JP6972867B2 - ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、積層体の製造方法、偏光膜製造用ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法、熱可塑性フィルム付き偏光膜の製造方法、偏光膜の製造方法、及び偏光板の製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、積層体の製造方法、偏光膜製造用ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法、熱可塑性フィルム付き偏光膜の製造方法、偏光膜の製造方法、及び偏光板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光学用ポリビニルアルコール系フィルムを製造するためのポリビニルアルコール系樹脂水溶液に関する。さらに詳しくは、熱可塑性フィルムへの塗布性に優れ、超薄型の光学用ポリビニルアルコール系フィルム、及び薄型の偏光膜を製造するのに有用なポリビニルアルコール系樹脂水溶液に関する。
従来、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を水に溶解してポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調液したのち、溶液流延法(キャスト法)により製膜して、金属加熱ロールなどを用いて乾燥することにより製造される。このようにして得られるポリビニルアルコール系フィルムは、透明性や染色性に優れたフィルムとして多くの用途に利用されており、その有用な用途の一つに偏光膜があげられる。かかる偏光膜は、液晶ディスプレイの基本構成要素として用いられており、近年では、高輝度、高精細な液晶テレビへとその使用が拡大されている。
一方、一般的に、偏光膜は、原反であるポリビニルアルコール系フィルムを、水(温水を含む)で膨潤させた後、ヨウ素などの二色性染料で染色し、延伸、ホウ酸架橋、必要に応じて、洗浄、乾燥することにより製造される。かかる延伸工程は、染色後のフィルムを流れ方向(MD方向)に延伸して、フィルム中の二色性染料を高度に配向させる工程であるが、偏光膜の偏光性能を向上させるためには、ポリビニルアルコール系フィルムに高度な延伸性が必要である。なお、偏光膜製造の順序として、染色、延伸、ホウ酸架橋などの工程が逆のケースも実施されている。
このような中、液晶テレビなどの画面の薄型化や大型化にともない、従来品より一段と、薄型であり、偏光性能に優れ、表示欠点や色ムラの少ない偏光膜が必要とされている。かかる偏光膜を製造するためには、原反となるポリビニルアルコール系フィルムを改良する必要がある。特に、薄型化に関しては、上述したキャスト法による製造方法だけでは対応が困難であり、またキャスト法により得られたポリビニルアルコール系フィルムを高度に延伸すると破断が生じるため、支持体となる熱可塑性フィルム上にポリビニルアルコール系樹脂膜を形成し、得られた積層体を染色及び延伸して薄型の偏光膜を製造する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。なお、ポリビニルアルコール系フィルムの厚さは、従来の60μm以上から、現在は45μmに薄型化されており、近い将来は30μm未満への超薄型化が必要とされている。
また、ポリビニルアルコール系フィルムの延伸性を改良する方法として、フィルム内部の屈折率とフィルム面の屈折率が特定の範囲であるポリビニルアルコール系フィルムが提案されている(たとえば、特許文献2参照。)。また、フィルム内部の結晶構造が特定の範囲であるポリビニルアルコール系フィルムが提案されている(たとえば、特許文献3参照。)。
また、ポリビニルアルコール系フィルムの透明性を改良する方法として、界面活性剤の親水親油バランス(HLB値)を制御する手法が提案されている(例えば特許文献4参照。)。
特開2014−32361号公報 特開2006−219638号公報 特開2006−188655号公報 特開2006−249407号公報
しかしながら、特許文献1の開示技術は、水との接触角が55〜70°である熱可塑性フィルム上にポリビニルアルコール系樹脂膜を形成し、かかる積層体を染色及び延伸することにより薄型の偏光膜を製造するものであるが、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の熱可塑性フィルムに対する濡れ性が不充分なため、塗布ムラやはじきなどの欠陥が生じやすく、その結果、偏光膜に表示欠点や色ムラが発生するばかりか、延伸時にポリビニルアルコール系樹脂膜に破断が生じたり、ポリビニルアルコール系樹脂膜と熱可塑性フィルムの界面が剥離する傾向があった。かかる問題を解決するには、熱可塑性フィルムの接触角を制御するだけでは不十分であり、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液側からも濡れ性を向上する必要があった。
また、特許文献2や特許文献3の開示技術は、ポリビニルアルコール系フィルムの結晶状態を制御することにより延伸性を向上するものであるが、かかる技術は厚さ30μm以上の場合に有効であり、厚さ30μm未満の場合は、より非晶性のフィルムであることが好ましく、結晶化しにくいポリビニルアルコール系樹脂水溶液が要望されていた。
特許文献4の開示技術は、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液のHLB値を制御することにより、ポリビニルアルコール系フィルムの透明性を向上するものであるが、HLB値以外にも溶解度パラメータ(SP値)も考慮しなければ、製膜中に界面活性剤が析出してポリビニルアルコール系フィルムのヘイズや表面粗さが増大し、偏光膜の光線透過率が低下する。また、本開示技術のポリビニルアルコール系樹脂水溶液では、熱可塑性フィルムへの塗布性は不充分であり、偏光膜に表示欠点や色ムラが発生していた。
そこで、本発明ではこのような背景下において、熱可塑性フィルムへの塗布性に優れ、厚み精度良く、かつはじきなどの欠点が少ないポリビニルアルコール系樹脂膜を形成でき、高度な延伸によっても破断や剥離が発生せず、超薄型の光学用ポリビニルアルコール系フィルムや、薄型の偏光膜を製造することが可能なポリビニルアルコール系樹脂水溶液(製膜原液)を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の構成成分と、熱可塑性フィルムと濡れ性との関係を詳細に検討し、特定の界面張力を有するポリビニルアルコール系樹脂水溶液が、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、光学用ポリビニルアルコール系フィルムを製造するためのポリビニルアルコール系樹脂水溶液であって、23℃50%RHの環境下における界面張力γ(mN/m)が、25〜55mN/mであることを特徴とするポリビニルアルコール系樹脂水溶液に関するものである。
本発明のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を製膜原液として用いることにより、超薄型であり、かつ欠点の少ない光学用ポリビニルアルコール系フィルムを製造することができ、更に、該光学用ポリビニルアルコール系フィルムを用いることで、薄型であり、かつ表示欠点や色ムラの無い偏光膜を得ることができる。
本発明では、光学用ポリビニルアルコール系フィルムの製膜原液であるポリビニルアルコール系樹脂水溶液について、その界面張力γ(mN/m)が、23℃50%RHの環境下において、25〜55mN/mであることが必要であり、好ましくは30〜50mN/m、特に好ましくは33〜40mN/mである。かかる界面張力γ(mN/m)が低すぎると、ポリビニルアルコール系樹脂膜を熱可塑性フィルムから剥離するのが困難となり、高すぎても、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の熱可塑性フィルムへの塗布性が悪化し、本発明の目的を達成し得ない。
本発明のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を用いれば、熱可塑性フィルムの材料や表面状態に依らず塗布性は良好なものとなる。上記特許文献1では、熱可塑性フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと呼ぶ。)の表面を、コロナ処理することにより水との接触角を55〜70°に調整する必要があるが、本発明のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を用いれば、かかる煩雑な工程は不要であり、特殊なPETフィルムを使用する必要はない。なお、表面処理をしないPETフィルムと水との接触角は、通常、70〜80°である。本発明において、熱可塑性フィルムとしてPETフィルムを用いる場合、水との接触角は、塗布工程の簡便さや熱可塑性フィルムが安価な点で、好ましくは80°以下、特に好ましくは70〜80°である。
まず、本発明のポリビニルアルコール系樹脂水溶液について説明する。
本発明のポリビニルアルコール系樹脂水溶液で用いられるポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、未変性のポリビニルアルコール系樹脂、即ち、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルをケン化して製造される樹脂が用いられる。必要に応じて、酢酸ビニルと、少量(通常、10モル%以下、好ましくは5モル%以下)の酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を用いることもできる。酢酸ビニルと共重合可能な成分としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等が挙げられる。また、ケン化後の水酸基を化学修飾して得られる変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(i)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(ii)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(iii)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(iv)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、10万〜30万であることが好ましく、特に好ましくは11万〜28万、更に好ましくは12万〜26万である。かかる重量平均分子量が小さすぎると偏光膜の偏光度が低下する傾向があり、大きすぎると偏光膜製造時の延伸が困難となる傾向がある。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、GPC−MALS法により測定される重量平均分子量である。
本発明で用いるポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度は、通常98モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは99モル%以上、更に好ましくは99.5モル%以上、殊に好ましくは99.8モル%以上である。かかる平均ケン化度が小さすぎると偏光膜の偏光度が低下する傾向がある。
ここで、本発明における平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂として、変性種、変性量、重量平均分子量、平均ケン化度などの異なる2種以上のものを併用してもよい。
かかるポリビニルアルコール系樹脂を水に溶解して、製膜原液となるポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調液するが、かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液が、炭素数1〜8の1価アルコールを5〜30重量%含有することが好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液が、単純に水のみを溶剤とする場合に比べて、上記アルコールを含有することにより、ポリビニルアルコール系フィルムの熱可塑性フィルムへの濡れ性を向上するだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを製膜する時の結晶化を回避し、ポリビニルアルコール系フィルムの延伸性を向上することができる。
かかる炭素数1〜8の1価アルコールは、その構造内にエーテル結合を含んでもよく、例えば、具体的には、メタノール、エタノール、メトキシメタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、エトキシメタノール、シクロプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、2−メトキシプロパノール、3−メトキシプロパノール、2−エトキシエタノール、3−メトキシプロパノール、シクロブタノール、シクロプロピルメタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−メチルブタノール、2−メチルブタノール、3―メチルブタノール、1−メトキシブタノール、2−メトキシブタノール、3−メトキシブタノール、4−メトキシブタノール、1−エトキシプロパノール、2−エトキシプロパノール、3−エトキシプロパノール、1−プロポキシエタノール、2−プロポキシエタノール、ブトキシメタノール、シクロペンタノール、1−シクロプロピル−1−エタノール、2−シクロプロピル−1−エタノール、シクロブチルメタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、4−メチルペンタノール、1−メトキシペンタノール、2−メトキシペンタノール、3−メトキシペンタノール、4−メトキシペンタノール、5−メトキシペンタノール、1−エトキシブタノール、2−エトキシブタノール、3−エトキシブタノール、4−エトキシブタノール、1−プロポキシプロパノール、2−プロポキシプロパノール、3−プロポキシプロパノール、1−ブトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ペントキシメタノール、シクロヘキサノール、1−シクロプロピルプロパノール、2−シクロプロピルプロパノール、3−シクロプロピルプロパノール、1−シクロブチルエタノール、2−シクロブチルエタノール、シクロペンチルメタノール、ジ(シクロプロピル)メタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、1−メトキシヘキサノール、2−メトキシヘキサノール、3−メトキシヘキサノール、4−メトキシヘキサノール、5−メトキシヘキサノール、6−メトキシヘキサノール、1−エトキシペンタノール、2−エトキシペンタノール、3−エトキシペンタノール、4−エトキシペンタノール、5−エトキシペンタノール、1−プロポキシブタノール、2−プロポキシブタノール、3−プロポキシブタノール、4−プロポキシブタノール、1−ブトキシプロパノール、2−ブトキシプロパノール、3−ブトキシプロパノール、1−ペントキシエタノール、2−ペントキシエタノール、シクロヘプタノール、1−シクロプロピルブタノール、2−シクロプロピルブタノール、3−シクロプロピルブタノール、4−シクロプロピルブタノール、1−シクロブチルプロパノール、2−シクロブチルプロパノール、3−シクロブチルプロパノール、1−シクロペンチルエタノール、2−シクロペンチルエタノール、シクロヘキシルメタノール、1−シクロプロピルシクロブタノール、2−シクロプロピルシクロブタノール、3−シクロプロピルシクロブタノール、1−シクロブチルシクロプロパノール、2−シクロブチルシクロプロパノール、シクロヘキシルメタノール、ジ(シクロプロピル)メタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、シクロオクタノール、1−シクロプロピルペンタノール、2−シクロプロピルペンタノール、3−シクロプロピルペンタノール、4−シクロプロピルペンタノール、5−シクロプロピルペンタノール、1−シクロブチルブタノール、2−シクロブチルブタノール、3−シクロブチルブタノール、4−シクロブチルブタノール、1−シクロペンチルプロパノール、2−シクロペンチルプロパノール、3−シクロペンチルプロパノール、1−シクロヘキシルエタノール、2−シクロヘキシルエタノール、シクロヘプチルメタノール、1−シクロプロピルシクロペンタノール、2−シクロプロピルシクロペンタノール、3−シクロプロピルシクロペンタノール、1−シクロブチルシクロブタノール、2−シクロブチルシクロブタノール、3−シクロブチルシクロブタノール、1−シクロペンチルシクロプロパノール、2−シクロペンチルシクロプロパノール、1−シクロヘキシルエタノール、2−シクロヘキシルエタノール、シクロヘプチルメタノール、1,1−ジ(シクロプロピル)エタノール、1,2−ジ(シクロプロピル)エタノール、2,2−ジ(シクロプロピル)エタノール、(シクロプロピル)(シクロブチル)メタノール、1−シクロブチルシクロブタノール、2−シクロブチルシクロブタノール、3−シクロブチルシクロブタノールなどが挙げられる。
これらの中でも、安全性の点で、エーテル結合を含まない1価アルコールが好ましく、特に好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂との相溶性の点で、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−メチルブタノール、2−メチルブタノール、3―メチルブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、4−メチルペンタノール、などの溶解度パラメータ(SP値)が10〜13の1価アルコールである。なお、一般的なポリビニルアルコール系樹脂のSP値は19程度である。
更に好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂との相溶性が更に向上する点で、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノールなどの親水親油バランス(HLB値)が4〜6の1価アルコールである。なお、一般的なポリビニルアルコール系樹脂のHLB値は7程度である。
殊に好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂の製膜性の点で、1−プロパノール(SP値12、HLB値6、沸点97℃)、2−プロパノール(SP値12、HLB値6、沸点82℃)、2−ブタノール(SP値11、HLB値5、沸点100℃)、t−ブタノール(SP値11、HLB値5、沸点82℃)などの沸点が80〜100℃の1価アルコールである。なお、一般的なポリビニルアルコール系フィルムの製膜温度(ポリビニルアルコール系水溶液の乾燥温度)は、後述する通り70〜100℃である。
すなわち、本発明で使用されるポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、SP値とHLB値がポリビニルアルコール系樹脂に対して特定の範囲に有り、かつ水の沸点に近いアルコールを含有することが好ましい。
なお、かかる上記SP値((cal/cm31/2)は、Fedorsの計算式(1)に基づき(参考文献:R.F.Fedors: Polym. Eng. Sci., 14〔2〕, 147-154(1974))、アルコールの化学構造から求められる数値である。
計算式(1)SP値=(ΣE/ΣV)1/2(ΣE:凝集エネルギー、ΣV:モル分子容)
また、上記HLB値は、計算式(2)に基づき、アルコールの化学構造から求められる数値である。
計算式(2)HLB値=340/Mw(Mw:分子量)
炭素数1〜8の1価アルコールの含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液全体に対して、5〜30重量%であることが必要であり、好ましくは7〜25重量%、特に好ましくは8〜20重量%である。配合量が下限値未満では、配合効果が顕著では無く、逆に、上限値を超えると、ポリビニルアルコール系フィルムの透明性が低下してしまい、本発明の目的を達成することができない。
本発明で使用されるポリビニルアルコール系樹脂水溶液には、上述した炭素数1〜8の1価アルコール以外に、少量の補助溶剤を用いてもよい。補助溶剤としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどが挙げられる。かかる補助溶剤は、上述したSP値、HLB値、沸点を充分に考慮して、可能な限り少量で使用することが好ましく、具体的には、通常ポリビニルアルコール系樹脂水溶液全体の10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液には、ポリビニルアルコール系樹脂以外に、可塑剤や、ノニオン性、アニオン性、カチオン性などの界面活性剤が、延伸性、製膜性、及び染色性の向上のために、添加されることが好ましい。
上記可塑剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどの一般的に使用される可塑剤が挙げられる。これらの中では、延伸性に優れる点で、グリセリンが好ましい。かかる可塑剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液全体に対して、0.1〜2重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.3〜1.5重量%、更に好ましくは0.4〜1.2重量%、殊に好ましくは0.5〜1重量%である。かかる配合量が少なすぎると延伸性が低下する傾向があり、多すぎるとポリビニルアルコール系フィルムが白濁する傾向がある。
上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレンエイコシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、やし油還元アルコールエチレンオキサイド付加物、牛脂還元アルコールエチレンオキサイド付加物等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、カプロン酸モノまたはジエタノールアミド、カプリル酸モノまたはジエタノールアミド、カプリン酸モノまたはジエタノールアミド、ラウリン酸モノまたはジエタノールアミド、パルミチン酸モノまたはジエタノールアミド、ステアリン酸モノまたはジエタノールアミド、オレイン酸モノまたはジエタノールアミド、やし油脂肪酸モノまたはジエタノールアミド、あるいはこれらのエタノールアミドに代えてプロパノールアミド、ブタノールアミド等の高級脂肪酸アルカノールアミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリオキシエチレンヘキシルアミン、ポリオキシエチレンヘプチルアミン、ポリオキシエチレンオクチルアミン、ポリオキシエチレンノニルアミン、ポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンテトラデシルアミン、ポリオキシエチレンヘキサデシルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンエイコシルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンカプロン酸アミド、ポリオキシエチレンカプリル酸アミド、ポリオキシエチレンカプリン酸アミド、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンパルミチン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のポリオキシエチレン高級脂肪酸アミド、ジメチルラウリルアミンオキシド、ジメチルステアリルオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド等のアミンオキシドなどが挙げられる。
上記アニオン系の界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩型として、ヘキシル硫酸ナトリウム、ヘプチル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ノニル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、エイコシル硫酸ナトリウム、あるいはこれらのカリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエイコシルエーテル硫酸ナトリウム、あるいはこれらのカリウム塩、アンモニウム塩等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンヘキシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘプチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンテトラデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヘキサデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクタデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエイコシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、あるいはこれらのカリウム塩、アンモニウム塩等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、カプロン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、カプリル酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、カプリン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、ラウリン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、パルミチン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、ステアリン酸エタノールアミド硫酸ナトリウム、オレイン酸エタノールアミド硫酸ナトリウムあるいはこれらのカリウム塩、更にはこれらエタノールアミドに代えてプロパノールアミド、ブタノールアミド等の高級脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル塩、硫酸化油、高級アルコールエトキシサルフェート、モノグリサルフェートなどが挙げられる。また、上記硫酸エステル塩型以外に、脂肪酸石鹸、N − アシルアミノ酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルエステルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等のカルボン酸塩型、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸の塩ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸の塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、アルキルスルホ酢酸塩、α − オレフィンスルホン酸塩、N − アシルメチルタウリン塩、ジメチル− 5 − スルホイソフタレートナトリウム塩等のスルホン酸塩型、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、アルキルリン酸塩等のリン酸エステル塩型なども挙げられる。
本発明においては、かかる界面活性剤のSP値が、9〜14であることが好ましく、特に好ましくは10〜13、更に好ましくは11〜12であり、具体的には、ラウリン酸ジエタノールアミド(SP値11)、ステアリン酸ジエタノールアミド(SP値11)などのノニオン系界面活性剤などが好ましい。界面活性剤のSP値が高すぎても低すぎてもポリビニルアルコール系フィルムの透明性が低下する傾向がある。
なお、界面活性剤のSP値((cal/cm31/2)は、Fedorsの計算式(1)に基づき、界面活性剤の化学構造から求められる数値である。
計算式(1)SP値=(ΣE/ΣV)1/2 (ΣE:凝集エネルギー、ΣV:モル分子容)
かかる界面活性剤の配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液全体の0.001〜1重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.0015〜0.1重量%、更に好ましくは0.002〜0.01重量%である。配合量が少なすぎるとポリビニルアルコール系フィルムを熱可塑性フィルムから剥離することが困難となる傾向があり、多すぎるとポリビニルアルコール系フィルムが白濁する傾向がある。
このようにして得られるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂濃度は、2〜20重量%であることが好ましく、特に好ましくは3〜15重量%、更に好ましくは4〜10重量%である。かかる濃度が低すぎると乾燥負荷が大きくなるため生産能力が低下する傾向があり、高すぎると薄膜化が困難となる傾向がある。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の調液方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法[i]〜[iii]により調製することができる。
[i]ポリビニルアルコール系樹脂、水とアルコールよりなる溶剤、必要に応じて可塑剤や界面活性剤を、多軸押出機を用いて混練しながら加温させて溶解し、所望濃度の水溶液を調製する方法。
[ii]上下循環流発生型撹拌翼を備えた溶解缶に、前述したポリビニルアルコール系樹脂と、水とアルコールよりなる溶剤、必要に応じて可塑剤や界面活性剤を投入し、所望濃度の水溶液を調製する方法。
[iii]攪拌翼を備えた溶解缶に、ポリビニルアルコール系樹脂と水、必要に応じて可塑剤や界面活性剤を投入し、攪拌しながら昇温させて溶解させ、一旦ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を製造した後、当該水溶液に攪拌しながらアルコールを加えることで所望の濃度の水溶液を調整する方法。
これらの中でも、方法[iii]が安全性の点で好ましい。
かくして製膜原液となるポリビニルアルコール系樹脂水溶液が得られる。
以下、本発明の積層体、及びポリビニルアルコール系フィルムの製造方法について説明する。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、例えば、以下の工程(1)および(2)で製造される。
工程(1):ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、熱可塑性フィルム(A)の少なくとも片面に塗布し、必要に応じて延伸した後、最後に乾燥して、ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体を製造する工程。
工程(2):積層体から熱可塑性フィルムを剥離して、ポリビニルアルコール系フィルムを得る工程。
先ず、工程(1)について説明する。
熱可塑性フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、(メタ)アクリルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、ポリブチレンテレフタレートフィルム(PBTフィルム)、ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)などの熱可塑性フィルムが挙げられる。これらの中でも、延伸性と弾性率の点で、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
熱可塑性フィルムの厚さは、50〜200μmであることが好ましく、特に好ましくは80〜170μm、更に好ましくは100〜150μmである。熱可塑性フィルムの厚さが薄すぎると、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を塗布する際に、支持体としての機能に劣る傾向があり、逆に、厚すぎても、延伸性が低下する傾向がある。
熱可塑性フィルムの幅は、好ましくは1m以上、特に好ましくは2〜4mである。熱可塑性フィルム(A)の幅が、狭すぎると生産性が低下する傾向があり、逆に、広すぎても塗布性が低下する傾向がある。
熱可塑性フィルムの長さは、好ましくは1km以上、特に好ましくは2〜20kmである。熱可塑性フィルム(A)の長さが、短すぎると生産性が低下する傾向があり、逆に、長すぎると設備負荷が増大する傾向がある。
熱可塑性フィルムの表面粗さRaは、好ましくは100nm以下、特に好ましくは5〜50nm、更に好ましくは10〜20nmである。かかる表面粗さRaが、大きすぎると、ポリビニルアルコール系フィルムや偏光膜の表面粗さが増大し、光線透過率が低下する傾向がある。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の熱可塑性フィルムへの塗布方法としては、例えば、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法などが挙げられる。これらの中でも、得られるポリビニルアルコール系樹脂膜の厚み精度の点からダイコート法が好ましい。ダイコート法で、ポリビニルアルコール系樹脂膜を熱可塑性フィルムの両面に形成する場合は、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を表裏に2回塗布すればよい。
塗布温度(液温)は、10〜99℃が好ましく、より好ましくは20〜70℃、更に好ましくは23〜50℃である。塗布温度が低すぎるとポリビニルアルコール系樹脂水溶液が高粘度となり、塗布性が低下する傾向があり、逆に高すぎるとポリビニルアルコール系樹脂水溶液が発砲する傾向がある。
塗布されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、適度な乾燥を行ない比較的速やかに固化させて、ポリビニルアルコール系樹脂膜を形成させることが好ましい。
次いで、得られたポリビニルアルコール系樹脂膜と熱可塑性フィルムよりなる積層体は、必要に応じて延伸した後、最後に乾燥して、ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体とすることができる。
かかる延伸方法は、特に限定されず、複数の金属ロールを用いた一軸延伸、及び/またはテンターを用いた二軸延伸などが挙げられる。これらの中では、偏光膜の偏光度の点で、複数の金属ロールを用いた一軸延伸が好ましく、複数の金属ロールを用いた逐次一軸延伸が特に好ましい。
延伸倍率は、一軸方向に、好ましくは1.5〜8倍、特に好ましくは2〜7倍、更に好ましくは2.5〜6倍である。かかる延伸倍率が低すぎると、ポリビニルアルコール系フィルムの薄型化が困難となる傾向があり、高すぎると、ポリビニルアルコール系樹脂膜が破断する傾向がある。なお、逐次一軸延伸を行う場合の延伸倍率は、延伸工程全体の総延伸倍率である。
延伸温度は、好ましくは20〜150℃、特に好ましくは50〜100℃、更に好ましくは70〜90℃である。延伸温度が低すぎると、熱可塑性フィルムの延伸が困難になる傾向があり、逆に、高すぎると、ポリビニルアルコール系樹脂膜と熱可塑性フィルムが融着する傾向がある。
かかる乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、熱ロール乾燥法などが挙げられる。これらの中では、設備の簡便さから、熱風乾燥法が好ましい。これらの乾燥方法は、複数を組み合わせてもよい。
乾燥温度は、50〜150℃が好ましく、特に好ましくは60〜130℃、更に好ましくは、70〜120℃である。かかる乾燥温度が低すぎると乾燥不良となり、高すぎるとうねりなどの外観不良を招く傾向がある。乾燥時間は、1〜60分が好ましく、特に好ましくは2〜40分、更に好ましくは3〜30分である。かかる乾燥時間が短すぎると乾燥不良となり、長すぎるとうねりなどの外観不良を招く傾向がある。
かくしてポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体が得られる。かかる積層体は、超薄型のポリビニルアルコール系フィルムを輸送、及び/または保管するのに有用である。傷や汚れ防止のため、ポリビニルアルコール系フィルム上に、保護フィルムをかぶせた形態で輸送、及び/または保管を行っても良い。
次いで工程(2)について説明する。
工程(2)は、上記ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体から熱可塑性フィルムを剥離して、ポリビニルアルコール系フィルムを得る工程である。
ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体が、ポリビニルアルコール系フィルム/熱可塑性フィルムの2層構成の場合は、熱可塑性フィルムを剥離するだけであるが、ポリビニルアルコール系フィルム/熱可塑性フィルム/ポリビニルアルコール系フィルムの3層構成の場合は、表裏いずれかのポリビニルアルコール系フィルムを剥離した後、残された熱可塑性フィルム/ポリビニルアルコール系フィルムから熱可塑性フィルムを剥離すればよい。後者の場合は、ポリビニルアルコール系フィルムが2枚製造されることになり、生産性の点で好ましい。
本発明においては、積層体から熱可塑性フィルムを剥離する時の応力が、0.01〜10N/25mmであることが好ましい。かかる応力は、特に好ましくは0.05〜5N/25mm、更に好ましくは0.1〜1N/25mmである。かかる応力が高すぎると、熱可塑性フィルム(A)の剥離性が低下し、逆に低すぎると、得られるポリビニルアルコール系フィルムにうきが生じて欠点となる傾向がある。
かくして超薄型のポリビニルアルコール系フィルムが得られる。
ポリビニルアルコール系フィルムの厚さは、1〜40μmであることが好ましく、特に好ましくは2〜30μm、更に好ましくは3〜20μm、殊に好ましくは4〜10μmである。ポリビニルアルコール系フィルムの厚さが薄すぎると、偏光膜製造時の延伸工程で破断しやすい傾向があり、逆に、厚すぎると偏光膜の薄型化が困難になる傾向がある。
ポリビニルアルコール系フィルムの幅は、好ましくは1m以上、特に好ましくは2〜4mである。ポリビニルアルコール系フィルムの幅が、狭すぎると生産性が低下する傾向があり、逆に、広すぎると巻き取り性が低下する傾向がある。
ポリビニルアルコール系フィルムの長さは、好ましくは1km以上、特に好ましくは2〜20kmである。ポリビニルアルコール系フィルムの長さが、短すぎると生産性が低下する傾向があり、逆に、過度に長すぎると設備負荷が増大する傾向がある。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、ヘイズが0.5%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.3%以下、更に好ましくは0.2%以下である。ヘイズが高すぎると、偏光膜の光線透過率が低下する傾向にある。
なお、上述した積層体やポリビニルアルコール系フィルムは、幅方向両端部をスリットし、ロールに巻き取ることが好ましい。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、超薄型であり、透明性に優れ、欠点が少ないため、薄型の高品質な偏光膜を製造するのに好適である。
以下、本発明の偏光膜の製造方法について説明する。
本発明の偏光膜は、ポリビニルアルコール系フィルム単体、もしくはポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体のポリビニルアルコール系フィルムを、膨潤、染色、ホウ酸架橋、延伸、洗浄、乾燥することより製造される。
先ず、ポリビニルアルコール系フィルム単体を用いた場合の偏光膜の製造方法について説明する。前述した通り、各工程の順序は以下の説明順ではなくてもよく、また同時になされてもよい。
膨潤工程は、染色工程の前に施される。膨潤工程により、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れを洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色ムラなどを防止する効果もある。膨潤工程において、処理液としては、通常、水が用いられる。当該処理液は、主成分が水であれば、ヨウ化化合物、界面活性剤等の添加物、アルコール等が少量入っていてもよい。膨潤浴の温度は、通常10〜45℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、通常0.1〜10分間程度である。
染色工程は、フィルムにヨウ素または二色性染料を含有する液体を接触させることによって行なわれる。通常は、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜2g/L、ヨウ化カリウムの濃度は1〜100g/Lが適当である。染色時間は30〜500秒程度が実用的である。処理浴の温度は5〜50℃が好ましい。水溶液には、水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させてもよい。
ホウ酸架橋工程は、ホウ酸やホウ砂などのホウ素化合物を使用して行われる。ホウ素化合物は水溶液または水−有機溶媒混合液の形で濃度10〜100g/L程度で用いられ、液中にはヨウ化カリウムを共存させるのが、偏光性能の安定化の点で好ましい。処理時の温度は30〜70℃程度、処理時間は0.1〜20分程度が好ましく、また必要に応じて処理中に延伸操作を行なってもよい。
延伸工程は、一軸方向に1.5〜10倍、好ましくは2〜6倍延伸することが好ましい。この際、延伸方向の直角方向にも若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度、またはそれ以上の延伸)を行なっても差し支えない。延伸時の温度は、40〜170℃が好ましい。さらに、延伸倍率は最終的に前記範囲に設定されればよく、延伸操作は一段階のみならず、製造工程の任意の範囲の段階に実施すればよい。
なお、ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体の製造時に任意の延伸をおこなった場合も、そうでない場合でも、偏光膜製造時の延伸倍率は、上記範囲内であればよい。
当然のことながら、任意の延伸をおこなった場合は、上記範囲の中でも低めの延伸倍率であることが好ましく、任意の延伸を行なわなかった場合は、上記範囲の中でも高めの延伸倍率であることが好ましい。
洗浄工程は、例えば、水やヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行われ、フィルムの表面に発生する析出物を除去することができる。ヨウ化カリウム水溶液を用いる場合のヨウ化カリウム濃度は1〜80g/L程度でよい。洗浄処理時の温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜45℃である。処理時間は、通常、1〜300秒間、好ましくは10〜240秒間である。なお、水洗浄とヨウ化カリウム水溶液による洗浄は、適宜組み合わせて行ってもよい。
乾燥工程は、大気中で40〜80℃で1〜10分間行えばよい。
次いで、ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体を用いた偏光膜の製造方法について説明する。
ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体は、ポリビニルアルコール系フィルム/熱可塑性フィルム、またはポリビニルアルコール系フィルム/熱可塑性フィルム/ポリビニルアルコール系フィルムの層構成を有するものである。
ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体を用いた場合も、膨潤、染色、ホウ酸架橋、延伸、洗浄、乾燥する工程は、上記ポリビニルアルコール系フィルム単体を用いた場合と同様であるが、当然のことながら、熱可塑性フィルムが存在するため、ポリビニルアルコール系樹脂膜の片面から、膨潤、染色、ホウ酸架橋、洗浄、乾燥されることになる。
また、ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体から偏光膜を製造する場合は、最初にホウ酸架橋処理をすることがポリビニルアルコール系樹脂膜の耐水性を向上させられる点で好ましい。
本発明において、ポリビニルアルコール系フィルム単体を用いて偏光膜を作製するのではなく、積層体を用いて偏光膜を作製する利点は、支持体となる熱可塑性フィルムが存在することで高度な延伸倍率でも破断を回避できる点、熱可塑性フィルムを剥離せずに後述する保護フィルムあるいは位相差フィルムとして活用できる点、輸送や保管時に水分の乾燥や移行によるうねりが発生しにくい傾向がある点などである。
全工程終了後、熱可塑性フィルム付き偏光膜が得られる。かかる熱可塑性フィルム付き偏光膜が、偏光膜/熱可塑性フィルム2層構成の場合は、熱可塑性フィルムを剥離すれば偏光膜単体が得られる。かかる熱可塑性フィルム付き偏光膜が、偏光膜/熱可塑性フィルム/偏光膜の3層構成の場合は、まず片側の偏光膜を剥離後、残った熱可塑性フィルム/偏光膜から、熱可塑性フィルムを剥離して、もう1枚の偏光膜が得られる。
かくして本発明の偏光膜、及び熱可塑性フィルム付き偏光膜が得られる。
上記偏光膜の偏光度は、好ましくは99.5%以上、特に好ましくは99.8%以上である。偏光度が低すぎると液晶ディスプレイにおけるコントラストを確保することができなくなる傾向がある。
なお、偏光度は、一般的に2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H11)と、2枚の偏光膜を、配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H1)より、下式にしたがって算出される。
〔(H11−H1)/(H11+H1)〕1/2
さらに、本発明の偏光膜の単体透過率は、好ましくは42%以上である。かかる単体透過率が低すぎると液晶ディスプレイの高輝度化を達成できなくなる傾向がある。
単体透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値である。
以下、本発明の偏光板の製造方法について説明する。
本発明の偏光膜、及び偏光膜付きの積層体は、その片面または両面に、接着剤を介して、光学的に等方性な樹脂フィルムを保護フィルムとして貼合されて偏光板となる。保護フィルムとしては、たとえば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ−4−メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイドなどのフィルムまたはシートがあげられる。
貼合方法は、公知の手法で行われるが、例えば、液状の接着剤組成物を、偏光膜、保護フィルム、あるいはその両方に均一に塗布した後、両者を貼り合わせて圧着し、加熱や活性エネルギー線を照射することで行われる。
また、偏光膜には、薄膜化を目的として、上記保護フィルムの代わりに、その片面または両面にウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレア樹脂などの硬化性樹脂を塗布し、硬化して偏光板とすることもできる。
本発明の偏光膜、偏光膜付き積層体、及び偏光板は、偏光性能に優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類などの液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパーなど)用反射防止層、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具などに好ましく用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
各物性について、次のようにして測定を行った。
(1)ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の界面張力γ(mN/m)
協和界面科学社製「ポータブル接触角計PCA−1」を用いて、23℃50%RHの環境下において、液滴5μLの輪郭形状を測定し、Young−Laplace法に従って界面張力γ(mN/m)を算出した。
(2)ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の塗布性
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の熱可塑性フィルムへの流涎状態を目視観察し、下記の基準で塗布性を評価した。
(評価基準)
○・・・全長全幅にわたりきれいに流涎した。
×・・・一部にはじきが生じた。
(3)ポリビニルアルコール系フィルムのヘイズ(%)
ロールフィルムから50mm×50mmの試験片を10枚採取し、日本電色製ヘイズメーター「NDH−4000」を用いて測定し、10枚の平均値をヘイズ(%)とした。
(4)偏光膜の偏光度(%)、単体透過率(%)
得られた偏光膜の幅方向の中央部から、長さ4cm×幅4cmの試験片を切り出し、自動偏光フィルム測定装置(日本分光(株)製:VAP7070)を用いて、偏光度(%)と単体透過率(%)を測定した。
(5)偏光膜の色ムラ
得られた偏光膜から、長さ30cm×幅30cmの試験片を切り出し、クロスニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟んだのちに、表面照度14,000lxのライトボックスを用いて、透過モードで光学的な色ムラを観察し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○:色ムラがなかった
×:色ムラがあった
(6)表示欠点(個)
得られた偏光膜から、長さ30cm×幅30cmの試験片を切り出し、15,000lxの環境下で目視検査し、100μm以上の表示欠点数(個)を測定した。
<実施例1>
(ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の製造)
重量平均分子量142,000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂600kg(樹脂濃度6%)、溶剤として水8,428kg、可塑剤としてグリセリン72kg(可塑剤濃度0.72%)を溶解槽に投入し、撹拌しながら95℃まで昇温して、均一に溶解したポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。次いで、ポリビニルアルコール系樹脂が溶解した水溶液を撹拌しながら、2−プロパノール(SP値12、HLB値6、沸点82℃)900kgを溶解槽に投入し、1価アルコールを含有したポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液の特性を表1に示す。
(ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体の製造)
厚さ100μm、幅2m、長さ2kmの非晶性PETフィルム(表面粗さRa20nm)をロールから巻き出し、上記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液(液温25℃)を、非晶性PETフィルム上に塗布厚み350μmで流延した(ダイコート法)。流延されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を乾燥し、ポリビニルアルコール系樹脂膜(厚み:20μm)/非晶性PETフィルムの層構成を有する積層体を得た。
得られた積層体を1m/分で搬送しながら、10本の金属加熱ロール(表面温度80℃)を用いて、長さ方向に逐次一軸延伸(総延伸倍率3倍)した後、3m/分で搬送しながら、フローティングドライヤー(温度110℃)を用いて乾燥し、ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体を得た。
(ポリビニルアルコール系フィルムの製造)
上記ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体を3m/分で搬送し、両端部をスリットしながらPETフィルムを剥離し、ロールに巻き取って、厚さ10μm、幅1m、長さ6kmのポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性を表1に示す。
(偏光膜の製造)
上記ポリビニルアルコール系フィルムをロールから巻き出し、水平方向に搬送しながら、ホウ酸30g/Lよりなる30℃の水溶液に浸漬した。次に、ヨウ素2g/L、ヨウ化カリウム12g/Lよりなる30℃の水溶液中に浸漬して染色し、ついでホウ酸30g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(55℃)に浸漬しながら2.5倍に一軸延伸した。最後に、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄を行い、50℃で2分間乾燥して偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表1に示される通りであった。
(偏光板の製造)
得られた偏光膜の両面に、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフイルム(TACフィルム)を、ポリビニルアルコール系水溶液を接着剤として用いて貼合し、50℃で乾燥して偏光板とした。得られた偏光板に偏光ムラは観察されなかった。
<実施例2>
(ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の製造)
実施例1において、溶剤として2−プロパノール1,400kgと水7,928kgを用いる以外は実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液の特性を表1に示す。
(ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体、及び偏光膜の製造)
得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体、ポリビニルアルコール系フィルム、及び偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<実施例3>
(ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の製造)
実施例1において、溶剤として2−プロパノール1,900kgと水7,428kgを用いる以外は実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液の特性を表1に示す。
(ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体、及び偏光膜の製造)
得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体、ポリビニルアルコール系フィルム、及び偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<実施例4>
(ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の製造)
実施例1において、溶剤として1−ヘキサノール(SP値11、HLB値3、沸点157℃)900kgと水8,428kgを用いる以外は実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液の特性を表1に示す。
(ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体、及び偏光膜の製造)
得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体、ポリビニルアルコール系フィルム、及び偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<実施例5>
(ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の製造)
実施例1において、界面活性剤としてラウリン酸ジエタノールアミド(SP値11)0.2kgを用いる以外は実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液の特性を表1に示す。
(ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体、及び偏光膜の製造)
得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体、ポリビニルアルコール系フィルム、及び偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<実施例6>
(偏光膜の製造)
実施例1と同様にして得られたポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体(3倍延伸済み)を、水平方向に搬送しながら、ホウ酸30g/Lよりなる水温30℃の水溶液に浸漬した。次に、ヨウ素3g/L、ヨウ化カリウム18g/Lよりなる30℃の水溶液中に浸漬して染色し、ついでホウ酸30g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(40℃)に浸漬した。その後、ホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム50g/Lの組成よりなる70℃の水溶液中で2倍に一軸延伸した。最後に、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄を行い、50℃で2分間乾燥して偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<比較例1>
(ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の製造)
実施例1において、溶剤として2−プロパノールを用いず、水9,328kgのみを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液の特性を表1に示す。
次いで、実施例1と同様にして、得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を非晶性PETフィルム上に流延したが、PETフィルム上での液はじきが多数観察され、該ポリビニルアルコール系樹脂膜付きPETフィルムを乾燥させても、均質なポリビニルアルコール系フィルムは得られなかった。
<比較例2>
(ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の製造)
実施例1において、溶剤として2−プロパノールを用いず水9,328kgのみを用いたこと、および界面活性剤としてラウリン酸ジエタノールアミド(SP値11)0.2kgを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液の特性を表1に示す。
(ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体、及び偏光膜の製造)
得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を用いて、実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムと熱可塑性フィルムよりなる積層体、ポリビニルアルコール系フィルム、及び偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<比較例3>
(ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の製造)
実施例1において、溶剤として2−プロパノール3,500kgと水5,828kgを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液はゲル状であり、かつ白濁していたため、ポリビニルアルコール系フィルムの製造に供することはできなかった。


Figure 0006972867
Figure 0006972867
実施例1〜6のポリビニルアルコール系フィルムは、本発明のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を用いているため、超薄型で透明性に優れたものであり、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いると表示欠点や色ムラが無い偏光膜が得られることがわかる。
一方で、比較例1では均質なポリビニルアルコール系フィルムが得られないこと、比較例2では偏光膜を製造した際に表示欠点や色ムラが発生すること、比較例3では積層体の製造に適したポリビニルアルコール系水溶液が得られないことがわかる。
本発明の偏光膜、偏光膜付き積層体、及び偏光板は、偏光性能に優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類などの液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパーなど)用反射低減層、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具などに好ましく用いられる。

Claims (8)

  1. 偏光膜製造用ポリビニルアルコール系フィルムを製造するためのポリビニルアルコール
    系樹脂水溶液であって、
    3℃50%RHの環境下における界面張力γ(mN/m)が、25〜55mN/mで
    り、
    ポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度が99モル%以上であり、
    下記条件(1)〜(3)を満足する、炭素数1〜8の1価アルコールを5〜30重量%
    含有し、
    ポリビニルアルコール系樹脂水溶液中の樹脂濃度が、2〜20重量%であることを特徴
    とするポリビニルアルコール系樹脂水溶液。
    条件(1):溶解度パラメータ(SP値)10〜13
    条件(2):親水親油バランス(HLB値)4〜6
    条件(3):沸点80〜100℃
  2. 請求項に記載のポリビニルアルコール系樹脂水溶液から得られる偏光膜製造用ポリビ
    ニルアルコール系フィルム、および熱可塑性フィルムを含むことを特徴とする積層体の製
    造方法
  3. 前記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、熱可塑性フィルムの少なくとも片面に塗布
    する工程、
    および、かかる塗布物を乾燥する工程を有することを特徴とする請求項記載の積層体
    の製造方法。
  4. 請求項記載の製造方法で得られる積層体から熱可塑性フィルムを剥離して得られるこ
    とを特徴とする偏光膜製造用ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法
  5. 請求項記載の製造方法で得られる積層体を用いて得られることを特徴とする熱可塑性
    フィルム付き偏光膜の製造方法
  6. 請求項記載の製造方法で得られる熱可塑性フィルム付き偏光膜から熱可塑性フィルム
    を剥離して得られることを特徴とする偏光膜の製造方法
  7. 請求項4記載の製造方法で得られる偏光膜製造用ポリビニルアルコール系フィルムを用
    いて得られることを特徴とする偏光膜の製造方法
  8. 請求項または記載の製造方法で得られる偏光膜上に、保護フィルムを設けてなるこ
    とを特徴とする偏光板の製造方法
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