JP6967108B2 - 高流動性ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
下記の要件(1)〜(3)を満たす酸変性ポリオレフィン(Q)1〜50質量%
を含むポリアミド樹脂組成物。
(1) 230℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が50〜200(g/10分)である。
(2) 酸変性量が0.1〜2.0質量%である。
(3) エチレン起因骨格単位10〜95モル%と、プロピレン起因骨格単位0〜80モル%と、炭素原子数4〜8のα−オレフィン起因骨格単位3〜40モル%とを含むエラストマー(エチレン起因骨格単位とプロピレン起因骨格単位とα−オレフィン起因骨格単位の合計量は100モル%である)のマレイン酸又はその無水物による変性体(q1)を含む。
変性体(q1)の一態様であって、プロピレン起因骨格単位を含むエラストマーのマレイン酸又はその無水物による変性体(q1A)
プロピレン起因骨格単位90モル%以上と、エチレン又は炭素原子数4〜8のα−オレフィン起因骨格単位10モル%以下とを含むランダムポリプロピレンのマレイン酸又はその無水物による変性体(q2)
(2)ω−アミノ酸の重縮合物、例えばω−アミノウンデカン酸の重縮合物であるポリウンデカンアミド[11ナイロン]。
(3)ラクタムの開環重合物、例えばε−アミノカプロラクタムの開環重合物であるポリカプラミド[6ナイロン]、ε−アミノラウロラクタムの開環重合物ポリラウリックラクタム[12ナイロン]。
本発明に用いる酸変性ポリオレフィン(Q)は、下記の要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする。
変性体(q1)の一態様であって、プロピレン起因骨格単位を含むエラストマーのマレイン酸又はその無水物による変性体(q1A)
プロピレン起因骨格単位90モル%以上と、エチレン又は炭素原子数4〜8のα−オレフィン起因骨格単位10モル%以下とを含むランダムポリプロピレンのマレイン酸又はその無水物による変性体(q2)
変性体(q1A)は、プロピレン起因骨格単位を含むエラストマーを用いた場合の変性体(q1)である。変性体(q1A)に用いるエラストマー(r1A)は、好ましくは下記要件(b1)及び(b2)を満たすものであり、より好ましくは下記要件(b3)〜(b5)を更に満たし、特に好ましくは下記要件(b6)〜(b7)をも更に満たすプロピレン系共重合体である。
変性体(q1B)は、プロピレン起因骨格単位を含まず、エチレン起因骨格単位75〜95モル%、好ましくは75〜90モル%と、炭素原子数4〜8のα−オレフィン起因骨格単位5〜25モル%、好ましくは10〜25モル%とを含むエラストマー(r1B)のマレイン酸又はその無水物による変性体(q1B)である。炭素原子数4〜8のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン及びこれらの組み合わせが挙げられる。なかでも1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが特に好ましい。
変性体(q2)は、プロピレン起因骨格単位90モル%以上と、エチレン又は炭素原子数4〜8のα−オレフィン起因骨格単位10モル%以下とを含むランダムポリプロピレン(r−PP)のマレイン酸又はその無水物による変性体である。この変性体(q2)においてはランダムポリプロピレン(r−PP)を用いるので、特にホモポリプロピレンの変性体を用いた場合と比較して、成形体の衝撃特性と成形時流動性のバランスがさらに向上する。
酸変性ポリオレフィン(Q)は、例えば、先に説明したエラストマー(r1A)とランダムポリプロピレン(r−PP)のブレンド体に、あるいは先に説明したエラストマー(r1B)に、必要に応じて後述する添加剤を加え、マレイン酸又はその無水物をラジカル開始剤の存在下でグラフト重合させて得られる。エラストマー(r1A)とランダムポリプロピレン(r−PP)は、予め公知の溶融混練法を用いて造粒されていてもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド(P)50〜99質量%と酸変性ポリオレフィン(Q)1〜50質量%、好ましくはポリアミド(P)60〜98質量%と酸変性ポリオレフィン(Q)2〜40質量%、より好ましくはポリアミド(P)70〜98質量%と酸変性ポリオレフィン(Q)2〜30質量%、特に好ましくはポリアミド樹脂(P)75〜98質量%と酸変性ポリオレフィン(Q)2〜25質量%[ただし、成分(P)と成分(Q)は合計して100質量%]の割合で用いることによって得られる。このような割合でポリアミド(P)及び酸変性ポリオレフィン(Q)を用いることによって、耐衝撃性と成形時流動性のバランスに優れた成形体が提供される。また成形性にも優れる。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、ポリアミド(P)及び酸変性ポリオレフィン(Q)の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、他の合成樹脂、他のゴム、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、結晶核剤、顔料、塩酸吸収剤、銅害防止剤等の添加物を、ポリアミド樹脂組成物100質量部あたり、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部含んでいてもよい。これらの添加剤は、ポリアミド樹脂組成物の調製段階で添加してもよいし、酸変性ポリオレフィン(Q)の調製前、調製中、又は調製後に添加してもよい。
「PA66」:6,6ナイロン(デユポン社製、Zytel(登録商標)101L、溶融温度263℃、ビカット軟化温度238℃、密度1140kg/m3、MVR80cm3/10min)。PA66のメルトボリュームレイト(MVR)は、ASTM D1238に準拠して275℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
「r-PP」:ランダムポリプロピレン(エチレン含量3.0モル%、1−ブテン含量1.0モル%、MFR(230℃)7g/10分、融点140℃)
国際公開第2006/98452号に開示された方法に準拠して、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体(PBER(r1A))を調製した。樹脂の性状は次の通りであった。プロピレンに由来する骨格含有量68モル%、エチレンに由来する骨格含有量13モル%、1-ブテンに由来する骨格含有量19モル%、mm92%、MFR7(g/10分)、Mw/Mn 2.1、Tg−29℃。
三井化学製のエチレン・1-ブテン共重合体(EBR)の3種類(r1B−1)〜(r1B−3)を用いた。なお、EBR(r1B−1)の酸変性体のみ実施例で用い、その他のEBR(r1B−2)〜(r1B−3)の酸変性体は比較例で用いた。エチレン・1-ブテン共重合体4種類の性状は以下の通りである。
(r1B−2)エチレン含量85モル%、MFR(230℃)3.0g/10分
(r1B−3)エチレン含量81モル%、MFR(230℃)1.5g/10分
200℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧力シート成形した。0.5〜3mm厚のシート(スペーサー形状:240×240×2mm厚の板に80×80×0.5〜3mm、4個取り)の場合、余熱を5〜7分程度し、10MPaで1〜2分間加圧した後、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧縮し、5分程度冷却して測定用試料を作成した。熱板は5mm厚の真鍮板を用いた。上記方法により作製したサンプルを用いて各種物性評価試料に供した。
ASTM D2240に準拠して測定した。
230℃、2.16kg荷重の条件でメルトフローレート(MFR)を測定した。
実施例で用いた酸変性ポリオレフィン(Q−1)〜(Q−2)、及び比較例で用いたグラフト変性樹脂(Q−1’)〜(Q−3’)の調製方法を以下に示す。
r-PP20質量%及びPBER(r1A−1)80質量%からなるポリプロピレン系組成物(C−1)10kgと、無水マレイン酸(MAH)60g及び2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン(商品名パーヘキサ25B)15gをアセトンに溶解した溶液をブレンドした。次いで、得られたブレンド物を、スクリュー径30mm、L/D=40の2軸押出機のホッパーから投入し、樹脂温度200℃、スクリュー回転数240rpm、吐出量12kg/hrでストランド状に押し出した。得られたストランドを十分冷却した後、造粒することで、酸変性ポリオレフィン(Q−1)を得た。得られた酸変性ポリオレフィン(Q−1)の物性結果を表1に示す。なお、酸変性ポリオレフィン(Q)の変性度(無水マレイン酸含量、表1ではMAH(wt%)と表記)は、FT−IRにてカルボニル基に帰属される波数1780cm−1ピーク強度に基づき、別途作成した検量線から求めた。
ポリプロピレン系組成物(C−1)の代わりに、エチレン・1−ブテン共重合体(r1B−1)を用いた以外は、Q−1の調製方法と同様にして酸変性ポリオレフィン(Q−2)を得た。得られた(Q−2)の物性結果を表1に示す。
ポリプロピレン系組成物(C−1)の代わりに、エチレン・1−ブテン共重合体(r1B−2)を用い表1に示す配合に変更した以外は、Q−1の調製方法と同様にして耐衝撃性改良剤(Q−1’)を得た。得られた(Q−1’)の物性結果を表1に示す。
ポリプロピレン系組成物(C−1)の代わりに、エチレン・1−ブテン共重合体(r1B−3)を用い表1に示す配合に変更した以外は、Q−1の調製方法と同様にして耐衝撃性改良剤(Q−2’)を得た。得られた(Q−2’)の物性結果を表1に示す。
ポリプロピレン系組成物(C−1)の代わりに、エチレン・1−ブテン共重合体(r1B−3)を用い表1に示す配合に変更した以外は、Q−1の調製方法と同様にして耐衝撃性改良剤(Q−3’)を得た。得られた(Q−3’)の物性結果を表1に示す。
66ナイロン[デユポン社製、商品名ザイテル101L]80質量部と、酸変性ポリオレフィン(Q−1)20質量部とを、ヘンシェルミキサーを用いて混合してドライブレンド物を調製した。次いで、このドライブレンド物を245℃に設定した2軸押出機(L/D=40、30mmφ)に供給し、ポリアミド樹脂組成物のペレットを調製した。得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを80℃で1昼夜乾燥した後、下記条件で射出成形を行ない、物性試験用試験片を作製した。
(射出成形条件)
シリンダー温度:245℃
射出圧力:400kg/cm2
金型温度:80℃
厚み1/8”の試験片を用い、ASTM D638に従って、降伏点強度、破断伸び測定した。なお、試験片の状態調製は、乾燥状態で23℃の温度で2日行なった。
厚み1/8”の試験片を用い、ASTM D790に従って、曲げ弾性率(FM;kg/cm2)を測定した。なお、試験片の状態調製は、乾燥状態で23℃の温度で2日行なった。
厚み1/8”の試験片を用い、ASTM D256に従って、23℃でノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
シリンダー温度280℃、射出圧力100MPa、金型温度80℃とした50t型締力の射出成形機にて、3.8mmφ半円のスパイラル状の溝を持った金型に射出成形し、流動距離を測定した。
シリンダー温度280℃、射出圧力80MPa、金型温度80℃とした70t型締力の射出成形機にて、100mm×100mm、厚さ3mmの角板を成形し、60°鏡面光沢度をJIS Z8741に準拠し測定した。
ポリアミド組成物の溶融粘度を、東洋精機製のキャピラリーレオメーター(キャピログラフ1B)を使用して測定した。測定に使用したオリフィスの形状はD=1mm、L/D=30であり、バレルの温度設定は290℃とした。ポリアミド組成物のペレットをバレル内に投入し6分間滞留させた後、所定の速度でピストンを押し込んだ。ピストンの押込み速度を変化させることで、低せん断速度γ1=12.16(1/s)及び高せん断速度γ2=1216(1/s)における溶融粘度をそれぞれη1及びη2とした。そして、η1とη2の比X(=η1/η2)を算出した。
66ナイロン80質量部と、酸変性ポリオレフィン(Q−1)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にポリアミド樹脂組成物を調製した。結果を表2に示す。
酸変性ポリオレフィン(Q−1)の代わりに、酸変性ポリオレフィン(Q−2)を用いた以外は実施例1と同様にポリアミド樹脂組成物を調製した。結果を表2に示す。
66ナイロン80質量部と、酸変性ポリオレフィン(Q−2)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にポリアミド樹脂組成物を調製した。結果を表2に示す。
表3に記載した各成分を用いた以外は実施例1と同様にポリアミド樹脂組成物を調製した。これらの結果を表3に示す。
Claims (4)
- 6,6ナイロンであるポリアミド(P)50〜99質量%、及び、
下記の要件(1)〜(3)を満たす酸変性ポリオレフィン(Q)1〜50質量%
を含むポリアミド樹脂組成物。
(1) 230℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が50〜200(g/10分)である。
(2) 酸変性量が0.1〜2.0質量%である。
(3) エチレン起因骨格単位10〜95モル%と、プロピレン起因骨格単位0〜80モル%と、炭素原子数4〜8のα−オレフィン起因骨格単位3〜40モル%とを含むエラストマー(エチレン起因骨格単位とプロピレン起因骨格単位とα−オレフィン起因骨格単位の合計量は100モル%である)のマレイン酸又はその無水物による変性体(q1)の一態様であって、プロピレン起因骨格単位を含まず、エチレン起因骨格単位75〜95モル%と、炭素原子数4〜8のα−オレフィン起因骨格単位5〜25モル%とを含むエラストマーのマレイン酸又はその無水物による変性体(q1B)を含む。 - 請求項1記載のポリアミド樹脂組成物100質量部に対して、無機フィラー1〜100質量部をさらに含むフィラー含有ポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
- 請求項2記載のフィラー含有ポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
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