JP6988453B2 - シミュレーション方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤのコーナリング性能をコンピュータを用いて計算するためのシミュレーション方法に関する。
従来から、タイヤのコーナリング性能をコンピュータを用いて計算するためのシミュレーション方法が種々提案されている。
例えば、下記特許文献1では、コンピュータに、タイヤをモデル化したタイヤモデル及び路面をモデル化した路面モデルを入力し、タイヤモデルを転動させスリップ角を付与することにより、タイヤのコーナリング性能を計算するシミュレーション方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に示されるような転動計算は、高い処理能力のコンピュータを用いても、多大な時間を必要としていた。このため、限られたリソースと時間の中で、より多くのタイヤのコーナリング性能を計算できるよう、新たな計算方法の確立が期待されていた。
特開2001−50848号公報
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、短時間でタイヤのコーナリング性能を計算し、新規なタイヤの開発を促進できるシミュレーション方法を提供することを主たる目的としている。
本発明は、タイヤのコーナリング性能をコンピュータを用いて計算するための方法であって、前記コンピュータに、前記タイヤをモデル化したタイヤモデルを入力するステップと、前記コンピュータに、路面をモデル化した路面モデルを入力するステップと、前記コンピュータが、前記タイヤモデルを前記路面モデルに対して、予め定められたキャンバー角として第1荷重を負荷し、非転動での第1接地圧分布を計算するステップと、前記コンピュータが、前記タイヤモデルを前記路面モデルに対して、前記キャンバー角として前記第1荷重とは異なる第2荷重で負荷し、非転動での第2接地圧分布を計算するステップと、前記コンピュータが、前記第1接地圧分布から前記第2接地圧分布に至る物理量の変動を計算するステップと、前記物理量の変化に基づいて、前記タイヤのコーナリング性能の荷重依存特性を推定するステップと、を含む。
本発明は、タイヤのコーナリング性能をコンピュータを用いて計算するための方法であって、前記コンピュータに、前記タイヤをモデル化したタイヤモデルを入力するステップと、前記コンピュータに、路面をモデル化した路面モデルを入力するステップと、前記コンピュータが、前記タイヤモデルを前記路面モデルに、予め定められたタイヤ軸方向力及び第1荷重を負荷し、非転動での第1接地圧分布を計算するステップと、前記コンピュータが、前記タイヤモデルを前記路面モデルに、前記タイヤ軸方向力及び前記第1荷重とは異なる第2荷重を負荷し、非転動での第2接地圧分布を計算するステップと、前記コンピュータが、前記第1接地圧分布から前記第2接地圧分布に至る物理量の変動を計算するステップと、前記コンピュータが、前記物理量の変化に基づいて、前記タイヤのコーナリング性能の荷重依存特性を推定するステップと、を含む。
本発明に係る前記シミュレーション方法において、前記物理量は、前記第1接地圧分布及び前記第2接地圧分布での最大接地圧点のタイヤ軸方向の位置である、ことが望ましい。
本発明に係る前記シミュレーション方法において、前記物理量は、前記第1接地圧分布及び前記第2接地圧分布でのタイヤ周方向の接地長さである、ことが望ましい。
本発明に係る前記シミュレーション方法において、前記タイヤのコーナリング性能の荷重依存特性は、前記タイヤのコーナリングパワーの荷重依存特性である、ことが望ましい。
本発明に係る前記シミュレーション方法において、前記キャンバー角は、2〜4度である、ことが望ましい。
本発明に係る前記シミュレーション方法において、前記タイヤ軸方向力は、前記第1荷重の20〜30%である、ことが望ましい。
本発明に係る前記シミュレーション方法において、前記タイヤモデルと前記路面モデルとの間の摩擦係数は、すべり摩擦係数で定められることが望ましい。
本発明のシミュレーション方法は、コンピュータが、第1接地圧分布から第2接地圧分布に至る物理量の変動を計算するステップと、コンピュータが、物理量の変化に基づいて、タイヤのコーナリング性能の荷重依存特性を推定するステップと、を含んでいる。第1接地圧分布は、タイヤモデルを路面モデルに対して、予め定められたキャンバー角で第1荷重を負荷することにより計算され、第2接地圧分布は、タイヤモデルを路面モデルに対して、前記キャンバー角で第1荷重とは異なる第2荷重で負荷することにより計算される。第1接地圧分布及び第2接地圧分布は、いずれもタイヤモデルを転動させることなく計算される。従って、従来の転動計算に対して、短時間でコーナリング性能の計算を終了させることが可能となり、限られたリソースと時間の中で、より多くのタイヤのコーナリング性能を計算することが可能となり、新規なタイヤの設計に役立てることができる。
また、第1接地圧分布は、タイヤモデルを路面モデルに対して、予め定められたタイヤ軸方向力及び第1荷重を負荷することにより計算され、第2接地圧分布は、タイヤモデルを路面モデルに対して、前記タイヤ軸方向力及び第1荷重とは異なる第2荷重で負荷することにより計算されてもよい。この場合であっても、第1接地圧分布及び第2接地圧分布は、いずれもタイヤモデルを転動させることなく計算される。従って、従来の転動計算に対して、短時間でコーナリング性能の計算を終了させることが可能となり、限られたリソースと時間の中で、より多くのタイヤのコーナリング性能を計算することが可能となり、新規なタイヤの設計に役立てることができる。
本実施形態で用いたコンピュータの一例を示す斜視図である。 本実施形態の処理手順を示すフローチャートである。 本実施形態のタイヤモデル及び路面モデルを視覚化して示す斜視図である。 旋回時の接地面内に働くタイヤ軸方向の力の分布を示す図。 キャンバー角αを付与した2種類のタイヤの接地形状を概念的に示す略図である。 タイヤモデルA〜Dのトレッド部のプロファイルを示す図である。 タイヤモデルA、Bについての第1接地圧分布及び第2接地圧分布である。 タイヤモデルC、Dについての第1接地圧分布及び第2接地圧分布である。
図1には、本発明のシミュレーション方法を実施するためのコンピュータ1が示されている。コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dを含んで構成される。本体1aには、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリー、磁気ディスクのような大容量記憶装置、CD−ROMなどのドライブ装置1a1、1a2が設けられる。そして、大容量記憶装置には後述するシミュレーション方法を実行するために必要な処理手順(プログラム)が記憶される。
図2には、コンピュータ1を用いて行われる本発明の第1発明のシミュレーション方法の処理手順の一実施形態が示される。
先ず、本実施形態では、コンピュータ1に、数値解析が可能な有限個の要素でタイヤをモデル化したタイヤモデルを入力するタイヤモデル入力ステップ(#1)が行われる。次いで、コンピュータ1に、数値解析が可能な有限個の要素で路面をモデル化した路面モデルを入力する路面モデル入力ステップ(#2)が行われる。
ここで、数値解析が可能とは、例えば有限要素法、有限体積法、差分法又は境界要素法といった数値解析法にて取り扱い可能なことを意味し、本例では有限要素法及び有限体積法が採用される。
図3には、コンピュータ1に入力されるタイヤモデル2及び路面モデル3の一例が3次元上に視覚化して表されている。タイヤモデル2は、解析しようとするタイヤを有限個の小さな要素F(i)を用いて表すことによりモデル化される。このようなタイヤモデル2の実体は、コンピュータ1で取り扱いが可能な数値データである。具体的には、各要素F(i)の節点座標値、要素番号及び節点番号等が定義される。本実施形態のタイヤモデル2には、タイヤを構成するトレッドゴム、サイドウォールゴム、ビードエイペックスゴム等の各種ゴムの他、カーカス、ベルト層及びビードコア等がモデリングされている。
各要素F(i)としては、例えば、複雑な形状を表現するのに適した4面体ソリッド要素が好ましいが、これ以外にも5面体又は6面体ソリッド要素などが用いられてもよい。
各要素F(i)には、要素番号、節点番号、節点座標値、及び材料特性(例えば密度、ヤング率及び/又は減衰係数等)などの数値データが定義され、コンピュータ1に記憶される。
路面モデル3は、タイヤモデル2と同様に、タイヤが接地する路面を有限個の小さな要素G(i)を用いて表すことによりモデル化される。本実施形態の路面モデル3は、水平に配置された平面の剛要素でモデル化されている。各要素G(i)には、要素番号、節点番号、節点座標値等の数値データが定義される。
図2に示されるように、境界条件設定ステップ(#3)では、後述のステップを行うに際して必要な条件が定義される。設定される条件としては、例えばタイヤモデル2が装着されるリム、内圧、荷重、路面モデル3とタイヤモデル2との間の摩擦係数、タイヤモデル2の変形計算時の初期の時間増分及びタイヤモデル2の初期位置などの条件が含まれる。
内圧条件は、適宜設定することができる。本実施形態の内圧条件としては、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定める空気圧が設定される。荷重条件としては、適宜設定することができる。荷重条件は、例えば、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定める荷重が設定される。本実施形態では、第1荷重及び第1荷重とは異なる第2荷重が設定される。例えば、タイヤが装着される車両の仕様が明らかな場合、その前輪荷重が第1荷重として、後輪荷重が第2荷重として、それぞれ設定されうる。なお、後述する計算ステップ(#5、#6)での計算時間を短縮するため、例えば、前輪荷重の20%に相当する荷重が第1荷重として、後輪荷重の20%に相当する荷重が第2荷重として設定されていてもよい。
次いで、内圧充填計算ステップ(#4)では、コンピュータ1は、内圧充填後のタイヤモデル2を計算する。このステップ#4では、先ず、タイヤのリムをモデル化したリムモデル(図示せず)によって、タイヤモデル2のビード部が拘束される。
リムモデルは、例えば、リムに関する情報(例えば、リムの輪郭データ等)に基づいて、数値解析法(本実施形態では、有限要素法)により取り扱い可能な有限個の要素(図示省略)で離散化されることによって設定される。リムモデルを構成する要素は、例えば、変形不能に設定された剛平面要素(図示省略)として定義されるのが望ましい。
さらに、コンピュータ1は、境界条件として設定された内圧条件に相当する等分布荷重に基づいて、タイヤモデル2の変形を計算する。これにより、内圧充填後のタイヤモデル2が計算される。
タイヤモデル2の変形計算は、各要素F(i)の形状及び材料特性などをもとに、各要素F(i)の質量マトリックス、剛性マトリックス及び減衰マトリックスがそれぞれ作成される。さらに、これらの各マトリックスが組み合わされて、全体の系のマトリックスが作成される。そして、コンピュータ1が、前記各種の条件を当てはめて運動方程式を作成し、これらを微小時間(単位時間Tx(x=0、1、…))ごとにタイヤモデル2の変形計算を行う。このようなタイヤモデル2の変形計算は、例えば、Dassault Systems社製のAbaqus、LSTC社製のLS-DYNA、又は、MSC社製のNASTRANなどの市販の有限要素解析アプリケーションソフトを用いて計算できる。なお、単位時間Txについては、求められるシミュレーション精度によって、適宜設定することができる。
次に、第1接地圧分布の計算ステップ(#5)では、コンピュータ1は、非転動での第1接地圧分布を計算する。第1接地圧分布とは、タイヤモデル2を路面モデル3に対して、予め定められたキャンバー角αで、第1荷重L1を負荷したとき(第1接地状態)の接地圧の分布である。
コンピュータ1は、内圧充填後のタイヤモデル2を路面モデル3に対して、キャンバー角αになるように図3中Y軸回りに傾けた後、タイヤモデル2に第1荷重L1を負荷しつつ、タイヤモデル2と路面モデル3との接触を計算する。接地圧の分布は、上記アプリケーションソフトによって出力されうる。コンピュータ1は、第1接地圧分布に基づいて、例えば、第1接地状態での最大接地圧点及びタイヤ周方向の接地長さ等の物理量を計算できる。
なお、本実施形態では、先にキャンバー角αを付与したタイヤモデル2に第1荷重を負荷しているが、先に第1荷重を負荷したタイヤモデル2にキャンバー角αを付与してもよい。
その後、第2接地圧分布の計算ステップ(#6)では、コンピュータ1は、非転動での第2接地圧分布を計算する。第2接地圧分布とは、タイヤモデル2を路面モデル3に対して、キャンバー角αで、第2荷重L2を負荷したとき(第2接地状態)の接地圧の分布である。第2荷重L2が第1荷重L1よりも小さい場合、第1接地圧分布の計算ステップ(#5)の途中で、第1接地圧分布よりも前に第2接地圧分布が計算されてもよい。この場合、計算ステップ(#5)と計算ステップ(#6)とは、順序が相互に入れ替わる。なお、以下において、第2荷重L2は、第1荷重L1よりも小さいものとする。コンピュータ1は、第2接地圧分布に基づいて、第2接地状態での最大接地圧点及びタイヤ周方向の接地長さ等の物理量を計算できる。
図2に示される各ステップにおいて、最も多くの時間を必要するステップは、上記計算ステップ(#5)及び計算ステップ(#6)である。本実施形態の計算ステップ(#5)及び計算ステップ(#6)では、非転動の条件で第1接地圧分布及び第2接地圧分布が計算されるため、転動計算と比較するとその計算時間は、大幅に短縮される。
そして、物理量の変動の計算ステップ(#7)では、コンピュータ1が、第1接地圧分布から第2接地圧分布に至る物理量の変動を計算する。
上記計算ステップ(#7)における物理量の一例としては、最大接地圧点のタイヤ軸方向の位置が挙げられる。コンピュータ1は、第1接地圧分布における最大接地圧点のタイヤ軸方向の位置及び第2接地圧分布における最大接地圧点のタイヤ軸方向の位置を計算し、それらの差を計算することにより、第1接地圧分布から第2接地圧分布に至る物理量の変動が計算される。
さらに、コーナリング性能の荷重依存特性の推定ステップ(#8)では、コンピュータ1が、物理量の変動に基づいて、コーナリング性能の荷重依存特性を推定する。
図4は、旋回時の接地面内に働くタイヤ軸方向の力の分布を示している。図4から、旋回時に外側のトレッド接地端近傍の領域R1では、コーナリングフォース(コーナリングパワー)を減少させる力が働き、内側のトレッド接地端近傍及び蹴り出し端近傍の領域R2では、コーナリングフォースを増加させる力が働いている。
本願発明者は、タイヤのコーナリング性能について鋭意研究を重ねた結果、非転動であってもキャンバー角αを付与し、荷重を負荷することにより、上記旋回時の接地面を近似できると考え、ついに、キャンバー角αを付与したタイヤの接地圧分布とコーナリング性能の荷重依存特性との間に相関が認められることを発見した。
図5は、キャンバー角αを付与した2種類のタイヤの接地形状を概念的に示す略図である。図5において、第2荷重L2での接地形状が破線で表され、第1荷重L1での接地形状が実線で表されている。図5(a)に示されるタイヤ及び図5(b)に示されるタイヤのいずれにおいても、第2荷重L2から第1荷重L1に荷重が増加するに従い、接地形状が破線で囲まれる領域から実線で囲まれる領域に拡大する。
発明者は、図5(a)に示されるタイヤ、すなわち、第2荷重L2から第1荷重L1に増加する際、最大接地圧点Pのタイヤ軸方向(図中X方向)の移動量ΔPが大きい傾向にあるタイヤは、接地面内でコーナリングフォースを減少させる領域R1が増加する傾向にあることから、コーナリングパワーの増加が抑制されると考えた。
一方、発明者は、図5(b)に示されるタイヤ、すなわち、第2荷重L2から第1荷重L1に増加する際、最大接地圧点Pのタイヤ軸方向の移動量ΔPが小さく、タイヤ周方向の接地長さVの増加量が大きい傾向にあるタイヤは、接地面内でコーナリングフォースを増加させる領域R2が増加することから、コーナリングパワーの増加が促進されると考えた。
従って、上記推定ステップ(#8)では、上記計算ステップ(#7)において計算された物理量、すなわち第1接地圧分布から第2接地圧分布に至る最大接地圧点Pのタイヤ軸方向の移動量ΔPに基づいて、コンピュータ1は、タイヤのコーナリング性能の荷重依存特性を推定することが可能となる。
ところで、多くの車両は、前輪荷重と後輪荷重とが異なっており、通常、前輪側にエンジンが搭載される乗用車両では、前輪荷重が後輪荷重よりも大きい。このような車両の前後に同一のタイヤが装着される場合、タイヤの荷重依存特性が車両の性能に影響を及ぼすことがある。特に、タイヤのコーナリングパワーの荷重依存特性は、車両のハンドリング性能に影響を及ぼすことがある。
通常、スリップ角が付与されたタイヤに負荷される荷重が増加したとき、コーナリングパワーは増加する。このようなタイヤが上記車両に装着された場合、後輪よりも荷重の大きい前輪がより大きいコーナリングパワーを発生する。本願発明者は、前輪のコーナリングパワーを抑制すること、すなわち、荷重の増加に伴うコーナリングパワーの増加を抑制することにより、車両の前後でコーナリングパワーが拮抗し、安定した旋回性能が得られると考えた。
そして、コーナリングパワーの荷重依存特性は、コーナリング性能の荷重依存特性の一つとして、推定ステップ(#8)にて推定されうる。すなわち、第2接地状態から第1接地状態に荷重が増加する際における最大接地圧点Pのタイヤ軸方向の移動量ΔPを計算することにより、コーナリングパワーの荷重依存特性が推定され、ひいては車両の旋回性能を推定することが可能となる。
既に述べたように、上記計算ステップ(#5)及び計算ステップ(#6)では、非転動の条件で第1接地圧分布及び第2接地圧分布が計算されるため、転動計算と比較するとその計算時間は、大幅に短縮される。そのため、短時間により多くのタイヤモデル2をコンピュータ1に入力し、第1接地圧分布及び第2接地圧分布を計算することが可能である。従って、各タイヤモデル2について、上記計算ステップ(#7)及び計算ステップ(#8)を実行することにより、限られたリソースと時間の中で、多くのタイヤのコーナリングパワーの荷重依存特性を推定することが可能となり、新規なタイヤの開発を促進できるるようになる。
一方、図5(b)に示されるように、発明者は、第2荷重L2から第1荷重L1に増加する際、最大接地圧点Pのタイヤ軸方向の移動量ΔPが小さく、タイヤ周方向の接地長さVが大きく増加する傾向にあるタイヤは、接地面内でコーナリングフォースを増加させる領域R2が増加する傾向にあることから、コーナリングパワーの増加が促進されると考えた。逆に、図5(a)に示されるように、荷重の増加に伴いタイヤ周方向の接地長さVが増加が小さい傾向にあるタイヤは、接地面内でコーナリングフォースを減少させる領域R1が増加する傾向にあることから、コーナリングパワーの増加が抑制されると考えられる。
従って、上記計算ステップ(#7)における物理量の他の例として、タイヤ周方向の接地長さVを挙げることができる。コンピュータ1は、第1接地圧分布におけるタイヤ周方向の接地長さV1及び第2接地圧分布におけるタイヤ周方向の接地長さV2を計算し、それらの差V1−V2を計算することにより、第1接地圧分布から第2接地圧分布に至る物理量の変動が計算される。
従って、上記推定ステップ(#8)では、上記計算ステップ(#7)において計算された物理量、すなわち第1接地圧分布から第2接地圧分布に至るタイヤ周方向の接地長さVの変動量V1−V2に基づいて、コンピュータ1は、タイヤのコーナリング性能の荷重依存特性を推定することが可能となる。
なお、コンピュータ1が計算するタイヤ周方向の接地長さVは、接地面全体での最大の接地長さであってもよく、接地面内の特定箇所(例えば、タイヤ赤道又は特定の陸部)での接地長さであってもよい。
第1接地圧分布から第2接地圧分布に至る物理量として、最大接地圧点Pのタイヤ軸方向位置及びタイヤ周方向の接地長さVを併用して、それらの変動に基づいて、コンピュータ1がタイヤのコーナリング性能の荷重依存特性を推定するように構成されていてもよい。
上記計算ステップ(#5)及び計算ステップ(#6)にて、タイヤモデル2に設定されるキャンバー角αは、2〜4度が望ましい。キャンバー角αが2度未満の場合、接地圧分布の変化が過少となり、適切にコーナリング性能を予測することができない。キャンバー角αが4度を超える場合、接地圧分布の変化が過大となり、適切にコーナリング性能を予測することができない。
タイヤモデル2にキャンバー角αが設定された場合の接地圧分布は、タイヤモデル2に予め定められたタイヤ軸方向力が負荷された場合の接地圧分布と類似している。そこで、上記計算ステップ(#5)及び計算ステップ(#6)では、タイヤモデル2にキャンバー角αを設定する替わりに、タイヤモデル2に予め定められたタイヤ軸方向力を負荷し、接地圧分布が計算されてもよい。上記タイヤ軸方向力は、第1荷重と同時に負荷されてもよく、第1荷重を負荷した後に負荷されてもよい。また、タイヤモデル2にキャンバー角αを設定すると共にタイヤ軸方向力を負荷し、接地圧分布が計算されてもよい。
タイヤモデル2に負荷されるタイヤ軸方向力は、第1荷重の20〜30%が望ましい。タイヤ軸方向力が第1荷重の20%未満の場合、接地圧分布の変化が過少となり、適切にコーナリング性能を予測することができない。タイヤ軸方向力が第1荷重の30%を超える場合、接地圧分布の変化が過大となり、また、接地面内の滑りが発生するため、適切にコーナリング性能を予測することができない。
境界条件設定ステップ(#3)にて設定されるタイヤモデル2と路面モデル3との間の摩擦係数は、タイヤと路面との間のすべり摩擦係数で定められるのが望ましい。上記摩擦係数がすべり摩擦係数で定められることにより、スリップ角が付与されたタイヤのコーナリング性能がより正確に推定可能となる。
以上、本発明のシミュレーション方法が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
図6に記載されたトレッド部のプロファイルを有するサイズ:205/55R16のタイヤモデルA〜Dが作成され、図2の手順に基づいて、コーナリング性能の荷重依存特性が推定された。リムサイズは6.5Jであり、内圧は220kPaであり、キャンバー角αは3度である。また、第1荷重L1は、前輪荷重相当の20%に相当する840Nであり、第2荷重L2は、後輪荷重の20%に相当する480Nである。
図7は、タイヤモデルA、Bについて、第1荷重L1を負荷したときの第1接地圧分布及び第2荷重L2を負荷したときの第2接地圧分布である。図8は、タイヤモデルC、Dについての第1接地圧分布及び第2接地圧分布である。
表1は、各タイヤモデルについて、本願発明の上記計算ステップ(#7)において計算された物理量の変動と、従来の転動計算によって計算されたコーナリングパワーの荷重依存特性とを比較して示している。
物理量の変動は、第1接地圧分布及び第2接地圧分布での最大接地圧点Pのタイヤ軸方向の位置の移動量ΔPであり、タイヤモデルAの移動量ΔPを100とする指数にて表されている。従来の転動計算によって計算されたコーナリングパワーの荷重依存特性は、第2荷重L2で計算されたコーナリングパワーCP2と第1荷重L1で計算されたコーナリングパワーCP1との比CP2/CP1であり、タイヤモデルAでの比CP2/CP1を100とする指数にて表されている。
Figure 0006988453
表1より明らかなように、本願発明によって計算された物理量の変動、すなわち最大接地圧点Pのタイヤ軸方向の位置の移動量ΔPは、従来の転動計算によって計算されたコーナリングパワーの荷重依存特性と、傾向がよく一致していることが確認された。従って、本願発明によっても、タイヤのコーナリング性能の荷重依存特性を推定することが可能となる。
なお、1つのタイヤモデルについて、従来の転動計算は20時間必要であったのに対して、本願発明の計算に要した時間は、1時間であった。従って、本願発明によってコーナリング性能の荷重依存特性の計算に必要な時間が大幅に短縮できることも、併せて確認された。
1 :コンピュータ
2 :タイヤモデル
3 :路面モデル
L1 :第1荷重
L2 :第2荷重
P :最大接地圧点
α :キャンバー角

Claims (6)

  1. タイヤのコーナリング性能をコンピュータを用いて計算するための方法であって、
    前記コンピュータに、前記タイヤをモデル化したタイヤモデルを入力するステップと、
    前記コンピュータに、路面をモデル化した路面モデルを入力するステップと、
    前記コンピュータが、前記タイヤモデルを前記路面モデルに対して、予め定められたキャンバー角第1荷重を負荷したときの、非転動での第1接地圧分布を計算するステップと、
    前記コンピュータが、前記タイヤモデルを前記路面モデルに対して、前記キャンバー角前記第1荷重とは異なる第2荷重で負荷したときの、非転動での第2接地圧分布を計算するステップと、
    前記コンピュータが、前記第1接地圧分布から前記第2接地圧分布に至る物理量の変動を計算するステップと、
    前記物理量の変化に基づいて、前記タイヤのコーナリング性能の荷重依存特性を推定するステップと、を含み、
    前記物理量は、前記第1接地圧分布及び前記第2接地圧分布での最大接地圧点のタイヤ軸方向の位置または前記第1接地圧分布及び前記第2接地圧分布でのタイヤ周方向の接地長さである、
    シミュレーション方法。
  2. タイヤのコーナリング性能をコンピュータを用いて計算するための方法であって、
    前記コンピュータに、前記タイヤをモデル化したタイヤモデルを入力するステップと、
    前記コンピュータに、路面をモデル化した路面モデルを入力するステップと、
    前記コンピュータが、前記タイヤモデルを前記路面モデルに対して、予め定められたタイヤ軸方向力及び第1荷重を負荷したときの、非転動での第1接地圧分布を計算するステップと、
    前記コンピュータが、前記タイヤモデルを前記路面モデルに対して、前記タイヤ軸方向力及び前記第1荷重とは異なる第2荷重を負荷したときの、非転動での第2接地圧分布を計算するステップと、
    前記コンピュータが、前記第1接地圧分布から前記第2接地圧分布に至る物理量の変動を計算するステップと、
    前記コンピュータが、前記物理量の変化に基づいて、前記タイヤのコーナリング性能の荷重依存特性を推定するステップと、を含み、
    前記物理量は、前記第1接地圧分布及び前記第2接地圧分布での最大接地圧点のタイヤ軸方向の位置または前記第1接地圧分布及び前記第2接地圧分布でのタイヤ周方向の接地長さである、
    シミュレーション方法。
  3. 前記タイヤのコーナリング性能の荷重依存特性は、前記タイヤのコーナリングパワーの荷重依存特性である、請求項1又は2に記載のシミュレーション方法。
  4. 前記キャンバー角は、2〜4度である、請求項1記載のシミュレーション方法。
  5. 前記タイヤ軸方向力は、前記第1荷重の20〜30%である、請求項2記載のシミュレーション方法。
  6. 前記タイヤモデルと前記路面モデルとの間の摩擦係数として、タイヤと路面との間のすべり摩擦係数を設定する設定ステップをさらに含み、
    前記設定ステップは、非転動での前記第1接地圧分布を計算するステップ及び非転動での前記第2接地圧分布を計算するステップの前に処理される、請求項1乃至5のいずれかに記載のシミュレーション方法。
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