以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
<実施形態>
図1は、本実施形態のディスクブレーキ1の斜視図である。図2は、図1のII−II線断面図である。図1,2に示されるように、ディスクブレーキ1は、車軸ハブ(不図示の回転体)に組み付けられて車輪と一体に回転するディスクロータ2と、ディスクロータ2の外周部(周端部)を跨いで配置されるキャリパ3と、を備えている。すなわち、キャリパ3には、ディスクロータ2の一部としてディスクロータ2の外周部が入れられている。なお、以下で特段に言及しない限り、回入側とは、車両の前進状態においてキャリパ3内のU字状の隙間にディスクロータ2が進入する側を言い、回出側とは、車両の前進状態においてキャリパ3内のU字状の隙間からディスクロータ2が退出する側を言う。また、以下では、ディスクロータ2の軸方向を軸方向、ディスクロータ2の径方向を径方向、ディスクロータ2の周方向を周方向とも称する。また、各図では、車両の前進状態でのディスクロータ2の回転方向である正転方向Dが示されている。
キャリパ3は、車両に設けられた支持部材に固定されたマウンティング11と、軸方向に移動可能にマウンティング11に支持されたキャリパボディ12と、軸方向に移動可能にマウンティング11に支持された一対のブレーキパッド20,30と、を備えている。
キャリパボディ12は、一対のスライドピン14によってマウンティング11に対して軸方向に移動可能に取付けられている。キャリパボディ12は、車体側からディスクロータ2を軸方向に跨いで延出している。キャリパボディ12は、軸方向の一方側の端部(図2の左側、基端部)に、ピストン15(押圧部材)が挿入されるシリンダ部12aを有している。キャリパボディ12は、軸方向の他方側の端部(図2の右側、先端部)に、一対の爪12b(押圧部材)を有している。爪12bは、ディスクロータ2の軸方向の他方側に位置され、軸方向でディスクロータ2に間隔をあけて位置されている。
図2に示されるように、ピストン15は、ディスクロータ2の軸方向の一方側に位置され、軸方向でディスクロータ2に間隔をあけて位置されている。ピストン15は、キャリパボディ12に収納される。ピストン15は、ブレーキアクチュエータから供給されるブレーキ液の液圧によってディスクロータ2に向けて進出して、ディスクロータ2との間に介在したブレーキパッド20をディスクロータ2に向けて押す。詳細には、ピストン15は、ブレーキパッド20側の端部に含まれた押圧部15a(押圧面)を有し、押圧部15aによって、ブレーキパッド20をディスクロータ2に向けて押す。押圧部15aの押す力である押圧力の反力によってキャリパボディ12が移動して、キャリパボディ12の爪12bが、ディスクロータ2と爪12bとの間に介在したブレーキパッド30をディスクロータ2に向けて押す。詳細には、爪12bは、ブレーキパッド30側の端部に含まれた押圧部12c(押圧面)を有し、押圧部12cによってブレーキパッド30をディスクロータ2に向けて押す。すなわち、一対のブレーキパッド20,30は、それぞれピストン15の押圧部15aまたは爪12bの押圧部12cによってディスクロータ2に押し付けられる。このブレーキパッド20,30がディスクロータ2に押し付けられた状態が、ディスクブレーキ1の制動状態である。一方、ブレーキパッド20,30がディスクロータ2に押し付けられていない状態が、ディスクブレーキ1の非制動状態である。具体的には、ディスクブレーキ1の非制動状態では、ブレーキパッド20,30によって車輪を制動させるための液圧がシリンダ部12a内に発生しておらず、ライニング21は、ディスクロータ2に押し付けられていない。なお、非制動状態でもライニング21がディスクロータ2に接触することはあり得る。また、ブレーキパッド20とピストン15との間およびブレーキパッド30と爪12bとの間には、シム40が介在している。
図3は、一方のブレーキパッド20とディスクロータ2との断面図である。図4は、一方のブレーキパッド20の斜視図であって、ライニング21側から見て示す図である。図5は、一方のブレーキパッド20の斜視図であって、裏板22側から見て示す図である。図6は、一方のブレーキパッド20の正面図である。
図3〜6に示されるように、ブレーキパッド20は、ディスクロータ2と軸方向に面するライニング21と、ライニング21に対してディスクロータ2の反対側に設けられライニング21が固定された裏板22と、裏板22に支持された壁27と、を備えている。また、ブレーキパッド20には、ディスクロータ2とライニング21との摩擦によって生じた摩耗粉50を収容可能な空間28A,28Bが設けられている。なお、図3,6では、壁27は、太線で示されている。
ブレーキパッド20、ライニング21および裏板22は、それぞれ、軸方向から見た場合に、長手方向LD1(図6の左右方向)に長く、短手方向WD1(図6の上下方向)に短い形状を有している。長手方向LD1は、ブレーキパッド20のディスクブレーキ1(車両)への装着状態で、周方向の接線方向に略沿っている。また、短手方向WD1は、ブレーキパッド20のディスクブレーキ1(車両)への装着状態における軸方向および長手方向LD1と直交している。短手方向WD1は、裏板22の固定面22aと平行である。また、厚さ方向TD1は、ブレーキパッド20のディスクブレーキ1(車両)への装着状態で、軸方向に沿うとともに、長手方向LD1および短手方向WD1と直交している。
図7は、一方のブレーキパッド20のライニング21の正面図である。図3,4,6,7に示されるように、ライニング21は、ディスクロータ2に沿って延びた板状に形成されている。ライニング21は、ディスクロータ2と軸方向に面する摩擦面21aと、ブレーキパッド20の厚さ方向TD1における摩擦面21aの反対側の裏面21b(図3)と、を有している。また、図7に示されるように、ライニング21は、回入側端部21qと、回出側端部21rと、径方向外側端部21sと、径方向内側端部21tと、を有している。回入側端部21qは、ライニング21の長手方向LD1の一方側の端部である。回出側端部21rは、ライニング21の長手方向LD1の他方側の端部である。径方向外側端部21sは、ライニング21の短手方向WD1の一方側の端部である。径方向内側端部21tは、ライニング21の短手方向WD1の他方側の端部である。摩擦面21aは、第三面の一例であり、裏面21bは、第二面の一例である。
また、ライニング21には、複数の孔21d,21eが設けられている。孔21d,21eは、摩擦面21aと裏面21bとに渡って設けられ、摩擦面21aと裏面21bとに開口している。すなわち、孔21d,21eは、軸方向にライニング21を貫通している。孔21d,21eは、径方向に延びた長孔状に形成されている。孔21d,21eは、周方向に互いに間隔をあけて設けられている。孔21dは、ライニング21の中央部と回入側端部21qとの間に設けられ、孔21eは、ライニング21の中央部と回出側端部21rとの間に設けられている。
ライニング21では、摩擦面21aが、回転するディスクロータ2の制動面と相対的に摺動して摩擦力を発生する。
図8は、一方のブレーキパッド20の裏板22の背面図である。図3,5,6,8に示されるように、裏板22は、ディスクロータ2に沿って延びた板状に形成されている。裏板22は、裏面21bと重ねられライニング21が固定された固定面22aと、ブレーキパッド20の厚さ方向TD1における固定面22aの反対側の裏面22bと、を有している。固定面22aは、第一面の一例である。
また、図8に示されるように、裏板22は、回入側端部22qと、回出側端部22rと、径方向外側端部22sと、径方向内側端部22tと、を有している。回入側端部22qは、裏板22の長手方向LD1の一方側の端部である。回出側端部22rは、裏板22の長手方向LD1の他方側の端部である。径方向外側端部22sは、裏板22の短手方向WD1の一方側の端部である。径方向内側端部22tは、裏板22の短手方向WD1の他方側の端部である。裏板22は、金属材料や合成樹脂材料によって構成されている。
図3,6等に示されるように、固定面22aに固定されたライニング21は、裏板22の外周端部、すなわち回入側端部22q、回出側端部22r、径方向外側端部22s、および径方向内側端部22tから離間して配置されている。すなわち、裏板22の外周部は、ライニング21から張り出している。裏板22におけるライニング21から回入側に張り出した部分は、回入側張出部22uを構成し、裏板22におけるライニング21から回出側に張り出した部分は、回出側張出部22vを構成している。回入側張出部22uおよび回出側張出部22vは、それぞれ、固定面22aの一部および裏面22bの一部を含む。
また、図3,6,8に示されるように、裏板22には、裏面22bから固定面22a側に凹んだ凹部22g,22hが設けられている。凹部22gの一部は、回入側張出部22uに位置され、凹部22hの一部は、回出側張出部22vに位置されている。
また、図3,8に示されるように、裏板22には、複数の孔22c〜22fが設けられている。孔22c〜22fは、径方向に延びた長孔状に形成されている。孔22c〜22fは、周方向に互いに間隔をあけて設けられている。孔22c,22dは、裏板22の中央部と回入側端部22qとの間に設けられている。孔22dは、孔22cの回出側に設けられている。孔22e,22fは、裏板22の中央部と回出側端部22rとの間に設けられている。また、孔22fは、孔23eの回出側に設けられている。
図3に示されるように、孔22c,22dは、固定面22aと凹部22gの底面とに渡って設けられ、孔22e,22fは、固定面22aと凹部22hの底面とに渡って設けられている。すなわち、孔22c,22d,22e,22fは、それぞれ、固定面22aと、凹部22gまたは凹部22hと、に開口している。詳細には、孔22cは、回入側張出部22uの固定面22aに開口し、孔22fは、回出側張出部22vの固定面22aに開口している。また、孔22d,22eは、それぞれ、その全体がライニング21の孔21d,21eと軸方向に重なっており、孔21d,21eと通じている。すなわち、裏板22の孔22d,22eおよびライニング21の孔21d,21eは、それぞれ、互いに接続されて一つの孔23B,23Cを構成している。
図8に示されるように、裏板22の周方向の両端部には、周方向に突出した一対の突出部22mが設けられている。突出部22mは、軸方向に移動可能にマウンティング11に支持されている。また、裏板22には、シム40(図2)が裏面22bに重ねられた状態で取り付けられている。
図3,5に示されるように、裏板22には、凹部22g,22hを覆うカバー25A,25Bが設けられている。凹部22g,22hのうちカバー25A,25Bに覆われた部分は、摩耗粉50を収容する室24A,24B(図3)を構成している。すなわち、室24A,24Bは、凹部22g,22hの底面とカバー25A,25Bとの間の空間である。
図3に示されるように、室24Aと室24Bとは、周方向に互いに間隔をあけて位置されている。室24Bは、室24Aの回出側に設けられている。室24Aは、孔22c,23Bと通じ、室24Bは、孔23C,22fと通じている。すなわち、一つの室24A(または室24B)に、複数の孔22c,23B(または孔23C,22f)が通じている。各室24A,24Bの体積(容積)は、当該室24A,24Bに通じた孔22c,22f,23B,23Cの合計体積よりも大きい。また、室24Bの体積は、室24Aの体積よりも大きい。これは、回出側に摩耗粉50が溜まりやすいためである。室24Aは、第一室の一例であり、室24Bは、第二室の一例である。
カバー25A,25Bは、ネジや爪等の結合部によって、裏板22に着脱可能に取り付けられている。すなわち、カバー25A,25Bは、室24A,24Bをブレーキパッド20外に開放する着脱可能な蓋を兼ねている。なお、図8では、カバー25A,25Bが取り外された状態の裏板22が示されている。
また、カバー25A,25Bは、フィルタ26A,26Bを含んでいる。フィルタ26A,26Bは、室24A,24Bからブレーキパッド20外への流体の流出を許容し、室24A,24Bからブレーキパッド20外への摩耗粉50の流出を制限する。上記流体は、少なくとも空気を含む。なお、上記流体に、空気および液体(例えば水等)が含まれていてもよい。フィルタ26A,26Bには、例えば摩耗粉50の径未満の大きさの複数の孔(不図示)が設けられており、当該孔は、排気口および排水口として機能する。フィルタ26A,26Bは、例えば、金属メッシュ部材によって構成されうる。カバー25A,25Bは、フィルタ26A,26Bを支持する支持部材を含んでいてもよい。
図3〜6に示されるように、壁27は、ライニング21の外周端部、すなわち回入側端部21q、回出側端部21r、径方向外側端部21s、および径方向内側端部21tを囲繞した状態で、裏板22に支持されている。
図9は、一方のブレーキパッド20の壁27の展開状態を示す図である。図9に示されるように、壁27は、帯状のシート部材が閉形状(無端状)をなすように曲げられて構成されている。すなわち、壁27は、シート状(フィルム状)に構成された部材であって、ライニング21および裏板22とは別部材である。このような構成の壁27は、可撓性を有している。シート部材は、例えば、アラミドペーパーである。また、壁27は、例えば、難燃性材料を含む。難燃性材料としては、例えば、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等を挙げることができる。
図3〜6に示されるように、壁27は、裏板22の外周端部に固定された固定部27aと、ライニング21の外周端部を囲繞した囲繞部27bと、を有している。
固定部27aは、裏板22の外周端部(回入側端部22q、回出側端部22r、径方向外側端部22s、径方向内側端部22t)に重ねられた状態で、裏板22の外周端部に接着によって固定されている。なお、裏板22に対する壁27の固定は、接着に限られない。例えば、壁27は、ネジ等の結合具によって裏板22に固定されてもよい。
囲繞部27bは、固定部27aからディスクロータ2側に、軸方向に沿って延びている。囲繞部27bは、回入側部位27cと、回出側部位27dと、径方向外側部位27eと、径方向内側部位27fと、を有している。
回入側部位27cは、ライニング21の回入側端部21qから、周方向の一方側(回入側)、すなわち長手方向LD1の一方側、に隙間23Eをあけて設けられている。回入側部位27cの一部は、裏板22の回入側張出部22uの固定面22a上に形成されている。隙間23Eは、固定面22a上に形成され、ディスクロータ2に向けて開口している。また、隙間23Eは、裏板22の孔22cと通じている。すなわち、孔22cは、隙間23Eに開口している。
回出側部位27dは、ライニング21の回出側端部21rから、周方向の他方側(回出側)、すなわち長手方向LD1の他方側、に隙間23Fをあけて設けられている。回出側部位27dの一部は、裏板22の回出側張出部22vの固定面22a上に形成されている。隙間23Fは、固定面22a上に形成され、ディスクロータ2に向けて開口している。また、隙間23Fは、裏板22の孔22fと通じている。すなわち、孔22fは、隙間23Fに開口している。
径方向外側部位27eは、ライニング21の径方向外側端部21sから、径方向外側、すなわち短手方向WD1の一方側、に隙間23Gをあけて設けられている。隙間23Gは、固定面22a上に形成され、ディスクロータ2に向けて開口している。
径方向内側部位27fは、ライニング21の径方向内側端部21tから、径方向内側、すなわち短手方向WD1の他方側、に隙間23Hをあけて設けられている。隙間23Hは、固定面22a上に形成され、ディスクロータ2に向けて開口している。
隙間23E、隙間23F、隙間23G、および隙間23Hは、互いに接続されている。
また、図3,4に示されるように、壁27の囲繞部27bは、ライニング21の摩擦面21aよりもディスクロータ2側に軸方向に沿って突出した突出部27iを有している。突出部27iは、壁27のディスクロータ2側の端部である先端部27jを含む。突出部27iは、囲繞部27bの各部、すなわち回入側部位27c、回出側部位27d、径方向外側部位27e、および径方向内側部位27fに渡って設けられている。詳細には、突出部27iは、ディスクブレーキ1の非制動状態で、ライニング21の摩擦面21aよりもディスクロータ2側に突出しており、先端部27jがディスクロータ2に接触している。すなわち、壁27は、裏板22からライニング21の厚さ方向TD1に沿って摩擦面21a以上に突出している。突出部27iの突出量は、例えば、0.5mmである。図3では、理解のために、突出部27iの突出量が誇張されている。なお、突出部27iの突出量は、0.5mm以外であってもよい。
また、図5に示されるように、壁27には、一対の幅広部27gが設けられている。一対の幅広部27gは、周方向に互いに間隔をあけて設けられている。回入側の幅広部27gは、回入側部位27cを含み、回出側の幅広部27gは、回出側部位27dを含む。各幅広部27gは、固定部27aに対してディスクロータ2の反対側に突出した部分を有し、壁27の他の部分よりも軸方向の幅が広くなっている。各幅広部27gには、貫通孔27hが設けられている。回入側の幅広部27gの貫通孔27hには、回入側張出部22uが入れられ、回出側の幅広部27gの貫通孔27hには、回出側張出部22vが入れられている。
上記構成の壁27は、ディスクブレーキ1が非制動状態の場合には、先端部27jがディスクロータ2に接触している(図3)。この状態では、例えば、ライニング21の摩擦面21aは、ディスクロータ2から離間した状態またはディスクロータ2に接触した状態となる。図3では、ライニング21の摩擦面21aがディスクロータ2から離間した状態が示されている。ディスクブレーキ1が非制動状態から制動状態に変化すると、ライニング21がディスクロータ2に押し付けられるとともに、壁27の先端部27jがディスクロータ2に押し付けられてディスクロータ2に引きずられ、壁27が撓む(弾性変形する)。詳細には、このとき、壁27の囲繞部27b(回入側部位27c、回出側部位27d、径方向外側部位27e、径方向内側部位27f、突出部27i)が撓む。
図3に示されるように、空間28Aは、ライニング21の孔21dと、裏板22の孔22c,22d、および室24Aを含む。よって、空間28Aは、ライニング21の摩擦面21aと裏板22の固定面22aとに開口するとともに、隙間23Eと通じている。空間28Bは、ライニング21の孔21eと、裏板22の孔22e,22f、および室24Bを含む。よって、空間28Bは、ライニング21の摩擦面21aと裏板22の固定面22aとに開口しているとともに、隙間23Fと通じている。空間28A,28Bは、ディスクロータ2と摩擦面21aとの摩擦によって生じた摩耗粉50を収容可能である。摩耗粉50は、孔21d,21e,22c〜22f、および室24A,24Bのいずれにも収容されうる。摩耗粉50は、ライニング21の摩耗粉を含む。また、摩耗粉50には、ディスクロータ2の摩耗粉も含まれうる。
また、図6に示されるように、本実施形態では、軸方向、すなわち厚さ方向TD1(図6の紙面と垂直な方向)から見た場合に、ブレーキパッド20をディスクロータ2に押し付けるべくピストン15の押圧部15aによって押圧される裏板22の被押圧部22nと、空間28A,28Bとが、摩擦面21a(裏面22b)に沿って離れている。詳細には、軸方向から見た場合に、被押圧部22nの周方向の一方側(図6では右側(回入側))に、空間28Aが位置されている。また、被押圧部22nの周方向の他方側(図6では左側(回出側))に、空間28Bが位置されている。被押圧部22nは、裏板22において、押圧部15aと軸方向に重なる部分である。詳細には、本実施形態では、被押圧部22nは、裏板22において、押圧部15aと軸方向にシム40を介して重なる部分である。シム40が設けられていない場合は、被押圧部22nは、裏板22において、押圧部15aと軸方向に直接重なる部分である。
図10は、他方のブレーキパッド30とディスクロータ2との断面図である。図11は、他方のブレーキパッド30の斜視図であって、ライニング31側から見て示す図である。図12は、他方のブレーキパッド30の斜視図であって、裏板32側から見て示す図である。図13は、他方のブレーキパッド30の正面図である。
図10〜13に示されるように、ブレーキパッド30は、ディスクロータ2と軸方向に面するライニング31と、ライニング31に対してディスクロータ2の反対側に設けられライニング31が固定された裏板32と、裏板32に支持された壁37と、を備えている。また、ブレーキパッド30には、ディスクロータ2とライニング31との摩擦によって生じた摩耗粉50を収容可能な空間38A,38B,38Cが設けられている。なお、図10,13では、壁37は、太線で示されている。
ブレーキパッド30、ライニング31および裏板32は、それぞれ、長手方向LD2(図13の左右方向)に長く、短手方向WD2(図13の上下方向)に短い形状を有している。長手方向LD2は、ブレーキパッド30のディスクブレーキ1(車両)への装着状態で、周方向の接線方向に略沿っている。また、短手方向WD2は、ブレーキパッド30のディスクブレーキ1(車両)への装着状態における軸方向および長手方向LD2と直交している。また、厚さ方向TD2は、ブレーキパッド30のディスクブレーキ1(車両)への装着状態で、軸方向に沿うとともに、長手方向LD2および短手方向WD2と直交している。短手方向WD2は、裏板32の固定面32aと平行である。また、厚さ方向TD2は、ブレーキパッド30のディスクブレーキ1(車両)への装着状態で、軸方向に沿うとともに、長手方向LD2および短手方向WD2と直交している。
図14は、他方のブレーキパッド30のライニング31の正面図である。図10,11,13,14に示されるように、ライニング31は、ディスクロータ2に沿って延びた板状に形成されている。ライニング31は、ディスクロータ2と軸方向に面する摩擦面31aと、ブレーキパッド30の厚さ方向TD2における摩擦面31aの反対側の裏面31b(図10)と、を有している。また、図14に示されるように、ライニング31は、回入側端部31qと、回出側端部31rと、径方向外側端部31sと、径方向内側端部31tと、を有している。回入側端部31qは、ライニング31の長手方向LD2の一方側の端部である。回出側端部31rは、ライニング31の長手方向LD2の他方側の端部である。径方向外側端部31sは、ライニング31の短手方向WD2の一方側の端部である。径方向内側端部31tは、ライニング31の短手方向WD2の他方側の端部である。摩擦面31aは、第三面の一例であり、裏面31bは、第二面の一例である。
また、ライニング31には、複数の孔31d,31eが設けられている。孔31d,31eは、摩擦面31aと裏面31bとに渡って設けられ、摩擦面31aと裏面31bとに開口している。すなわち、孔31d,31eは、軸方向にライニング31を貫通している。孔31d,31eは、径方向に延びた長孔状に形成されている。孔31d,31eは、周方向に互いに間隔をあけて設けられている。孔31d,31eは、回入側端部31qと回出側端部31rとの中間部分に設けられている。孔31eは、孔31dの回出側に設けられている。
ライニング31では、摩擦面31aが、回転するディスクロータ2の制動面と相対的に摺動して摩擦力を発生する。
図15は、他方のブレーキパッド30の裏板32の背面図である。図10,12,13,15に示されるように、裏板32は、ディスクロータ2に沿った板状に形成されている。裏板32は、裏面31bと重ねられライニング31が固定された固定面32aと、ブレーキパッド30の厚さ方向TD2における固定面32aの反対側の裏面32bと、を有している。固定面32aは、第一面の一例である。
また、図15に示されるように、裏板32は、回入側端部32qと、回出側端部32rと、径方向外側端部32sと、径方向内側端部32tと、を有している。回入側端部32qは、裏板32の長手方向LD2の一方側の端部である。回出側端部32rは、裏板32の長手方向LD2の他方側の端部である。径方向外側端部32sは、裏板32の短手方向WD2の一方側の端部である。径方向内側端部32tは、裏板32の短手方向WD2の他方側の端部である。裏板32は、金属材料や合成樹脂材料によって構成されている。
図10,13等に示されるように、固定面32aに固定されたライニング31は、裏板32の外周端部、すなわち回入側端部32q、回出側端部32r、径方向外側端部32s、および径方向内側端部32tから離間して配置されている。すなわち、裏板32の外周部は、ライニング31から張り出している。裏板32におけるライニング31から回入側に張り出した部分は、回入側張出部32uを構成し、裏板32におけるライニング31から回出側に張り出した部分は、回出側張出部32vを構成している。回入側張出部32uおよび回出側張出部32vは、それぞれ、固定面32aの一部および裏面32bの一部を含む。
また、図10,13,15に示されるように、裏板32には、裏面32bから固定面32a側に凹んだ凹部32g,32h,32iが設けられている。凹部32gの一部は、回入側張出部32uに位置され、凹部32hの全体は、回入側張出部32uと回出側張出部32vとの間に位置され、凹部32iは、一部が回出側張出部32vに位置されている。
図10,15に示されるように、裏板32には、複数の孔32c〜32fが設けられている。孔32c〜32fは、径方向に延びた長孔状に形成されている。孔32c〜32fは、周方向に互いに間隔をあけて設けられている。孔32cは、裏板32の中央部と回入側端部32qとの間に設けられている。孔32fは、裏板32の中央部と回出側端部32rとの間に設けられている。孔32d,32eは、孔32cと孔32fとの間に設けられている。すなわち、孔32d,32eは、回入側端部32qと回出側端部32rとの中間部に設けられている。孔32eは、孔32dの回出側に設けられている。
図10に示されるように、孔32cは、回入側張出部32uの固定面32aと、凹部32gの底面と、に渡って設けられ、固定面32aと凹部32gとに開口している。
また、孔32d,32eは、固定面32aと、凹部32hの底面と、に渡って設けられ、固定面32aと凹部32hとに開口している。また、孔32d,32eは、その全体がライニング31の孔31d,31eと軸方向に重なっており、孔31d,31eと通じている。すなわち、裏板32の孔32d,32eおよびライニング31の孔31d,31eは、それぞれ、互いに接続されて一つの孔33B,33Cを構成している。
また、孔32fは、回出側張出部32vの固定面32aと、凹部32iの底面と、に渡って設けられ、固定面32aと凹部32iとに開口している。
図15に示されるように、裏板32の周方向の両端部には、周方向に突出した一対の突出部32mが設けられている。突出部32mは、軸方向に移動可能にマウンティング11に支持されている。また、裏板32には、シム40(図2)が裏面32bに重ねられた状態で取り付けられている。
図10,12に示されるように、裏板32には、凹部32g,32h,32iを覆うカバー35A,35B,35Cが設けられている。凹部32g,32h,32iのうちカバー35A,35B,35Cに覆われた部分は、摩耗粉50を収容する室34A,34B,34C(図10)を構成している。すなわち、室34A,34B,34Cは、凹部32g,32h,32iの底面とカバー35A,35B,35Cとの間の空間である。
室34A,34B,34Cは、周方向に互いに間隔をあけて位置されている。室34Bは、室34Aの回出側に設けられ、室34Cは、室34A,34Bの回出側に設けられている。すなわち、室34Aと室34Cとの間に室34Bが設けられている。室34Aは、孔32cと通じている。室34Bは、孔33B,33Cと通じている。すなわち、一つの室34Bに、複数の孔33B,33Cが通じている。また、室34Cは、孔32fと通じている。各室34A,34B,34Cの体積(容積)は、当該室34A,34B,34Cに通じた孔32c,32f,33B,33Cの合計体積よりも大きい。また、室34Cの体積は、室34Aの体積よりも大きい。これは、回出側に摩耗粉50が溜まりやすいためである。室34Aは、第一室の一例であり、室34Cは、第二室の一例である。
カバー35A,35B,35Cは、ネジや爪等の結合部によって、裏板32に着脱可能に取り付けられている。すなわち、カバー35A,35B,35Cは、室34A,34B,34Cをブレーキパッド30外に開放する着脱可能な蓋を兼ねている。なお、図15では、カバー35A,35B,35Cが取り外された状態の裏板32が示されている。
また、カバー35A,35B,35Cは、フィルタ36A,36B,36Cを含んでいる。フィルタ36A,36B,36Cは、室34A,34B,34Cからブレーキパッド30外への流体の流出を許容し、室34A,34B,34Cからブレーキパッド30外への摩耗粉50の流出を制限する。上記流体は、少なくとも空気を含む。なお、上記流体に、空気および液体(例えば水等)が含まれていてもよい。フィルタ36A,36B,36Cには、例えば摩耗粉50の径未満の大きさの複数の孔(不図示)が設けられており、当該孔は、排気口および排水口として機能する。フィルタ36A,36B,36Cは、例えば、金属メッシュ部材によって構成されうる。カバー35A,35B,35Cは、フィルタ36A,36B,36Cを支持する支持部材を含んでいてもよい。
図10〜13に示されるように、壁37は、ライニング31の外周端部、すなわち回入側端部31q、回出側端部31r、径方向外側端部31s、および径方向内側端部31tを囲繞した状態で、裏板32に支持されている。
壁37は、壁27と同様に、帯状のシート部材が閉形状(無端状)をなすように曲げられて構成されている。すなわち、壁37は、シート状(フィルム状)に構成された部材であって、ライニング31および裏板32とは別部材である。このような構成の壁37は、可撓性を有している。シート部材は、例えば、アラミドペーパーである。また、壁37は、例えば、難燃性材料を含む。難燃性材料としては、例えば、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等を挙げることができる。
図10〜13に示されるように、壁37は、裏板32の外周端部に固定された固定部37aと、ライニング31の外周端部を囲繞した囲繞部37bと、を有している。
固定部37aは、裏板32の外周端部(回入側端部32q、回出側端部32r、径方向外側端部32s、径方向内側端部32t)に重ねられた状態で、裏板32の外周端部に接着によって固定されている。なお、裏板32に対する壁37の固定は、接着に限られない。例えば、壁37は、ネジ等の結合具によって裏板32に固定されてもよい。
囲繞部37bは、固定部37aからディスクロータ2側に、軸方向に沿って延びている。囲繞部37bは、回入側部位37cと、回出側部位37dと、径方向外側部位37eと、径方向内側部位37fと、を有している。
回入側部位37cは、ライニング31の回入側端部31qから、周方向の一方側(回入側)、すなわち長手方向LD2の一方側、に隙間33Eをあけて設けられている。回入側部位37cの一部は、裏板32の回入側張出部32uの固定面32a上に配置されている。隙間33Eは、固定面32a上に形成され、ディスクロータ2に向けて開口している。また、隙間33Eは、裏板32の孔32cと通じている。すなわち、孔32cは、隙間33Eに開口している。
回出側部位37dは、ライニング31の回出側端部31rから、周方向の他方側(回出側)、すなわち長手方向LD2の他方側、に隙間33Fをあけて設けられている。回出側部位37dの一部は、裏板32の回出側張出部32vの固定面32a上に配置されている。隙間33Fは、固定面32a上に形成され、ディスクロータ2に向けて開口している。また、隙間33Fは、裏板32の孔32fと通じている。すなわち、孔32fは、隙間33Fに開口している。
径方向外側部位37eは、ライニング31の径方向外側端部31sから、径方向外側、すなわち短手方向WD2の一方側、に隙間33Gをあけて設けられている。隙間33Gは、固定面32a上に形成され、ディスクロータ2に向けて開口している。
径方向内側部位37fは、ライニング31の径方向内側端部31tから、径方向内側、すなわち短手方向WD2の他方側、に隙間33Hをあけて設けられている。隙間33Hは、固定面32a上に形成され、ディスクロータ2に向けて開口している。
隙間33E、隙間33F、隙間33G、および隙間33Hは、互いに接続されている。
また、図10,11に示されるように、壁37の囲繞部37bは、ライニング31の摩擦面31aに対してディスクロータ2側に突出した突出部37iを有している。突出部37iは、壁37のディスクロータ2側の端部である先端部37jを含む。突出部37iは、囲繞部37bの各部、すなわち回入側部位37c、回出側部位37d、径方向外側部位37e、および径方向内側部位37fに渡って設けられている。詳細には、突出部37iは、ディスクブレーキ1の非制動状態で、ライニング31の摩擦面31aに対してディスクロータ2側に突出しており、先端部37jがディスクロータ2に接触している。すなわち、壁37は、裏板32からライニング31の厚さ方向TD2に沿って摩擦面31a以上に突出している。突出部37iの突出量は、例えば、0.5mmである。図10では、理解のために、突出部37iの突出量が誇張されている。なお、突出部37iの突出量は、0.5mm以外であってもよい。
また、図12に示されるように、壁37には、一対の幅広部37gが設けられている。一対の幅広部37gは、周方向に互いに間隔をあけて設けられている。回入側の幅広部37gは、回入側部位37cを含み、回出側の幅広部37gは、回出側部位37dを含む。各幅広部37gは、固定部37aに対してディスクロータ2の反対側に突出した部分を有し、壁37の他の部分よりも軸方向の幅が広くなっている。各幅広部37gには、貫通孔37hが設けられている。回入側の幅広部37gの貫通孔37hには、回入側張出部32uが入れられ、回出側の幅広部37gの貫通孔37hには、回出側張出部32vが入れられている。
上記構成の壁37は、ディスクブレーキ1が非制動状態の場合には、先端部37jがディスクロータ2に接触している(図10)。この状態では、例えば、ライニング31の摩擦面31aは、ディスクロータ2から離間した状態またはディスクロータ2に接触した状態となる。図10では、ライニング31の摩擦面31aがディスクロータ2から離間した状態が示されている。ディスクブレーキ1がこの非制動状態から制動状態に変化すると、ライニング31がディスクロータ2に押し付けられるとともに、壁37の先端部37jがディスクロータ2に押し付けられディスクロータ2に引きずられて、壁37が撓む(弾性変形する)。詳細には、このとき、壁37の囲繞部37b(回入側部位37c、回出側部位37d、径方向外側部位37e、径方向内側部位37f、突出部37i)が撓む。
図10に示されるように、空間38Aは、裏板32の孔32cおよび室34Aを含む。よって、空間38Aは、裏板32の固定面32aに開口するとともに、隙間33Eと通じている。空間38Bは、ライニング31の孔31d,31e、裏板32の孔32d,32e、および室34Bを含む。よって、空間38Bは、ライニング31の摩擦面31aに開口している。空間38Cは、裏板32の孔32fおよび室34Cを含む。よって、空間38Cは、裏板32の固定面32aに開口しているとともに、隙間33Fと通じている。空間38A,38B,38Cは、ディスクロータ2と摩擦面31aとの摩擦によって生じた摩耗粉50を収容可能である。摩耗粉50は、孔31d,31e,32c〜32f、および室34A,34B,34Cのいずれにも収容されうる。
また、図13に示されるように、本実施形態では、軸方向、すなわち厚さ方向TD2から見た場合に、ブレーキパッド30をディスクロータ2に押し付ける爪12bの押圧部12cによって押圧される裏板32の被押圧部32nと、空間38A,38B,38Cとが摩擦面31a(裏面32b)に沿って離れている。詳細には、軸方向から見た場合に、以下のように各部が位置されている。空間38Aは、回入側の被押圧部32n(図13では左側)の回入側(図13では左側)に位置されている。空間38Bは、一対の被押圧部32nの間に位置されている。空間38Cは、回出側の被押圧部32n(図13では右側)の回出側(図13では右側)に位置されている。被押圧部32nは、裏板32において、押圧部12cと軸方向に重なる部分である。詳細には、本実施形態では、被押圧部32nは、裏板32において、押圧部12cと軸方向にシム40を介して重なる部分である。シム40が設けられていない場合は、被押圧部32nは、裏板32において、押圧部12cと軸方向に直接重なる部分である。
以上の構成のディスクブレーキ1では、図3,10に示されるように、回転するディスクロータ2とライニング21,31の摩擦面21a,31aとの摩擦によって生じた摩耗粉50は、隙間23E,23F,33E,33Fや孔21d,21e,22c,22f,31d,31e,32c,32fに入る。また、隙間23E,23F,33E,33Fや孔21d,21e,22c,22f,31d,31e,32c,32fに入った摩耗粉50の少なくとも一部は、室24A,24B,34A,34B,34Cに入り、室24A,24B,34A,34B,34Cに収容される。
また、ディスクロータ2とライニング21,31との間に位置した摩耗粉50は、ディスクロータ2とともにディスクロータ2の回転方向に移動する。このようなディスクロータ2上の摩耗粉50は、車両の前進状態では、壁27,37の回出側部位27d,37dによって掻き取られ、隙間23F,33Fに貯められたり、隙間23F,33Fから室24B,34Cに移動したりする。また、車両の後進状態では、ディスクロータ2上の摩耗粉50は、壁27,37の回入側部位27c,37cによって掻き取られ、隙間23E,33Eに貯められたり、隙間23E,33Eから室24A,34Aに移動したりする。このとき、壁27,37は、回転するディスクロータ2の制動面に相対的に摺動することにより摩耗する。なお、壁27,37は、ライニング21,31に比べて摩耗し難いよう構成されている。
また、ディスクブレーキ1では、例えば、流体(空気や液体)が、隙間23E,23F,33E,33Fや孔21d,21e,22c,22f,31d,31e,32c,32fから室24A,24B,34A,34B,34Cに入り、フィルタ26A,26B,36A,36B,36Cを通過してブレーキパッド20,30の外へ流れる。このように流れる流体によって、摩耗粉50が室24A,24B,34A,34B,34Cの奥に向かって動かされる。
以上のように、本実施形態では、ブレーキパッド20,30の裏板22,32は、固定面22a,32a(第一面)を有している。ライニング21,31は、固定面22a,32aに重ねられた裏面21b,31b(第二面)と、ブレーキパッド20,30の厚さ方向TD1,TD2における裏面21b,31bの反対側の摩擦面21a,31a(第三面)と、を有している。壁27,37は、ライニング21,31の長手方向LD1,LD2の端部である回入側端部21q,31qおよび回出側端部21r,31rから長手方向LD1,LD2に隙間23E,23F,33E,33Fをあけて設けられ、短手方向WD1,WD2に延びるとともに、裏板22,32から、ライニング21,31の厚さ方向TD1,TD2に沿って摩擦面21a,31a以上に突出し、可撓性を有している。また、固定面22a,32aと摩擦面21a,31aとの少なくとも一方に開口した空間28A,28B,38A,38B,38Cが設けられている。
このような構成によれば、例えば、ディスクロータ2とライニング21,31との摩擦によって生じた摩耗粉50を、壁27,37により捕捉し、空間28A,28B,38A,38B,38C内に導入することにより、摩耗粉50の飛散を抑制することができる。また、壁27,37が、裏板22,32からライニング21,31の厚さ方向TD1,TD2に沿って摩擦面21a,31aよりも突出した構成であっても、壁27,37がディスクロータ2に押し付けられて撓むことにより、壁27,37およびライニング21,31の両方がディスクロータ2と接触する。よって、製造においては、壁27,37の裏板22,32からの突出量が、摩擦面21a,31a以上になるように誤差を管理すればよいので、製造の手間の増大を抑制することができる。
また、本実施形態では、壁27,37が可撓性を有しているので、壁27,37がディスクロータ2に押し付けられてディスクロータ2に引きずられても、壁27,37が撓むので、壁27,37の応力が大きくなるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、制動状態および非制動状態の両方で、壁27,37がディスクロータ2の制動面に接触しているので、制動状態および非制動状態の両方で摩耗粉50の飛散を抑制することができる。
また、本実施形態では、例えば、壁27,37は、ライニング21,31の摩擦面21a,31aよりも突出している。
このような構成によれば、例えば、壁27,37が摩擦面21a,31aよりも突出していない構成に比べて、摩耗粉50の飛散をより抑制することができる。
また、本実施形態では、例えば、壁27,37は、回入側端部21q,31qおよび回出側端部21r,31rから、長手方向LD1,LD2に隙間23E,23F,33E,33Fをあけて設けられ、裏板22,32には、固定面22a,32aに開口するとともに、隙間23E,23F,33E,33Fに開口した空間28A,28B,38A,38Cが設けられている。
このような構成によれば、例えば、壁27,37により捕捉した摩耗粉50をライニング21,31と壁27,37との間の隙間23E,23F,33E,33Fを介して空間28A,28B,38A,38C内により効率良く導入することができる。
また、本実施形態では、壁27,37は、車両の前進状態での回出側に設けられている。このような構成によれば、例えば、車両の前進状態での制動において発生する摩耗粉50を壁27,37によって捕捉することができる。
また、本実施形態では、例えば、ライニング21,31には、摩擦面21a,31aに開口した空間28A,28B,38Bが設けられている。
このような構成によれば、例えば、摩耗粉50をディスクロータ2と面するライニング21,31の摩擦面21a,31aから空間28A,28B,38B内により効率良く導入することができる。
また、本実施形態では、例えば、ライニング21,31の厚さ方向TD1,TD2から見た場合に、キャリパ3の押圧部12c,15aによって押圧される裏板22,32の被押圧部22n,32nと空間28A,28B,38A,38Cとが摩擦面21a,31aに沿って離れている。
このような構成によれば、例えば、ブレーキパッド20,30のうち空間28A,2428B,38A,38B,38Cが設けられた部位とずれたより剛性の高い部位をキャリパ3の押圧部12c,15aによって押圧することができるので、ブレーキパッド20,30の変形を抑制することができ、ひいてはブレーキパッド20,30の耐久性を向上することができる。
また、本実施形態では、例えば、空間28A,28B,38A,38Cは、摩耗粉50を収容する室24A,34A(第一室)と、摩耗粉50を収容し、それぞれ室24A,34Aの回出側に設けられ室24A,34Aよりも体積が大きい室24B,34C(第二室)と、を有する。
このような構成によれば、例えば、車両の前進状態で発生する摩耗粉50をより収容することができる。
また、本実施形態では、ブレーキパッド20,30は、室24A,24B,34A,34B,34Cからブレーキパッド20,30外への流体の流出を許容し、室24A,24B,34A,34B,34Cからブレーキパッド20,30外への摩耗粉50の流出を制限するフィルタ26A,26B,36A,36B,36Cを備えている。
このような構成によれば、例えば、流体が、室24A,24B,34A,34B,34Cに入り、フィルタ26A,26B,36A,36B,36Cを通過してブレーキパッド20,30の外へ流れる。よって、当該構成によれば、例えば、流体によって、摩耗粉50が24A,24B,34A,34B,34Cに運ばれやすい。また、室24A,24B,34A,34B,34Cに入った水が、フィルタ26A,26B,36A,36B,36Cから排出されるので、室24A,24B,34A,34B,34Cに錆が発生することを抑制することができる。
また、本実施形態では、ブレーキパッド20,30は、裏板22,32に設けられ、室24A,24B,34A,34B,34Cをブレーキパッド20,30外に開放する着脱可能なカバー25A,25B,35A,35B,35Cを備えている。
このような構成によれば、例えば、カバー25A,25B,35A,35B,35Cを取り外すことにより、室24A,24B,34A,34B,34Cをブレーキパッド20,30外に開放することができる。よって、本実施形態のブレーキパッド20,30によれば、例えば、カバー25A,25B,35A,35B,35Cを取り外すことにより、室24A,24B,34A,34B,34C内の摩耗粉50を容易に除去することができる。
<変形例>
図16は、変形例の壁27A,27Bの一部の図である。図17は、壁27A,27Bの一部の分解図である。本変形例では、壁27に代えて、互いに重ねられた二つの壁27A,27Bが設けられている。二つの壁27A,27Bは、それぞれの固定部27a(図16,17では不図示)が接着等によって互いに固定されている。
二つの壁27A,27Bの先端部27jには、それぞれ、凸部27mA,27mBと、切欠27nA,27nBとが交互に設けられている。そして、壁27Aの凸部27mAと壁27Bの切欠27nBとが重なり、壁27Aの切欠27nAと壁27Bの凸部27mBとが重なるよう二つの壁27A,27Bが重ねられている。
以上の構成によれば、各壁27A,27Bに切欠27nA,27nBが設けられているので、壁27A,27Bが撓みやすい。また、壁27Aの凸部27mAと壁27Bの切欠27nBとが重なり、壁27Aの切欠27nAと壁27Bの凸部27mBとが重なっているので、隙間23E〜23H内の摩耗粉50が切欠27nA,27nBから隙間23E〜23H外へ移動することを抑制できる。なお、本変形例の構成を壁37に適用してもよい。
また、別の一例としては、上述した実施形態の壁27,37に厚さ方向TD1,TD2に切り込みを入れることがあげられる。
請求項1の「第一面と第三面との少なくとも一方に開口した空間」には、ライニングと壁との間の隙間を含む。
なお、以上の説明で、構成要素に「第一」、「第二」等の数字を付したが、これらの数字は構成要素を区別するために便宜上、付したものであり、優先度や順位を示すものではない。
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
例えば、壁は、ライニングの回入側端部および回出側端部にライニングの長手方向に隣接して設けられていてもよい。また、壁は、ライニングの第三面から突出していなくてもよい。
例えば、室や孔の個数は、上記実施形態以外の個数であってもよい。
また、カバーは、裏板に固定されていてもよいし、裏板と連続して形成されていてもよい。
また、フィルタは、設けられていなくてもよい。すなわち、カバーに排気口や排水口として機能する孔が設けられていなくてもよい。
また、室は、ライニングに設けられていてもよいし、ライニングと裏板とに渡って設けられていてもよい。
また、互いに通じるライニングの孔と裏板の孔とは、それらの一部だけが軸方向に重なって互いに通じていてもよい。
また、ディスクブレーキは、押圧部材としてのピストンが対向配置され、対向配置されたピストンが一対のブレーキパッド用パッド組立体をディスクロータに押し付ける構成の所謂対向ピストン型であってもよい。
また、壁の囲繞部が蛇腹状に構成され、囲繞部が軸方向に伸縮可能であってもよい。
また、非制動状態では、壁がディスクロータから離間する構成であってもよい。このような構成によれば、非制動状態では、壁がディスクロータを摺動する場合に発生しやすい摺動音が発生しないという利点がある。また、この場合の壁とディスクロータとの間の隙間を、摩耗粉が通過できない程度の隙間とすることにより、非制動状態での摩耗粉の飛散を抑制することができる。