本発明に係る一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示す本実施形態のディスクブレーキ1は、自動車等の車両に取り付けられるものであり、制動対象となる図示略の車輪とともに回転するディスク10に摩擦抵抗を付与して車輪の回転を制動するものである。なお、以下においては、特に記載がなければ車両への取り付け状態をもって説明し、その際のディスク10の径方向をディスク径方向と称し、ディスク10の軸方向をディスク軸方向と称し、ディスク10の回転方向をディスク回転方向と称す。
ディスクブレーキ1は、上記したディスク10と、このディスク10の外周側をディスク軸方向に跨いで車両の非回転部分に取り付けられる取付部材11と、ディスク10の軸方向の両側面に対向配置されて取付部材11に支持される一対の摩擦パッド12,12と、取付部材11に摺動可能に設けられて、一対の摩擦パッド12,12のうちの一方を押圧するピストン13を有するキャリパ14とを備えている。また、ディスクブレーキ1は、図2に示すように、取付部材11に取り付けられて、各摩擦パッド12,12をディスク径方向に付勢する一対のパッドスプリング16,16を備えている。
取付部材11は、鏡面対称の形状をなす一体成形品であり、図3に示すように、一対のディスクパス部20,20と、取付ベース部21と、アウタビーム部22とを有している。
一対のディスクパス部20,20は互いに離間している。取付ベース部21は、一対のディスクパス部20,20を一側で連結する。アウタビーム部22は、一対のディスクパス部20,20を他側で連結する。取付ベース部21には、一対のディスクパス部20,20側の両端位置に一対の取付穴24,24が形成されており、取付部材11は、これら取付穴24,24に挿通される締結部材によって車両の非回転部分に取り付けられることになる。
車両の非回転部分に取り付けられた状態で、取付部材11は、一対のディスクパス部20,20が、ディスク10の外周側をディスク軸方向に跨ぐことになり、互いにディスク回転方向に離間して配置される。また、車両の非回転部分に取り付けられた状態で、取付部材11は、取付ベース部21およびアウタビーム部22が、一対のディスクパス部20,20のディスク径方向の内側位置で、ディスク回転方向に延在して、ディスク10に対し軸方向両側に配置される。ここで、取付ベース部21はディスク10よりも車両の車幅方向の内側(以下、インナ側と称す)に配置される。また、アウタビーム部22はディスク10よりも車両の車幅方向の外側(以下、アウタ側と称す)に配置される。
一対のディスクパス部20,20には、それぞれのインナ側にディスク径方向に延びるトルク受部26が設けられており、一対のディスクパス部20,20のインナ側のトルク受部26,26の相互対向側には、凹部27,27が形成されている。一方のトルク受部26に形成された凹部27は他方のトルク受部26から離れる方向に凹んでおり、この他方のトルク受部26に形成された凹部27は前記一方のトルク受部26から離れる方向に凹んでいる。つまり、インナ側の凹部27,27は互いにディスク回転方向に沿って離れる方向に凹んでいる。一対のディスクパス部20,20には、それぞれのアウタ側にもインナ側と同様のトルク受部26が設けられており、一対のディスクパス部20,20のトルク受部26,26の相互対向側にも、ディスク回転方向に沿って互いに離れる方向に凹むアウタ側の凹部27,27が形成されている。
一対のディスクパス部20,20には、それぞれ、インナ側のトルク受部26とアウタ側のトルク受部26とを連結させる連結部28が設けられている。一方のディスクパス部20の連結部28は、ディスク回転方向一側のインナ側およびアウタ側のトルク受部26,26のディスク径方向外端部同士を連結している。他方のディスクパス部20の連結部28は、ディスク回転方向他側のインナ側およびアウタ側のトルク受部26,26のディスク径方向外端部同士を連結している。連結部28,28は、ディスク10とディスク軸方向の位置を重ね合わせてディスク10よりもその径方向外側に配置される。
一対の連結部28,28には、それぞれの相互対向側に、ディスク回転方向に沿って凹む固定穴29が形成されている。一方の連結部28に形成された固定穴29は他方の連結部28から離れる方向に凹んでおり、図示は略すが、この他方の連結部28に形成された固定穴29は前記一方の連結部28から離れる方向に凹んでいる。
一対のディスクパス部20,20には、ディスク径方向の外端部に、インナ側からアウタ側の途中位置まで一対の嵌合穴31,31が形成されている。一方の嵌合穴31は一方の連結部28を貫通しており、他方の嵌合穴31は他方の連結部28を貫通している。
図2に示す一対のパッドスプリング16は、共通の構成を有する共通部品である。図4〜図6に示すパッドスプリング16は、一枚の板材からプレス成形により形成されるものであり、図4,図5に示すように、鏡面対称の形状をなしている。パッドスプリング16は、一対のパッド支持部41,41と、一対のパッド支持部41,41を接続すると共に一対のパッド支持部41,41同士を互いに離間する方向に付勢する接続部42と、を有している。
一対のパッド支持部41,41は、それぞれが、接続部42側の外端板部51と、外端板部51の接続部42とは反対側の端部から外端板部51に垂直に延出する外側支持板部52と、外側支持板部52の外端板部51とは反対側の端部から外側支持板部52に垂直に外端板部51から離れる方向に延出する中間板部53と、を有している。
また、一対のパッド支持部41,41は、それぞれが、中間板部53の外側支持板部52とは反対側の端部から中間板部53に垂直に外側支持板部52と同側に延出する内側支持板部54と、内側支持板部54の中間板部53とは反対側の端部から内側支持板部54に垂直に中間板部53から離れる方向に延出する内側板部55と、内側板部55の内側支持板部54とは反対側の縁部から内側支持板部54および中間板部53から離れる方向に斜めに延出する内端板部56とを有している。一対のパッド支持部41,41は、それぞれ、連続する外側支持板部52と中間板部53と内側支持板部54とが凹状部57となっている。
一対のパッド支持部41,41のそれぞれの内側支持板部54の外側支持板部52側の面54a(パッド支持面)には、その平坦なベース面部58から外側支持板部52側に突出する突起59が千鳥状に配置されて多数形成されている。一方のパッド支持部41の突起59は、ベース面部58から他方のパッド支持部41の方向に、この他方のパッド支持部41に近づくほど外側支持板部52に近づくように斜めに切り起こされている。よって、これら突起59は、ベース面部58側の基端部を中心に揺動する。この他方のパッド支持部41の突起59は、ベース面部58から前記一方のパッド支持部41の方向に、この一方のパッド支持部41に近づくほど外側支持板部52に近づくように斜めに切り起こされている。よって、これら突起59も、ベース面部58側の基端部を中心に揺動する。
接続部42は、一方のパッド支持部41の外端板部51の外側支持板部52とは反対側の端部と、他方のパッド支持部41の外端板部51の外側支持板部52とは反対側の端部とから相互近接側に延出する一対の延出板部61,61と、一対の延出板部61,61の相互近接側の端部からこれらに垂直に、一対のパッド支持部41,41とは反対側に延出する一対の規制部62,62と、を有している。一対の延出板部61,61は、図6にも示すように一対の外端板部51,51からこれらに対する一対の外側支持板部52,52の延出方向とは反対方向に斜めに延出している。
また、接続部42は、図5に示すように一対の規制部62,62の一対の延出板部61,61とは反対側の端部同士を連結させる付勢部63と、図4に示すように付勢部63の一対の規制部62,62とは反対側の端部から突出する爪状の固定部64とを有している。図7(a)に示すように、一対の規制部62,62は互いに平行であり、付勢部63は円筒を切断して両端部を一対の規制部62,62に繋げた形状をなしている。
図4,図5に示すようにパッドスプリング16が自然状態にあるとき、一対の規制部62,62は、図7(a)に示すように互いに所定距離離間している。この状態から、図7(b)に示すように一対の規制部62,62が互いに近づくと付勢部63が弾性変形して一対の規制部62,62、つまり図4,図5に示すようにこれらに一対の延出板部61,61を介して繋がる一対のパッド支持部41,41を互いに離間する方向に付勢する。つまり、一対のパッド支持部41,41は接続部42によってバネ接続されている。一対の規制部62,62は、図7(b)に示すように互いに当接すると、図4,図5に示す一対のパッド支持部41,41のそれ以上の近接を規制する。図5に示すように、固定部64は、付勢部63から、一対の延出板部61,61の延出方向と同じ方向に延出している。固定部64は、図5に示すようにパッドスプリング16の幅方向の中央位置に形成されている。
図2に示すように、一方のパッドスプリング16は、一方のディスクパス部20に取り付けられる。その際に、接続部42を一対のパッド支持部41,41よりもディスク径方向外側に配置した状態で、一方のパッド支持部41の凹状部57を、一方のトルク受部26の凹部27に嵌合させ、他方のパッド支持部41の凹状部57を、他方のトルク受部26の凹部27に嵌合させると共に、固定部64を固定穴29に嵌合させる。これにより、一方のパッドスプリング16は、一対のパッド支持部41,41がディスク10の両面側に配置される状態となる。固定部64はディスク10の外周側にあり、固定穴29に嵌合すると、取付部材11にディスク軸方向に移動不可に固定される。その結果、固定部64はディスク10に対してもディスク軸方向に移動不可となる。これに対し、一対のパッド支持部41,41は、ディスクパス部20の一対の凹状部57に対してディスク軸方向に摺動可能となっている。一方のパッドスプリング16は、この固定部64の一点のみで取付部材11に固定されている。他方のパッドスプリング16も、他方のディスクパス部20に同様に取り付けられる。
そして、一対のパッドスプリング16,16の互いに反対向きに凹むインナ側の凹状部57,57にインナ側の摩擦パッド12がディスク軸方向に移動可能となるように支持される。同様に、一対のパッドスプリング16,16の互いに反対向きに凹むアウタ側の凹状部57,57にアウタ側の摩擦パッド12がディスク軸方向に移動可能となるように支持される。
インナ側の摩擦パッド12とアウタ側の摩擦パッド12とは、共通部品である。図2にインナ側を示すように、摩擦パッド12は、鏡面対象の形状をなしており、裏板71と、裏板71に貼着される図1に示すライニング72と、裏板71のライニング72とは反対側に取り付けられる図2に示すシム73を有している。裏板71は、ライニング72が貼着される主板部75と、主板部75の幅方向の両端部からこの幅方向に沿って互いに反対向きに突出する一対の耳部76,76とを有している。
そして、インナ側の摩擦パッド12は、その一部である一方の耳部76が一方のパッドスプリング16のインナ側の凹状部57に嵌合され、その一部である他方の耳部76が他方のパッドスプリング16のインナ側の凹状部57に嵌合される。すると、インナ側の摩擦パッド12は、一方の耳部76が、一方のパッドスプリング16の図4に示すインナ側の内側支持板部54の複数の突起59とインナ側の外側支持板部52とに挟持され、他方の耳部76が、他方のパッドスプリング16のインナ側の内側支持板部54の複数の突起59とインナ側の外側支持板部52とに挟持される。その際に、インナ側の摩擦パッド12は、図2に示すように主板部75が一方のパッドスプリング16のインナ側の内端板部56および他方のパッドスプリング16のインナ側の内端板部56に当接してディスク径方向外方に付勢される。
アウタ側の摩擦パッド12も、図示は略すが、同様に、その一部である一方の耳部76が、一方のパッドスプリング16のアウタ側の凹状部57に嵌合され、その一部である他方の耳部が他方のパッドスプリング16のアウタ側の凹状部57に嵌合される。すると、アウタ側の摩擦パッド12は、一方の耳部76が、一方のパッドスプリング16のアウタ側の内側支持板部54の複数の突起59とアウタ側の外側支持板部52とに挟持され、他方の耳部76が、他方のパッドスプリング16のアウタ側の内側支持板部54の複数の突起59とアウタ側の外側支持板部52とに挟持される。その際に、アウタ側の摩擦パッド12は、主板部75が一方のパッドスプリング16のアウタ側の内端板部56および他方のパッドスプリング16のアウタ側の内端板部56に当接してディスク径方向外方に付勢される。
ここで、耳部76は、上記のように内側支持板部54の複数の突起59と外側支持板部52とに挟持されることにより、複数の突起59に引っ掛かって摩擦係数が高くなる。よって、耳部76は、パッド支持部41に対する位置ずれが抑制される状態となり、所定値を超える力で押されない限りパッド支持部41と一体に移動する状態になる。つまり、複数の突起59は、耳部76との摩擦係数を高める高摩擦部となっており、内側支持板部54の面54aは、耳部76との摩擦係数を高める高摩擦形状となっている。耳部76は、パッド支持部41の凹状部57に高い摩擦係数で強固に支持される。
以上により、一方のパッドスプリング16は、ディスク10の両面側に配置され、一対の摩擦パッド12,12のディスク回転方向一側の耳部76,76をそれぞれ支持する一対のパッド支持部41,41を有している。この一方のパッドスプリング16の接続部42は、これらのパッド支持部41,41を互いにディスク軸方向に離間させる方向に付勢する。他方のパッドスプリング16も、ディスク10の両面側に配置され、一対の摩擦パッド12,12のディスク回転方向他側の耳部76,76をそれぞれ支持する一対のパッド支持部41,41を有している。この他方のパッドスプリング16の接続部42は、これらのパッド支持部41,41を互いにディスク軸方向に離間させる方向に付勢する。
ここで、図2に示すように、内側支持板部54の面54aは、摩擦パッド12の耳部76をディスク径方向内側から支持するパッド支持面となり、支持する際に耳部76のディスク径方向内側の平坦な当接面76aに当接する。面54aは、図4,図5に示すように、複数の突起59が、ディスク軸方向においてディスク10とは反対側が基端側となってディスク10側に延出するように斜めに切り起こされている。このことから、面54aは、摩擦パッド12の当接面76aとの摩擦力が、ディスク10に近づく方向よりもディスク10から離れる方向の方が大きくなっている。面54aは、摩擦パッド12の当接面76aとの最大静止摩擦力が、接続部42の付勢力以上、かつ、ピストン13の最大押圧力未満となっている。
図2に示す取付部材11の一対の嵌合穴31,31には、図1に示すキャリパ14が一対のスライドピン90,90を摺動可能に嵌合させており、これにより、キャリパ14が取付部材11にディスク軸方向に摺動可能に支持されている。
キャリパ14は、ピストン13をディスク軸方向に摺動可能に支持してインナ側の摩擦パッド12のディスク10とは反対側に配置する有底筒状のシリンダ部91と、このシリンダ部91のディスク径方向における外側からディスク10の外周部を跨いで延出するブリッジ部92と、このブリッジ部92のシリンダ部91に対し反対側からアウタ側の摩擦パッド12のディスク10に対し反対側に対向するように延出する爪部93とを有するキャリパ本体94を有している。
ブレーキペダルによるブレーキ操作でブレーキ液圧がシリンダ部91とピストン13との間に導入されると、ピストン13に液圧が作用してディスク10の方向への推進力が発生することになる。すると、ピストン13がディスク10の方向に移動することにより、インナ側の摩擦パッド12を取付部材11およびディスク10に対してディスク軸方向に移動させてディスク10に押圧する。その際に、インナ側の摩擦パッド12は、取付部材11のインナ側のトルク受部26,26に対して、一対のパッドスプリング16のそれぞれのインナ側のパッド支持部41,41と基本的に一体に摺動することになり、この摺動を接続部42の付勢部63が弾性変形して許容する。
また、この押圧の反力で、爪部93をディスク10側に移動させるようにキャリパ本体94がインナ側に移動してアウタ側の摩擦パッド12を爪部93で取付部材11およびディスク10に対してディスク軸方向に移動させてディスク10に押圧する。その際に、アウタ側の摩擦パッド12は、取付部材11のアウタ側のトルク受部26,26に対して、一対のパッドスプリング16のそれぞれのアウタ側のパッド支持部41,41と基本的に一体に摺動することになり、この摺動を接続部42の付勢部63が弾性変形して許容する。
この状態からブレーキ液圧が低下すると、ピストン13がディスク10から離れる。すると、一対のパッドスプリング16のそれぞれの付勢部63の付勢力によって、一方のパッドスプリング16の一対のパッド支持部41,41がディスク10から離れ、他方のパッドスプリング16の一対のパッド支持部41,41もディスク10から離れようとする。パッド支持部41のそれぞれの面54aは、摩擦パッド12の当接面76aとの最大静止摩擦力が、接続部42の付勢力以上となっていることから、インナ側の摩擦パッド12は、取付部材11のインナ側のトルク受部26,26に対して、一対のパッドスプリング16のそれぞれのインナ側のパッド支持部41,41と一体に摺動してディスク10から離れ、アウタ側の摩擦パッド12は、取付部材11のアウタ側のトルク受部26,26に対して、一対のパッドスプリング16のそれぞれアウタ側のパッド支持部41,41と一体に摺動してディスク10から離れる。このとき、一対のパッドスプリング16,16は、それぞれの接続部42が、固定部64において取付部材11に固定されており、ディスク軸方向の移動が規制されているため、固定部64を支点として一対のパッド支持部41,41が同様に、取付部材11に対しディスク軸方向の位置が一定であるディスク10から離れ、一対の摩擦パッド12,12をディスク10から同様に離す。
以上により、一対のパッドスプリング16,16は、一対の摩擦パッド12,12のディスク軸方向の移動に連動して、それぞれがディスク軸方向に伸縮する。
インナ側の摩擦パッド12のライニング72が摩耗すると、ピストン13による押圧時に、一対のパッドスプリング16のそれぞれの一対のパッド支持部41,41が近接するものの、接続部42の規制部62,62が当接して、それ以上の一対のパッド支持部41,41の近接方向への移動を規制する。すると、一対のパッドスプリング16,16のそれぞれのインナ側の面54a,54aは、インナ側の摩擦パッド12の当接面76a,76aとの最大静止摩擦力が、ピストン13の最大押圧力未満となっていることから、インナ側の摩擦パッド12が、ピストン13にピストン13の最大押圧力で押圧されることによって、支持された面54a,54aに対してディスク軸方向に移動して、ライニング72が摩耗した分、面54a,54aに対しディスク10に近づくようにずれて配置されることになる。上記のように、一対のパッドスプリング16,16のそれぞれの接続部42の規制部62,62は、ピストン13によるインナ側の摩擦パッド12の押圧時に、インナ側のパッド支持部41の移動量を規制する。
アウタ側の摩擦パッド12のライニング72が摩耗すると、爪部93による押圧時に、一対のパッドスプリング16のそれぞれの一対のパッド支持部41,41が近接するものの、接続部42の規制部62,62が当接して、それ以上の一対のパッド支持部41,41の近接方向への移動を規制する。すると、一対のパッドスプリング16,16のそれぞれのアウタ側の面54a,54aは、アウタ側の摩擦パッド12の当接面76a,76aとの最大静止摩擦力が、ピストン13の最大押圧力未満となっていることから、アウタ側の摩擦パッド12が、爪部93にピストン13の最大押圧力で押圧されることによって、支持された面54a,54aに対してディスク軸方向に移動して、ライニング72が摩耗した分、面54a,54aに対しディスク10に近づくようにずれて配置されることになる。上記のように、一対のパッドスプリング16,16のそれぞれの接続部42の規制部62,62は、ピストン13による爪部93を介したアウタ側の摩擦パッド12の押圧時に、アウタ側のパッド支持部41の移動量を規制する。
特許文献1に記載されたディスクブレーキは、そのパッドスプリングに、摩擦パッドに当接する当接部のディスク軸方向への移動量を規制する規制部が設けられている。このパッドスプリングは、ピストンに押圧される摩擦パッドに当接する当接部と、キャリパ本体の爪部に押圧される摩擦パッドに当接する当接部とを有しているが、両摩擦パッドに質量的な相違があると、パッドスプリング全体が取付部材に対しずれる等して、両摩擦パッドをディスクから同様に離すことができず、摩擦パッドの引き摺りを生じてしまう可能性がある。
これに対し、本実施形態は、パッドスプリング16が、ディスク10の両面側に配置され、一対の摩擦パッド12,12の耳部76,76を支持する一対のパッド支持部41,41と、一対のパッド支持部41,41同士を互いにディスク軸方向に離間させる方向に付勢する接続部42と、を有しており、接続部42が、ディスク10の外周側で取付部材11に固定される固定部64を有する構成となっている。このように、パッドスプリング16は、固定部64が取付部材11に固定されているため、その全体が取付部材11およびディスク10に対しディスク軸方向にずれることがない。よって、接続部42の付勢力で、固定部64を支点として一対のパッド支持部41,41をディスク10から同様に離すことができ、一対のパッド支持部41,41で支持する一対の摩擦パッド12,12をディスク10から同様に均等に離すことができる。したがって、一対の摩擦パッド12,12間に摩耗量の相違等に起因した質量的な相違があっても、摩擦パッド12の引き摺りを抑制することができる。
また、接続部42には、ピストン13による摩擦パッド12,12の押圧時に、パッド支持部41,41の移動量を規制する規制部62,62が設けられている。このため、摩擦パッド12,12のライニング72,72の摩耗時には、規制部62,62で移動が規制されたパッド支持部41,41に対して摩擦パッド12,12が移動して、ライニング72,72の摩耗に応じた分、ディスク10に近づくことができる。よって、ライニング72,72の摩耗時に、パッド支持部41,41に対して摩擦パッド12,12を良好に移動させることができる。
また、パッド支持部41,41は、摩擦パッド12,12を支持する面54a,54aが、摩擦パッド12,12の当接面76a,76aとの最大静止摩擦力が、接続部42の付勢力以上、かつ、ピストン13の最大押圧力未満となっている。これにより、接続部42の付勢力によってパッド支持部41,41がディスク10から離れる際には、摩擦パッド12,12をパッド支持部41,41と一体に移動させてディスク10から離すことができる。また、ライニング72,72の摩耗時には、規制部62,62で移動が規制されたパッド支持部41,41に対してピストン13の押圧力で摩擦パッド12,12を良好に移動させることができる。
また、パッド支持部41,41は、摩擦パッド12,12を支持する面54a,54aに複数の突起59を形成して摩擦力を調整しているため、突起59の数や大きさ、高さ、配置等の変更によって摩擦力の調整が容易となる。
また、パッドスプリング16は、一枚の板材から上記形状に形成されるため、コスト増を抑制することができ、安価に製造できる。
ここで、上記実施形態のパッドスプリング16は付勢部63を円筒状としたが、図8,図9に示すように、四角筒状の付勢部63Aとしても良い。また、四角以外の三角筒状あるいは五角以上の筒状としても良い。
また、上記実施形態のパッドスプリング16は固定部64を爪状としたが、図10に示すように、取付部材11の連結部28に巻き付いてバネ力で固定される固定部64Bとしても良い。これにより、固定穴29をなくすことができる。この場合、図11に示すように、連結部28のディスク径方向内側かつディスク回転方向外側に係合凹部29Bを形成し、この係合凹部29Bに固定部64Bの先端を係合させて、固定部64Bをディスク軸方向に移動不可に固定しても良い。
また、上記実施形態では、取付部材11が一対の摩擦パッド12,12を支持するディスクブレーキを例にとり説明したが、取付部材11が二対以上の摩擦パッドを支持するディスクブレーキにも適用可能である。つまり、取付部材11が少なくとも一対の摩擦パッドを支持するものであれば良い。上記実施形態では、ピストン13が一対の摩擦パッド12,12のうちの一方の摩擦パッド12を押圧する場合を例にとり説明したが、一対のピストンで一対の摩擦パッドを両方押圧するディスクブレーキ等にも適用可能である。つまり、一対の摩擦パッドのうち少なくとも一方を押圧するピストンを有するものであれば良い。
上記実施形態は、ディスクの外周側を軸方向に跨いで車両に取り付けられ、前記ディスクの両側面に対向配置される少なくとも一対の摩擦パッドを支持する取付部材と、該取付部材に摺動可能に設けられ、前記一対の摩擦パッドのうち少なくとも一方を押圧するピストンを有するキャリパと、前記取付部材に取り付けられ、前記各摩擦パッドをディスク径方向に付勢するパッドスプリングと、を有するディスクブレーキにおいて、前記パッドスプリングは、前記ディスクの両面側に配置され、前記一対の摩擦パッドの一部をそれぞれ支持する一対のパッド支持部と、前記一対のパッド支持部同士を互いにディスクの軸方向に離間させる方向に付勢する接続部と、を有し、前記接続部は、前記ディスクの外周側で前記取付部材に固定される固定部を有する。このように、パッドスプリングは、固定部が取付部材に固定されているため、その全体が取付部材に対しディスクの軸方向にずれることがない。よって、接続部の付勢力で一対のパッド支持部をディスクから同様に離すことができ、一対のパッド支持部で支持する一対の摩擦パッドをディスクから同様に離すことができる。したがって、摩擦パッドの引き摺りを抑制することができる。
また、前記接続部には、前記ピストンによる前記摩擦パッドの押圧時に、前記パッド支持部の移動量を規制する規制部が設けられているため、摩擦パッドの摩耗時には、規制部で移動が規制されたパッド支持部に対して摩擦パッドが移動して、摩耗に応じた分、ディスクに近づくことができる。よって、摩擦パッドを、その摩耗時にパッド支持部に対して良好に移動させることができる。
また、前記パッド支持部は、前記摩擦パッドの当接面との最大静止摩擦力が、前記接続部の付勢力以上、かつ、前記ピストンの最大押圧力未満となるパッド支持面を有するため、接続部の付勢力によって一対のパッド支持部がディスクから離れる際には、摩擦パッドをこれを支持するパッド支持部に一体に移動させてディスクから離すことができる。また、摩擦パッドの摩耗時には、規制部で移動が規制されたパッド支持部に対してピストンの押圧力で摩擦パッドを良好に移動させることができる。
また、前記パッド支持面には、複数の突起が形成されているため、突起の数や大きさ、高さ、配置等の変更によって摩擦力の調整が容易となる。