JP6434776B2 - 位相差フィルム、組成物、位相差フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

位相差フィルム、組成物、位相差フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、位相差フィルム、組成物、位相差フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、消費電力の小さい省スペースの画像表示装置として年々その用途が広がっている。テレビ等の高品位の画像が要求される市場に加えて、携帯電話やタブレット型パーソナルコンピューター等のモバイル用途の市場が拡大するにつれて、薄型化のニーズが一段と高まっている。液晶表示装置の構成は液晶セルの両側に偏光板を設けたものである。偏光板には位相差フィルムを積層して光学補償を行うことが一般的である。
特許文献1には、厚さ方向をZ軸としてその軸方向における屈折率をnz、Z軸に垂直な面内の一方向をX軸としてその軸方向における屈折率をnx、Z軸とX軸に垂直な方向をY軸としてその軸方向における屈折率をnyとしたとき、X軸が面内の最大屈折率方向で、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)、フィルム厚がdであるとして、Nzが0.4超〜0.6未満であり、かつ(nx−ny)dが200〜350nmである位相差フィルムの片面に、nx≒ny>nzの屈折率異方性を示し厚さが10μm以下の透明層を有する光学シートが記載されている。
特許文献2には、面内の主屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnzとしてnx≧nyとしたとき、それら屈折率の少なくとも一が他とは相違する位相差フィルムの1枚又は2枚以上と、上記屈折率の全てが相違する透明基材に液晶ポリマー層を設けてなる液晶位相シートの1枚又は2枚以上とを、位相差フィルムと透明基材と液晶ポリマー層とで複屈折の波長依存性が相違し、かつ式:(nx−nz)/(nx−ny)で定義されるNzが位相差フィルムと透明基材とで相違する組合せで用いてなり、その位相差フィルムと透明基材が非液晶性の高分子が配向したフィルムからなる複合位相差板が記載されている。
特許文献3には、少なくとも1種のサーモトロピック液晶性二色性色素、及び少なくとも1種のサーモトロピック液晶性高分子を含有し、上記サーモトロピック液晶性二色性色素の光吸収異方性膜中における質量含有率が30%以上である光吸収異方性膜が記載されている。
特開2002−107541号公報 特開2001−042127号公報 特開2011−237513号公報
上記の通り液晶表示装置の薄型化のニーズがあり、複屈折率Δnが高い液晶層だけで位相差を達成することができれば有用であるが、ネマチック液晶層にはパネルコントラストを低下させるという問題があった。本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、高いコントラストとともに位相差を発現できる位相差フィルムを提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は所望の光学特性を満たす位相差フィルムを提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、上記位相差フィルムを製造するための組成物、位相差フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定の構造の側鎖を有する高分子化合物と配向制御剤とを使用して位相差フィルムを製造することにより上記課題を解決した位相差フィルムを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)高分子化合物と配向制御剤とを含む位相差フィルムであって、上記高分子化合物は、1個以上のアゾ基および/またはシンナメート基と3個以上10個以下のアリーレン基とを有する側鎖を有し、上記側鎖はさらに、置換されていてもよいアミノ基、または炭化水素基を末端に有し、上記位相差フィルム中における上記高分子化合物の含有量が71質量%以上であり、かつ波長550nmにおける面内レタデーションが10nm以上200nm以下である位相差フィルム。
(2)上記高分子化合物は、一般式IXで示される化合物である、(1)に記載の位相差フィルム:
式中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、Lは、単結合、−(CH2xO−又は−(CH2CH2O)y−を表し、ここでxは2〜10の整数であり、yは1〜5の整数であり、R2は、置換されていてもよいアミノ基、または炭化水素基を表し、Mは、下記一般式Xで表される構造を表し、
式中、*は、L及びR2との結合部を表し;Yは、アゾ基、−OCO−、−CO(=O)−、−OCO−CH=CH−又は−CH=CH−CO2−を表し、mは2〜9の整数を表し、複数あるYが同じでも異なっていてもよく;Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
(3)上記配向制御剤が、下記一般式Iで表される化合物である、(1)又は(2)に記載の位相差フィルム:
式中、R201は、各々独立に、オルト位、メタ位及びパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族炭化水素環または複素環を表し、X201は、各々独立に、単結合または−NR202−を表し、ここで、R202は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、芳香族炭化水素環基または複素環基を表す。
(4)上記配向制御剤の含有量が、上記高分子化合物100質量部に対して、0.1〜20質量部である、(1)から(3)の何れかに記載の位相差フィルム。
(5)単層フィルムである、(1)から(4)の何れかに記載の位相差フィルム。
(6)Nzが−0.29〜0.29である、(1)から(5)の何れかに記載の位相差フィルム;
但し、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)であり、nxはフィルム面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
(7)厚さが5μm以下である、(1)から(6)の何れかに記載の位相差フィルム。
(8)高分子化合物と配向制御剤とを含む組成物であって、上記高分子化合物は、1個以上のアゾ基および/またはシンナメート基と3個以上10個以下のアリーレン基とを有する側鎖を有し、上記側鎖はさらに、置換されていてもよいアミノ基、または炭化水素基を末端に有し、上記組成物中における上記高分子化合物の含有量が全固形分に対して71質量%以上である組成物。
(9)(8)に記載の組成物を基板上に塗布する工程を含む、(1)から(7)の何れかに記載の位相差フィルムの製造方法。
(10)上記基板上に塗布した組成物を40℃以上で加熱する工程と、上記加熱後の組成物を300〜30000mJ/cm2で光照射する工程とをさらに含む、(9)に記載の位相差フィルムの製造方法。
(11)偏光子と、(1)から(7)の何れかに記載の位相差フィルムとを有する、偏光板。
(12)(1)から(7)の何れかに記載の位相差フィルム又は(11)に記載の偏光板を有する、液晶表示装置。
(13)IPS液晶表示装置である、(12)に記載の液晶表示装置。
本発明によれば、高いコントラストとともに位相差を発現できる位相差フィルムを提供することが可能になった。さらに本発明によれば所望の光学特性を満たす位相差フィルムを提供できる。本発明の組成物及び位相差フィルムの製造方法によれば上記した本発明の位相差フィルムを製造できる。本発明の偏光板および液晶表示装置は高いコントラストを示す。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書で言う固形分とは25℃での固形分を言う。
本明細書において、Re(λ)は、波長λにおける面内のレタデーション(nm)を表す。なお、本明細書において特に記載がないときは、波長λは550nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWRあるいはKOBRA CCDシリーズ(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。なお、レタデーションは、AxoScan(AXOMETRICS社)を用いて測定することもできる。
本発明において、位相差膜等の「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
また、本明細書において、各部材の光学特性を示す数値、数値範囲については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC−8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel(登録商標)Super AWM―H(東ソー(株)製、6.0mmID×15.0cm、カラム温度40℃を用いることによって求めることができる。溶離液は特に述べない限り、10mmol/L リチウムブロミドNMP(N−メチルピロリジノン)溶液を用いて測定したものとする。
<位相差フィルム>
本発明の位相差フィルムは、所定の側鎖を有する高分子化合物と配向制御剤とを含む組成物から形成した位相差フィルムである。位相差フィルムとは、全面または一部に複屈折性を有するフィルムを意味する。
本発明の位相差フィルムは、単層フィルムでもよいし、複数の層からなる多層フィルムでもよいが、単層フィルムであることが好ましい。
本発明の位相差フィルムの波長550nmにおける面内方向のレタデーションReは、10〜200nmであることが好ましく、10〜150nmであることがより好ましい。
本発明の位相差フィルムのNzは、−0.29〜0.29であることが好ましく、−0.2〜0.2であることがより好ましく、−0.15〜0.15であることが特に好ましい。但し、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)であり、nxはフィルム面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
本発明の位相差フィルムの厚さは特に限定されないが、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。厚さの下限は特に限定されないが、一般的には10nm以上、好ましくは50nm以上である。
本発明の位相差フィルムは、所定の側鎖を有する高分子化合物と配向制御剤とを含む組成物を用いて形成することができる。本発明のフィルムの製造方法の詳細は後記する。
<<高分子化合物>>
本発明で用いる高分子化合物は、1個以上のアゾ基および/またはシンナメート基と3個以上10個以下のアリーレン基とを有する側鎖を有し、上記側鎖はさらに、置換されていてもよいアミノ基、または炭化水素基を末端に有する。高分子化合物とは重量平均分子量が10000以上の化合物を意味し、好ましくはモノマーの重合体である。
アゾ基は−N=N−で示される基であり、シンナメート基は−C64CH=CH−COO−で示される基である。1個以上のアゾ基および/またはシンナメート基を有することにより光反応を行うことができるようになる。本発明においてアゾ基および/またはシンナメート基は偏光紫外線が照射されると、シスートランス転移が起こり二色性が発生し、光学異方性をもつ位相差層を得ることが出来る。高分子化合物がどのように配向するかでnx,ny,nzの屈折率が変化するが、添加剤によってそれらを変えることが出来ることを見出した。
また、本発明で用いる高分子化合物は、3個以上10個以下のアリーレン基を有する側鎖を有し、上記側鎖はさらに、置換されていてもよいアミノ基、または炭化水素基を末端に有する。連結されるアリーレン部は、剛直な構造で、アリーレン基の数は光学発現性と熱反応性に寄与しており、両者ともに優れた性能を示す領域が3個以上10個以下である。また末端のアミノ基または炭化水素基は、アミノ基または炭化水素基がない場合と比べて配向した際の光学発現性が高くなる作用を示す。
上記側鎖は、1個以上のアゾ基を有することが好ましい。上記側鎖は、3個以上8個以下のアリーレン基を有することがより好ましく、4個以上7個以下のアリーレン基を有することがさらに好ましい。
上記側鎖は、末端がアミノ基または炭化水素基であり、アミノ基の場合は無置換であってもよいし、置換基を有していてもよいが、置換基を有することが好ましい。置換基としては、炭素原子数1〜10のアルキル基(好ましくは炭素原子数が1〜5であり、特に好ましくは1〜3である)、又は炭素原子数1〜9のアルコキシ基(好ましくは炭素原子数が1〜4であり、特に好ましくは1〜2である。)が挙げられる。アミノ基の置換基としては、炭素原子数1〜10のアルキル基(好ましくは炭素原子数が1〜5であり、特に好ましくは1〜3である)が好ましく、アルキル基は互いに結合して環を形成していてもよい。
また、炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数3〜10、さらに好ましくは炭素数3〜7のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を示し、これらは直鎖、分岐鎖、環状又はこれらの組み合わせの何れでもよい。
高分子化合物としては、側鎖の末端でスペーサー又は単結合を介して主鎖と結合する末端結合型と、側鎖の内部(側方)でスペーサーを介して主鎖と結合する側方結合型が挙げられる。
末端結合型の高分子化合物は、下記一般式IXで表される化合物が好ましい。
式中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。
式中、Lは、単結合、−(CH2xO−(xは2〜10の整数であり、好ましくは2〜6である。)又は、−(CH2CH2O)y−(yは1〜5の整数であり、好ましくは1〜3である。)を表し、−(CH2xO−が好ましい。
式中、R2は、置換されていてもよいアミノ基、または炭化水素基を表す。
式中、Mは、下記一般式(X)で表される構造を表す。
式中、*は、L及びR2との結合部を表し;Yは、アゾ基、−OCO−、−CO(=O)−、−OCO−CH=CH−又は−CH=CH−CO2−を表し、mは2〜9の整数を表し、複数あるYが同じでも異なっていてもよく;Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基(好ましくはフェニレン基)を表す。
上記式IXで表される高分子化合物の好ましい例として、下記式(IX−a)で表される高分子化合物が挙げられる。
式中、上記式IX中と同一の記号はそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
式中、m1は1または2を表し、m2は1または2を表す。
a、Rb、及びRcはそれぞれ置換基(好ましくは、炭素原子数1〜2のアルキル基、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子))を表す。
x、y、及びzはそれぞれ、0〜4の整数を表し、0が好ましい。
また、上記式IXで表される高分子の好ましい例には、Yとして、−OCO−CH=CH−基又は−CH=CH−CO2−基を含む、下記式(IX−b)及び(IX−c)で表される高分子が含まれる。
式中、上記式IX中と同一の記号はそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
式中、m1は0〜2の整数を表し、m2は1〜2の整数を表す。Ra、Rb、及びRcはそれぞれ置換基(好ましくは、炭素原子数1〜2のアルキル基、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子))を表し;x、y、及びzはそれぞれ、0〜4の整数を表す。
側方結合型の高分子化合物としては、下記一般式XIで表される化合物が好ましい。
式中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。
式中、Lは、単結合、−(CH2xO−(xは2〜10の整数であり、好ましくは2〜6である。)又は、−(CH2CH2O)y−(yは1〜6の整数であり、好ましくは3〜6である。)を表す。
式中、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基(好ましくは炭素原子数が1〜5であり、特に好ましくは1〜3である。)、炭素原子数1〜9のアルコキシ基(好ましくは炭素原子数が1〜4であり、特に好ましくは1〜2である。)又は置換基を有していてもよいアミノ基を表す。
式中、Y1及びY2は、それぞれ独立に、アゾ基、−OCO−CH=CH−又は−CH=CH−CO2−を表し、m1及びm2は、それぞれ独立に、1〜2の整数を表す。m1又はm2が2の場合は、複数あるY1又はY2が同じでも異なっていてもよい。
上記高分子化合物の合成方法としては、実験化学講座(第4版28.高分子合成、120−160頁)等に記載の方法を適宜用いることが可能である。
上記高分子化合物の例としては、特開2011-237513号公報の段落番号0053〜0055に記載の化合物を挙げることができるが、本発明で用いる高分子化合物は、側鎖の末端にシアノ基を有さない化合物が好ましい。
本発明で用いる上記高分子化合物の質量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは10000〜100000であり、より好ましくは10000〜50000であり、更に好ましくは10000〜30000である。
本発明の位相差フィルム中における上記高分子化合物の含有量は、71質量%以上であり、75質量%が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。上記高分子化合物の含有量の上限は99.9質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく。97質量%以下がより好ましい。2種以上を併用する場合はその合計量が上記含有量となることが好ましい。
<配向制御剤>
本発明で用いる配向制御剤は、高分子化合物が光配向する際に配向状態に影響を及ぼす化合物である。配向制御剤としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることが好ましい。「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性複素環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが好ましい。
芳香族性複素環は一般に、不飽和複素環である。芳香族性複素環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。複素環のヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性複素環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合ベンゼン環、ビフェニール類が好ましい。
芳香族環としては、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。
具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
配向制御剤が有する芳香族環の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが特に好ましい。芳香族環の環を構成する原子数は、好ましくは5〜7員環であり、より好ましくは5員環又は6員環である。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環及びチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環及びキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基及び2−ジエチルアミノエチル基の各基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基及び1−ヘキセニル基が含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基及び1−ヘキシニル基が含まれる。
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基及びブタノイル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例えば、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びメトキシエトキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基及びエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基及びオクチルチオ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基及びエタンスルホニル基が含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基及びn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及び2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基及びジエチルカルバモイル基が含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基及びジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基及びモルホリノ基が含まれる。
配向制御剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
配向制御剤は、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
上記一般式(I)中:
201は、各々独立に、オルト位、メタ位及びパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族炭化水素環または複素環を表す。
201は、各々独立に、単結合または−NR202−を表す。ここで、R202は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、芳香族炭化水素環基または複素環基を表す。
201が表す芳香族炭化水素環は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。R201が表す芳香族炭化水素環はいずれかの置換位置に少なくとも一つの置換基を有してもよい。上記置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルケニル基、芳香族炭化水素環基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基及びアシル基が含まれる。
201が表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが特に好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジルまたは4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記芳香族炭化水素環の置換基の例と同様である。
201が単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基である
ことが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが特に好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。ここで、−C49 nは、n−C49を示す。
202が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよい
が、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8がさらにまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)及びアシルオキシ基(例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)が含まれる。
202が表すアルケニル基は、環状アルケニル基であっても鎖状アルケニル基であって
もよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがさらにまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様である。
202が表す芳香族炭化水素環基及び複素環基は、R201が表す芳香族炭化水素環及び複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族炭化水素環基及び複素環基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例にはR201の芳香族炭化水素環及び複素環の置換基と同様である。
一般式(I)で表される化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。配向制御剤の詳細は公開技報2001−1745の49頁に記載されている。また上記特許公報では光学発現剤として記載されている。
本発明の位相差フィルム中における配向制御剤の含有量は、上記の高分子化合物100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部がさらに好ましい。配向制御剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合はその合計量が上記含有量を満たすことが好ましい。
<組成物>
本発明の組成物(以下、「位相差フィルム用組成物」ともいう。)は、上記高分子化合物と上記配向制御剤とを含む。
位相差フィルム用組成物中における上記高分子化合物の含有量は、組成物中の全固形分に対して71質量%以上であり、75質量%が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。上記高分子化合物の含有量の上限は99.9質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく。97質量%以下がより好ましい。
位相差フィルム用組成物中における配向制御剤の含有量は、位相差フィルム用組成物中における上記高分子化合物の含有量100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部がさらに好ましい。
本発明の組成物は、必要に応じて溶媒を含むことができる。溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、複素環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。溶媒の使用量は特に限定されないが、固形分濃度が好ましくは1〜30質量%、より好ましくは 1〜10質量%となる量で使用することができる。
<位相差フィルムの製造方法>
本発明の位相差フィルムの製造方法は、上記した位相差フィルム用組成物を基板上に塗布する工程と塗布した組成物を光照射する工程を少なくとも含む。本発明の位相差フィルムの製造方法は、基板上に塗布した組成物を40℃以上で加熱する工程と、加熱後の組成物を300〜30000mJ/cm2で偏光照射する工程とをさらに含むことが好ましい。
<<位相差フィルム用組成物を基板上に塗布する工程>>
位相差フィルム用組成物は、例えば、ポリマーフィルム、ガラス板、石英板等の基板の表面に、又は必要であれば、基板上に形成された配向膜表面に塗布することが好ましい。塗布は、スピンコート、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられ、ワイヤーバーコート法が好ましい。塗布量は、所望の厚さの位相差フィルムを製造できるように調節することが好ましい。
<<基板上に塗布した組成物を加熱する工程>>
本発明の製造方法は、上記の塗布工程で塗布された組成物を乾燥する工程を有することが好ましい。乾燥工程は、加熱したホットプレートで、塗布膜(塗布された組成物)を有する基板を加熱する方法などにより行うことができる。乾燥工程は所定の温度の風を塗布膜にあてることによって行うこともできる。
加熱温度は40℃以上が好ましく、40〜80℃がより好ましく、50℃〜70℃がさらに好ましい。加熱時間は5秒〜600秒が好ましく、5秒〜200秒がより好ましく、10秒〜100秒間がさらに好ましい。
<<塗布した組成物を300〜30000mJ/cm2で光照射する工程>>
光照射する工程では、基板上に形成したフィルムに光照射を施す。
光照射は非偏光でも偏光でもよいが、偏光を用いることが好ましく、直線偏光を用いることがさらに好ましい。偏光照射を用いることにより、フィルムの偏光性を発現させ、偏光性が制御された位相差フィルムを製造することができる。
直線偏光照射とは、光反応を生じさせるための操作である。用いる光の波長は、用いるアゾ基および/またはシンナメート基を有する高分子化合物により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。好ましくは、光照射に用いる光のピーク波長が200〜700nmであり、より好ましくは光のピーク波長が400nm以下の紫外光である。
直線偏光を得る手段としては、偏光板を(例えば、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板、ワイヤーグリッド偏光板) 用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム) やブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、又は偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルターや波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、カーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー( 例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)レーザー)、発光ダイオード、陰極線管などを挙げることができる。
高分子化合物に直線偏光を照射すると、分子長軸がその電場ベクトルに平行に配置されているアゾ基またはシンナメート基が優先的に光子を吸収して、トランス体からシス体への異性化が起こり、二色性が発生する。またこのとき位相差層の遅相軸は、直線偏光に対して平行である。
照射する光は、上記フィルムに対して上面、又は裏面からフィルムに対して垂直、又は斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、アゾ基および/またはシンナメート基を有する高分子化合物の種類によって異なるが、例えば、高分子フィルムの表面に対して0〜80°、好ましくは40〜80、より好ましくは50〜70°である。
光照射量は好ましくは300〜30000mJ/cm2であり、より好ましくは1000〜20000mJ/cm2である。光照射量を調節することにより、高分子化合物中のアゾ基又はシンナメート基の配向状態を変化させ、位相差フィルムのNz値を調節することができる。本発明においては、位相差フィルムに必要とされるNz値に応じて、光照射量を調節することによって、所望のNz値を有する位相差フィルムを製造することができる。
[偏光板]
本発明の位相差フィルムは、特に偏光板保護フィルムとして有用である。本発明の偏光板の製造方法は特に限定されず、一般的な方法で製造することができる。本発明の位相差フィルムを必要によりアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の表面に接着剤を用いて貼り合わせる方法がある。接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は、偏光子及びその両面を保護する2枚の偏光板保護フィルムで構成されており、本発明の位相差フィルムは上記2枚の偏光板保護フィルムのうちの少なくとも一方として使用することができる。
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、上記した本発明の位相差フィルム又は偏光板を有する。
液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光子、および液晶セルと偏光子との間に少なくとも一枚の位相差フィルムを配置した構成を有している。液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、好ましくは50μm〜2mmの厚さを有する。
表示モードとしては、例えば、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。これらのモードのうち、特にIPSモードの液晶表示装置に好ましく用いられる。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型および半透過型のいずれでもよい。液晶表示装置については、例えば、特開2010−79239号公報の段落0136〜0142の記載を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
<アルカリ鹸化処理した透明支持体の作製>
TD60UL(富士フイルム(株)製)を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理した支持体を作製した。
─────────────────────────────────────
アルカリ溶液組成
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・水酸化カリウム 4.7質量部
・水 15.8質量部
・イソプロパノール 63.7質量部
・界面活性剤SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
・プロピレングリコール 14.8質量部
─────────────────────────────────────
<配向膜の形成>
アルカリ鹸化処理した支持体のアルカリ鹸化処理を行った面に、下記組成の配向膜塗布液(A)を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥した。使用した変性ポリビニルアルコールの鹸化度は96.8%であった。
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配向膜塗布液(A)の組成
───────────────────────────────────────
・下記の変性ポリビニルアルコール(a/b/c=12/88/0) 10質量部
・水 308質量部
・メタノール 70質量部
・イソプロパノール 29質量部
・光重合開始剤(イルガキュアー(登録商標)2959、BASF社製)0.8質量部
───────────────────────────────────────
<位相差フィルム用組成物の調製>
<<実施例1>>
下記高分子化合物1を100質量部と、下記配向制御剤1を20質量部と、メチルエチルケトン775質量部を混合して、実施例1の位相差フィルム用組成物を調製した。
高分子化合物1:質量平均分子量24000
配向制御剤1
<<比較例1>>
下記液晶性化合物1を91質量部と、下記低分子化合物1を5.2質量部、下記配向制御剤2を0.09質量部、下記配向制御剤3を0.25質量部、下記重合開始剤1を3質量部、下記増感剤を1質量部、メチルエチルケトン775質量部を混合して、比較例1の位相差フィルム用組成物を調製した。
液晶性化合物1
低分子化合物1
配向制御剤2(B1365、a/b=92/8、 和光純薬社製)
配向制御剤3(B1258、a/b/c=25/25 /50 、DIC(株)社製)
・光重合開始剤:PM2215(BASF社製)
・増感剤:PM758(日本化薬(株)社製)
<<比較例2>>
下記液晶性化合物2を75質量部と、下記液晶性化合物3を25質量部と、下記配向制御剤4を0.35質量部、上記光重合開始剤1を3質量部、上記増感剤を1質量部、及びメチルエチルケトン775質量部を混合して、比較例2の位相差フィルム用組成物を調製した。
液晶性化合物2
液晶性化合物3
・配向制御剤4(B1279、a/b= 32.5/67.5、和光純薬社製)
<位相差フィルムの製造>
<<実施例1>>
実施例1の位相差フィルムは以下の方法で作製した。
上記で作製した配向膜に、実施例1の位相差フィルム用組成物を、バー塗布により乾燥膜厚が0.4μmになるように塗布した。その後、高分子化合物の運動性を上げるために塗膜を60℃で30秒間搬送加熱した後、148mWの紫外線(UV)を表に記載の照射量になる時間で偏光板を通して照射した。これにより実施例1の位相差フィルムを製造した。
なお、本実施例では基材として配向膜を用いているが、ガラス基板上でも、一般的な偏光子の上でも同様に直接塗布し同等の性能をもつフィルムを作製することができる。
<<比較例1>>
比較例1の位相差フィルムは以下の方法で作製した。
上記で作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向とラビングローラーの回転軸とのなす角度が0°とした。次いで、比較例1の位相差フィルム用組成物を、上記のラビング処理した配向膜上に乾燥膜厚が0.4μmになるようにバー塗布をした。その後、塗布液の溶媒の乾燥および液晶化合物の配向熟成のために、130℃の温風で150秒間加熱し、80℃にてUV照射を行い、液晶化合物の配向を固定化し、位相差フィルムを作製した。
<<比較例2>>
比較例2の位相差フィルム用組成物を使用し、配向熟成のために60℃温風で150秒加熱、60℃でUV照射に条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、位相差フィルムを作製した。
<<実施例2>>
乾燥膜厚を1.5μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、位相差フィルムを作製した。
<<実施例3>>
乾燥膜厚を2.8μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、位相差フィルムを作製した。
<<比較例3>>
配向制御剤1を0質量部に変更して組成物を調整したこと以外は実施例1と同様にして、位相差フィルムを作製した。
<<実施例4>>
配向制御剤1の添加量を5質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、位相差フィルムを作製した。
<<比較例4>>
配向制御剤1の添加量を45質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、位相差フィルムを作製した。
<<比較例5>>
配向制御剤1の添加量を60質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、位相差フィルムを作製した。
<<実施例5>>
高分子化合物を下記高分子化合物2に変更したこと、乾燥膜厚を1.5μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、位相差フィルムを作製した。
高分子化合物2 重量平均分子量28600
<<比較例6>>
高分子化合物を下記高分子化合物3に変更したこと、乾燥膜厚を2.8μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、位相差フィルムを作製した。
高分子化合物3 重量平均分子量14700
<<比較例7>>
高分子化合物を下記4に変更したこと以外は実施例1と同様にして、位相差フィルムを作製した。
高分子化合物4 重量平均分子量44300
<<実施例6>>
高分子化合物を下記高分子化合物5に変更したこと、乾燥膜厚を1.5μmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、位相差フィルムを作製した。
高分子化合物5 重量平均分子量22000
<<比較例8>>
高分子化合物1の代わりに液晶性化合物2を75質量部と液晶性化合物3を25質量部とを用いたこと、配向制御剤1の添加量を5質量部にしたこと以外は、実施例1と同様にして、位相差フィルムを作製した。
<位相差フィルムの評価>
<<Re及びNz>>
波長550nmにおいてRe及びNzを、Axometics社のAxoscanを用いて測定を行った。
<<コントラスト>>
以下の方法で評価した。
位相差フィルムを2枚の偏光板の間に挟み、光輝度測定装置(トプコン社製BM5)により最大輝度及び最小輝度を測定し、下記式(1)によってフイルムコントラスト値を得た。
式(1):
フイルムコントラスト値=1÷[1÷[(平行ニコル状態の2枚の偏光板の間に配置された位相差フィルムの最小輝度)÷(クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に配置された位相差フィルムの最小輝度)]―1÷[(平行ニコル状態の2枚の偏光板の間に位相差フィルムが配置されないときの最小輝度)÷(クロスニコル状態の2枚の偏光板の間に位相差フィルムが配置されないときの最小輝度)]]
<偏光板の製造>
実施例及び比較例で製造した位相差フィルム及びフジタック(登録商標)TD60UL(富士フイルム(株)製)を37℃に調温した4.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(けん化液)に1分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を通した。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したフィルムを作製した。
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素1質量部、ヨウ化カリウム2質量部、及びホウ酸4質量部を含む水溶液に浸漬し、温度50℃で4倍に延伸し、偏光子を作製した。
上記で得た偏光子と、鹸化処理したフィルムのうちから2枚選び、これらで上記偏光子を挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とフィルムの長手方向とが直交するようにロールツーロールで貼り合わせて偏光板を作成した。ここで、偏光膜の一方のフィルムは、実施例又は比較例のフィルムを鹸化したフィルムとし、他方のフィルムはフジタックTD60ULを鹸化したフィルムとした。
また偏光板に直接位相差層を塗布し、熟成・乾燥、UV照射をした場合は、上記の偏光板作製工程は省略するものとする。
<液晶表示装置の製造>
iPad(登録商標、Apple社製)の液晶セルから視認側の偏光板を剥し、IPSモードの液晶セルとして利用した。
剥がした偏光板の代わりに、上記で作製した偏光板を液晶セルに貼合し、液晶表示装置をそれぞれ作製した。このとき、液晶セル基板面に対して垂直な方向から観察したとき、偏光板の吸収軸と、液晶セル内の液晶層の光軸とが垂直な方向になるように貼りあわせた。
貼り合せた液晶表示装置の電源をつけ、問題なく画像が表示されることを確認した。
(実施例のまとめ)
本発明の条件を満たす高分子化合物と配向制御剤とを含む実施例1〜6の位相差フィルムは、従来のような液晶性化合物を使用した位相差フィルムと比べると面内レタデーションを発現した状態において格段に高いコンストラストを達成でき、また従来は達成することが困難であったNzを0に近づけることを達成することができた。また、本発明で規定する高分子化合物を含まない比較例1、2及び8の位相差フィルムはコントラストが低く、またNzを0に近づけることができない。配向制御剤を含まない比較例3の位相差フィルムはNzを0に近づけることが出来ない。比較例4及び5の位相差フィルムは、本発明で規定する面内レタデーションを発現できていない。高分子化合物の側鎖中のアリーレン基の数が本発明で規定する範囲外である比較例6は本発明で規定する面内レタデーションを発現できない。高分子化合物の側鎖中のアリーレン基の数が本発明で規定する範囲外である比較例7の位相差フィルムは、コントラストが低く、またNzを0に近づけることが出来ない。

Claims (11)

  1. 高分子化合物と配向制御剤とを含む位相差フィルムであって、前記高分子化合物は、1個以上のアゾ基と3個以上10個以下のアリーレン基とを有する側鎖を有し、前記側鎖はさらに、置換されていてもよいアミノ基、または炭化水素基を末端に有し、前記位相差フィルム中における前記高分子化合物の含有量が71質量%以上であり、かつ波長550nmにおける面内レタデーションが10nm以上200nm以下である位相差フィルム。
  2. 前記高分子化合物は、一般式IXで示される化合物である、請求項1に記載の位相差フィルム:
    式中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、Lは、単結合、−(CH2xO−又は−(CH2CH2O)y−を表し、ここでxは2〜10の整数であり、yは1〜5の整数であり、R2は、置換されていてもよいアミノ基、または炭化水素基を表し、Mは、下記一般式Xで表される構造を表し、
    式中、*は、L及びR2との結合部を表し;Yは、アゾ基、−OCO−、又は−CO(=O)−を表し、mは2〜9の整数を表し、複数あるYが同じでも異なっていてもよく;Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
  3. 前記一般式IXで示される化合物は、一般式IX−aで示される化合物である、請求項2に記載の位相差フィルム:
    式中、m1は1または2を表し、m2は1または2を表し、Ra、Rb、及びRcはそれぞれ炭素原子数1〜2のアルキル基またはハロゲン原子を表し、x、y、及びzはそれぞれ、0〜4の整数を表す。
  4. 前記配向制御剤が、下記一般式Iで表される化合物である、請求項1から3の何れか一項に記載の位相差フィルム:
    式中、R201は、各々独立に、オルト位、メタ位及びパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族炭化水素環または複素環を表し、X201は、各々独立に、単結合または−NR202−を表し、ここで、R202は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、芳香族炭化水素環基または複素環基を表す。
  5. 前記配向制御剤の含有量が、前記高分子化合物100質量部に対して、0.1〜20質量部である、請求項1から4の何れか一項に記載の位相差フィルム。
  6. 単層フィルムである、請求項1から5の何れか一項に記載の位相差フィルム。
  7. Nzが−0.29〜0.29である、請求項1から6の何れか一項に記載の位相差フィルム;
    但し、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)であり、nxはフィルム面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyはフィルム面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
  8. 厚さが5μm以下である、請求項1から7の何れか一項に記載の位相差フィルム。
  9. 偏光子と、請求項1から8の何れか一項に記載の位相差フィルムとを有する、偏光板。
  10. 請求項1から8の何れか一項に記載の位相差フィルム又は請求項9に記載の偏光板を有する、液晶表示装置。
  11. IPS液晶表示装置である、請求項10に記載の液晶表示装置。
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