以下、第1実施形態について図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、水浄化システム10の一例を模式的に示す図である。図1に示すように、水浄化システム10は、例えば生活排水などの下水を浄化処理するシステムである。水浄化システム10は、下水浄化設備11、汚泥処理設備12及び汚泥焼却設備13を有する。下水浄化設備11は、例えば活性汚泥法を用いて下水を浄化する設備である。詳細には、下水浄化設備11は、沈砂池21、最初沈殿池(第一沈殿池)22、反応槽(曝気槽)23、最後沈殿池(第二沈殿池)24を含む。沈砂池21は、下水とともに流入する土砂や比較的大きなごみを除去する。最初沈殿池22は、沈砂池21から送り出される下水を例えば2~3時間かけて流し、下水に含まれる汚れを沈殿させる。最初沈殿池22で沈殿した汚れは、生汚泥25aとして回収される。反応槽23は、最初沈殿池22からの下水と活性汚泥とを混合し、反応槽23の内部を曝気・攪拌し、活性汚泥に含まれる微生物の働きによって下水に含まれる汚れ(有機物)を分解する。
最後沈殿池24は、反応槽23から送り出された下水を例えば3~4時間かけて流し、下水に含まれる活性汚泥を沈殿させる。最後沈殿池24で沈殿した活性汚泥の一部は、反応槽23に戻され、残りの活性汚泥は、余剰汚泥25bとして回収される。最後沈殿池24により活性汚泥が分離された下水は、図示を省略した塩素接触槽において塩素消毒された後、処理水として海や河川に放流される。
汚泥処理設備12は、下水浄化設備11において発生する下水汚泥25を濃縮、脱水、或いは、更に乾燥によって減量化する設備である。なお、下水汚泥25は被処理物の一例であり、下水汚泥25は、最初沈殿池22から取り除かれた生汚泥25aと、最後沈殿池24で取り除かれた余剰汚泥25bと含むものである。汚泥処理設備12は、濃縮装置31、脱水機32、乾燥機33を含む。
濃縮装置31は、下水汚泥25を上澄み水と汚泥成分とに分離、つまり下水汚泥25の固形分を濃縮する。脱水機32は、濃縮された下水汚泥25を例えば含水率75~80%程度まで脱水する。乾燥機33は、脱水機32で脱水された下水汚泥25を例えば含水率20~30%程度まで乾燥させる。汚泥処理工程を経た下水汚泥25は、汚泥焼却設備13によって焼却される。汚泥焼却設備13によって下水汚泥25を焼却したときに発生する焼却灰は、埋め立て処分されるか、資源として再利用される。なお、図1においては、濃縮装置31、脱水機32、乾燥機33を含む汚泥処理設備12としているが、濃縮装置31、脱水機32、乾燥機33の少なくともいずれか1つを省略、若しくは必要に応じて改質等の、その他工程や機器を追加した汚泥処理設備としてもよい。
図2は、汚泥処理設備12及び汚泥焼却設備13の一構成を模式的に示す図である。なお、図2中実線で示す矢印は、下水汚泥25や燃焼用空気等の供給路の他、焼却排ガスや焼却灰の排出路を示し、図2中破線で示す矢印は、有害化合物の設備機器や流動床などの要素への付着堆積を防止する前記薬剤の供給路を、図2中二点鎖線で示す矢印は信号を示す。
汚泥焼却設備13は、流動焼却炉(流動床式焼却炉)37、空気予熱器(熱交換器)38、集塵装置39、排煙処理装置40及び制御装置43を含む。周知のように、流動焼却炉37は、炉内に吹き込んだ燃焼用空気により流動化した流動砂を昇温バーナにより加熱し、炉内に投入された下水汚泥25を高温加熱された流動砂により加熱焼却する設備である。なお、流動焼却炉37としては、気泡式流動焼却炉、循環式流動焼却炉及び過給式流動焼却炉などがあるが、いずれの流動焼却炉であってもよい。また、焼却炉として流動焼却炉を例に挙げているが、例えば下水汚泥を焼却したときに発生する焼却灰の乾燥状態での回収量の実測値の測定と、焼却灰回収量の理論値を求めることができれば、例えば階段式ストーカ炉(ストーカ末端の灰ホッパまたは煙道への飛灰などから灰を回収可能)や、立型多段焼却炉(各段からの飛灰を回収可能)など、炉内の燃焼により発生する灰の示差熱を計測できれば、他の焼却炉であってもよい。図示は省略するが、流動焼却炉37は、設備起動時に炉内を高温加熱する昇温バーナ、炉内を高温加熱する際や、汚泥を焼却する際に不足する熱力を補うために炉内に補助燃料を投入する補助燃料装置、炉内に燃焼用空気を送り込む散気装置を有する。他の形式の焼却炉でも、乾燥高温で自燃する汚泥の湿分や温度を調節する補助燃料や酸素を含む空気を、部位は異なれど同様に供給する。なお、図2中符号45は、流動焼却炉37から排出される燃焼排ガスを空気予熱器38に送り出す排出路である。
流動焼却炉37は、図示は省略するが、排出口を下部に有する。例えば流動焼却炉37に投入される下水汚泥25は不燃物を含んでいる。下水汚泥中の不燃物は焼却されずに流動焼却炉37の下部に残留する。したがって、排出口から流動砂を排出することで、流動砂に含まれる不燃物をも回収する。なお、排出された流動砂は、不燃物が除去された後、流動焼却炉に再度送り込まれる。
空気予熱器38は、流動焼却炉37から排出される燃焼排ガスと、送風機46から流動焼却炉37が有する散気装置に向けて送り込まれる燃焼用空気との間で熱交換を行う。空気予熱器38による熱交換により、散気装置に向けて送り込まれる燃焼用空気は、例えば600~650℃に予熱される。例えば、流動焼却炉37から排出される燃焼排ガスの温度は800~900℃であり、空気予熱器38から送り出される燃焼排ガスの温度は熱交換により500~700℃に低下する。ここで、図2中符号47は空気予熱器38にて熱交換された燃焼排ガスを集塵装置39に排出する排出路(煙道)である。また、図2中符号48は送風機46から送り出された空気を空気予熱器38に供給する供給路、図2中符号49は予熱された燃焼用空気を流動焼却炉37の散気装置に供給する供給路である。
集塵装置39は、空気予熱器38から排出される燃焼排ガスに含まれる焼却灰を分離・回収する装置である。集塵装置39としては、一例としてセラミックフィルタを用いた集塵装置が挙げられる。集塵装置39において分離・回収された焼却灰は、灰ホッパ51に集積される。なお、図2中符号52は、集塵装置39により焼却灰が取り除かれた燃焼排ガスを排煙処理装置40に送り出す排出路であり、符号53は集塵装置39により分離・回収された焼却灰を灰ホッパ51に排出する排出路である。
排煙処理装置40は、例えば燃焼排ガス中に含まれる硫黄酸化物及び塩化水素などの装置の腐食に対して害を及ぼす化合物を除去する。
灰ホッパ51は、集塵装置39により集塵された焼却灰を集積し、例えばトラックなどの荷台等に排出するものである。
制御装置43は、例えば、PLC(programmable logic controller)などから構成される。制御装置43は、汚泥焼却設備13の各部を制御するのに使用する制御装置を兼用して使用してもよいし、本発明を実施するために専用の制御装置としてもよい。制御装置43は、後述する供給装置54により下水汚泥25への有害化合物の設備の機器や要素への付着堆積を防止する薬剤添加の開始や停止、薬剤添加量の調整などの制御を行う。
制御装置43には、後述する熱重量・示差熱分析装置(TG-DTA)56による測定結果を示す信号が入力される。したがって、制御装置43は、該信号を用いて、下水汚泥に薬剤を添加するか否かの判定や、添加している薬剤の添加量を調整するか否かの判定を行う。
供給装置54は、有害化合物の設備の機器や要素への付着堆積を防止する薬剤を下水汚泥25に供給する装置である。一般的に、流動焼却炉で下水汚泥を焼却したときに発生する焼却灰は、多種多様な成分からなり、経験的にリンやリンの化合物の含有率が高いほど、焼却灰が焼却炉の排出口以降の煙道や機器内部に付着、堆積して閉塞させる事象や、焼却灰が流動砂表面に付着し、流動砂粒子同士が結合、造粒し適正な流動状態を維持できなくなる事象(流動不良)が発生しやすいことが知られている。その機構は、リンの揮散、凝縮によるとするものや、低融点のリン化合物が液状化することによるとするものなどがあるが、その機構の全てが明らかになっているわけではない。
したがって、供給装置54により、例えば鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)の何れか1つを含む塩基系化合物を含む薬剤を下水汚泥25に添加することで、上記事象の発生を防止する。なお、Feを含む化合物としては、ポリ硫酸第二鉄などが挙げられる。また、Caを含む化合物としては、炭酸カルシウム、消石灰、生石灰などが挙げられる。また、Alを含む化合物としては、ポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。また、Mgを含む化合物としては、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
なお、薬剤が下水汚泥25に添加されるタイミングは、下水汚泥25を濃縮処理する前、濃縮処理された下水汚泥25を脱水処理する前、脱水処理された下水汚泥25を乾燥処理する前、又は乾燥処理された下水汚泥25を流動焼却炉37に投入する前の少なくともいずれか1つのタイミング、又は焼却炉に直接投入することが好ましいが、下水浄化工程のいずれかの箇所への供給や、図示しない汚泥処理工程や、汚泥焼却工程から下水浄化工程へ返送される返流水への供給を否定するものではない。
熱重量・示差熱分析装置56は、集塵装置39により集塵された焼却灰の一部を取得し、取得した焼却灰を用いた示差熱分析を行う装置である。熱重量分析部分は必須ではない。周知のように、示差熱分析は、試料と基準物質との温度を変化させたときの試料と基準物質との温度差を温度(又は時間)の関数として測定する方法である。例えば試料の温度を変化させると、試料は、融解、ガラス転移、結晶化の他、分解、酸化、硬化といった反応を生じる。これら反応時には、試料において、熱変化が生じる。そこで、本実施形態で用いる熱重量・示差熱分析装置56は、集塵装置39により集塵された焼却灰を試料として、該試料の融解温度測定を行う。示差熱分析に用いる基準物質は、例えばα-アルミナなど、測定温度範囲で熱的変化がない物質が挙げられる。
図3に示すように、示差熱分析は、試料60と基準物質61とをヒータ(加熱炉)62の内部の対称位置に設置し、ヒータ62により試料60と基準物質61とを一定速度で加熱する。この時、試料60及び基準物質61の表面に設置された示差熱電対63により、試料60と基準物質61の温度差ΔTを検出する。本実施形態では、示差熱分析で求めた温度差により、例えば熱量(熱流)の変化を演算する。なお、熱重量・示差熱分析装置56は、温度を変化させた場合の熱流の変化を示すデータを、制御装置43に送信する。なお、熱重量・示差熱分析装置56による焼却灰の示差熱分析は、例えば12時間、1日、1週間など、所定の間隔を空けて実施される。
図2に戻って、上述した流動焼却炉37には、流動焼却炉の内部温度を測定する温度センサ57が設けられる。温度センサ57は、測定した焼却炉内部の温度を示す信号を、制御装置43に逐次送信する。
また、空気予熱器38の排出口近傍には、空気予熱器38の排出口近傍の温度を測定する温度センサ58が設けられる。温度センサ58は、測定した空気予熱器38の排出口近傍の温度を示す信号を、制御装置43に逐次送信する。
上述した制御装置43は、下水汚泥25への薬剤添加の開始や停止、薬剤添加量の調整などの制御を実行する。下水汚泥25への薬剤添加の開始や停止、薬剤添加量の調整の制御を行うにあたり、制御装置は、温度変化に基づく熱流の変化を示すデータから温度及び熱流の関係を示す関係式を演算し、その逐次演算される関係式から試料の吸熱ピークが開始される降下開始温度を求める処理を行う。この処理を、図4のようなグラフを用いて、該グラフから試料の吸熱ピークが開始される降下開始温度を求める演算処理の説明を以下にする。
試料の吸熱ピークが開始される降下開始温度を求める処理は、以下の順序で実行される。図4は、温度及び熱流の関係を示すグラフの一例を示す。図4においては、横軸を温度(℃)とし、縦軸を熱流(DTA(μV)×10)としている。
制御装置43は、温度及び熱流の関係を示すグラフのうち、試料の吸熱ピークが含まれる温度範囲を限定するための第1設定値T1を算出する。本実施形態では、第1設定値T1は、温度範囲の下限値として使用される。第1設定値T1を設定する意味は、汚泥焼却設備13における有害化合物である可能性のある化合物の凝縮(相変化)の吸熱ピークと関係ない吸熱ピークが、この第1設定値T1未満に存在し、それを演算から削除する操作の意味である。例えば一例として、二酸化珪素のアルファ石英からベータ石英への相変化などの吸熱ピークを除外するためである。
ここで、第1設定値T1は、一例として、流動焼却炉37の内部の最高温度(以下、流動焼却炉の最高温度と称する)と、空気予熱器38の排出口近傍の温度との平均値が挙げられる。以下、流動焼却炉37の最高温度として、平均的な流動焼却炉の最高温度を用いた場合を説明する。なお、流動焼却炉37の最高温度としては、流動焼却炉37の設計段階における流動焼却炉37の最高温度(設計値)を用いることも可能である。また、流動焼却炉37の内部の温度を温度センサ57にて所定時間おきに測定し、測定した流動焼却炉37の内部の温度の平均値や中間値を、流動焼却炉37の内部の最高温度の代わりに用い、空気予熱器38の排出口近傍の温度との平均値、又は中間値とすることも可能である。
制御装置43は、第1設定値T1以上となる温度の範囲に含まれる吸熱ピークのうち、最も第1設定値T1に近い温度で現れる吸熱ピークの降下する箇所の接線の傾き(言い換えれば勾配)θを求める。制御装置43は、求めた勾配θが予め設定された勾配θthよりも大きくなった場合に、求めた勾配θが得られた温度を第1設定値T21とする。なお、勾配θthは、過去の履歴やシミュレーションなどにより得られる値である。また、勾配θthは、固定であっても、可変であってもよい。
制御装置43は、第1設定値T21における熱流値と、吸熱ピークの底部となるときの熱流値との差であるピーク差Pが閾値Pth以上であるか否かを判定する。ピーク差Pが閾値Pth以上となる場合には、制御装置43は、第1設定値T21を降下開始温度Tとする。なお、閾値Pthは、過去の履歴やシミュレーションなどにより得られる値である。また、閾値Pthは、固定であっても、可変であってもよい。
なお、求めた勾配θが予め設定された勾配θth未満となる場合や、ピーク差Pが閾値Pth未満である場合には、制御装置43は、第1設定値T1以上となる温度の範囲に含まれる吸熱ピークのうち、温度が低い方の吸熱ピークから順に、上記処理(第1設定値T2nを求める処理や、吸熱ピークのピーク差Pが閾値Pth以上であるか否かを判定する処理)を降下開始温度が求められるまで繰り返し実行する。なお、降下開始温度が求められない場合には、制御装置43は、ノーデータとする。
以下、焼却灰の示差熱分析の結果に基づいて、薬剤の添加の開始、停止や薬剤の添加量の調整を論理制御にて行う場合の処理の流れの一例について、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、図5においては、添加調整量に対しては、記号A1~A4や記号B1~B4を用いている。なお、制御方法は、一例として示す論理制御によってもよいし、例えば、PID制御やFUZZY推論などの、例えば閾値Pthより大きな吸熱ピークの熱流値差であるピーク差を有する場合の降下開始温度などに基づく線形制御(例えばフィードバック制御)によってもよい。また複数の制御方法を組み合わせて用いることもできる。以下では、供給装置54により下水汚泥に供給される薬剤の供給量を薬剤の添加量と称し、また、下水汚泥に供給される薬剤の調整量を添加調整量と称する。以下、降下開始温度Tを比較値と称する。
ステップS101は、示差熱分析を行う処理である。示差熱分析は、集塵装置39から灰ホッパ51に排出される焼却灰を取得し、取得した焼却灰を熱重量・示差熱分析装置56に設置することで実行される。ここで、焼却灰の熱重量・示差熱分析装置56への設置は、自動で行ってもよいし、作業者が行ってもよい。なお、示差熱分析の結果は、制御装置43に送信される。
ステップS102は、第1設定値T2nから降下開始温度Tを算出する処理である。制御装置43は、示差熱分析の結果を用いて第1設定値T2nから降下開始温度Tを求める。図5のフローチャートにおいては、有害化合物の凝縮の発生していない正常灰の降下開始温度TAを用いて比較判定を行うことから、以下、第1設定値T2nから降下開始温度Tを比較値Tm(m=1,2,3,・・・)と称して説明する。
ステップS103は、比較値Tmが算出されたか否かを判定する処理である。ステップS102において比較値Tmが算出されている場合には、制御装置43は、ステップS103の判定結果をYesとする。この場合、ステップS104以降の処理が実行される。一方、比較値Tmが算出されていない場合には、制御装置43は、ステップS103の判定結果をNoとする。この場合、図5に示すフローチャートの処理が終了する。なお、ステップS103の判定処理の結果がNoとなる場合には、薬液の添加量の変更や、薬液の投入開始や投入停止などの処理は実行されない。
ステップS103の処理でYesと判定された場合には、制御装置43は、以下に示す複数の処理を同時に実行する。以下、ステップS104からステップS106の処理を第1演算処理、ステップS107からステップS109の処理を第2演算処理、ステップS110及びステップS114までの処理を第3演算処理、ステップS115からステップS118の処理を第4演算処理と称する。また、制御装置43は、上述した第1~第4演算処理の他に、ステップS121及びステップS122に示す第5演算処理を実行する。
<第1演算処理>
ステップS104は、今回算出した比較値Tmが目標値T0を超過するか否かを判定する処理である。今回算出した比較値Tmが目標値T0を超過する場合には、制御装置43は、ステップS104の判定結果をYesとする。この場合、ステップS105に進む。一方、今回算出した比較値Tmが目標値T0以下となる場合には、制御装置43は、ステップS104の判定結果をNoとする。
ステップS105は、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以上で、且つ前回の添加調整量をプラスの値にしたか否かを判定する処理である。制御装置43は、前回算出した比較値Tm-1及び前回の添加調整量を、記憶装置から読み出す。今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以上で、且つ前回の添加調整量をプラスの値としていれば、制御装置43は、ステップS105の判定結果をYesとする。この場合、ステップS106に進む。一方、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以上で、且つ前回の添加調整量をプラスの値としていない場合には、制御装置43は、ステップS105の判定結果をNoとする。
ステップS106は、今回の添加調整量を決定する処理である。制御装置43は、ステップS105で読み出した前回の添加調整量や、算出した比較値Tmや目標値T0の他、薬剤を投入することでの降下開始温度の変化量などに基づいて、比較値Tを目標値T0に近づけるように今回の添加調整量を決定する。例えば、前回の添加調整量+A1とした後の示差熱分析後に算出される比較値Tmが目標値T0を超過する場合には、薬剤の添加量が多いと判断できるので、このような場合には、薬剤の添加調整量は例えば-B1(B1<A1)となる。
つまり、第1演算処理では、算出した比較値Tmが目標値T0を超過し、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以上で、且つ前回の薬剤の添加調整量をプラスとした場合、制御装置43は、薬剤の添加量を減少させるように薬剤の添加調整量を決定し、比較値Tmを目標値T0に収束させる。
<第2演算処理>
ステップS107は、今回算出した比較値Tmが目標値T0未満であるか否かを判定する処理である。今回算出した比較値Tmが目標値T0未満である場合には、制御装置43は、ステップS107の判定結果をYesとする。この場合、ステップS108に進む。一方、今回算出した比較値Tmが目標値T0以上となる場合には、制御装置43は、ステップS107の判定結果をNoとする。
ステップS108は、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以下で、且つ前回の添加調整量をマイナスの値にしたか否かを判定する処理である。制御装置43は、前回算出した比較値Tm-1及び前回の添加調整量を、記憶装置から読み出す。今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以下で、且つ前回の添加調整量をマイナスの値にしていれば、制御装置43は、ステップS107の判定結果をYesとする。この場合、ステップS109に進む。一方、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以下で、且つ前回の添加調整量がマイナスの値でない場合には、制御装置43は、ステップS108の判定結果をNoとする。
ステップS109は、今回の添加調整量を決定する処理である。制御装置43は、ステップS108で読み出した前回の添加調整量や、算出される比較値Tmや目標値T0の他、薬剤を投入することでの降下開始温度の変化量などに基づいて、比較値Tmを目標値T0に近づけるように、今回の添加調整量を決定する。例えば、前回の添加調整量-A2とした後に算出される比較値Tmが目標値T0未満となり、且つ今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以下となる場合には、薬剤の添加量が少ないと判断できるので、このような場合には、薬剤の添加調整量は例えば+B2(B2<A2)となる。
つまり、第2演算処理では、比較値Tmが目標値T0未満で、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以下で且つ前回の薬剤の添加調整量がマイナスとなる場合、制御装置43は、薬剤の添加量を増加させるように薬剤の添加調整量を決定し、比較値Tmを目標値T0に収束させる。
<第3演算処理>
ステップS110は、今回算出した比較値Tmが目標値T0と同一であるか否かを判定する処理である。今回算出した比較値Tmが目標値T0と同一である場合には、制御装置43は、ステップS110の判定結果をYesとする。この場合、ステップS111に進む。一方、今回算出した比較値Tmが目標値T0と同一でない場合には、制御装置43は、ステップS110の判定結果をNoとする。
ステップS111は、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1を超過し、且つ前回の添加調整量をプラスの値にしたか否かを判定する処理である。制御装置43は、前回算出した比較値Tm-1及び前回の添加調整量を、記憶装置から読み出す。今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1を超過し、且つ前回の添加調整量をプラスの値にしていれば、制御装置43は、ステップS111の判定結果をYesとする。この場合、ステップS112に進む。一方、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1未満で、且つ前回の添加調整量がプラスの値でない場合には、制御装置43は、ステップS111の判定結果をNoとする。この場合、ステップS113に進む。
ステップS112は、今回の添加調整量を決定する処理である。制御装置43は、ステップS111で読み出した前回の添加調整量や、算出される比較値Tmや目標値T0の他、薬剤を投入することでの降下開始温度の変化量などに基づいて、比較値Tmを目標値T0に近づけるように今回の添加調整量を決定する。例えば、前回の添加調整量+A3とした後に算出される比較値Tmが目標値T0と同一となり、且つ今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1を超過する場合には、薬剤の添加量が多いと判断できるので、このような場合には、薬剤の添加調整量は例えば-B3(B3<A3)となる。
ステップS113は、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1未満で、且つ前回の添加調整量をマイナスの値にしたか否かを判定する処理である。制御装置43は、前回算出した比較値Tm-1及び前回の添加調整量を、記憶装置から読み出す。今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1未満で、且つ前回の添加調整量をマイナスの値にしていれば、制御装置43は、ステップS113の判定結果をYesとする。この場合、ステップS114に進む。一方、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1と同一となる場合で、且つ前回の添加調整量をマイナスの値にしていない場合には、制御装置43は、ステップS113の判定結果をNoとする。
ステップS114は、今回の添加調整量を決定する処理である。制御装置43は、ステップS113で読み出した前回の添加調整量や、算出される比較値Tmや目標値T0の他、薬剤を投入することでの比較値の変化量などに基づいて、今回の添加調整量を決定する。例えば、前回の添加調整量-A4とした後に算出される比較値Tmが目標値T0と同一となり、且つ今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1未満となる場合には、薬剤の添加量が少ないと判断できるので、このような場合には、薬剤の添加調整量は例えば+B4(B4<A4)となる。
つまり、第3演算処理では、比較値Tmが目標値T0と同一で、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1を超過し且つ前回の添加調整量がプラスとなる場合、制御装置43は、薬剤の添加量を減少させるように薬剤の添加調整量を決定し、比較値Tmを目標値T0に収束させる。また、比較値Tmが目標値T0と同一で、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1未満で且つ前回の添加調整量がマイナスとなる場合には、制御装置43は、薬剤の添加量を増加させるように薬剤の添加調整量を決定し、比較値Tmを目標値T0に収束させる。
<第4演算処理>
ステップS115は、今回算出した比較値Tmが閾値L0未満であるか否かを判定する処理である。ここで、閾値L0は、目標値T0に対して設定される下限側の閾値である。今回算出した比較値Tmが閾値L0未満であるとき、制御装置43は、ステップS115の判定結果をYesとする。この場合、ステップS116に進む。一方、今回算出した比較値Tmが閾値L0未満でないとき、制御装置43は、ステップS115の判定結果をNoとする。この場合、ステップS117に進む。
ステップS116は、今回の添加調整量を決定する処理である。制御装置43は、算出される比較値Tmや目標値T0の他、薬剤を投入することでの比較値Tの変化量などに基づいて、比較値Tmを目標値T0に近づけるように今回の添加調整量を決定する。例えば、今回算出した比較値Tmが閾値L0未満であるとき、薬剤の添加調整量は例えば+B5となる。
ステップS117は、今回算出した比較値Tmが閾値H0以上であるか否かを判定する処理である。ここで、閾値H0は、目標値T0に対して設定される上限側の閾値である。今回算出した比較値Tmが閾値H0以上となる場合には、制御装置43は、ステップS117の判定結果をYesとする。この場合、ステップS118に進む。一方、今回算出した比較値Tmが閾値H0未満となる場合には、制御装置43は、ステップS117の判定結果をNoとする。
ステップS118は、今回の添加調整量を決定する処理である。制御装置43は、算出される比較値Tmや目標値T0の他、薬剤を投入することでの比較値Tの変化量などに基づいて、比較値Tmを目標値T0に近づけるように今回の添加調整量を決定する。例えば、今回算出した比較値Tmが閾値H0以上であるとき、薬剤の添加調整量は例えば-B6となる。
つまり、第4演算処理では、比較値Tmが閾値L0未満となる場合、制御装置43は、薬剤の添加量を増加させるように薬剤の添加調整量を決定し、比較値Tmを目標値T0に収束させる。また、比較値Tmが閾値H0以上となる場合、制御装置43は、薬剤の添加量を減少させるように薬剤の添加調整量を決定し、比較値Tmを目標値T0に収束させる。
<第5演算処理>
ステップS121は、今回算出した比較値Tmが閾値L1(L0>L1)未満となるか否かを判定する処理である。制御装置43は、記憶装置から閾値L1を読み出す。今回算出した比較値Tmが閾値L1未満となる場合には、制御装置43は、ステップS121の判定結果をYesとする。この場合、ステップS122に進む。一方、今回算出した比較値Tmが閾値L1以上となる場合には、制御装置43は、ステップS121の判定結果をNoとする。なお、ステップS121の処理は、図5に示すフローチャートが実施されるたびに実行される。
ステップS122は、警告を行う処理である。一例として、制御装置43は、汚泥焼却設備13に設けられたスピーカによる警告音の発生を指示したり、汚泥焼却設備13に設置される表示装置や制御装置による警告表示を指示する。つまり、第5演算処理では、薬剤の添加の有無に関係なく、算出した比較値Tmが閾値L1未満となるか否かを判定している。
なお、第1演算処理から第4演算処理の各処理を同時に実行した後、制御装置43は、以下の処理を実行する。例えば、第1演算処理のステップS104、第2演算処理のステップS107、第3演算処理のステップS110又は同演算処理のステップS113、第4演算処理のステップS116及びステップS117の各処理でNoと判定された場合には、制御装置43は、ステップS119の処理を実行し、今回の添加調整量を±0とする。一方、第1演算処理、第2演算処理、第3演算処理又は第4演算処理の何れかの演算処理で添加調整量が決定される場合には、制御装置43は、決定された添加調整量を今回の添加調整量とする。そして、制御装置43は、決定された添加調整量を供給装置54に出力する。
このように、制御装置43によって求められた添加調整量に基づいて、供給装置54では、薬剤の添加量が調整される。この調整の際に、入力された添加調整量により薬剤の添加量が0以下となる場合には、供給装置54は、下水汚泥に対する薬剤の供給を停止する。また、入力された添加調整量により、薬剤の添加量が0を超過した時には、供給装置54は、下水汚泥に対する薬剤の供給を開始する。
図6(a)は、薬剤を投入していない場合の示差熱分析の結果に基づいた温度及び熱流の関係を示す図、図6(b)は、薬剤を投入してから所定時間経過した場合の示差熱分析の結果に基づいた温度及び熱流の関係を示す図である。図6(a)に示すように、例えば温度範囲を限定する第1設定値T1が750℃に設定された場合、例えば約560℃ピーク差の底部を有する吸熱ピークは約520℃となる物質は除外され、750℃以上の物質しか吸熱ピークは観察しない。
第1設定値T1よりも高温の、例えば第1設定値T2n、言い換えれば対象とする温度場の低い融点成分の吸熱ピークのは、約775℃となる。例えば焼却炉内の燃焼から、低い融点物質としても最低融点の目標値T0を800℃に設定している場合には、第1設定値T2nは、目標値T0に比べて低いことから、このような場合には、薬剤が所定量投入される。図6(b)に示すように、薬剤を下水汚泥に所定量投入すると、第1設定値T2nは、約800℃に変化する。したがって、吸熱ピークの降下開始温度が上昇する。なお、薬剤の投入により下水汚泥に含まれるリンやリンの化合物の成分の含有率を低くすることで、吸熱ピークの降下開始温度が上昇するものと考えられる。
したがって、示差熱分析の結果を用いて求められる吸熱ピークの降下開始温度に基づき灰中の低融点物質の固相から液相への相変化を捉えることができ、下水汚泥を焼却する際に用いる薬剤の添加量の調整や、薬剤の供給の開始又は停止を行うことができるので、集積される焼却灰に含まれる化合物や色の調査を行わなくとも、焼却後の排ガスの流路内に付着堆積や、流動砂の性能劣化を推測でき、また、その推測結果に基づいて薬剤の添加の開始や停止、また添加する薬剤の添加量の調整を実施することができる。したがって、下水汚泥を焼却したときに発生する焼却灰が煙道や流動砂に付着、堆積することに起因した煙道の閉塞や流動砂の性能劣化を確実に防止することが可能となる。
第1実施形態においては、第4演算処理として、比較値が閾値L0未満であるか否かの判定と、比較値Tが閾値H0以上となるか否かの判定とを1つの演算処理としているが、これら判定処理を個別に行うことも可能である。
第1実施形態では、示差熱分析の結果に基づいて、下水汚泥に薬剤を添加するか否かの判断や、添加する添加量の調整の有無の判断を行っているが、これに限定する必要はなく、流動焼却炉37の内部温度を調整することも可能である。以下、示差熱分析の結果に基づいて、流動焼却炉37の内部温度を調整する場合について、第2実施形態と称して説明する。
<第2実施形態>
第2実施形態における水浄化システムは、第1実施形態における水浄化システムと同一の構成が用いられる。したがって、以下の説明においては、水浄化システムの各構成については、説明を省略し、また、第1実施形態と同一の構成に関しては、同一の符号を付して説明する。
以下、示差熱分析の結果に基づいて、流動焼却炉37の内部温度の調整を論理制御にて行う場合の処理の流れについて、図7のフローチャートに基づいて説明する。なお、制御方法は、一例として示す論理制御によってもよいし、例えば、PID制御やFUZZY推論などの、例えば閾値Pthより大きな吸熱ピークの熱流値差であるピーク差を有する場合の降下開始温度などに基づく線形制御(例えばフィードバック制御)によってもよい。また複数の制御方法を組み合わせて用いることもできる。
なお、図7においては、算出される温度調整量に対しては、記号V1~V4や記号U1からU6を用いている。
ステップS201は、示差熱分析を行う処理である。なお、ステップS201の処理は、ステップS101と同一の処理である。
ステップS202は、降下開始温度Tを算出する処理である。なお、ステップS202の処理は、ステップS102と同一の処理である。
ステップS203は、比較値Tmが算出されたか否かを判定する処理である。ステップS202において比較値Tが算出されている場合には、制御装置43は、ステップS203の判定結果をYesとする。この場合、ステップS204以降の処理が実行される。一方、比較値Tmが算出されていない場合には、制御装置43は、ステップS103の判定結果をNoとする。この場合、図5に示すフローチャートの処理が終了する。なお、ステップS103の判定処理の結果がNoとなる場合には、薬液の添加量の変更や、薬液の投入開始や投入停止などの処理は実行されない。
ステップS203の処理でYesと判定された場合には、制御装置43は、以下に示す複数の処理を同時に実行する。以下、ステップS204からステップS206の処理を第1演算処理、ステップS207からステップS209の処理を第2演算処理、ステップS210からステップS214までの処理を第3演算処理、ステップS215からステップS218の処理を第4演算処理と称する。また、制御装置43は、上述した第1~第4演算処理の他に、ステップS221及びステップS222に示す第5演算処理を実行する。
<第1演算処理>
ステップS204は、今回算出した比較値Tmが目標値T0を超過するか否かを判定する処理である。今回算出した比較値Tmが目標値T0を超過する場合には、制御装置43は、ステップS204の判定結果をYesとする。この場合、ステップS204に進む。一方、今回算出した比較値Tmが目標値T0以下となる場合には、制御装置43は、ステップS204の判定結果をNoとする。
ステップS205は、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以上で、且つ前回の温度調整量をプラスの値にしたか否かを判定する処理である。制御装置43は、前回算出した比較値Tm-1及び前回の温度調整量を、記憶装置から読み出す。今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以上で、且つ前回の温度調整量をプラスの値としていれば、制御装置43は、ステップS205の判定結果をYesとする。この場合、ステップS206に進む。一方、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以上で、且つ前回の温度調整量をプラスの値としていない場合には、制御装置43は、ステップS205の判定結果をNoとする。
ステップS206は、今回の温度調整量を決定する処理である。制御装置43は、ステップS205で読み出した前回の温度調整量や、算出される比較値Tmや目標値T0の他、薬剤を投入することで変化する流動焼却炉37の内部温度の変化量などに基づいて、今回の温度調整量を決定する。例えば、前回の温度調整量+V1とした後の示差熱分析の結果から、今回算出した比較値Tmが目標値T0を超過し、且つ今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以上となる場合には、流動焼却炉37の内部温度が高いと判断できるので、このような場合には、温度調整量は例えば-U1となる。
つまり、第1演算処理は、比較値Tmが目標値T0を超過し、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以上で、且つ前回の温度調整量をプラスとした場合に、流動焼却炉37の内部温度を下げるように温度調整量を決定し、比較値Tmを目標値T0に収束させる。
<第2演算処理>
ステップS207は、今回算出した比較値Tmが目標値T0未満であるか否かを判定する処理である。今回算出した比較値Tmが目標値T0未満である場合には、制御装置43は、ステップS207の判定結果をYesとする。この場合、ステップS208に進む。一方、今回算出した比較値Tmが目標値T0以上となる場合には、制御装置43は、ステップS207の判定結果をNoとする。
ステップS208は、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以下で、且つ前回の温度調整量をマイナスの値としたか否かを判定する処理である。制御装置43は、前回算出した比較値Tm-1及び前回の温度調整量を、記憶装置から読み出す。今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以下で、且つ前回の温度調整量をマイナスの値としていれば、制御装置43は、ステップS208の判定結果をYesとする。この場合、ステップS209に進む。一方、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1未満で、且つ前回の温度調整量をマイナスの値としていない場合には、制御装置43は、ステップS208の判定結果をNoとする。
ステップS209は、今回の温度調整量を決定する処理である。制御装置43は、ステップS208で読み出した前回の温度調整量や、算出される比較値Tmや目標値T0の他、薬剤を投入することで変化する流動焼却炉37の内部温度の変化量などに基づいて、今回の温度調整量を決定する。例えば、前回の添加調整量+V2とした後の示差熱分析の結果に基づいた比較値Tmが目標値T0未満となり、且つ今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以下となる場合には、流動焼却炉37の内部温度が低いと判断できるので、このような場合には、温度調整量は例えば+U2となる。
つまり、第2演算処理では、比較値Tmが目標値T0未満、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1以下で且つ前回の温度調整量をマイナスとした場合には、流動焼却炉37の内部温度を上昇させるように温度調整量を決定し、比較値Tmを目標値T0に収束させる。
<第3演算処理>
ステップS210は、今回算出した比較値Tmが目標値T0と同一であるか否かを判定する処理である。今回算出した比較値Tmが目標値T0と同一である場合には、制御装置43は、ステップS210の判定結果をYesとする。この場合、ステップS211に進む。一方、今回算出した比較値Tmが目標値T0と同一でない場合には、制御装置43は、ステップS210の判定結果をNoとする。
ステップS211は、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1を超過し、且つ前回の温度調整量をプラスの値としたか否かを判定する処理である。制御装置43は、前回算出した比較値Tm-1及び前回の温度調整量を、記憶装置から読み出す。今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1を超過し、且つ前回の温度調整量をプラスの値としている場合、制御装置43は、ステップS211の判定結果をYesとする。この場合、ステップS212に進む。一方、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1未満で、且つ前回の温度調整量をプラスの値としていない場合には、制御装置43は、ステップS211の判定結果をNoとする。この場合、ステップS213に進む。
ステップS212は、今回の温度調整量を決定する処理である。制御装置43は、ステップS211で読み出した前回の温度調整量や、算出される比較値Tmや目標値T0の他、薬剤を投入することで変化する流動焼却炉37の内部温度の変化量などに基づいて、今回の温度調整量を決定する。例えば、前回の温度調整量+V3とした後の示差熱分析に基づいて算出した比較値Tmが目標値T0と同一となり、且つ今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1を超過する場合には、流動焼却炉37の内部温度が高いと判断できるので、このような場合には、温度調整量は例えば-U3となる。
ステップS213は、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1未満で、且つ前回の温度調整量をマイナスの値としたか否かを判定する処理である。制御装置43は、前回算出した比較値Tm-1及び前回の温度調整量を、記憶装置から読み出す。今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1未満で、且つ前回の温度調整量をマイナスの値としていれば、制御装置43は、ステップS213の判定結果をYesとする。この場合、ステップS214に進む。一方、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1と同一となる場合で、且つ前回の温度調整量をマイナスの値としていない場合には、制御装置43は、ステップS213の判定結果をNoとする。
ステップS214は、今回の温度調整量を決定する処理である。制御装置43は、ステップS213で読み出した前回の温度調整量や、算出される比較値Tmや目標値T0の他、薬剤を投入することで変化する流動焼却炉37の内部温度の変化量などに基づいて、今回の温度調整量を決定する。例えば、前回の温度調整量-V4とした後の示差熱分析に基づいて算出した比較値Tmが目標値T0と同一となり、且つ今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1未満となる場合には、流動焼却炉37の内部温度が低いと判断できるので、このような場合には、温度調整量は例えば+U4となる。
つまり、第3演算処理では、比較値Tmが目標値T0と同一、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1を超過、且つ前回の温度調整量がプラスとなる場合に、流動焼却炉37の内部温度を下げるように温度調整量を決定し、比較値Tmを目標値T0に収束させる。また、比較値Tmが目標値T0と同一、今回算出した比較値Tmが前回算出した比較値Tm-1未満、且つ前回の温度調整量がマイナスとなる場合に、流動焼却炉37の内部温度が上昇するように温度調整量を決定し、比較値Tmを目標値T0に収束させる。
<第4演算処理>
ステップS215は、今回算出した比較値Tmが閾値L0未満であるか否かを判定する処理である。ここで、閾値L0は、目標値T0に対して設定される下限側の閾値である。今回算出した比較値Tmが閾値L0未満であるとき、制御装置43は、ステップS215の判定結果をYesとする。この場合、ステップS216に進む。一方、今回算出した比較値Tmが閾値L0未満でないとき、制御装置43は、ステップS214の判定結果をNoとする。この場合、ステップS217に進む。
ステップS216は、今回の添加調整量を決定する処理である。制御装置43は、算出される比較値Tmや目標値T0の他、薬剤を投入することで変化する流動焼却炉37の内部温度の変化量などに基づいて、今回の温度調整量を決定する。例えば、今回算出した比較値Tmが閾値L0未満であるとき、温度調整量は例えば+U5となる。
ステップS217は、今回算出した比較値Tmが閾値H0以上であるか否かを判定する処理である。ここで、閾値H0は、目標値T0に対して設定される上限側の閾値である。今回算出した比較値Tmが閾値H0以上となる場合には、制御装置43は、ステップS217の判定結果をYesとする。この場合、ステップS218に進む。一方、今回算出した比較値Tmが閾値H0未満となる場合には、制御装置43は、ステップS217の判定結果をNoとする。
ステップS218は、今回の添加調整量を決定する処理である。制御装置43は、算出される比較値Tmや目標値T0の他、薬剤を投入することで変化する流動焼却炉37の内部温度の変化量などに基づいて、今回の温度調整量を決定する。例えば、今回算出した比較値Tmが閾値H0未満であるとき、温度調整量は例えば-U6となる。
つまり、第4演算処理では、比較値Tmが閾値L0未満となる場合、流動焼却炉37の内部温度を上昇させるように温度調整量を決定し、比較値Tmを目標値T0に収束させる。また、比較値Tmが閾値H0以上となる場合、流動焼却炉37の内部温度を下げるように温度調整量を決定し、比較値Tmを目標値T0に収束させる。
<第5演算処理>
ステップS221は、今回算出した比較値Tmが閾値L1(L0>L1)未満となるか否かを判定する処理である。制御装置43は、記憶装置から閾値L1を読み出す。今回算出した比較値Tmが閾値L1未満となる場合には、制御装置43は、ステップS221の判定結果をYesとする。この場合、ステップS222に進む。一方、今回算出した比較値Tmが閾値L1以上となる場合には、制御装置43は、ステップS221の判定結果をNoとする。なお、ステップS221の処理は、図7に示すフローチャートが実施されるたびに実行される。
ステップS222は、警告を行う処理である。一例として、制御装置43は、汚泥焼却設備13に設けられたスピーカによる警告音の発生を指示したり、汚泥焼却設備13に設置される表示装置や制御装置による警告表示を指示する。
つまり、第5演算処理では、薬剤の添加の有無に関係なく、算出した比較値Tmが閾値L1未満となるか否かを判定している。
上述した第1演算処理から第4演算処理の各処理を同時に実行した後、制御装置43は、以下の処理を実行する。例えば、第1演算処理のステップS204、第2演算処理のステップS207、第3演算処理のステップS210又はステップS213、第4演算処理のステップS215又はステップS217の各処理でNoと判定された場合には、制御装置43は、ステップS219の処理を行う。このステップS219の処理を実行することで、制御装置43は、今回の温度調整量を±0とする。一方、第1演算処理、第2演算処理、第3演算処理又は第4演算処理の何れかの演算処理で温度調整量が決定される場合には、制御装置43は、決定された温度調整量を今回の温度調整量とする。そして、制御装置43は、決定された温度調整量に基づいて流動焼却炉37の内部温度を制御する。
このように、制御装置43は、示差熱分析の結果を用いて、流動焼却炉37の内部温度を調整する。したがって、制御装置43による流動焼却炉内部の温度調整を行うことで、下水汚泥の焼却状態を制御する。その結果、下水汚泥を焼却した際に発生する焼却灰を、焼却排ガスの流路内に付着堆積する事象や、流動砂の性能が劣化する事象の発生を防止することが可能となる。
第1実施形態では、示差熱分析の結果を用いて求められる吸熱ピークの降下開始温度に基づき、薬剤の添加の開始又は停止、及び添加する薬剤の添加量の調整を行う場合について開示し、第2実施形態では、示差熱分析の結果を用いて求められる吸熱ピークの降下開始温度に基づき、流動焼却炉の内部温度の調整を行う場合について開示している。しかしながら、示差熱分析の結果を用いて求められる吸熱ピークの降下開始温度に基づいて、薬剤の添加及び添加する薬剤の添加量の調整や、流動焼却炉の内部温度の調整の双方を同時に実行することで、煙道の閉塞や流動砂の性能劣化を確実に防止することも可能となる。また、この他に、薬剤の添加の開始又は停止、及び添加する薬剤の添加量の調整と、流動焼却炉の内部温度の調整との一方の調整を選択的に実行できるようにしてもよい。
このように、本実施形態では、示差熱分析の結果を用いて求められる吸熱ピークの降下開始温度に基づき、薬剤の投入開始や停止、又は投入される薬剤の供給量の調整を行っているので、煙道の圧力損失が上昇する事象が出始める前に、煙道の閉塞や流動不良の原因となる灰の付着を予見できる。また、同時に、関係ない吸熱ピークの降下開始温度となる付着に関係ない相変化する物質を除外するので、流動砂に灰の成分が付着している想定として正確に事象を捉えることが可能となる。
本実施形態では、供給装置は、薬剤の添加を自動的に開始したり、添加する薬剤の添加量を自動的に調整している。しかしながら、示差熱分析の結果を用いて求められる吸熱ピークの降下開始温度や、その変化に基づいて供給装置による薬剤の添加や、添加する薬剤の添加量の調整を手動で行うことも可能である。
本実施形態では、煙道が閉塞に至っていない場合を想定し、示差熱分析の結果を用いて求められる吸熱ピークの降下開始温度に基づき、薬剤の添加の開始や停止、及び添加している薬剤の添加量の調整を行うことで、焼却灰が煙道に付着、堆積することに起因した煙道の閉塞、および焼却灰が流動砂表面に付着し、流動砂粒子同士が結合、造粒することに起因する流動不良を防止している。しかしながら、示差熱分析の結果を用いて求められた吸熱ピークの降下開始温度に基づく吸熱度合いが著しく高い値となる場合は、この防止効果の発現が遅れ、煙道閉塞や流動不良のリスクが高いことを示している。したがって、算出される示差熱分析の結果を用いて求められた吸熱ピークの降下開始温度に基づく吸熱度合いが著しく高くなる場合には、制御装置43は、汚泥焼却設備13を一旦停止するように制御することも可能である。なお、上述した各所定値は、過去の経験則などから求められる値であり、その値は、著しく高い所定値は前記それぞれの上限値より高く、著しく低い所定値は前記それぞれの下限値未満であるのが好ましい。
この場合、汚泥焼却設備に設けられたスピーカによる警告音の発生や、汚泥焼却設備13に設置される表示装置や制御装置に接続される表示装置による警告表示によって注意喚起を行ってもよい。
また、流動焼却炉37における下水汚泥の焼却において、流動焼却炉37から集塵装置39までの煙道における示差熱分析箇所を数箇所設置し通常灰が付着しない箇所での吸熱ピークの検知により、該煙道内に焼却灰が付着、堆積されていると推測でき、さらに、煙道が閉塞されるほど焼却灰が煙道内面に付着、堆積することが発生しているならば、流動床を形成する流動砂表面に焼却灰が付着して流動不良が発生しかかっていると推測でき、また、その推測結果に基づいて薬剤の添加の開始や停止、およびその添加量を判定することができる。その結果、流動砂粒子の表面に焼却灰や焼却灰の成分が付着、積層することを防止することが可能となる。また、薬剤を添加している場合であっても、焼却排ガス煙道の圧力損失によって焼却後の排ガスの流路内に付着堆積しているか否かの判定を行い、同時に、添加される薬剤の添加量を調整できるので、下水汚泥25の焼却時の薬剤の使用量を抑制でき、薬剤に係るコストを抑制することが可能となる。
また、前記焼却設備13を一旦停止する制御は、自動停止でなくてもよく、汚泥焼却設備に設けられたスピーカによる警告音の発生や、汚泥焼却設備13に設置される表示装置や制御装置に接続される表示装置による警告表示によって焼却設備オペレーターに状況判断を促し、焼却設備オペレーターが焼却設備13を一旦停止して煙道清掃を行ったり、流動砂の交換を行うなどの処置が必要と判断した場合に、焼却設備オペレーターの手動操作によって焼却設備を停止するようにしてもよい。
本実施形態では、汚泥焼却設備を構成する機器や要素に付着、堆積する、汚泥由来の焼却排ガスに含有される化合物を有害化合物とみなし、その有害化合物が汚泥焼却設備の機器や要素に付着、堆積することに起因した排ガス流路の閉塞や流動不良を防止する薬剤を適切な量供給可能とする汚泥焼却設備および汚泥焼却方法を提供することを目的とすることから流動焼却炉を対象としているが、下水汚泥を焼却したときに発生する焼却灰が煙道に付着、堆積することに起因した煙道の閉塞を防止するという目的に限定して、流動焼却炉以外の焼却炉(例えばストーカー式)への適用を否定するものではない。