JP5711348B1 - 下水汚泥の焼却処理方法、下水処理方法、及び下水処理設備 - Google Patents

下水汚泥の焼却処理方法、下水処理方法、及び下水処理設備 Download PDF

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Abstract

【課題】リンを含有する下水の脱水汚泥を、流動焼却炉により840℃〜900℃で焼却処理するにあたり、焼却炉出口側の排ガス流路の内面に焼却灰が付着、堆積して、排ガス流路の詰りや損傷、折損等が生じることを、確実かつ安定して防止する。【解決手段】少なくとも余剰汚泥を含む脱水汚泥を、流動焼却炉により焼却処理する下水汚泥の焼却処理方法において、流動焼却炉に供給される脱水汚泥中のNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とから下記の(1)式によって求められるX1の値が1.0以上となるように、流動焼却炉で焼却される脱水汚泥の成分を調整することを特徴とする下水汚泥の焼却処理方法。X1={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol?2)+Mg(mol?2)+Al(mol?3)+Fe(mol?3)}/P(mol?3)・・(1)【選択図】図1

Description

本発明は、リンを多量に含有する下水汚泥を、流動焼却炉によって焼却処理する方法、およびその汚泥焼却処理を組み込んで下水を処理する方法、さらに下水処理設備に関するものである。
周知のように、生活排水などの下水を処理するための方法としては、一般に図5に示すようなプロセスが適用されている。すなわち、概略的には、下水を浄化処理するとともに、汚泥を下水から分離、取り出すための水処理工程1と、水処理工程1で分離、取り出された汚泥を濃縮、脱水して脱水汚泥とする汚泥処理工程3と、脱水汚泥を焼却炉により焼却する汚泥焼却工程5とを有している。
ここで、前記水処理工程1における水浄化処理方法としては、一般には微生物を利用した活性汚泥法を適用するのが通常であり、またそれにいくつかの処理方法を組み合わせるのが通常である。また汚泥焼却工程5では、流動焼却炉を用いることが多い。
さらに下水を処理するための従来の一般的なプロセスの一例の全体構成を、より具体的に図6に示す。
図6の例における水処理工程1では、外部からの流入下水10は、先ず沈砂池11に流入し、大きなゴミや土砂が除去された後、最初沈殿池12に流入し、初沈汚泥(後述する生汚泥に相当する)と上澄み水とに物理的に分離され、その上澄み水(排水)は、反応槽13に流入して、活性汚泥法による浄水化がなされる。すなわち、排水に、微生物を含む活性汚泥が、送風機14からの空気によるエアレーションによって混合、曝気され、排水中の有機物が分解される。さらにその反応槽13からの活性汚泥と混合した排水は、最終沈殿池15に流入し、活性汚泥と排水とが物理的に分離され、活性汚泥は反応タンクに戻され、その一部は余剰汚泥として引き抜かれる。そして最終沈殿池15からの上澄み水は、浄化済の水(浄化水)16として放流されたり、あるいはさらに高度処理が施されたりしてから放流される。
また汚泥処理工程3では、最初沈殿池12から引き抜かれた初沈汚泥(生汚泥)を、生汚泥濃縮手段としての例えば重力濃縮槽31において沈殿させ、その重力濃縮槽31における沈殿物(濃縮生汚泥)を、生汚泥受槽32を経て、後述する混合ポイント33に送給する。一方、最終沈殿池15で沈殿された活性汚泥の一部は余剰汚泥として、最終沈殿池15から引き抜かれ、余剰汚泥貯留槽34を経て、余剰汚泥濃縮手段としての例えば遠心濃縮機35に送られ、この遠心濃縮機35で水と分離された濃縮余剰汚泥は、混合ポイント33に送られる。そして、混合ポイント33で濃縮生汚泥と濃縮余剰汚泥が混合され、その混合濃縮汚泥は、例えば混合汚泥貯留槽36及び濃縮混和槽37を介して例えばベルトプレス脱水機などの脱水機38に供給される。そして脱水機38により脱水されて、ある程度固化した状態、例えばケーキ状等となった状態で、圧送ポンプや搬送コンベヤなどの送給装置39によって、脱水汚泥として次の汚泥焼却工程5に送られる。
汚泥焼却工程5は、砂などの流動媒体に熱風を吹き込んで流動床を形成し、その流動床中で脱水汚泥を加熱し、焼却する流動焼却炉51を備えている。この流動焼却炉51は、ブロア52から空気予熱器53で加熱された高温の空気(熱風)が下部(流動床の下側)から吹き込まれるように構成されている。なお、運転状況によっては、熱風発生炉54で高温の空気を更に加熱することもある。そして、汚泥処理工程3の送給装置39から送給された脱水汚泥が、定量フィーダや投入コンベヤ、投入ポンプなどの供給機55によって流動焼却炉51内に供給され、焼却される。このとき、焼却灰(焼却残渣物質;ダスト)が、排ガスとともに流動焼却炉51の頂部から排出され、煙道56を通って空気予熱器53に導かれる。空気予熱器53は、ブロア52からの空気と流動焼却炉51の排ガスとを熱交換して、ブロア52からの空気を予熱する。一方空気予熱器53を通過した流動焼却炉51からの排ガスは、集塵機57に導かれてダスト(焼却灰)が除去され、さらに必要に応じて図示しない冷却吸収塔などを経て大気中に放出される。また、集塵機57で補集された焼却灰は、必要に応じてリン回収設備に供給されて、有効活用される。
前述のように流動焼却炉を用いた汚泥焼却工程5においては、流動焼却炉の排出口からは、焼却灰(ダスト)が排ガスに同伴して排出される。そのため、流動焼却炉の排出側の煙道や、熱交換器である空気予熱器付近において、焼却灰が付着して、粘着性を有する状態で堆積してしまい、その結果、煙道での排ガスの流れが阻止されてしまったり、空気予熱器の例えばヘッダー部分において詰りが生じてしまうことがある。その場合には、安定した連続操業を続けられなくなってしまい、また空気予熱器の損傷を招いたりしてしまう。
ここで、空気予熱器は、流動焼却炉から排出された高温の排ガス(ダスト同伴)と、流動焼却炉内に砂などの流動媒体を流動させるために吹き込む空気とを熱交換するための熱交換器を構成している。空気予熱器の一例を図7に示す。
図7において空気予熱器53は、その上端部に、水平な上部管板53Aによって区分される上部ヘッダー室53Bが形成され、また下端部に、水平な下部管板53Cによって区分される下部ヘッダー室53Dが形成されている。上部管板53Aと下部管板53Cとの間には、多数の管体(排ガス流通管)53Eが、間隔を置いて鉛直方向に沿ってされ、その多数の排ガス流通管53Eの上端開口部分53F及び下端開口部分53Gが、それぞれ上部管板53A、下部管板53Cに溶接接合されている。そして上部管板53Aと下部管板53Cとの間における各排ガス流通管53Eの間及び周囲が、空気流通空間53Hとされている。
このような空気予熱器53において、流動焼却炉51の排ガス排出口51aから排出された高温のダスト同伴排ガスは、煙道56を経て上部ヘッダー室53Bに導入され、多数の排ガス流通管53Eを通って下部ヘッダー室53Dから排出され、前述の集塵機に導かれる。一方、予熱すべき空気は、各排ガス流通管53Eの間及び周囲の空気流通空間53Hを流れ、その間に各排ガス流通管53Eからの熱によって予熱される。
ここで、流動焼却炉51から煙道56を経て上部管板53B内に導かれたダスト同伴排ガスは、上部ヘッダー室53Bから多数の排ガス流通管53E内に、上部管板53Aに開口している上端開口部分53Fを経て流入することになる。そしてその際には、上部管板53Aにおける開口部分53F付近に焼却灰が付着・堆積しやすい。そして堆積物が成長すれば、その開口部分53Fに詰りが生じ、排ガスが排ガス流通管53Eに流入しなくなることがある。
またここで、このような詰りは、均一に生じるのではなく、一部の排ガス流通管の開口部分に生じることが多い。その場合、詰りが生じた排ガス流通管53Eは、高温の排ガスが流通しないため高温とはならず、したがって高温の排ガスに接している上部管板53Aとの温度差が大きくなり、また詰りの位置によっては下部管板53Cとの温度差も大きくなり、それらに伴う熱膨張差によって排ガス流通管53Eの上端開口部分と上部管板53Aとの接合箇所や、下部管板53Cと排ガス流通管53Eの下端開口部分との接合箇所に亀裂が発生してしまい、空気漏れが生じるばかりでなく、排ガス流通管の折損、破壊が生じてしまう。
以上のような事情から、流動焼却設備を安定して連続運転させ、かつ空気予熱器などの機器の損傷、破壊を防止するために、流動焼却炉からの焼却灰の付着・堆積を防止する方法の確立が強く望まれている。
ところで、汚泥焼却灰が流動焼却炉の出側の煙道や空気予熱器において付着・堆積する現象は、流動焼却炉内で焼却灰の少なくとも一部が溶融して粘着性が生じ、その粘着性を示すようになった焼却灰が流動焼却炉の出側で排ガス流路壁面などに付着し、さらに焼却灰粒子同士が粘着して、堆積してしまうためと考えられている。なお、このように少なくとも一部が溶融して粘着性を生じた焼却灰は、その後、冷却された場合には固化して、いわゆる焼結された状態となる。したがって、焼却炉の運転を停止させた状態で焼却灰の堆積物を観察すれば、その堆積物は焼結された状態で観察されることになる。そこで、本明細書中でも、冷却されて固化した状態の焼却灰堆積物については、「焼結されている」との表現を用いることがある。
ところで、一般に汚泥焼却灰の溶融・焼結の管理においては、塩基度(CaO/SiO)という概念が用いられており、その塩基度(CaO/SiO)によって焼却すべき汚泥を管理することが考えられている。しかしながら、塩基成分や酸(酸化物)成分が多様でかつその成分比も大きく変化する下水汚泥の焼却においては、CaO/SiOによる管理では、実操業上は焼却灰の溶融挙動を適切に制御して、前述のような焼却炉出口側での焼却灰の付着、堆積による問題を解決することは困難であった。
そこで、塩基度(CaO/SiO)に変わる様々な指標が従来から提案されている。例えば特許文献1においては、下水汚泥焼却における灰付着性予測方法として、焼却処理される下水汚泥を酸化雰囲気下で焼却することにより得られる焼却灰中のFe、CaO、NaO、KO、MgO、SiO、Al、TiO、及びPの各成分の含有量を予め特定し、特定された各焼却灰成分の組成に基づき、次の式(2)で算出される指標A:
指標A=([Fe]+[CaO]+[NaO]+[KO]+[MgO])/([SiO]+[Al]+[TiO])×[P]/100・・・(1)
(但し、式(2)中、各要素は、各成分の合計量に対する各構成成分の質量割合(質量%)である)
を求め、その指標Aの値によって焼却灰の付着性を予測して、操業を中断して付着する灰を除去するための時期を見極めたり、焼却炉における単位時間当たりの下水汚泥の処理量を調整することにより灰付着を抑制したり、さらには指標Aに基づいて、処理される下水汚泥の組成を調整する、などの管理を行うことが提案されている。
また一方、下水には、リンが含まれていることが知られており、下水処理場の水処理設備では、リンを汚泥側に分離する技術が知られている。またリンは有価物であることから、下水中や、下水汚泥の焼却灰からリンを回収処理する技術も開発されている(例えば特許文献2等)。
特許第4871329号公報 特開平8−238499号公報
前記特許文献1に示されるような指標Aを用いても、実操業上は、流動焼却炉の出側における焼却灰の付着、堆積に起因する排ガス流路の詰りや亀裂発生を確実かつ安定して防止することが困難となる場合があり、特に下水汚泥中のリン濃度が高く、かつ流動焼却炉における焼却温度が840℃程度以上(900℃程度以下)の場合には、上記の問題を安定的に、しかも安価に解決することは困難であった。すなわち、地球温暖化防止やその他の環境問題の観点から、焼却炉からの排ガスに、温室効果ガスであるNOができるだけ含まれないことが望まれ、そのためには、流動焼却炉における焼却温度を840℃程度以上、望ましくは850℃以上とすることが望まれる。なお、焼却炉の内壁部材や、焼却炉出口のダクトの耐熱性などから、840℃以上であっても一般には900℃以下の温度域が最適である。
しかるに、このような840〜900℃の温度域で流動焼却炉を運転した場合、それより低温で運転した場合と比較して、焼却灰の付着、堆積による問題が発生する頻度が格段に高くなることが本発明者等の経験で明らかとなっている。しかしながら、前述のような従来の一般的な塩基度(CaO/SiO)による管理、あるいは特許文献1に示されるような指標値Aを用いての管理では、840〜900℃程度以下の温度域での運転時における焼却灰の付着、堆積による詰りなどを確実かつ安定的に、しかも安価に防止することは困難であった。
なお特許文献2に示される技術は、単に汚泥中からのリンの回収を図るためのものに過ぎず、焼却炉の高温運転時における流動焼却炉の出側における焼却灰の付着、堆積に起因する問題を解決しようとするものではない。
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、リン含有量が多い下水の脱水汚泥を、流動焼却炉によって840℃以上、900℃以下の温度で焼却処理するにあたって、焼却炉の出口側の排ガス流路、例えば煙道や空気予熱器などの内面に焼却灰が付着、堆積して、排ガス流路の詰りや損傷、折損等が生じることを、確実かつ安定的に、しかも安価に防止することを課題とするものである。
前述のような課題を解決するべく、本発明者等が流動焼結炉の出側における焼却灰の付着、堆積の発生状況について、調査、検討を重ねた。なおここで、実際の焼却灰の付着、堆積の発生状況は、焼却炉の運転を停止して、流動焼結炉の出側の排ガス流路部品を分解して調べるため、付着、堆積した焼却灰は、高温によって溶融した後、冷却過程で凝固した状態、すなわちいわゆる焼結された状態で調べることになる。そしてこのような焼結灰の焼結状況について調査、検討を行った結果、次のような知見が得られた。
すなわち、先ず第1の知見として、焼却灰の焼結は、一般的に下水焼却灰の融点として知られている1100℃以上と比較して低い900℃以下で起こっていることが判明した。
また第2の知見として、焼却炉に供給される脱水汚泥中のリン濃度が高くなるほど焼結が生じやすくなることが判明した。
ここで、既に述べたように従来の一般的な汚泥の焼却のための管理では塩基度(CaO/SiO)による管理を行っており、また特許文献1に示されるような管理指標値Aも、Alなどの他成分も加味してはいるが、基本的にはCaO、SiOを主体とする成分比とされている。しかしながら、本発明で問題としている焼却灰の焼結は、一般のSiOやCaO、Alなどが灰成分の主体である場合の溶融温度よりかなり低温(ここでは、900℃以下)の温度域で起こっている。SiOや、Alなどの高融点物質の溶融は、900℃程度以下の温度域では生じないことから、これらの物質は840〜900℃の焼却温度では主体的な反応物質としては働かないものと考えられる。そしてそのため、従来の一般的な汚泥の焼却のための塩基度(CaO/SiO)による管理や、特許文献1に示されるような指標値Aによる汚泥管理では、840〜900℃程度の温度域での運転時における焼却灰の付着、堆積による詰りなどを確実かつ安定的に、しかも安価に防止することが困難であったと考えられる。
そこで、塩基度(CaO/SiO)や、それに類する特許文献1に示されるような管理指標値Aとは全く異なる指標を用いて、汚泥成分を管理する必要があると本発明者等は考えた。そして、前述のような第1〜第3の知見に基づき、流動焼却炉に供給された汚泥中のリン酸が840〜900℃程度の温度域まで加熱される間の昇華もしくは分解、それに伴う他のリン酸化合物への変化、さらにその溶融といった、リン酸の挙動が焼結灰の粘着性増加(焼結)に大きな影響を与えていると考え、種々実験検討を重ねた。その結果、流動焼却炉内で焼却される汚泥の成分として、リン酸に対して、塩基物質(とりわけAl、FeO3、Na、KO、CaO、MgO)を充分に含有させておくことにより、840〜900℃程度の温度域で溶融しやすいリン化合物の生成を抑制し、前述の問題を解決し得ることを見出した。
ここで、リン化合物としては多種多様のものがあり、リン化合物の沸点・融点も多様である。しかもあるリン化合物が分解して他のリン化合物に変化することによって、その沸点・融点も変化することが知られている。例えば生活排水などの下水中に含まれることが多いリン化合物や、その加熱による昇華・分解によって生成されると考えられるリン化合物の代表的な例について、それらの沸点・融点を表1に示す。
Figure 0005711348
表1に示しているように、五酸化リン、リン酸、リン酸二水素塩やリン酸一水素塩などのリン酸化合物は、600℃程度以下の比較的低温度域で昇華したり分解したりして、他の物質と反応する。このとき、塩基類が十分存在しない状態では、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウムなど、融点が600〜900℃程度の中温度域にあるポリリン酸アルカリ塩を生成することが多い。
このことから、流動焼却炉では、炉内に供給された汚泥が温度上昇して、先ず汚泥中に含まれる600℃以下の低沸点の遊離リン酸やリン酸アルカリ塩などのリン酸化合物が、炉内で強反応物質として他分子と反応し、中温度域(600〜900℃程度)の融点を有するポリリン酸アルカリ塩などを生成し、さらにこのような中温度域(600〜900℃程度)の融点のリン酸化合物の生成量が多くなれば、その灰成分中の化合物の中温度域での溶融によって焼結灰粒子の粘着性が増し、焼却炉出口側において排ガス流路内面に付着しやすくなるとともに、焼結灰粒子同士が結合しやすくなり、堆積が進行しやすくなってしまうものと考えられる。このことは、前述の第1〜第3の知見とよく符合する。
また一方、リン酸は、塩基類が十分に存在すれば、900℃程度以上の比較的融点の高いリン酸塩、例えば表1に示したリン酸アルミニウム(AlPO4)や、リン酸カリウム(KPO)を生成することが知られている。そこで、汚泥中のリン酸に対して塩基類が充分に存在していれば、これらの高融点のリン酸塩に変化して、高温でも焼却灰の溶融が開始して焼却灰の粘着性が増すことを防止可能となると考えられる。
しかしながら実際上は、下水の生物学的リン処理過程(活性汚泥処理過程)においては、リン含有量が高くなるほど、結果的に、リン(リン酸)に対する塩基物質の割合が低下する。このことが、実機の焼却炉内では、リン酸、リン酸二水素塩やリン酸一水素塩の形態から、中温度域(600〜900℃程度)の融点を有するポリリン酸アルカリ塩などを生成しやすい状況を招き、焼結灰の溶融温度を低下させるものと考えた。
そしてこれらの知見・検討から、流動焼却炉で焼却される汚泥中に含まれるリン(リン酸)に対する塩基物質の量を予め増加させておけば、前述の問題を解決し得ると考えた。そしてさらに実験、検討を重ねた結果、汚泥中における塩基物質類のうちでも、特にNa、K、Ca、Mg、Al、Fe、そのほかCu、Zn,Ba等の各イオンを含有する塩基物質(例えばKO、NaO、CaO、MgO、Al3、およびFe等、あるいはこれらのほか、更にCuO,ZnO、BaO等)のリン酸POに対する割合を評価値(指標)として用いれば、前述のような840〜900℃の温度域における焼結灰の付着、堆積のしやすさを評価し得ることを見出した。すなわち、840〜900℃の温度域における焼結灰の付着、堆積のしやすさは、焼却原料(脱水汚泥)成分中のリン量(mol×3 価)と、塩基類を形成するNa、K、Ca、Mg、Al、Feの総量(mol×価数の総量)、もしくはNa、K、Ca、Mg、Al、Fe、Cu、Zn、Baの総量(mol×価数の総量)との比によって予測し得ることを見出した。
具体的には、脱水汚泥中に含有される各成分の割合をmol換算して求めた下記(1)式のX1の値、もしくは下記(2)式のX2の値(以下これらを評価値X1、評価値X2と記す)
X1={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)}/P(mol×3)・・・(1)
X2={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)+Cu(mol)+Zn(mol)+Ba(mol×2)}/P(mol×3)・・・(2)
が、1.0以上であれば、840〜900℃の温度域において焼結灰が溶融しにくくなって、その付着、堆積の問題が生じにくくなること、さらに評価値X1もしくはX2が1.05以上であれば、より確実かつ安定して付着、堆積を防止し得ることを見出した。
そしてさらにその評価値Xを用いて、焼却炉で焼却する脱水汚泥の成分を調整すれば、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
具体的には、本発明の基本的な態様(第1の態様)の下水汚泥の焼却処理方法は、
少なくとも余剰汚泥を含む脱水汚泥を、流動焼却炉により焼却処理する下水汚泥の焼却処理方法において、
焼却処理温度を840〜900℃の範囲内の温度とし、
かつ流動焼却炉に供給される脱水汚泥中の各成分のうちのNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とを、脱水汚泥を流動焼却炉に供給する前に分析して、下記の(1)式によってX1の値を求め、その(1)式によって求められるX1の値が1.0以上となるように、流動焼却炉で焼却される脱水汚泥の成分を調整することを特徴とするものである。
X={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)}/P(mol×3)・・・・・・(1)
さらに本発明の第2の態様の下水汚泥の焼却処理方法は、前記第1の態様の下水汚泥の焼却処理方法において、
前記流動焼却炉に供給される脱水汚泥中の各成分のうちの前記Na、K、Ca、Mg、Al、Feのほか、更にCu、Zn、Baのそれぞれの含有量と、前記Pの含有量とを、脱水汚泥を流動焼却炉に供給する前に分析して、前記(1)式によるX1の値に代えて下記の(2)式によって求められるX2の値が1.0以上となるように、流動焼却炉で焼却される脱水汚泥の成分を調整することを特徴とするものである。
X2={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)+Cu(mol)+Zn(mol)+Ba(mol×2)}/P(mol×3)・・・(2)
さらに本発明の第3の態様の下水汚泥の焼却処理方法は、前記第1、第2のいずれかの態様の下水汚泥の焼却処理方法において、
前記X1もしくはX2の値が1.0未満である場合に、前記脱水汚泥を、少なくともFeイオン、Alイオン、Caイオンのうちのいずれか1種以上を含有する塩基物質の添加もしくは増量によって調整することを特徴とするものである。
また本発明の第4の態様の下水汚泥の焼却処理方法は、前記第3の態様の下水汚泥の焼却処理方法において、
前記塩基物質が、ポリ塩化アルミニウムポリ硫酸第2鉄、及び炭酸カルシウムのうちのいずれか1以上を含む物質であることを特徴とするものである。
さらに本発明の第5の態様の下水汚泥の焼却処理方法は、前記第1〜第4の態様のうちのいずれかの態様の下水汚泥の焼却処理方法において、
前記脱水汚泥が、余剰汚泥と生汚泥とが混合されたものであることを特徴とする。
また本発明の第6の態様の下水汚泥の焼却処理方法は、前記第1〜第5の態様のうちのいずれかの態様の下水汚泥の焼却処理方法において、
脱水汚泥中の各成分の前記分析を、期間を置いて行うことを特徴とするものである。
さらに第7〜第13の態様では、上記のような汚泥焼却方法を用いた下水処理方法、すなわち流動焼却炉を適用した汚泥焼却工程を組み入れた下水処理方法の全体的なプロセスを規定している。
すなわち本発明の第7の態様の下水処理方法は、
少なくとも活性汚泥処理段階を含む水処理によって、下水を浄化処理するとともに、余剰汚泥を含む汚泥を水から分離、取り出すための水処理工程と、
前記水処理工程で分離、取り出された汚泥を濃縮し、脱水して脱水汚泥とする汚泥処理工程と、
前記脱水汚泥を流動焼却炉により焼却する汚泥焼却工程と
を有する下水の処理方法において、
前記流動焼却炉により、840〜900℃の範囲内の温度で脱水汚泥を焼却するにあたり、
流動焼却炉で焼却される脱水汚泥中の各成分のうちのNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とを、流動焼却炉に供給する前に分析し、前記(1)式によってXの値を求め、そのXの値が1.0以上となるように、前記水処理工程から汚泥処理工程を経て焼却工程に至るまでの間において汚泥の成分を調整することを特徴とするものである。
また本発明の第8の態様の下水処理方法は、第7の態様の下水処理方法において、
前記流動焼却炉に供給される脱水汚泥中の各成分のうちの前記Na、K、Ca、Mg、Al、Feのほか、更にCu、Zn、Baのそれぞれの含有量と、前記Pの含有量とから、前記(1)式によるX1の値に代えて前記(2)式によって求められるX2の値が1.0以上となるように、流動焼却炉で焼却される脱水汚泥の成分を調整することを特徴とするものである。
また本発明の第9の態様の下水処理方法は、第7もしくは第8の態様の下水処理方法において、
流動焼却炉に供給する前の脱水汚泥のX1もしくはX2の値が1.0未満である場合に、前記水処理工程から汚泥処理工程を経て焼却工程に至るまでの間においてFeイオン、Alイオン、Caイオンのうちの1種以上を含有する塩基物質の添加、もしくはその塩基物質添加量の増量を行うことを特徴とするものである。
また本発明の第10の態様の下水処理方法は、第9の態様の下水処理方法において、
前記水処理工程を実施するための水処理設備が、活性汚泥法によって排水を処理する反応槽と、その反応槽で反応した後の余剰汚泥を沈殿させる最終沈殿池とを含み、
かつ前記汚泥処理工程を実施するための汚泥処理設備が、汚泥を脱水する脱水機を含み、
前記最終沈殿池から余剰汚泥を引き抜いて前記脱水機に至らせるまでの間、もしくは前記脱水機から流動焼却炉内に至るまでの間の、いずれか1以上の箇所において前記塩基物質の添加、もしくはその塩基物質添加量の調整を行なうことを特徴とするものである。
また本発明の第11の態様の下水処理方法は、第9の態様の下水処理方法において、
前記水処理工程を実施するための水処理設備が、物理的に排水から生汚泥を分離するための最初沈殿池と、活性汚泥法によって排水を処理する反応槽と、その反応槽で反応した後の余剰汚泥を沈殿させる最終沈殿池とを含み、
かつ前記汚泥処理工程を実施するための汚泥処理設備が、汚泥を脱水する脱水機を含み、
前記最初沈殿池から生汚泥を引き抜くとともに前記最終沈殿池から余剰汚泥を引き抜いて生汚泥と余剰汚泥を混合し、さらに前記脱水機に至らせるまでの間、もしくは前記脱水機から流動焼却炉内に至るまでの間の、いずれか1以上の箇所において前記塩基物質の添加、もしくはその塩基物質添加量の調整を行なうことを特徴とするものである。
さらに本発明の第12の態様の下水処理方法は、第9〜第11のいずれかの態様の下水処理方法において、
前記塩基物質が、ポリ塩化アルミニウムポリ硫酸第2鉄、及び炭酸カルシウムのうちのいずれか1以上を含む物質であることを特徴とするものである。
また本発明の第13の態様の下水処理方法は、第7〜第12のいずれかの態様の下水処理方法において、
脱水汚泥中の各成分の前記分析を、期間を置いて行うことを特徴とするものである。
また一方、第14〜第17の各態様では、上記の下水処理方法を実施するための下水処理設備を規定している。
すなわち本発明の第14の態様の下水処理設備は、
少なくとも活性汚泥処理段階を含む水処理によって、下水を浄化処理するとともに、余剰汚泥を含む汚泥を水から分離、取り出すための水処理設備と、
前記水処理設備で分離、取り出された汚泥を濃縮し、脱水して脱水汚泥とする汚泥処理設備と、
前記脱水汚泥を流動焼却炉により焼却する汚泥焼却設備と
を有する下水の処理設備において、
前記水処理設備は、活性汚泥法によって排水を処理する反応槽と、その反応槽で反応した後の余剰汚泥を沈殿させる最終沈殿池とを含み、
前記最終沈殿池から余剰汚泥を引き抜いて前記脱水機に至らせるまでの間、もしくは前記脱水機から流動焼却炉内に至るまでの間の、いずれか1以上の箇所に、Feイオン、Alイオン、Caイオンのうちの1種以上を含有する塩基物質を添加するための添加装置が設けられており、
しかも前記汚泥処理設備と前記流動焼却炉との間に、脱水汚泥中のNa、K、Ca、Mg、Al、Fe、Cu、Zn、Baの各成分のうち少なくともNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とを分析するための分析装置が設けられており、
さらに、前記分析装置による分析結果に基づいて、前記(1)式によるX1の値もしくは前記(2)式によるX2の値を求める演算装置を有し、
前記演算装置によって求められたX1もしくはX2の値に応じて前記添加装置を制御するように構成したことを特徴とするものである。
また本発明の第15の態様の下水処理設備は、
少なくとも活性汚泥処理段階を含む水処理によって、下水を浄化処理するとともに、余剰汚泥を含む汚泥を水から分離、取り出すための水処理設備と、
前記水処理設備で分離、取り出された汚泥を濃縮し、脱水して脱水汚泥とする汚泥処理設備と、
前記脱水汚泥を流動焼却炉により焼却する汚泥焼却設備と
を有する下水の処理設備において、
前記水処理設備が、物理的に排水から生汚泥を分離するための最初沈殿池と、活性汚泥法によって排水を処理する反応槽と、その反応槽で反応した後の余剰汚泥を沈殿させる最終沈殿池とを含み、
かつ前記汚泥処理設備が、汚泥を脱水する脱水機を含み、
その汚泥処理設備には、前記最初沈殿池から生汚泥を引き抜くとともに前記最終沈殿池から余剰汚泥を引き抜いて生汚泥と余剰汚泥を混合し、さらに前記脱水機に至らせるまでの間、もしくは前記脱水機から流動焼却炉内に至るまでの間の、いずれか1以上の箇所に、Feイオン、Alイオン、Caイオンのうちの1種以上を含有する塩基物質を添加するための添加装置が設けられており、
しかも汚泥処理設備と前記流動焼却炉との間に、脱水汚泥中のNa、K、Ca、Mg、Al、Fe、Cu、Zn、Baの各成分のうち少なくともNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とを分析するための分析装置が設けられており、
さらに、前記分析装置による分析結果に基づいて、前記(1)式によるX1の値もしくは前記(2)式によるX2の値を求める演算装置を有し、
前記演算装置によって求められたX1もしくはX2の値に応じて前記添加装置を制御するように構成したことを特徴とするものである。
そしてまた本発明の第16の態様の下水処理設備は、第14、第15のいずれかの態様の下水処理設備において、
前記添加装置が、ポリ塩化アルミニウムポリ硫酸第2鉄、及び炭酸カルシウムのうちのいずれか1以上を含む物質を添加する装置であることを特徴とするものである。
本発明によれば、リン含有量が多い下水の脱水汚泥を、流動焼却炉によって840℃以上、900℃以下の温度で焼却処理するにあたって、焼却炉の出口側の排ガス流路、例えば煙道や空気予熱器などの内面に焼却灰が付着、堆積して、排ガス流路の詰りや損傷、折損等が生じることを、確実かつ安定して防止することができ、そのため排ガス流路の詰りや排ガス流路構成部品の熱膨張差に起因する亀裂発生や折損の発生を確実かつ安定して防止することができ、そのため汚泥焼却炉の安定した連続運転が可能となるとともに、空気予熱器などの耐用寿命を延長することができる。
本発明の下水汚泥の焼却処理方法を組み入れた下水処理方法を実施するプロセスの全体を概略的に示すフロー図である。 図1に示す下水処理方法を、より具体化して示すフロー図である。 本発明の下水汚泥の焼却処理方法を実施するにあたって、汚泥焼却灰の非焼結/焼結を判定するためのデジタルフォースゲージの一例の概略を示す側面図である。 汚泥焼却灰の非焼結/焼結の状況の目視による評価とデジタルフォースゲージによる破断時の力との関係についての実験結果を示すグラフである。 従来の一般的な下水処理方法の一例の概要を示すフロー図である。 従来の下水処理方法のより具体的な構成を模式的に示すフロー図である。 流動焼結炉からの排ガスを用いて、流動焼結に送り込む空気を予熱するための予熱炉の概略を示す縦断面図である。
以下に、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
〔本発明の一実施形態の概要〕
本発明の下水汚泥の焼却処理方法を組み込んだ下水処理方法の全体的な概略的なフローを図1に示す。なお図1において、図5に示した工程と同一の工程には、図5と同一の符号を付す。
図1に示すように、下水処理方法の全体としては、従来と同様に、下水を浄化処理するとともに、汚泥を下水から分離、取り出すための水処理工程1と、水処理工程1で分離、取り出された汚泥を濃縮、脱水して脱水汚泥とする汚泥処理工程3と、脱水汚泥を焼却炉により焼却する汚泥焼却工程5とを有している。
ここで、水処理工程1における水浄化処理方法としては、一般には微生物を利用した活性汚泥法を適用するのが通常であり、本発明の場合も、活性汚泥法による処理段階を含むこととしている。したがって汚泥焼却工程5に供給される脱水汚泥中には、少なくとも活性汚泥法による処理の沈殿物(余剰汚泥)が含まれていることになる。但し、後に示す水処理工程の具体例では、活性汚泥法による処理の前段階として、物理的に下水から汚泥(生汚泥)を分離するための最初沈殿池による物理的分離処理段階をも有することとしている。したがってこの場合には、汚泥焼却工程5に供給される脱水汚泥中には、余剰汚泥と生汚泥との両者が混合されて含まれていることになる。
また汚泥焼却工程5では、流動焼却炉を用いることとしている。この流動焼却炉における汚泥焼却工程5では、脱水汚泥を、840〜900℃の範囲内の温度、望ましくは850〜900℃の範囲内の温度で焼却する。焼却温度が850℃未満、特に840℃未満では、流動焼却炉の出側の排ガス流路(煙道や空気予熱器)において、焼却灰の粘着性増加による流路内面への灰の付着、堆積が生じにくいから、本発明の特有の効果が顕著には発揮されなくなる。また焼却温度が850℃未満、特に840℃未満では、焼却炉からの排ガス中に、温室効果が大きいNOやNOxが含まれやすくなってしまう。これに対して、焼却温度が900℃を越えれば、焼却炉の構成部品の耐熱性の問題が生じる。そこで流動焼却炉における焼却温度は、840〜900℃、望ましくは850〜900℃の範囲内の温度とした。ここで、流動焼却炉における焼却処理温度とは、流動焼却炉側壁に設置された複数の温度計によって測定された炉内温度のうちの最高温度、もしくは流動焼却炉の出側の排ガス流路に設けられた温度計によって測定される温度(焼却炉からの排ガス温度)を意味する。
脱水汚泥は流動焼却炉によって焼却処理され、焼却灰は、排ガスとともに流動焼却炉から排出されて、集塵機で補集される。補集された焼却灰は、リン回収工程9に送られ、焼却灰中のリン成分が回収される。回収されたリン成分は肥料などに使用することができる。
本発明の汚泥焼却方法を実施するに当たっては、流動焼却炉に供給される脱水汚泥中のNa、K、Ca、Mg、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とから下記の(1)式によって求められる評価値X1の値が1.0以上となるように、脱水汚泥の成分を事前に調整する。
X1={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)}/P(mol×3)・・・(1)
あるいは、上記の(1)式による評価値X1に代えて、流動焼却炉に供給される脱水汚泥中のNa、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Zn、Baのそれぞれの含有量と、Pの含有量とから下記の(2)式によって求められる評価値X2の値が1.0以上となるように、脱水汚泥の成分を事前に調整する。
X2={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)+Cu(mol)+Zn(mol)+Ba(mol×2)}/P(mol×3)・・・(2)
このような脱水汚泥の成分についての評価値X1もしくはX2を調整するため、汚泥脱水工程3から汚泥焼却工程5との間において、脱水汚泥を流動焼却炉に供給する前にサンプリングし、脱水汚泥中に含まれるNa、K、Ca、Mg、Al、Fe、Pの量、あるいはこれらのほかさらにCu、Zn、Baの量を分析し、その分析値から、適宜の演算装置により上記の(1)式もしくは(2)式によって評価値X1もしくはX2を算出する(分析・評価工程7)。
ここで、(2)式で表わされる数式の分子であるNa、K、Ca、Mg、Al、Fe、Cu、Zn、Baの各成分のうち、Cu、Zn、Baは、その他の成分(Na、K、Ca、Mg、Al、Fe)と比較して、汚泥中に含有される量が少ない成分であり、したがって焼結に及ぼす影響も小さいのが通常である。そこで、評価値X1を規定する(1)式では、Cu、Zn、Baは省き、評価値X2について規定する(2)でCu、Zn、Baをも考慮にいれることとした。
(1)式による評価値X1を用いるか、あるいは(2)式による評価値X2を用いるかは、任意に選択可能であり、例えば汚泥中にCu、Zn、Baがほとんど含まれないと予想される場合には(1)式による評価値X1を用いればよく、逆に汚泥中にCu、Zn、Baがある程度含まれると予想される場合には、(2)式による評価値X2を用いればよい。またそのほか、分析機器による制約や分析時間などを考慮して、いずれかを選択することもできる。なお、(2)式においてCu、Zn、Baの成分量は数式の分子であるから、汚泥中にCu、Zn、Baが含まれる場合であっても、(1)式による評価値X1の値が1.0以上であれば、(2)式による評価値X2は必ず1.0以上の値となる。したがって汚泥中にある程度のCu、Zn、Baが含まれる場合であっても、(1)式による評価値X1を1.0以上に規制することは、焼結防止の点から有効であると言うことができる。
ここで、脱水汚泥のサンプリング及び分析は、一定期間を置いて行えばよい。例えば毎日定時に一回サンプリングして分析したり、また数日おき、1週間おき、あるいは数週間おき、1ヶ月おきなど、適宜の期間を置いてサンプリングして分析すればよいが、下水成分の季節的変動等を考慮して、できるだけ短い期間を置いてサンプリングすることが望ましく、汚泥処理施設で処理される生汚泥の処理量、余剰汚泥の処理量の比が変動する場合は適宜サンプリングすることが好ましい。
なお場合によっては、常時連続的に分析してもよいことはもちろんである。
分析装置の具体的構成は特に限定されず、例えば蛍光X線解析装置、ICP発光分光装置等を用いればよいが、特に蛍光X線解析装置が好ましい。
そして上述のようにサンプリングして分析した各成分量に基づく評価値X1もしくはX2が、1.0未満である場合には、塩基物質、例えばAl、FeO3、CaO、CaCO、MgOなどのうちから選ばれた1種または2種以上を、汚泥に添加しておく。この際に添加する塩基物質の添加量は、塩基物質の種類(価数)によって異なるが、流動焼結炉で焼却される脱水汚泥の評価値X1もしくはX2が1.0以上、望ましくは1.05となるような添加量を目標値とする。
添加する塩基物質は、評価値XもしくはX2の値を1.0以上、望ましくは1.05以上に調整し得る物質であれば、基本的にはその具体的種類は限定されないが、効果的に評価値Xの値を調整するためには、少なくともFeイオン、Alイオン、Caイオンのうちのいずれか1種以上を含有する塩基物質を用いることが望ましい。
さらに、Feイオンを含有する塩基物質(鉄塩)としては、ポリ硫酸第二鉄(以下「ポリ鉄」と記す)、硫酸第一鉄、塩化鉄のいずれかを用いることが望ましく、またAlイオンを含有する塩基物質(アルミニウム塩)としては、ポリ塩化アルミニウム(以下「PAC」と記す)、塩化アルミニウムを用いることが望ましい。特に望ましくはポリ鉄やPACである。
このように添加する塩基物質として鉄塩もしくはアルミニウム塩が望ましい理由は、次のとおりである。
すなわちポリ鉄などの鉄塩やPACなどのアルミニウム塩は、それ自体の溶融温度が、アルカリ金属塩類と比較して高いものが多く、したがって840〜900℃の範囲内の温度で溶融するリン化合物を生成しにくいことのほか、安価で大量に入手しやすく、また汚泥に添加した場合に汚泥中にとどまりやすく、更には、焼却工程で焼却炉炉壁の腐食や、ダクトなどの金属部分の腐食の不具合が生じにくい。
したがって、実操業上は、塩基物質として鉄塩もしくはアルミニウム塩、とりわけPACおよびポリ鉄のいずれか一方または双方を添加することが望ましい。
なお、従来の一般的な下水処理場でも、リン回収効率を高めるために水処理工程の活性汚泥処理段階(後述する反応槽)においてPACを添加することがあり、また消臭のために、汚泥処理工程においてポリ鉄を添加するがある。しかしながら、本発明においてPACやポリ鉄を添加する目的は、リン回収効率の向上や消臭のためではなく、あくまで焼却灰の改質による焼却灰の付着、堆積を防止することにある。そして上述のような従来技術にしたがって、リン回収効率の向上もしくは消臭のためにPACもしくはポリ鉄を添加しながら下水処理を行っている場合において、焼却すべき汚泥の分析による評価値X1もしくはX2が1.0未満であった場合には、PAC及び/またはポリ鉄の添加量を増量させるか、あるいは別の箇所で追加的に添加することによって、評価値X1もしくはX2が1.0以上、好ましくは1.05以上となるように調整すればよい。
また、塩基物質としてCaイオンを含有する物質、例えばCa(0H)(水酸化カルシウム:消石灰)やCaCO(炭酸カルシウム)、CaO(酸化カルシウム:生石灰)を添加することも有効である。従来の一般的な下水処理場においても、排ガス中に含まれる有害な硫黄(S)分の吸収を目的として、流動焼却炉内への消石灰、生石灰もしくは石灰石粉末の添加(吹き込み)を、炉内への脱水汚泥の供給と同時に行うことがあったが、この場合でも、焼却すべき汚泥の分析による評価値X1もしくはX2が1.0未満であった場合には、消石灰、生石灰もしくは石灰石の添加量を増量させるか、あるいは別の箇所で消石灰、生石灰、石灰石、あるいは炭酸カルシウムを追加的に添加することによって、評価値X1もしくはX2が1.0以上、好ましくは1.05以上となるように調整すればよい。
塩基物質を添加する際の塩基物質の形態は特に限定されるものではなく、水などの分散媒に懸濁させたスラリーや水溶液などの液体状として、あるいは粉末の状態で添加してもよい。但し、流動焼却炉において炉内へ添加する場合を除けば、汚泥中に容易に添加し得るように、液体状の形態で添加することが望ましい。
塩基物質を添加する箇所は、特に限定されるものではなく、要は下水の処理が開始されてから、流動焼却炉内において脱水汚泥が840℃以上の高温に曝されるまでのいずれかの段階の箇所とすればよい。すなわち水処理工程から汚泥処理工程までの間のいずれかの槽、あるいは汚泥配管中途、または汚泥処理工程から流動焼却炉に至るまでの脱水汚泥(脱水汚泥ケーキ)の搬送経路、更には流動焼却炉などの箇所のうち、できるだけ効果的に塩基物質を汚泥中にとどまらせることができる箇所を選定して、1か所もしくは2か所以上で添加すればよい。
なお、前述のように一般には、水処理工程においては、例えば最初沈殿池などにおける物理的な沈殿分離処理と、活性汚泥処理とを組み合わせることが多く、その場合、沈殿分離処理によって生じる汚泥(生汚泥)と、活性汚泥処理によって生じる余剰汚泥とを混合して、その混合汚泥を、汚泥処理工程で脱水して脱水汚泥とし、焼却処理に付すことが多い。一方、汚泥中のリン成分は、生汚泥よりも余剰汚泥の方が格段に多いのが通常である。そこで、上述のように混合汚泥を処理する場合、水処理工程における余剰汚泥が生じる箇所、あるいは余剰汚泥が送られる配管や余剰汚泥の処理槽、更にはその余剰汚泥が生汚泥と混合された後の箇所において、塩基物質の添加を行うことが望ましい。具体的な添加箇所については、後に説明する具体的フロー(図2)を参照して説明する。
以上のように、流動焼却炉で焼却される脱水汚泥の成分を分析して、その分析値から(1)式による評価値X1、もしくは(2)式による評価値X2を求め、その値が1.0未満である場合に、評価値X1もしくはX2を1.0以上、望ましくは1.05とすることを目標としてPACやポリ鉄などの塩基物質を適宜の箇所で添加、もしくは増量することによって、840〜900℃での脱水汚泥焼却時における焼却灰の溶融開始を回避して、焼却炉の出側における焼却灰の付着、堆積の発生を抑制することが可能となる。
図2には、本発明の下水汚泥の焼却処理方法を組み込んだ下水処理方法の全体的なフローを、より具体化した例を示す。なお図2において、図6に示した工程、要素と同一の工程、要素については、図6と同一の符号を付し、その詳細は省略する。
図2において、脱水汚泥について、サンプリングして分析し、さらに評価値X1もしくはX2を算出するための分析・評価工程7が付加されている点、及び塩基物質を添加する手段(添加ポイントQ1〜Q8)が設けられている点以外は、図6に示した全体フローと同様である。但し、添加ポイントQ1〜Q8は、塩基物質を添加するために好適な箇所を示しているに過ぎない。すなわち、これらの添加ポイントQ1〜Q8のすべてにおいて塩基物質を添加するというものではなく、後述するように、これらのうちから、1または2以上の添加ポイントを選択して塩基物質を添加すればよい。言い換えれば、設備的には、これらの添加ポイントQ1〜Q8のうちの1又は2以上の箇所に、塩基物質添加装置が設けられていればよい。
前記分析・評価工程7は、設備的には、脱水汚泥から分析用試料をサンプリングするサンプリング手段71と、サンプリングされた試料の成分を分析する分析装置72と、その分析装置7によって分析された各成分の量から、前記(1)式による評価値X1もしくはX2を算出する演算装置73を備えている。なお場合によっては、演算装置73によって算出された評価値X1もしくはX2が、1.0未満であるか否か、(あるいは1.05未満であるか否か)を自動的に判定するための判定手段を備えていてもよい。
そして演算装置73により得られた評価値X1もしくはX2に応じて、その評価値X1もしくはX2が1.0未満の場合(あるいは1.05未満の場合)には、添加ポイントQ1〜Q8のいずれか1以上のポイントにおいて、PACもしくはポリ鉄などの塩基物質を添加する。
なお、各添加ポイントQ1〜Q8における添加装置としては、添加/非添加の状態(添加流路の開閉)を制御可能とするばかりでなく、添加量を調整可能に構成しておくことが望ましい。
さらに各添加ポイントQ1〜Q8について、詳細に説明する。
Q1:添加ポイントQ1は、水処理工程1における最初沈殿池12から図示しない引き抜きポンプによって引き抜かれた汚泥(生汚泥)を、汚泥処理工程3においてさらに重力によって沈殿・濃縮させるための重力濃縮槽31中に塩基物質を添加するポイントである。したがってこの添加ポイントQ1での添加では、生汚泥に塩基物質が含まれることになる。この場合、添加する塩基物質としては、ポリ鉄で代表される鉄塩を用いることが望ましいが、それに限られるものではなく、PACで代表されるアルミニウム塩等でもよい。また添加ポイントQ1での添加形態は、液体状とすることが望ましい。なお重力濃縮槽31にポリ鉄を添加すること自体は、消臭の目的で、従来から行われることがある。その場合において評価値X1もしくはX2が1.0未満(あるいは1.05未満)であれば、重力濃縮槽31に添加するポリ鉄の添加量を増量させればよい。重力濃縮槽31は、撹拌用の羽根を備えているのが通常であり、そのため塩基物質は、速やかに拡散して、汚泥中に添加することができる。
Q2:添加ポイントQ2は、汚泥処理工程3における重力濃縮槽31から図示しない引き抜きポンプによって引き抜かれた生汚泥を一旦受けて貯留するための生汚泥受槽32中に塩基物質を添加するポイントである。したがって添加ポイントQ2における添加によって、生汚泥に塩基物質が含まれることになる。この添加ポイントQ2でも、添加する塩基物質としては、ポリ鉄で代表される鉄塩を用いることが望ましいが、それに限られるものではなく、PACで代表されるアルミニウム塩等でもよい。また添加ポイントQ2での添加形態は、液体状とすることが望ましい。なお生汚泥受槽32にポリ鉄を添加すること自体は、消臭の目的で、従来から行われることがある。その場合において評価値Xが1.0未満(あるいは1.05未満)であれば、生汚泥受槽32に添加するポリ鉄の添加量を増量させればよい。生汚泥受槽32も、撹拌用の羽根を備えているのが通常であり、そのため塩基物質は、速やかに拡散して、汚泥中に含ませることができる。
Q3:添加ポイントQ3は、水処理工程1における活性汚泥処理のための反応槽13中に塩基物質を添加するポイントである。その反応槽13からの反応後の分解残渣を主体とする排水は、最終沈殿池15に流入し、活性汚泥を主体とする汚泥(余剰汚泥)が、排水から物理的に分離されることになるから、上記の塩基物質は余剰汚泥に含まれることになる。この添加ポイントQ3では、添加する塩基物質としては、PACで代表されるアルミニウム塩を用いることが望ましいが、それに限られるものではなく、ポリ鉄で代表される鉄塩等でもよい。また添加ポイントQ3での添加形態は、液体状とすることが好ましい。なお反応槽13にPACを添加すること自体は、リン回収効率の向上の目的で、従来から行われることがある。その場合において評価値X1もしくはX2が1.0未満(あるいは1.05未満)であれば、反応槽13に添加するPACの添加量を増量させればよい。反応槽13では、送風機14からの空気によるエアレーション(曝気・混合)が行われるから、添加した塩基物質も、速やかに反応槽13内の排水に拡散、混合させることができる。
Q4:添加ポイントQ4は、汚泥処理工程3における最終沈殿池15から図示しない引き抜きポンプによって引き抜かれた余剰汚泥を一旦受けて貯留するための余剰汚泥貯留槽34中に塩基物質を添加するポイントである。したがって添加ポイントQ4における添加によって、余剰汚泥に塩基物質が含まれることになる。この添加ポイントQ4では、添加する塩基物質としては、ポリ鉄で代表される鉄塩を用いることが望ましいが、それに限られるものではなく、PACで代表されるアルミニウム塩等でもよい。また添加ポイントQ4での添加形態は、液体状とすることが望ましい。ここで、各添加ポイントQ1〜Q8のうちでも、特に添加ポイントQ4において余剰汚泥貯留槽34中に塩基物質を添加することが、他の添加ポイントで添加する場合と比較して、最も効果的であることが確認されている。余剰汚泥貯留槽34には沈降防止用の撹拌機や撹拌ポンプなどの撹拌装置が備えられており、この撹拌装置を利用することにより、余剰汚泥と塩基物質の撹拌を容易に行うことが可能となる。ただし、余剰汚泥貯留槽34が十分な撹拌手段を備えていない場合に、凝集効果の強いポリ鉄等を添加すれば、均一に溶解せず濃度のムラができることから、その場合は、余剰汚泥貯留槽34に撹拌機や撹拌ポンプなどの撹拌手段を設けることが望ましい。
Q5:添加ポイントQ5は、汚泥処理工程3において、混合ポイント33からの混合汚泥(生汚泥受槽32から図示しない引き抜きポンプによって引き抜かれた生汚泥と、遠心濃縮機35から図示しない引き抜きポンプによって引き抜かれた余剰汚泥との混合汚泥)を一旦貯留するための混合汚泥貯留槽36中に塩基物質を添加するポイントである。したがって添加ポイントQ5における添加によって、混合汚泥に塩基物質が含まれることになる。この添加ポイントQ5では、添加する塩基物質としては、ポリ鉄で代表される鉄塩を用いることが望ましいが、それに限られるものではなく、PACで代表されるアルミニウム塩等でもよい。また添加ポイントQ5での添加形態は、液体状とすることが望ましい。この添加ポイントQ5における添加も、添加ポイントQ1、Q2における添加よりも効果的である。なお、従来の通常の下水処理場における混合汚泥貯留槽36は、撹拌機や撹拌ポンプなどの撹拌手段を備えている。そこで既存の撹拌手段を用いて混合汚泥貯留槽36に添加した塩基物質と混合汚泥とを混合することによって、塩基物質を多量に添加した場合であっても混合汚泥との混合ムラを防止することができる。
Q6:添加ポイントQ6は、汚泥処理工程3において、混合汚泥貯留槽36から図示しない引き抜きポンプによって引き抜かれた混合汚泥を濃縮、混和するための濃縮混和槽37中に塩基物質を添加するポイントである。したがって添加ポイントQ6における添加によって、混合汚泥に塩基物質が含まれることになる。この添加ポイントQ6では、添加する塩基物質としては、ポリ鉄で代表される鉄塩を用いることが望まししいが、それに限られるものではなく、PACで代表されるアルミニウム塩等でもよい。また添加ポイントQ6での添加形態は、液体状とすることが望ましい。この添加ポイントQ6における添加も、添加ポイントQ1、Q2における添加よりも効果的である。なおこの濃縮混和槽37は、混和用の羽根を備えているのが通常であり、そのため塩基物質は、速やかに拡散して、混合汚泥中に添加することができる。
Q7:添加ポイントQ7は、汚泥処理工程3において、脱水機38により脱水された汚泥(脱水汚泥)を、汚泥焼却工程5の流動焼却炉51に向けて送給するための例えば圧送ポンプや搬送コンベヤなどの送給装置39において、脱水汚泥に塩基物質を添加するポイントである。したがって添加ポイントQ7における添加によって、脱水混合汚泥に塩基物質が含まれることになる。この添加ポイントQ7では、添加する塩基物質としては、Caイオンを含有する物質、例えばCa(OH)(水酸化カルシウム:消石灰)やCaCO(炭酸カルシウム)を添加することが望ましい。この場合、Ca(OH)もしくはCaCOはスラリー状態で脱水混合汚泥に添加(例えば散布あるいは塗布)することが望ましい。
Q8:添加ポイントQ8は、汚泥焼却工程5における流動焼却炉51内に脱水汚泥を供給すると同時に、流動焼却炉51内に塩基物質を吹き込むポイントである。この添加ポイントQ8では、塩基物質としては、Caイオンを含有する物質、例えばCa(OH)(水酸化カルシウム:消石灰)、CaO(酸化カルシウム:生石灰)やCaCO(炭酸カルシウム)の粉末を用いる。なお流動焼却炉51内に消石灰などのCaイオンを含有する物質の粉末を吹き込むこと自体は、排ガス中のS低減の目的で、従来から行われることがある。その場合において評価値X1もしくはX2が1.0未満(あるいは1.05未満)であれば、流動焼却炉51内に吹き込むCa(OH)、CaOやCaCOの添加量を増量させればよい。
以上のように、添加ポイントQ1〜Q8のうちのいずれか1以上の箇所において、ポリ鉄あるいはPAC、更には消石灰などの塩基物質の1種または2種以上を添加する(あるいは塩基物質添加量を増量する)ことによって、流動焼却炉51で焼却される脱水汚泥の評価値X1もしくはX2を1.0以上、好ましくは1.05以上に調整することができる。
評価値X1もしくはX2が1.0以上、好ましくは1.05以上に調整された脱水汚泥は、流動焼却炉51で焼却されることによって焼却処理され、焼却により生じるダスト(焼却灰)は、燃焼排ガスとともに空気予熱器53によって冷却され、集塵機57で補集される。補集された焼却灰は、必要に応じてその焼却灰中に含まれるリンを再利用するためのリン回収設備58に送られる。
リン回収設備58で適用されるリン回収方法としては、焼却灰に硫酸や塩酸などの酸性溶液を加えてリン酸及びカルシウムなどの金属成分を溶出させ、リン酸を回収する方法や、焼却灰をアルカリ性反応液と混合し、焼却灰中のリンを液中に抽出したのち、リン抽出液と処理灰とを含む液を固液分離し、分離されたリン抽出液にカルシウム分を加えてリン酸カルシウム結晶を取り出す方法などがある。これらのリン回収方法を用いる場合、前記塩基物質としては、その回収原理に相反しない塩基類を添加することが好ましい。ここで、焼却灰からのリン回収の原理に相反しない塩基類とは、アルカリ溶液を用いたリン回収方法においては、リンの溶解を阻害するCaイオンを含有しない物質、例えばポリ鉄あるいはPAC等が好ましい。また、酸性溶液を用いたリンの回収方法では、Caイオンを含有する物質、例えばCa(OH)2(水酸化カルシウム:消石灰)、CaO(酸化カルシウム:生石灰)やCaCO3(炭酸カルシウム)が好ましい。なお、このリン回収方法においては、アルミニウムを含有する物質を塩基類として使用することを妨げるものではないが、リン酸と同時にアルミニウムが回収され、リン酸を肥料として使用する場合には、アルミニウムを取り除くための処理が必要となることがある。
本発明によれば、汚泥焼却時にリンの焼結を抑制することができるため、水処理工程や汚泥処理の工程において汚泥にリン成分濃度を高くした場合であっても焼却処理が可能となる。その結果、焼却灰に含まれるリン成分の含有率も向上するため、リン回収設備を設けることによって、効率よくリン回収することが可能となる。
さらに本願では、上述のような下水処理方法を実施する設備(下水処理設備)についての発明も規定している。この下水処理設備の具体的構成については、図1、図2に示されるプロセスフローにおける各工程を、それぞれの設備に読み替えればよい。すなわち、図1、図2における水処理工程1、汚泥処理工程3、汚泥焼却工程5、分析・評価工程7を、それぞれ水処理設備1、汚泥処理設備3、汚泥焼却設備5、分析・評価設備7と読み替えればよい。また、図2における各添加ポイントQ1〜Q8のうちのいずれか以上に、塩基物質添加装置が設けられた構成とすればよい。
なお前述の例では、汚泥焼却工程5において余剰汚泥と生汚泥とが混合した混合汚泥を脱水した脱水混合汚泥を焼却するものとしているが、場合によっては、余剰汚泥のみを脱水した脱水余剰汚泥を焼却することとしてもよい。すなわち、下水処理場によっては、生汚泥と余剰汚泥とを混合せず、それぞれ別に焼却することもあり、このような場合においても、余剰汚泥のみからなる脱水汚泥を焼却する汚泥焼却工程に本発明の汚泥焼却処理方法を適用することができる。また本発明の下水処理設備としても、図2に示される汚泥処理工程3において、生汚泥受槽32から生汚泥を混合ポイント33に送給せずに、別の箇所の他の設備で処理するように構成してもよい。この場合、遠心濃縮機35からの余剰汚泥は、そのまま(すなわち生汚泥と混合されずに)、混合汚泥貯留槽36に送り込まれることになる。
本発明の作用・効果を検証するため、以下の実施例A〜C、比較例A、Bに示す実験を行った。実施例Aでは、塩基類としてポリ鉄およびPACを添加し、実施例B,Cはポリ鉄のみを添加した。
〔実施例A〜C〕
生汚泥と余剰汚泥と混合され、脱水された混合汚泥を分析し、その後、混合汚泥の評価値X1もしくはX2が1.0以上となるように、塩基物質としてポリ鉄、PACの少なくとも一方を添加した。
ここで汚泥の各成分は、蛍光X線解析装置(PANalytical社製 PW2400)を用いて分析した。
なお実施例Aにおいては、ポリ鉄は、添加ポイントQ1の重力濃縮槽投入前の生汚泥及び添加ポイントQ2の生汚泥受槽に約1:4の割合で添加し、またPACは、添加ポイントQ3において活性汚泥に添加した。添加量は、脱水ケーキ処理固形物量 56.6t/日に対してポリ鉄が計2.1t/日、PACが1.8t/日(直前1週間の平均値)である。
また実施例Bにおいては、ポリ鉄は、添加ポイントQ1及びQ2において生汚泥に対して添加した。添加量は、脱水ケーキ処理固形物量 52.7t/日に対してポリ鉄が計2.25t/日である。
さらに実施例Cにおいては、ポリ鉄は、添加ポイントQ1及びQ2において生汚泥に対して添加した。添加量は脱水ケーキ処理固形物量 45.2t/日に対してポリ鉄が計2.14t/日である。
各実施例A〜Cにおける調整後の汚泥の成分を分析した結果、及びその分析結果から算出した評価値X1、X2の値を、表2に示す。表2から明らかなように、いずれの実施例A〜Cの場合も、調整後の汚泥の評価値X1、X2は、1.0以上である。
次に各実施例A〜Cの汚泥を乾燥させた後、焼却炉を想定した坩堝(内径約41mm×深さ35mm)に入れ、大気中において850℃で15分間加熱した。そして室温まで冷却した後、坩堝内に残った残渣物質(焼却灰)の形状を確認した。確認方法としては、まず、残渣物質が粉体状であるか、あるいは結合もしくは固化した状態となっているかを目視により確認し、さらにピンセットで押圧し、その残渣物質の崩れ具合もしくは割れ具合を目視によって確認して、次のようなS1〜S5の5段階評価を行なった。ここで、評価S1〜評価S3の場合を焼結されていない状態(非焼結状態)と判定し、評価S4、S5の場合を焼結された状態(焼結状態)と判定した。
S1:ピンセットによる押圧前の初期状態で紛体となっていた。
S2:初期状態では紛体粒子が軽く結合した状態で坩堝形状に沿っていたが、ピンセットでの押圧により崩して紛体状に分散させるために力を要しなかった。
S3:初期状態では固形状となっていたが、結合力は弱く、ピンセットで軽く押圧することによって、多数のブロック状に容易に割れた。
S4:初期状態で固形状となっていて結合力がやや強く、ピンセットで押圧した時に結合が明確に感じられた。
S5:初期状態で固形状となっていて結合力が強く、ピンセットで押圧した時に容易には割れなかった。
上記の目視評価による非焼結/焼結の判定結果も表2中に示す。
その結果、評価値X1、X2の値が1.0以上である各実施例A〜Cでは、いずれも加熱・冷却後の残渣物質が焼結していないことが確認された。これは、850℃での加熱中に焼却灰が実質的に溶融しなかったことを意味し、したがってこれらの実施例A〜Cによって調整した脱水汚泥は、流動焼却炉での850℃での焼却によって生じた焼却灰が、流動焼却炉の出側の流路で、流路内面に付着・堆積しにくいことが推測できる。
なお発明者らは、上記の目視評価による非焼結/焼結の判定を数値化して検証するため、次のようなデジタルフォースゲージを用いて評価する実験も併せて行った。
ここで、デジタルフォースゲージは、基本的には、測定対象のサンプルを押圧してその際の押圧力をデジタル表示するためのものであり、例えば図3に概略的に示すような、デジタルフォース用スタンド60を含む試験装置80を構成して測定するものである。
図3において、試験装置80は、昇降支柱63、昇降部材64、昇降部材64から水平に延出する支持部材65、昇降部材64を昇降させるためのハンドル66、および基台67によって構成されたデジタルフォースゲージ用スタンド60と、支持部材65を介して昇降部材64に一体化されたデジタルフォースゲージ70とからなる。
デジタルフォースゲージ70には、押し付け治具71が脱着可能に装着され、その押し付け治具72による押圧力を連続的に測定する測定装置(内蔵)、その測定値をデジタル表示する表示部72などから構成されている。
このような試験装置80では、基台60の上面(水平面)上にサンプル61を載置して、そのサンプル61の上面に、ハンドル66の手動操作によって、昇降部材64に固定されたデジタルフォースゲージ70の押し付け金具71を上方から鉛直に降下させ、その押圧力を測定する。
本実験では、日本電産シンポ株式会社製のFGPシリーズのデジタルフォースゲージを使用し、押し付け治具71として、その先端面71Aがマイナスドライバの先端面と同様な矩形状で、その先端矩形面の寸法が幅0.3mm×5.4mmのものを用いた。そして、サンプル61として前述の汚泥加熱後の残渣物質を定置し、ハンドル66の手動操作によって押し付け治具71をサンプル61の上面中央位置に向けて降下させ、押し付け治具71の先端面71Aがサンプル61に接触する直前に降下速度を緩め、更に徐々に押し付け治具71を降下させて、サンプル61の上面に接触させ、引き続き押し付け治具71を低速で降下させて、サンプル61(残渣物資)を破断させた。その間に、押し付け力(サンプルに対する接触力)を連続的に測定、表示させ、最大の力を破断時の力とした。
ここで、残渣物質を構成している粒子の結合力が大きいほど、すなわち焼結が進んでいるほど、破断時の力(残渣物質の破断に要する力)が大きくなる。したがってデジタルフォースゲージにより測定される破断時の力によって、残渣物質の非焼結/焼結の状況を判定することができる。
汚泥について前記と同じ条件で加熱した残渣物質についてのデジタルフォースゲージによる残渣物質の破断時の力を測定した結果と、同じ汚泥の加熱後の残渣物質について、既に述べたような目視による焼結/非焼結の評価S1〜S5との対応関係を調べた結果を、図4に示す。
図4に示すように、目視による評価がS1〜S3までは(すなわち目視評価で非焼結と判定される場合は)、デジタルフォースゲージによって測定された破断時の押圧力が1Nを下回り、目視による評価がS4、S5となれば(すなわち目視評価で焼結と判定される場合は)、デジタルフォースゲージによって測定された破断時の押圧力が1N以上となることが明らかである。したがって、デジタルフォースゲージによって測定された破断時の押圧力が1N未満の場合を非焼結状態と判定し、1N以上の場合を焼結状態と判定することができる。このことから、目視評価によらずに、デジタルフォースゲージを用いての破断時押圧力の測定によって、数値的に残渣物質の非焼結/焼結の状況を判別することができる。
なお、実際にデジタルフォースゲージによって残渣物質の非焼結/焼結の状況を判別す際には、残渣物質の形状などにより測定にばらつきが生じることを考慮し、5回程度測定し、その平均値を判断数値とすることが好ましい。
〔比較例A〕
生汚泥と余剰汚泥とを混合した混合汚泥を、成分調整を行うことなく(すなわちリン焼結防止を目的とした塩基物質としてのポリ鉄、PACを添加することなく)、汚泥中の成分の評価値X1、X2を調べた。調整後の汚泥の成分を分析した結果、及びその分析結果から算出した評価値X1、X2の値を、表2中に示す。この場合は、評価値X1、X2はいずれも1.0未満である。
次に汚泥を、実施例A〜Cと同様に加熱・冷却する実験を行った。そして室温まで冷却した後、残渣物質(焼却灰)が固化して焼結された状態となっているか、または固化せずに焼結されていない状態であるかを、実施例A〜Cと同様にして調べた。
その結果、評価値X1、X2が1.0未満である比較例Aでは、焼結が生じていた
これは、850℃での加熱中に焼却灰が溶融を開始することを意味し、したがってこの比較例Aによる脱水汚泥は、流動焼却炉での850℃での焼却によって生じた焼却灰が、流動焼却炉内部や流動焼却炉の出側の流路で付着・堆積しやすいことが推測できる。
〔比較例B〕
生汚泥と余剰汚泥との混合汚泥に、脱水機によって脱水する以前の段階でPACを添加し、脱水後の汚泥中の成分の評価値X1、X2を調べた。PAC添加及び脱水後の汚泥の成分を分析した結果、及びその分析結果から算出した評価値X1、X2の値を、表2に示す。なおPACは、添加ポイントQ3において、従来リン回収効率向上の目的で添加する場合と同程度の添加量とし、評価値X1、X2が1.0未満となるように添加した。
次にPAC添加後の汚泥を脱水機によって脱水して脱水汚泥ケーキとし、実施例A〜Cと同様に加熱・冷却する実験を行った。そして室温まで冷却した後、残渣物質(焼却灰)が固化して焼結された状態となっているか、または固化せずに焼結されていない状態であるかを、実施例A〜Cと同様にして調べた。
その結果、評価値X1、X2が1.0未満である比較例Bでは、焼結が生じた。
これは、850℃での加熱中に焼却灰が溶融を開始することを意味し、したがってこの比較例Bによる脱水汚泥は、流動焼却炉での850℃での焼却によって生じた焼却灰が、流動焼却炉の出側の流路で、流路内面に付着・堆積しやすいことが推測できる。
Figure 0005711348
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例について説明したが、これらの実施形態、実施例は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。
1 水処理工程
3 汚泥処理工程
5 汚泥焼却工程
7 分析・評価工程
12 最初沈殿池
13 反応槽
15 最終沈殿池
38 脱水機
51 流動焼却炉
72 分析装置
73 演算装置
Q1〜Q8 塩基物質の添加ポイント(塩基物質添加装置)

Claims (16)

  1. 少なくとも余剰汚泥を含む脱水汚泥を、流動焼却炉により焼却処理する下水汚泥の焼却処理方法において、
    焼却処理温度を840〜900℃の範囲内の温度とし、
    かつ流動焼却炉に供給される脱水汚泥中の各成分のうちのNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とを、脱水汚泥を流動焼却炉に供給する前に分析して、下記の(1)式によってX1の値を求め、そのX1の値が1.0以上となるように、流動焼却炉で焼却される脱水汚泥の成分を調整することを特徴とする下水汚泥の焼却処理方法。
    X1={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)}/P(mol×3)・・・(1)
  2. 請求項1に記載の下水汚泥の焼却処理方法において、
    前記流動焼却炉に供給される脱水汚泥中の各成分のうちの前記Na、K、Ca、Mg、Al、Feのほか、更にCu、Zn、Baのそれぞれの含有量と、前記Pの含有量とを、脱水汚泥を流動焼却炉に供給する前に分析して、下記の(2)式によってX2の値を求め、そのX2の値が1.0以上となるように、流動焼却炉で焼却される脱水汚泥の成分を調整することを特徴とする下水汚泥の焼却処理方法。
    X2={Na(mol)+K(mol)+Ca(mol×2)+Mg(mol×2)+Al(mol×3)+Fe(mol×3)+Cu(mol)+Zn(mol)+Ba(mol×2)}/P(mol×3)・・・(2)
  3. 請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載の下水汚泥の焼却処理方法において、
    前記X1もしくはX2の値が1.0未満である場合に、前記脱水汚泥を、少なくともFeイオン、Alイオン、Caイオンのうちのいずれか1種以上を含有する塩基物質の添加もしくは増量によって調整することを特徴とする下水汚泥の焼却処理方法。
  4. 請求項3に記載の下水汚泥の焼却処理方法において、
    前記塩基物質が、ポリ塩化アルミニウムポリ硫酸第2鉄、及び炭酸カルシウムのうちのいずれか1以上を含む物質であることを特徴とする下水汚泥の焼却処理方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかの請求項に記載の下水汚泥の焼却処理方法において、
    前記脱水汚泥が、余剰汚泥と生汚泥とが混合されたものである下水汚泥の焼却処理方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかの請求項に記載の下水汚泥の焼却処理方法において、
    脱水汚泥中の各成分の前記分析を、期間を置いて行うことを特徴とする下水汚泥の焼却処理方法。
  7. 少なくとも活性汚泥処理段階を含む水処理によって、下水を浄化処理するとともに、余剰汚泥を含む汚泥を水から分離、取り出すための水処理工程と、
    前記水処理工程で分離、取り出された汚泥を濃縮し、脱水して脱水汚泥とする汚泥処理工程と、
    前記脱水汚泥を流動焼却炉により焼却する汚泥焼却工程と
    を有する下水の処理方法において、
    前記流動焼却炉により、840〜900℃の範囲内の温度で脱水汚泥を焼却するにあたり、
    流動焼却炉で焼却される脱水汚泥中の各成分のうちのNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とを、流動焼却炉に供給する前に分析し、前記(1)式によってX1の値を求め、そのX1の値が1.0以上となるように、前記水処理工程から汚泥処理工程を経て焼却工程に至るまでの間において汚泥の成分を調整することを特徴とする下水処理方法。
  8. 請求項7に記載の下水処理方法において、
    前記流動焼却炉に供給される脱水汚泥中の各成分のうちの前記Na、K、Ca、Mg、Al、Feのほか、更にCu、Zn、Baのそれぞれの含有量と、前記Pの含有量とから、前記(1)式によるX1の値に代えて前記(2)式によって求められるX2の値が1.0以上となるように、流動焼却炉で焼却される脱水汚泥の成分を調整することを特徴とする下水処理方法。
  9. 請求項7、請求項8のいずれかの請求項に記載の下水処理方法において、
    流動焼却炉に供給する前の脱水汚泥のX1もしくはX2の値が1.0未満である場合に、前記水処理工程から汚泥処理工程を経て焼却工程に至るまでの間においてFeイオン、Alイオン、Caイオンのうちの1種以上を含有する塩基物質の添加、もしくはその塩基物質添加量の増量を行うことを特徴とする下水処理方法。
  10. 請求項9に記載の下水処理方法において、
    前記水処理工程を実施するための水処理設備が、活性汚泥法によって排水を処理する反応槽と、その反応槽で反応した後の余剰汚泥を沈殿させる最終沈殿池とを含み、
    かつ前記汚泥処理工程を実施するための汚泥処理設備が、汚泥を脱水する脱水機を含み、
    前記最終沈殿池から余剰汚泥を引き抜いて前記脱水機に至らせるまでの間、もしくは前記脱水機から流動焼却炉内に至るまでの間の、いずれか1以上の箇所において前記塩基物質の添加、もしくはその塩基物質添加量の調整を行なうことを特徴とする下水処理方法。
  11. 請求項9に記載の下水処理方法において、
    前記水処理工程を実施するための水処理設備が、物理的に排水から生汚泥を分離するための最初沈殿池と、活性汚泥法によって排水を処理する反応槽と、その反応槽で反応した後の余剰汚泥を沈殿させる最終沈殿池とを含み、
    かつ前記汚泥処理工程を実施するための汚泥処理設備が、汚泥を脱水する脱水機を含み、
    前記最初沈殿池から生汚泥を引き抜くとともに前記最終沈殿池から余剰汚泥を引き抜いて生汚泥と余剰汚泥を混合し、さらに前記脱水機に至らせるまでの間、もしくは前記脱水機から流動焼却炉内に至るまでの間の、いずれか1以上の箇所において前記塩基物質の添加、もしくはその塩基物質添加量の調整を行なうことを特徴とする下水処理方法。
  12. 請求項9〜請求項11のいずれかの請求項に記載の下水処理方法において、
    前記塩基物質が、ポリ塩化アルミニウムポリ硫酸第2鉄、及び炭酸カルシウムのうちのいずれか1以上を含む物質であるであることを特徴とする下水処理方法。
  13. 請求項7〜請求項12のいずれかの請求項に記載の下水処理方法において、
    脱水汚泥中の各成分の前記分析を、期間を置いて行うことを特徴とする下水処理方法。
  14. 少なくとも活性汚泥処理段階を含む水処理によって、下水を浄化処理するとともに、余剰汚泥を含む汚泥を水から分離、取り出すための水処理設備と、
    前記水処理設備で分離、取り出された汚泥を濃縮し、脱水して脱水汚泥とする汚泥処理設備と、
    前記脱水汚泥を流動焼却炉により焼却する汚泥焼却設備と
    を有する下水の処理設備において、
    前記水処理設備は、活性汚泥法によって排水を処理する反応槽と、その反応槽で反応した後の余剰汚泥を沈殿させる最終沈殿池とを含み、
    前記最終沈殿池から余剰汚泥を引き抜いて前記脱水機に至らせるまでの間、もしくは前記脱水機から流動焼却炉内に至るまでの間の、いずれか1以上の箇所に、Feイオン、Alイオン、Caイオンのうちの1種以上を含有する塩基物質を添加するための添加装置が設けられており、
    しかも前記汚泥処理設備と前記流動焼却炉との間に、脱水汚泥中のNa、K、Ca、Mg、Al、Fe、Cu、Zn、Baの各成分のうち少なくともNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とを分析するための分析装置が設けられており、
    さらに、前記分析装置による分析結果に基づいて、前記(1)式によるX1の値もしくは前記(2)式によるX2の値を求める演算装置を有し、
    前記演算装置によって求められたX1もしくはX2の値に応じて前記添加装置を制御するように構成したことを特徴とする下水処理設備。
  15. 少なくとも活性汚泥処理段階を含む水処理によって、下水を浄化処理するとともに、余剰汚泥を含む汚泥を水から分離、取り出すための水処理設備と、
    前記水処理設備で分離、取り出された汚泥を濃縮し、脱水して脱水汚泥とする汚泥処理設備と、
    前記脱水汚泥を流動焼却炉により焼却する汚泥焼却設備と
    を有する下水処理設備において、
    前記水処理設備が、物理的に排水から生汚泥を分離するための最初沈殿池と、活性汚泥法によって排水を処理する反応槽と、その反応槽で反応した後の余剰汚泥を沈殿させる最終沈殿池とを含み、
    かつ前記汚泥処理設備が、汚泥を脱水する脱水機を含み、
    その汚泥処理設備には、前記最初沈殿池から生汚泥を引き抜くとともに前記最終沈殿池から余剰汚泥を引き抜いて生汚泥と余剰汚泥を混合し、さらに前記脱水機に至らせるまでの間、もしくは前記脱水機から流動焼却炉内に至るまでの間の、いずれか1以上の箇所に、Feイオン、Alイオン、Caイオンのうちの1種以上を含有する塩基物質を添加するための添加装置が設けられており、
    しかも汚泥処理設備と前記流動焼却炉との間に、脱水汚泥中のNa、K、Ca、Mg、Al、Fe、Cu、Zn、Baの各成分のうち少なくともNa、K、Ca、Mg、Al、Feのそれぞれの含有量と、Pの含有量とを分析するための分析装置が設けられており、
    さらに、前記分析装置による分析結果に基づいて、前記(1)式によるX1の値もしくは前記(2)式によるX2の値を求める演算装置を有し、
    前記演算装置によって求められたX1もしくはX2の値に応じて前記添加装置を制御するように構成したことを特徴とする下水処理設備。
  16. 請求項14、請求項15のいずれかの請求項に記載の下水処理設備において、
    前記添加装置が、ポリ塩化アルミニウムポリ硫酸第2鉄、及び炭酸カルシウムのうちのいずれか1以上を含む物質を添加する装置であることを特徴とする下水処理設備。
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