以下、本実施形態について図面を参照して説明する。図1は、水浄化システム10の一例を模式的に示す図である。図1に示すように、水浄化システム10は、例えば生活排水などの下水を浄化処理するシステムである。水浄化システム10は、下水浄化設備11、汚泥処理設備12及び汚泥焼却設備13を有する。下水浄化設備11は、例えば活性汚泥法を用いて下水を浄化する設備である。詳細には、下水浄化設備11は、沈砂池21、最初沈殿池(第一沈殿池)22、反応槽(曝気槽)23、最後沈殿池(第二沈殿池)24を含む。沈砂池21は、下水とともに流入する土砂や比較的大きなごみを除去する。最初沈殿池22は、沈砂池21から送り出される下水を例えば2〜3時間かけて流し、下水に含まれる汚れを沈殿させる。最初沈殿池22で沈殿した汚れは、生汚泥25aとして回収される。反応槽23は、最初沈殿池22からの下水と活性汚泥とを混合し、反応槽23の内部を曝気・攪拌し、活性汚泥に含まれる微生物の働きによって下水に含まれる汚れ(有機物)を分解する。
最後沈殿池24は、反応槽23から送り出された下水を例えば3〜4時間かけて流し、下水に含まれる活性汚泥を沈殿させる。最後沈殿池24で沈殿した活性汚泥の一部は、反応槽23に戻され、残りの活性汚泥は、余剰汚泥25bとして回収される。最後沈殿池24により活性汚泥が分離された下水は、図示を省略した塩素接触槽において塩素消毒された後、処理水として海や河川に放流される。
汚泥処理設備12は、下水浄化設備11において発生する下水汚泥25を濃縮、脱水、或いは、更に乾燥によって減量化する設備である。なお、下水汚泥25は水分を含んだ被処理物の一例であり、下水汚泥25は、最初沈殿池22から取り除かれた生汚泥25aと、最後沈殿池24で取り除かれた余剰汚泥25bと含むものである。汚泥処理設備12は、濃縮装置31、脱水機32、乾燥機33を含む。
濃縮装置31は、下水汚泥25を水分と汚泥成分とに分離、つまり下水汚泥25の固形分を濃縮する。脱水機32は、濃縮された下水汚泥25を例えば含水率75〜80%程度まで脱水する。乾燥機33は、脱水機32で脱水された下水汚泥25を例えば含水率20〜30%程度まで乾燥させる。汚泥処理工程を経た下水汚泥25は、汚泥焼却設備13によって焼却される。汚泥焼却設備13によって下水汚泥25を焼却したときに発生する焼却灰は、埋め立て処分されるか、資源として再利用される。なお、図1においては、濃縮装置31、脱水機32、乾燥機33を含む汚泥処理設備12としているが、濃縮装置31、脱水機32、乾燥機33の少なくともいずれか1つを省略、若しくは必要に応じて改質等の、その他工程や機器を追加した汚泥処理設備としてもよい。
図2は、汚泥処理設備12及び汚泥焼却設備13の一構成を模式的に示す図である。なお、図2中実線で示す矢印は、下水汚泥25や燃焼用空気等の供給路の他、焼却排ガスや焼却灰の排出路を示し、図2中破線で示す矢印は、焼却排ガスの排ガス流路の閉塞又は流動焼却炉内部に有する流動床の流動不良を防止する薬剤の供給路を、図2中二点鎖線で示す矢印は信号を示す。
汚泥焼却設備13は、流動焼却炉(流動床式焼却炉)37、空気予熱器38、集塵装置39、排煙処理装置40及び制御装置43を含む。周知のように、流動焼却炉37は、炉内に吹き込んだ燃焼用空気により流動化した流動砂を昇温バーナにより加熱し、炉内に投入された下水汚泥25を高温加熱された流動砂により加熱焼却する設備である。なお、流動焼却炉37としては、気泡式流動焼却炉、循環式流動焼却炉及び過給式流動焼却炉などがあるが、いずれの流動焼却炉であってもよい。
図示は省略するが、流動焼却炉37は、設備起動時に炉内を高温加熱する昇温バーナ、炉内を高温加熱する際や、汚泥を焼却する際に不足する熱量を補うために炉内に補助燃料を投入する補助燃料装置、炉内に燃焼用空気を送り込む散気装置を有する。なお、図2中符号45は、流動焼却炉37から排出される燃焼排ガスを空気予熱器38に送り出す排出路(煙道)である。
空気予熱器38は、流動焼却炉37から排出される燃焼排ガスと、送風機46から流動焼却炉37が有する散気装置に向けて送り込まれる燃焼用空気との間で熱交換を行う。空気予熱器38による熱交換により、散気装置に向けて送り込まれる燃焼用空気は、例えば600〜650℃に予熱される。例えば、流動焼却炉37から排出される燃焼排ガスの温度は800〜900℃であり、空気予熱器38から送り出される燃焼排ガスの温度は熱交換により500〜700℃に低下する。ここで、図2中符号47は空気予熱器38にて熱交換された燃焼排ガスを集塵装置39に排出する排出路(煙道)である。また、図2中符号48は送風機46から送り出された空気を空気予熱器38に供給する供給路、図2中符号49は予熱された燃焼用空気を流動焼却炉37の散気装置に供給する供給路である。
集塵装置39は、空気予熱器38から排出される燃焼排ガスに含まれる焼却灰を分離・回収する装置である。集塵装置39としては、一例としてセラミックフィルタを用いた集塵装置が挙げられる。集塵装置39において分離・回収された焼却灰は、灰ホッパ41に集積される。なお、図2中符号52は、集塵装置39により焼却灰が取り除かれた燃焼排ガスを排煙処理装置40に送り出す排出路であり、符号53は集塵装置39により分離・回収された焼却灰を灰ホッパ41に排出する排出路である。
排煙処理装置40は、例えば燃焼排ガス中に含まれる硫黄酸化物や、煤塵などの大気汚染物質を除去する。
灰ホッパ41は、集塵装置39により集塵された焼却灰を集積し、例えばトラックなどの荷台等に排出するものである。灰ホッパ41は、集積された焼却灰の乾燥重量を計測する重量計(重量センサ)42を有する。なお、重量計42は、焼却灰の単位時間当たりの回収量を実測値として求める手段の一例である。
制御装置43は、例えば、PLC(programmable logic controller)等から構成される。なお、制御装置43は、請求項に開示される第1演算部、第2演算部及び第3演算部の機能を有する。ここで、制御装置43は、汚泥焼却設備の各部を制御するのに使用する制御装置を兼用して使用してもよいし、本発明を実施するために専用の制御装置としてもよい。制御装置43は、汚泥焼却設備13の各通路に設けた計測機器(焼却排ガスが生成されてから、前記焼却排ガスに含まれる焼却灰が除去された直後までの異なる複数の位置で圧力、温度、流量などを計測する各測定手段)や例えば灰ホッパ41に設けた重量計42からの信号を受けて、後述する供給装置54による下水汚泥25への薬剤添加の開始や停止、薬剤添加量の調整などの制御を行う。なお、下水汚泥25に添加する薬剤の初期添加量や調整量は、例えば予め行った実験や統計などを参照して予め決定した値を使用してもよいし、2度目の判定処理以降は、過去の薬剤添加量や調整量と発現率の関係を参照するなどして決定してもよい。
焼却灰は、多種多様な成分からなり、経験的にリンやリンの化合物の含有率が高いほど、焼却灰が焼却炉の排出口以降の煙道や機器内部に付着、堆積して閉塞させる事象や、焼却灰が流動砂表面に付着し、流動砂粒子同士が結合、造粒し適正な流動状態を維持できなくなる事象(流動不良)が発生しやすいことが知られている。その機構は、リンの揮散、凝縮によるとするものや、低融点のリン化合物が液状化することによるとするものなどがあるが、その機構の全てが明らかになっているわけではない。
例えば鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)の何れか1つを含む化合物を薬剤として下水汚泥25に添加することで、上記事象の発生を防止する効果があることが挙げられる。なお、Feを含む化合物としては、ポリ硫酸第二鉄などが挙げられる。また、Caを含む化合物としては、炭酸カルシウム、消石灰、生石灰などが挙げられる。また、Alを含む化合物としては、ポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。また、Mgを含む化合物としては、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
供給装置54は、薬剤を下水汚泥25に添加する装置である。なお、薬剤が、汚泥処理設備12で処理されていく下水汚泥25に添加されるタイミングは、下水汚泥25を濃縮処理する前、濃縮処理された下水汚泥25を脱水処理する前、脱水処理された下水汚泥25を乾燥処理する前、又は乾燥処理された下水汚泥25を流動焼却炉37に投入する前の少なくともいずれか1つのタイミング、又は流動焼却炉37に直接投入することが好ましいが、下水浄化工程のいずれかの箇所への供給や、図示しない汚泥処理工程や、汚泥焼却工程から下水浄化工程へ返送される返流水への供給を否定するものではない。
流動焼却炉37に下水汚泥25を供給する供給路55には、含水率測定装置56、有機分率測定装置57、下水汚泥投入量測定装置58等の計測機器が設置される。含水率測定装置56は、供給路55を介して流動焼却炉37に供給される下水汚泥25の含水率を測定する。有機分率測定装置57は、供給路55を介して流動焼却炉37に供給される下水汚泥25の固形分中に含まれる有機物の含有率を測定する。下水汚泥投入量測定装置58は、供給路55を介して流動焼却炉37に供給される下水汚泥25の単位時間当たりの重量を測定する。
流動焼却炉37は、焼却排ガスの排出口近傍に圧力センサ61及び温度センサ62を有する。ここで、圧力センサ61及び温度センサ62が配置される位置を、流動焼却炉37の焼却排ガスの排出口近傍としているが、流動焼却炉37から排出される燃焼排ガスの排出路45に設けてもよい。
また、集塵装置39は、圧力センサ63及び温度センサ64を燃焼排ガスの導入口近傍に有する。ここで、圧力センサ63及び温度センサ64が配置される位置を、集塵装置39の焼却排ガスの導入口近傍としているが、集塵装置39に燃焼排ガスが導入される排出路47に設けてもよい。さらに、集塵装置39から燃焼排ガスが導出される導出口、つまり排出路52の上流側に設けてもよい。なお、圧力センサ63及び温度センサ64が配置される位置は、フィルタを用いる集塵装置39であれば、焼却灰を除去するフィルタ前後で圧力差が生じることから、集塵装置39の焼却排ガスの導入口近傍や、集塵装置39に燃焼排ガスが導入される排出路47に配置することが好ましいが、上述の排出路52の上流側に設けてもよい。そして、重力式、慣性式など、フィルタを用いずに焼却灰を分離する集塵装置の場合には、圧力センサ63及び温度センサ64が配置される位置は、集塵装置39の焼却排ガスの導入口近傍や、集塵装置39に燃焼排ガスが導入される排出路47に配置する他に、集塵装置39の排出口近傍に配置することができる。
さらに、排出路52は、燃焼排ガスの流量を測定する流量計65を有する。なお、流量計65を集塵装置39から排出される燃焼排ガスの排出路52に設けているが、空気予熱器38及び集塵装置39間の排出路47に設けることも可能である。
次に、下水汚泥に薬剤を投入するか否かの決定や、下水汚泥に投入される薬剤の供給量の調整(決定)に係る演算処理について説明する。この演算処理は、発現率の算出処理、各圧力センサにより計測された圧力値の差(以下、差圧)の算出処理、及び薬剤の設定供給量の算出処理を含む。
<発現率の算出>
発現率は、流動焼却炉37における下水汚泥の焼却後に、灰ホッパ41により回収される焼却灰の単位時間当たりの理論上の乾燥重量(以下、理論灰発生量と称する)、及び灰ホッパ41により実際に回収される焼却灰の単位時間当たりの乾燥重量(以下、実灰発生量と称する)を用いて求められる、実灰発生量/理論灰発生量である。なお、灰ホッパ41により回収される焼却灰とは、集塵装置39により回収される焼却灰、又は回収装置により回収される焼却灰と同義である。
例えば発現率を記号Rで示すと、発現率Rは、以下の(1)式を用いて算出される。
発現率R=実灰発生量/理論灰発生量・・・(1)
理論灰発生量は、以下の(2)式を用いて算出される。
理論灰発生量=M×{(100−D)/100}×{(100−V)/100}×(C/100)・・・(2)
(2)式中、符号Mは流動焼却炉37に投入される下水汚泥25の単位時間当たりの重量、符号Dは下水汚泥25における含水率、符号Vは下水汚泥25の固形物中に含まれる有機物の含有率(有機分率)、符号Cは集塵装置39における焼却灰の捕集率(%)である。ここで、下水汚泥25の単位時間当たりの重量Mは、下水汚泥投入量測定装置58により測定される。また、下水汚泥25における含水率D及び有機分率Vは、含水率測定装置56及び有機分率測定装置57により求められる。
ここで、下水汚泥25における含水率D及び有機分率Vは、以下の(3)式及び(4)式にて求められる。
下水汚泥における含水率D=下水汚泥に含まれる水の重量/下水汚泥の重量×100・・・(3)
下水汚泥における有機分率V=下水汚泥に含まれる有機物の重量/下水汚泥に含まれる固形物全体の重量×100・・・(4)
なお、下水汚泥25における含水率Dは、含水率測定装置56にて計測する他、流動焼却炉37に投入される下水汚泥25を適宜取り出して単位重量当たりの含水率を別途分析により測定した値を使用することも可能である。同様にして、下水汚泥25における有機分率Vも、有機分率測定装置57にて計測する他、流動焼却炉37に投入される下水汚泥25を適宜所定量取り出して、有機分率を別途分析により測定した値を使用することも可能である。
一方、実灰発生量は、例えば灰ホッパ41が有する重量計42の計測結果に基づいて演算される。ここで、実灰発生量としては、灰ホッパ41に集積される単位時間当たりの焼却灰の乾燥重量増加分が挙げられる。重量計42は、所定のサンプリング周期で焼却灰の乾燥重量を測定している。例えば、サンプリング時間Tn(n=1,2,3,・・・)における乾燥重量をWn(n=1,2,3,・・・)とすると、単位時間当たりの焼却灰の乾燥重量は、(Wn−W(n−1))/(Tn−T(n−1))で算出される。
したがって、制御装置43は、サンプリング周期が経過する毎に単位時間当たりの焼却灰の乾燥重量を求める。そして、制御装置43は、単位時間当たりの焼却灰の乾燥重量を所定のサンプル数用いた移動平均により、実灰発生量を求めることが好ましい。
なお、灰ホッパ41は、集積した焼却灰が規定量となると、集積した焼却灰を搬出する動作を実行する。灰ホッパ41が有する重量計42の計測結果に基づいて単位時間当たりの焼却灰の乾燥重量増加分を求める場合は、この灰ホッパ41より焼却灰を搬出する動作中および灰ホッパ41にて焼却灰を搬出する動作が終了した後の所定期間は、各サンプリング時間における単位時間当たりの焼却灰の乾燥重量増加分を演算することはできない。この場合、焼却灰を搬出する動作中であることを示す信号(灰搬出動作中信号)を制御装置43に入力し、この信号が切れる。すなわち灰ホッパ41にて焼却灰を搬出する動作が終了し、且つ所定時間が経過し単位時間当たりの焼却灰の乾燥重量増加分が演算可能になるまでは、灰搬出動作中信号が入力される直前に得られた実灰発生量を用いる。
<差圧の算出処理>
以下、圧力センサ61により測定された圧力を流動焼却炉37の圧力P1(単位:kPaG)、温度センサ62により測定された温度を流動焼却炉37の温度T1(単位:℃)と称する。また、圧力センサ63により測定された圧力を集塵装置39の圧力P2(単位:kPaG)、温度センサ64により測定された温度を集塵装置39の温度T2(単位:℃)と称する。さらに、流量計65で測定した焼却排ガスの流量をF1(単位:m3/h)と称する。
まず、流動焼却炉37及び集塵装置39間の圧力値の差ΔP(単位:kPa)は、以下の(1)式を用いて算出される。以下では、圧力値の差ΔPを差圧ΔPと称し、差圧ΔPと圧力損失とは同一の意味で使用している。
ΔP=P1−P2 ・・・(5)
上述した(5)式に用いる流動焼却炉37の圧力P1や集塵装置39の圧力P2は、例えば所定のサンプリング周期で測定し、所定のサンプリング周期にて測定した複数の値を移動平均等により求めた値としてもよい。
ここで、流動焼却炉37及び集塵装置39間の焼却排ガスの煙道(排出路)においては、焼却排ガスの流量、温度及び圧力が大きく変動する。したがって、上述した差圧ΔPは、流動焼却炉37や集塵装置39の内部の圧力P1、P2を計測する場所での温度やアクティブ圧力、集塵装置39から排出される流動焼却炉37から足し引きされない焼却排ガスの流量などを用いて補正する必要がある。
例えば補正した差圧(以下、補正差圧)をΔPxとした場合、補正差圧ΔPxは、以下の(6)式を用いて算出される。
(6)式において、記号Fx(単位:m3/h)は基準となる流量(以下、基準流量)、記号Px(単位:kPaG)は基準となる圧力(以下、基準圧力)、記号Tx(単位:℃)は基準となる温度(以下、基準温度)である。なお、基準流量Fx、基準圧力Px及び基準温度Txは、汚泥焼却設備13を設計する際に用いた値(設計値)や汚泥焼却設備13の試運転時の実測値を用いることが好ましい。また、記号nは係数であり、例えばn=1.0〜2.0の範囲内の値が用いられる。係数nは、汚泥焼却設備13の試運転時に得られるデータから設定される値であることが好ましい。
ここで、流動焼却炉37の圧力P1及び集塵装置39の圧力P2は、所定時間において得られる値としてもよいし、所定のサンプリング周期で測定した瞬時値である複数の値を移動平均等することにより求めた値としてもよい。
なお、上述した(6)式では、Pave(単位:kPaG)として、流動焼却炉37および集塵装置39の圧力の平均値を、Tave(単位:℃)として、流動焼却炉37および集塵装置39の温度の平均値を使用しているが、簡易的にいずれか片方の圧力センサや温度センサから得られる値を、PaveやTaveとして用いることも可能である。
<薬剤の設定供給量の算出>
薬剤の設定供給量を算出する処理は、上述した発現率R及び補正差圧ΔPxに基づいた異なる複数の係数を算出する処理、薬剤調節係数を算出する処理を含む。補正差圧及び発現率に基づいた異なる複数の係数は、例えば、補正差圧及び発現率の変化量に基づいて決定される係数(変化係数)Aと、補正差圧及び発現率が複数の異なる範囲のいずれかに含まれることにより決定される係数(値係数)Bとを含む。以下、薬剤の設定供給量については符号Wを付して説明する。
変化係数Aは、補正差圧ΔPxの変化量と予め定めた2つの閾値Th1,Th2(Th1<Th2)とを比較した結果と、発現率の変化量と予め定めた2つの閾値Th3,Th4(Th3<Th4)とを比較した結果とを組み合わせることで算出される。これら閾値Th1,Th2,Th3及びTh4は、例えば、予め流動焼却炉のシミュレーション結果に基づいて得られる値である。
表1は、補正差圧の変化と、発現率の変化とに応じた変化係数Aの値をまとめたものである。なお、表1に記載される差圧用パラメータA1、発現率用パラメータA2の値や、これらパラメータに伴う変化係数Aの値は一例を示したに過ぎず、各パラメータの値は、適宜設定されるものである。
表1に示すように、例えば補正差圧ΔPxの変化量が閾値Th2を超過する場合、制御装置43は、補正差圧ΔPxが上昇していると判断する。このとき、制御装置43は、補正差圧ΔPxの変化量に対して差圧用パラメータA1として「2」を設定する。また、補正差圧ΔPxの変化量が閾値Th1以上で、且つ閾値Th2以下である場合、制御装置43は、補正差圧ΔPxが変化していないと判断する。このとき、制御装置43は、補正差圧ΔPxの変化量に対して、差圧用パラメータA1として「0」を設定する。さらに、補正差圧ΔPxの変化量が閾値Th1未満である場合、制御装置43は、補正差圧ΔPxが低下していると判断する。このとき、制御装置43は、補正差圧ΔPxの変化量に対して、差圧用パラメータA1として「−2」を設定する。
また、発現率Rの変化量が閾値Th3未満である場合、制御装置43は、発現率Rが低下していると判断する。このとき、制御装置43は、発現率Rの変化量に対して発現率用パラメータA2として「1」を設定する。また、発現率Rの変化量が閾値Th3以上で、且つ閾値Th4以下である場合、制御装置43は、発現率Rが変化していないと判断する。このとき、制御装置43は、発現率Rの変化量に対して、発現率用パラメータA2として「0」を設定する。さらに、発現率Rの変化量が閾値Th4を超過する場合、制御装置43は、発現率Rが上昇していると判断する。このとき、制御装置43は、発現率Rの変化量に対して、発現率用パラメータA2として「−1」を設定する。ここで、発現率用パラメータA2は、流動焼却炉37の稼働時における影響が差圧用パラメータA1よりも低いことから、差圧用パラメータA1は、発現率用パラメータA2よりも大きい値としている。
制御装置43は、求めた差圧用パラメータA1と発現率用パラメータA2とを加算することで変化係数Aを求める。例えば、差圧用パラメータA1=−2、発現率用パラメータA2=0の場合には、変化係数Aは、A=A1+A2=−2+0=−2となる。
なお、差圧用パラメータA1と発現率用パラメータA2との加算により変化係数Aを求めているが、差圧用パラメータA1と発現率用パラメータA2とのそれぞれに対して重み係数を各パラメータに乗算した後、乗算した値を加算することで変化係数Aを求めることも可能である。
値係数Bは、補正差圧ΔPxと予め定めた2つの閾値Th5,Th6(Th5<Th6)とを比較した結果と、発現率Rと予め定めた2つの閾値Th7,Th8(Th7<Th8)とを比較した結果とを組み合わせることで算出される。これら閾値Th5,Th6,Th7,Th8は、例えば、予め流動焼却炉37のシミュレーション結果に基づいて得られる値である。
表2は、補正差圧の値と、発現率の値とに応じた値係数Bの値をまとめたものである。なお、表1に記載される差圧用パラメータB1、発現率用パラメータB2の値や、これらパラメータに伴う値係数Bの値は一例を示したに過ぎず、各パラメータの値は、適宜設定されるものである。
表2に示すように、例えば補正差圧ΔPxがΔPx>閾値Th6である場合、制御装置43は、差圧用パラメータB1として「2」を設定する。また、補正差圧ΔPxが閾値Th5≦ΔPx≦閾値Th6である場合、制御装置43は、差圧用パラメータB1として「0」を設定する。さらに、補正差圧ΔPxがΔPx<閾値Th5である場合、制御装置43は、差圧用パラメータB1として「−2」を設定する。
一方、例えば発現率RがR<閾値Th7である場合、制御装置43は、発現率用パラメータB2として「1」を設定する。また、発現率Rが閾値Th7≦R≦閾値Th8である場合、制御装置43は、発現率用パラメータB2として「0」を設定する。さらに、発現率RがR>閾値Th8である場合、制御装置43は、発現率用パラメータB2として「−1」を設定する。ここで、差圧用パラメータB1は、流動焼却炉37の稼働時における影響が高いことから、発現率用パラメータB2よりも大きい値としている。
制御装置43は、差圧用パラメータB1と発現率用パラメータB2とを加算することで値係数Bを求める。例えば、差圧用パラメータB1=−1、発現率用パラメータB2=0の場合には、値係数Bは、B=B1+B2=−1+0=−1となる。
なお、差圧用パラメータB1と発現率用パラメータB2との加算により値係数Bを求めているが、差圧用パラメータB1と発現率用パラメータB2とのそれぞれに対して重み係数を各パラメータに乗算した後、乗算した値を加算することで値係数Bを求めることも可能である。
ここで、上述した差圧用パラメータA1,B1は、一例として、補正差圧ΔPxの変化量、補正差圧ΔPxの各々に対応付けたテーブルデータを予め制御装置43のメモリに記憶させておけばよい。同様に、発現率用パラメータA2,B2は、発現率Rの変化量、発現率Rの各々に対応付けたテーブルデータを予め制御装置43のメモリに記憶させておけばよい。なお、テーブルデータに割り振られる値は、例えば過去の実験シミュレーションなどの結果に基づいて設定される。
変化係数Aと値係数Bとを求めた後、制御装置43は、求めた変化係数Aと値係数Bとを加算して薬剤調節係数Gを求める。薬剤調節係数Gを求めた後、制御装置43は、下水汚泥に薬剤を投入する際の薬剤の設定供給量を求める。ここで、薬剤の設定供給量は、以下の(7)式で求められる。
薬剤の設定供給量W=現在の薬剤の設定供給量W’+変化量基準値α×薬剤調節係数G・・・(7)
ここで、変化量基準値αは、薬剤調節係数G=1の時の1回の供給量の変化量を定める係数で、例えば過去の実験シミュレーションなどの結果に基づいて設定される。
なお、薬剤調節係数Gを求める際に補正差圧ΔPxを用いているが、焼却排ガスの流量、燃焼排ガスの排出経路内の温度及び圧力の変動が小さい場合には、補正差圧ΔPxではなく、差圧ΔPを用いることも可能である。
最後に、煙道内の圧力損失及び焼却灰の発現率に基づいて、薬剤の投入の開始、停止や薬剤の供給量の調整に係る処理の流れについて、図3のフローチャートを用いて説明する。以下、前回の薬剤の投入の開始、停止や薬剤の供給量の調整に係る処理の際に求めた各値に対しては、符号「’」を付して説明する。
ステップS101は、発現率Rを算出する処理である。制御装置43は、上述した(2)式を用いて理論灰発生量を求める。また、制御装置43は、灰ホッパ41が有する重量計42の計測結果に基づいて実灰発生量を求める。最後に、制御装置43は、求めた実灰発生量及び理論灰発生量と、上述した(1)式とを用いて、発現率Rを算出する。
ステップS102は、差圧ΔPを算出する処理である。制御装置43は、圧力センサ61及び圧力センサ63からの測定信号と、上述した(5)式とを用いて、差圧ΔPを算出する。
ステップS103は、補正差圧ΔPxを算出する処理である。制御装置43は、圧力センサ61及び圧力センサ63からの測定信号の他、温度センサ62、温度センサ64及び流量計65からの測定信号と、上述した(6)式とを用いて、補正差圧ΔPxを算出する。
ステップS104は、変化係数Aを算出する処理である。制御装置43は、閾値Th1,Th2、Th3及びTh4と、前回算出した補正差圧ΔPx’、前回算出した発現率R’とをメモリから読み出す。制御装置43は、これら値と、ステップS101にて求めた発現率R及びステップS103にて求めた補正差圧ΔPxとから、差圧用パラメータA1及び発現率用パラメータA2を各々求める。詳細には、制御装置43は、ステップS103にて求めた補正差圧ΔPxから前回算出した補正差圧ΔPx’を減算して、補正差圧の変化量を求める。そして、制御装置43は、補正差圧の変化量と、閾値Th1,Th2とを比較し、補正差圧の変化量に基づいた差圧用パラメータA1を求める。同時に、制御装置43は、ステップS101にて求めた発現率Rから前回算出した発現率R’を減算して、発現率の変化量を求める。そして、制御装置43は、発現率の変化量と、閾値Th3,Th4とを比較し、発現率の変化量に基づいた発現率用パラメータA2を求める。最後に、制御装置43は、差圧用パラメータA1と発現率用パラメータA2とを加算することで、変化係数Aを求める。なお、本実施形態では、変化量を求めるために測定値(現在値)から減ずる値を前回算出した値としているが、測定値(現在値)から減ずる値は、任意の時間前の値としてもよい。
ステップS105は、値係数Bを算出する処理である。制御装置43は、ステップS103にて求めた補正差圧ΔPxと、閾値Th5,Th6とを比較し、補正差圧ΔPxに基づいた差圧用パラメータB1を求める。同時に、制御装置43は、ステップS101にて求めた発現率Rと、閾値Th7,Th8とを比較し、発現率Rに基づいた発現率用パラメータB2を求める。最後に、制御装置43は、差圧用パラメータB1と発現率用パラメータB2とを加算することで、値係数Bを求める。
ステップS106は、薬剤調節係数Gを算出する処理である。制御装置43は、ステップS104で求めた変化係数Aと、ステップS105で求めた値係数Bとを加算することで、薬剤調節係数Gを求める。
ステップS107は、薬剤の設定供給量を算出する処理である。制御装置43は、前回設定された薬剤の設定供給量W’及び変化量基準値αをメモリから読み出す。そして、制御装置43は、上述した(7)式を用いて、薬剤の設定供給量Wを求める。
ステップS108は、薬剤の設定供給量Wが下限値未満であるか否かを判定する処理である。制御装置43は、下限値として用いる閾値Th9をメモリから読み出し、ステップS107で算出された薬剤の設定供給量Wと、閾値Th9との大小関係を判定する。算出された薬剤の設定供給量Wが薬剤の設定供給量W<閾値Th9である場合には、制御装置43は、ステップS108の判定処理をYesとする。この場合、ステップS109に進む。一方、算出された薬剤の設定供給量Wが薬剤の設定供給量W≧閾値Th9である場合には、制御装置43は、ステップS108の判定処理をNoとする。この場合、ステップS110に進む。
ステップS109は、薬剤の投入を停止する処理である。制御装置43は、供給装置54に対して薬剤の投入を停止する指示を行う。これにより、供給装置54は、下水汚泥への薬剤の投入を停止する。
ステップS110は、薬剤の設定供給量を供給装置に出力する処理である。制御装置43は、ステップS107にて算出された薬剤の設定供給量Wを供給装置54に出力する。これを受けて、供給装置54は、薬剤を下水汚泥に供給する。
次に、図3に示すフローチャートのステップS104に示す、変化係数Aを求める処理を論理制御(逐次制御)にて行う場合の流れの一例について図4のフローチャートを用いて説明する。
ステップS201は、補正差圧ΔPxの変化量を算出する処理である。制御装置43は、前回の補正差圧ΔPx’をメモリから読み出す。制御装置43は、図3に示すフローチャートのステップS103で求めた補正差圧ΔPxから、前回求めた補正差圧ΔPx’を減算することで、補正差圧ΔPxの変化量を求める。
ステップS202は、発現率Rの変化量を算出する処理である。制御装置43は、前回の発現率R’をメモリから読み出す。制御装置43は、図3に示すフローチャートのステップS101で求めた発現率Rから、前回求めた発現率R’を減算することで、発現率Rの変化量を求める。
ステップS202の処理が実行されると、差圧用パラメータA1と、発現率用パラメータA2とを設定する処理が並行して実行される。なお、ステップS203からステップS209の処理が差圧用パラメータA1を設定する処理、ステップS211からステップSの処理が発現率用パラメータA2を設定する処理である。
ステップS203は、補正差圧ΔPxの変化量が、補正差圧ΔPxの変化量<閾値Th1であるか否かを判定する処理である。ステップS201で求めた補正差圧ΔPxの変化量が、補正差圧ΔPxの変化量<閾値Th1であれば、制御装置43は、ステップS203の判定処理の結果をYesとする。この場合、ステップS204に進む。一方、補正差圧ΔPxの変化量<閾値Th1でない場合、制御装置43は、ステップS203の判定処理の結果をNoとする。この場合、後述するステップS205に進む。
ステップS204は、差圧用パラメータA1=−2に設定する処理である。制御装置43は、補正差圧ΔPxの変化量<閾値Th1であるとき、補正差圧ΔPxの変化量が閾値Th1≦補正差圧ΔPxの変化量≦閾値Th2の範囲に収まるように、差圧用パラメータA1を設定する。一例として、制御装置43は、差圧用パラメータA1を「−2」に設定する。
上述したステップS203の判定処理の結果がNoである場合、ステップS205に進む。
ステップS205は、補正差圧ΔPxの変化量が閾値Th1≦補正差圧ΔPxの変化量≦閾値Th2であるか否かを判定する処理である。ステップS201で求めた補正差圧ΔPxの変化量が閾値Th1≦補正差圧ΔPxの変化量≦閾値Th2であれば、制御装置43は、ステップS205の判定結果をYesとする。この場合、ステップS206に進む。一方、閾値Th1≦補正差圧ΔPxの変化量≦閾値Th2を満足しない場合、制御装置43は、ステップS205の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS206に進む。
ステップS206は、差圧用パラメータA1をA1=0に設定する処理である。このとき、補正差圧ΔPxの変化量は、閾値Th1≦補正差圧ΔPxの変化量≦閾値Th2に収まっている。したがって、制御装置43は、差圧用パラメータA1を「0」に設定する。
上述したステップS205の判定処理の結果がNoである場合、ステップS207に進む。
ステップS207は、補正差圧ΔPxの変化量が、補正差圧ΔPxの変化量>閾値Th2であるか否かを判定する処理である。ステップS201で求めた補正差圧ΔPxの変化量が、補正差圧ΔPxの変化量>閾値Th2であれば、制御装置43は、ステップS207の判定処理の結果をYesとする。この場合、ステップS208に進む。一方、補正差圧ΔPxの変化量>閾値Th2でない場合、制御装置43は、ステップS207の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS209に進む。
ステップS208は、差圧用パラメータA1をA1=2に設定する処理である。制御装置43は、補正差圧ΔPxの変化量>閾値Th2であるとき、補正差圧ΔPxの変化量が閾値Th1≦補正差圧ΔPxの変化量≦閾値Th2の範囲に収まるように、差圧用パラメータA1を設定する。一例として、制御装置43は、差圧用パラメータA1を「2」に設定する。
ステップS209は、差圧用パラメータA1をA1=0に設定する処理である。このステップS209が実行される場合、補正差圧ΔPxの変化量は、上述した閾値のいずれの範囲にも含まれていない。したがって、制御装置43は、差圧用パラメータA1を「0」に設定する。
これらステップS203からステップS209の処理を実行することで、差圧用パラメータA1が設定される。
ステップS211は、発現率Rの変化量が、発現率Rの変化量<閾値Th3であるか否かを判定する処理である。ステップS202で求めた発現率Rの変化量が、発現率Rの変化量<閾値Th3であれば、制御装置43は、ステップS211の判定処理の結果をYesとする。この場合、ステップS212に進む。一方、発現率Rの変化量<閾値Th3でない場合、制御装置43は、ステップS211の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS213に進む。
ステップS212は、発現率用パラメータA2をA2=1に設定する処理である。制御装置43は、発現率Rの変化量<閾値Th3であるとき、発現率Rの変化量が閾値Th3≦発現率Rの変化量≦閾値Th4の範囲に収まるように、発現率用パラメータA2を設定する。一例として、制御装置43は、発現率用パラメータA2を「1」に設定する。
ステップS213は、発現率Rの変化量が閾値Th3≦発現率Rの変化量≦閾値Th4であるか否かを判定する処理である。ステップS202で求めた発現率Rの変化量が閾値Th3≦発現率Rの変化量≦閾値Th4であれば、制御装置43は、ステップS213の判定結果をYesとする。この場合、ステップS214に進む。一方、閾値Th3≦発現率Rの変化量≦閾値Th4を満足しない場合、制御装置43は、ステップS213の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS215に進む。
ステップS214は、発現率用パラメータA2をA2=0に設定する処理である。このとき、発現率Rの変化量は、閾値Th3≦発現率Rの変化量≦閾値Th4に収まっている。したがって、制御装置43は、発現率用パラメータA2を「0」に設定する。
ステップS215は、発現率Rの変化量が、発現率Rの変化量>閾値Th4であるか否かを判定する処理である。ステップS202で求めた発現率Rの変化量が、発現率Rの変化量>閾値Th4であれば、制御装置43は、ステップS215の判定処理の結果をYesとする。この場合、ステップS216に進む。一方、発現率Rの変化量>閾値Th4でない場合、制御装置43は、ステップS215の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS217に進む。
ステップS216は、発現率用パラメータA2をA2=−1に設定する処理である。制御装置43は、発現率Rの変化量>閾値Th4であるとき、発現率Rの変化量が閾値Th3≦発現率Rの変化量≦閾値Th4の範囲に収まるように、発現率用パラメータA2を設定する。一例として、制御装置43は、発現率用パラメータA2を「−1」に設定する。
ステップS217は、発現率用パラメータA2をA2=0に設定する処理である。このステップS217が実行される場合、発現率Rの変化量は、上述した閾値のいずれの範囲にも含まれていない。したがって、制御装置43は、発現率用パラメータA2を「0」に設定する。
これらステップS211からステップS217の処理を実行することで、発現率用パラメータA2が設定される。
ステップS218は、変化係数Aを算出する処理である。制御装置43は、ステップS204、ステップS206、ステップS208又はステップS209のいずれかの処理により設定された差圧用パラメータA1と、ステップS212、ステップS214、ステップS216又はステップS217のいずれかの処理により設定された発現率用パラメータA2とを加算することで、変化係数Aを算出する。
次に、図3に示すフローチャートのステップS105に示す、値係数Bを求める処理を論理制御(逐次制御)にて行う場合の流れの一例について、図5のフローチャートを用いて説明する。図5のフローチャートでは、差圧用パラメータB1を設定する処理と、発現率用パラメータB2を設定する処理が並行して実行される。ステップS301からステップS307の処理が差圧用パラメータB1を設定する処理、ステップS311からステップS317の処理が発現率用パラメータB2を設定する処理である。
ステップS301は、補正差圧ΔPxが、補正差圧ΔPx<閾値Th5であるか否かを判定する処理である。図3に示すステップS103で求めた補正差圧ΔPxが、補正差圧ΔPx<閾値Th5であれば、制御装置43は、ステップS301の判定処理の結果をYesとする。この場合、ステップS302に進む。一方、補正差圧ΔPx<閾値Th5でない場合、制御装置43は、ステップS301の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS303に進む。
ステップS302は、差圧用パラメータB1をB1=−2に設定する処理である。制御装置43は、補正差圧ΔPx<閾値Th5であるとき、補正差圧ΔPxが閾値Th5≦補正差圧ΔPx≦閾値Th6の範囲に収まるように、差圧用パラメータB1を設定する。一例として、制御装置43は、差圧用パラメータB1を「−2」に設定する。
上述したステップS301の判定処理の結果がNoである場合、ステップS303に進む。
ステップS303は、補正差圧ΔPxが閾値Th5≦補正差圧ΔPx≦閾値Th6であるか否かを判定する処理である。制御装置43は、図3に示すステップS103で求めた補正差圧ΔPxが閾値Th5≦補正差圧ΔPx≦閾値Th6であれば、制御装置43は、ステップS303の判定結果をYesとする。この場合、ステップS304に進む。一方、閾値Th5≦補正差圧ΔPx≦閾値Th6を満足しない場合、制御装置43は、ステップS303の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS304に進む。
ステップS304は、差圧用パラメータB1をB1=0に設定する処理である。このとき、補正差圧ΔPxは、閾値Th5≦補正差圧ΔPx≦閾値Th6に収まっている。したがって、制御装置43は、差圧用パラメータB1を「0」に設定する。
ステップS305は、補正差圧ΔPxが、補正差圧ΔPx>閾値Th6であるか否かを判定する処理である。図3に示すステップS103で求めた補正差圧ΔPxが、補正差圧ΔPx>閾値Th6であれば、制御装置43は、ステップS305の判定処理の結果をYesとする。この場合、ステップS306に進む。一方、補正差圧ΔPx>閾値Th6でない場合、制御装置43は、ステップS305の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS307に進む。
ステップS306は、差圧用パラメータB1をB1=2に設定する処理である。制御装置43は、閾値Th6<補正差圧ΔPxであるとき、補正差圧ΔPxが閾値Th5≦補正差圧ΔPx≦閾値Th6の範囲に収まるように、差圧用パラメータB1を設定する。一例として、制御装置43は、差圧用パラメータB1を「2」に設定する。
ステップS307は、差圧用パラメータB1をB1=0に設定する処理である。このステップS307が実行される場合、差圧用パラメータB1は、上述した閾値のいずれの範囲にも含まれていない。したがって、制御装置43は、差圧用パラメータB1を「0」に設定する。
これらステップS301からステップS307の処理を実行することで、差圧用パラメータB1が設定される。
ステップS311は、発現率Rが、発現率R<閾値Th7であるか否かを判定する処理である。図3で示すステップS101で求めた発現率Rが、発現率R<閾値Th7であれば、制御装置43は、ステップS309の判定処理の結果をYesとする。この場合、ステップS312に進む。一方、発現率R<閾値Th7でない場合、制御装置43は、ステップS311の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS313に進む。
ステップS312は、発現率用パラメータB2をB2=1に設定する処理である。制御装置43は、発現率R<閾値Th7であるとき、発現率Rが閾値Th7≦発現率R≦閾値Th8の範囲に収まるように、発現率用パラメータB2を設定する。一例として、制御装置43は、発現率用パラメータB2を「1」に設定する。
上述したステップS311の判定処理の結果がNoである場合、ステップS313に進む。
ステップS313は、発現率Rが閾値Th7≦発現率R≦閾値Th8であるか否かを判定する処理である。図3で示すステップS101で求めた発現率Rが閾値Th7≦発現率R≦閾値Th8であれば、制御装置43は、ステップS311の判定結果をYesとする。この場合、ステップS312に進む。一方、閾値Th7≦発現率R≦閾値Th8を満足しない場合、制御装置43は、ステップS311の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS313に進む。
ステップS314は、発現率用パラメータB2をB2=0に設定する処理である。このとき、発現率Rは、閾値Th7≦発現率R≦閾値Th8に収まっている。したがって、制御装置43は、発現率用パラメータB2を「0」に設定する。
上述したステップS313の判定処理の結果がNoである場合、ステップS315に進む。
ステップS315は、発現率Rが、発現率R>閾値Th8であるか否かを判定する処理である。図3で示すステップS101で求めた発現率Rが、発現率R>閾値Th8であれば、制御装置43は、ステップS315の判定処理の結果をYesとする。この場合、ステップS316に進む。一方、発現率Rの変化量>閾値Th8でない場合、制御装置43は、ステップS315の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS317に進む。
ステップS316は、発現率用パラメータB2をB2=−1に設定する処理である。制御装置43は、発現率R>閾値Th8であるとき、発現率Rが閾値Th7≦発現率R≦閾値Th8の範囲に収まるように、発現率用パラメータB2を設定する。一例として、制御装置43は、発現率用パラメータB2を「−1」に設定する。
ステップS317は、発現率用パラメータB2をB2=0に設定する処理である。このステップS317が実行される場合、発現率用パラメータB2は、上述した閾値のいずれの範囲にも含まれていない。したがって、制御装置43は、発現率用パラメータB2を「0」に設定する。
これらステップS311からステップS317の処理を実行することで、発現率用パラメータB2が設定される。
ステップS318は、値係数Bを算出する処理である。制御装置は、ステップS302、ステップS304、ステップS306又はステップS307のいずれかの処理により設定された差圧用パラメータB1と、ステップS312、ステップS314、ステップS316又はステップS317のいずれかの処理により設定された発現率用パラメータB2とを加算することで、値計数Bを算出する。
例えば補正差圧ΔPxの変化において差圧が上昇し、発現率Rの変化において発現率が低下した場合には、差圧用パラメータA1はA1=2となり、発現率用パラメータA2はA2=1となる。したがって、変化係数AはA=3となる。
また、例えば補正差圧ΔPxがΔPx<Th6で、発現率RがR<Th7である場合には、差圧用パラメータB1はB1=2となり、発現率用パラメータB2はB2=1となる。したがって、値係数BはB=3となる。
変化係数AがA=3、値係数BがB=3である場合には、薬剤調節係数Gは、G=A+B=3+3=6となる。このとき、例えば前回の薬剤の設定供給量W’がW’=20であり、変化量基準値αがα=2に設定した場合には、今回の薬剤の設定供給量Wは、W=W’+α×G=20+2×6=32となる。
また、例えば補正差圧ΔPxの変化において差圧が低下し、発現率Rの変化において発現率が上昇した場合には、差圧用パラメータA1はA1=−2となり、発現率用パラメータA2はA2=−1となる。したがって、変化係数AはA=−3となる。
また、例えば補正差圧ΔPxがΔPx<Th5で、発現率RがR>Th8である場合には、差圧用パラメータB1はB1=−2となり、発現率用パラメータB2はB2=−1となる。したがって、値係数BはB=−3となる。
変化係数AがA=−3、値係数BがB=−3となる場合には、薬剤調節係数Gは、G=A+B=(−3)+(−3)=−6となる。このとき、例えば前回の薬剤の設定供給量W’がW’=20であり、変化量基準値αがα=2に設定した場合には、今回の薬剤の設定供給量Wは、W=W’+α×G=20+2×(−6)=8となる。
例えば薬剤の供給量の下限値は予め設定されている。例えば、薬剤の供給量の下限値である閾値Th9がTh9=5に設定されている場合、今回の薬剤の設定供給量WがW=8の場合には、薬剤の設定供給量となるように、薬剤の供給量が調整される。ここで、今回の薬剤の設定供給量WがW<閾値Th9(=5)となる場合には、下水汚泥への薬剤の供給が停止される。なお、ステップS108の判定処理でNoとなる場合には、薬剤の供給量が算出された薬剤の設定供給量となり、薬剤の供給量が調整される。さらに、薬剤が下水汚泥に供給されていない場合、薬剤の設定供給量WがW≧閾値Th9となれば、薬剤の下水汚泥への供給が開始、又は再開される。
このように、本実施形態では、発現率Rと補正差圧ΔPxとを考慮して、薬剤の投入開始や停止、又は投入される薬剤の供給量の調整を行っている。つまり、煙道の圧力損失が上昇する事象が出始めたときに薬剤の供給量の調整度合いを、発現率R単体のみを考慮した場合に比べて大きくすることができる。
また、煙道の圧力損失が上昇する事象が出始める前に、煙道の閉塞や流動不良の原因となる灰の付着を予見できる。したがって、補正差圧ΔPxのみを考慮した場合に比べて、薬剤の供給、又は投入される薬剤の供給量の調整を適切に実行することができる。また、同時に、補正差圧ΔPxのみを考慮した場合には、補正差圧ΔPxの変化がない場合には、正常に流動焼却炉が稼働していると見なされ、流動砂に灰の成分が付着する事象の発現を特定することが難しい。しかしながら、本実施形態では、補正差圧ΔPxだけでなく、発現率Rも考慮しているので、補正差圧ΔPxが上昇していない、かつ発現率Rが低下している状態を検知することで、流動砂に灰の成分が付着している事象を特定することが可能となる。
本実施形態では、単位時間当たりの焼却灰の乾燥重量の増加分を実灰発生量とし、理論上の単位時間当たり焼却灰の乾燥重量の増加分を理論灰発生量として指標(発現率)を求めているが、これら単位時間当たりの焼却灰の乾燥重量の増加分を、流動焼却炉37に投入される下水汚泥25の単位時間当たりの重量などで除算した値を求め、これら値の比率を発現率として求めるなど類似の指標を使用してもよい。同様にして、流動焼却炉から集塵装置までの煙道における該煙道の圧力損失分を複数の圧力計測値、温度計測値と排ガス流量値により補正して指標(補正差圧ΔPx)を求めているが、流動焼却炉から集塵装置までの煙道に設置された計測器に応じた簡略化された類似の指標を使用してもよい。
本実施形態では、供給装置54は、薬剤の添加を自動的に開始したり、添加する薬剤の添加量を自動的に調整している。しかしながら、発現率や補正差圧の値や、その変化に基づいて供給装置54による薬剤の添加や、添加する薬剤の添加量の調整を手動で行うことも可能である。
本実施形態では、実灰発生量を、所定のサンプル数用いた移動平均により求めているが、流動焼却炉37に投入される下水汚泥25の単位時間当たりの重量や、下水汚泥25の含水率や有機分率を移動平均により求め、移動平均により求めた値を用いて理論灰発生量を求めるなども可能であり、ここに示した信号処理の一例が信号処理の方法を限定するものではない。同様にして、圧力計測値を所定のサンプル数用いた移動平均により求めているが、一次遅れフィルタを用いるなど他の信号処理方法を使用してもよく、ここに示した信号処理の一例が信号処理の方法を限定するものではない。
本実施形態では、図3に示す処理に基づいて薬剤の添加の開始や停止、添加量の調整を実施しているが、補正差圧、補正差圧の変化量、発現率及び発現率の変化量の各々に対して上限値及び下限値を予め設定しておき、算出される発現率や補正差圧、およびそれぞれの変化量のいずれかが上限値を超過する、又は下限値未満となる場合には、制御インターバル時間内であっても薬剤の添加量を調整してもよい。なお、この場合、補正差圧とその変化量に対しては上限値のみを設定しておき、補正差圧とその変化量のいずれかが上限値を超過する場合に、発現率とその変化量に対しては下限値のみを設定しておき、発現率とその変化量のいずれかが下限値未満となる場合に薬剤の添加量を調整してもよい。
なお、補正差圧の上限値は(補正差圧上限値>Th6)、下限値は(補正差圧下限値<Th5)であり、補正差圧の変化量の上限値は(補正差圧変化量上限値>Th2)、下限値は(補正差圧変化量下限値<Th1)であり、発現率の上限値は(発現率上限値>Th8)、下限値は(発現率下限値<Th7)であり、発現率の変化量の上限値は(発現率変化量上限値>Th4)、下限値は(発現率変化量下限値<Th3)であることが好ましい。
本実施形態では、煙道が閉塞に至っていない場合を想定し、補正差圧、発現率が目標値に収束されるように、薬剤の添加の開始や停止、及び添加している薬剤の添加量の調整を行うことで、焼却灰が煙道に付着、堆積することに起因した煙道の閉塞、および焼却灰が流動砂表面に付着し、流動砂粒子同士が結合、造粒することに起因する流動不良を防止している。しかしながら、算出された補正差圧、補正差圧の変化量が著しく高い値となる場合や、発現率、発現率の変化量が著しく低い値となる場合は、この防止効果の発現が遅れ、煙道閉塞や流動不良のリスクが高いことを示している。したがって、算出される補正差圧、補正差圧の変化量が目標値よりも著しく高い所定値を超過する場合や、発現率、発現率の変化量が目標値よりも著しく低い所定値未満となる場合には、制御装置43は、汚泥焼却設備13を一旦停止するように制御することも可能である。なお、上述した各所定値は、過去の経験則などから求められる値であり、その値は、著しく高い所定値は前記それぞれの上限値より高く、著しく低い所定値は前記それぞれの下限値未満であるのが好ましい。
この場合、補正差圧、補正差圧の変化量に対する著しく高い所定値と上限値の間に、また発現率、発現率の変化量に対しては著しく低い所定値と下限値の間に、焼却設備13一旦停止の前段警報設定値を設け、補正差圧、補正差圧変化量が、前記前段警報設定値を超過した場合や、発現率、発現率変化量が前記前段警報設定値未満となった場合に、汚泥焼却設備に設けられたスピーカによる警告音の発生や、汚泥焼却設備13に設置される表示装置や制御装置接続される表示装置による警告表示によって注意喚起を行ってもよい。
また、流動焼却炉37における下水汚泥の焼却において、流動焼却炉37から集塵装置39までの煙道における該煙道の圧力損失が大きく、灰の発現率が低いほど、該煙道内に焼却灰が付着、堆積されていると推測でき、さらに、煙道が閉塞されるほど焼却灰が煙道内面に付着、堆積することが発生しているならば、流動床を形成する流動砂表面に焼却灰が付着して流動不良が発生しかかっていると推測でき、また、その推測結果に基づいて薬剤の添加の開始や停止、およびその添加量を判定することができる。その結果、流動砂粒子の表面に焼却灰や焼却灰の成分が付着、積層することを防止することが可能となる。また、薬剤を添加している場合であっても、焼却排ガス煙道の圧力損失によって焼却後の排ガスの流路内に付着堆積しているか否かの判定を行い、同時に、添加される薬剤の添加量を調整できるので、下水汚泥25の焼却時の薬剤の使用量を抑制でき、薬剤に係るコストを抑制することが可能となる。
また、前記焼却設備13を一旦停止する制御は、自動停止でなくてもよく、汚泥焼却設備に設けられたスピーカによる警告音の発生や、汚泥焼却設備13に設置される表示装置や制御装置接続される表示装置による警告表示によって焼却設備オペレーターに状況判断を促し、焼却設備オペレーターが焼却設備13を一旦停止して煙道清掃を行ったり、流動砂の交換を行うなどの処置が必要と判断した場合に、焼却設備オペレーターの手動操作によって焼却設備を停止するようにしてもよい。
本実施形態では、汚泥焼却設備を構成する機器や要素に付着、堆積する、汚泥由来の焼却排ガスに含有される化合物を有害化合物とみなし、その有害化合物が汚泥焼却設備の機器や要素に付着、堆積することに起因した排ガス流路の閉塞や流動不良を防止する薬剤を適切な量供給可能とする汚泥焼却設備および汚泥焼却方法を提供することを目的とすることから流動焼却炉を対象としているが、下水汚泥を焼却したときに発生する焼却灰が煙道に付着、堆積することに起因した煙道の閉塞を防止するという目的に限定して、流動焼却炉以外の焼却炉(例えばストーカー式)への適用を否定するものではない。