JP2004024998A - 汚染土壌の処理方法 - Google Patents

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Akihiko Nakahara
中原 昭彦
Takashi Takemoto
武本 隆志
Akinori Nakamura
中村 明則
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Abstract

【課題】セレン(Se)によって汚染された汚染土壌よりセレンを効率よく除去、回収し、且つ、土壌はセメントクリンカー製造用の原料として有効に使用することが可能な汚染土壌の処理方法を提供するものである。
【解決手段】セレン汚染土壌を、原料ドライヤー、プレヒーターを備えたロータリーキルンを有するセメントクリンカー製造用の焼成設備に供給してセメントクリンカーを製造すると共に、上記焼成設備内の温度700〜1200℃のガスの一部を抽気、冷却してセレンが濃縮されたダストを得た後、該ダストを水洗して、得られる洗浄水よりセレンを固形分として回収する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セレン(Se)によって汚染された汚染土壌の新規な処理方法に関する。詳しくは、上記汚染土壌よりセレンを効率よく除去、回収し、且つ、土壌はセメントクリンカー製造用の原料として有効に使用することが可能な汚染土壌の処理方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
セレンは、自然界の土壌中に広く含有される物質であるが、その濃度が高い土壌は、土壌汚染に係わる環境基準によって規制され、処理が必要となる。
【0003】
例えば、セレンを原料として使用する工場の跡地や、セレンを多量に含む工業製品の処分場などにおいては、その土壌が比較的高濃度のセレンによって汚染される懸念がある。
【0004】
従来、セレンで汚染された土壌の処理方法としては、かかる土壌を掘削除去した後、セレンを不溶化処理する方法、セメント等の固化材料と共に固形化処理する方法、最終処分場への投棄、等の方法が採られてきた。しかしこれらの方法は、セレンの全量が依然として土壌中に残存する処理であり、セレンの根本的な処理であるとは言い難い。
【0005】
また、セレン汚染土壌を洗浄する方法も提案されているが、セレン汚染土壌は、高度に汚染されている場合でも、土壌に係わる環境基準において、セレンを1mg/L程度溶出するものあり、このような土壌を洗浄する場合は、大量の洗浄排水が生成し、その処理に多大の労力を必要とする。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、セレン汚染土壌を効率よく、処理することが可能な処理方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく研究を重ねた結果、セレン汚染土壌を、原料ドライヤー、プレヒーターを備えたロータリーキルンよりなるセメントクリンカー製造用の焼成設備に供給することにより、原料の一部として利用することができると共に、該焼成設備における特定の温度にあるガスを抽気、冷却して得られるダスト中にセレンが高濃度で濃縮され、該ダストを洗浄することにより、極めて効率的にセレンを回収することができることを見出した。しかも、上記ロータリーキルンより得られるセメントクリンカー並びにロータリーキルンよりプレヒーター及び原料ドライヤーを経て排出される排ガス中には、セレンは全く検出されず、環境、製品に及ぼす影響も皆無であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、セレン汚染土壌を、原料ドライヤー、プレヒーターを備えたロータリーキルンを有するセメントクリンカー製造用の焼成設備に供給してセメントクリンカーを製造すると共に、上記焼成設備内の温度700〜1200℃のガスの一部を抽気、冷却してセレンが濃縮されたダストを得た後、該ダストを水洗して、得られる洗浄水よりセレンを固形分として回収することを特徴とする汚染土壌の処理方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において対象とする、セレン汚染土壌は、特に制限されないが、土壌に係わる環境基準において、セレンを0.01mg/L以上、特に、1mg/L以上の濃度で溶出する土壌に対して好ましく適用することができる。
【0010】
本発明において、セメントクリンカー製造用の焼成設備(以下、単に焼成設備ともいう。)は、原料ドライヤー、プレヒーターを備えたロータリーキルンを有する公知のものが特に制限なく使用される。上記焼成設備の代表的な態様を示す概略図である図1に従って、説明すれば、本発明の焼成設備は、原料ドライヤー3、プレヒーター2を備えたロータリーキルン1を有する。上記原料ドライヤー3は、プレヒーター2を経たロータリーキルン1の排ガスにより原料を乾燥するようにしたものが好ましく、排ガスは、ダクト13より排出される。また、プレヒーター2は、該ロータリーキルン1の窯尻にハウジング11を介して接続され、原料5をロータリーキルンの排ガスによって予熱するものであり、複数のサイクロン6よりなり、各サイクロンは、排ガスを該サイクロンに順次供給するためのガスダクト8及び原料を該ガスダクトに順次供給して熱交換を行わせるための原料供給管7及び最下段のサイクロンより原料をロータリーキルン1の窯尻に供給するための原料シュート9より基本的に構成される。また、上記プレヒーターは、窯尻のハウジング11からの立上り部に排ガスを加熱するための仮焼炉10を有し、各サイクロンに供給されるキルン排ガスの温度を上げている。
【0011】
尚、4は、原料を粉砕するための粉砕機であり、通常、ボールミルが使用される。
【0012】
また、4はロータリーキルン1より得られるセメントクリンカーを冷却するためのクーラーであり、14は、上記クーラーで熱交換して加熱されたガスを仮焼炉3に供給するダクトである。
【0013】
本発明において、上記焼成設備へのセレン汚染土壌の供給個所は特に制限されないが、好適な供給個所を例示すれば、キルンの窯尻ハウジング11、ドライヤー3が挙げられる。また、場合によっては、仮焼炉10にも供給することができる。
【0014】
上記焼成設備への供給に際して、セレン汚染土壌は、適当な粒度に粉砕されることが好ましい。具体的には、必要に応じて、セレン汚染土壌から鉄等の金属塊を除去した後、必要に応じて、粗大岩石を除去し、また、平均粒子径約50mm以下程度に粗砕を行い、次いで、セメント原料と同等のレベルまで、公知の手段で粉砕を行うことが好ましい。
【0015】
尚、セレン含有土壌を前記ドライヤー3に供給する態様にあっては、その前に設けられる粉砕機4にセレン汚染土壌を供給して、原料と共に粉砕を行うことが推奨される。
【0016】
本発明において、焼成設備に土壌と共に供給されたセレンは、ロータリーキルン1の窯尻から排ガスのダクト13に至るキルン排ガスの流路中で、温度が700〜1200℃、特に、900〜1000℃である個所において、高濃度で存在することが確認された。
【0017】
従って、本発明において、かかる温度領域のガスの一部を抽気し、冷却することにより、セレンを高濃度で含有するダストを得ることができる。因みに、セレン汚染土壌の10倍以上、場合によっては、100倍以上のセレン濃度を有するダストとすることができる。
【0018】
そして、かかるダストを洗浄することにより、従来の汚染土壌を洗浄する場合に比べ、格段に少ない洗浄液で洗浄することにより、ダスト中のセレンを洗浄水中に回収することができ、ダストの固形分は、再度、焼成設備にリサイクルすることができる。
【0019】
また、本発明の利点として、セレン汚染土壌の土壌部分は、セメント原料として有効に利用することができる点にある。
【0020】
本発明において、前記焼成設備より抽気したガスの冷却は、セレン又はその化合物が凝縮し得る温度であればよく、一般に、200℃以下に冷却すれば足りる。また、上記ダストの捕集は、サイクロンによって行うのが一般的である。更に、上記捕集されたダストの水洗方法は特に制限されないが、水中に分散せしめた後、濾過する方法が一般的である。
【0021】
本発明において、上記水洗によって得られた洗浄水よりセレンを固形分として分離する方法は特に制限されないが、洗浄水中のセレンを予め還元処理した後、凝集剤により共沈せしめる方法が好ましい。また、その際、pHは10以下、好ましくは、3〜9に調整することが、還元作用を向上せしめるために好ましい。
【0022】
上記中和処理に使用する酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等が好適に使用される。
【0023】
また、上記還元処理において、還元剤は、公知のものが特に制限なく使用されるが、都市ゴミの焼却設備で生成する焼却灰、特に、CODが高い飛灰が好適である。この焼却灰は、水洗前に前記ダストと混合することが好ましい。
【0024】
また、凝集剤は、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、硫化ナトリウム、公知の高分子凝集剤等の凝集剤を単独で或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。尚、洗浄水が、還元剤を含む場合は、上記塩化第一鉄、硫酸第一鉄は、塩化第二鉄、硫酸第二鉄を使用してもよい。
【0025】
本発明において、上述した方法によって固形分として回収されたセレンは、精錬法などに精製して再使用することが好ましい。また、本発明の方法によれば、焼成設備に供給されたセレンは、他のクロム等の重金属とは異なり、得られるセメントクリンカーにも、また、ドライヤーを経て排出される排ガス中にも検出されない位、完全に系内に留まるため、上記固形分として回収されたセレンの一部又は全部を前記焼成設備にリサイクルし、その相当量は、焼成設備中に問題なく蓄積させてもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明によれば、セレン汚染土壌中のセレンを焼成設備において濃縮したダストとして得ることができるため、これを水洗して得られるセレン含有洗浄水よりセレンを極めて効率よく回収することができる。
【0027】
また、土壌はセメントクリンカー製造用の原料として有効に使用することが可能であり、しかも、得られるセメントクリンカー中へのセレンの混入もない。
【0028】
従って、従来の方法に比較して、セレン汚染土壌を確実に処理することができる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
尚、実施例において、各種測定は以下の方法によって行った。
(1)セメントクリンカー中のセレン濃度
セメントクリンカーを蛍光X線分析によって測定した。
(2)ドライヤー排ガス中のセレンの存在の確認
排ガス配管に設けられたコットレルの固形分を蛍光X線分析によって測定した。
【0031】
実施例1
セレンを元素換算で土壌に係わる環境基準において、セレンを1mg/L溶出する汚染土壌を、磁選による除鉄後、平均粒子径40mm程度に粗砕し、次いで、ボールミルにより平均粒子径150μmに粉砕した。
【0032】
次いで、上記セレン汚染土壌を図1で示される焼成設備(セメントクリンカー生産量約100T/日)のドライヤー3に、2T/日の割合で連続供給した。
【0033】
ガス温度900℃の窯尻ハウジング11の立上り部に抽気ダクト(図示せず)を設け、ガスの一部を抽気した。次いで、抽気ガスを100℃に冷却し、ダストをバグフィルターによって回収した。
【0034】
得られたダストの量は、3T/日であった。また、ダスト中のセレンの元素換算の量は、1000ppmであった。
【0035】
上記ダスト100重量部に対して都市ゴミ焼却炉より得られた飛灰を400重量部混合し、これを30倍量の水で水洗した。得られた洗浄水に塩化第二鉄と塩酸との混合溶液を添加し、pHを9に調整した。
【0036】
上記処理により得られた洗浄水中のセレン濃度は、元素換算で検出下限の0.03ppm以下であった。
【0037】
また、焼成設備より得られるセメントクリンカー中のセレン濃度は、検出下限の3ppm以下であった。
【0038】
更に、ドライヤー排ガス中には、セレンは検出されなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するためのセメントクリンカー製造用焼成設備の代表的な態様を示す概略図
【符号の説明】
1 ロータリーキルン
2 プレヒーター
3 ドライヤー
4 粉砕機
5 原料
6 サイクロン
7 原料供給管
8 ガスダクト
9 原料シュート
10 仮焼炉
11 窯尻ハウジング
12 クーラー
13 ダクト

Claims (3)

  1. セレン汚染土壌を、原料ドライヤー、プレヒーターを備えたロータリーキルンを有するセメントクリンカー製造用の焼成設備に供給してセメントクリンカーを製造すると共に、上記焼成設備内の温度700〜1200℃のガスの一部を抽気、冷却してセレンが濃縮されたダストを得た後、該ダストを水洗して、得られる洗浄水よりセレンを固形分として回収することを特徴とする汚染土壌の処理方法。
  2. セレン汚染土壌をセメントクリンカー製造用の焼成設備のロータリーキルンの窯尻ハウジングに供給する請求項1記載の汚染土壌の処理方法。
  3. セレン汚染土壌を原料ドライヤーに供給する請求項1記載の汚染土壌の処理方法。
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