、アリサイクリックジエポキシアセタール、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビニルヘキセンジオキシド等が挙げられる。
また、ビスフェノールA等のフェノール化合物や、アジピン酸、セバチン酸、ダイマー酸、液状ニトリルゴム等の二塩基酸により変性したエポキシ化合物を使用することもできる。
中でも、耐熱性、耐薬品性の観点から炭素数が6以下のものが好ましく、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
上記重合禁止剤としては、エポキシ化反応による生成物や不飽和一塩基酸の重合反応を抑制することができるものであればよく、例えば、2,6-ジt-ブチル-4メチルフェノール、4-メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、tert-ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、カテコール、ナフテン酸銅等を用いることができる。
すなわち、本発明の成形材料は、ビニルエステルとして、エポキシ化合物及び不飽和一塩基酸の反応物と酸無水物との反応物を含むこともまた、好ましい形態の1つである。
ビニル単量体(b)は、単官能ビニル単量体及び多官能ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体を含むものであることが好ましい。
上記単官能ビニル単量体としては芳香族系モノビニル単量体や、単官能(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。
芳香族系モノビニル単量体としては例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、ビニルトルエン、p-クロルスチレン等が挙げられる。
これらのビニル単量体の中でも、単官能ビニル単量体を用いることが好適であり、中でも、芳香族系モノビニル単量体、単官能(メタ)アクリルモノマーがより好ましい。芳香族系モノビニル単量体の中でも好ましくはスチレン、ビニルトルエンであり、より好ましくはスチレンである。
単官能(メタ)アクリルモノマーの中でも、炭素数1~20の環状又は鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル等の芳香族基を有する(メタ)アクリレート類が好ましく、より好ましくは炭素数1~15の鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート類、芳香族基を有する(メタ)アクリレート類であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルであり、特に好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ベンジルである。
熱可塑性ポリマー(c)としては、通常、不飽和ポリエステルの低収縮化剤として使用されている熱可塑性ポリマーを用いることが好ましく、例えば、ポリブタジエン又はその水素添加体、ポリイソプレン又はその水素添加体、芳香族ビニル/共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加体、スチレン/エチレン/プロピレンブロック共重合体等の芳香族ビニル/エチレン/プロピレンブロック共重合体、ポリスチレン、スチレン/酢酸ビニルブロック共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート等の他、飽和ポリエステル(分子量3000~100000)やポリエーテル等が好適である。中でも、芳香族ビニル/共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加体、芳香族ビニル/エチレン/プロピレンブロック共重合体や飽和ポリエステルがより好ましい。
また上記芳香族ビニル/共役ジエンブロック共重合体の数平均分子量は、10000~500000であることが好適であり、より好ましくは、30000~200000である。
また上記芳香族ビニル/エチレン/プロピレンブロック共重合体の数平均分子量は、10000~500000であることが好適であり、より好ましくは、30000~200000である。
炭素繊維(d)は、特に制限されないが、繊維長が5~60mmの不連続繊維であることが好ましい。これにより、細かい凹凸の有する複雑な形状であっても容易に成形することができる。繊維長が5mm以上であれば繊維が嵩高くなることを抑制し、樹脂組成物を炭素繊維により充分に含浸させることができ、フクレが発生することをより充分に抑制することができる。さらに、成形品の機械的特性がより向上する。繊維長が60mm以下であれば、成形条件にもよるが金型内で流動させた際の材料の流動性や、材料流動方向へ繊維が配向することをより充分に抑制し、成形品の反りや変形をより充分に抑制することができる。繊維長としてより好ましくは10~50mmであり、更に好ましくは12~25mmである。また、繊維長が12~25mmであれば、成形品のそりや変形をさらに充分に抑制することができる。
炭素繊維におけるフィラメント数が多い場合、繊維束幅は広くなるが、この場合には、開繊・分繊を行うことにより、繊維束幅を上記好ましい範囲に調整することが好ましい。フィラメント数が多い炭素繊維は、安価であるためこのような炭素繊維を開繊・分繊して使用することにより、生産コストを抑制することができる。
上記炭素繊維の開繊・分繊は、通常用いられる方法により行うことができる。
充填材(e)としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、シリカ、クレー、有機ナノクレー、ガラス粉、黒鉛粉、カーボンブラック、ミルドカーボン、ガラス中空体、マイカ、硫酸バリウム、ガラスビーズ、砕砂、アルミニウム微粉、アルミナ、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン等が好ましい。これらの充填材は1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。また、更にシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の表面改質剤で表面処理したものも用いることができる。
本発明の成形材料は、(a)~(e)成分に加え、必要に応じ、硬化触媒や硬化調節剤(安定剤)、内部離型剤、増粘剤、反応触媒、フィラー分散剤等の添加剤を配合することができる。なお、これら添加剤は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
上記硬化触媒としては、通常、不飽和ポリエステル樹脂の硬化剤として使用されるものを用いればよく、例えば、有機過酸化物が好ましく挙げられる。具体的には、t-ブチルパーオキシベンゾエート(TBPB)、t-ブチルパーオキシオクトエート(TBPO)、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート(THPB)、t-ヘキシルパーオキシオクトエート(THPO)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)シクロヘキサン(DDBPH)、t-アミルパーオキシオク卜エート(TAPO)、t-ブチルイソプロピルパーオキシカーボネート(TBIPC)等が挙げられ、その使用量としては、(a)~(c)成分の総量100質量% に対し、0.5~5質量%が好ましく、より好ましくは0.7~3質量%である。また硬化剤とともに公知の硬化促進剤を併用することもできる。硬化促進剤としては、コバルト、銅、マンガンの有機金属化合物、例えば、それぞれのオクトエート、ナフテネート、アセチルアセトネート等が挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用しても良い。通常、(a)~(c)成分の総量100質量%に対して0.01~1質量%使用される。
上記内部離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸や、それらの亜鉛、マグネシウム、カルシウム等との非アルカリ金属塩(いわゆる金属セッケン)の他、シリコン系、フッソ系、パラフィンワックス系、リン酸系、アルキルアンモニウム塩等の化合物等が挙げられ、その使用量としては、(a)~(c)成分の総量100質量%に対し、0.1~20質量%が好ましく、より好ましくは1~7質量%である。
2価金属の酸化物又は水酸化物の中でも、酸化物が好ましい。
2価金属としては、マグネシウム、カルシウムが好ましく、より好ましくはマグネシウムである。
増粘剤として2価金属の酸化物又は水酸化物を用いる場合、その使用量としては、(a)~(c)成分の総量100質量%に対し、0.1~5質量%が好ましい。より好ましくは0.3~3質量%である。
上記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、水素添加4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)等が挙げられる。
上記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリエンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。
なお、これらのポリイソシアネート化合物のカルボジイミド変性体、アロファネート体、ビュレット体、トリマー体等を使用することもできる。
増粘剤としてポリイソシアネート化合物を用いる場合、その使用量としては、(a)~(c)成分の総量100質量%に対し、0.3~20質量%が好ましい。
本発明はまた、炭素繊維強化シート状成形材料を製造する方法であって、上記製造方法は、熱硬化性ポリマー(a)、ビニル単量体(b)及び熱可塑性ポリマー(c)を含む成分を混合する工程と、上記混合工程により得られた樹脂組成物を炭素繊維(d)に含浸させる工程とを含み、上記熱硬化性ポリマー(a)は、ビニルエステルを含み、上記炭素繊維(d)の使用量は、成形材料100質量%に対して35~60質量%である炭素繊維強化シート状成形材料の製造方法でもある。
各成分については上述したとおりである。
なお、上記含浸工程後に熟成工程を行うことが好適であり、熟成温度は20~60℃、熟成時間は4~120時間とすることが好ましい。より好ましくは、熟成温度は30~45℃、熟成時間は12~60時間である。
本発明は、本発明の成形材料を成形することにより得られる成形品でもある。
本発明の成形品は、通常用いられる圧縮成形法等を用いて、加熱した金型で、適切に加圧しながら硬化させることにより成形品を製造することができる。
100℃未満であると、硬化速度が低下しすぎて実用的でないおそれがあり、180℃を超えると、製品外観が低下したりするおそれがある。また、上記の温度範囲内で、上金型と下金型に温度差をつけて加熱してもよい。
型締め速度、真空条件等は、従来公知の条件を採用することができる。
加熱成形時に加圧する場合は、成形品にかかる圧力は、0.3~20MPaが好ましく、2~15MPaがより好ましい。
上記プレス成形法は、油圧プレスを取り付けた雄・雌一対の金型で、材料を加熱・加圧して成形する圧縮成形法である。プレス成型法により製造される成形品は、金型からの脱型は突き上げピン及び/又はエアー弁により迅速に脱型される。
製造例1
攪拌機、温度計、還流管、加熱装置を備えた10リットルフラスコ中でビニルエステル化触媒としてトリエチルアミン3.0gを使用し、2,6-ジt-ブチル-4メチルフェノール(BHT)2.5g存在化、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポミック(登録商標)R140、三井化学(株)製、エポキシ当量187)997g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポミックR301、三井化学(株)製、エポキシ当量480)5120g、メタクリル酸1377gを120℃で酸価が10以下になるまで反応させ、ビニルエステル(A)を得た。
ビニルエステル(A)3747gに無水マレイン酸392gを添加し、100~120℃で反応させ、ビニルエステル(B)を得た。
製造例3
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、及び攪拌機を備えたフラスコを反応器とした。この反応器に、無水マレイン酸100モル、プロピレングリコール100モルを仕込んだ。次に上記の内容物を窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら、180~200℃の温度範囲で8時間反応させ、不飽和ポリエステルを得た。この不飽和ポリエステルの酸価は27.0mgKOH/gであった。
実施例1~14及び比較例1~5
熱硬化性ポリマー(a)、ビニル単量体(b)、熱可塑性ポリマー(c)、充填材(e)、内部離型剤、安定剤、硬化触媒(有機過酸化物)を表1に記載する配合量で充分に均一に混合し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物(ペースト)に増粘剤(ポリイソシアネート又は酸化マグネシウム)を加えて3分撹拌後、直ちにSMC含浸機(月島機械社製)に供給し、25mmチョップの炭素繊維を添加して充分に含浸させた。その後、48時間熟成させて、炭素繊維強化シート状成形材料を得た。
また、表1に記載の各成分の詳細は、以下のとおりである。
熱硬化性ポリマー(a):製造例1~3で得られた、ビニルエステル(A)、ビニルエステル(B)、不飽和ポリエステル
熱硬化性ポリマーは、予め使用するビニル単量体に溶解し使用した。
熱可塑性エラストマー(1):商品名「アサプレン(登録商標)T432」、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、旭化成ケミカルズ社製
熱可塑性エラストマー(2):商品名「Kraton(登録商標)G1701」、スチレン-エチレン/プロピレン-(スチレン)ブロック共重合体、Kraton社製
飽和ポリエステル:商品名「バイロン(登録商標)550」、東洋紡社製
ポリイソシアネート:商品名「コスモネート(登録商標)PH」、三井化学SKCポリウレタン社製
酸化マグネシウム:MgO#40、協和化学工業社製
有機過酸化物:商品名「パーブチル(登録商標)Z」、日本油脂社製
炭酸カルシウム:商品名「NS#200」、日東粉化工業社製
ガラス中空体:商品名「iM30K」、住友3M社製 (真密度:0.60g/cm3)
ミルドカーボン:商品名「ドナカーボ・ミルド S-241」、大阪ガスケミカル社製
炭素繊維:実施例12以外は商品名「T700SC 12K」東レ社製を用いた。「T700SC 12K」の炭素繊維束幅は7mmであった。
実施例12では商品名「CT-50-4.0/240-E100」、SGL社製を繊維束幅が43mmとなるように開繊加工したのち、3mmピッチで等間隔にOLFA社円形刃(商品名RB60)を通過させ分繊した炭素繊維を用いた。開繊加工した炭素繊維束の平均収束本数は3500本であった。開繊加工後の炭素繊維束幅は3.1mmであった。上記平均収束本数は下記式により求めた。
平均収束本数=(分繊加工した炭素繊維束100本の重量(g)/開繊・分繊加工していない炭素繊維束100本の重量(g))×50,000
4、物性評価方法
1)樹脂組成物の粘度(含浸時の樹脂組成物の粘度)
表1に示す熱硬化性ポリマー(a)、ビニル単量体(b)、熱可塑性ポリマー(c)、充填材(e)、内部離型剤、硬化触媒及び安定剤を含む樹脂組成物(ペースト)について、25℃での粘度をJIS K6901(2008年)に準拠し測定した。
上記実施例、比較例で得られた炭素繊維強化シート状成形材料を幅方向にカットし、断面を目視確認した際に、シートの厚みの中央付近に樹脂の付着していない炭素繊維が確認されない場合は○、確認された場合は×とした。
上記実施例、比較例において増粘剤を添加した樹脂組成物について、40℃下で48時間熟成させた後に、分離の有無を目視確認した。分離がなく、各成分が均一に分散していれば、成形した際のかすれ等をより充分に抑制することができる。
上記実施例、比較例で得られた炭素繊維強化シート状成形材料から210mm角に切り出し、積層して300mm角の平板成形用金型の中央に置き140℃、10MPaの条件で5分間加熱、加圧を行い300mm角厚さ約4mmの圧縮成形板を得た。この圧縮成形板について、目視にて、成形板表面状態を確認し、フクレやかすれが認められたものを×とし、これらが認められないものを〇とした。
圧縮成形板を用い、JIS K6911(1995年)に準拠し成形収縮率を測定した。
形収縮率が-0.20~-0.05%であることが好適である。この範囲にあることで、より効率的に、反りや変形が少なく平滑性により優れた成形品を得ることができる。
上記実施例、比較例で得られた炭素繊維強化シート状成形材料を210mm角及び105mm角に切り出し、それぞれ積層して300mm角の平板成形用金型の中央に置き140℃、10MPaの条件で4分間加熱、加圧を行い300mm角厚さ約2mmの圧縮成形板を得た。成形板は金型から脱型後、25℃の室温で24時間放置した。JIS B7513(1992年)に規定された精密定盤上に図1に示す治具(ア)を3個設置した。治具(ア)を置く位置は、図2において×印で示す、正三角形(イ)の頂点とした。正三角形(イ)の重心と、成形板(300×300mmの正方形(α))の重心(図3におけるI)が一致するように成形板を治具(ア)上に乗せ、3点支持された成形板において、正方形(β)(280×280mm)を、正方形(α)及び(β)の重心が一致し、かつ、(α)、(β)の各辺が平行となるように配置したときの、正方形(β)の1つの頂点(図3におけるA)を該精密定盤面を基準とするハイトゲージ(ミツトヨ社 デジタルハイトゲージHDM-30AX)及びプローブ(ミツトヨ社 HDM-AX用タッチプローブ)を用いてゼロ点に設定し、正方形Bの他の3つの頂点(図3におけるC、E、G)及び4つの辺の中点(図3におけるB、D、F、H)並びに成形板の重心(図3におけるI)の各位置においてゼロ点に対する高さを測定した。
該定盤面をXY平面、ハイトゲージにより測定された高さをZとするXYZ座標で、ゼロ点及び各測定点を表し、最小二乗法で近似される回帰平面(近似平面)を求めた。各測定点におけるZ座標の実測値と回帰平面によるZの近似値との差を偏差(δ)、ゼロ点及び各測定点の合計数をnとしたときの、次式で算出される値(σ)を反り標準偏差とした。
σ=√((Σδ2)/n)
なお、ゼロ点及び各測定点の合計数nを9としてσを算出した。
反り標準偏差が0.5未満の場合を○、0.5~1.0の場合を△、1.0を超える場合を×とした。
反り標準偏差が1.0以下であれば、設計通りの成形品をより効率よく得ることができる。
上記6)と同様にして得た圧縮成形板を用いて、JIS K7074(1988年)に準拠して曲げ試験を実施し、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。
曲げ弾性率が20GPa以上であれば、炭素繊維複合材料として期待される機械的特性をより充分に実現することができる。
Claims (11)
- 熱硬化性ポリマー(a)、ビニル単量体(b)、熱可塑性ポリマー(c)及び炭素繊維(d)を含む炭素繊維強化シート状成形材料であって、
該熱硬化性ポリマー(a)は、ビニルエステルを含み、
該ビニルエステルの含有割合が、熱硬化性ポリマー(a)100質量%に対して、50~100質量%であり、
該成形材料は、炭素繊維(d)の配合量が成形材料100質量%に対して35~60質量%であり、
該炭素繊維(d)は、任意に炭素繊維束を100本サンプリングしその繊維束の幅をノギスで小数点以下第一位まで測定し平均値を求めた際の平均繊維束幅が1~10mmであることを特徴とする炭素繊維強化シート状成形材料。 - 前記炭素繊維強化シート状成形材料は、該成形材料を成形して得られた成形品の、JIS K7074(1988年)により測定する曲げ弾性率が、20GPa以上、かつ、下記の測定方法による反り標準偏差が1.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化シート状成形材料。
<反り標準偏差の測定方法>
JIS B7513(1992年)に規定された精密定盤上に3つの治具を設置する。治具は同じ高さとし、治具を設置する位置は一辺が210mmの正三角形の3つの頂点とする。該成形材料を105~210mm角で切出して圧縮成形した成形板(300×300mmの正方形(α)、厚さ2mm)を、成形板の重心と上記正三角形の重心とが一致するように治具にのせる。3点支持された成形板において、正方形(β)(280×280mm)を、正方形(α)及び(β)の重心が一致し、かつ、(α)、(β)の各辺が平行となるように配置したときの、正方形(β)の1つの頂点を該精密定盤面を基準とするハイトゲージを用いてゼロ点に設定し、正方形(β)の他の3つの頂点及び4つの辺の中点並びに成形板の重心の各位置においてゼロ点に対する高さを測定する。
ゼロ点及び各測定点を該定盤面をXY平面、ハイトゲージにより測定された高さをZとするXYZ座標で表し、最小二乗法で近似される回帰平面を求める。ゼロ点及び各測定点におけるZ座標の実測値と回帰平面によるZの近似値との差を偏差(δ)、ゼロ点及び各測定点の合計数をnとしたときの、次式で算出される値(σ)を反り標準偏差とする。
σ=√((Σδ2)/n) - 前記熱可塑性ポリマー(c)の配合量は、(a)~(c)成分の総量100質量%に対して、5~20質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素繊維強化シート状成形材料。
- 前記炭素繊維(d)は、繊維長が5~60mmの不連続繊維であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の炭素繊維強化シート状成形材料。
- 前記ビニル単量体(b)は、単官能ビニル単量体及び多官能ビニル単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の炭素繊維強化シート状成形材料。
- 前記炭素繊維強化シート状成形材料は、更に充填材(e)を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の炭素繊維強化シート状成形材料。
- 前記炭素繊維強化シート状成形材料は、
前記(a)~(c)及び(e)成分を含む樹脂組成物の、JIS K6901(2008年)により測定する25℃における粘度が、0.5~15Pa・sであることを特徴とする請求項6に記載の炭素繊維強化シート状成形材料。 - 前記ビニルエステルは、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸との反応物であり、
該エポキシ化合物のエポキシ基1モルに対する不飽和一塩基酸のカルボキシル基の当量が0.8~1.5モルであることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の炭素繊維強化シート状成形材料。 - 前記熱可塑性ポリマー(c)は、ポリブタジエン又はその水素添加体、ポリイソプレン又はその水素添加体、芳香族ビニル/共役ジエンブロック共重合体又はその水素添加体、芳香族ビニル/エチレン/プロピレンブロック共重合体、ポリスチレン、スチレン/酢酸ビニルブロック共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、飽和ポリエステル(分子量3000~100000)及びポリエーテルからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の炭素繊維強化シート状成形材料。
- 請求項1~9のいずれかに記載の炭素繊維強化シート状成形材料を成形することにより得られる成形品。
- 炭素繊維強化シート状成形材料を製造する方法であって、
該製造方法は、熱硬化性ポリマー(a)、ビニル単量体(b)及び熱可塑性ポリマー(c)を含む成分を混合する工程と、該混合工程により得られた樹脂組成物を炭素繊維(d)に含浸させる工程とを含み、
該熱硬化性ポリマー(a)は、ビニルエステルを含み、
該ビニルエステルの含有割合が、熱硬化性ポリマー(a)100質量%に対して、50~100質量%であり、
該炭素繊維(d)は、任意に炭素繊維束を100本サンプリングしその繊維束の幅をノギスで小数点以下第一位まで測定し平均値を求めた際の平均繊維束幅が1~10mmであり、
該炭素繊維(d)の使用量は、成形材料100質量%に対して35~60質量%であることを特徴とする炭素繊維強化シート状成形材料の製造方法。
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