JP6970671B2 - リチウムニッケル複合酸化物の製造方法 - Google Patents
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Description
本願は、2016年7月28日に、日本に出願された特願2016−148429号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
例えば特許文献1には、特定の粒径のリチウム遷移金属複合酸化物製造用水酸化リチウム無水物を用いたことにより、組成が均一となり、充放電のサイクルを繰り返しても抵抗増加を抑制できたことが記載されている。
特許文献2には、最大粒径が特定の範囲であるリチウム化合物を原料として製造した正極材料は、焼成時間が短い場合でも正極材料の複合酸化物を得る反応における未反応物が残ることなく反応することが記載されている。
しかしながら、前記特許文献1〜2に記載のようなリチウム複合酸化物においては、充放電サイクル特性を向上させる観点から改良の余地があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、充放電サイクル特性に優れるリチウムニッケル複合酸化物の製造方法を提供することを課題とする。
[1]リチウム化合物と、ニッケル含有金属複合化合物とを混合し、混合物を得る混合工程と、前記混合物を焼成する焼成工程と、を含むリチウムニッケル複合酸化物の製造方法であって、前記リチウム化合物の90%累積体積粒度D90(μm)、50%累積体積粒度D50(μm)、及び10%累積体積粒度D10(μm)が、下記式(1)を満たし、かつ、前記ニッケル含有金属複合化合物の50%累積体積粒度D50’ (μm)に対する前記リチウム化合物の前記D50の比(D50/D50’)が、0.1以上3.2未満である、リチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
(D90−D10)/D50<1.7 …(1)
[2]前記リチウムニッケル複合酸化物が、以下の一般式(I)で表される、[1]に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
Li[Lix(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−x]O2 ・・・(I)
(一般式(I)中、−0.1≦x≦0.2、0<y≦0.5、0<z≦0.8、0≦w≦0.1、y+z+w<1、MはFe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の金属を表す。)
[3]前記リチウム化合物が、水酸化リチウム及び炭酸リチウムのいずれか一方又は両方である、[1]又は[2]に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
[4]前記リチウム化合物の炭酸リチウム含有量がリチウム化合物の質量に対し5質量%以下である、[3]に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
[5]前記リチウム化合物の50%累積体積粒度D50(μm)が、1μm以上30μm以下である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
[6]前記ニッケル含有金属複合化合物の50%累積体積粒度D50’が、1μm以上30μm以下である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
[7]前記リチウム化合物の軽装密度(BD)が、0.1g/cc以上1.0g/cc以下であり、重装密度(TD)が、0.3g/cc以上2.0g/cc以下である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
[8]前記ニッケル含有金属複合化合物の軽装密度(BD)が、0.2g/cc以上2.5g/cc以下であり、重装密度(TD)が、0.5g/cc以上3.0g/cc以下である、[1]〜[7]のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
[9]前記焼成工程において、焼成温度が600℃以上1000℃以下である、[1]〜[8]のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
[10]前記焼成工程において、昇温開始から達温して温度保持が終了するまでの合計時間を1時間以上30時間以下とする、[1]〜[9]のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
[11]前記混合工程において、前記ニッケル含有金属複合化合物中に含まれる遷移金属の合計モル数(Me)に対する、前記リチウム化合物中に含まれるリチウムのモル数(Li)の比(Li/Me)を、0.90以上1.2以下となるように、前記ニッケル含有金属複合化合物と前記リチウム化合物とを混合する、[1]〜[10]のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
本発明の一実施形態におけるリチウムニッケル複合酸化物の製造方法は、リチウム化合物と、ニッケル含有金属複合化合物(以下、「前駆体」と記載することがある。)とを混合し、混合物を得る混合工程と、前記混合物を焼成する焼成工程と、を有する。さらに、前記リチウム化合物の90%累積体積粒度D90(μm)、50%累積体積粒度D50(μm)、及び10%累積体積粒度D10(μm)が、下記式(1)を満たし、かつ、前記ニッケル含有金属複合化合物の50%累積体積粒度D50’(μm)に対する前記リチウム化合物の前記D50の比(D50/D50’)が、0.1以上3.2未満である。
(D90−D10)/D50<1.7 …(1)
以下、本発明の一態様におけるリチウムニッケル複合酸化物の製造方法の各工程について説明する。
(1)ニッケル含有金属複合化合物の製造工程。
(2)前記ニッケル含有金属複合化合物とリチウム化合物とを混合し、混合物を得る混合工程。
(3)前記混合物を焼成する焼成工程。
本発明の一態様におけるリチウムニッケル複合酸化物の製造方法において、まず、リチウム以外の金属、すなわち、必須金属であるニッケルと、コバルト、マンガン、又はアルミニウムといった任意金属とを含むニッケル含有金属複合化合物を調製し、当該ニッケル含有金属複合化合物を適当なリチウム化合物と焼成することが好ましい。ニッケル含有金属複合化合物は、ニッケル含有金属複合水酸化物又はニッケル含有金属複合酸化物が好ましい。
ニッケル含有金属複合化合物は、通常公知のバッチ式共沈殿法又は連続式共沈殿法により製造することが可能である。以下、金属として、ニッケル、コバルト、マンガン及びアルミニウムを含むニッケル含有金属複合水酸化物(以下、「金属複合水酸化物」と記載することがある。)を例に、その製造方法を詳述する。
上記コバルト塩溶液の溶質であるコバルト塩としては、例えば硫酸コバルト、硝酸コバルト、及び塩化コバルトのうちの何れかを使用することができる。
上記マンガン塩溶液の溶質であるマンガン塩としては、例えば硫酸マンガン、硝酸マンガン、及び塩化マンガンのうちの何れかを使用することができる。
上記アルミニウム塩溶液の溶質であるアルミニウム塩としては、例えば硫酸アルミニウムが使用できる。
以上の金属塩は、上記NisCotMnuAlv(OH)2の組成比に対応する割合で用いられる。すなわち、上記金属塩を含む混合溶液中におけるニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムのモル比がs:t:u:vとなるよう各金属塩の量を規定する。また、溶媒として水が使用される。
錯化剤は含まれていなくてもよく、錯化剤が含まれる場合、ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液、マンガン塩溶液、アルミニウム塩溶液及び錯化剤を含む混合液に含まれる錯化剤の量は、例えば金属塩のモル数の合計に対するモル比が0より大きく2.0以下である。
D50’の上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、本工程により製造されるニッケル含有金属複合化合物の50%累積体積粒度D50’は1μm以上30μm以下であることが好ましく、2μm以上20μm以下であることがより好ましく、3μm以上15μm以下であることがさらに好ましい。
そして、得られた累積粒度分布曲線において、50%累積時の微小粒子側から見た粒子径の値が、50%累積体積粒度D50’(μm)である。
ニッケル含有金属複合化合物の軽装密度(BD)の上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、ニッケル含有金属複合化合物の軽装密度(BD)は、0.2g/cc以上2.5g/cc以下であることが好ましく、0.3g/cc以上2.4g/cc以下であることがより好ましく、0.4g/cc以上、2.3g/cc以下であることがさらに好ましい。
ニッケル含有金属複合化合物の重装密度(TD)の上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、ニッケル含有金属複合化合物の重装密度(TD)は、0.5g/cc以上3.0g/cc以下であることが好ましく、0.6g/cc以上2.9g/cc以下であることがより好ましく、0.7g/cc以上、2.8g/cc以下であることがさらに好ましい。
具体的には、軽装密度は、20cm3の測定用容器に、測定試料をふるいに通しながら落下充填させ、前記容器が測定試料で満たされた状態とし、そのときのサンプル重量を測定して算出される。
また、重装密度は、上記のように測定用容器を測定試料で満たした状態で容器に蓋をし、ストローク長50mmで200回タッピングを繰り返した後の試料容積を読み取り算出される。
本工程は、リチウム化合物と、ニッケル含有金属複合化合物とを混合し、混合物を得る工程である。
本実施形態に用いるリチウム化合物について説明する。本実施形態において、90%累積体積粒度D90(μm)、50%累積体積粒度D50(μm)、及び10%累積体積粒度D10(μm)が、下記式(1)を満たすリチウム化合物を用いる。
(D90−D10)/D50<1.7 …(1)
次に、得られた分散液についてマイクロトラック・ベル株式会社製マイクロトラックMT3300EXII(レーザー回折散乱粒度分布測定装置)を用いて、粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得る。
「(D90−D10)/D50」が上記特定の数値範囲であるリチウム化合物は、粒度分布のばらつきが小さく、ニッケル含有金属複合化合物と均一に混合することができる。
また、リチウム化合物が主に水酸化リチウムを含み、不純物として炭酸リチウムを含む場合には、リチウム化合物全体の質量に対する炭酸リチウムが5質量%以下であることが好ましい。もちろんリチウム化合物全体の質量に対する炭酸リチウムの含有量は、0質量%でもよい。
D50の上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
リチウム化合物の軽装密度(BD)の上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
リチウム化合物の重装密度(TD)の上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本実施形態においては、前記ニッケル含有金属複合化合物の50%累積体積粒度D50’(μm)に対する前記リチウム化合物の前記D50の比(D50/D50’)が、0.1以上3.2未満となるように、混合工程を制御する。
これにより、製造されるリチウムニッケル複合酸化物のサイクル特性を向上させることができる。
焼成工程でのガス抜けを良くする意味で、(D50/D50’)は0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましく、0.7以上であることが特に好ましい。また、混合時の均一性を高める意味で、(D50/D50’)は3.2未満であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることがさらに好ましく、2.0以下であることが特に好ましい。
(D50/D50’)の上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
「D50/D50’」が上記特定の範囲であることにより、前記ニッケル含有金属複合化合物の周辺に、前記リチウム化合物を均一に存在させることができ、製造されるリチウムニッケル複合酸化物のサイクル特性を向上させることができる。
均一なリチウム−ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物が得られる意味で、rは0を超えることが好ましく、0.01以上であることがより好ましく、0.02以上であることがさらに好ましい。また、純度の高いリチウム−ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物が得られる意味で、rは0.1以下であることが好ましく、0.08以下であることがより好ましく、0.06以下であることがさらに好ましい。
上記のrの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、rは0を超えかつ0.1以下であることが好ましく、0.01以上0.08以下であることがより好ましく、0.02以上0.06以下であることがさらに好ましい。
Li/Meが、上記特定の範囲であることにより、局所的に、リチウム粒子とニッケル含有金属複合化合物とが不均一に存在することが防止できる。
その理由を、図2A及び図2Bに示す模式図を使用して説明する。図2Aは、本発明の一態様における効果を説明するための模式図であり、リチウム化合物とニッケル含有金属複合化合物とを混合した状態を示す模式図である。図2Aの符号50はニッケル含有金属複合化合物を、符号51はリチウム粒子を意味する。リチウム化合物の粒度分布が特定の範囲((D90−D10)/D50の値が1.7未満)の場合には、リチウム粒子51の大きさにばらつきが少ない。このため、ニッケル含有金属複合化合物50と混合した場合に、図2Aに示すように均一に混合できると推察される。さらに、ニッケル含有金属複合化合物とリチウム化合物との粒径比が特定の範囲の場合には、図2Aに示すようニッケル含有金属複合化合物50の周辺にリチウム粒子51を均一に存在させることができ、局所的にリチウム粒子とニッケル含有金属複合化合物とが不均一に存在することが防止できると考えられる。
図2Bは、本実施形態を適用しない場合であり、この場合のリチウム化合物とニッケル含有金属複合化合物とを混合した状態を示す模式図である。図2Bの符号50’はニッケル含有金属複合化合物を、符号51’はリチウム粒子を意味する。リチウム粒子51’の粒度分布のばらつきが大きいと、図2Bに示すように、ニッケル含有金属複合化合物50’とリチウム粒子51’とが局所的に不均一に混合してしまうと考えられる。
酸化又は還元がされない条件のためには、窒素、ヘリウム及びアルゴン等の希ガス等の不活性ガスを使用すればよく、水酸化物が酸化される条件では、酸素又は空気を雰囲気下として行えばよい。また、ニッケル含有金属複合化合物が還元される条件としては、不活性ガス雰囲気下、ヒドラジン、亜硫酸ナトリウム等の還元剤を使用すればよい。
本実施形態においては、上記特定の混合条件としたことにより、リチウム化合物とニッケル含有金属複合化合物とが均一に混合している。このため、焼成工程において結晶の発達が良好に進行し、電池性能を向上させることができる。
上記リチウム化合物と、ニッケル含有金属複合化合物との混合物の焼成温度としては、特に制限はないが、充電容量を高める観点から、600℃以上であることが好ましく、650℃以上であることがより好ましい。また、焼成温度としては、特に制限はないが、Liの揮発を防止でき、目標とする組成のリチウムニッケル複合酸化物を得る意味で、1000℃以下であることが好ましく、950℃以下であることがより好ましい。
焼成温度の上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、リチウム化合物と、ニッケル含有金属複合化合物との混合物の焼成温度は、600℃以上1000℃以下であることが好ましく、650℃以上950℃以下であることがより好ましい。
合計時間が1時間以上であると、結晶の発達が良好に進行し、電池性能を向上させることができる。
また、焼成には、所望の組成に応じて大気、乾燥空気、酸素雰囲気、不活性雰囲気等が用いられ、必要ならば複数の加熱工程が実施される。
本発明において、「昇温開始」とは、仮焼成をする場合には仮焼成の昇温開始時点を、複数の加熱工程を含む場合には、最初の加熱工程の昇温開始時点を意味する。
本発明の一態様におけるリチウムニッケル複合酸化物の製造方法により製造される、リチウムニッケル複合酸化物について説明する。
Li[Lix(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−x]O2 ・・・(I)
(式(I)中、−0.1≦x≦0.2、0<y≦0.5、0<z≦0.8、0≦w≦0.1、y+z+w<1、MはFe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の金属を表す。)
xの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、xは0を超えかつ0.1以下であることが好ましく、0.01以上0.08以下であることがより好ましく、0.02以上0.06以下であることがさらに好ましい。
本明細書において、「サイクル特性が高い」とは、放電容量維持率が高いことを意味する。
yの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、yは0.01以上0.35以下であることが好ましく、0.03以上0.3以下であることがより好ましく、0.05以上0.25以下であることがさらに好ましい。
zの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、zは0.005以上0.35以下であることが好ましく、0.01以上0.30以下であることがより好ましく、0.015以上0.25以下であることがさらに好ましい。
wの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、wは0を超えかつ0.09以下であることが好ましく、0.001以上0.08以下であることがより好ましく、0.005以上0.07以下であることがさらに好ましい。
リチウムニッケル複合酸化物の結晶構造は、層状構造であり、六方晶型の結晶構造又は単斜晶型の結晶構造であることがより好ましい。
リチウムニッケル複合酸化物のBET比表面積(m2/g)は、高い電流レートにおける放電容量が高いリチウム二次電池を得る意味で、0.1以上であることが好ましく、0.12以上であることが好ましく、0.15以上がより好ましい。また、ハンドリング性を高める意味で、BET比表面積は4以下であることが好ましく、3.8以下がより好ましく、3.5以下がさらに好ましい。
BET比表面積(m2/g)の上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、BET比表面積(m2/g)は、0.1以上4以下であることが好ましく、0.12以上3.8以下であることがより好ましく、0.15以上3.5以下であることがさらに好ましい。
次いで、リチウム二次電池の構成を説明しながら、本実施形態のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法により製造されたリチウムニッケル複合酸化物を、リチウム二次電池の正極活物質として用いた正極、及びこの正極を有するリチウム二次電池について説明する。
まず、図1Aに示すように、帯状を呈する一対のセパレータ1、一端に正極リード21を有する帯状の正極2、及び一端に負極リード41を有する帯状の負極3を、セパレータ1、正極2、セパレータ1、負極3の順に積層し、巻回することにより電極群4とする。
図1Bに示すように、電池缶5に電極群4及び不図示のインシュレーターを収容した後、缶底を封止し、電極群4に電解液6を含浸させ、正極2と負極3との間に電解質を配置する。さらに、電池缶5の上部をトップインシュレーター7及び封口体8で封止することで、リチウム二次電池10を製造することができる。
(正極)
本実施形態の正極は、まず正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極合剤を調整し、正極合剤を正極集電体に担持させることで製造することができる。
本実施形態の正極が有する導電材としては、炭素材料を用いることができる。炭素材料として黒鉛粉末、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、繊維状炭素材料などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きいため、少量を正極合剤中に添加することにより正極内部の導電性を高め、充放電効率及び出力特性を向上させることができるが、多く入れすぎるとバインダーによる正極合剤と正極集電体との結着力、及び正極合剤内部の結着力がいずれも低下し、かえって内部抵抗を増加させる原因となる。
本実施形態の正極が有するバインダーとしては、熱可塑性樹脂を用いることができる。
この熱可塑性樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。
)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;を挙げることができる。
本実施形態の正極が有する正極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を用いることができる。なかでも、加工しやすく、安価であるという点でAlを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
(負極)
本実施形態のリチウム二次電池が有する負極は、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能であればよく、負極活物質を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなる電極、及び負極活物質単独からなる電極を挙げることができる。
負極が有する負極活物質としては、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属又は合金で、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能な材料が挙げられる。
負極が有する負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を挙げることができる。なかでも、リチウムと合金を作り難く、加工しやすいという点で、Cuを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
本実施形態のリチウム二次電池が有するセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質膜、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を2種以上用いてセパレータを形成してもよいし、これらの材料を積層してセパレータを形成してもよい。
本実施形態のリチウム二次電池が有する電解液は、電解質及び有機溶媒を含有する。
本実施例においては、リチウムニッケル複合酸化物の評価、正極及びリチウム二次電池の作製評価を、次のようにして行った。
1.リチウムニッケル複合酸化物の組成分析
後述の方法で製造されるリチウムニッケル複合酸化物の組成分析は、得られたリチウムニッケル複合酸化物の粉末を塩酸に溶解させた後、誘導結合プラズマ発光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SPS3000)を用いて行った。
測定するリチウム化合物の粉末0.1gを、イソプロピルアルコール50mlに投入し、該粉末が分散された分散液を得た。得られた分散液についてマイクロトラック・ベル株式会社製マイクロトラックMT3300EXII(レーザー回折散乱粒度分布測定装置)を用いて、粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得た。得られた累積粒度分布曲線において、10%累積時の体積粒度をリチウム化合物の10%累積体積粒度D10、50%累積時の体積粒度をリチウム化合物の50%累積体積粒度D50、90%累積時の体積粒度をリチウム化合物の90%累積体積粒度D90とした。
また、ニッケル含有金属複合化合物の50%累積体積粒度D50’(μm)は、リチウム化合物の粉末0.1gの代わりにニッケル含有金属複合化合物の粉末0.1gを用い、イソプロピルアルコールの代わりに0.2質量%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液を用いた以外は、上記リチウム化合物の粒度分布の測定と同様の手順で測定し、得られた累積粒度分布曲線において、50%累積時の体積粒度をニッケル含有金属複合化合物の50%累積体積粒度D50’とした。
後述する製造方法で得られるリチウムニッケル複合酸化物(正極活物質)と導電材(アセチレンブラック)とバインダー(PVdF)とを、正極活物質:導電材:バインダー=92:5:3(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の正極合剤を調製した。正極合剤の調製時には、N−メチル−2−ピロリドンを有機溶媒として用いた。
得られた正極合剤を、集電体となる厚さ15μmのAl箔に塗布して60℃で3時間熱風乾燥を行った後、150℃で8時間熱風乾燥を行い、正極を得た。この正極の電極面積は1.65cm2とした。
以下の操作を、乾燥空気雰囲気のグローブボックス内で行った。
「(2)正極の作製」で作成した正極を、コイン型電池R2032用のコインセル(宝泉株式会社製)の下蓋にアルミ箔面を下に向けて置き、その上に積層フィルムセパレータ(ポリエチレン製多孔質フィルムの上に、耐熱多孔層を積層(厚み16μm))を置いた。ここに電解液を300μL注入した。用いた電解液は、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの30:35:35(体積比)混合液に、LiPF6を1.0mol/Lとなるように溶解して調製した。
次に、負極として金属リチウムを用いて、前記負極を積層フィルムセパレータの上側に置き、ガスケットを介して上蓋をし、かしめ機でかしめてリチウム二次電池(コイン型電池R2032。以下、「コイン型電池」と称することがある。)を作製した。
[サイクル試験]
「(3)リチウム二次電池(コイン型セル)の作製」で作製したコイン型電池を用いて、以下に示す条件にて、50回のサイクル試験にて寿命評価を実施し、50回後の放電容量維持率を以下の式にて算出した。なお、50回後の放電容量維持率が高いほど、寿命特性がよいことを示している。
50回後の放電容量維持率(%)=50回目の放電容量/1回目の放電容量×100
以下、50回後の放電容量維持率を『サイクル維持率』と記載することがある。
試験温度:25℃
充電時条件:充電時最大電圧4.45V、充電時間2.0時間、充電電流0.5CA
充電後休止時間:10分
放電時条件:放電時最小電圧2.5V、放電時間1.0時間、放電電流1.0CA
放電後休止時間:10分
本試験において、充電、充電休止、放電、放電休止を順に実施した工程を1回としている。
(ニッケル含有複合化合物の製造工程)
ニッケル含有金属複合化合物として、微粒子状のニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合水酸化物(Ni0.855Co0.095Mn0.02Al0.03(OH)2)を連続式共沈殿法により作製した。
表1に、共沈法により作製したニッケル含有金属複合水酸化物の組成を記載する。
得られたニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合水酸化物を、電気炉を用いて、乾燥空気雰囲気下、昇温速度100℃/時間で650℃まで昇温し、650℃で5時間保持した。その後、室温まで放冷し、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物を得た。
表2に、電気炉を用いた加熱条件を記載する。
リチウム化合物として水酸化リチウム粉末と、以上のようにして得られたニッケル含有金属複合化合物とをLi/(Ni+Co+Mn+Al)=1.03(モル比)となるように秤量して混合した。
表5に、用いたリチウム化合物の種類、リチウム化合物の90%累積体積粒度D90(μm)、50%累積体積粒度D50(μm)、及び10%累積体積粒度D10(μm)、ニッケル含有金属複合化合物(表5中、「前駆体」と記載)の50%累積体積粒度D50’(μm)、 (D90−D10)/D50、及びD50/D50’を記載する。
表4に、用いたリチウム化合物の軽装密度(BD)及び重装密度(TD)、用いたニッケル含有金属複合化合物の軽装密度(BD)及び重装密度(TD)を記載する。
仮焼成として、電気炉を用いて酸素雰囲気下、昇温速度200℃/時間で770℃まで昇温し、770℃で5時間保持した。その後、室温まで放冷した。得られた焼成物については解砕の後に、本焼成として、昇温速度200℃/時間で770℃まで昇温し、770℃で5時間保持した、目的の実施例1のリチウムニッケル複合酸化物を得た。
表3に、焼成条件を記載する。
ニッケル含有金属複合水酸化物の組成を表1に記載したものを使用したこと、電気炉を用いた加熱条件を表2に記載した条件としたこと、リチウム化合物の種類、リチウム化合物の90%累積体積粒度D90(μm)、50%累積体積粒度D50(μm)、及び10%累積体積粒度D10(μm)、ニッケル含有金属複合化合物(表5中、「前駆体」と記載)の50%累積体積粒度D50’(μm)を、表5に記載のものを使用したこと、及び、焼成条件を表3に記載した条件としたこと、以外は上記実施例1と同様の方法により、実施例2〜7、比較例1〜3のリチウムニッケル複合酸化物を製造した。
下記表2に、電気炉を用いた加熱条件を記載する。
得られた実施例1のリチウムニッケル複合酸化物の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.01、y=0.095、z=0.02、w=0.03であった。
得られた実施例2のリチウムニッケル複合酸化物の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.01、y=0.095、z=0.02、w=0.03であった。
得られた実施例3のリチウムニッケル複合酸化物の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.04、y=0.21、z=0.24、w=0であった。
得られた実施例4のリチウムニッケル複合酸化物の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.04、y=0.21、z=0.24、w=0であった。
得られた実施例5のリチウムニッケル複合酸化物の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.06、y=0.33、z=0.355、w=0であった。
得られた実施例6のリチウムニッケル複合酸化物の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.06、y=0.33、z=0.355、w=0であった。
得られた実施例7のリチウムニッケル複合酸化物の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.04、y=0.21、z=0.24、w=0であった。
得られた比較例1のリチウムニッケル複合酸化物の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.01、y=0.095、z=0.02、w=0.03であった。
得られた比較例2のリチウムニッケル複合酸化物の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.01、y=0.095、z=0.02、w=0.03であった。
得られた比較例3のリチウムニッケル複合酸化物の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.04、y=0.21、z=0.24、w=0であった。
する。さらにサイクル維持率の結果も記載する。
これに対し、本発明を適用しない製造方法により製造した比較例1〜3のリチウムニッケル複合酸化物は、サイクル維持率が80%に到達せず、充分なサイクル特性を示さなかった。
Claims (10)
- リチウム化合物と、ニッケル含有金属複合化合物とを混合し、混合物を得る混合工程と、
前記混合物を焼成する焼成工程と、
を含むリチウムニッケル複合酸化物の製造方法であって、
前記リチウム化合物の90%累積体積粒度D90(μm)、50%累積体積粒度D50(μm)、及び10%累積体積粒度D10(μm)が、下記式(1)を満たし、
かつ、
前記ニッケル含有金属複合化合物の50%累積体積粒度D50’ (μm)に対する前記リチウム化合物の前記D50の比(D50/D50’)が、0.1以上3.2未満であり、
前記リチウム化合物の軽装密度(BD)が、0.1g/cc以上1.0g/cc以下であり、重装密度(TD)が、0.3g/cc以上2.0g/cc以下である、リチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
(D90−D10)/D50<1.7 …(1) - 前記リチウムニッケル複合酸化物が、以下の一般式(I)で表される、請求項1に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
Li[Lix(Ni(1−y−z−w)CoyMnzMw)1−x]O2 ・・・(I)
(一般式(I)中、−0.1≦x≦0.2、0<y≦0.5、0<z≦0.8、0≦w≦0.1、y+z+w<1、MはFe、Cu、Ti、Mg、Al、W、B、Mo、Nb、Zn、Sn、Zr、Ga及びVからなる群より選択される1種以上の金属を表す。) - 前記リチウム化合物が、水酸化リチウム及び炭酸リチウムのいずれか一方又は両方である、請求項1又は2に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
- 前記リチウム化合物の炭酸リチウム含有量が前記リチウム化合物の質量に対し5質量%以下である、請求項3に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
- 前記リチウム化合物の50%累積体積粒度D50(μm)が、1μm以上30μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
- 前記ニッケル含有金属複合化合物の50%累積体積粒度D50’が、1μm以上30μm以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
- 前記ニッケル含有金属複合化合物の軽装密度(BD)が、0.2g/cc以上2.5g/cc以下であり、重装密度(TD)が、0.5g/cc以上3.0g/cc以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
- 前記焼成工程において、焼成温度が600℃以上1000℃以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
- 前記焼成工程において、昇温開始から達温して温度保持が終了するまでの合計時間を1時間以上30時間以下とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
- 前記混合工程において、前記ニッケル含有金属複合化合物中に含まれる遷移金属の合計モル数(Me)に対する、前記リチウム化合物中に含まれるリチウムのモル数(Li)の比(Li/Me)を、0.90以上1.2以下となるように、前記ニッケル含有金属複合化合物と前記リチウム化合物とを混合する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のリチウムニッケル複合酸化物の製造方法。
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