JP5225541B2 - セメントクリンカ及びセメントの製造方法とその装置 - Google Patents

セメントクリンカ及びセメントの製造方法とその装置 Download PDF

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Description

本発明は、セメント使用時に、つまり、セメントを主要な成分とする硬化体としてセメントを使用するとき、例えば、セメント、細骨材、粗骨材の混合物に水を添加し混練して調製されるコンクリートや、セメントと細骨材の混合物に水を添加し混練して調製されるモルタルの硬化中や硬化後に、また特に土壌や廃棄物にセメントを添加して固化させたときに、環境上問題となる有害なセメント微量成分の環境への溶出量を抑えた、セメントを造るためのセメントクリンカ及びセメントそのものの製造方法とその装置に関する。
主に建物の地盤沈下や地震対策として、土壌にセメントもしくはセメントを主要な成分とする固化材を入れて建物の基礎を強化したり、廃棄物をセメントもしくはセメントを主要な成分とする固化材で固化して廃棄したりするというセメントの使用方法が近年増加している。他方、土壌汚染対策法の施行にみられるように、そのように強化した土壌や固化して廃棄した物からの環境への溶出に対して、従来以上に問題意識が高まってきている。
これに対してセメント産業では、セメントクリンカの製造時に原料を1450℃以上の高温で反応させるため、廃棄物の中の環境に悪影響を及ぼす成分の多くが、分解するか、又は、セメントクリンカ中に取り込まれて封じ込められ、環境への悪影響をほとんど無くすことができるので、廃棄物の最終処分場の不足も相まって、多くの廃棄物を原料や燃料として利用するようになった。このようなセメントクリンカに取り込まれる成分の中には、環境上問題となる有害な成分も少なくなく、このようなセメントの微量成分が更に増加すれば、環境への溶出量も増えることが懸念される。
このような溶出の問題に対応して、セメントクリンカの組成を変化させたり、セメントもしくはセメントを主要な成分とする固化材そのものから、あるいはこういった物の前述したような使用時に硬化したセメントから溶出することが好ましくないセメント微量成分を水に溶けにくくする他の物質を加えたりして、溶出を抑制する方法がいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、金属配位能を有する官能基の少なくとも一部に、還元性金属、特に鉄(II)が結合したキレート剤の金属塩よりなるセメント添加剤と、セメントとを、あるいは、該セメント添加剤を予めセメントに添加したセメント組成物を、水や細骨材、粗骨材と混練してモルタルやコンクリート等のセメント類を調製する際に、セメント中に含まれているクロム(VI)、鉛等の重金属類が溶出するのを防止する方法、また、前記のセメント添加剤とセメントとを廃棄物に添加し、水の存在下に廃棄物中の重金属類及び有害元素類及び/又はオキソ陰イオン類を固定化する廃棄物処理方法が記載されている。
特開2003−306365号公報
しかしながら、前記方法においては、セメント中に含まれるクロム(VI)、鉛等の重金属類の溶出を防止するためにセメント添加剤を添加する処理の対象はセメント全体となっている。従って、セメント全体を対象とするようなこういった方法では、セメント中に通常は多くても数百ppmしか含まれない溶出が好ましくないセメント微量成分に対して、セメント全体を対象にして処理するため、大量のセメントクリンカ全体に対して高価な添加剤を加えるなどして対応せねばならず、非効率になっている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、セメント使用時におけるセメントからの溶出が好ましくない物質の、セメント硬化体からの溶出もしくはセメント硬化中のブリージング水への溶出を減少させるために、セメント製造プロセスからそのような溶出が好ましくない物質を抽出し、前記セメント使用時において溶出しにくいように高アルカリ水に溶けにくくする操作を行った後、セメント製造プロセスに戻すことによって、前記溶出が好ましくない物質の、セメントで固化した土壌や廃棄物、あるいは、コンクリート構造物やモルタル等からの溶出を抑えることができるとともに、セメント全体を処理対象にすることで溶出に対応する従来の方法に比べて、セメント添加物の使用量を少量でも効率的に済ませることができるセメントクリンカ及びセメントの製造方法とその装置を提供することを目的とする。
溶出が好ましくない物質をセメント製造プロセスから抽出するためには、そのような物質の濃度が高く、しかも、そのような物質の抽出が簡単にできる、もしくは、そのような物質を含む被処理物が簡単に抜き出せる設備もしくは装置が既に稼動していることが望ましい。これに当てはまるものとして、セメント製造用のロータリーキルンのキルンガスを抜き出して冷却し、セメントの品質もしくはセメント製造プロセスの運転に好ましくない物質を主体とするキルンガス抽出物を得る装置が普及してきている。
そこで、本発明者は、このキルンガス抽出物を利用することにより、そのような溶出が好ましくない物質を容易に得ることができることに着目して鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、近年、国内のセメント製造プロセスでは、塩素バイパスと呼ばれる、ロータリーキルンのキルンガスを抜き出して冷却し、塩素の循環を減らす装置が多く稼動するようになった。この塩素バイパスにおける冷却によって、キルンガス中に含まれるKClを主体とする蒸気がヒュームとなって固化し、キルンガス中に含まれるその他のダストと混合されて、塩素バイパスダストと呼ばれるキルンガス抽出物が得られている。
この塩素バイパスダストは、KClのみならず、鉛、カドミウム、セレンなど溶出が好ましくない物質を高濃度で含んでいる。これらの物質が再びロータリーキルンを通ってセメントクリンカへ焼結されると、もはや化学的な調節が困難な上、薄まってしまうため、セメント使用時等にセメントからの溶出を抑制しようとすると、セメント添加物としての溶出防止剤の大量添加更にはセメントクリンカ成分の調整まで必要になる。
本発明は、溶出が問題となる物質を高アルカリ水に溶けにくくする不溶化処理の操作を効率良く行うために、該物質を濃縮した状態で抽出する方法として、例えば、セメントクリンカ製造用のサスペンションプレヒータ付きロータリーキルンのキルンガスを冷却してセメント微量成分を捕集可能とする装置、つまり、今日で言う塩素バイパスに着目し、該装置を高度に利用することで、土壌や廃棄物の固化材として、また、コンクリート構造物やモルタル等の主要成分としてのセメント使用時に、溶出が好ましくない物質が環境へ溶出するのを抑制する方法及びその装置に関して成し得たものである。
即ち、本発明は、セメントクリンカ製造用のサスペンションプレヒータ付きロータリーキルンのキルンガスからセメント微量成分を抽出する工程を少なくとも具備するセメントクリンカの製造方法であって、抽出したセメント微量成分のうち、セメントクリンカをセメントにして使用する際にセメント硬化体からの溶出が好ましくない成分を高アルカリ水に溶けにくくする操作を行ってセメントクリンカに戻すことを特徴とするセメントクリンカの製造方法に関する。
また、前記高アルカリ水に溶けにくくする操作が、前記抽出したセメント微量成分を一旦水と反応させ、該水に溶解した成分に対して不溶化処理をすることを特徴とする前記セメントクリンカの製造方法に関する。
また、前記高アルカリ水に溶けにくくする操作が硫化物化処理を含んでいることを特徴とする前記セメントクリンカの製造方法に関する。
また、前記高アルカリ水に溶けにくくする操作が、キルン原料又はロータリーキルンから飛散することにより抽出工程で発生するキルン原料を多く含むダストの添加を含んでいることを特徴とする前記セメントクリンカの製造方法に関する。
また、前記高アルカリ水に溶けにくくする操作が、セメント固化処理を含んでいることを特徴とする前記セメントクリンカの製造方法に関する。
または、セメントクリンカ製造用のサスペンションプレヒータ付きロータリーキルンのキルンガスからセメント微量成分を抽出する工程を少なくとも具備するセメントの製造方法であって、抽出したセメント微量成分のうち、該セメント使用時にセメント硬化体からの溶出が好ましくない成分を高アルカリ水に溶けにくくする操作を行ってセメントクリンカもしくは仕上工程に戻すことを特徴とする前記セメントの製造方法に関する。
また、前記高アルカリ水に溶けにくくする操作が、抽出したセメント微量成分を一旦水と反応させ、該水に溶解した成分に対して不溶化処理をすることを特徴とする前記セメントの製造方法に関する。
また、前記高アルカリ水に溶けにくくする操作が硫化物化処理を含んでいることを特徴とする前記セメントの製造方法に関する。
また、前記高アルカリ水に溶けにくくする操作が、キルン原料又はロータリーキルンから飛散することにより抽出工程で発生するキルン原料を多く含むダストの添加を含んでいることを特徴とする前記セメントの製造方法に関する。
また、前記高アルカリ水に溶けにくくする操作が、セメント固化処理を含んでいることを特徴とする前記セメントの製造方法に関する。
更に、セメントクリンカ製造用のサスペンションプレヒータ付きロータリーキルンのキルンガスからセメント微量成分を抽出する装置と、該抽出したセメント微量成分の中でセメント使用時にセメント硬化体からの溶出が問題となる成分に対して不溶化処理を行う装置と、該不溶化処理した溶出が問題となる成分をセメントクリンカに加える装置とを少なくとも具備してなることを特徴とするセメントクリンカ製造装置に関する。
更に、前記不溶化処理を行う装置がキルン原料又はロータリーキルンから飛散することにより抽出工程で発生するキルン原料を多く含むダストの添加装置を含むことを特徴する前記セメントクリンカ製造装置に関する。
更に、前記不溶化処理を行う装置がセメントの添加装置を含むことを特徴とする前記セメントクリンカ製造装置に関する。
更にまた、セメント製造用のサスペンションプレヒータ付きロータリーキルンのキルンガスからセメント微量成分を抽出する装置と、該抽出したセメント微量成分の中でセメント使用時にセメント硬化体からの溶出が問題となる成分に対して不溶化処理を行う装置と、該不溶化処理した溶出が問題となる成分をセメントクリンカ又はセメントに加える装置とを少なくとも具備してなることを特徴とするセメント製造装置に関する。
更にまた、前記不溶化処理を行う装置がキルン原料又はロータリーキルンから飛散することにより抽出工程で発生するキルン原料を多く含むダストの添加装置を含むことを特徴する前記セメント製造装置に関する。
更にまた、前記不溶化処理を行う装置がセメントの添加装置を含むことを特徴とする前記セメント製造装置に関する。
土壌や廃棄物等の固化材として、また、コンクリート構造物やモルタル等の主要成分としてのセメント使用時に、環境への溶出が問題となるようなセメント微量成分は、ホウ素、フッ素、クロム(VI)、ヒ素、セレン、カドミウム、水銀もしくは鉛のような土壌汚染対策法に規定されるような物質である。これらのうち、セレン、カドミウム、鉛は、塩素バイパスダストを利用して不溶化処理を行う場合、実機の運転結果によれば数倍から数百倍に濃縮されており、溶出が問題となるこれら成分のかなりの部分を不溶化できるので極めて効果的である。また、クロム(VI)は、既に還元されて6価でなくなり、不溶化しているので、特別な不溶化処理を行う必要がない分、効率がよい。
従って、キルンガス抽出物、即ち、塩素バイパスダストを対象として利用し、環境への溶出が好ましくない前記セメント微量成分に対して水に溶けにくくする操作、特に不溶化処理を行うことは、不溶化処理剤の使用量の面からみて非常に効率的であるといえる。
よって、本発明によれば、少量の不溶化処理剤を使用するだけで、セメントからの溶出が好ましくない物質である前述したようなセメント微量成分の環境への溶出を安価に、かつ、効率良く抑えることができる。また、セメント使用時におけるセメント硬化前のブリージング水への前記セメント微量成分の溶出も抑制されており、環境への負荷は更に低いものとなっている。
以下に、添付図面に基づいて、本発明のセメントクリンカ(以下「クリンカ」という)1b及びセメント1cの製造方法とその装置について詳しく説明する。
図1には従来のクリンカ1b及びセメント1cの製造プロセスを、そして図2にはそれに対する本発明に係るクリンカ1b及びセメント1cの製造プロセスを、それぞれ、ブロックフローチャートで示す。
また、図3には図2に対応させて本発明に係るクリンカ1b及びセメント1cの製造プロセスの一例をフローチャートで示し、更に、図4(a)〜(c)にはその一工程である不溶化処理工程5の他の実施態様のいくつかをフローチャートで示す。
なお、図1、図2及び図3(但し、不溶化処理工程5を除く)において、実線は原料の流れ、破線はガスの流れを示す。また、図3の不溶化処理工程5及び図4(a)〜(c)においては、矢印でプロセスの流れを示し、その中で特に必ず液体やスラリーの状態で流れるものは点線を用いている。
図1及び図3(抽出工程4及び不溶化処理工程5とそれらに係る流線を除けば、従来法である図1の一例になる)に示すように、通常、クリンカ1bの製造プロセスは、送入原料1aを製造する原料工程1(図3には示していない)と送入原料1aからクリンカ1bを製造する焼成工程2とからなっている。また、セメント1cの製造プロセスは、更にこれにクリンカ1bからセメント1cを製造する仕上工程3が加わる。
焼成工程2は、サスペンションプレヒータ2a、ロータリーキルン(以下「キルン」という)2b及びクリンカクーラー2cからなり、これらの装置により、クリンカ1b製造用のサスペンションプレヒータ付きキルンが構成されている。
サスペンションプレヒータ2aは、キルン排ガスの熱をセメント原料の粉体の予熱に利用するための、通常多段(図3は4段)のサイクロンから構成されるガス体と粉体との熱交換器であるが、今日では予熱のための仮焼炉2a1(図3参照)を加えて、この炉に吹き込んだ燃料の燃焼熱も利用する形式の仮焼炉付きのサスペンションプレヒータ2aが通常用いられている。
なお、仮焼炉2a1での燃料燃焼用の酸素は、主にクリンカクーラー2cで焼成物2fを冷却して高温になった焼成物冷却用の空気の一部が用いられるが、最近では塩素バイパスなどの排ガスも利用されることがある。
クリンカ1bの製造プロセスでは、まず、原料工程1で主な原料である石灰石、石炭灰、珪石、鉄源原料等を中心に、所要の成分になるように調合、乾燥、粉砕、混合して成分が調製された粉体の送入原料(セメント原料)1aが製造される。
次に、この送入原料1aは、焼成工程2のサスペンションプレヒータ2aに供給され、キルン2bからの燃焼排ガスと、多くのサスペンションプレヒータ2aではそれに加えて仮焼炉2a1の燃焼ガスとの熱交換によって、予熱される。
サスペンションプレヒータ2aでは、送入原料1aがその出口で約850℃まで加熱され、その間に、脱炭酸などの化学反応が進んでいき、キルン原料2eが製造される。
このキルン原料2eは、更に高温の焼成装置であるキルン2bに供給される。キルン2bは、その回転により、セメント原料粉体を混合しながら焼成する窯で、送入原料1aは、キルン2bの中をその傾斜のために窯尻側から窯前側に向かって移動しながら、窯前側からキルンバーナー2b1(図3参照)によりキルン原料2e焼成のための火焔が形成されることによって、更に1450℃の高温域に達するまで温度が上がり、所定の化学反応を終えて水硬性の化合物である焼成物2fが焼結される。
更に、キルン2bを出た前記焼成物2fは、次のクリンカクーラー2cで急冷されて、セメント1cとしての機能を発揮するクリンカ1bが製造される。この急冷では、空気を主体とするガスが通常使われ、この熱交換で高温となるように操作されて、キルン2bや、クリンカクーラー2cと仮焼炉2a1を結ぶ管路を通して仮焼炉2a1に供給され、燃焼に利用される。
このとき、燃焼に利用されなかった、熱せられた冷却用の空気を主体とするガスは、クーラー排気として、図1や図3には示されていない排熱ボイラーや乾燥用等の熱源として有効に利用されるか、利用されなかったものは捨てられる。
一方、キルン2bにおいて燃料の燃焼などにより生じるキルンガス2dはサスペンションプレヒータ2aに入る。ここで、仮焼炉2a1付きの場合は更にその燃焼ガスと共に送入原料1aの予熱に使用された後、排気ファンによって排気されて、図1や図3には示されていない排熱ボイラーや乾燥用等の熱源として有効に利用される。
なお、図1は図2に対比して示していることから、クリンカクーラー2cからサスペンションプレヒータ2aへのガスの流れやクーラー排気などを割愛している。
更に、セメント1cの製造プロセスでは、焼成工程2で造られたクリンカ1bは、続いて仕上工程3に供給される。
図3に概略を示しているが、この仕上工程3では、まず、クリンカ1bにセメント1cの硬化速度を調整する役割を果たす石膏などが加えられて仕上ミルで粉砕される。次に、粉砕物がセパレータで分級された後、粗いものは再び仕上ミルに戻されて再粉砕され、
細かいものはバグフィルタなどで集められることによってセメント1cが製造される。なお、最近では、省エネや品質のため、図3には示していないが、クリンカ1bや、スラグセメントを造る場合のスラグは、石膏などを加えることも比較的行われて、図3に示した仕上工程に、ある程度粉砕して供給されることも多く、本発明では当然のことながらこれらを含めて仕上工程3と呼んでいる。
また、セメント1cの状態では吸湿などにより品質の劣化が起こるので、長期保管や輸出などに際しては、中間製品であるクリンカ1bの状態で取り扱われることが多い。
以上、クリンカ1b及びセメント1cの製造プロセスについて説明したが、最近ではこれらのプロセスの中で、埋め立てる以外に経済的な利用方法の少ない廃棄物のような利用困難物が色々と使われているのが実情である。
例えば、原料工程1で使用される主な原料として石炭灰を挙げているが、この石炭灰も前記利用困難物の一つであり、物によってはセレンや水銀が多く含まれる。以前は粘土質鉱物が採鉱されて主に用いられていたが、最近は、そのような粘土質鉱物の利用は、国内の多くのセメント製造工場ではかなり少なくなってきている。
また、この石炭灰と共に、建設用地などで発生する重金属などの多い土の利用もかなり増えている。また、焼却灰やそれを使いやすいように処理したものも利用されている。
その他に、以前から原材料として使っている物の中にも前記利用困難物と見られるような面があるものもある。例えば、鉄源原料は、銅精錬や製鉄で発生する利用困難物のような面があり、ヒ素やカドミウム、鉛が多い物がある。また、仕上工程3において、クリンカ1bに添加する化学石膏にも似たところがあってフッ素が多い物もあり、スラグも使い始めた頃はそういう面があった。
このような環境への溶出が好ましくない成分もクリンカ1bやセメント1c中に取り込まれて大部分が封じ込められているが、量が増えると溶出量が増えて問題となる可能性があり、本発明ではそのようなことも考慮している。
更にまた、クリンカ1bの焼成工程2では燃え残りもクリンカ1bとして取り込まれて、灰の処理が必要ないことから、灰(不燃分)の多い可燃物や、処理の困難な有機物(つまり、可燃物)を含む汚泥のような、通常の燃料としては使えない物までも熱源として有効利用している。
そのようなものとして、廃油や廃白土、もしくは、伐採木や建設廃材のような廃木材、もしくは、廃畳や廃タイヤ、又は、廃プラスチックやごみ加工品であるRDFやRPF、あるいは、有機汚泥など、非常に多くのものを利用しており、その中には環境への溶出が好ましくない成分を多く含むものもある。
これに対し、本発明のクリンカ1bの製造方法は、図2及び図3に示すように、以上述べたような原料工程1(図3には示していない)と焼成工程2とからなる従来公知のクリンカ1bの製造プロセスにおいて、キルンガス2dの一部を抽気することにより、前記セメント微量成分を含むダスト、即ち、キルンガス抽出物1dを抽出する抽出工程4と、抽出した前記セメント微量成分の内、セメント使用時にセメント硬化体からの溶出が好ましくない成分が環境へ溶出しないよう該成分を高アルカリ水に溶けにくくする操作を行う不溶化処理工程5と、この不溶化処理した前記溶出が好ましくない(つまり、溶出が問題となる)成分を含む回収物1eをクリンカクーラー2c内もしくはその出口のクリンカ1bに戻して該クリンカ1bに加える装置を具備することを特徴としている。
また、本発明のセメント1cの製造方法は、図2及び図3に示すように、原料工程1と焼成工程2と仕上工程3とからなる従来公知のセメント1cの製造プロセスにおいて、前記抽出工程4と、前記不溶化処理工程5と、この不溶化処理した前記溶出が好ましくない成分を含む回収物1eをクリンカクーラー2c内もしくはその出口のクリンカ1bに戻して該クリンカ1bに加える装置を具備することを特徴としている。
なお、前記焼成物2fとしては、クリンカクーラー2cで1000℃以下、好ましくは800℃以下まで冷却されたものは、クリンカクーラー2cの中にあっても結晶成分的には半製品であるクリンカ1bと同様に扱うことができるので、そのような慣例に従って、本発明ではクリンカ1bを表記している。
あるいはまた、本発明のセメント1cの製造方法は、前記従来公知のセメント1cの製造プロセスにおいて、前記抽出工程4と、前記不溶化処理工程5と、この不溶化処理した前記溶出が好ましくない成分を含む回収物1eを前記仕上工程3に戻してセメントに加える装置を具備することを特徴としている。
前記抽出工程4において、キルンガス2dから前述したセメント微量成分を抽出する操作は、前述したように、従来公知の塩素バイパスを利用し、キルンガス2dの一部を抽気することによって実施できる。
このキルンガス2dは、900〜1250℃の高温で、燃焼排ガスと共に、キルン2b内のセメント原料から発生する二酸化炭素を主成分とするガスと、キルン2b又はサスペンションプレヒータ2aから来るセメント原料が多く含まれている。更に、特にカリウム、ナトリウムの塩化物、又は、セレン、鉛、カドミウム等の金属や塩化物、もしくは、それらの酸化物や硫酸化物等で、化合物が高蒸気圧のため循環する物質の、蒸気又はミスト又はヒュームの形で、塩素バイパスのダストに濃縮される物質が含まれる。あるいはそれらセメント原料又は循環物質の還元物質である二酸化硫黄や塩化水素などのガスも多く含まれ、亜硫酸化物又は硫化物などとしても含まれている。
塩素バイパスでは、まず、このような高温のキルンガス2dを抽気して冷却し、前記蒸気やミストやヒュームが固化した形で含まれるダストを得る。このダストには、塩素を多く含まないキルン2b又はサスペンションプレヒータ2aから来るセメント原料や、それらが塊となったものを含むので、通常はそれらを除去するための分離装置4bを経て、キルンガス抽出物1dを得ている。
キルンガス抽出物1dは、通常5〜80%の塩化カリウムとその1割程度の塩化ナトリウムと、それら塩化物の数%から同程度の量の、それらの硫酸化物を含み、残りの大部分はキルン原料2eがキルン2bから飛散したものであり、更に、1%程度の前記溶出が好ましくない成分を含む。
図3の抽出工程4に示しているのは、本発明に適した塩素バイパスの一例の概略図である。
該塩素バイパス設備では、サスペンションプレヒータ2aとキルン2bとを連結する曲がり部ダクトに下方に向けて開口するように取り付けられた抽気管により冷却装置4aにキルンガス2dを抽気して冷却用のガス又は空気を吹き込んで400℃以下まで冷却し、次に、得られたダストからキルンガス2d中で最初から固体であった塩素の少ない部分を分離装置4bである程度除去した後、バグフィルタ4cでキルンガス抽出物1dの粉体を得ている。
また、他の設備では、一度に400℃以下まで冷却せずに、多段階で冷却したり、冷却に水などを使ったり、また、塩素の少ない部分を分離するのに分級を用いる方法もあり、本発明においてはこれらの方法も使用できる。
また、抽気管の取付位置も前記曲がり部ダクトに限定されるものではなく、そこから概ね上方に延びているキルンガス2dの煙道やサスペンションプレヒータ2aの最下段(ボトム)サイクロンガス出口部であってもよい。
なお、前記ダストから除去された塩素の少ない部分は、図3には示していないが、全量もしくはその好ましい使用方法に従って分割・分離して、サスペンションプレヒータ2aに返したり、後述する不溶化処理剤として利用したり、またキルンガス抽出物1dの一部として回収したりして使用できる。
このような塩素バイパスシステムで、キルンガス2dからその一部を抽気することにより得られた抽気ガスは、該ガスから前述したダストやキルンガス抽出物1dの回収が行われた後、二酸化硫黄などの汚染物質を含むので、図3には示されていない抽気排ガスを処理する装置に導入されるか、あるいは前述の仮焼炉2a1のような排ガス処理が可能な場所に導入される。
抽気排ガスを処理する装置の好ましい実施態様としては、従来公知の塩素バイパス法で採用されている種々の方法を適用できるが、これらを適宜、選択・組み合わせて用いることもできる。
なお、本発明の方法においては、キルンガス2dの抽気率は特に制限されない。
ここでいう抽気率は、キルン2bからサスペンションプレヒータ2aへ向けて単位時間に流れるキルンガス2dの容量(標準状態換算)に対する、単位時間に抽気される抽気ガス容量(標準状態換算)の割合として定義されるものである。
塩素バイパスの抽気率について言えば、本発明の方法は、現在一般的に行われている1〜3%において実施できるし、当然、抽気率が1%未満の運転時においても実施できる。また、抽気率が大きくなると、ホウ素、フッ素等の塩素バイパスでの濃縮率があまり高くない成分に対しても、抽出量が増える分、より有効な方法として本発明の方法は機能するし、また、特に5〜20%の抽気率であれば、カドミウムや鉛など塩素バイパスでの濃縮率が10倍程度の中程度のものもかなりの部分が抽出できるようになり非常に好ましい。更にまた、プロセス的には抽気率が100%とも言える現在のエコセメントのプロセスにおいても、本発明の方法を実施することは可能である。
次に、本発明のクリンカ1b及びセメント1cの製造方法の特徴である不溶化処理工程5について説明する。
前述のようにして製造されたセメント1cを、土壌や廃棄物等の固化材として、また、コンクリート構造物やモルタル等の主要成分として使用する際において、硬化中もしくは硬化後のセメント硬化体は通常pH11.5〜13.5、特にpH12前後の高アルカリとなる。
そこで、本発明の不溶化処理工程5では、このような高アルカリ水に溶けにくくする操作が行われる。本発明において、高アルカリ水に溶けにくくする操作とは、前述したようなセメントの使用時に、前述したような環境への溶出が好ましくないセメント微量成分を前記高アルカリ水に溶けにくくし、セメント硬化体からの溶出もしくはセメント硬化中のブリージング水への溶出を防止する操作を言う。
従って、前記高アルカリ水に溶けにくくする操作においては、前述したような環境への溶出が好ましくないセメント微量成分をpH11.5〜13.5の高アルカリ水、特に目安としてpH12の高アルカリ水に溶けにくくする操作が好ましい。
前記高アルカリ水に溶けにくくする操作としては、抽出工程4において回収されたキルンガス抽出物1dを不溶化処理剤と共に水に混ぜて更にpH調整剤を添加することでpHを12程度にして反応させて不溶化処理を行う簡便な方法がある。また、該抽出物1dを一旦水と反応させて、水に溶解させた成分の中で環境への溶出が問題となるような成分に対して不溶化処理を行う方法もある。
図3の不溶化処理工程5は、このような処理装置の一例の概略図である。このプロセスでは、前記前者の簡便な方法として、攪拌槽5aに水とキルンガス抽出物1dと不溶化処理剤としての溶出防止剤とpH調整剤とを加えて、pHを12程度に調整したスラリーにして不溶化処理を済ませ、この不溶化処理の済んだ高濃度のスラリーをまず回収物1eとして得ている。更にこの簡便な方法では水に溶解するかもしくは十分に沈澱しなかった環境への溶出が好ましくない成分に対しては、前記後者の不溶化処理として、前記攪拌槽5aで上の方に溜まった液を抜き出して、該液にセメントの添加装置(図3には示していない)からのセメントと、前記溶出防止剤とを加えて造粒機で固化物を扱い易くするための造粒をしてから養生を行ういわゆるセメント固化処理を行い、セメント固化物を別の回収物1eとして得ている。この後、図3では、回収物1eとして得た高濃度のスラリーとセメント固化物の両者を合わせてクリンカクーラー2c内もしくはその出口のクリンカ1bや仕上工程3に運んで添加している。
なお、本発明においては、この高濃度のスラリーをセメント固化処理に回す比率を変えて、全量セメント固化物として回収することも、全量スラリーとして回収することも可能である。また、両者を合わせずに別々の場所に添加して回収することも可能である。
また、本発明においては、後段のセメント固化物として回収する方が前段のスラリーとして回収するよりも不溶化処理剤の使用効果としては高い。つまり、後段のセメント固化物として回収する方は、前記キルンガス抽出物1dの内、まず、水に溶解して溶出する部分に対してのみ選択的に不溶化処理剤を加えていることになるので効率的である。また、セメント使用時にセメント硬化体からの溶出が好ましくない成分も不溶化処理剤と共に水に分散して良く不溶化処理剤と反応するので効果的であり、結果的には同程度の溶出防止を意図するなら、不溶化処理剤の使用量の上からは経済的である。
不溶化処理の対象となる成分は、前述したように、セメントの使用時、つまり、セメントの硬化中や硬化後においてセメント硬化体から環境への溶出が問題となる、キルンガス抽出物1d中に含まれるセメント微量成分のうち、既に還元されて不溶化しているクロム(VI)を除くホウ素、フッ素、ヒ素、セレン、カドミウム、水銀、鉛等である。これらセメント微量成分のうち、セレン、カドミウム及び鉛は、前述したように塩素バイパスで数倍から数百倍に濃縮されていることから、本発明においては、前記キルンガス抽出物1d中に含まれるセレン、カドミウム、鉛等の重金属に対して前記不溶化処理を行うことは有効である。
なお、ヒ素、クロム、水銀、ホウ素及びフッ素は塩素バイパスでの濃縮が少ないので、不溶化処理を行う効果はそれ程高くはないが、セメント使用時におけるセメント硬化体からのセメント微量成分の溶出量を全体として抑えるように管理していることからすれば、少しでも不溶化処理をしておくことは好ましい。
不溶化処理の方法としては、前記セメントの使用時の条件としては色々あるので、そのときに、前述したホウ素、フッ素、クロム、ヒ素、セレン、カドミウム、水銀、鉛等のセメント微量成分が環境へ溶出しないような方法が好ましい。
しかし、通常セメントの使用時、つまり、セメントの硬化中もしくは硬化後において、セメント硬化体のpHが前述したように12前後の高アルカリとなるため、該セメント硬化体中に含まれる多くの金属はヒドロキソ錯体を形成して溶解しやすくなり、特に鉛は溶解度が増して溶出量が増加するという問題が発生しやすい。そこで、本発明においては、前述したような高アルカリでのセメント硬化体から環境への溶出を抑えるために、不溶化処理の方法として硫化物化を取り入れることが好ましいことが多い。
しかしながら、不溶化処理の対象となるセメント微量成分の全てを硫化物化のみによって不溶化処理することは難しく、前記不溶化処理の方法として、不溶化処理剤を用いて硫化物化と還元やキレート形成などの公知の方法を適宜組み合わせて不溶化処理することが好ましい。
前記不溶化処理剤としての溶出防止剤としては、重金属の溶出を抑制する公知の一般的な薬剤が用いられる。例えば、硫化物化剤としては、HSガス、NaS及びCaSなどが用いられる。還元剤としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸第一鉄等の第一鉄塩化合物やその水和物、又は前記硫化物などが用いられる。
また、キレート剤としては、ジチオカルバミン酸基を官能基として持つものが好ましく、この特性を有する市販の高分子キレート剤が原液のまま、または希釈水溶液として使用できる。しかしながら、金属捕集能のあるものであればこれに限定されるものではない。
なお、前記セメント使用時には、セメント添加剤として減水剤が使用されており、前述したような有機物からなるキレート剤の使用はこの減水剤の使用量を増加させることが多く、また、高価であるので、キレート形成は前記不溶化処理の最終手段として必要に応じて行うことが望ましい。
また、硫化物化と還元やキレート形成などの方法を適宜組み合わせて行われる前記不溶化処理に際しては、これら硫化物化や還元やキレート形成に加え、必要に応じてpH調整や、凝集剤や共沈剤を用いた操作も行われる。
凝集剤や共沈剤としては、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の第二鉄塩化合物やその水和物などが挙げられる。また、pH調整剤としては、塩酸、硫酸又は硝酸等の酸あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリが挙げられるが、クリンカ1bの製造工程で発生する排ガス中の二酸化炭素や二酸化硫黄や塩化水素を酸として、また焼成工程2でセメント原料から生じる生石灰成分をアルカリとして用いることもできる。
また、前記キルンガス抽出物1dと最初の水との反応において水に溶出したホウ素、フッ素、ヒ素、セレン、カドミウム、水銀、鉛等のセメント微量成分に対しては、前記不溶化処理を行うときに、凝集剤による水中での分散防止を行うと、前述したようなセメントの使用時において更に環境への溶出が起こりにくくなり効果的である。即ち、凝集剤は、硫化物化や還元やキレート形成などの不溶化処理によって生成した重金属の沈澱物の凝集を促進して固液分離を容易にする効果を示すものである。そこで、該沈澱物を濾過してクリンカ1bもしくは仕上工程3に回収しても、凝集剤は前述したようなセメントの使用時において重金属を取り込んで凝集効果がかなり維持されて凝集したまま固化するので、重金属の環境への溶出が阻害されるのである。
このような凝集剤として、前記以外に、ポリアクリルアミド又はポリアクリル酸ナトリウムを含むノニオン系、カチオン系又はアニオン系の高分子凝集剤も使用できる。
ところで、本発明においては、前述したように、本発明の不溶化処理の方法としては硫化物化が、高アルカリで溶出するような重金属に対して効果的であり、特に好ましい。このとき使用する硫化物化剤として前記にHSガス、NaS、CaS等の一般的な薬剤を挙げているが、これらの薬剤は、毒性や分解や高価なことなどで使用上の制限が多い。その点、前記キルンガス2d中のダストや、キルン原料2e中、又は、キルン2bから飛散することにより抽出工程4で発生するキルン原料2eを多く含むダスト中に含まれるカルシウムは一部が硫化物となっており、これらの硫化物を前記不溶化処理剤として利用することは極めて有効である。
また、前記不溶化処理の方法としてセメント固化処理を用いると、前述したようなセメントの使用時に、環境への溶出が好ましくないセメント微量成分が前記セメント硬化体中からその表面へ移動するのをセメント固化による封じ込めにより抑えることによって、これらセメント微量成分がイオン化したり可溶性の錯体を形成したりコロイド化したりして環境へ溶出するのを抑制することができる。
本発明においてセメント固化処理を行うことは、前述したようなセメントの使用時におけるpHが12前後の高アルカリ下でのセメントの硬化に際しても、前記環境への溶出が問題となるセメント微量成分の溶出に対して効果的であるのみならず、不溶化処理剤として用いる物質は元来がセメントであるので最終的に製造されるセメントにとって好ましくない成分がほとんど入らないというメリットもある。
不溶化処理としてセメント固化処理だけを行う場合には、不溶化処理剤としての前述した溶出防止剤、つまり、一般的な薬剤(硫化物化剤、還元剤、キレート剤、共沈剤、凝集剤等)に代えて、セメントの添加装置からセメントを添加して前記キルンガス抽出物1dを該セメントで固化し、得られたセメント固化物をクリンカ1bもしくは仕上工程3に回収することもできる。
また、溶出防止剤(前述の一般的な薬剤)と併用してセメント固化処理を行えば、更に前記環境への溶出が問題となるような成分のセメントの使用時におけるセメント硬化体からの溶出を抑える効果が期待できるので好ましい。
前述のような場合のセメント固化処理としては、キルンガス抽出物1dに、セメントの添加装置で所定量を計量したセメントと水を加え、攪拌して反応させ、前記環境への溶出が問題となるような成分を不溶化するとともに、得られたセメント固化物をクリンカ1bもしくは仕上工程3に回収すればよい。このとき、セメントや水と共に前述した溶出防止剤(前述の一般的な薬剤)を加えることもできる。
あるいはまた、前述の図3に示した不溶化処理工程5のプロセスのように、前記キルンガス抽出物1dと不溶化処理剤としての前述した溶出防止剤とを水に添加して反応させ、前記環境への溶出が問題となるような成分を不溶化処理した後、固液分離し、液側に更にセメントの添加装置で所定量を計量したセメントを添加し、溶解している前記環境への溶出が問題となるような成分を固化して不溶化し、得られたセメント固化物を前記固液分離による回収物と共にクリンカ1bもしくは仕上工程3に回収してもよい。
以上述べた不溶化処理操作において、前記キルンガス抽出物1dを前述した不溶化処理剤と共に水に混ぜて更にpH調整剤を添加することでpHを12程度に調整して反応させて不溶化処理する場合の混合や、該混合後に固液分離して得られる液側とセメントとの混合に際して、あるいはまた、後述するような前記キルンガス抽出物1dを一旦水と反応させ、水に溶解させた成分の中で前記環境への溶出が問題となるような成分に対して不溶化処理を行う場合の前記キルンガス抽出物1dと水との混合、この混合後の固液分離により得られた液側と前記不溶化処理剤と水とpH調整剤との混合、更にこの混合後の固液分離により得られた液側とセメントとの混合に際して、攪拌することが好ましい。
また、前記セメント固化処理に際してのセメントの添加装置は、図3や図4(b)には示されていないが、計量したセメントを混合機に供給するためのシュートを有し、通常はセメントを入れるのを一時停止したタンクの重量をロードセルで計量し、セメントを該タンクから供給するときの重量減少で供給量を計量する、重量が測定可能なタンクと供給機とから構成される。
また、薬剤というわけではないが、前記セメント固化処理において、高炉スラグ微粉末を併用することは、硫化物の関与や、アルミナ成分が少ないなど化学的に安定しているためか、前記環境への溶出が問題となるような成分の環境への溶出を抑える効果がある。
ところで、前述したように、前記キルンガス2d中のダストに含まれるカルシウムや、サスペンションプレヒータ2aからキルン2bへと送入されるキルン原料2e中、又はキルン2b内から飛散することにより抽出工程4で発生するキルン原料2eを多く含むダスト中のカルシウムは一部が硫化物になっているので、前記キルンガス抽出物1d、即ち、塩素バイパスダストには硫化物がそれなりに入っている。そのため、後述するように、前記環境への溶出が好ましくない成分の内、特に、カドミウム、水銀、鉛等のセメント微量成分の大部分が硫化物化して既に不溶化しており、セレン以外の成分は不溶化処理がほとんど必要ない場合が多い。
また、これらセメント微量成分の表面に不動態ができることにより、前記溶出防止剤の添加量がこれら各成分イオンに対して1当量以下でもこれら成分のほとんどが不溶化することもある。更に、本発明においては、セメントの使用時に硬化中や硬化後のセメント硬化体から前記環境への溶出が好ましくない成分が溶出する量を許容量以下に減らすことが目的であるので、これら成分の全てを完全に不溶化処理する必要もない。
更に、最終的に使われるときも、セメントに混合されて、結果的にセメントに固化された状態で使われるので、周囲のセメントが前記環境への溶出が好ましくない成分の封じ込めを行い、不溶化処理剤として働くことになるため、高価な前記溶出防止剤(前述の一般的な薬剤)を理論的に必要な量まで添加しなくても、前記環境への溶出が好ましくない成分に対してある程度の不溶化ができていれば十分である。
従って、前記キルンガス抽出物1dを前述した不溶化処理剤と共に水に混ぜて更にpH調整剤を添加することでpHを12程度に調整して反応させて不溶化処理する場合や、前記キルンガス抽出物1dを一旦水と反応させ、水に溶解させた成分の中で前記環境への溶出が問題となるような成分に対して不溶化処理を行う場合における前述した溶出防止剤(前述の一般的な薬剤)の添加量は、前述したような点を考慮した上で、処理すべきキルンガス抽出物1dの量、水の量、セメント固化処理の際のセメントの添加量、不溶化処理に際しての攪拌の程度などに応じて適宜決めればよい。
なお、前記溶出防止剤の添加量については、硫化物化剤や還元剤が多すぎると不溶化処理物を回収後の排水のCOD処理が必要となる。また、前述のキレート剤も同様に注意を要する。
また、前述したpH調整剤や凝集剤や共沈剤の添加量も、前記キルンガス抽出物1dに含まれる前記環境への溶出が好ましくない成分と反応させる水の添加量、これら成分の水への溶出量、硫化物化剤、還元剤、キレート剤等の溶出防止剤の添加順序及び添加量等に応じて前記不溶化処理の目的を達成し得る範囲で適宜決めればよい。
ところで、不溶化処理において前述したようにサスペンションプレヒータ2aからキルン2bへと送入されるキルン原料2e、又は、キルン2b内から飛散することにより抽出工程4で発生するキルン原料2eを多く含むダストを利用する場合は、該原料やダストの添加量は、前記キルンガス抽出物1d中に添加後のカルシウム濃度が5%以上、好ましくは20%程度となるようにするのがよい。該原料やダスト中の硫化物量はキルン2bやサスペンションプレヒータ2aの運転条件、特に仮焼炉2a1の運転状態によってかなりの変動があるが、カルシウム濃度が概ね5%以上では硫化物は200ppm以上存在し、前記環境への溶出が好ましくない成分の不溶化処理の効果は十分に期待できる。更に、カルシウム濃度が20%程度あると、硫化物はほぼ1000ppm以上存在し、前記不溶化処理の効果としては十分である。逆に、カルシウム濃度が50%を越えると、回収物1eの処理量も増えてクリンカ1bやセメント1cの品質が低下するのであまり好ましくない。
この場合、不溶化処理剤として利用される前記キルン原料2e又は前記キルン原料2eを多く含むダストは、前述したように、抽出工程4の分離装置4bで捕集・除去された塩素の少ない部分であり、必要により図示していない分離機で分離して用いられる。
また、不溶化処理剤として、前述した溶出防止剤(前述の一般的な薬剤)及び/又はセメントに代えて、あるいはこれらと併せて用いられる前記キルン原料2e又は前記キルン原料2eを多く含むダストの添加装置は、図3や図4(a)〜(c)には示されていないが、前述のセメントの添加装置と同様の物を利用できる。しかし、精度的にはもっと簡単な物でも良く、例えば、タンクと、該タンクから前記原料又はダストを、前記環境への溶出が好ましくない成分を不溶化処理するための攪拌槽や処理槽に供給するためのシュートと、該シュートに介装されたロータリーフィーダーやスクリューコンベア等から構成される定量供給機とから構成される。
更にまた、前記不溶化処理の方法として、前述したように、セメント固化処理を行う場合、セメントは、前記キルンガス抽出物1dの重量に対して0.2〜20倍の添加量が好ましいが、多めに50倍位まで添加されることもある。セメントの添加量が0.2倍未満では、前記環境への溶出が好ましくない成分の不溶化処理の効果が十分でないことが多いし、逆に50倍を越えるときは、回収物1eのクリンカ1bやセメント1cへの添加量が増えすぎて品質が悪化するので、いずれの場合も好ましくない。
例えば図4(b)に示すプロセスのように、不溶化処理剤(前述した一般的な溶出防止剤、キルン原料2e又はキルン2bから飛散することにより抽出工程4で発生するキルン原料2eを多く含むダスト等)又はセメントによる前記環境への溶出が好ましくない成分の不溶化処理をする前に、最初に前記キルンガス抽出物1dを水と反応させて、該抽出物1d中から前記環境への溶出が好ましくない成分を水へ溶出させることもあるが、この場合の水の使用量は、前記キルンガス抽出物1d、即ち、塩素バイパスダストに対して通常3〜30重量倍、好ましくは5〜20重量倍であることが望ましい。
水の使用量が前記キルンガス抽出物1dに対して3重量倍より少ないと、十分流動化できないか、前記環境への溶出が好ましくない成分の前記キルンガス抽出物1dから水への溶出が不十分となり、前記環境への溶出が好ましくない成分の一部が前記キルンガス抽出物1d中に残ったままとなるので好ましくなく、単純なセメント固化処理による不溶化の方が有利となる。
一方、水の使用量が前記キルンガス抽出物1dに対して30重量倍より多いと、前記キルンガス抽出物1dを水と反応させて前記環境への溶出が好ましくない成分を水に溶出させるための攪拌槽5a、溶出したこれら成分を含む水に前記溶出防止剤を添加してこれら成分を不溶化処理するための処理槽5b、不溶化処理して得られた高濃度のスラリーを固液分離、例えば濾過するための濾過装置等が必要以上に大きくなり、不溶化処理工程5の設備費が嵩むので好ましくない。
なお、前記不溶化処理の操作をより確実なものにするため、前記キルンガス抽出物1dの水との反応を徹底させて、水に溶出する前記環境への溶出が好ましくない成分を良く洗い出しておくことは、前述したように、不溶化の処理としては好ましい。具体的には、例えば水の使用量を前記キルンガス抽出物1dに対して30重量倍程度にするなど、水の比率を上げてもよいし、前記キルンガス抽出物1dの水との反応に際して、例えば30分以上攪拌するなど、良く攪拌してもよい。
また、例えば図4(b)に示したような装置で、前記キルンガス抽出物1dを水と反応させて前記環境への溶出が好ましくない成分を水に溶解させ、更に前記不溶化処理剤を添加してこれら成分を不溶化処理した後、液側を濾過することにより生じる濾液に含まれる前記環境への溶出が好ましくない成分の量は、水質汚濁防止法に係る排水基準値以下になっており、そのまま放流廃棄できる。また、それで不十分であるような場合は、例えば後述する図4(c)に示したようなプロセスにより更に高度水処理を加えることもできる。
ところで、前記キルンガス抽出物1dの水との反応で水に溶けなかった成分については、溶出しにくい形態に変化したか、又は、初めから溶出しにくい形態で存在しており、そのままクリンカ1bもしくは仕上工程3に回収しても、前述したようなセメント1cの使用時において、環境への溶出の可能性はかなり低い。つまり、キルンガス2dは900℃以上の非常に高温であり、酸素分圧が低く、更に多くの場合、一酸化炭素を含んでいるので還元性があり、そのためキルンガス2d中のダスト成分も幾つかは硫化物化や還元された溶出しにくい状態で存在している。例えば、前述したようにセメント成分の中で最も多い成分であるカルシウムの一部は硫化物で存在しており、前記不溶化処理に際して前記キルンガス抽出物1dを水と反応させたときに硫化物イオンを発生させて、鉛やカドミウムなどの不溶化に貢献している。
従って、前記キルンガス抽出物1dの水との反応による最初の不溶化処理操作だけでも前記環境への溶出が好ましくない成分の不溶化はかなり進んでいる。また、前述したように、前記セメント使用時におけるこれら成分の溶出量を許容量以下に減らす目的からすれば、これら成分の全てを完全に不溶化処理する必要もないことや、セメントとして使用したときの固化によるこれら成分の最終的な封じ込めを考えれば、実機としては、基本的にはプロセスの簡素化を目指すものであり、必ずしも完全な不溶化処理プロセスでなくて良い。
即ち、前記不溶化処理剤としての溶出防止剤(前述した一般的な薬剤)による不溶化処理操作としては、例えば、図4(a)に示すような、攪拌槽5aにおいてキルンガス抽出物1dを水に加えて攪拌しながらスラリー化し、このスラリーをポンプで処理槽5bに移送し、前述したようなpH調整剤の添加によりpHを12程度にして、更に凝集剤などの溶出防止剤を適量入れて攪拌しながら反応させ、前記環境への溶出が好ましくない成分を不溶化し、得られたスラリー状の凝集沈澱物をクリンカクーラー2c内もしくはその出口のクリンカ1bや仕上工程3にポンプで運んで添加するようなプロセスで十分である。
また、本発明の不溶化処理工程5においては、高アルカリ水に溶けにくくする操作として、前記キルンガス抽出物1dを一旦水と反応させ、水に溶解させた前記環境への溶出が好ましくない成分に対して不溶化処理を行う方法を用いた場合、逆に、前記キルンガス抽出物1d中の、水に溶解しやすい塩素やカリウム、ナトリウムといったセメント製品にとって好ましくない成分を除去することが可能であり、セメント1c中のこれらの成分含有量を低減するといった好ましい効果も期待できる。このような場合には、例えば図4(b)や図4(c)のようなプロセスを用いることができる。
即ち、図4(b)は、キルンガス抽出物1dから水に溶解しやすい塩素やカリウム、ナトリウムといったセメント製品にとって好ましくない成分を除去したい場合に特に有効な不溶化処理プロセスの一例である。本プロセスによれば、攪拌槽5aでキルンガス抽出物1dを水に加えてスラリー化し、更に不溶化処理剤(例えば、凝集剤などの前記溶出防止剤)と必要に応じてpH調整剤とを加え、一旦水と反応させて不溶化処理し、前記環境への溶出が好ましくない成分を水に溶解させる。続いて濾過装置で攪拌槽5aの底に沈澱した高濃度のスラリーの濾過を行い、回収されたケーキをクリンカ1bにまず回収する。ここで液側に出た系外への排出が好ましくないものは、次の処理槽5bで、更に前記溶出防止剤とpH調整剤を添加して凝集などにより不溶化処理して濾過する。そして、水質汚濁防止法に係る排水基準値以下で前記塩素やカリウム、ナトリウムなどの水溶性成分が溶けた液側は、更に砂濾過後系外に排出する一方、回収されたケーキは、更にセメント固化により不溶化処理して仕上工程3に戻すことができる。
なお、濾過の方法として図4(b)にはベルトプレスでの脱水処理を示すが、これに限定されるわけではなく、フィルタープレス等の他の固液分離も可能である。
また、図4(c)は、キルンガス抽出物1dから、水に溶解しやすい塩素やカリウム、ナトリウムといったセメント製品にとって好ましくない成分を回収したい場合や、それに加えて、今まで述べてきた環境への溶出が好ましくない成分の一部も別途回収したい場合に有効なプロセスの一例である。
本プロセスによれば、まず、キルンガス抽出物1dをスラリー化して不溶化処理する。具体的には、攪拌槽5aに水とキルンガス抽出物1dとを加えて攪拌しながら反応させ、前記塩素やカリウム、ナトリウムのほか、前記環境への溶出が好ましくない成分が水に溶解した高濃度のスラリーを得る。この際、攪拌槽5aには更に不溶化処理剤(例えば、前記一般的な溶出防止剤)とpH調整剤とを加えてpHを12程度に調整して前記環境への溶出が好ましくない成分の不溶化処理と共にスラリー化することもある。続いて、このスラリーを攪拌槽5aから抜き出して処理槽5bに移す。処理槽5bでは、これにpH調整剤を加えてpHを12程度に調整し、更に前述したような不溶化処理剤を加えて凝集沈澱などにより前記環境への溶出が好ましくない成分を不溶化処理する。その後、得られたスラリーを処理槽5bからフィルタープレス等の濾過装置に送り、濾過によって回収物1eを得る。そして、該回収物1eから、不溶化された前記環境への溶出が好ましくない成分の内、有用物として回収したい成分を公知の適切な方法で回収し、残りはクリンカクーラー2c内もしくはその出口のクリンカ1bや仕上工程3に運んで添加する。一方、濾過によって生じた液側については、公知の方法で高度な水処理を行う中で、該液側に溶解した塩素やカリウム、ナトリウムなどを有用物として別個に回収した後、有害成分が水質汚濁防止法に係る排水基準値以下で含まれる液を公共水域に放流廃棄している。
例えば、回収したい環境への溶出が好ましくない成分がセレンと鉛の場合は、前述の図4(c)に示すようなプロセスにおいてpH12程度で不溶化したものを回収するだけで十分なことも多く、特に不溶化処理剤が必要ない場合も考えられる。このような場合でも回収物1eに含まれる例えばカドミウムなど他の環境への溶出が好ましくない成分は、pH12程度で溶出しない不溶化処理ができており、クリンカ1bなどに回収できる。
以上述べたように、本発明の不溶化処理工程5においては、前記キルンガス抽出物1dを不溶化処理剤と共に水に添加し反応させるか、もしくは、前記キルンガス抽出物1dを一旦水と反応させ、水に溶解させた成分に不溶化処理剤を混ぜるかして、前記環境への溶出が好ましくない成分を不溶化処理する操作が行われる。このときの不溶化処理剤としては、前述した一般的な溶出防止剤、又は、前記キルン原料2e又はキルン2bから飛散することにより抽出工程4で発生するキルン原料2eを多く含むダスト、又は、セメントのうち、少なくとも1つ以上が用いられる。
そして、本発明のクリンカ1bの製造方法においては、前述したような不溶化処理を行って得られた、前記環境への溶出が好ましくない(つまり、溶出が問題となる)成分を含む回収物1eは、同じ又は別のクリンカ製造設備のクリンカクーラー2c内もしくはその出口のクリンカ1bに戻され、該クリンカ1bに加えられる。また、本発明のセメント1cの製造方法においては、前記回収物1eは、同じ又は別のセメント製造設備のクリンカクーラー2c内もしくはその出口のクリンカ1bに戻され、該クリンカ1bに加えられるか、又は前記仕上工程3に戻され、セメント1cに加えられる。
ここで、回収物1eをクリンカクーラー2c内もしくはその出口のクリンカ1bに戻す装置又は仕上工程3に戻す装置は、スラリー輸送、空気輸送、ベルトコンベア、スクリューコンベア、重機による輸送等の輸送手段からなる。
このようにしてホウ素、フッ素、ヒ素、セレン、カドミウム、水銀、鉛等の前記環境への溶出が好ましくない成分はクリンカ1bもしくはセメント1c中に取り込まれ、前記セメント使用時において硬化中もしくは硬化後のセメント硬化体から溶出し環境を汚染する可能性は極めて小さくなる。
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
[実施例1]
図3に示したプロセスフローのセメント製造設備において、不溶化処理工程5でのスラリー化による、溶出が好ましくない成分のセメント硬化体からの溶出防止を確認するために、抽出工程4において回収した1重量部のキルンガス抽出物1dと、溶出防止剤兼pH調整剤として1重量部のキルン原料2eを10重量部の水に加えて攪拌し、pH12程度に調整したスラリーを得た。続いて、このスラリーを仕上工程3に戻して製造されたセメントを使用するときの環境への溶出が好ましくない成分の溶出を調べるために、該スラリーを、図1に示したプロセスブロックフロー、つまり、図3において抽出工程4と不溶化処理工程5とそれらに係る流線を除いたプロセスフローによる従来のセメント製造設備で製造されたセメント1cに約1重量%添加してモルタルを製作した。その結果、このモルタルからの前記溶出が好ましくない成分の溶出量は、ブランクとして該スラリーを添加しない前記セメントから製作したモルタルの場合と比較して増えていなかった。
従って、このような不溶化処理したスラリーを仕上工程3に添加して回収しても、添加した部分、つまり塩素バイパスで抽出した部分については溶出量が増えないので、その分、環境への溶出が好ましくない成分の溶出を抑えたセメント1cを製造できることが分かった。
[実施例2]
図3に示したプロセスフローのセメント製造設備において、不溶化処理工程5でのセメント固化による、溶出が好ましくない成分のセメント硬化体からの溶出防止を確認するために、抽出工程4において回収した1重量部のキルンガス抽出物1dをその20重量倍の水に加えて攪拌しpH6〜13のスラリーを得た後、このスラリーに実施例1で用いたものと同様のセメント1cを10重量部加え、大気中で1〜7日間放置してセメント固化物を得た。続いて、このセメント固化物をクリンカ1b又は仕上工程3に戻して製造されたセメントを使用するときの環境への溶出が好ましくない成分の溶出を調べるために、まず、このセメント固化物を粉砕してセメント並みの粒度の粉を得て、この粉からの前記溶出が好ましくない成分の溶出を調べたが、該溶出が好ましくない成分の溶出量は極めて少なかった。
また、前記粉を前記セメントに外数で5重量%まで添加してモルタルを製作したが、このモルタルからの前記溶出が好ましくない成分の溶出量は、ブランクとして前記粉を添加しない前記セメントから製作したモルタルの場合と比較して増えていなかった。
従って、このようなセメント固化物をクリンカクーラー2c内もしくはその出口のクリンカ1b又は仕上工程3に添加して回収しても、添加した部分、つまり塩素バイパスで抽出した部分については溶出量が増えないので、その分、環境への溶出が好ましくない成分の溶出を抑えたクリンカ1b又はセメント1cを製造できることが分かった。
[実施例3]
不溶化処理工程5のプロセスフローが図3に示したものに代えて図4(a)に示したものであること以外は図3に示したプロセスフローのセメント製造設備において、該不溶化処理工程5でのスラリー化による、溶出が好ましくない成分のセメント硬化体からの溶出防止を確認するために、抽出工程4において回収した1重量部のキルンガス抽出物1dを10重量部の水に加えてpHを11.5とし、これに溶出防止剤として0.01重量部の硫酸第1鉄と更に0.01重量部の硫酸第2鉄を加えてゆっくり攪拌しスラリーを得た。
続いて、このスラリーをクリンカクーラー2c内もしくはその出口のクリンカ1bに戻して製造されたセメントを使用するときの環境への溶出が好ましくない成分の溶出を調べるために、該スラリーを、図1に示したプロセスブロックフロー、つまり、図3において抽出工程4と不溶化処理工程5とそれらに係る流線を除いたプロセスフローによる従来のセメント製造設備で製造されたクリンカ1bに約1重量%加えて、更に石膏を添加して粉砕し、セメントを得た。そこで、該セメントからモルタルを製作したが、このモルタルからの前記溶出が好ましくない成分の溶出量は、ブランクとして該スラリーを加えない前記セメントから製作したモルタルの場合に比べ増えていなかった。
従って、このような不溶化処理したスラリーをクリンカクーラー2c内もしくはその出口のクリンカ1bに添加して回収しても、添加した部分、つまり塩素バイパスで抽出した部分については溶出量が増えないので、その分、環境への溶出が好ましくない成分の溶出を抑えたクリンカ1bを製造できることが分かった。
本発明によれば、セメントクリンカやセメントの製造において、塩素バイパスを利用してキルンガスから環境への溶出が好ましくない物質を抽出し、セメント使用時において溶出しにくいように高アルカリ水に溶けにくくする操作、つまり不溶化処理操作を行った後、セメントクリンカもしくは仕上工程に戻すセメントクリンカ及びセメントの製造方法とその装置を提供することことによって、前記セメント使用時におけるセメントからの溶出が好ましくない物質の、セメント硬化体からの溶出もしくはセメント硬化中のブリージング水への溶出を減少させることができる。
従って、前記環境への溶出が好ましくない物質の、セメントで固化した土壌や廃棄物、あるいは、コンクリート構造物やモルタル等からの溶出を抑えることができるとともに、セメント全体を処理対象にすることで溶出に対応する従来の方法に比べて、セメント添加物の使用量を少量でも効率的に済ませることができる。
また、前記環境への溶出が好ましくない物質の不溶化処理操作を工夫すれば、該物質を有用物として回収したり、液側に溶解した塩素やカリウム、ナトリウムといったセメント製品にとって好ましくない成分を除去することも、あるいは有用物として回収することも可能である。
図1は、従来のクリンカ1b又はセメント1cの製造プロセスの流れを概略的に示すブロックフローチャートである。 図2は、本発明に係るクリンカ1b又はセメント1cの製造プロセスの流れを概略的に示すブロックフローチャートである。 図3は、本発明に係るクリンカ1b又はセメント1cの製造プロセスの一例を模式的に示すプロセスフローチャートである。 図4(a)〜(c)は、図3に示す不溶化処理工程5の部分の他の実施形態を模式的に示すプロセスフローチャートである。
符号の説明
1 原料工程
1a 送入原料
1b (セメント)クリンカ
1c セメント
1d キルンガス抽出物
1e 回収物
2 焼成工程
2a サスペンションプレヒータ
2a1 仮焼炉
2b (ロータリー)キルン
2b1 キルンバーナー
2c クリンカクーラー
2d キルンガス
2e キルン原料
2f 焼成物
3 仕上工程
4 抽出工程
4a 冷却装置
4b 分離装置
4c バグフィルタ
5 不溶化処理工程
5a 攪拌槽
5b 処理槽

Claims (4)

  1. セメントクリンカ製造用のサスペンションプレヒータ付きロータリーキルンのキルンガスからセメント微量成分を含むダストであるキルンガス抽出物を抽出する抽出工程を具備するセメントクリンカの製造方法であって、
    抽出した前記セメント微量成分のうち、セメントクリンカをセメントにして使用する際に、セメント硬化体からの溶出が好ましくない成分を高アルカリ水に溶けにくくする不溶化処理を前記キルンガス抽出物に行って前記セメントクリンカに戻し、
    前記不溶化処理では、前記キルンガス抽出物を水と反応させた後、前記セメントクリンカに添加すること
    を特徴とするセメントクリンカの製造方法。
  2. セメントクリンカ製造用のサスペンションプレヒータ付きロータリーキルンのキルンガスからセメント微量成分を含むダストであるキルンガス抽出物を抽出するセメントクリンカの製造装置であって、
    抽出した前記セメント微量成分のうち、セメントクリンカをセメントにして使用する際に、セメント硬化体からの溶出が好ましくない成分を高アルカリ水に溶けにくくする不溶化処理を前記キルンガス抽出物に行って前記セメントクリンカに戻し、
    前記不溶化処理では、前記キルンガス抽出物を水と反応させた後、前記セメントクリンカに添加すること
    を特徴とするセメントクリンカの製造装置。
  3. セメントクリンカ製造用のサスペンションプレヒータ付きロータリーキルンのキルンガスからセメント微量成分を含むダストであるキルンガス抽出物を抽出する抽出工程を具備するセメントの製造方法であって、
    抽出した前記セメント微量成分のうち、セメントを使用する際に、セメント硬化体からの溶出が好ましくない成分を高アルカリ水に溶けにくくする不溶化処理を前記キルンガス抽出物に行って前記セメントに戻し、
    前記不溶化処理では、前記キルンガス抽出物を水と反応させた後、前記セメントに添加すること
    を特徴とするセメントの製造方法。
  4. セメントクリンカ製造用のサスペンションプレヒータ付きロータリーキルンのキルンガスからセメント微量成分を含むダストであるキルンガス抽出物を抽出するセメントの製造装置であって、
    抽出した前記セメント微量成分のうち、セメントを使用する際に、セメント硬化体からの溶出が好ましくない成分を高アルカリ水に溶けにくくする不溶化処理を前記キルンガス抽出物に行って前記セメントに戻し、
    前記不溶化処理では、前記キルンガス抽出物を水と反応させた後、前記セメントに添加すること
    を特徴とするセメントの製造装置。
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