JP6973253B2 - 化学蓄熱反応器 - Google Patents

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Description

本発明は、化学反応によって発熱する化学蓄熱反応器に関する。
特許文献1に記載の化学蓄熱反応器では、枠部の内部に蓄熱材を収容した蓄熱材層、フィルター、反応媒体拡散層、熱交換部等が積層されることで化学蓄熱反応器の積層体が形成されており、その積層体が複数個積層されて一体化された積層ユニットが容器内に収容されている。
特開2014−126293号公報
しかしながら、特許文献1に記載の化学蓄熱反応器は、蓄熱材層、フィルター、反応媒体拡散層、熱交換部等が積層されているため、熱交換効率を高めることはできるが、熱源として運搬して利用するには、熱交換部の熱媒配管を取り外す等の作業が必要となり、その際に熱媒が漏れる懸念がある。
また、特許文献1に記載の化学蓄熱反応器は、蓄熱材層、フィルター、反応媒体拡散層、熱交換部等を積層した積層体が複数個積層された積層ユニットが容器内に収容されているため、軽量化が容易ではなく、運搬するには難がある。
また、蓄熱材層の他に、フィルター、反応媒体拡散層、熱交換部等の複数の構成部材が容器内に収容されているため、顕熱分が多くなり、昇温に時間を要し、熱源として利用する場合の熱効率の点で改善の余地がある。
化学蓄熱反応器には、発熱に必要な蒸気を生成するための蒸発器が接続されており、この点でも軽量化が容易でなく、運搬にも難がある。蒸発器では、蒸気を生成する外部熱源が必要であり、また、生成した蒸気が配管を通じて化学蓄熱反応器の内部に流入するので、蒸気の生成から蓄熱材が発熱するまでに時間を要する。
このように、特許文献1に記載の化学蓄熱反応器は、定置用途では問題ないが、例えば、オフサイト用の熱源として運搬して使用する場合においては、種々の問題があり、オフサイト用に好適な簡単な構成で、急速な昇温を可能とした化学蓄熱反応器が望まれていた。
本願発明の課題は、外部熱源のない条件下で、軽量で、急速な昇温を可能とした化学蓄熱反応器を得ることにある。
請求項1に記載の化学蓄熱反応器は、内部が密閉された容器と、上下方向に延びる筒部材と、前記筒部材の下端部及び上端部を閉塞する閉塞部材と、を備えた拘束カバーと、前記拘束カバーの内部空間を上下2つの空間に区画する隔壁部材と、前記拘束カバーの前記隔壁部材の下側に設けられた下側空間に配置され、反応媒体と結合することで発熱する第1蓄熱材と、前記拘束カバーの前記隔壁部材の上側に設けられた上側空間に配置され、反応媒体と結合することで発熱する第2蓄熱材と、を備え、複数の前記拘束カバーが水平方向に接合されることで、互いに隣接する3以上の前記拘束カバーの間に前記反応媒体が通過する流路が複数設けられた集合体が形成され、前記容器の内部には、前記集合体の下部と前記容器の底部との間に、前記流路と連通する底部空間が設けられると共に、前記集合体の側部と前記容器の内面との間に、前記底部空間と連通する外側部空間が設けられ、前記隔壁部材よりも下側に位置する前記拘束カバーの前記外側部空間に面する部分には、前記第1蓄熱材の通過は制限し前記反応媒体の通過を許容する微小孔を有した第1フィルター部が形成され、前記隔壁部材よりも上側に位置する前記拘束カバーの前記流路に面する部分には、前記第2蓄熱材の通過は制限し前記反応媒体の通過を許容する微小孔を有した第2フィルター部が形成され、前記容器には、前記底部空間に液体状の前記反応媒体を外部より供給可能な反応媒体供給部が設けられている。
請求項1に記載の化学蓄熱反応器では、反応媒体供給部から液体状の反応媒体を流入させることで、液体状の反応媒体を底部空間に溜めつつ、底部空間を介して集合体の流路、及び集合体と容器との間の外側部空間に流入させることが出来る。
流路に流入した液体状の反応媒体は、第1フィルター部を介して拘束カバーの下側空間に流入し、下側空間に配置された第1蓄熱材と結合して、該第1蓄熱材が発熱する。
そして、第1蓄熱材によって拘束カバーの周囲の液体状の反応媒体が加熱されることで、蒸気状の反応媒体が生成される。
蒸気状の反応媒体は、流路の内部を上昇し、拘束カバーの第2フィルター部を介して拘束カバーの上側空間に流入し、上側空間に配置された第2蓄熱体と結合して該第2蓄熱材が放熱する。複数の拘束カバーを接合した集合体は、容器を加熱し、容器の温度を上昇させることができ、容器を熱源として利用することが出来る。
第1蓄熱材、及び第2蓄熱材が反応媒体と結合すると、発熱すると共に膨張しようとする。しかしながら、第1蓄熱材、及び第2蓄熱材は、外面が拘束カバーで覆われて拘束されているので、膨張が抑えられる。即ち、容器は、第1蓄熱材、及び第2蓄熱材の膨張力を受け無くなるため、容器を構成する部材の厚さを薄くすることができる。
請求項1に記載の化学蓄熱反応器では、従来の化学蓄熱反応器に必要とされていた反応媒体拡散層、熱交換部、及びエンドプレート等の部材が無く、熱源として必要な最小限の部材で構成することができ、かつ、容器の構成する部材の厚さを薄くできるので、高蓄熱密度で、かつ軽量な化学蓄熱反応器が得られる。なお、蓄熱密度とは、化学蓄熱反応器の内容積に占める蓄熱材の蓄熱量である。
請求項1に記載の化学蓄熱反応器では、容器の内部に液体状の反応媒体を流入することで、容器の内部で蒸気状の反応媒体を生成することができるので、蒸気状の反応媒体を生成する外部熱源を必要とせず、また、容器内の第1蓄熱材、及び第2蓄熱材を迅速に昇温させることができる。
なお、第1蓄熱材、及び第2蓄熱材に蓄熱を行う場合には、第1蓄熱材、及び第2蓄熱材を加熱して反応媒体を脱離させることで蓄熱を行うことができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の化学蓄熱反応器において、前記筒部材は、前記第1蓄熱材を収容する第1パイプと、前記第2蓄熱材を収容する第2パイプとを含んで構成されている。
拘束カバーは、第1蓄熱材を収容する第1パイプと、第2蓄熱材を収容する第2パイプとを用いて構成することが出来る。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の化学蓄熱反応器において、前記筒部材は、1本のパイプである。
筒部材は、1本のパイプを用いて構成することができる。なお、ここでいう1本のパイプとは、押出し、または引き抜きによって連続的に成形された継ぎ目無しのパイプを意味しており、複数のパイプを溶接等で接合したものは含まれない。
化学蓄熱反応器において、前記筒部材の外周面に前記第1フィルター部、及び前記第2フィルター部が形成されていてもよい。
これにより、筒部材の外周面に形成された第1フィルター部、及び第2フィルター部を介して反応媒体を内部に流入させることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器において、前記集合体と前記容器の天井との間に、前記流路、及び前記外側部空間と連通する天井空間が設けられている。
請求項4に記載の化学蓄熱反応器では、蒸気状となった反応媒体を、流路、及び外側部空間を介して天井空間に流入させることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の化学蓄熱反応器において、下側の前記閉塞部材に前記第1フィルター部が形成され、上側の前記閉塞部材に前記第2フィルター部が形成されている。
請求項5に記載の化学蓄熱反応器では、下側の閉塞部材に形成された第1フィルター部を介して液体状の反応媒体を内部に流入させることができ、また、上側の閉塞部材に形成された第2フィルター部を介して天井空間の蒸気状の反応媒体を内部に流入させることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器において、前記反応媒体供給部には、開閉弁が接続されている。
請求項6に記載の化学蓄熱反応器では、開閉弁を開くことで、容器の内部と外部とを連通させ、外部から反応媒体を内部に流入させたり、内部の反応媒体を外部へ排出させたりすることができる。
また、不使用時には、開閉弁を閉め、内部に反応媒体が不用意に流入しないようにすることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の化学蓄熱反応器において、前記開閉弁には、液体状の前記反応媒体を貯留するタンク、または前記タンクと連結された配管が接続されている。
請求項7に記載の化学蓄熱反応器では、開閉弁に、液体状の反応媒体を貯留するタンク、またはタンクと連結された配管が接続されているため、開閉弁を開けるだけで、タンクに貯留された液体状の反応媒体を容器の内部に流入させることが出来る。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器において、前記第1蓄熱材は、前記第2蓄熱材よりも少量である。
化学蓄熱反応器において、第1蓄熱材は、第2蓄熱材を発熱させるために必要な蒸気状の反応媒体を生成させるに必要な熱量だけ発生すればよいので、第1蓄熱材は第2蓄熱材より少量で済む。これにより、効率的に熱を発生できる化学蓄熱反応器とすることができる。
本発明によれば、軽量で、急速な昇温を可能とした化学蓄熱反応器が得られる、という優れた効果を有する。
本発明の第1の実施形態に係る化学蓄熱反応器を示す斜視図である。 図1に示す化学蓄熱反応器の内部を示す幅方向に切断した断面図(図1の2−2線断面図)である。 蓄熱積層体を示す斜視図である。 蓄熱積層体を示す分解斜視図である。 (A)は化学蓄熱反応器の下側の内部を水平方向に切断した断面図(図1の5−5線断面図)であり、(B)は水が流入した化学蓄熱反応器の下側の内部を水平方向に切断した断面図(図1の5−5線断面図)である。 (A)は化学蓄熱反応器の上側の内部を水平方向に切断した断面図(図1の6−6線断面図)であり、(B)は水蒸気が流入した化学蓄熱反応器の上側の内部を水平方向に切断した断面図(図1の6−6線断面図)である。 蓄熱材の再生を行う際の構成を示した図である。 第2の実施形態に係る化学蓄熱反応器の筒部材を示す斜視図である。 (A)は第3の実施形態に係る化学蓄熱反応器の筒部材を示す斜視図であり、(B)は第3の実施形態に係る化学蓄熱反応器の蓄熱積層体を示す斜視図である。 第3の実施形態に係る化学蓄熱反応器の内部を示す幅方向に切断した断面図である。 (A)は第4の実施形態に係る化学蓄熱反応器の下側の内部を水平方向に切断した断面図であり、(B)は第4の実施形態に係る化学蓄熱反応器の上側の内部を水平方向に切断した断面図である。 化学蓄熱反応器の使用例の一例を示すボイラーの断面図である。
図1乃至図7にしたがって、本発明の一実施形態に係る化学蓄熱反応器10を説明する。なお、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行方向(水平方向)を示す。
(化学蓄熱反応器)
図1、及び図2に示すように、化学蓄熱反応器10は、箱状の反応容器12を備えている。反応容器12は、ステンレススチール等の金属板で箱状に形成されており、矩形の底板14、底板14の各辺から立ち上がる矩形の側壁16、18、20、22、及び矩形の天板24を備えている。
図2、及び図3に示すように、反応容器12の内部には、下側に配置される蒸気発生用の下側蓄熱体26と、下側蓄熱体26の上側に配置される高熱発生用の上側蓄熱体28とが軸方向を装置上下方向として収容されている。
(蓄熱体)
図3、及び図4に示すように、下側の下側蓄熱体26は、金属からなる円筒状の第1筒部材26Aと、金属の円板から形成され第1筒部材26Aの下端側の開口を塞ぐ底板としての第1閉塞部材30と、第1筒部材26Aの上端側の開口を塞ぐと共に、後述する上側蓄熱体28の第2筒部材28Aの下端側の開口を塞ぐ隔壁部材としての第2閉塞部材32と、第1筒部材26Aに挿入される円柱状に形成された第1蓄熱成形体34とを含んで構成されている。
一方、上側蓄熱体28は、金属からなる円筒状の第2筒部材28Aと、第2筒部材28Aの上端側の開口を塞ぐ天板としての第3閉塞部材36と、第2筒部材28Aの下端側の開口を塞ぐ第2閉塞部材32と、第2筒部材28Aに挿入される円柱状に形成された第2蓄熱成形体38とを含んで構成されている。なお、第2閉塞部材32は、複数の第2筒部材28Aの上端側の開口を塞ぐと共に、後述する複数の内部流路48の上端側の開口も塞ぐように形成されている。
本実施形態では、第2閉塞部材32が、第1筒部材26Aの上端側の開口を塞ぐ閉塞部材であると共に、第2筒部材28Aの下端側の開口を塞ぐ閉塞部材でもあり、下側蓄熱体26と上側蓄熱体28とで第2閉塞部材32を共用している。
なお、第1筒部材26A、第1閉塞部材30、第2筒部材28A、及び第3閉塞部材36とで、本発明の拘束カバーが構成されており、該拘束カバーが複数接合されたものが本発明の集合体となる。
本実施形態では、第1筒部材26A、及び第1蓄熱成形体34が、第2筒部材28A、及び第2蓄熱成形体38よりも短く形成されており、第1蓄熱成形体34の体積は、第2蓄熱成形体38の体積よりも小さくなっている。
第1蓄熱成形体34には、一例として、アルカリ土類金属の酸化物の1つである酸化カルシウム(CaO:蓄熱材の一例)の成形体が用いられている。この成形体は、例えば、酸化カルシウム粉体をバインダ(例えば粘土鉱物等)と混練し、焼成することで、略矩形ブロック状に形成されている。
ここで、第1蓄熱成形体34は、水和に伴って膨張して放熱(発熱)し、脱水に伴って蓄熱(吸熱)するものであり、以下に示す反応で放熱、蓄熱を可逆的に繰り返し得る構成とされている。
CaO + HO ⇔ Ca(OH)
この式に蓄熱量、発熱量Qを併せて示すと、
CaO + H2O → Ca(OH) + Q
Ca(OH)2 + Q → CaO + H
となる。
なお、一例として、第1蓄熱成形体34の1kg当たりの蓄熱容量は、1.86[MJ/kg]とされている。
また、本実施形態において、第1蓄熱成形体34を構成する蓄熱材の粒径とは、蓄熱材が粉体の場合はその平均粒径、粒状の場合は造粒前の粉体の平均粒径とする。これは、粒が崩壊する場合、前工程の状態に戻ると推定されるためである。
なお、第2蓄熱成形体38は、第1蓄熱成形体34と長さが異なるだけであり、同様の蓄熱材で形成されている。
図5、及び図6に示すように、下側蓄熱体26同士、及び上側蓄熱体28同士は、互いに隣接する蓄熱体との接触部分でロウ付け(または溶接等)40によって接合されて一体化されている。
以後、本明細書において、複数の下側蓄熱体26、及び複数の上側蓄熱体28が1本の棒状に一体化したものを蓄熱積層体42と呼ぶ。
図1、及び図2に示すように、反応容器12の内部には、反応容器12の底板14から蓄熱積層体42を離間させて支持するための一対の支持部材44が側壁18と側壁22とに掛け渡されている。これにより、反応容器12の内部には、底板14と蓄熱積層体42との間に底部空間46が設けられている。
図5、及び図6に示すように、蓄熱積層体42の外周面の水平方向に向けて凸となっている凸部分(第1筒部材26A、第2筒部材28Aの凸部分)は、反応容器12の側壁16、18、20、22に接触している。また、蓄熱積層体42の上部の第3閉塞部材36は、反応容器12の天板24に接触しており、蓄熱積層体42の下部の第1閉塞部材30は支持部材44に接触している。これにより、蓄熱積層体42は、反応容器12の内部で動かないように、上下方向、及び水平方向の移動が拘束されている。なお、蓄熱積層体42は、反応容器12の内側面にロー付け、溶接等で接合されていてもよい。
図5、及び図6に示すように、蓄熱積層体42において、3本の下側蓄熱体26で囲まれた断面略三角形状の隙間部分と、3本の第2蓄熱体で囲まれた断面略三角形状の隙間部分が内部流路48とされている。また、反応容器12の内部において、蓄熱積層体42の外周面の凹部分と反応容器12の側壁16、18、20、22との間の隙間部分が外側部空間50とされている。
この内部流路48と外側部空間50とは、蓄熱積層体42と反応容器12の底板14との間の底部空間46を介して互いに連通している。
図1、及び図2に示すように、反応容器12の側壁18には、上端側に孔51が形成されており、この孔51に挿入されて固着された配管52を介して開閉弁54が取り付けられている。なお、開閉弁54には、他の配管60の継手62(詳しくは後述する)等が着脱自在に接続可能となっている。
(筒部材)
次に、図3〜図6に基づいて下側蓄熱体26の第1筒部材26A、及び上側蓄熱体28の第2筒部材28Aの構成を説明する。
図4、及び図5に示すように、下側蓄熱体26の第1筒部材26Aの一部には、外側部空間50と対向する位置(内部流路48とは対向しない位置)に、一例としてφ200〔μm〕の微小貫通孔(図示示せず)が多数形成されたフィルター部(図4において網点で図示する部分)56Aが設けられている。
フィルター部56Aの微小貫通孔は、例えば、エッチングにより形成することができる。フィルター部56Aは、第1蓄熱成形体34を構成する蓄熱材の平均粒径より小さいろ過精度を有している。これにより、フィルター部56Aは、蓄熱材の平均粒径より小さい流路を水蒸気が通過するのを許容する一方、平均粒径よりも大きい蓄熱材の通過を制限するようになっている。
ろ過精度とは、ろ過効率が50〜98%となる粒子径のことであり、ろ過効率とは、ある粒子径の粒子に対する除去効率である。なお、フィルター部56Aは、メッシュで形成されていてもよい。
次に、図4、及び図6に示すように、上側蓄熱体28の第2筒部材28Aの一部には、内部流路48と対向する位置にフィルター部56Bが形成されている。
したがって、図5(B)に示すように、下側蓄熱体26においては、フィルター部56Aは、第1筒部材26Aの内部と外側部空間50との間で、蓄熱材の通過は制限し、水または水蒸気(実際の使用状態では、水W)の行き来は許容可能となっている。また、図6(B)に示すように、上側蓄熱体28においては、フィルター部56Bは、第2筒部材28Aの内部と内部流路48との間で、蓄熱材の通過は制限し、水または水蒸気(実際の使用状態では、水蒸気S)の行き来は許容可能となっている。
図1、及び図2に示すように、化学蓄熱反応器10の開閉弁54には、水を貯留したタンク58に接続された配管60を着脱可能に接続することが出来る。なお、配管60の端部には、開閉弁54との接続を容易にする継手62が設けられている。これにより、タンク58の水を反応容器12の内部へ流入させることが出来る。なお、開閉弁54にタンク58を直接接続してもよい。
(化学蓄熱反応器の作用、効果)
次に、化学蓄熱反応器10の使用方法について説明する。
先ず、使用前(発熱前)の化学蓄熱反応器10においては、蓄熱材を脱水状態(蓄熱された状態)としておくと共に、反応容器12の内部を真空状態としておく。
(1) 化学蓄熱反応器10を発熱(放熱)させる際には、一例として、図1に示すように、開閉弁54を開放し、タンク58の水Wを配管60、及び開閉弁54を介して反応容器12の内部に流入させる。
反応容器12の内部に水Wが流入すると、水Wは反応容器12の底に溜まって、第1筒部材26Aで囲まれる内部流路48、及び第1筒部材26Aの外側の外側部空間50に流入する。
ここで、反応容器12に流入させる水Wの量は、水面が、下側に位置する下側蓄熱体26のフィルター部56Aの上端より上で、上側に位置する上側蓄熱体28のフィルター部56Bの下端よりも上側とならないように予め決められている。このため、タンク74には、予め決められた量の水Wを入れておくことが好ましい。本実施形態では、図2に示すように、水位の上限位置Maxが、下側蓄熱体26のフィルター部56Aの上端と上側蓄熱体28のフィルター部56Bの下端との間に決められている。
(2) 第1筒部材26Aで囲まれる内部流路48に水Wが流入すると、流入した水Wが下側蓄熱体26のフィルター部56Aの微細孔を通過して内部の第1蓄熱成形体34と接触する。これにより、下側蓄熱体26の第1蓄熱成形体34が水和反応を生じつつ発熱(放熱)する。そして、下側蓄熱体26の熱で、下側蓄熱体26に接触している水Wが昇温して大量の水蒸気Sが生成される。
このようにして生成された水蒸気Sは、内部流路48を上昇し、上側の上側蓄熱体28のフィルター部56Bの微細孔を通過して内部の第2蓄熱成形体38と接触する。これにより、上側蓄熱体28の第2蓄熱成形体38が水和反応を生じつつ発熱(放熱)する。
(3) 上側蓄熱体28で生成された熱は、反応容器12の側壁16、18、20、22、及び天板24に伝達され、側壁16、18、20、22、及び天板24が加熱される。このようにして、本実施形態の化学蓄熱反応器10では、側壁16、18、20、22、及び天板24が加熱されて温度が上がり、化学蓄熱反応器10を熱源として利用することができる。なお、上側の上側蓄熱体28は、内部の蓄熱材が水蒸気Sと結合して発熱するので、水Wに漬かっている下側蓄熱体26に比較して高温になる。
従来の化学蓄熱反応器では、蓄熱材層、フィルター、反応媒体拡散層、熱交換部等を積層した積層体が複数個積層された部品点数が多くて複雑な構成の積層ユニットが容器内に収容されており、容器には、蓄熱材を発熱させるための、部品点数が多く、構成が複雑で重量のある蒸発器が接続されていたため軽量化が容易ではなく、運搬するには難があった。
一方、本実施形態の化学蓄熱反応器10は、反応容器12の内部に、蓄熱積層体42を収納するという簡単な構成であり、タンク58、及び配管52も従来の蒸発器に比較して軽量であるため従来よりも運搬が容易になる。
なお、本実施形態では、タンク58の水を供給するようにしたが、開閉弁54に水道の蛇口に繋げたホースを接続して水を供給してもよく、漏斗を用いて水を供給することも可能であり、水の供給方法は本実施例のものに限らない。
本実施形態の化学蓄熱反応器10では、反応容器12の内部に水Wを供給するだけで反応容器12の内部で水蒸気Sを生成することができるので、容器内の蓄熱材を迅速に昇温させ反応容器12を迅速に加熱することができる。
本実施形態の化学蓄熱反応器10は、反応容器12が従来の化学蓄熱反応器の反応容器と同じサイズ(容積)であれば、蓄熱材の容量を増やすことができ(言い換えれば、高蓄熱密度となる)、大量の熱を発生させることができる。
さらに、反応容器12の内部には、蓄熱積層体42しか収納されておらず、従来の化学蓄熱反応器のように数多く構成部材が収容されていないので、顕熱分が少なく、迅速に側壁16、18、20、22、及び天板24を加熱することができ、熱交換効率に優れた構成となっている。
ところで、蓄熱材が反応媒体と結合すると、発熱すると共に膨張しようとする。しかしながら、蓄熱材からなる第1蓄熱成形体34、及び第2蓄熱成形体38は、外面全体が筒部材で覆われているので、第1蓄熱成形体34、及び第2蓄熱成形体38の径方向の膨張は、部材の金属板の張力負担により抑制される。これにより、反応容器12の側壁16、18、20、及び22は、蓄熱材の膨張力を受け難くなり、金属板を薄くすることができる。
このように、本実施形態の化学蓄熱反応器10は、蓄熱材の膨張力を受け止めて構成部材の変形を抑制するための厚肉の部材であるエンドプレートが必要無く、軽量化を図ることが出来る。
(蓄熱)
次に、使用後の第1蓄熱成形体34、及び第2蓄熱成形体38に熱を蓄熱させる方法(再生方法)を説明する。
第1蓄熱成形体34、及び第2蓄熱成形体38に熱を蓄熱するには、例えば、図7に示すように、開閉弁54に配管63介して凝縮器66を接続する。
凝縮器66は、化学蓄熱反応器10から受け取った水蒸気Sを凝縮する凝縮部、及び水蒸気Sが凝縮された水を貯留する貯留部、としての各機能を備えている。
凝縮器66は、内部に水が貯留される容器68を備えており、この容器68内には、水蒸気Sを凝縮するのに用いる熱媒流路70の一部が配置されている。さらに、熱媒流路70は、容器68内における少なくとも気相部68Aを含む部分で熱交換を行うように配置されている。そして、凝縮時には低温媒体が、熱媒流路70を流れるようになっている。
なお、凝縮器66と化学蓄熱反応器10とを連通させるための配管63は、凝縮器66と化学蓄熱反応器10との連通、非連通を切り替えるための開閉弁72を備えている。
第1蓄熱成形体34、及び第2蓄熱成形体38に熱を蓄熱させる手順としては、凝縮器66と接続した化学蓄熱反応器10を、炉75の熱(高温の廃熱等)、またはヒーター等の熱源を用いて加熱する。これにより、第1蓄熱成形体34、及び第2蓄熱成形体38が脱水反応を生じ、この熱が第1蓄熱成形体34、及び第2蓄熱成形体38に蓄熱される。
第1蓄熱成形体34、及び第2蓄熱成形体38から離脱された水蒸気Sは、反応容器12の外部へ排出され、配管63を介して凝縮器66内に流れ込み、凝縮されて水Wとなる。脱水が終了したら、開閉弁54に真空ポンプを接続して内部を真空にし、開閉弁54を閉じて反応容器12の内部を真空状態とする。これにより、化学蓄熱反応器10を熱源として再利用することができる。
[第2の実施形態]
次に、図8にしたがって、本発明の第2の実施形態に係る化学蓄熱反応器10を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図8に示すように、本実施形態の化学蓄熱反応器10では、1本の筒部材76の内部が隔壁78によって上下に2分割されており、隔壁78の下側に第1蓄熱成形体34(図8では図示せず)が挿入され、隔壁78の上側に第2蓄熱成形体38(図8では図示せず)が挿入されている構成である。なお、隔壁78の外周は、筒部材76内周面にロー付け、溶接等で接合されている。
第1の実施形態の化学蓄熱反応器10では、第1筒部材26A、及び第2筒部材28Aを用いていたが、本実施形態では、第1筒部材26A、及び第2筒部材28Aの代わりに1本の筒部材76を用いているので、第1の実施形態の化学蓄熱反応器10よりも部品点数を削減することが出来る。なお、その他の作用、効果は第1の実施形態と同様である。
[第3の実施形態]
次に、図9、及び図10にしたがって、本発明の第3の実施形態に係る化学蓄熱反応器10を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図9に示すように、本実施形態の化学蓄熱反応器10では、蓄熱積層体42を構成する第1筒部材26Aの下部の開口がフィルター部56Cの形成された第1閉塞部材30で閉塞されており、第2筒部材28Aの上部の開口がフィルター部56Dの形成された円板状の第4閉塞部材80で閉塞されている。
また、図10に示すように、本実施形態の化学蓄熱反応器10では、反応容器12の天板24と蓄熱積層体42の上部との間には、天井空間82が設けられている。天井空間82は、内部流路48、及び外側部空間50と連通している。
本実施形態の化学蓄熱反応器10では、反応容器12の内部に水Wが流入すると、水Wは、反応容器12の底に溜まって、内部流路48に面したフィルター部56Aの微細孔、及び下部の第1閉塞部材30に形成されたフィルター部56Cの微細孔を介して下側蓄熱体26の内部の第1蓄熱成形体34と接触するため、内部流路48に面したフィルター部56Aの微細孔のみが形成されている下側蓄熱体26に比較して、水Wが第1筒部材26Aの内部に流入し易くなっており、下側蓄熱体26の第1蓄熱成形体34と水Wとの水和反応をより速く行わせることが可能となる。
また、本実施形態の化学蓄熱反応器10では、反応容器12の内部で生成された水蒸気Sが第2筒部材28Aのフィルター部56Bの微細孔、及び第4閉塞部材80のフィルター部56Dの微細孔を介して上側蓄熱体28の内部の第2蓄熱成形体38と接触するため、内部流路48に面したフィルター部56Bの微細孔のみが形成されている第2筒部材28Aに比較して、水蒸気Sが第2筒部材28Aの内部に流入し易くなっており、上側蓄熱体28の第2蓄熱成形体38と水蒸気Sとの水和反応をより速く行わせることが可能となる。
[第4の実施形態]
次に、図11(A),(B)にしたがって、本発明の第4の実施形態に係る化学蓄熱反応器10を説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
第1の実施形態では、装置奥行方向の一方側に1列に並んだ下側蓄熱体26、及び上側蓄熱体28と、装置奥行方向の他方側に1列に並んだ下側蓄熱体26、及び上側蓄熱体28とを、装置幅方向にずらして蓄熱積層体42を構成したが(図5、6参照)、本実施形態の化学蓄熱反応器10の蓄熱積層体42は、図11(A),(B)に示すように下側蓄熱体26、及び上側蓄熱体28がマトリクス状に配置され、4本の下側蓄熱体26で囲まれた部分、及び4本の上側蓄熱体28で囲まれた部分が内部流路48とされている。
図1(A),(B)に示すように下側蓄熱体26、及び上側蓄熱体28を配しても、第1実施形態と同様の作用、効果を得ることが出来る。
なお、本実施形態の化学蓄熱反応器10における内部流路48は、第1の実施形態の化学蓄熱反応器10における内部流路48よりも断面積が大きくなっているため、水W、及び水蒸気Sが通過し易くなっている。
[その他の実施形態]
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。
上記実施形態の化学蓄熱反応器10は、熱源として種々の用途に用いることができ、例えば、図12に示すように、水Wを沸かして水蒸気Sを発生させるボイラー84の熱源として利用することができる。
10 化学蓄熱反応器
12 容器(反応容器)
26A 第1筒部材(拘束カバー)
30 第1閉塞部材(閉塞部材、拘束カバー)
32 第2閉塞部材(隔壁部材)
34 第1蓄熱成形体(第1蓄熱材)
36 第3閉塞部材(閉塞部材、拘束カバー)
38 第2蓄熱成形体(第2蓄熱材)
42 蓄熱積層体(集合体)
46 底部空間
48 内部流路(流路)
50 外側部空間
51 孔(反応媒体供給部)
52 配管(反応媒体供給部)
56A フィルター部(第1フィルター部)
56B フィルター部(第2フィルター部)
56C フィルター部(第3フィルター部)
56D フィルター部(第4フィルター部)
S 水蒸気(反応媒体)
W 水(反応媒体)

Claims (8)

  1. 内部が密閉された容器と、
    上下方向に延びる筒部材と、前記筒部材の下端部及び上端部を閉塞する閉塞部材と、を備えた拘束カバーと、
    前記拘束カバーの内部空間を上下2つの空間に区画する隔壁部材と、
    前記拘束カバーの前記隔壁部材の下側に設けられた下側空間に配置され、反応媒体と結合することで発熱する第1蓄熱材と、
    前記拘束カバーの前記隔壁部材の上側に設けられた上側空間に配置され、反応媒体と結合することで発熱する第2蓄熱材と、
    を備え、
    複数の前記拘束カバーが水平方向に接合されることで、互いに隣接する3以上の前記拘束カバーの間に前記反応媒体が通過する流路が複数設けられた集合体が形成され、
    前記容器の内部には、前記集合体の下部と前記容器の底部との間に、前記流路と連通する底部空間が設けられると共に、前記集合体の側部と前記容器の内面との間に、前記底部空間と連通する外側部空間が設けられ、
    前記隔壁部材よりも下側に位置する前記拘束カバーの前記外側部空間に面する部分には、前記第1蓄熱材の通過は制限し前記反応媒体の通過を許容する微小孔を有した第1フィルター部が形成され、
    前記隔壁部材よりも上側に位置する前記拘束カバーの前記流路に面する部分には、前記第2蓄熱材の通過は制限し前記反応媒体の通過を許容する微小孔を有した第2フィルター部が形成され、
    前記容器には、前記底部空間に液体状の前記反応媒体を外部より供給可能な反応媒体供給部が設けられている、化学蓄熱反応器。
  2. 前記筒部材は、前記第1蓄熱材を収容する第1パイプと、前記第2蓄熱材を収容する第2パイプとを含んで構成されている、請求項1に記載の化学蓄熱反応器。
  3. 前記筒部材は、1本のパイプである、請求項1に記載の化学蓄熱反応器。
  4. 前記集合体と前記容器の天井との間に、前記流路、及び前記外側部空間と連通する天井空間が設けられている、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器。
  5. 下側の前記閉塞部材には、前記第1蓄熱材の通過は制限し前記反応媒体の通過を許容する微小孔を有した第3フィルター部が形成され、
    上側の前記閉塞部材には、前記第2蓄熱材の通過は制限し前記反応媒体の通過を許容する微小孔を有した第4フィルター部が形成されている、請求項4に記載の化学蓄熱反応器。
  6. 前記反応媒体供給部には、開閉弁が接続されている、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器。
  7. 前記開閉弁には、液体状の前記反応媒体を貯留するタンク、または前記タンクと連結された配管が接続されている、請求項6に記載の化学蓄熱反応器。
  8. 前記第1蓄熱材は、前記第2蓄熱材よりも少量である、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器。
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