以下、本開示による運転支援車両(自車/自車両)の走行制御方法及び走行制御装置を実現する最良の実施形態を、図面に示す実施例1〜実施例4に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。実施例1における走行制御方法及び走行制御装置は、モータ駆動するハイブリッド車両(電動車両の一例)をベースとし、操舵/駆動/制動を外部制御することが可能な自動運転車両(運転支援車両の一例)に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「自動運転システム構成」、「自動運転用認識判断プロセッサの詳細構成」、「自動運転車両の走行制御処理構成」に分けて説明する。
[自動運転システム構成]
図1は、実施例1の自動運転車両の走行制御方法及び走行制御装置が適用された自動運転車両の自動運転システム構成を示す。以下、図1に基づき、自動運転システムの全体構成を説明する。
自動運転システムは、認識センサ1(障害物検出部)と、GPS/ナビゲーションシステム2(ルート設定部)と、自動運転用認識判断プロセッサ3(コントローラ)と、地図データ4(道路形状取得部)と、を備えている。また、自動運転システムは、自動運転用制御コントローラ5(車両制御部)と、電動パワーステアリング6と、駆動/回生モータ7と、油圧ブレーキ8と、を備えている。つまり、自動運転用認識判断プロセッサ3と、各制御指令値を計算して各アクチュエータECUへ送信する自動運転用制御コントローラ5が処理系として車載されている。なお、各アクチュエータECUの記載は省略する。
認識センサ1は、自車前方や自車後方等の自車周囲の外部環境(走路境界等)を認識するために設けられたセンサである。また、認識センサ1は、自車周辺の障害物を検出するセンサでもある。代表的には、自車前部と自車後部にそれぞれ搭載された車載カメラやレーザーレーダ等をいう。ここで、「走路境界」とは、道路幅・道路形状・車線などの境界のことである。
GPS/ナビゲーションシステム2のうちGPSは、自車に搭載され、走行中の自車の走行位置(緯度・経度)を検出する位置検出手段である。なお、「GPS」は、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System)の略称である。また、ナビゲーションシステム(ルート設定部)は、乗員又は車外オペレータの目的地入力に基づき、初期地から目的地に至るまでのルートを自動で算出するルート設定手段である。このルートの定義として、初期地から目的地に至るまでの各分岐点を、経路長や道路幅、一方通行などの交通ルールや、工事中や渋滞中などの交通変化を総合的に考慮して繋ぎ合わせてできあがるものとする。また、分解能は分岐点を繋いだレベルのもので、どの車線を通るか、どんなライン取りで通るかまでの詳細化は、されていないものとする。このルートの設定方法に関しての詳細な記述は省略する。
自動運転用認識判断プロセッサ3は、地図データ4やGPS/ナビゲーションシステム2や認識センサ1の情報を統合処理し、目標速度プロファイル(=目標車速プロファイル)等の各プロファイルの計算をする。つまり、乗員等が指定した目的地までの基本ルートと車速を、車載メモリに格納された地図データ4に基づいて算出する。また、GPSによる位置情報に基づいて基本ルートと車速に従いながら、車載した認識センサ1による車両周囲のセンシング結果に基づいて、近傍の目標走行経路(目標経路)や目標速度(目標車速)をプロファイルとして逐次修正する。
地図データ4は、車載メモリに格納され、勾配や制限速度等の道路情報が書き込まれた地図データである。この地図データ4は、GPSにて走行中の自車の走行位置が検出されると、自車の走行位置を中心とする地図情報が自動運転用認識判断プロセッサ3から読み出される。
自動運転用制御コントローラ5は、自動運転用認識判断プロセッサ3からのプロファイル情報(目標走行経路や目標車速等)に基づいて、操舵量・駆動量・制動量の各指令値を決める。操舵制御は、操舵アクチュエータである電動パワーステアリング6で行うものとする。駆動制御は、駆動源アクチュエータである駆動/回生モータ7で行うものとする。制動制御は、駆動/回生モータ7による回生分と油圧ブレーキ8によるメカブレーキ分の配分で行うものとする。なお、操舵制御、駆動制御、制動制御は、アクチュエータ毎に設けられた各ECUで行われる。
電動パワーステアリング6は、自動運転用制御コントローラ5からの制御指令値にしたがって自動操舵する操舵アクチュエータである。電動パワーステアリング6は、旋回目標値が算出されると、旋回目標値を実現するため、自車の転舵(駆動輪転舵)と各輪に発生する制駆動力差の少なくとも一方に基づいて、旋回制御を行う。
駆動/回生モータ7は、自動運転用制御コントローラ5からの制御指令値にしたがって駆動による定速走行や加速走行、或いは、回生による減速走行を行う駆動源アクチュエータである。
油圧ブレーキ8は、自動運転用制御コントローラ5からの制御指令値にしたがって油圧制動を作動させるブレーキアクチュエータである。
[自動運転用認識判断プロセッサの詳細構成]
図2は、実施例1の自動運転用認識判断プロセッサにて実行される自動運転車両の走行制御処理のブロック図を示す。以下、図2に基づき、自動運転用認識判断プロセッサの詳細構成を説明する。
自動運転用認識判断プロセッサ3は、走路境界補間部31と、左右旋回ポイント検出部32と、対向車線ランドマーク判定部33と、障害物判定部34と、目標走行経路生成部35と、目標プロファイル生成部36と、を備えている。なお、自動運転用認識判断プロセッサ3には、ルート等の情報が入力される。
走路境界補間部31は、認識センサ1や地図データ4等からランドマーク情報を入力する。走路境界補間部31は、走路境界を規定するランドマークが無いエリア(図4A〜Dを参照)では、取得できたランドマーク情報から走路境界の補間を行う(図5A〜Dを参照)。この走路境界補間部31は、走路境界の補間結果を、左右旋回ポイント検出部32へ出力する。
ここで、「ランドマーク情報」は、走路境界を規定する情報である。この情報の対象としては、路面ペイントによる区画線、縁石や壁、ポールやガードレールなどの立体物の他、側溝などが挙げられ、車両が物理的に進入できない境界、もしくは交通ルール的に進入してはいけない境界を規定するものである。また、導流帯(ゼブラゾーン)のように、交通ルールとして進入は禁止されていないが、心理的に進入を妨げる境界も含まれる。
左右旋回ポイント検出部32は、認識センサ1や地図データ4等の道路情報と、走路境界の補間結果と、を入力する。左右旋回ポイント検出部32は、道路情報や補間結果、自車前方の走路を構成する走路境界に対して、所定距離の間に存在する曲率の変曲ポイントとその数を検出する。また、左右旋回ポイント検出部32は、検出された変曲ポイントの数が、2つ以上(複数)か否かを判定する。この左右旋回ポイント検出部32は、変曲ポイントの検出結果を、対向車線ランドマーク判定部33と目標走行経路生成部35へ出力する。
対向車線ランドマーク判定部33は、ランドマーク情報から、対向車線を規定する対向車線ランドマークが存在するか否かを判定する。この対向車線ランドマーク判定部33は、対向車線ランドマーク有り信号又は無し信号を、目標走行経路生成部35へ出力する。対向車線ランドマーク判定部33は、対向車線ランドマーク有り信号を、障害物判定部34へ出力する。
障害物判定部34は、認識センサ1の障害物情報から、自車前方の対向側に障害物の有無を判定する。この障害物判定部34は、障害物有り信号又は無し信号を、目標走行経路生成部35へ出力する。
目標走行経路生成部35は、地図データ4やGPS/ナビゲーションシステム2や認識センサ1の情報(自車周囲の環境情報等)を入力する。また、目標走行経路生成部35は、変曲ポイントの検出結果と、対向車線ランドマーク有り信号又は無し信号と、障害物有り信号又は無し信号と、を入力する。目標走行経路生成部35は、これらの情報等に基づいて、目標走行経路としての第1目標走行経路又は第2目標走行経路を生成する。即ち、目標走行経路生成部35は、ルートを基準に、自車が将来通過する自車将来位置と自車の通過時の自車将来姿勢を設定する。次に、目標走行経路生成部35は、自車の現時点における現在位置及び現在姿勢と自車将来位置及び自車将来姿勢とを滑らかに繋ぐことにより、第1目標走行経路又は第2目標走行経路を生成する。この目標走行経路生成部35は、第1目標走行経路又は第2目標走行経路を、目標プロファイル生成部36へ出力する。
目標プロファイル生成部36は、第1目標走行経路又は第2目標走行経路等に基づいて、目標走行経路プロファイルと目標速度プロファイルと舵角プロファイル等を生成する。この目標プロファイル生成部36は、生成した目標走行経路プロファイルと目標速度プロファイルと舵角プロファイル等を、自動運転用制御コントローラ5へ出力する。
[自動運転車両の走行制御処理構成]
図3は、実施例1の自動運転用認識判断プロセッサにて実行される自動運転車両の走行制御処理の流れを示す。即ち、図3は、図2における自動運転車両の走行制御処理の流れを示す。以下、自動運転車両の走行制御処理構成をあらわす図3に示すフローチャートの各ステップについて、図3〜図7に基づき説明する。なお、図3に示す自動運転車両の走行制御処理は、所定の制御周期にて繰り返し実行される。また、図4〜図7において、自車を「A1」で示し、対向車(対向車両、障害物)を「A2」で示す。
図3のフローチャートでは、ルートが設定済みで、自動運転に必要な条件が満たされ、自動運転モードで走行中の状態からのものとする。なお、自動運転の性能向上のため、GPSは高精度に位置情報を取得できるシステムであり、地図データ4は現実環境を正しく高精度に表したデジタルデータであるとする。
ステップS11では、走路情報を取得し、走路境界の補間を行って、ステップS12へ進む。即ち、ステップS11では、設定されたルートに従い、自車近傍のルートの両脇に存在する、走路境界を規定するランドマーク情報を、認識センサ1及び地図データ4から取得する。また、ステップS11では、図4A〜Dに示すように、走路境界を規定するランドマークが無いエリアでは、図5A〜Dに示すように、取得できたランドマーク情報から走路境界の補間を行う。ステップS11のうち、走路境界の補間が走路境界補間部31に相当する。以下、走路境界の補間について説明する。
まず、ランドマーク情報を、認識センサ1の情報から、実環境としての走路境界を規定する第1ランドマーク情報と、GPSのデータと地図データ4を照合して、ルート両脇の走路境界を規定する第2ランドマーク情報と、とする。
この第1ランドマーク情報と第2ランドマーク情報との使い分けは、認識センサ1で自車近傍の第1ランドマーク情報を検出可能な部分は、第1ランドマーク情報を利用する。一方、認識センサ1で自車遠方もしくはオクル―ジョンにより第1ランドマーク情報を検出できていない部分は、第2ランドマーク情報を利用する。なお、「オクル―ジョン」とは、第1ランドマークが障害物等により遮られてしまい、認識センサ1で認識できないことである。
具体的には、図4Aのようなクランク路で、中央線が無くかつ一方通行ではなく対向車A2が走行しうるシーンにおいて、第1ランドマーク情報として道路幅RWのみを取得できた場合は、図5Aに示すように、道路幅RWの半分の幅を走行路Cとして設定する。なお、図4BのようなS字カーブ路では図4Aと同様に、図5Bに示すように、道路幅RWの半分の幅を走行路Cとして設定する。
また、図4Cのような変則的な形をした交差点や丁字路で、中央線が無くかつ一方通行ではなく対向車A2が走行しうるシーンにおいて、進入手前の道幅RW1と進入後の道幅RW2とルートに対して反対側のランドマーク情報を取得できた場合について説明する。この図4Cのような場合、それらの取得できたランドマーク情報を基に、図5Cに示すように、スプライン曲線や多項式関数等の曲線表現で滑らかに繋ぎ合わせを行う。
さらに、図4Dのような変則的な形をした交差点や丁字路で、交差点や丁字路の真ん中でランドマーク情報が切れるような道路シーンについて説明する。このシーンにおいて、切れる前後の第1ランドマーク情報M1とルートに対して反対側の第2ランドマーク情報M2を取得できた場合について説明する。この図4Dのような場合、それらの取得できたランドマーク情報を用いて、図5Dに示すように、スプライン曲線や多項式関数等の曲線表現で切れる前後の間を滑らかに繋ぎ合わせる。
ステップS12では、ステップS11での走路情報の取得と走路境界の補間に続き、変曲ポイントが2つ以上検出されたか否かを判定する。YES(変曲ポイント複数有り)の場合はステップS13へ進み、NO(変曲ポイント複数無し)の場合はステップS15へ進む。なお、ステップS12が、左右旋回ポイント検出部32に相当する。
ここで、「変曲ポイント」とは、ステップS11で取得した自車前方の走路を構成する走路境界の曲率に注目し、曲率変化率がピークとなるポイントである。そして、自車直近の変曲ポイントから、所定の距離までの間に2つ以上の変曲ポイントがあるか否かを判定する。また、「所定の距離」の区間長は、自車走行速度に応じて可変とし、自車走行速度が小さいほど区間長は短く設定される。なお、この時の距離の定義は、走路境界に沿って換算された距離が理想的であるが、計算負荷低減のために、自車を中心に円状に広げた距離を代替利用することも可能である。また、走路境界の左右のどちら側を使って判定するかは、実際のランドマーク数が多い方を優先して判定する。具体的には、図6A〜Dに示す道路の長さが区間長である。この図6A〜Dの左側の走路境界を使って変曲ポイントIPを検出・判定すると、図6Aの場合は、変曲ポイントIPが1つと検出されるので、変曲ポイント複数無しと判定される。また、図6B〜Dの場合は、いずれの場合も変曲ポイントIPが2つと検出されるので、変曲ポイント複数有りと判定される。
ステップS13では、ステップS12での変曲ポイント複数有りとの判定に続き、対向車線ランドマークMMが存在するか否かを判定する。YES(対向車線ランドマーク有り)の場合はステップS15へ進み、NO(対向車線ランドマーク無し)の場合はステップS14へ進む。なお、ステップS13が、対向車線ランドマーク判定部33に相当する。
ここで、「対向車線ランドマークMM」とは、自車走行車線と対向車線とを規定する路上ランドマークであって、実際のランドマークである。例えば、図7の対向車線ランドマークMMである。この情報は、ステップS11で取得した走路情報である。また、図5A〜Cに示すように、走路境界の補間が行われた場合は、対向車線ランドマーク無しと判定される。
ステップS14では、ステップS13での対向車線ランドマーク無しとの判定に続き、自車前方の対向側に障害物が無いか否かを判定する。YES(障害物無し)の場合はステップS16へ進み、NO(障害物有り)の場合はステップS15へ進む。なお、ステップS14が、障害物判定部34に相当する。
ここで、「自車前方の対向側」とは、左側通行の場合は右側が対向側となり、右側通行の場合は左側が対向側となる。また、「障害物」は、自車に接近する方向に移動する障害物のことである。例えば、対向車線を走行する対向車A2である(図4〜図7参照)。
次のステップS15とステップS16は共に、目標走行経路を生成するステップである。このため、両ステップに共通する事項を説明してから、それぞれのステップについて説明する。
「目標走行経路」は、地図データ4やGPSや認識センサ1の情報を、最適化計算に基づいた手法や、複数経路の中から最も評点の良い経路を選択する手法などにより目標走行経路を生成する。目標走行経路生成時には、予め設定した目的地までのルートを基準に生成する。目標走行経路生成時の指標としては、車が走行できる道路境界を超えないこと、他車両や歩行者等の自車周囲に存在する立体障害物と接触しないこと、を前提として、その他、経路曲率が過大にならないことなどを加味する。
また、目標走行経路は、図7に示すように、経路生成時点での自車位置を原点として、自車の向き方向をx、自車の幅方向をyとして座標を設定し、その座標上で、等間隔もしくはある規則に従って区切られた離散的なノード情報で扱われる。また、実施例1では、目標走行経路を構成する各ノードは、2次元座標情報であるxiとyiが記録されている。なお、各情報は、自車が経路端に到達するまで、不図示の記録部に記録される。
ステップS15では、ステップS12での変曲ポイント複数無しとの判定、ステップS13での対向車線ランドマーク有りとの判定、或いは、ステップS14での障害物有りとの判定に続き、走路境界に沿った第1目標走行経路を生成し、エンドへ進む。なお、ステップS15が、目標走行経路生成部35に相当する。
この第1目標走行経路が生成される場合は、ステップS12での変曲ポイント複数無いと判定された場合、ステップS13での対向車線ランドマーク有りと判定された場合、又は、ステップS14で障害物無しと判定された場合である。ここで、「第1目標走行経路」は、ルートを基準に、自車が追従可能で、走路境界からの逸脱や障害物との接触のない及び接触するおそれのない直近の経路である。即ち、走路境界を逸脱しない範囲の経路である。つまり、第1目標走行経路生成時の指標の中で、「車が走行できる道路境界を超えないこと」という指標が、「車が走行する走路境界を超えないこと」となる。
ステップS16では、ステップS14での障害物無しとの判定に続き、第1目標走行経路よりも曲率を抑えた第2目標走行経路を生成し、エンドへと進む。なお、ステップS16が、目標走行経路生成部35に相当する。
この第2目標走行経路が生成される場合は、ステップS12での変曲ポイント複数有りと判定され、ステップS13での対向車線ランドマーク無しと判定され、ステップS14で障害物無しと判定された場合である。このため、実際の対向車線ランドマークMMはなく、自車前方の対向側の障害物を気にする必要がないシーンである。これにより、ステップS11で走路境界を補間した部分に関しては、交通ルール上も超えて問題はなく、「車が物理的に走行できる道路境界を超えないこと」が第2目標走行経路生成時の指標となる。
次に作用を説明する。
実施例1の作用を、「自動運転車両の走行制御処理作用」、「自動運転車両の走行制御の特徴作用」に分けて説明する。
[自動運転車両の走行制御処理作用]
以下、図3のフローチャートについて、図3と図6と図8〜図10に基づいて、自動運転車両の走行制御の処理作用を説明する。また、図8〜図10において自車の現在位置を「A1」で示し、図8と図9において車の進行方向を「DM」で示し自車将来位置を「P11〜P13」で示し、図8と図10において対向車(対向車両、障害物)を「A2」で示す。
まず、図6Aのように変曲ポイントIPが1つのときは、ステップS11→ステップS12→ステップS15→エンドへと進む。このとき、ステップS15では、図8Aに示す第1目標走行経路R1が生成される。
次に、図6Bのように変曲ポイントIPは2つあるが、対向車線ランドマークMMが存在するときは、ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS15→エンドへと進む。このとき、ステップS15では、図8Bに示す第1目標走行経路R1が生成される。
次に、図6Bのように変曲ポイントIPは2つあり、対向車線ランドマークMMは無いが、自車前方の対向側に対向車A2が有るときは、ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS14→ステップS15→エンドへと進む。このとき、ステップS15では、図8Bと同様に、図8Cに示す第1目標走行経路R1が生成される。
次に、図6Bのように変曲ポイントIPは2つあり、対向車線ランドマークMMは無く、自車前方の対向側に対向車A2が無いときは、ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS14→ステップS16→エンドへと進む。このとき、ステップS16では、図9に示す第2目標走行経路R2が生成される。
ここで、第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2について、変曲ポイントIPを基準に比較する。例えば、図8Cと同条件の図10Aに示すように、第1目標走行経路R1(一点鎖線)では、各変曲ポイントIP1,IP2と第1目標走行経路R1との相対距離D1,D2は、相対距離D2よりも相対距離D1の方が長くなる(D1>D2)。これに対し、各変曲ポイントIP1,IP2と第2目標走行経路R2(破線)との相対距離D1´,D2´は、図9と同条件の図10Bに示すようになる。即ち、第2目標走行経路R2では、第1目標走行経路R1と比較すると、各変曲ポイントIP1,IP2と第2目標走行経路R2との相対距離D1´,D2´は、一方の変曲ポイントIP1とは長く(D1<D1´)、他方の変曲ポイントIP2とは短くなる(D2>D2´)。即ち、自車が走行する経路において、手前側の変曲ポイントIP1とは長く(D1<D1´)、奥側の変曲ポイントIP2とは短くなる(D2>D2´)。このため、第2目標走行経路は、各変曲ポイントIP1,IP2との相対距離を変えることにより、第1目標走行経路よりも曲率を抑えた経路となる。なお、図10Aと図10Bの道路形状等は同一である。
このように、短い区間に変曲ポイントが複数存在するルートを走行するとき、変曲ポイントIPの数と対向車線ランドマークMMの有無と対向車A2の有無により、第1目標走行経路R1又は第2目標走行経路R2が生成される。即ち、第1目標走行経路R1が生成されるときは、走路境界に沿った経路が生成されるので、自車A1と対向車A2の接近が抑制される。また、第2目標走行経路R2が生成されるときは、曲率を抑えた経路が生成されるので、過大な車両挙動が抑制される。従って、短い区間に変曲ポイントが複数存在する道路を走行するとき、過大な車両挙動と、自車A1と対向車A2の接近と、が抑制される。加えて、対向車線を規定する対向車線ランドマークMMが有る場合は、走路境界に沿った第1目標走行経路R1が生成されるので、対向車線ランドマークMMから自車がはみ出すことなく交通ルールを守った走行を可能とする。
なお、ステップS15での第1目標走行経路R1の生成の後、又はステップS16での第2目標走行経路R2の生成の後は、エンドへ進む。この後は、生成された目標走行経路が自動運転用認識判断プロセッサ3のメモリ上に格納される。次いで、生成された目標走行経路と自車の現在運動情報に基づいて、前方注視点が設定され、旋回目標値が算出される。その後、自動運転用制御コントローラ5にて、電動パワーステアリング6の操舵角目標値(操舵量の指令値)が算出され、これを外部指令情報として電動パワーステアリング6の操舵制御がECUで行われる。
[自動運転車両の走行制御の特徴作用]
実施例1では、変曲ポイントIPが2つ以上無いとき、又は、障害物有りと判定されるとき、ルートを基準に第1目標走行経路R1が生成される。変曲ポイントが2つ以上有り、かつ、障害物A2無しと判定されるとき、第2目標走行経路R2が生成される。第2目標走行経路R2では、第1目標走行経路R1を生成する場合よりも、各変曲ポイントIP1,IP2と第2目標走行経路R2との相対距離D1´,D2´は、一方の変曲ポイントIP1とは長く(D1<D1´)、他方の変曲ポイントIP2とは短くなる(D2>D2´)。即ち、第1目標走行経路R1が生成されるときは、走路境界に沿った経路が生成されるので、自車A1と対向車A2の接近が抑制される。また、第2目標走行経路R2が生成されるときは、曲率を抑えた経路が生成されるので、過大な車両挙動が抑制される。この結果、短い区間に変曲ポイントIPが複数存在する道路を走行するとき、乗員に与える違和感が抑制される。
実施例1では、所定距離の区間長は、自車走行速度に応じて可変とし、自車走行速度が小さいほど区間長が短く設定される。従って、自車走行速度に応じて適切な経路が生成される。
実施例1では、ランドマークが無い箇所に関しては、走路境界を規定する反対側のランドマーク又はランドマークが途切れる前後のランドマークで補間が行われる。従って、走路境界を規定するランドマークがない道路に関しても、適切に経路の生成が行える。
次に、効果を説明する。
実施例1の自動運転車両の走行制御方法及び走行制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 目標走行経路に基づいて、自車旋回のための制御を行うコントローラ(自動運転用認識判断プロセッサ3)を備える。
この運転支援車両(自動運転車両)の走行制御方法において、目的地までのルートを設定する。
ルート周囲の道路情報を取得する。
自車A1周辺の障害物(対向車A2)を検出する。
道路情報から、自車A1前方の走路を構成する走路境界に対して、所定距離の間に存在する曲率の変曲ポイントIPを検出する。
自車A1前方の対向側に障害物(対向車A2)の有無を判定する。
変曲ポイントIPが2つ以上無いとき、又は、障害物(対向車A2)有りと判定されたとき、ルートを基準に第1目標走行経路R1を生成する。
変曲ポイントIPが2つ以上有り、かつ、障害物(対向車A2)無しと判定されたとき、第2目標走行経路R2を生成する。第2目標走行経路R2では、第1目標走行経路R1を生成する場合よりも、各変曲ポイントIP1,IP2の相対距離D1´,D2´を、一方の変曲ポイントIP1とは長く(D1<D1´)、他方の変曲ポイントIP2とは短くなる(D2>D2´)。
このため、短い区間に変曲ポイントIPが複数存在する道路を走行するとき、乗員に与える違和感を抑制する運転支援車両(自動運転車両)の走行制御方法を提供することができる。
(2) 所定距離の区間長は、自車走行速度に応じて可変とし、自車走行速度が小さいほど区間長を短く設定する。
このため、(1)の効果に加え、自車走行速度に応じて適切な経路を生成することができる。
(3) ルート周囲の道路情報のうち走路境界として、ルートの左右方向に存在する走行車線を規定するランドマークを参照する。
ランドマークが無い箇所に関しては、走路境界を規定する反対側のランドマーク又はランドマークが途切れる前後のランドマークで補間を行う。
このため、(1)〜(2)の効果に加え、走路境界を規定するランドマークがない道路に関しても、適切に経路の生成を行うことができる。
(4) 目標走行経路に基づいて、自車旋回のための制御を行うコントローラ(自動運転用認識判断プロセッサ3)を備える。
この運転支援車両(自動運転車両)の走行制御装置において、コントローラ(自動運転用認識判断プロセッサ3)は、ルート設定部(GPS/ナビゲーションシステム2)と、道路形状取得部(地図データ4)と、を有する。また、コントローラ(自動運転用認識判断プロセッサ3)は、障害物検出部(認識センサ1)と、左右旋回ポイント検出部32と、障害物判定部34と、目標走行経路生成部35と、を有する。
ルート設定部(GPS/ナビゲーションシステム2)は、目的地までのルートを設定する。
道路形状取得部(地図データ4)は、ルート周囲の道路情報を取得する。
障害物検出部(認識センサ1)は、自車A1周辺の障害物(対向車A2)を検出する。
左右旋回ポイント検出部32は、道路情報から、自車A1前方の走路を構成する走路境界に対して、所定距離の間に存在する曲率の変曲ポイントIPを検出する。
障害物判定部34は、自車A1前方の対向側に障害物(対向車A2)の有無を判定する。
目標走行経路生成部35は、変曲ポイントIPが2つ以上無いとき、又は、障害物(対向車A2)有りと判定されたとき、ルートを基準に第1目標走行経路R1を生成する。また、目標走行経路生成部35は、変曲ポイントIPが2つ以上有り、かつ、障害物(対向車A2)無しと判定されたとき、第2目標走行経路R2を生成する。第2目標走行経路R2では、第1目標走行経路R1を生成する場合よりも、各変曲ポイントIP1,IP2の相対距離D1´,D2´を、一方の変曲ポイントIP1とは長く(D1<D1´)、他方の変曲ポイントIP2とは短くなる(D2>D2´)。
このため、短い区間に変曲ポイントIPが複数存在する道路を走行するとき、乗員に与える違和感を抑制する運転支援車両(自動運転車両)の走行制御装置を提供することができる。
実施例2は、障害物の将来の移動予測を行い、目標走行経路を生成した例である。また、移動予測が外れた場合には、目標走行経路を障害物から離れる側の経路へと連続的に切り替えた例である。
まず、構成を説明する。実施例2における走行制御方法及び走行制御装置は、モータ駆動するハイブリッド車両(電動車両の一例)をベースとし、操舵/駆動/制動を外部制御することが可能な自動運転車両(運転支援車両の一例)に適用したものである。以下、実施例2の構成を、「自動運転用認識判断プロセッサの詳細構成」と、「自動運転車両の走行制御処理構成」に分けて説明する。なお、実施例2の「自動運転システム構成」は実施例1と同様であるから説明を省略する。
[自動運転用認識判断プロセッサの詳細構成]
自動運転用認識判断プロセッサ3は、実施例1の自動運転用認識判断プロセッサ3の詳細構成に加えて、移動予測部を有する。
移動予測部は、認識センサ1の情報(自車周囲の環境情報等)と障害物有り信号を入力する。移動予測部は、障害物有り信号の入力により、自車と障害物との相対距離及び相対速度に基づいて、障害物の将来の移動予測を行う。この移動予測部は、移動予測の結果を、目標走行経路生成部35へ出力する。
目標走行経路生成部35は、実施例1と同様に種々の情報や信号の入力に加え、移動予測の結果を入力する。目標走行経路生成部35は、実施例1と同様に種々の情報や信号に基づいて、目標走行経路としての第1目標走行経路R1又は第2目標走行経路R2を生成する。この目標走行経路生成部35は、生成された目標走行経路を、目標プロファイル生成部36へ出力する。
また、目標走行経路生成部35は、種々の情報と障害物有り信号が入力されると、第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の両方を生成する。続いて、目標走行経路生成部35は、移動予測の結果の入力により、自車に接近する障害物の有無を判定する。次に、目標走行経路生成部35は、その自車に接近する障害物の有無に基づいて、第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の両方を生成して、第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の切り替えタイミング及び各経路の重みの設定を調整する。また、この重みは、移動予測の接近度合いに対して、実際の接近度合いが近い場合、新たな重みに変更される。目標走行経路生成部35は、重み変更が発生すると、障害物から離れる側の経路へと連続的に切り替えられる目標走行経路を生成する。この目標走行経路生成部35は、生成された目標走行経路を、目標プロファイル生成部36へ出力する。
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、図示及び説明を省略する。
[自動運転車両の走行制御処理構成]
図11は、実施例2の自動運転用認識判断プロセッサにて実行される自動運転車両の走行制御処理の流れを示す。以下、自動運転車両の走行制御処理構成をあらわす図11に示すフローチャートの各ステップについて、図11と図12に基づき説明する。なお、図11に示す自動運転車両の走行制御処理は、所定の制御周期にて繰り返し実行される。また、図12において、自車の現在位置を「P11」で示し自車将来位置を「P12〜P14」で示し、障害物(対向車)の現在位置を「P21」で示し障害物の移動予測を「P22〜P24」で示す。
図11のフローチャートでは、ルートが設定済みで、自動運転に必要な条件が満たされ、自動運転モードで走行中の状態からのものとする。なお、自動運転の性能向上のため、GPSは高精度に位置情報を取得できるシステムであり、地図データ4は現実環境を正しく高精度に表したデジタルデータであるとする。
ステップS21〜ステップS26のそれぞれは、ステップS11〜ステップS16のそれぞれに対応するため、説明を省略する。ただし、ステップS24で障害物無しと判定されたときはステップS26へ進み、ステップS24で障害物有りと判定されたときはステップS27へ進む。
ステップS27では、ステップS24での障害物有りとの判定に続き、第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の両方を生成し、ステップS28へ進む(図8Cと図9参照)。つまり、ステップS27では、ステップS25とステップS26の処理を両方行うことになる。なお、ステップS27が、目標走行経路生成部35に相当する。また、このステップS27で生成された第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の双方とも、自動運転用認識判断プロセッサ3のメモリ上に格納される。
ステップS28では、ステップS27での第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の両方の生成に続き、障害物の将来の移動予測を行う。なお、ステップS28が、移動予測部に相当する。
ここで、「移動予測」は、自車と障害物との相対距離及び相対速度に基づいて、所定時間将来までの障害物の移動予測を行う。相対距離と相対速度は、図12に示すように、認識センサ1により2次元情報を取得する。即ち、相対距離と相対速度の情報を(Dx,Dy,Vx,Vy)として取得する。また、「所定時間」とは、少なくとも自車が障害物を通り過ぎるまでの時間である。例えば、図12に示すように、障害物が現在位置P21の場合、障害物の将来の移動予測を位置P22からP24まで行う。また、ステップS28では、自車と障害物の相対距離と相対速度を記録しておき、相対距離や相対速度情報からTTC(Time to Collision)やTHW(Time HeadWay)が計算され、自車と障害物の接近度合を数値化することで障害物との相対情報が取得される。
ステップS29では、ステップS28での障害物の将来の移動予測に続き、第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の重み設定を行い、目標走行経路を生成して、エンドへと進む。なお、ステップS29が、目標走行経路生成部35に相当する。
このステップS29において、具体的には、まず、ステップS28での移動予測を踏まえて、図12に示すように、自車と障害物との時系列の移動推移から、移動予測に伴う自車と障害物の接近度合いに基づいて、自車に接近する障害物の有無が判定される。なお、図12において、自車が位置P12のとき、障害物は位置P22に移動するものと予測する。その「接近度合い」は、ステップS28での自車と障害物の相対距離や相対速度から算出されたTTCやTHWである。その接近度いと予め試験等により設定した接近度合閾値に基づいて、自車に接近する障害物の有無が判定される。接近度合いが接近度合閾値以下の場合は、自車に接近する障害物有りと判定され、接近度合いが接近度合閾値より大きい場合は、自車に接近する障害物無しと判定される。なお、自車に接近する障害物の有無の判定結果は、相対速度や相対距離の変化によって変わる。
次に、自車に接近する障害物の有無によって、ステップS27でメモリ上に格納された第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の2つの経路から、目標走行経路を生成する。具体的には、まず、ステップS27でメモリ上に格納された第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の2つの経路から、第2目標走行経路R2を読み出す。次に、ステップS28での移動予測を踏まえて、図12に示すように、自車と障害物との時系列の移動推移から、最も互いが接近する最接近ポイントを割り出す。例えば、自車が第2目標走行経路R2を走行した場合、図12において、同時刻に自車が自車位置P13へ移動し、障害物が障害物位置P23へ移動すると予測されるとき、このポイントを最接近ポイントとする。そして、この最接近ポイントの接近度合いから、第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の各経路の重みづけを行う。
ここで、第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の重みの総和は「1」とする。メモリ上に格納された2つの経路情報と対応する重みから、重みづけ平均を取ったものを、最終的に旋回目標値を算出する上での目標走行経路とする。例えば、自車に接近する障害物有りと判定されると、障害物から離れる側の第1目標走行経路R1又は第2目標走行経路R2の重みが大きくなる。これに対し、自車に接近する障害物無しと判定されると、第2目標走行経路R2の重みが大きくなる。このように、自車と障害物との将来の移動予測に基づいて、自車に接近する障害物の有無が判定されるので、将来を踏まえた適切な目標走行経路(予測目標走行経路)の設定を行うことができる。つまり、移動予測に基づいて、自車の走行軌跡と障害物がどれだけ接近するかを指標として、適切な目標走行経路の設定を行うことができる。
また、移動予測は逐次行われ、互いの接近度合いの予測に基づいた重みづけは逐次行われる。例えば、制御周期毎に移動予測が行われ、重みづけが設定される。このため、移動予測の接近度合いと実際の自車と障害物の接近度合い(実際の接近度合い)を比較して、移動予測の接近度合いに対して、実際の接近度合いが近い場合、重み変更が発生する。即ち、予想が外れた場合、重み変更が発生する。即ち、この場合が、目標走行経路を切り替えるタイミングとなる。
このように、移動予測が外れた場合、目標走行経路は、今までの重みで算出された目標走行経路から新たな重みで算出された目標走行経路へと連続的に切り替えられる。即ち、目標走行経路は、今までの重みで算出された目標走行経路から、障害物から離れる側の経路へと連続的に切り替えられる。この連続的な切り替えは、第1目標走行経路R1及び第2目標走行経路R2の重みの変更を連続的にすることで行われる。なお、障害物から離れる側の経路へと連続的に切り替えられる経路を、以下「切り替え目標走行経路」ともいう。
次に作用を説明する。
実施例2の作用は、実施例1と同様に、「自動運転車両の走行制御の特徴作用」を示す。また、実施例2の作用を、「自動運転車両の走行制御処理作用」と、「実施例2の特徴作用」に分けて説明する。
[自動運転車両の走行制御処理作用]
以下、図11のフローチャートについて、図11と図13に基づいて、自動運転車両の走行制御の処理作用を説明する。図13において、自車の位置を「P11、P12」で示し、障害物(対向車)の位置を「P21、P22、P22´」で示す。
ただし、図11において、ステップS21→ステップS22へと進む流れは、実施例1のステップS11→ステップS12へと進む流れと同様であるので、説明を省略する。また、ステップS22→ステップS25→エンドへと進む流れは、実施例1のステップS12→ステップS15→エンドへと進む流れと同様であるので、説明を省略する。また、ステップS22→ステップS23→ステップS25→エンドへと進む流れは、実施例1のステップS12→ステップS13→ステップS15→エンドへと進む流れと同様であるので、説明を省略する。さらに、ステップS22→ステップS23→ステップS24→ステップS26→エンドへと進む流れは、実施例1のステップS12→ステップS13→ステップS14→ステップS16→エンドへと進む流れと同様であるので、説明を省略する。
そして、変曲ポイントIPは2つあり、対向車線ランドマークは無いが、自車前方の対向側に障害物が有るときは、ステップS22→ステップS23→ステップS24へと進む。これは、実施例1のステップS12→ステップS13→ステップS14へと進む流れと同様であるので、説明を省略する。
ステップS24では、障害物有りと判定され、ステップS27→ステップS28→ステップS29→エンドへと進む。このとき、ステップS27では、第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の両方が生成される。また、ステップS28では、自車と障害物との相対距離及び相対速度に基づいて、所定時間将来までの障害物の移動予測が行われる。さらに、ステップS29では、移動予測に伴う自車と障害物の接近度合いに基づいて、自車に接近する障害物の有無が判定される。次に、自車に接近する障害物の有無に基づいて、第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の重み設定により予測目標走行経路が生成される。例えば、移動予測に基づいて、自車に接近する障害物の有無と最接近ポイントの接近度合いから、第1目標走行経路R1と第2目標走行経路R2の各経路の重みづけが行われる。そして、自車が走行する目標走行経路を、重みで算出された予測目標走行経路とする。
これに対し、図13に示すように、移動予測が外れた場合、重み変更が発生する。例えば、図13に示すように、自車が位置P11のときに、位置P21に障害物を検出した。そして、移動予測では、その時の相対距離と相対速度に基づいて、自車が位置P11からP12まで移動する際に、障害物は位置P21からP22へ到達するだろうと予測した。しかし、実際には、自車が位置P12へ移動した際、障害物は速度を上げて位置P21からP22´へ到達してしまった場合、重み変更が発生する。この場合、目標走行経路は、今までの重みで算出された目標走行経路から、障害物から離れる側の経路へと連続的に切り替えられる。この「障害物から離れる側の経路」は、図13において、例えば第1目標走行経路R1である。
このように、短い区間に変曲ポイントが複数存在するルートを走行するとき、実施例1と同様に、過大な車両挙動と、自車と立体物の接近と、が抑制される。加えて、対向車線を規定するランドマークが有る場合は、走路境界に沿った第1目標走行経路R1が生成されるので、ランドマークから自車がはみ出すことなく交通ルールを守った走行を可能とする。また、障害物有りと判定されるとき、障害物の将来の移動予測を行って、自車に接近する障害物の有無を判定することにより、将来起きうる事態を踏まえた上での適切な予測目標走行経路が生成される。さらに、逐次移動予測とこの予測に基づいた重みづけを行うことで、仮に移動予測が外れても、目標走行経路が障害物から離れる側の経路へと連続的に切り替えられる。このため、仮に移動予測が外れた際にも、状況に合わせて適切に車両が制御される。
なお、ステップS25での第1目標走行経路R1の生成の後、ステップS26での第2目標走行経路R2の生成の後、又は、ステップS29での目標走行経路の生成の後は、エンドへ進む。この後は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
[実施例2の特徴作用]
実施例2では、障害物有りと判定されたとき、自車と障害物との相対距離及び相対速度に基づいて障害物の将来の移動予測が行われる。そして、移動予測に伴う自車と障害物の接近度合いに基づいて、自車に接近する障害物の有無が判定される。即ち、移動予測に伴う自車と障害物の接近度合いに基づいて自車の走行軌跡と障害物がどれだけ接近するかを指標として目標走行経路が生成される。従って、将来起きうる事態を踏まえた上での適切な目標走行経路が生成される。
実施例2では、移動予測の接近度合いに対して、実際の接近度合いが近い場合、目標走行経路は障害物から離れる側の第1目標走行経路R1へと連続的に切り替えられる。即ち、移動予測が外れて予測以上に障害物と接近してしまった際は、目標走行経路が障害物から離れる側の経路へと連続的に切り替えられる。従って、移動予測が外れた際にも、状況に合わせて適切に車両が制御される。
次に、効果を説明する。
実施例2の自動運転車両の走行制御方法及び走行制御装置にあっては、実施例1の(1)〜(3)に記載した効果が得られる。また、実施例2の自動運転車両の走行制御方法にあっては、下記(4)〜(5)の効果を得ることができる。
(4) 障害物(対向車A2)有りと判定されたとき、自車A1と障害物(対向車A2)との相対距離及び相対速度に基づいて障害物(対向車A2)の将来の移動予測を行う。
移動予測に伴う自車A1と障害物(対向車A2)の接近度合いに基づいて、自車A1に接近する障害物(対向車A2)の有無を判定する。
このため、将来起きうる事態を踏まえた上での適切な目標走行経路を生成することができる。
(5) 移動予測の接近度合いに対して、実際の自車と障害物の接近度合いが近い場合、目標走行経路を障害物から離れる側の第1目標走行経路又は第2目標走行経路へと連続的に切り替える。
このため、(4)の効果に加え、移動予測が外れた際にも、状況に合わせて適切に車両を制御することができる。
実施例3は、障害物の将来の移動予測を行い、目標走行経路を生成した例である。また、移動予測が外れた場合には、自車将来位置及び自車将来姿勢の設定を修正した目標走行経路を再生成した例である。
まず、構成を説明する。実施例3における走行制御方法及び走行制御装置は、モータ駆動するハイブリッド車両(電動車両の一例)をベースとし、操舵/駆動/制動を外部制御することが可能な自動運転車両(運転支援車両の一例)に適用したものである。以下、実施例3の構成を、「自動運転用認識判断プロセッサの詳細構成」と、「自動運転車両の走行制御処理構成」に分けて説明する。なお、実施例3の「自動運転システム構成」は実施例1と同様であるから説明を省略する。
[自動運転用認識判断プロセッサの詳細構成]
自動運転用認識判断プロセッサ3は、実施例1の自動運転用認識判断プロセッサ3の詳細構成に加えて、移動予測部と経路追従判定部を有する。なお、移動予測部については、実施例2と同様であるので説明を省略する。
経路追従判定部は、予測目標走行経路や切り替え目標走行経路を入力する。経路追従判定部は、予測目標走行経路や切り替え目標走行経路を、自車が追従することが困難であるか否かを判定する。この経路追従判定部は、追従困難信号又は追従可能信号を、目標走行経路生成部35へ出力する。
目標走行経路生成部35は、予測目標走行経路や切り替え目標走行経路を生成する。次に、目標走行経路生成部35は、追従可能信号が入力されると、生成された目標走行経路を、目標プロファイル生成部36へ出力する。これに対し、目標走行経路生成部35は、追従困難信号が入力されると、自車が追従することが可能な目標走行経路を再生成する。即ち、第3目標走行経路R3が生成される(図15参照)。そして、目標走行経路生成部35は、生成された第3目標走行経路R3を、目標プロファイル生成部36へ出力する。他の目標走行経路生成部35の構成は、実施例2と同様であるので、説明を省略する。
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、図示及び説明を省略する。
[自動運転車両の走行制御処理構成]
図14は、実施例3の自動運転用認識判断プロセッサにて実行される自動運転車両の走行制御処理の流れを示す。以下、自動運転車両の走行制御処理構成をあらわす図14に示すフローチャートの各ステップについて、図14と図15に基づき説明する。なお、図14に示す自動運転車両の走行制御処理は、所定の制御周期にて繰り返し実行される。また、図15において、自車の位置を「P11、P12、P14、P14´」で示し、障害物の位置を「P21、P22、P22´」で示す。
ステップS31とステップS32を除き、ステップS21〜ステップS29のそれぞれは、実施例2と同様であるので、対応するステップに同一の符号を付して説明を省略する。ただし、ステップS29の処理の後は、ステップS31へ進む。
ステップS31では、ステップS29の目標走行経路の生成に続き、その目標走行経路を自車が追従することが困難であるか否かを判定する。YES(追従困難)の場合はステップS32へ進み、NO(追従可能)の場合はエンドへ進む。なお、ステップS31が、経路追従判定部に相当する。
ここで、まず、ステップS31で対象とする経路は、ステップS29で生成される目標走行経路のうち、予測が外れた場合に生成される目標走行経路である。即ち、切り替え目標走行経路である。このため、ステップS29で予測目標走行経路が生成されるときは、ステップS31では追従可能と判定される。次いで、ステップS31の「その目標走行経路を自車が追従することが困難である」場合とは、ステップS29にて生成された切り替え目標走行経路が、自車のハード的な性能を超えた経路である場合である。この「自車のハード的な性能を超えた」とは、自車の最少旋回半径を下回る目標走行経路となった場合や、電動パワーステアリング6が出せる操舵速度の限界を超える場合等が考えられる。
以下、ステップS31にて追従困難と判定される場合について説明する。例えば、実施例2で説明したように、障害物の急加速により、移動予測の接近度合いに対して、実際の接近度合いが近い場合、重み変更が発生する(図13と図15参照)。具体的には、図15に示すように、自車が位置P11のときに、位置P21に障害物を検出した。そして、移動予測では、その時の相対距離と相対速度に基づいて、自車が位置P11からP12まで移動する際に、障害物は位置P21からP22へ到達するだろうと予測した。しかし、実際には、自車が位置P12へ移動した際、障害物は速度を上げて位置P21からP22´へ到達してしまった。この場合が、予測が外れた場合であり、重み変更が発生する。このように予測が外れたとき、今までの重みで生成された目標走行経路から新たな重みで生成された目標走行経路に切り替わることで自車の経路追従が困難となる場合があり得る。このような場合は、ステップS31では追従困難と判定される。
ステップS32では、ステップS31での追従困難との判定に続き、自車の現在位置P12を始点として、目標走行経路の再生成を行い、エンドへと進む。即ち、自車が追従することが可能な第3目標走行経路R3が生成される。なお、ステップS32が、目標走行経路生成部35に相当する。
このとき、再生成される第3目標走行経路R3の終点となる新自車将来位置Pnと新自車将来姿勢P14´は、図15に示すように、今までの目標走行経路における旧自車将来位置Poと旧自車将来姿勢P14と同一である必要はない。即ち、旧自車将来位置Poと旧自車将来姿勢P14の設定は、新自車将来位置Pnと新自車将来姿勢P14´の設定に修正される。その新自車将来位置Pnと新自車将来姿勢P14´は、図15に示すように、走路境界の範囲内で設定する。そして、始点P12(自車の現在位置)と終点(新自車将来位置Pnと新自車将来姿勢P14´)を滑らかに繋ぐことにより、第3目標走行経路R3の再生成を行う。
次に作用を説明する。
実施例3の作用は、実施例1と同様に、「自動運転車両の走行制御の特徴作用」を示す。また、実施例3の作用は、実施例2と同様に、「実施例2の特徴作用」を示す。さらに、実施例3の作用を、「自動運転車両の走行制御処理作用」と、「実施例3の特徴作用」に分けて説明する。
[自動運転車両の走行制御処理作用]
以下、図14のフローチャートに基づいて、自動運転車両の走行制御の処理作用を説明する。ただし、ステップS21から1つ以上のステップを経由してステップS25へと進む流れ、及び、ステップS21から3つのステップを経由してステップS26へと進む流れは、実施例2と同様であるので、説明を省略する。また、ステップS21から5つのステップを経由してステップS29へと進む流れは、実施例2と同様であるので、説明を省略する。
ステップS29で、切り替え目標走行経路が生成される。次に、その切り替え目標走行経路を自車が追従することが困難であるときは、ステップS31→ステップS32→エンドへと進む。ステップS32では、図15に示すように、自車が追従することが可能な第3目標走行経路R3が生成される。即ち、目標走行経路が再生成される。
また、ステップS29で生成された切り替え目標走行経路を自車が追従することが可能であるときは、ステップS31→エンドへと進む。このとき、ステップS32の第3目標走行経路R3ではなく、ステップS29で生成された切り替え目標走行経路又は予測目標走行経路となる。
このように、短い区間に変曲ポイントが複数存在するルートを走行するとき、実施例1と同様に、過大な車両挙動と、自車と立体物の接近と、が抑制される。加えて、対向車線を規定するランドマークが有る場合は、走路境界に沿った第1目標走行経路が生成されるので、ランドマークから自車がはみ出すことなく交通ルールを守った走行を可能とする。また、実施例2と同様に、障害物有りと判定されるとき、将来起きうる事態を踏まえた上での適切な目標走行経路が生成される。さらに、逐次移動予測とこの予測に基づいた重みづけを行うことで、仮に移動予測が外れても、目標走行経路が障害物から離れる側の経路へと連続的に切り替えられる。また、ステップS29での切り替え目標走行経路を自車が追従することが困難であるとき、第3目標走行経路R3が生成されるので、自車にとって無理な軌跡追従が抑制される。そして、仮に移動予測が外れた際にも、状況に合わせて適切に車両が制御される。
なお、ステップS25での第1目標走行経路R1の生成の後、ステップS26での第2目標走行経路R2の生成の後、又は、ステップS29での目標走行経路の生成の後は、エンドへ進む。また、ステップS32での第3目標走行経路R3の生成の後は、エンドへ進む。この後は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
[実施例3の特徴作用]
実施例3では、移動予測の接近度合いに対して、実際の自車と障害物の接近度合いが近い場合、旧自車将来位置Poと旧自車将来姿勢P14の設定を修正した目標走行経路が再生成される。即ち、予測が外れた場合、第3目標走行経路R3が生成される。従って、移動予測が外れた際にも、状況に合わせて適切に車両が制御される。
加えて、実施例3では、切り替え目標走行経路を、自車が追従することが困難であるか否かが判定される。そして、追従困難と判定されたとき、旧自車将来位置Poと旧自車将来姿勢P14の設定を修正した目標走行経路が再生成される。従って、自車が追従することが困難であると判定されたとき、自車にとって無理な軌跡追従が抑制される。
次に、効果を説明する。
実施例3の自動運転車両の走行制御方法及び走行制御装置にあっては、実施例1の(1)〜(3)と実施例2の(4)〜(5)に記載した効果が得られる。また、実施例3の自動運転車両の走行制御方法にあっては、下記(6)の効果を得ることができる。
(6) ルートを基準に、自車A1が将来通過する自車将来位置(旧自車将来位置Po)と自車A1の通過時の自車将来姿勢(旧自車将来姿勢P14)を設定する。
自車の現時点における現在位置及び現在姿勢と自車将来位置(旧自車将来位置Po)及び自車将来姿勢(旧自車将来姿勢P14)とを滑らかに繋ぐ目標走行経路を生成する。
移動予測の接近度合いに対して、実際の自車A1と障害物(対向車A2)の接近度合いが近い場合、自車将来位置(旧自車将来位置Po)及び自車将来姿勢(旧自車将来姿勢P14)の設定を修正した目標走行経路(第3目標走行経路R3)を再生成する。
このため、移動予測が外れた際にも、状況に合わせて適切に車両を制御することができる。
実施例4は、障害物の将来の移動予測を行い、目標走行経路を生成した例である。また、移動予測が外れた場合には、自車を一時停止した例である。
まず、構成を説明する。実施例4における走行制御方法及び走行制御装置は、モータ駆動するハイブリッド車両(電動車両の一例)をベースとし、操舵/駆動/制動を外部制御することが可能な自動運転車両(運転支援車両の一例)に適用したものである。以下、実施例4の構成を、「自動運転用認識判断プロセッサの詳細構成」と、「自動運転車両の走行制御処理構成」に分けて説明する。なお、実施例4の「自動運転システム構成」は実施例1と同様であるから説明を省略する。
[自動運転用認識判断プロセッサの詳細構成]
自動運転用認識判断プロセッサ3は、実施例1の自動運転用認識判断プロセッサ3の詳細構成に加えて、移動予測部と経路追従判定部と目標速度設定部を有する。なお、移動予測部は、実施例2と同様であるので説明を省略する。
経路追従判定部は、追従困難信号又は追従可能信号を、目標速度設定部と目標走行経路生成部35へ出力する。他の経路追従判定部の構成は、実施例3と同様であるので説明を省略する。
目標速度設定部は、目標走行経路と、予め設定した自車の横加速度制限(横G制限)及びヨーレイト制限と、障害物有り信号又は障害物無し信号と、追従困難信号又は追従可能信号と、を入力する。この目標速度設定部は、目標走行経路を走行する時の目標速度を設定する。目標速度は、予め設定した自車の最大横Gと最大ヨーレイト(自車の横加速度制限とヨーレイト制限)を超えない速度に設定する。また、目標速度設定部は、追従困難信号が入力されると、自車を一時停止するために目標速度を補正(調整)する。加えて、目標速度設定部は、一時停止の後の再発進時のために目標速度を補正する。この目標速度設定部は、設定した目標速度を、目標走行経路生成部35と目標プロファイル生成部36へ出力する。
目標走行経路生成部35は、予測目標走行経路や切り替え目標走行経路を生成する。次に、目標走行経路生成部35は、追従可能信号が入力されると、生成された目標走行経路を、目標速度設定部と目標プロファイル生成部36へ出力する。これに対し、目標走行経路生成部35は、追従困難信号が入力されると、目標走行経路を、予測目標走行経路とする。この目標走行経路生成部35は、予測目標走行経路を、目標速度設定部と目標プロファイル生成部36へ出力する。他の目標走行経路生成部35の構成は、実施例2と同様であるので、説明を省略する。
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので、図示及び説明を省略する。
[自動運転車両の走行制御処理構成]
図16は、実施例4の自動運転用認識判断プロセッサにて実行される自動運転車両の走行制御処理の流れを示す。以下、自動運転車両の走行制御処理構成をあらわす図16に示すフローチャートの各ステップについて、図16と図17に基づき説明する。なお、図16に示す自動運転車両の走行制御処理は、所定の制御周期にて繰り返し実行される。また、図17において、自車を「A1」で示し、対向車(対向車両、障害物)を「A2」で示す。
ステップS41とステップS42を除き、ステップS21〜ステップS29のそれぞれは、実施例2と同様であるので、対応するステップに同一の符号を付して説明を省略する。ただし、ステップS25とステップS26とステップS27の処理が一部異なる。また、ステップS29の後は、ステップS41へ進む。
まず、ステップS25〜ステップS27について説明する。実施例2のステップS27では、ステップS25とステップS26の処理を両方行うと説明した。また、実施例2において、そのステップS25とステップS26は、ステップS15とステップS16に対応すると説明した。さらに、実施例1において、そのステップS15とステップS16では、目標走行経路を構成する各ノードは、2次元座標情報であるxiとyiが記録されていると説明した。
これに対し、実施例4のステップS25とステップS26においては、目標走行経路を構成する各ノードは、図17に示すように、2次元座標情報であるxiとyiの他、曲率情報ρi、速度情報νiが、併せて記録される。曲率情報ρiは、前後のノード情報から算出された情報であり、速度情報νiは各ノードを通過するときの情報である。なお、各情報は、自車が経路端に到達するまで、不図示の記録部に記録される。
ここで、速度情報ν
iは、曲率情報ρ
iに基づいて、発生する横Gやヨーレイトが過大にならないように決定する。例えば、最大横Gと最大ヨーレイトを、それぞれGy
max、γ
maxとして予め設定し、生成経路を構成するノードの中で最も曲率の大きいノードに対して、式(1)で以下を算出する。
・・・(1)
この速度情報νiに格納し、それを予め設定した最大縦G(最大前後G)であるGxmaxの範囲の中で連続して繋ぎ合わせる形で、各ノードに対する目標速度を算出する。ここで、「自車の横加速度制限及びヨーレイト制限」は、車種ごとに実験等により予め設定される。なお、最大縦Gも同様である。他のステップS25〜ステップS27のそれぞれは、実施例2のステップS25〜ステップS27と同様であるので、説明を省略する。
次いで、ステップS41では、ステップS29の目標走行経路の生成に続き、その目標走行経路を自車が追従することが困難であるか否かを判定する。YES(追従困難)の場合はステップS42へ進み、NO(追従可能)の場合はエンドへ進む。なお、ステップS41が、経路追従判定部に相当する。この他は、実施例3のステップS31と同様であるので、説明を省略する。
ステップS42では、ステップS41での追従困難との判定に続き、自車を一時停止して、エンドへと進む。即ち、自車の目標速度が補正される。なお、ステップS42が、目標速度設定部と目標走行経路生成部35に相当する。
ここで、「一時停止」は、駆動/回生モータ7や油圧ブレーキ8により行われる。即ち、まず、目標速度設定部が補正した目標速度は、目標プロファイル生成部36を介して、自動運転用制御コントローラ5へ入力される。即ち、補正した目標速度により、目標速度のプロファイルを修正する。次に、この自動運転用制御コントローラ5から駆動/回生モータ7や油圧ブレーキ8へ制御指令値が出力される。次に、その制御指令値にしたがって、駆動/回生モータ7が回生による減速走行を行ったり、油圧ブレーキ8が油圧制動を作動させたりすることにより、自車を一時停止させる。また、自車を一時停止した後は、障害物を通過させる。次に、自車の一時停止を解除して、切り替え目標走行経路ではなく予測目標走行経路にて、自車を再発進させる。
次に作用を説明する。
実施例4の作用は、実施例1と同様に、「自動運転車両の走行制御の特徴作用」を示す。また、実施例4の作用は、実施例2と同様に、「実施例2の特徴作用」を示す。さらに、実施例4の作用を、「自動運転車両の走行制御処理作用」と、「実施例4の特徴作用」に分けて説明する。
[自動運転車両の走行制御処理作用]
以下、図16のフローチャートについて、図16と図18に基づいて、自動運転車両の走行制御の処理作用を説明する。なお、図18において、自車を「P11〜P13」で示し、障害物を「P21、P22、P22´〜P24´」で示す。ただし、ステップS21から1つ以上のステップを経由してステップS25へと進む流れ、及び、ステップS21から3つのステップを経由してステップS26へと進む流れは、実施例2と同様であるので、説明を省略する。また、ステップS21から5つのステップを経由してステップS29へと進む流れは、実施例2と同様であるので、説明を省略する。
ステップS29では、第1目標走行経路と第2目標走行経路の重み設定により目標走行経路が生成される。次に、その目標走行経路を自車が追従することが困難であるときは、ステップS41→ステップS42→エンドへと進む。
例えば、図18に示すように、移動予測では、その時の相対距離と相対速度に基づいて、自車が位置P11からP12まで移動する際に、障害物は位置P21からP22へ到達するだろうと予測した。しかし、実際には、自車が位置P12へ移動した際、障害物は速度を上げて位置P21からP22´へ到達してしまった場合、重み変更が発生する。このとき、ステップS29では、目標走行経路は、今までの重みで算出された目標走行経路から新たな重みで算出された目標走行経路となる。しかし、この新たな重みで算出された目標走行経路を、自車が追従することが困難である場合、目標走行経路は今までの重みで算出された予測目標走行経路とされる。そして、位置P13で自車を一時停止させる。次に、この自車の一時停止の間に、対象となる障害物を通過させる(位置P23´)。次に、障害物が位置P24´へ到達した後、対向側に障害物が無いことを確認して、自車の一時停止が解除される。続いて、自車を再度速度復帰させることで自車の再発進が行われ、自車は予測目標走行経路を追従する。
また、ステップS29で生成された切り替え目標走行経路を自車が追従することが可能であるときは、ステップS41→エンドへと進む。このとき、ステップS42の自車の一時停止は行われず、ステップS29で生成された切り替え目標走行経路又は予測目標走行経路となる。
このように、短い区間に変曲ポイントが複数存在するルートを走行するとき、実施例1と同様に、過大な車両挙動と、自車と立体物の接近と、が抑制される。加えて、対向車線を規定するランドマークが有る場合は、走路境界に沿った第1目標走行経路が生成されるので、ランドマークから自車がはみ出すことなく交通ルールを守った走行を可能とする。また、実施例2と同様に、障害物有りと判定されるとき、将来起きうる事態を踏まえた上での適切な目標走行経路が生成される。さらに、逐次移動予測とこの予測に基づいた重みづけを行うことで、仮に移動予測が外れても、目標走行経路が障害物から離れる側の経路へと連続的に切り替えられる。また、ステップS29での切り替え目標走行経路を自車が追従することが困難であるとき、自車を一時停止させるので、自車にとって無理な軌跡追従が抑制される。そして、仮に移動予測が外れた際にも、状況に合わせて適切に車両が制御される。
なお、ステップS25での第1目標走行経路の生成の後、ステップS26での第2目標走行経路の生成の後、ステップS29での目標走行経路の生成の後、又は、ステップS42での予測目標走行経路とされた後は、エンドへ進む。この後は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
[実施例4の特徴作用]
実施例4では、目標速度は、目標走行経路の曲率に応じて、予め設定した自車の最大横Gと最大ヨーレイトを超えない速度に設定される。即ち、目標走行経路を追従するための旋回時における目標速度は、最大横Gと最大ヨーレイトが所定値を超えない速度に設定される。従って、走行中に過大な車両挙動が抑えられる。
実施例4では、移動予測の接近度合いに対して、実際の自車と障害物の接近度合いが近い場合、自車を一時停止させる。即ち、予測が外れた場合、自車を一時停止させる。従って、移動予測が外れた際にも、状況に合わせて適切に車両が制御される。
加えて、実施例4では、切り替え目標走行経路を、自車が追従することが困難であるか否かが判定される。そして、追従困難と判定されたとき、自車を一時停止させる。従って、自車が追従することが困難であると判定されたとき、自車にとって無理な軌跡追従が抑制される。
次に、効果を説明する。
実施例4の自動運転車両の走行制御方法及び走行制御装置にあっては、実施例1の(1)〜(3)と実施例2の(4)〜(5)に記載した効果が得られる。また、実施例4の自動運転車両の走行制御方法にあっては、下記(7)〜(8)の効果を得ることができる。
(7) 目標走行経路を走行する際の目標速度を生成する。
目標速度は、目標走行経路の曲率に応じて、予め設定した自車の横加速度制限及びヨーレイト制限(最大横Gと最大ヨーレイト)を超えない速度に設定する。
このため、走行中に過大な車両挙動を抑えることができる。
(8) 移動予測の接近度合いに対して、実際の自車A1と障害物(対向車A2)の接近度合いが近い場合、自車A1を一時停止する。
このため、(7)の効果に加え、移動予測が外れた際にも、状況に合わせて適切に車両を制御することができる。
以上、本開示の自動運転車両の走行制御方法及び走行制御装置を実施例1〜実施例4に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例1〜実施例4に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1〜実施例4では、第2目標走行経路R2は、第1目標走行経路R1と比較すると、相対距離D1´,D2´は、一方の変曲ポイントIP1とは長く(D1<D1´)、他方の変曲ポイントIP2とは短くなる(D2>D2´)例を示した。しかし、これに限られない。例えば、米国のように右側通行の場合には、各変曲ポイントと第2目標走行経路との相対距離は、第1目標走行経路R1と比較すると、実施例1〜実施例4の奥側の変曲ポイントとは短く、実施例1〜実施例4の手前側の変曲ポイントとは長くなる。即ち、日本のような左側通行の場合と米国のように右側通行の場合で、第1目標走行経路R1を生成する場合よりも、各変曲ポイントと第2目標走行経路との相対距離は変わる。このように構成しても、実施例1〜実施例4に記載した効果が得られる。
実施例1〜実施例4では、障害物無しと判定され、変曲ポイントが2つの場合における各変曲ポイントIP1,IP2と第2目標走行経路R2との相対距離D1´、D2´を例示した。しかし、これに限られない。例えば、障害物無しと判定され、変曲ポイントが3つの場合には、第1目標走行経路R1を生成する場合よりも、各変曲ポイントと第2目標走行経路との相対距離は、自車が走行する経路において、手前側の変曲ポイントとは長く、手前側と一番奥側との中間の変曲ポイントとは短く、一番奥側の変曲ポイントとは長くなる経路を生成する。即ち、交互に変曲ポイントとの長さを変更する第2目標走行経路を生成する。このように構成しても、実施例1〜実施例4に記載した効果が得られる。
実施例1〜実施例4では、「障害物」を、自車に接近する方向に移動する障害物のこととする例を示した。しかし、これに限られない。例えば、移動しない障害物でも良い。要するに、自車前方の対向側の障害物であれば良い。なお、移動しない障害物の場合、実施例4では、自車を一時減速させる。このように構成しても、実施例1〜実施例4に記載した効果が得られる。
実施例1〜実施例4では、電動パワーステアリング6を操舵アクチュエータとし、駆動/回生モータ7を駆動源アクチュエータとし、油圧ブレーキ8をブレーキアクチュエータとする例を示した。しかし、これに限られない。即ち、各制御系は、駆動輪(タイヤ)に対して転舵/駆動/制動の制御を外部指令に基づいて行えれば、上記手段(各アクチュエータ)以外のものでも、置換可能である。例えば、インホイールモータ等で、各輪を独立に制駆動できる手段を有する場合は、電動パワーステアリング6の制御に加え、制駆動力差で旋回動作をアシストする方法も考えられる。
実施例2〜実施例4では、相対距離と相対速度の情報を認識センサ1により2次元情報で取得する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、相対距離と相対速度の情報を認識センサ1により1次元情報で取得しても良い。1次元情報で取得する場合でも、自車と障害物との相対距離及び相対速度に基づいて、所定時間将来までの障害物の移動予測を行うことが可能である。
実施例2〜実施例4では、目標走行経路を障害物から離れる側の経路へと連続的に切り替える例を示した。しかし、これに限られない。例えば、目標走行経路を障害物から離れる側の経路へと段階的に切り替えても良い。このように構成しても、実施例2〜実施例4に記載した効果が得られる。また、障害物から離れる側の経路は、第1目標走行経路に限られず、自車の位置によって、第1目標走行経路又は第2目標走行経路となる。
実施例3では、予測が外れ、切り替え目標走行経路が生成され、この経路を自車が追従困難と判定されたとき、第3目標走行経路R3を生成する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、予測が外れた場合、切り替え目標走行経路を生成せずに、第3目標走行経路R3を生成しても良い。このように構成しても、実施例3に記載した効果が得られる。
実施例4では、予測が外れ、切り替え目標走行経路が生成され、この経路を自車が追従困難と判定されたとき、自車を一時停止する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、予測が外れた場合、切り替え目標走行経路を生成せずに、自車を一時減速又は一時停止しても良い。このように構成しても、実施例4に記載した効果が得られる。
実施例4では、自車を一時停止する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、自車を一時減速させても良い。また、状況に合わせて、自車を一時減速又は一時停止しても良い。このように構成しても、実施例4に記載した効果が得られる。
実施例1〜実施例4では、本開示の走行制御方法及び走行制御装置を、モータ駆動するハイブリッド車両(電動車両の一例)をベースとし、操舵/駆動/制動を外部制御することが可能な自動運転車両に適用する例を示した。しかし、本開示の走行制御方法及び走行制御装置は、ドライバーによる操舵運転/駆動運転/制動運転のうち、一部の運転を支援する運転支援車両であっても良い。要するに、走行ルートを表示することでドライバーの運転支援をする車両であれば適用することができる。また、本開示の走行制御方法及び走行制御装置は、ハイブリッド車両に限られず、電気自動車やエンジン車両に適用することもできる。