JP7000199B2 - 雨水排水システム - Google Patents

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Description

本発明は、のり面における雨水を排水する雨水排水システムに関する。
従来、のり面として、のり面の高さ方向をほぼ水平に区分する小段部が設けられるとともに、その小段部には横排水溝が設けられ、さらに、その横排水溝に交差するように縦排水溝が設けられた構成が知られている。この場合には、横排水溝よりも上方に位置するのり面に降り注いだ雨水はその横排水溝に受け入れられ、受け入れられた雨水が縦排水溝に導かれてのり面の下方に位置するのり尻の側溝に排出される。
このようなのり面の上部にある路面排水やのり面排水は、開水路(U字溝等)で排水する排水設備であることが多く、とくに集水マス部分で大雨時の跳水や溢水により土壌崩壊を引き起こすおそれがある。このような問題に対応するために、例えば特許文献1に示されるような雨水からのり面を保護するための雨水排水システムが知られている。
特許文献1には、縦排水溝において1箇所の集水マスの上流から下流にバイパスするバイパス排水溝を設けることで、集水マスの跳水や溢水が生じることを抑制することを可能とした構成について記載されている。
特開2016-156270号公報
しかしながら、上述した特許文献1に示される従来ののり面排水システムでは、1箇所の集水マス毎にバイパス排水溝を設ける構成であり、例えばのり面に小段部が設けられ、様々な箇所に集水マスや縦排水溝、横排水溝が設けられるようなのり面全体に対応できる構成にはなっていない。そのため、前述のバイパス排水溝を使用してのり面全体に対応した設備を構築する場合には、構成が複雑となり、のり面の排水処理能力を管理することが難しくなることから、その点で改善の余地があった。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、のり面全体を効率よくバイパスすることにより排水処理能力を向上させることができる雨水排水システムを提供することを目的としている。
本発明に係る雨水排水システムは、上記目的を達成するために、のり面の上部にある路面排水又はのり面の排水を、放流側施設であるのり尻側の側溝に排水する雨水排水システムであって、集水マス、横排水溝、及び縦排水溝のうち少なくとも1つが設けられた排水設備と、前記排水設備から前記のり尻側の側溝へ排水する管状の排水管路と、前記排水管路に接続され、前記排水設備の排水を前記排水管路に導水するための導水部と、を備えていることを特徴としている。
本発明に係る雨水排水システムでは、のり面の上部にある路面排水又はのり面の排水を導水部で排水設備から導水し、その排水を排水管路を通過させて、導水部からのり尻側の側溝へ直接、排水することができる。このように、本発明では、導水する箇所に導水部を設けるといった簡単な構造により、のり面全体を効率よくバイパスすることができ、排水処理能力を向上させることができる。
そして、本発明では、排水管路が管状であるので、のり面内における例えば縦排水溝に沿わない方向等の様々な方向で、かつ長距離で排水管路を設置することができる。そのため、集水マスの設置箇所に制限されることがなく、のり面全体としてバイパスでき、跳水や溢水を防ぐことが可能となり、土壌崩壊を引き起こす要因を小さく軽減することができる。
また、本発明に係る雨水排水システムでは、既存の排水設備に導水部を介して排水管路が設けられる構成であり、既存の排水設備に管状の排水部を直接、取り付ける場合に比べて接続が簡単である。
さらに、本発明では、導水部の長さを短くすることが可能なため、その排水断面積を排水設備の断面積と排水管路の断面積の中間程に設定することで導水がし易くなる。
また、本発明に係る雨水排水システムは、前記導水部及び前記排水管路の少なくとも一方にサイフォン誘発部が設けられていることが好ましい。
このような構成とすることで、路面やのり面の排水をサイフォン誘発部を接続した導水部や排水管路を用いてサイフォン作用により効率よくのり尻側の側溝に排水することができる。つまり、本発明では、サイフォン誘発部として、例えば排水管路の内面に突起を設けたり、内面を縮径することや導水部の開口穴の上方に所定の間隔をあけて蓋部材を配置する等によってサイフォン現象を起こすものを採用でき、このようなサイフォン式の排水管路内でサイフォン現象を発生させることにより、管内を自然流下させて排水するときよりも高流速にでき、排水処理能力を増加させて効率よく排水することができる。これにより、豪雨の場合であっても集水マスから雨水が溢れ出ることがなく、雨水がのり面に浸透することを効果的に抑制することができる。
さらに、本発明では、サイフォン現象を発生させることで、排水を高流速化し、排水管路の口径を小さくしても排水処理量を得ることができる利点もある。
また、本発明に係る雨水排水システムは、前記導水部の上流端側の底部は、前記排水設備の底部との間に上下方向の隙間をあけて配置されていることが好ましい。
この場合には、導水部の上流端側の底部と排水設備の底部との間の隙間量を変更することで、導水部への流入量を調整することができる。
また、本発明に係る雨水排水システムは、前記排水管路の少なくとも一部が地中に埋設されていることを特徴としてもよい。
本発明に係る雨水排水システムでは、排水管路のうち地上に配置される部分を少なくすることができるため、地上で排水管路を支持する支持具やこの支持具を固定する基礎等の支持構造を簡単にすることができ、あるいは省略することができる。
さらに、本発明では、地中に埋設される部分の排水管路を紫外線から保護することでき、排水管路の耐久性を向上させることが可能となる。
また、本発明に係る雨水排水システムは、前記排水管路は、耐光性を有する樹脂で構成されることが好ましい。
本発明に係る雨水排水システムでは、排水管路を屋外で長期にわたって使用することが可能となり、排水管路を地表面に設置することができる。そのため、地中に埋設する場合に比べてのり面における掘削作業を減らすことができ、施工を容易に行うことができる。
本発明の雨水排水システムによれば、簡単な構造で、のり面全体を効率よくバイパスすることにより排水処理能力を向上させることができる。
本発明の第1の実施の形態による雨水排水システムを模式的に示した斜視図である。 図1に示す雨水排水システムの要部を示す縦断面図である。 導水溝の取付け構成を示す図であって、(a)は拡大斜視図、(b)は縦断面図である。 導水溝に設けられるサイフォン誘発部の構成を示す図であって、(a)は上方から見た図、(b)は側面図、(c)は下流側から見た図である。 他のサイフォン誘発部の構成を示す図であって、(a)は上方から見た図、(b)は側面図、(c)は下流側から見た図である。 他のサイフォン誘発部の構成を示す図であって、(a)は上方から見た図、(b)は側面図、(c)は下流側から見た図である。 本発明の第2の実施の形態による雨水排水システムを模式的に示した斜視図である。 図7に示す雨水排水システムの要部を示す縦断面図である。 本発明の第3の実施の形態による雨水排水システムを模式的に示した斜視図である。 本発明の第4の実施の形態による雨水排水システムを模式的に示した斜視図である。 本発明の第5の実施の形態による雨水排水システムを模式的に示した斜視図である。 本発明の第6の実施の形態による雨水排水システムを模式的に示した斜視図である。 本発明の第7の実施の形態による雨水排水システムを模式的に示した斜視図である。 本発明の第8の実施の形態による雨水排水システムを模式的に示した斜視図である。 本発明の第9の実施の形態による雨水排水システムを模式的に示した斜視図である。 図15に示す縮径管の縦断面図である。 第1実施例による比較例の試験体を示す図であって、(a)、(b)は側面図、(c)は開口穴の吸込み状態を示す図である。 第1実施例による実施例1、2の試験体を示す図であって、(a)は上流側から見た図、(b)は側面図、(c)は開口穴の吸込み状態を示す図である。 第2実施例による実施例3の試験体を示す図であって、(a)は上流側から見た図、(b)は側面図、(c)は開口穴の吸込み状態を示す図である。
以下、本発明による実施の形態の雨水排水システムについて、図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、第1の実施の形態による雨水排水システム1は、盛土して上方に道路を設ける際に形成されるのり面2に設置されている。ここで、本実施の形態では、排水設備を備えた既設ののり面2に対して雨水排水システム1を設ける場合に適用される。
本実施の形態では、のり面2が高さ方向を複数段(図1では三段)に区分され、各段ののり面2同士の間の段状部分には略水平方向に延びる小段部Bが形成されている。また、のり面2の最上部には路面Cが設けられており、のり尻には側道Dが設けられている。
のり面2における既設の排水設備としては、コンクリート製のU字溝からなり小段部Bにおける延長方向に沿って設けられた横排水溝21と、のり面2の上下方向に沿って配置され各横排水溝21に対して接続するとともに、のり尻排水溝22に接続するコンクリート製のU字溝からなる縦排水溝25と、集水マス24と、を有している。小段部Bに流入する雨水は、横排水溝21に受け入れられて一方側(図1で紙面右側)に向けて流れて排出される。
側道Dには、排水設備としてコンクリート製のU字溝からなるのり尻排水溝22(のり尻側の側溝)がのり尻に沿って設けられている。側道Dの路肩部分は、のり尻排水溝22に雨水が流れ込むようにのり尻排水溝22側に向けて下り傾斜となっている。側道Dにおける既設の排水設備では、側道D及び最下部に位置するのり面2から流入する雨水がのり尻排水溝22に受け入れられて一方側(図1で紙面右側)に向けて流れて排出される。
最上部に位置する路面Cには、のり面2との路肩部分に集水マス23が設けられている。路面Cの路肩部分は、集水マス23に雨水が流れ込むように集水マス23側に向けて下り傾斜となっている。
集水マス23には、流入する雨水に混じる不要物を取り除くためのフィルタ(図示省略)が設けられている。このフィルタは、バースクリーン等の透水性部材からなり、落ち葉等の固形物を分離できるように構成され、路面Cの集水マス23の上流側に設けられている。
小段部Bに設けられる集水マス24は、底面が横排水溝21の底面の位置よりも低く設定されている。また、集水マス24は、横排水溝21の内部、及び縦排水溝25の内部と連通している。
小段部Bに設けられる集水マス24に雨水を流入させる上流側の横排水溝21に対して集水マス24を挟んで反対側に設けられる下流側の横排水溝21は、当該集水マス24から離れる方向に下り勾配となっており、当該集水マス24に雨水が流れ込まないようになっている。この下流側の横排水溝21の内面には、集水マス24寄りの位置において集水マス24内の水位を高めるための堰(図示省略)が設けられている。
雨水排水システム1は、路面Cの排水を上下方向に延在する排水管路10を使用してのり尻排水溝22に排水する構成である。排水管路10には、のり尻排水溝22に合流する排水の合流部に合流用管路11が配設されている。
排水管路10は、耐光性の樹脂管からなり、上端10aが路面Cの集水マス23に導水溝30(導水部)を介して接続され、下端10bが合流用管路11に接続されている。排水管路10は、のり面2及び小段部Bの表面に沿うようにして地上部分に配設されている。なお、排水管路10の下端10bの位置は、本実施の形態では上面視で排水管路10の管軸方向C1が変わる最下端の位置とされる。排水管路10の上端10aは、図2及び図3に示すように、上向きに延びて導水溝30の底面31aに接続されている。
耐光性の排水管路10として、例えば、耐光性塩ビ管、黒顔料を配合したPE樹脂管等や、耐光性樹脂を外層に被覆した樹脂管路を使用できる。
また、排水管路10に耐光性樹脂を外層に被覆した樹脂管路として、例えば、AESを被覆した塩ビ管、耐光性塩ビを被覆した塩ビ管、耐光性塗料を塗布した塩ビ管、黒顔料を配合したPE樹脂を被覆したPE管、耐光性塗料を塗布した強化プラスチック管等が挙げられる。
このように、本実施の形態の雨水排水システム1は、図1に示すように、集水マス23に流入した雨水の一部を排水管路10内で流通させてのり尻排水溝22に排水するシステムであって、小段部Bに設けられる横排水溝21内の雨水の排水系統とは別系統により排水される。
また、豪雨の場合であっても路面C上の雨水が流入される集水マス23が溢れることがなく、路面Cの雨水がのり面2を伝って下方に流出することを抑えることができる。そのため、小段部Bの横排水溝21は直上ののり面2と当該小段部Bの雨水のみを処理することができ、小段部Bに設けられる集水マス24において排水が溢れにくくなる。
各小段部Bに位置する集水マス24には、路面Cにある集水マス23内の排水の一部が縦排水溝25を通じて流入するとともに、最上段の小段部Bに設けられる横排水溝21内の排水が流入し、さらに縦排水溝25により下方の集水マス24又はのり尻排水溝22に排水される。
また、最上段の小段部Bに位置する集水マス24内に流入する雨水の多くは排水管路10によりのり尻排水溝22まで排水される。そのため、縦排水溝25内の排水量は大幅に減少することになる。つまり、集水マス24に縦排水溝25から合流する排水量が減少され、集水マス24が溢れにくくなる。
導水溝30は、図3(a)、(b)に示すように、一方向に延びる溝形状をなし、その長手方向を集水マス23ののり面側開口から略水平方向に外方に張り出した状態で設けられている。ここで、導水溝30の張り出す方向において、張り出し端側(集水マス23から離間した側)を下流側とし、導水側(集水マス23側)の基端側を上流側とする。
導水溝30の上流端30a側の底部は、集水マス23の底部23aとの間に上下方向の隙間Sをあけて配置されている。
すなわち、導水溝30の上流端30a側の底部形状が集水マス23の底部形状と同形状の場合は、隙間Sをゼロ(隙間なし)とすると、呑込み量は100%となる。また、隙間Sをあけることで、導水溝30の呑込み量を減らした設定にすることができる。
導水溝30は、底板31と、長手方向から見て底板31の両端から上方に延びる側板32、32と、底板31および側板32の下流側の端部を閉塞する端板33と、を備えている。底板31の端板33側の近傍には、開口穴34が形成されており、この開口穴34には排水管路10の上端10aが接続されている。導水溝30としては、排水管路10と同様に、例えば耐光性塩ビ管、黒顔料を配合したPE樹脂管等や、耐光性樹脂を外層に被覆した樹脂管路を使用できる。
導水溝30には、サイフォン誘発部が設けられ、路面C上を流れる雨水は、集水マス23を介して導水溝30のサイフォン誘発部のサイフォン作用により効率よく排水管路を通過してのり尻排水溝22に排水される。サイフォン誘発部として、例えば図4~図6に示すようなものを採用することができる。
図4~図6に示すサイフォン誘発部12は、底板31の開口穴34の上方を塞ぐように設けた板状の蓋部材12A、12B、12C、12Dである。導水溝30に流入する排水は、底板31と蓋部材12A,12B、12C、12Dとの間に流れ込んで、開口穴34から排水管路10へ流れるようになっている。
図4(a)~(c)に示す蓋部材12Aは、平面視で四角形状をなし、底面31aに対して平行に、かつ底面31aから上方に所定の間隔をあけて配置されている。蓋部材12Aは、両側端12c、12cがそれぞれ側板32に接着手段等により固定されている。蓋部材12Aの後端12bは、上面視で開口穴34よりも後方に位置するように設けられている。
図5(a)~(c)に示す平板状の蓋部材12Bは、平面視で四角形状をなし、後端12bから前方に向かうに従い漸次、下方となるように傾斜させて配置されている。蓋部材12Bの両側端12c、12cは、それぞれ側板32に接着手段等により固定されている。蓋部材12Bの後端12bは、上面視で開口穴34よりも後方に位置するように設けられている。
この斜めに配置された蓋部材12Bは、下流側の壁としての機能と、サイフォン作用を発生させる蓋の機能と、を有している。そして、サイフォン作用が生じ易くなる角度の設定条件として、例えば排水配管径(排水管路10の管径)、導水溝30の幅D、上面視で開口穴34から端板33までの距離、排水量、排水流速等に応じて選定することができ、例えば45度の角度に設定することができる。
ここで、上述した蓋部材12A、12Bの前端12aは、端板33に対して隙間をあけた位置に配置されていてもよい。
また、蓋部材12A、12Bは、水流で蓋の機能を有すればよいので、メッシュやスリットが形成された部材を採用することも可能である。
図6に示すサイフォン誘発部12は、底板31の開口穴34の上方を塞ぐように設けた蓋部材12C、12Dである。導水溝30に流入する排水は、底板31と蓋部材12C,12Dとの間に流れ込んで、開口穴34から排水管路10へ流れるようになっている。
図6(a)~(c)に示す蓋部材12Cは、円板状に形成され、底面31aに対して平行に、かつ底面31aから上方に所定の間隔をあけて配置されている。蓋部材12Cは、開口穴34よりも大径で開口穴34と略同軸上に設けられ、開口穴34の開口縁から上方に延びる複数(ここでは4つ)の柱材121によって下方から支持されている。つまり、開口穴34は、上面視で蓋部材12Cによって覆われた状態となっている。
図1に示すように、合流用管路11は、一端が排水管路10の下端10bに接続され、他端の排水端がのり尻排水溝22内に位置するように配置されている。合流用管路11の管軸方向は、のり尻排水溝22の流れ方向と同じ方向となっている。
なお、合流用管路11は、排水管路10と別体であっても一体に設けられていてもよい。
次に、上述した雨水排水システム1の作用について図面を用いて詳細に説明する。
本実施の形態による雨水排水システム1では、図1に示すように、のり面2の上部にある路面排水を導水溝30で集水マス23から導水し、その排水を排水管路10に通過させて、導水溝30からのり尻排水溝22へ直接、排水することができる。
このように、本実施の形態では、導水する箇所に導水溝30を設けるといった簡単な構造により、のり面全体を効率よくバイパスすることができ、排水処理能力を向上させることができる。
そして、本実施の形態では、排水管路10が管状であるので、のり面2内における例えば縦排水溝25に沿わない方向等の様々な方向で、かつ長距離で排水管路10を設置することができる。そのため、集水マス23の設置箇所に制限されることがなく、のり面2全体としてバイパスでき、跳水や溢水を防ぐことが可能となり、土壌崩壊を引き起こす要因を小さく軽減することができる。
また、本実施の形態による雨水排水システムでは、既存の排水設備(ここでは集水マス23)に導水溝30を介して排水管路10が設けられる構成であり、既存の排水設備に管状の排水部を直接、取り付ける場合に比べて接続が簡単である。
さらに、本実施の形態では、導水溝30の排水断面積は集水マス23の断面積と排水管路10の断面積の中間程に設定することで導水がし易くなる。
また、本実施の形態では、路面やのり面の排水を、サイフォン誘発部を接続した導水溝30や排水管路10を用いてサイフォン作用により効率よくのり尻側の側溝に排水することができる。つまり、本実施の形態では、サイフォン誘発部として、例えば上述した導水溝30のサイフォン誘発部12や、排水管路10の内面に突起を設けたり、内面を縮径することや導水部30の開口穴34の上方に所定の間隔をあけて蓋部材を配置する等によってサイフォン現象を起こすものを採用でき、このようなサイフォン式の排水管路10内でサイフォン現象を発生させることにより、管内を自然流下させて排水するときよりも高流速にでき、排水処理能力を増加させて効率よく排水することができる。これにより、豪雨の場合であっても集水マスから雨水が溢れ出ることがなく、雨水がのり面2に浸透することを効果的に抑制することができる。
さらに、本実施の形態では、サイフォン現象を発生させることで、排水を高流速化し、排水管路10の口径を小さくしても排水処理量を得ることができる利点もある。
また、本実施の形態の雨水排水システム1では、導水溝30の上流端30a側の底部と集水マス23の底部23aとの間の隙間量を変更することで、導水溝30への流入量を調整することができる。
また、本実施の形態では、排水管路10は、耐光性を有する樹脂で構成されているので、排水管路10を屋外で長期にわたって使用することが可能となり、排水管路10を地表面に設置することができる。そのため、地中に埋設する場合に比べてのり面2における掘削作業を減らすことができ、施工を容易に行うことができる。
また、本実施の形態の雨水排水システム1は、簡単な構造で、のり面2全体を効率よくバイパスすることにより排水処理能力を向上させることができる。
(第2の実施の形態)
次に、図7及び図8に示すように、本発明の第2の実施の形態による雨水排水システム1Aについて、図面を用いて説明する。
第2の実施の形態による雨水排水システム1Aは、導水溝30を縦排水溝25に設けた構成となっている。導水溝30は、上述した第1の実施の形態と同様の構成であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
導水溝30の上流端30aが、最上段の縦排水溝25の凹溝内に配置されている。導水溝30の底板31と、縦排水溝25の底面25aとの間には隙間Sが設けられている。すなわち、導水溝30の位置は、路面Cの集水マス23の近傍であり、集水マス23から縦排水溝25に流出した直後に、その排水の一部が導水溝30に流れ込むように配置されている。
(第3の実施の形態)
次に、図9に示すように、本発明の第3の実施の形態による雨水排水システム1Bについて、図面を用いて説明する。
第3の実施の形態による雨水排水システム1Bは、導水溝30を最上段(1段目)の小段部Bの横排水溝21に設けた構成となっている。すなわち、雨水排水システム1Bでは、横排水溝21に流入した排水の一部を上下方向に延在する排水管路10を使用して、のり尻排水溝22に排水する構成である。排水管路10には、上述した第1の実施の形態と同様にのり尻排水溝22に合流する排水の合流部に合流用管路11が配設されている。
本実施の形態では、排水管路10を有する雨水排水システム1Bと、排水管路10とは別系統となる後述する縦排水溝25と、の2系統によりのり尻排水溝22に排水する構成となっている。
(第4の実施の形態)
次に、図10に示すように、本発明の第4の実施の形態による雨水排水システム1Cは、既存の縦排水溝25と横排水溝21による排水機能をそのまま残した状態で、既存の集水マス23、23同士の間の略中間部分に新たに路面Cに集水マス23Aを新設するとともに、その新設した集水マス23Aに対して導水溝30を設けた構成である。本実施の形態の雨水排水システム1Cは、上述した図1に示す第1の実施の形態の雨水排水システム1と同様である。
(第5の実施の形態)
次に、図11及び図12に示すように、本発明の第5の実施の形態による雨水排水システム1Dについて、図面を用いて説明する。
第5の実施の形態による雨水排水システム1D、1Eは、路面Cの集水マス23から最上段の小段部Bまでのみに配置された縦排水溝25に対して導水溝30を設けた構成となっている。ここで、本実施の形態の雨水排水システム1D、1Eは、最上段の小段部Bの集水マス24では路面排水が流入するが、排水できる縦排水溝25がなく、横排水溝21への排水となるため、流れが悪く集水マス24において逸水が起こり易いものを適用対象としている。
図11に示す雨水排水システム1Dは、排水管路10がのり尻排水溝22まで延ばされている。
図12に示す雨水排水システム1Eは、のり尻排水溝22に直接排水できない場合の一例であって、排水管路10が上から2段目の小段部Bの横排水溝21まで延ばされている。
本実施の形態の雨水排水システム1D、1Eの基本的な構成は、上述した図7及び図8に示す第2の実施の形態の雨水排水システム1Aと同様である。
雨水排水システム1D、1Eでは、管路のため、のり尻排水溝22の流れ方向に合わせて合流でき、合流箇所も増えることから、溢れにくくなる利点がある。
なお、図12に示す雨水排水システム1Eでは、排水管路10がのり尻排水溝22まで延ばされていないが、前述したような集水マス24における逸水のリスクを減らすことができる。
(第6の実施の形態)
次に、図13に示すように、本発明の第6の実施の形態による雨水排水システム1Fについて、図面に用いて説明する。
第6の実施の形態による雨水排水システム1Fは、最上段の小段部Bの横排水溝21の延長方向の途中に窪み部21cが生じた場合に導水溝30を適用した構成となっている。のり面の新設時には、窪み部21cはなく、横排水溝21の上流側の集水マス24(上流部21a)から下流側の集水マス24が位置する下流部21bに向けて流れていたが、時間と共に横排水溝21の途中に窪み部21cが生じた例である。
すなわち、横排水溝21は、集水マス24が位置する上流部21aから窪み部21cに向けて下り傾斜(矢印E1方向)となっており、窪み部21cを挟んで集水マス24と反対側の下流部21bも窪み部21cに向けて下り傾斜(矢印E2方向)となっている。この小段部Bには、窪み部21cのある横排水溝21に連通するとともに、当該小段部Bよりも下方に位置するのり面2側に開口する溝状の凹溝部2aが切り欠かれ、その凹溝部2aに導水溝30が嵌合された状態で設けられている。雨水排水システム1Fでは、導水溝30に流入した排水が排水管路10を通過してのり尻排水溝22に排水される構成となっている。
(第7の実施の形態)
次に、図14に示すように、本発明の第7の実施の形態による雨水排水システム1Gについて、図面に用いて説明する。
第7の実施の形態による雨水排水システム1Gは、上述したように小段部B、横排水溝21、縦排水溝25が設けられていないのり面2において、路面Cの集水溝23に導水溝30が設けられ、排水管路10が直接、のり尻排水溝22まで配設された構成となっている。
排水管路10は、導水溝30から下方に向けて延ばされて地中に入り、埋設された部分(符号10A)がのり面2に沿って埋設されている。埋設された排水管路10Aは、のり尻排水溝22の内側壁から側溝内に突出する合流用管路11に接続されている。
本実施の形態では、排水管路10のうち地上に配置される部分を少なくすることができるため、地上で排水管路10を支持する支持具やこの支持具を固定する基礎等の支持構造を簡単にすることができ、あるいは省略することができる。
さらに、この場合には、地中に埋設される部分の排水管路10Aを紫外線から保護することでき、排水管路10の耐久性を向上させることが可能となる。
(第8の実施の形態)
次に、図15及び図16に示すように、本発明の第8の実施の形態による雨水排水システム1Hについて、図面に用いて説明する。
第8の実施の形態による雨水排水システム1Hは、上述した第1の実施の形態における排水管路10に縮径管12E(12)(サイフォン誘発部)を設けた構成となっている。縮径管12Eは、排水管路10の適宜な位置の一部に、排水管路10の内径よりも小さな内径を有する配管であり、本実施の形態ではのり面2の傾斜に沿う斜め部10Bの長さ方向の略中央部分に配置されている。縮径管12Eは、内径を絞る効果によりサイフォン現象を発生させる構成となっている。
このような縮径管12Eを備えたサイフォン式の排水管路10においては、管内でサイフォン現象を発生させることにより、管内を自然流下させて排水するときよりも高流速にでき、排水処理能力を増加させて効率よくのり尻排水溝22に排水することができる。
なお、縮径管12Eに代えて、内径を絞る突起やリング状のプレートによる縮径等の効果を有するサイフォン誘発部を設けでもよく、このような構成であっても縮径管12Eと同様のサイフォン作用を生じさせることができる。そして、縮径管12Eを複数箇所に使用することで、サイフォン現象が途切れることがなく連続的に発生しやすくなる。
次に、上述した実施の形態による雨水排水システムの効果を裏付けるために行った実施例について以下説明する。
(第1実施例)
本第1実施例は、図17及び図18に示すように、上述の実施の形態の導水溝30(導水部)を模擬した試験体4A、4Bを用い、導水部の有無と、導水部の壁(端板)の排水に及ぼす影響について開口穴41からの排水状況より確認した。
図17(a)~(c)は、導水部を備えない比較例による第1試験体4Aを示している。すなわち、比較例は、上述した実施の形態において、集水マスに直接、排水管路を接続した構成に相当している。第1試験体4Aは、平面視で縦横寸法(縦寸法D1、横寸法D2)がそれぞれ60cmに設定された角水槽40の底面40aの中央に75A(内径略8cm)の排水管42を接続させた構成とした。
図18(a)~(c)は、導水部を有する第1実施例及び第2実施例による第2試験体4Bを示している。第2試験体4Bは、導水部44を模擬した樋を使用し、第1実施例で溝幅Dが40cmのものであり、第2実施例で溝幅Dが20cmのものを採用している。また、それぞれの実施例において、底板における端板43から後方(図18(b)で紙面左側)に向けた距離(壁距離L)で12cmの位置に開口穴41の中心軸を一致させたものと、壁距離Lで8cmの位置に開口穴41の中心軸を一致させたものと、の2パターンにおいて75A(内径略8cm)の塩ビ管からなる排水管42を接続させた構成とした。
試験では、第1試験体4A及び第2試験体4Bのそれぞれにおいて、開口側(後側)から約15リットル/秒の水を供給して、開口穴41の手前の位置における最大水位を計測するとともに、水の吸い込み状態を目視により確認した。表1には、試験結果を示している。
Figure 0007000199000001
表1及び図17(c)に示すように、導水部を有しない比較例のケースでは、開口穴41付近において、渦Uが発生するとともに水位H1が14~22cmで後述する実施例1、2の水位H2(図18(c)参照)に比べて高くなった。
表1及び図18(c)に示すように、導水部44を有する実施例1のケースでは、壁距離Lが12cmの場合において、開口穴41付近の水位H2が12~22cmとやや高くなり、渦Uが形成されるとともに水面が暴れた状態(以下、水面暴れと表現する)となった。また、実施例1で壁距離Lが8cmの場合において、開口穴41付近の水位H2が9~13cmとなり、壁距離Lが12cmの場合に比べると水位が低く、渦Uは発生していないが、水面暴れは大きい状態であった。
導水部44を有する実施例2のケースでは、壁距離Lが12cmの場合において、開口穴41付近の水位H2が8~13cmとなり、実施例1の壁距離Lが12cmの場合に比べると水位が低く、渦は発生していないが、水面暴れは大きい状態であった。また、実施例2で壁距離Lが8cmの場合において、開口穴41付近の水位H2が7~9cmとなり、実施例1の壁距離Lが8cmの場合に比べてさらに水位が低くなり、水面暴れも小さいことが確認された。
試験結果により、導水部44を有する実施例1、2が導水部の無い比較例よりも水位が低くなることが確認された。また、溝幅Dが40cmの実施例1が20cmの実施例2よりも水位が低くなっていた。さらに、壁距離Lが8cmの方が12cmに比べて開口穴41付近の水面暴れが小さく、開口穴41への水の流れ込み状態が安定かつ良好な状態となった。
したがって、導水部44を有する場合(実施例1、2)のうち渦ができない状態では、サイフォン現象が起きていると考えられる。さらに、実施例2の溝幅Dが20cmのケースでは、実施例1の溝幅Dが40cmのケースよりも水位も低く、水面暴れも小さくなることから、サイフォン現象の発生率も高くなることがいえる。
また、導水部44を有する実施例1、2において、壁距離が8cmのケースでは排水管42の内壁と導水部44の端板43との距離が近く、排水が排水管42に流れ込み易く、水面暴れが程よく封水状態を作りサイフォン現象になっている。
さらに、導水部44の溝幅Dを小さくすることで、排水管42へさらにスムーズに排水できることも考えられるが、導水部44自体の最大流量が減る。そのため流量計算(Manningの公式など)で求めるとよい。導水部44と排水管42の接続部の構造上や作業上も溝幅Dが必要な場合もある。
以上のことから、導水部44の排水管42(開口穴41)との接続部分の溝幅Dが排水管42の径の好ましくは1~5倍であり、略2.5倍であることが好適である。また、排水管42の内径が80mmのときに、導水部44の溝幅Dは20~40cmが好ましい。
(第2実施例)
第2実施例は、図19(a)~(c)に示すように、上述した第1実施例の実施例2における壁距離Lが8cmの試験体4Bにおいて排水管42の底板との接続部に曲線部45が形成されたものを使用し、曲線部45の曲率Rを変化させて第1実施例と同様の試験(実施例3)を行った。試験は、曲線部45の曲率RはR0が0mm(直角)、R5が5mm、R15が15mmの3ケースで行った。表2は、実施例3の試験結果を示している。
Figure 0007000199000002
実施例3の試験結果により、排水管42に曲線部45(曲率R)が形成されているR5、R15の場合、曲線部45のないR0に比べて開口穴41付近の水位H2が小さく、かつ水面暴れも小さいことが確認された。これは、導水部44の水が排水管42に滑らかに導水され、サイフォン現象が安定しているためと考えられる。
以上、本発明による雨水排水システムの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態の雨水排水システム1、1A~1Gでは、導水溝30(導水部)、又は排水管路10にサイフォン誘発部を備えた構成としているが、サイフォン誘発部を設ける構成であることに限定されることはなく、サイフォン誘発部を省略することも可能である。
また、本実施の形態では、導水部として底板31、側板32、及び端板33からなる導水溝30を採用しているが、このような構成であることに限定されることはなく、排水量が得られるのであれば管状の部材からなる導水部を採用することが可能である。さらに、導水部の開口穴の位置や形状等の構成についても、上述した実施の形態に限定されることはない。
さらに、本実施の形態では、排水管路10が耐光性を有する樹脂により形成されるものを対象としているが、このような耐光性の樹脂であることに限定されることはない。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
1、1A~1H 雨水排水システム
2 のり面
10、10A 排水管路
11 合流用管路
12、12A、12B、12C サイフォン誘発部
21 横排水溝
22 のり尻排水溝(のり尻側の側溝)
23、24 集水マス
25 縦排水溝
30 導水溝(導水部)
31 底板
32 側板
33 端板
34 開口穴
B 小段部
C 路面
D 側道
S 隙間

Claims (4)

  1. のり面の上部にある路面排水又はのり面の排水を、放流側施設であるのり尻側の側溝に排水する雨水排水システムであって、
    集水マス、横排水溝、及び縦排水溝のうち少なくとも1つが設けられた排水設備と、
    前記排水設備から前記のり尻側の側溝へ排水する管状の排水管路と、
    前記排水管路に接続され、前記排水設備の排水を前記排水管路に導水するための導水部と、
    を備え
    前記導水部の上流端側の底部は、前記排水設備の底部との間に上下方向の隙間をあけて配置されていることを特徴とする雨水排水システム。
  2. 前記導水部及び前記排水管路の少なくとも一方にサイフォン誘発部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の雨水排水システム。
  3. 前記排水管路の少なくとも一部が地中に埋設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の雨水排水システム。
  4. 前記排水管路は、耐光性を有する樹脂で構成されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の雨水排水システム。
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