以下に図面を参照しながら、本発明を実施するためのいくつかの実施形態について説明する。なお、断面概略図は、実際の寸法比やパターン数を正確には反映しておらず、基板の掘り込み量や膜のダメージ量は省略してある。
以下に説明する実施形態に係る位相シフトマスクブランクは、波長20nm以上、波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクの作製に用いられるハーフトーン型位相シフトマスクブランクであって、少なくとも、露光波長に対して透明な基板上に他の膜を介さず積層された、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)と非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)と酸素系エッチング(O系)とに対して耐性を有し、且つフッ素系エッチング(F系)でエッチング可能な位相シフト膜と、位相シフト膜上に形成された、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)に対して耐性を有し、且つフッ素系エッチング(F系)と非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)でエッチング可能な上層遮光膜と、上層遮光膜より上層に形成された、フッ素系エッチング(F系)と非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)と酸素系エッチング(O系)とに対して耐性を有し、且つ酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)でエッチング可能なエッチングマスク膜を有する。ただし、位相シフト膜と基板との間にエッチングストッパー層を有していない。
さらに、本実施形態に係わる位相シフトマスクブランクは、フッ素系エッチング(F系)及び非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)に対して耐性を有し、且つ酸素系エッチング(O系)でエッチング可能である下層遮光膜を、位相シフト膜と上層遮光膜との間に有する。この下層遮光膜は、ルテニウムを含有し、膜厚が2nm以上、30nm以下である。
下層遮光膜と上層遮光膜とで、遮光機能を発揮する。すなわち、下層遮光膜を設けることで、その分、上層遮光膜の膜厚を薄くできる。たとえば上層遮光膜にタンタルを含有した場合、酸化によりエッチングしにくくなるため、一般的にエッチングに時間がかかる。この場合、下層遮光膜を設けた分だけ上層遮光膜の膜厚を薄くできると、加工効率が向上することとなり、残渣確率が改善する。
図1は、第1の実施形態に係る位相シフトマスクブランクを示す断面概略図である。図1の位相シフトマスクブランク10は、露光波長に対して透明な基板11と、基板11上に成膜された位相シフト膜12と、位相シフト膜12上に成膜された遮光膜(上層遮光膜ともいう)13と、遮光膜13上に成膜されたエッチングマスク膜14からなる。基板11と位相シフト膜12との間にエッチングストッパー層を有していない。この位相シフトマスクブランク10を用いた位相シフトマスクでは、エッチングマスク膜14が一部除去されずにマスク上に残る。
図2は、第2の実施形態に係る位相シフトマスクブランクを示す断面概略図である。図2の位相シフトマスクブランク10は、露光波長に対して透明な基板11と、基板11上に成膜された位相シフト膜12と、位相シフト膜12上に成膜された下層遮光膜18と、下層遮光膜18上に成膜された上層遮光膜13と、上層遮光膜13上に成膜されたエッチングマスク膜14からなる。基板11と位相シフト膜12との間にエッチングストッパー層を有していない。この位相シフトマスクブランク10を用いた位相シフトマスクでは、エッチングマスク膜14が一部除去されずにマスク上に残る。
図3は、第3の実施形態に係る位相シフトマスクブランクを示す断面概略図である。図3の位相シフトマスクブランク20は、露光波長に対して透明な基板21と、基板21上に成膜された位相シフト膜22と、位相シフト膜22上に成膜された遮光膜(上層遮光膜ともいう)23と、遮光膜23上に成膜されたエッチングマスク膜24からなる。基板21と位相シフト膜22との間にエッチングストッパー層を有していない。この位相シフトマスクブランク20を用いた位相シフトマスクでは、エッチングマスク膜24が完全に除去されてマスク上に残らない。
図4は、第4の実施形態に係る位相シフトマスクブランクを示す断面概略図である。図4の位相シフトマスクブランク20は、露光波長に対して透明な基板21と、基板21上に成膜された位相シフト膜22と、位相シフト膜22上に成膜された下層遮光膜28と、下層遮光膜28上に成膜された上層遮光膜23と、上層遮光膜23上に成膜されたエッチングマスク膜24からなる。基板21と位相シフト膜22との間にエッチングストッパー層を有していない。この位相シフトマスクブランク20を用いた位相シフトマスクでは、エッチングマスク膜24が完全に除去されてマスク上に残らない。
ここで、前記露光波長に対して透明な基板11、21に対する特別な制限はなく、石英ガラスやCaF2あるいはアルミノシリケートガラスなどが一般的である。
また、前記位相シフト膜12、22は、ケイ素を含有し、且つ遷移金属、窒素、酸素及び炭素から選ばれる1種以上を含有し、具体的にはケイ素の酸化膜、窒化膜、酸窒化膜、もしくはケイ素および遷移金属の酸化膜、窒化膜、酸窒化膜の単層膜、又はこれらの複数層膜もしくは傾斜膜であり、組成と膜厚を適宜選択することで露光波長に対する透過率と位相差を調整させたものである。遷移金属としては、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウムなどを用いることができるが、モリブデンが好ましい。
透過率の値は、最終的な位相シフトマスク完成時に基板の透過率に対して3%以上、100%未満であり、所望のウェハパターンに応じて最適な透過率を適宜選択することが可能であるが、透過率5%以上、40%以下が一般的である。位相差の値は、最終的な位相シフトマスク完成時に170度以上、190度以下、特に175度以上、180度以下が好ましい。位相シフト膜12、22をエッチングする際は、同時に基板を1nmから3nm程度掘り込み、位相シフト膜の抜け不良を防止すると共に、位相差の微調整を行うことが一般的である。したがって、基板の掘り込み量を考慮して、マスク完成時に所望する値より浅い位相差で位相シフト膜12、22を成膜する必要がある。
位相シフト膜12、22の組成は、所望の透過率と位相差の組み合わせにより変化する。例えば、透過率6%、位相差177度のケイ素とモリブデンの酸窒化膜の場合、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)と非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)と酸素系エッチング(O系)に対する耐性、フッ素系エッチング(F系)に対する加工性、そして各種薬液洗浄に対する耐性を実現するために、ケイ素が20原子%以上、60原子%以下、特に30原子%以上、50原子%以下、モリブデンが0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下、酸素が0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下、窒素が30原子%以上、80原子%以下、特に40原子%以上、70原子%以下であることが好ましい。
また、位相シフト膜を複数層膜又は傾斜膜とする場合、遮光膜の除去に適用する非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)又は酸素系エッチング(O系)により強い耐性を持つ遷移金属の含有量が少ない又は含有しないケイ素化合物膜を最表面に形成することが好ましい。具体的には、SiO2やSiONを位相シフト膜の最表面に形成することが好ましい。特に、下層にエッチングストッパー層が無い位相シフト膜12、22において、仮に強い洗浄やエッチングマスク膜除去での強いエッチング条件を適用するなどして最表面のSiO2やSiONがダメージを受けたとしても、組成が同等である基板も同時にダメージを受けるため、基板に対しての位相差や透過率の変動を抑制することが可能である。
また、上層遮光膜13、23は、ケイ素を含有しないタンタル化合物からなり、窒素、ホウ素、酸素及び炭素から選ばれる1種以上を含有する単層膜、又はこれらの複数層膜もしくは傾斜膜であり、好ましくは窒化タンタルを主成分とする膜である。ケイ素を含有しないのは、非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)で加工が困難なSiO2やSiNが膜中に混成されることを防止するためである。
上層遮光膜13の膜厚は、位相シフト膜の透過率により変化するが、遮光膜(下層遮光膜がある場合には、これも含む、以下同じ)及び位相シフト膜及びエッチングマスク膜を合わせた露光波長に対するOD値(光学濃度)が2.5以上、より好ましくは2.8以上になるように調整する。例えば、位相シフト膜の透過率が6%の場合には、上層遮光膜13(下層遮光膜18を有する場合はその和、以下同じ)の膜厚は10nm以上35nm以下、特に15nm以上30nm以下が好ましい。
一方、上層遮光膜23(下層遮光膜28を有する場合はその和、以下同じ)の膜厚も、位相シフト膜の透過率により変化するが、エッチングマスク膜24は最終的に位相シフトマスク上に残らないため、露光波長に対するOD値(光学濃度)は遮光膜と位相シフト膜とを合わせて2.5以上、より好ましくは2.8以上になるように調整する。例えば、位相シフト膜の透過率が6%の場合には、遮光膜の膜厚は15nm以上50nm以下、特に20nm以上45nm以下が好ましい。
また、上層遮光膜23には、反射防止層としての機能を持たせてもよい。この場合、露光波長に対する反射率を例えば45%以下、特に30%以下に抑えることが、露光の際に位相シフトマスクと投影露光面との間での多重反射を抑制する上で好ましい。さらに、位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクの反射検査に用いる波長(例えば257nm)に対する反射率を例えば30%以下とすることが、欠陥を高精度で検出する上で好ましい。これら反射防止層としての効果を増大させるためには、遮光膜の表面側のガス含有量を増やしてより高屈折率、低消衰係数とする方法が一般的である。
上層遮光膜13の組成は、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)に対する耐性、非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)に対する加工性、そして各種薬液洗浄に対する耐性を実現するために、タンタルが50原子%以上、100原子%以下、特に60原子%以上、90原子%以下、窒素が0原子%以上、70原子%以下、特に10原子%以上、60原子%以下、酸素が0原子%以上、10原子%以下、特に0原子%以上、5原子%以下、炭素が0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下、ホウ素が0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下であることが好ましい。また、上層遮光膜23の組成は、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)に対する耐性、非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)に対する加工性、反射防止層としての効果、そして各種薬液洗浄に対する耐性を実現するために、タンタルが40原子%以上、90原子%以下、特に50原子%以上、80原子%以下、窒素が10原子%以上、70原子%以下、特に10原子%以上、60原子%以下、酸素が0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下、炭素が0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下、ホウ素が0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下であることが好ましい。
或いは、上層遮光膜は、タンタル化合物又はケイ素化合物からなると好ましい。前記タンタル化合物は、タンタルと、窒素、ホウ素、ケイ素、酸素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有すると好ましい。前記ケイ素化合物は、ケイ素を含有し、且つモリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、窒素、酸素、炭素から選ばれる1種以上とを含有すると好ましい。
下層遮光膜18,28は、ルテニウム単体、又はルテニウム含有量が50原子%以上のルテニウム化合物であり、具体的にはルテニウム単体、又はルテニウムと、窒素、ホウ素、炭素及び酸素から選ばれる1種類以上の素材、ニオブ及びジルコニウムから選ばれる1種類以上の素材のどちらか、もしくは両方との化合物からなると好ましい。下層遮光膜18,28の膜厚は、2nm以上30nm以下、特に十分なエッチング耐性と遮光性を両立するために5nm以上20nm以下が好ましい。下層遮光膜18,28のエッチング加工は、酸素系ドライエッチング(O系)で行うことができ、酸素ガスに加えて必要に応じてアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。また、下層遮光膜18,28は、フッ素系エッチング(F系)及び非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)に対して耐性を有する。
また、前記エッチングマスク膜14、24は、クロム単体又は、クロムと、窒素、酸素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有する単層膜、又はこれらの複数層膜もしくは傾斜膜である。エッチングマスク膜14の膜厚は、2nm以上30nm以下、特にエッチングマスク膜のドライエッチングの際のレジストダメージを低減し、レジストの薄膜化を実現するために、20nm以下が好ましい。また、エッチングマスク膜14は、反射防止層としての機能を持たせてもよい。この場合、露光波長に対する反射率を例えば45%以下、特に30%以下に抑えることが、露光の際に位相シフトマスクと投影露光面との間での多重反射を抑制する上で好ましい。さらに、位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクの反射検査に用いる波長(例えば257nm)に対する反射率を例えば30%以下とすることが、欠陥を高精度で検出する上で好ましい。これら反射防止層としての機能を持たせた場合のエッチングマスク膜14の膜厚は、十分な反射防止効果を得るために5nm以上が好ましい。一方、エッチングマスク膜24の膜厚は、2nm以上、30nm以下、特にエッチングマスク膜のドライエッチングの際のレジストダメージを低減し、レジストの薄膜化を実現するために、15nm以下が好ましく、更に、成膜時のピンホールや、エッチング時や洗浄時での膜消失を防止するために、3nm以上が好ましい。
エッチングマスク膜14の組成は、フッ素系エッチング(F系)と非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)と酸素系エッチング(O系)に対する耐性、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)に対する加工性、反射防止層としての効果、そして各種薬液洗浄に対する耐性を実現するために、クロムが30原子%以上、100原子%以下、特に35原子%以上、50原子%以下、酸素が0原子%以上、60原子%以下、特に20原子%以上、60原子%以下、窒素が0原子%以上、50原子%以下、特に0原子%以上、30原子%以下、炭素が0原子%以上、30原子%以下、特に0原子%以上、20原子%以下であることが好ましい。
また、エッチングマスク膜24の組成は、フッ素系エッチング(F系)と非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)と酸素系エッチング(O系)に対する耐性、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)に対する加工性、そして各種薬液洗浄に対する耐性を実現するために、クロムが30原子%以上、100原子%以下、特に50原子%以上、100原子%以下、酸素が0原子%以上、50原子%以下、特に0原子%以上、40原子%以下、窒素が0原子%以上、50原子%以下、特に0原子%以上、40原子%以下、炭素が0原子%以上、30原子%以下、特に0原子%以上、20原子%以下であることが好ましい。
続いて第5、第6の実施形態に係る位相シフトマスクブランクの説明を行う。第5、第6の実施形態に係る位相シフトマスクブランクは、遮光膜とエッチングマスク膜の間に反射防止膜の層が設けられていることが、第1〜第4の実施形態に係る位相シフトマスクブランクと異なる。
図5は、第5の実施形態に係る位相シフトマスクブランクを示す断面概略図である。図5の位相シフトマスクブランク10’は、露光波長に対して透明な基板11’と、基板11’上に成膜された位相シフト膜12’と、位相シフト膜12’上に成膜された遮光膜(上層遮光膜ともいう)13’と、遮光膜13’上に成膜された反射防止膜14’と、反射防止膜14’上に成膜されたエッチングマスク膜15’からなる。基板11’と位相シフト膜12’との間にエッチングストッパー層を有していない。この位相シフトマスクブランク10’を用いた位相シフトマスクでは、エッチングマスク膜15’が完全に除去されてマスク上に残らない。
図6は、第6の実施形態に係る位相シフトマスクブランクを示す断面概略図である。図6の位相シフトマスクブランク10’は、露光波長に対して透明な基板11’と、基板11’上に成膜された位相シフト膜12’と、位相シフト膜12’上に成膜された下層遮光膜18’と、下層遮光膜18’上に成膜された上層遮光膜13’と、上層遮光膜13’上に成膜された反射防止膜14’と、反射防止膜14’上に成膜されたエッチングマスク膜15’からなる。基板11’と位相シフト膜12’との間にエッチングストッパー層を有していない。この位相シフトマスクブランク10’を用いた位相シフトマスクでは、エッチングマスク膜15’が完全に除去されてマスク上に残らない。
ここで、前記露光波長に対して透明な基板11’に対する特別な制限はなく、石英ガラスやCaF2あるいはアルミノシリケートガラスなどが一般的である。
また、前記位相シフト膜12’は、ケイ素を含有し、且つ遷移金属、窒素、酸素及び炭素から選ばれる1種以上を含有し、具体的にはケイ素の酸化膜、窒化膜、酸窒化膜、もしくはケイ素および遷移金属の酸化膜、窒化膜、酸窒化膜の単層膜、又はこれらの複数層膜もしくは傾斜膜であり、組成と膜厚を適宜選択することで露光波長に対する透過率と位相差を調整させたものである。遷移金属としては、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウムなどを用いることができるが、モリブデンが好ましい。
透過率の値は、最終的な位相シフトマスク完成時に基板の透過率に対して3%以上、100%未満であり、所望のウェハパターンに応じて最適な透過率を適宜選択することが可能であるが、透過率5%以上、40%以下が一般的である。位相差の値は、最終的な位相シフトマスク完成時に170度以上190度以下、特に175度以上180度以下が好ましい。基板11’は、フッ素系エッチング(F系)を用いる位相シフト膜12’のパターニング及び反射防止膜14’の除去のマスク製造工程の際に、最終的に5nmから20nm程度掘り込まれる。したがって、位相シフト膜12’では、基板の掘り込み量を考慮して、マスク完成時に所望する値より浅い位相差で成膜する必要がある。位相シフト膜の膜厚は、所望する透過率と位相差の組み合わせにより変化するが、例えば透過率6%、位相差177度の位相シフト膜を成膜する場合、膜厚は60nm以上80nm以下が好ましい。
位相シフト膜12’の組成は、所望の透過率と位相差の組み合わせにより変化するが、例えば透過率6%、位相差177度のケイ素とモリブデンの酸窒化膜を成膜する場合、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)と非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)と酸素系エッチング(O系)に対する耐性、フッ素系エッチング(F系)に対する加工性、そして各種薬液洗浄に対する耐性を実現するために、ケイ素が20原子%以上、60原子%以下、特に30原子%以上、50原子%以下、モリブデンが0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下、酸素が0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下、窒素が30原子%以上、80原子%以下、特に40原子%以上、70原子%以下であることが好ましい。
また、位相シフト膜を複数層膜又は傾斜膜とする場合、遮光膜の除去に適用する非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)により強い耐性を持つ遷移金属の含有量が少ない又は含有しないケイ素化合物膜を最表面に形成することが好ましい。具体的には、SiO2やSiONを位相シフト膜の最表面に形成することが好ましい。特に、下層にエッチングストッパー層が無い位相シフト膜12’において、仮に強い洗浄やエッチングマスク膜除去での強いエッチング条件を適用するなどして最表面のSiO2やSiONがダメージを受けたとしても、組成が同等である基板も同時にダメージを受けるため、基板に対しての位相差や透過率の変動を抑制することが可能である。
また、前記遮光膜13’は、ケイ素を含有しないタンタル化合物からなり、窒素、ホウ素、酸素及び炭素から選ばれる1種以上を含有する単層膜、又はこれらの複数層膜もしくは傾斜膜であり、好ましくは窒化タンタルを主成分とする膜である。ケイ素を含有しないのは、非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)で加工が困難なSiO2やSiNが膜中に混成されることを防止するためである。遮光膜13’(下層遮光膜18’がある場合には、これも含む、以下同じ)の膜厚は、位相シフト膜の透過率により変化するが、反射防止膜及び遮光膜及び位相シフト膜を合わせた露光波長に対するOD値(光学濃度)が2.5以上、より好ましくは2.8以上になるように調整する。例えば、位相シフト膜の透過率が6%の場合、遮光膜13’の膜厚は10nm以上35nm以下、特に15nm以上30nm以下が好ましい。
遮光膜13’の組成は、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)に対する耐性、非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)に対する加工性、そして各種薬液洗浄に対する耐性を実現するために、タンタルが50原子%以上、100原子%以下、特に60原子%以上、90原子%以下、窒素が0原子%以上、70原子%以下、特に10原子%以上、60原子%以下、酸素が0原子%以上、10原子%以下、特に0原子%以上、5原子%以下、炭素が0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下、ホウ素が0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下であることが好ましい。
下層遮光膜18’は、ルテニウム単体、又はルテニウム含有量が50原子%以上のルテニウム化合物であり、具体的にはルテニウム単体、又はルテニウムと、窒素、ホウ素、炭素及び酸素から選ばれる1種類以上の素材、ニオブ及びジルコニウムから選ばれる1種類以上の素材のどちらか、もしくは両方との化合物からなると好ましい。下層遮光膜18,28の膜厚は、2nm以上、30nm以下、特に十分なエッチング耐性と遮光性を両立するために5nm以上、20nm以下が好ましい。その成膜は、上記のルテニウム単体又はルテニウム化合物をターゲットとして、イオンスパッタ装置を用いたスパッタ処理により行う。下層遮光膜18’のエッチング加工は、酸素系ドライエッチング(O系)で行うことができ、酸素ガスに加えて必要に応じてアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。また、下層遮光膜18’は、フッ素系エッチング(F系)及び非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)に対して耐性を有する。
また、前記反射防止膜14’は、ケイ素を含有しないタンタル化合物からなり、窒素、ホウ素、酸素及び炭素から選ばれる1種以上を含有する単層膜、又はこれらの複数層膜もしくは傾斜膜であり、好ましくは酸化タンタルを主成分とする膜である。したがって、遮光膜のスパッタ成膜とターゲットを変えずに、同じ成膜チャンバーで連続して成膜することができる。反射防止の機能としては、露光波長に対する反射率を例えば45%以下、特に30%以下に抑えることが、露光の際に位相シフトマスクと投影露光面との間での多重反射を抑制する上で好ましい。さらに、位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクの反射検査に用いる波長(例えば257nm)に対する反射率を例えば30%以下とすることが、欠陥を高精度で検出する上で好ましい。反射防止膜14’の膜厚は、2nm以上20nm以下、特に、十分な反射防止効果を得るために、15nm以下が好ましい。更に、成膜時のピンホールや、エッチング時や洗浄時での膜消失を防止するために、3nm以上が好ましい。
反射防止膜14’の組成は、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)と非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)に対する耐性、フッ素系エッチング(F系)に対する加工性、反射防止の効果、そして各種薬液洗浄に対する耐性を実現するために、タンタルが10原子%以上、70原子%以下、特に20原子%以上、60原子%以下、窒素が0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下、酸素が40原子%以上、90原子%以下、特に50原子%以上、80原子%以下、炭素が0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下、ホウ素が0原子%以上、20原子%以下、特に0原子%以上、10原子%以下であることが好ましい。
また、前記エッチングマスク膜15’は、クロム単体又は、クロムと、窒素、酸素及び炭素から選ばれる1種以上とを含有する単層膜、又はこれらの複数層膜もしくは傾斜膜である。エッチングマスク膜15’の膜厚は、2nm以上30nm以下、特にエッチングマスク膜のドライエッチングの際のレジストダメージを低減し、レジストの薄膜化を実現するために、15nm以下が好ましい。更に、成膜時のピンホールや、エッチング時や洗浄時での膜消失を防止するために、3nm以上が好ましい。
エッチングマスク膜15’の組成は、フッ素系エッチング(F系)と非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)と酸素系エッチング(O系)に対する耐性、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)に対する加工性、そして各種薬液洗浄に対する耐性を実現するために、クロムが30原子%以上、100原子%以下、特に50原子%以上、100原子%以下、酸素が0原子%以上、50原子%以下、特に0原子%以上、40原子%以下、窒素が0原子%以上、50原子%以下、特に0原子%以上、40原子%以下、炭素が0原子%以上、30原子%以下、特に0原子%以上、20原子%以下であることが好ましい。
上述した各実施形態に係る位相シフトマスクブランクの、位相シフト膜、遮光膜、反射防止膜、エッチングマスク膜は、いずれも公知の方法により成膜することができる。最も容易に均質性に優れた膜を得る方法としては、スパッタ成膜法が好ましく挙げられるが、スパッタ成膜法に限定する必要はない。
ターゲットとスパッタガスは膜組成によって選択される。例えば、クロムを含有する膜の成膜方法としては、クロムを含有するターゲットを用い、アルゴンガス等の不活性ガスのみ、酸素等の反応性ガスのみ、又は不活性ガスと反応性ガスとの混合ガス中で反応性スパッタリングを行う方法を挙げることができる。スパッタガスの流量は膜特性に合わせて調整すればよく、成膜中一定としてもよいし、酸素量や窒素量を膜の厚み方向に変化させたいときは、目的とする組成に応じて変化させてもよい。また、ターゲットに対する印加電力、ターゲットと基板の距離、成膜チャンバー内の圧力を調整しても良い。また、例えば、ケイ素と金属を含有する膜の成膜では、ターゲットとして、ケイ素と金属の含有比を調整したターゲットを単独で使用してもよいし、ケイ素ターゲット、金属ターゲット、及びケイ素と金属とからなるターゲットから複数のターゲットを適宜選択しても良い。
位相シフトマスクは、上述した各実施形態に係る位相シフトマスクブランクが有する各々の膜を、所望のパターンにパターニング又は除去することにより得られる。
ここで、基板上にエッチングストッパー層を設けないことによる効果について説明する。図7は、エッチングストッパー層を設けた比較例1に係わる位相シフトマスクブランクの有効エリアを拡大した模式図である。図7において、基板3上にエッチングストッパー層2が成膜され、エッチングストッパー層2上に位相シフト膜1が成膜される。
エッチングストッパー層2は、例えばケイ素とアルミニウムを含む混合膜で形成することができるが、図7に示すように、膜内に欠陥Cが存在する場合がある。この場合、露光光DUVが通過する領域に欠陥Cが存在すると、エッチングストッパー層2を通過する露光光の一部が妨げられ、高精度な露光を行えない虞れがある。
同様に、基板3の表面に、欠損Aや隆起Bなどの不具合が生じていた場合も、露光光DUVの通過を妨げる虞れがある。このような不具合は、基板3の表面が露出していれば、欠損Aは透明な素材で埋め、また隆起Bは削除するなどの修正処理を行うことができる。しかしながら、基板3上にエッチングストッパー層2を形成していた場合、上記の修正は不可能であるため、このような不具合が生じた位相シフトマスクブランクを廃棄しなくてはならず、歩留まりが悪化する。これに対し、本実施形態のようにエッチングストッパー層を設けなければ、上述した不具合は生じない。
次に、下層遮光膜としてルテニウム単体又はルテニウム化合物を用いる効果について説明する。第2,4,6の実施形態において、位相シフト膜と上層遮光膜との間に、下層遮光膜を設けている。このため、下層遮光膜の分だけ上層遮光膜の膜厚を薄くできる。たとえば、上層遮光膜を、タンタルを含む化合物で形成した場合、洗浄、エッチング、自然酸化等により生じる酸化により被膜が硬くなるため、除去に比較的長く時間がかかる。これに対しルテニウム単体又はルテニウム化合物を用いることで、処理時間をより短くすることができる。なお、最終的に不要な下層遮光膜は、上層遮光膜と共にエッチング除去されるので、例えばフッ素系ガスによる位相シフト膜の修正を妨げないという効果もある。
図8は、位相シフト膜を挟んでエッチングストッパー層を設けた比較例2に係わる位相シフトマスクの有効エリアを拡大した模式図である。図8において、基板3上に下層エッチングストッパー層2が成膜され、下層エッチングストッパー層2上に位相シフト膜1が成膜され、位相シフト膜1上に上層エッチングストッパー層2が成膜される。ここで、2つのエッチングストッパー層2は、例えばアルミニウム化合物を用いてなるものとする。
図8において、加工処理が完了した位相シフトマスクを検査したところ、例えば微細な異物の存在等に起因して、本来除去されるべき位置に欠陥Dが生じたものとする。この場合、修正加工によって欠陥Dを削除することが求められ、通常はフッ素ガスアシストによる電子線の照射によりその修正を行っている。しかしながら、図8の構成では、電子線が照射される位置に上層エッチングストッパー層2が成膜されているために、その下方の位相シフト膜1を削除することができない。したがって、加工が困難になるので、歩留まりの悪化を招くこととなる。
これに対し、図9に示す本実施形態の位相シフトマスクの場合、下層遮光膜は最終的に除去され、基板3上には位相シフト膜1のみが残るため、フッ素ガスアシストによる電子線EVの照射を妨げないから、欠陥Dの除去を容易に行うことができる。
本実施形態においては、タンタル化合物を用いた上層遮光膜のエッチングストッパー層として、ルテニウム単体又はルテニウム化合物を用いた下層遮光膜を用いている。したがって、エッチング耐性が異なるため、上層遮光膜の修正のストッパー層として下層遮光膜を使用できる。また、上層遮光膜と共に下層遮光膜により遮光効果を発揮できる。すなわち、下層遮光膜は、遮光機能とエッチング抑制機能の双方の役割を持つのである。
続いて、上で述べた第1〜第6の実施形態に係る位相シフトマスクブランクから作製される位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法の好適な実施形態を挙げる。
図10は、図1に示す位相シフトマスクブランク10を用いた位相シフトマスク100の製造方法を順に示す断面概略図である。既に説明した符号で示す部材は、図1と同じものである。図10(a)は、エッチングマスク膜14上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン15を形成する工程を示す。図10(b)は、レジストパターン15に沿って酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)によりエッチングマスク膜14をパターニングする工程を示す。図10(c)は、残存したレジストパターン15を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図10(d)は、エッチングマスク膜14のパターンに沿って非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)とフッ素系エッチング(F系)の両方、又はいずれか一方により遮光膜13をパターニングする工程を示す。
図10(e)は、エッチングマスク膜14及び遮光膜13のパターンに沿って、フッ素系ドライエッチング(F系)により位相シフト膜12をパターニングする工程を示す。図10(f)は、第2のレジストパターン16を新たに形成する工程を示す。図10(g)は、第2のレジストパターン16に覆われていない領域のエッチングマスク膜14を酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により除去する工程を示す。図10(h)は、第2のレジストパターン16に覆われていない領域の遮光膜13を非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)又は非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)とフッ素系エッチング(F系)の両方により除去する工程を示す。図10(i)は、残存した第2のレジストパターン16を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。上に述べた工程を実行することで、位相シフトマスク100が作製される。
この位相シフトマスク100では、エッチングマスク膜14が一部除去されずにマスク上に残る。また、図10(i)において、符号101で示される領域は、位相シフトマスク100上に形成される回路パターンの配置される領域を表し(以下ではこの領域を「有効エリア101」と呼ぶ)、一方符号102で示される領域は、回路パターンの配置される有効エリア101を取り囲むようにパターンが配置された領域で、以下ではこの領域のことを「外周部102」と呼ぶ。なお、有効エリアと外周部の定義は、以下の図11〜図15で説明する位相シフトマスクにおいても同じとする。なお、図10で説明した位相シフトマスク100の例では、有効エリア101内に形成されているパターンは基板11と位相シフト膜12のみから成り、遮光膜13とエッチングマスク膜14も積層されているパターンは外周部102のみに存在する。ただし別の実施形態として、有効エリア101内に、基板11と位相シフト膜12と遮光膜13とエッチングマスク膜14が積層されたパターンが形成されてもよい。
図11は、図2に示す位相シフトマスクブランク10を用いた位相シフトマスク100の製造方法を順に示す断面概略図である。既に説明した符号で示す部材は、図2と同じものである。図11(a)は、エッチングマスク膜14上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン15を形成する工程を示す。図11(b)は、レジストパターン15に沿って酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)によりエッチングマスク膜14をパターニングする工程を示す。図11(c)は、残存したレジストパターン15を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図11(d)は、エッチングマスク膜14のパターンに沿って非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)とフッ素系エッチング(F系)の両方、又はいずれか一方により上層遮光膜13をパターニングする工程を示す。図11(e)は、エッチングマスク膜14及び上層遮光膜13のパターンに沿って、酸素系エッチング(O系)により下層遮光膜18をエッチングする工程を示す。
図11(f)は、フッ素系ドライエッチング(F系)により位相シフト膜12をパターニングする工程を示す。図11(g)は、第2のレジストパターン16を新たに形成する工程を示す。図11(h)は、第2のレジストパターン16に覆われていない領域のエッチングマスク膜14を酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により除去する工程を示す。図11(i)は、第2のレジストパターン16に覆われていない領域の上層遮光膜13を非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)とフッ素系エッチング(F系)の両方、又はいずれか一方により除去する工程を示す。図11(j)は、第2のレジストパターン16に覆われていない領域の下層遮光膜18を酸素系エッチング(O系)により除去する工程を示す。図11(k)は、残存した第2のレジストパターン16を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。上に述べた工程を実行することで、位相シフトマスク100が作製される。
この位相シフトマスク100では、エッチングマスク膜14が一部除去されずにマスク上に残る。また、図11(k)において、符号101で示される領域は有効エリアを表し、符号102で示される領域は外周部を表している。図11(k)に示された位相シフトマスク100の例では、有効エリア101内に形成されているパターンは基板11と位相シフト膜12のみから形成され、上層遮光膜13、下層遮光膜18及びエッチングマスク膜14が積層されているパターンは外周部102のみに存在する。ただし別の実施形態として、有効エリア101内に、基板11と位相シフト膜12と上層遮光膜13と下層遮光膜18及びエッチングマスク膜14が積層されたパターンが形成されてもよい。
次に、図12は、図3に示す位相シフトマスクブランク20を用いた位相シフトマスク200の製造方法を順に示す断面概略図である。既に説明した符号で示す部材は、図3と同じものである。図12(a)は、エッチングマスク膜24上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン25を形成する工程を示す。図12(b)は、レジストパターン25に沿って酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)によりエッチングマスク膜24をパターニングする工程を示す。図12(c)は、残存したレジストパターン25を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図12(d)は、エッチングマスク膜24のパターンに沿って非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)とフッ素系エッチング(F系)の両方、又はいずれか一方により遮光膜23をパターニングする工程を示す。
図12(e)は、エッチングマスク膜24及び遮光膜23のパターンに沿って、フッ素系ドライエッチング(F系)により位相シフト膜22をパターニングする工程を示す。図12(f)は、エッチングマスク膜24を酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により除去する工程を示す。図12(g)は、第2のレジストパターン26を新たに形成する工程を示す。図12(h)は、第2のレジストパターン26に覆われていない領域の遮光膜23を非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)又は非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)とフッ素系エッチング(F系)の両方により除去する工程を示す。図12(i)は、残存した第2のレジストパターン26を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。上に述べた工程を実行することで、位相シフトマスク200が作製される。
この位相シフトマスク200では、エッチングマスク膜24が完全に除去されてマスク上に残らない。また、図12(i)において、符号201で示される領域は有効エリアを表し、符号202で示される領域は外周部を表している。図12(i)に示された位相シフトマスク200の例では、有効エリア201内に形成されているパターンは基板21と位相シフト膜22のみから形成され、遮光膜23も積層されているパターンは外周部202のみに存在する。ただし別の実施形態として、有効エリア201内に、基板21と位相シフト膜22と遮光膜23が積層されたパターンが形成されてもよい。
次に、図13は、図4に示す位相シフトマスクブランク20を用いた位相シフトマスク200の製造方法を順に示す断面概略図である。既に説明した符号で示す部材は、図4と同じものである。図13(a)は、エッチングマスク膜24上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン25を形成する工程を示す。図13(b)は、レジストパターン25に沿って酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)によりエッチングマスク膜24をパターニングする工程を示す。図13(c)は、残存したレジストパターン25を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図13(d)は、エッチングマスク膜24のパターンに沿って非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)とフッ素系エッチング(F系)の両方、又はいずれか一方により上層遮光膜23をパターニングする工程を示す。図13(e)は、エッチングマスク膜24及び上層遮光膜23のパターンに沿って、酸素系エッチング(O系)により下層遮光膜28をエッチングする工程を示す。
図13(f)は、エッチングマスク膜24及び遮光膜23と下層遮光膜28のパターンに沿って、フッ素系ドライエッチング(F系)により位相シフト膜22をパターニングする工程を示す。図13(g)は、エッチングマスク膜24を酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により除去する工程を示す。図13(h)は、第2のレジストパターン26を新たに形成する工程を示す。図13(i)は、第2のレジストパターン26に覆われていない領域の遮光膜23を非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)とフッ素系エッチング(F系)の両方、又はいずれか一方により除去する工程を示す。図13(j)は、第2のレジストパターン26に覆われていない領域の下層遮光膜28を酸素系エッチング(O系)により除去する工程を示す。図13(k)は、残存した第2のレジストパターン26を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。上に述べた工程を実行することで、位相シフトマスク200が作製される。
この位相シフトマスク200では、エッチングマスク膜24が完全に除去されてマスク上に残らない。また、図13(k)において、符号201で示される領域は有効エリアを表し、符号202で示される領域は外周部を表している。図13(k)に示された位相シフトマスク200の例では、有効エリア201内に形成されているパターンは基板21と位相シフト膜22のみから形成され、上層遮光膜23及び下層遮光膜28も積層されているパターンは外周部202のみに存在する。ただし別の実施形態として、有効エリア201内に、基板21と位相シフト膜22と上層遮光膜23及び下層遮光膜28が積層されたパターンが形成されてもよい。
図10(a)、図11(a)、図12(a)、及び図13(a)の工程において、レジスト膜の材料としては、ポジ型レジストとネガ型レジストのいずれが用いられても良いが、高精度パターンの形成を可能とする電子ビーム描画用の化学増幅型レジストを用いることが好ましい。レジスト膜の膜厚は、例えば50nm以上、200nm以下の範囲である。特に、微細なパターン形成が求められる位相シフトマスクを作製する場合、パターン倒れを防止する上で、レジストパターンのアスペクト比が大きくならないようにレジスト膜を薄膜化することが必要であり、150nm以下の膜厚が好ましい。一方、レジスト膜の膜厚の下限は用いるレジスト材料のエッチング耐性などの条件を総合的に考慮して決定され、60nm以上が好ましい。レジスト膜として電子ビーム描画用の化学増幅型のものを使用する場合、描画の際の電子ビームのエネルギー密度は10から100μC/cm2の範囲であり、この描画の後に加熱処理及び現像処理を施してレジストパターンを得る。
また、図10(b)、図11(b)、図12(b)、及び図13(b)の工程において、エッチングマスク膜をパターニングする酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)の条件は、従来よりクロム化合物膜をドライエッチングする際に用いられてきた公知のものとしてよく、塩素ガスと酸素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の遮光膜は、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
また、図10(c)、図11(c)、図12(c)、及び図13(c)の工程において、レジストパターンの剥離除去は、ドライエッチングにより行うことも可能だが、一般には剥離液によりウェット剥離する。
また、図10(d)、図11(d)、図12(d)、及び図13(d)の工程において、上層遮光膜をパターニングする非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)の条件は、塩素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。上層のエッチングマスク膜と下層遮光膜は、非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。また、上層遮光膜の最表面組成がエッチングや洗浄により変化し、非酸素含有塩素系エッチング(Cl系)でのエッチングレートが低下した場合は、遮光膜最表面をより効率良く除去する目的で、非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)の前にフッ素系エッチング(F系)を加えることもできる。
また、図11(e)、及び図13(e)の工程において、下層遮光膜をパターニングする酸素系ドライエッチング(O)系は、酸素ガスに加えて必要に応じてアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。エッチングマスク膜と上層遮光膜と位相シフト膜は、酸素系ドライエッチング(O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
また、図10(e)、図11(f)、図12(e)、及び図13(f)の工程において、位相シフト膜をパターニングするフッ素系ドライエッチング(F系)の条件は、従来よりケイ素系化合物膜をドライエッチングする際に用いられてきた公知のものとしてよく、フッ素系ガスとしては、CF4やC2F6やSF6が一般的であり、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。
最上層のエッチングマスク膜は、フッ素系ドライエッチング(F系)に対して耐性を有しているため、遮光膜と共に本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。図10(e)、図11(f)、図12(e)、及び図13(f)では、同時に基板を1nmから3nm程度掘り込み、位相シフト膜の抜け不良を防止すると共に、位相差の微調整を行うことが一般的である。
また、図10(f)、図11(g)、図12(g)、及び図13(h)の工程において、描画方式は、電子ビーム描画よりも精度が落ちるレーザー描画を用いても良く、レジスト膜を塗布し、電子ビーム描画又はレーザー描画を行い、その後に現像処理を施すことで、第2のレジストパターンを得る。
また、図12(f)、及び図13(g)の工程において、エッチングマスク膜を除去する酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)の条件は、従来よりクロム化合物膜の除去に用いられてきた公知のものとしてよく、塩素ガスと酸素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の遮光膜、位相シフト膜、基板は、いずれも酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。したがって、エッチングマスク膜の残渣(除去残り)を抑制できる横方向のエッチングが進み易いエッチング条件を選択することが可能となる。横方向のエッチングが進み易いエッチング条件としては、図12(b)、及び図13(b)の工程に用いるエッチング条件よりも高圧力(低真空)、大オーバーエッチング量が好ましい。ここでのオーバーエッチング量とは、膜を抜ききるエッチング時間に対してその後に延長して行うエッチング時間の比率である。
また、図10(h)、図11(i)、図12(h)、及び図13(i)の工程において、上層遮光膜を除去する非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)の条件は、塩素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の下層遮光膜、位相シフト膜、基板は、いずれも非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
また、図11(j)、及び図13(j)の工程において、下層遮光膜を除去する酸素系ドライエッチング(O系)の条件は、酸素ガスに加えて必要に応じてアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の位相シフト膜、基板は、いずれも酸素系ドライエッチング(O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
したがって、遮光膜の残渣(除去残り)を抑制できる横方向のエッチングが進み易いエッチング条件を選択することが可能となる。横方向のエッチングが進み易いエッチング条件としては、図10(d)、図11(d)、(e)、図12(d)及び図13(d),(e)の工程に用いるエッチング条件よりも高圧力(低真空)、大オーバーエッチング量が好ましい。ここでのオーバーエッチング量とは、膜を抜ききるエッチング時間に対してその後に延長して行うエッチング時間の比率である。
また、図10(i)、図11(k)、図12(i)、及び図13(k)の工程において、レジストパターンの剥離除去は、ドライエッチングにより行うことも可能だが、一般には剥離液によりウェット剥離する。
続いて第5、第6の実施形態に係る位相シフトマスクブランクから作製される、位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法を説明する。図14は、図5に示す位相シフトマスクブランク10’を用いた位相シフトマスク100’の製造方法を説明する図である。既に説明した符号で示す部材は、図5と同じものである。図14(a)は、エッチングマスク膜15’上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン16’を形成する工程を示す。図14(b)は、レジストパターン16’に沿って酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)によりエッチングマスク膜15’をパターニングする工程を示す。図14(c)は、残存したレジストパターン16’を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図14(d)は、エッチングマスク膜15’のパターンに沿ってフッ素系ドライエッチング(F系)により反射防止膜14’をパターニングする工程を示す。図14(e)は、エッチングマスク膜15’及び反射防止膜14’のパターンに沿って非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)とフッ素系エッチング(F系)の両方、又はいずれか一方により遮光膜13’をパターニングする工程を示す。
図14(f)は、エッチングマスク膜15’及び反射防止膜14’及び遮光膜13’のパターンに沿って、フッ素系ドライエッチング(F系)により位相シフト膜12’をパターニングする工程を示す。図14(g)は、エッチングマスク膜15’を酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により除去する工程を示す。図14(h)は、第2のレジストパターン17’を新たに形成する工程を示す。図14(i)は、第2のレジストパターン17’に覆われていない領域の反射防止膜14’をフッ素系ドライエッチング(F系)により除去する工程を示す。図14(j)は、第2のレジストパターン17’に覆われていない領域の遮光膜13’を非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)又は非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)とフッ素系エッチング(F系)の両方により除去する工程を示す。図14(k)は、残存した第2のレジストパターン17’を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。上に述べた工程を実行することで、位相シフトマスク100’が作製される。
この位相シフトマスク100’では、エッチングマスク膜15’が完全に除去されてマスク上に残らない。また、図14(k)において、符号101’で示される領域は有効エリアを表し、符号102’で示される領域は外周部を表す。図14(k)の位相シフトマスク100’の例では、有効エリア101’内に形成されているパターンは基板11’と位相シフト膜12’のみから成り、遮光膜13’や反射防止膜14’も積層されているパターンは外周部102’のみに存在する。ただし別の実施形態として、有効エリア101’内に、基板11’と位相シフト膜12’と遮光膜13’と反射防止膜14’が積層されたパターンが形成されてもよい。
図15は、図6に示す位相シフトマスクブランク10’を用いた位相シフトマスク100’の製造方法を説明する図である。既に説明した符号で示す部材は、図6と同じものである。図15(a)は、エッチングマスク膜15’上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン16’を形成する工程を示す。図15(b)は、レジストパターン16’に沿って酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)によりエッチングマスク膜15’をパターニングする工程を示す。図15(c)は、残存したレジストパターン16’を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。図15(d)は、エッチングマスク膜15’のパターンに沿ってフッ素系ドライエッチング(F系)により反射防止膜14’をパターニングする工程を示す。図15(e)は、エッチングマスク膜15’及び反射防止膜14’のパターンに沿って非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)とフッ素系エッチング(F系)の両方、又はいずれか一方により上層遮光膜13’をパターニングする工程を示す。図15(f)は、エッチングマスク膜15’及び反射防止膜14’並びに上層遮光膜13’のパターンに沿って酸素系ドライエッチング(O系)により下層遮光膜18’をパターニングする工程を示す。
図15(g)は、エッチングマスク膜15’及び反射防止膜14’及び上層遮光膜13’と下層遮光膜18’のパターンに沿って、フッ素系ドライエッチング(F系)により位相シフト膜12’をパターニングする工程を示す。図15(h)は、エッチングマスク膜15’を酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により除去する工程を示す。図15(i)は、第2のレジストパターン17’を新たに形成する工程を示す。図15(j)は、第2のレジストパターン17’に覆われていない領域の反射防止膜14’をフッ素系ドライエッチング(F系)により除去する工程を示す。図15(k)は、第2のレジストパターン17’に覆われていない領域の上層遮光膜13’を非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)とフッ素系エッチング(F系)の両方、又はいずれか一方により除去する工程を示す。図15(l)は、第2のレジストパターン17’に覆われていない領域の下層遮光膜18’を酸素系ドライエッチング(O系)により除去する工程を示す。図15(m)は、残存した第2のレジストパターン17’を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。上に述べた工程を実行することで、位相シフトマスク100’が作製される。
この位相シフトマスク100’では、エッチングマスク膜15’が完全に除去されてマスク上に残らない。また、図15(m)において、符号101’で示される領域は有効エリアを表し、符号102’で示される領域は外周部を表す。図15(m)の位相シフトマスク100’の例では、有効エリア101’内に形成されているパターンは基板11’と位相シフト膜12’のみから成り、上層遮光膜13’、下層遮光膜18’や反射防止膜14’も積層されているパターンは外周部102’のみに存在する。ただし別の実施形態として、有効エリア101’内に、基板11’と位相シフト膜12’と上層遮光膜13’と下層遮光膜18’と反射防止膜14’が積層されたパターンが形成されてもよい。
図14(a)及び図15(a)の工程において、レジスト膜の材料としては、ポジ型レジストでもネガ型レジストでも用いることができるが、高精度パターンの形成を可能とする電子ビーム描画用の化学増幅型レジストを用いることが好ましい。レジスト膜の膜厚は、例えば50nm以上200nm以下の範囲である。特に、微細なパターン形成が求められる位相シフトマスクを作製する場合、パターン倒れを防止する上で、レジストパターンのアスペクト比が大きくならないようにレジスト膜を薄膜化することが必要であり、150nm以下の膜厚が好ましい。一方、レジスト膜の膜厚の下限は用いるレジスト材料のエッチング耐性などの条件を総合的に考慮して決定され、60nm以上が好ましい。レジスト膜として電子ビーム描画用の化学増幅型のものを使用する場合、描画の際の電子ビームのエネルギー密度は10から100μC/cm2の範囲であり、この描画の後に加熱処理及び現像処理を施してレジストパターンを得る。
また、図14(b)及び図15(b)の工程において、エッチングマスク膜をパターニングする酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)の条件は、従来よりクロム化合物膜をドライエッチングする際に用いられてきた公知のものとしてよく、塩素ガスと酸素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の反射防止膜は、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
また、図14(c)及び図15(c)の工程において、レジストパターンの剥離除去は、ドライエッチングにより行うことも可能だが、一般には剥離液によりウェット剥離する。
また、図14(d)及び図15(d)の工程において、反射防止膜をパターニングするフッ素系ドライエッチング(F系)の条件は、フッ素系ガスとしてCF4やC2F6やSF6が一般的であり、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。上層のエッチングマスク膜は、フッ素系ドライエッチング(F系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。また、下層の遮光膜はフッ素系ドライエッチング(F系)でも加工できるため、本工程にて膜全てを抜き切らない程度に遮光膜をパターニングしてもよい。
また、図14(e)及び図15(e)の工程において、上層遮光膜をパターニングする非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)の条件は、塩素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。最上層のエッチングマスク膜と下層の位相シフト膜は、非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
また、図15(f)の工程において、下層遮光膜をパターニングする酸素系ドライエッチング(O系)の条件は、酸素ガスに加えて必要に応じてアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。上層遮光膜と下層の位相シフト膜は、酸素系ドライエッチング(O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
また、図14(f)及び図15(g)の工程において、位相シフト膜をパターニングするフッ素系ドライエッチング(F系)の条件は、従来よりケイ素系化合物膜をドライエッチングする際に用いられてきた公知のものとしてよく、フッ素系ガスとしては、CF4やC2F6やSF6が一般的であり、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。最上層のエッチングマスク膜は、フッ素系ドライエッチング(F系)に対して耐性を有しているため、反射防止膜及び遮光膜と共に本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。図14(f)及び図15(g)では、同時に基板を1nmから3nm程度掘り込み、位相シフト膜の抜け不良を防止すると共に、位相差の微調整を行うことが一般的である。
また、図14(g)及び図15(h)の工程において、エッチングマスク膜を除去する酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)の条件は、従来よりクロム化合物膜の除去に用いられてきた公知のものとしてよく、塩素ガスと酸素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の反射防止膜、遮光膜、位相シフト膜、基板は、いずれも酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。したがって、エッチングマスク膜の残渣(除去残り)を抑制できる横方向のエッチングが進み易いエッチング条件を選択することが可能となる。横方向のエッチングが進み易いエッチング条件としては、図14(b)及び図15(b)の工程に用いるエッチング条件よりも高圧力(低真空)、大オーバーエッチング量が好ましい。ここでのオーバーエッチング量とは、膜を抜ききるエッチング時間に対してその後に延長して行うエッチング時間の比率である。
また、図14(h)及び図15(i)の工程において、描画方式は、電子ビーム描画よりも精度が落ちるレーザー描画を用いても良く、レジスト膜を塗布し、電子ビーム描画又はレーザー描画を行い、その後に現像処理を施すことで、第2のレジストパターンを得る。
また、図14(i)及び図15(j)の工程において、反射防止膜を除去するフッ素系ドライエッチング(F系)の条件は、フッ素系ガスとしてCF4やC2F6やSF6が一般的であり、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の遮光膜はフッ素系ドライエッチング(F系)でも除去できるため、本工程にて膜の一部又は全てを除去してもよい。図14(i)及び図15(j)では、同時に基板も掘り込まれる。したがって、反射防止膜を完全に除去し、且つ所望の位相差を実現するためには、図14(g)及び図15(h)での掘り込み量と合わせた最終的な基板の掘り込み量を5nmから20nmに調整することが好ましい。
また、図14(j)及び図15(k)の工程において、上層遮光膜を除去する非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)の条件は、塩素ガスに加えて必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の下層遮光膜、位相シフト膜、基板は、いずれも非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
また、図15(l)の工程において、下層遮光膜を除去する酸素系ドライエッチング(O系)の条件は、酸素ガスに加えて必要に応じてアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の位相シフト膜、基板は、いずれも酸素系ドライエッチング(O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
したがって、遮光膜の残渣(除去残り)を抑制できる横方向のエッチングが進み易いエッチング条件を選択することが可能となる。横方向のエッチングが進み易いエッチング条件としては、図14(e)及び図15(e)、(f)の工程に用いるエッチング条件よりも高圧力(低真空)、大オーバーエッチング量が好ましい。ここでのオーバーエッチング量とは、膜を抜ききるエッチング時間に対してその後に延長して行うエッチング時間の比率である。
また、図14(k)及び図15(m)の工程において、レジストパターンの剥離除去は、ドライエッチングにより行うことも可能だが、一般には剥離液によりウェット剥離する。
以上、各実施形態に係る位相シフトマスクブランクを用いて位相シフトマスクを作製する方法の例を説明したが、マスク検査にて欠陥を検出した場合は、上で説明した方法の途中にこの欠陥を修正する工程が加わる場合がある。欠陥の修正方法には、欠陥の種類や大きさにより様々な方法があり得るが、位相シフト膜の一部が所望のサイズより大きくなる黒欠陥の場合は、フッ素系ガスを供給しつつ欠陥部分に電子線を照射することで欠陥部分のみを精度良くエッチングにより除去する修正方法(電子線修正)が一般的である。本実施形態では、ルテニウム単体又はルテニウム化合物を用いた下層遮光膜を最終的に除去するので、電子線修正を妨げることがない。
次に、上で説明した工程で製造された位相シフトマスクに、エッチングマスク膜及び上層遮光膜(及び下層遮光膜)の残渣が発生した場合の、残渣修正方法の好適な実施形態を説明する。
図16は、図1に示す位相シフトマスクブランク10を用いた位相シフトマスク100のエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣修正方法を示す拡大断面概略図である。図16(a)は、位相シフト膜12上にエッチングマスク膜の残渣14a及び遮光膜の残渣13aが存在するマスクの一部分の様子を示す。
次に、図16(b)は、残渣13a及び14aが発生した領域を覆わないように残渣修正用のレジストパターン17を新たに形成する工程を示す。本工程では、レジスト膜を成膜した後、電子ビーム描画又はレーザー描画を行った後、現像処理することで、レジストパターン17を得る。また、残渣13a及び14aが発生した領域にスポット露光を施した後、現像処理することでレジストパターン17を得てもよい。
次に、図16(c)は、レジストパターン17に覆われていない領域のエッチングマスク膜の残渣14aを酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により除去する工程を示す。遮光膜の残渣13a及び位相シフト膜12及び基板11は、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有するため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。エッチング条件は、エッチングマスク膜の残渣14aを除去するため、横方向のエッチングが進み易い条件を選択することが好ましい。横方向のエッチングが進み易いエッチング条件は、図10(g)の工程に用いるものと同様である。
次に、図16(d)は、レジストパターン17に覆われていない領域の遮光膜の残渣13aを非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)により除去する工程を示す。位相シフト膜12及び基板11は、非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)に対して耐性を有するため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。エッチング条件は、遮光膜の残渣13aを除去するため、横方向のエッチングが進み易い条件を選択することが望ましい。横方向のエッチングが進み易いエッチング条件は、図10(h)の工程に用いるものと同様である。
次に、図16(e)は、残存したレジストパターン17を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。剥離除去はドライエッチングにより行うことも可能だが、一般には剥離液によりウェット剥離する。本工程により、位相シフトマスク100のエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣修正が完了する。
図17は、図2に示す位相シフトマスクブランク10を用いた位相シフトマスク100のエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣修正方法を示す拡大断面概略図である。図17(a)は、位相シフト膜12上にエッチングマスク膜の残渣14a及び上層遮光膜の残渣13a及び下層遮光膜の残渣18aが存在するマスクの一部分の様子を示す。
次に、図17(b)は、残渣13a、14a、18aが発生した領域を覆わないように残渣修正用のレジストパターン17を新たに形成する工程を示す。本工程では、レジスト膜を成膜した後、電子ビーム描画又はレーザー描画を行った後、現像処理することで、レジストパターン17を得る。また、残渣13a、14a、18aが発生した領域にスポット露光を施した後、現像処理することでレジストパターン17を得てもよい。
次に、図17(c)は、レジストパターン17に覆われていない領域のエッチングマスク膜の残渣14aを酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により除去する工程を示す。上層遮光膜の残渣13a、下層遮光膜の残渣18a、位相シフト膜12及び基板11は、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有するため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。エッチング条件は、エッチングマスク膜の残渣14aを除去するため、横方向のエッチングが進み易い条件を選択することが好ましい。横方向のエッチングが進み易いエッチング条件は、図11(h)の工程に用いるものと同様である。
次に、図17(d)は、レジストパターン17に覆われていない領域の上層遮光膜の残渣13aを非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)により除去する工程を示す。下層遮光膜の残渣18a、位相シフト膜12及び基板11は、非酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl系)に対して耐性を有するため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。エッチング条件は、上層遮光膜の残渣13aを除去するため、横方向のエッチングが進み易い条件を選択することが望ましい。横方向のエッチングが進み易いエッチング条件は、図11(i)の工程に用いるものと同様である。
次に、図17(e)は、レジストパターン17に覆われていない領域の下層遮光膜の残渣18aを酸素系ドライエッチング(O系)により除去する工程を示す。位相シフト膜12及び基板11は、酸素系ドライエッチング(O系)に対して耐性を有するため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。エッチング条件は、下層遮光膜の残渣18aを除去するため、横方向のエッチングが進み易い条件を選択することが望ましい。横方向のエッチングが進み易いエッチング条件は、図11(j)の工程に用いるものと同様である。
次に、図17(f)は、残存したレジストパターン17を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。剥離除去はドライエッチングにより行うことも可能だが、一般には剥離液によりウェット剥離する。本工程により、位相シフトマスク100のエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣修正が完了する。
次に、図14、15に示す工程で作製される位相シフトマスクの製造中にエッチングマスク膜の残渣が発生した場合の残渣修正方法の好適な実施形態を説明する。
エッチングマスク膜の除去は、図14(g)及び図15(h)に示す工程にて行うが、ここでエッチングマスク膜の一部が除去しきれず反射防止膜上に残渣として残った場合、図14(g)及び図15(h)に示す工程の後に、反射マスク検査を行えば、この残渣を検出することができる。
次に、検出したエッチングマスク膜の残渣を酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により除去する。ここで、反射防止膜、上層遮光膜、下層遮光膜、位相シフト膜、基板は、いずれも酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有するため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。エッチング条件は、エッチングマスク膜の残渣を除去するため、横方向のエッチングが進み易い条件を選択することが好ましい。横方向のエッチングが進み易いエッチング条件は、図14(g)及び図15(h)の工程に用いるものと同様である。
次に、反射マスク検査またはSEM観察にて検出したエッチングマスク膜の残渣が完全に除去されていることを確認する。本工程により、位相シフトマスクのエッチングマスク膜の残渣修正が完了する。この後、図14(h)及び図15(i)以降に示される工程を行い、位相シフトマスクの製造を継続するとよい。
以下、実施例により、本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる位相シフト膜を66nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素からなる遮光膜を28nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=85:15(原子%比)であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素からなるエッチングマスク膜を18nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=45:45:10(原子%比)であった。また、分光光度計にてこのエッチングマスク膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、3.2であった。
このようにして、石英基板の上にケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる位相シフト膜、タンタルと窒素からなる遮光膜、クロムと酸素と窒素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚150nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して下層の遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均2nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は6.1%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、2nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより5%改善することを確認した。
次に、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣を検出した本実施例の位相シフトマスクの上にポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって残渣部周辺のみに描画を行った。その後、現像を行い、残渣部周辺のみが開口したレジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、本実施例の位相シフトマスクのエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣修正を完了した。この位相シフトマスクを欠陥検査したところ、エッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が完全に除去されていることを確認した。
(実施例2)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる位相シフト膜を66nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にイオンスパッタ装置を用いて、ルテニウムからなる下層遮光膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはルテニウムを用い、スパッタガスはキセノンを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ru=100(原子%比)であった。
この下層遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素からなる上層遮光膜を18nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=85:15(原子%比)であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素からなるエッチングマスク膜を18nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=45:45:10(原子%比)であった。また、分光光度計にてこのエッチングマスク膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、3.2であった。
このようにして、石英基板の上にケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる位相シフト膜、ルテニウムからなる下層遮光膜、タンタルと窒素からなる上層遮光膜、クロムと酸素と窒素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚150nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して上層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層遮光膜に対して下層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均2nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜を除去した。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は6.1%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、2nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより7%改善することを確認した。上層遮光膜が薄くなったため、実施例1より改善率が高くなっている。
次に、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び上層遮光膜及び下層遮光膜の残渣を検出した本実施例の位相シフトマスクの上にポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって残渣部周辺のみに描画を行った。その後、現像を行い、残渣部周辺のみが開口したレジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜の残渣を除去した。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、本実施例の位相シフトマスクのエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣修正を完了した。この位相シフトマスクを欠陥検査したところ、エッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が完全に除去されていることを確認した。
(実施例3)
石英基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素と窒素からなる位相シフト膜を68nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと窒素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:N=50:50(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素からなる遮光膜を26nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=70:30(原子%比)であった。また、分光光度計にてこの遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、2.9であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜を13nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
このようにして、石英基板の上にケイ素と窒素からなる位相シフト膜、タンタルと窒素からなる遮光膜、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚150nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して下層の遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均2nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は5.5%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、3nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより5%改善することを確認した。
次に、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣を検出した本実施例の位相シフトマスクの上にポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって残渣部周辺のみに描画を行った。その後、現像を行い、残渣部周辺のみが開口したレジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、本実施例の位相シフトマスクのエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣修正を完了した。この位相シフトマスクを欠陥検査したところ、エッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が完全に除去されていることを確認した。
(実施例4)
石英基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素と窒素からなる位相シフト膜を61nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと窒素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:N=50:50(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にイオンスパッタ装置を用いて、ルテニウム化合物からなる下層遮光膜を17nmの厚さで成膜した。ターゲットはルテニウムを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ru:N=95:5(原子%比)であった。
この下層遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素からなる上層遮光膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この上層遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=70:30(原子%比)であった。また、分光光度計にてこの遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、2.9であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜を13nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
このようにして、石英基板の上にケイ素と窒素からなる位相シフト膜、ルテニウム化合物からなる下層遮光膜、タンタルと窒素からなる上層遮光膜、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚150nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜をパターニングした。エッチングガスはCF4とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して上層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層遮光膜に対して下層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均2nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜を除去した。エッチングガスはCF4とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。オーバーエッチングは、石英基板を平均18nm掘り込んだ時点で停止した。これにより位相シフト膜の厚さを61nmとしたことと相まって、所望の位相差を実現できる。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜を除去した。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は7.4%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、3nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより9%改善することを確認した。上層遮光膜が薄くなったため、実施例3より改善率が高くなっている。
次に、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣を検出した本実施例の位相シフトマスクの上にポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって残渣部周辺のみに描画を行った。その後、現像を行い、残渣部周辺のみが開口したレジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜の残渣を除去した。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、本実施例の位相シフトマスクのエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣修正を完了した。この位相シフトマスクを欠陥検査したところ、エッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が完全に除去されていることを確認した。
(実施例5)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる第1の位相シフト膜を62nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。続いて、第1の位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素と酸素からなる第2の位相シフト膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:O=33:67(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素からなる遮光膜を28nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=85:15(原子%比)であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素からなるエッチングマスク膜を18nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=45:45:10(原子%比)であった。また、分光光度計にてこのエッチングマスク膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、3.1であった。
このようにして、石英基板の上にケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる第1の位相シフト膜、ケイ素と酸素からなる第2の位相シフト膜、タンタルと窒素からなる遮光膜、クロムと酸素と窒素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚150nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して下層の遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、第1と第2の位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均2nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は7.2%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、2nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより5%改善することを確認した。
次に、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣を検出した本実施例の位相シフトマスクの上にポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって残渣部周辺のみに描画を行った。その後、現像を行い、残渣部周辺のみが開口したレジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは60Wに設定した。このエッチング条件では石英基板が2nmのダメージを受けることを事前の評価で確認してある。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、本実施例の位相シフトマスクのエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣修正を完了した。この位相シフトマスクを欠陥検査したところ、エッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が完全に除去されていることを確認した。また、この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、残渣修正前の値から変動していないことを確認した。
(実施例6)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる第1の位相シフト膜を62nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。続いて、第1の位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素と酸素からなる第2の位相シフト膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:O=33:67(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にイオンスパッタ装置を用いて、ルテニウム化合物からなる下層遮光膜を5nmの厚さで成膜した。ターゲットはルテニウムを用い、スパッタガスはキセノンとホウ素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ru:B=80:20(原子%比)であった。
この下層遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素からなる上層遮光膜を24nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=85:15(原子%比)であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素からなるエッチングマスク膜を18nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=45:45:10(原子%比)であった。また、分光光度計にてこのエッチングマスク膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、3.1であった。
このようにして、石英基板の上にケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる第1の位相シフト膜、ケイ素と酸素からなる第2の位相シフト膜、ルテニウム化合物からなる下層遮光膜、タンタルと窒素からなる上層遮光膜、クロムと酸素と窒素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚150nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して上層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層遮光膜に対して下層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、第1と第2の位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均2nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜を除去した。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は7.2%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、2nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより6%改善することを確認した。上層遮光膜が薄くなったため、実施例5より改善率が高くなっている。
次に、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣を検出した本実施例の位相シフトマスクの上にポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって残渣部周辺のみに描画を行った。その後、現像を行い、残渣部周辺のみが開口したレジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜を除去した。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、本実施例の位相シフトマスクのエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣修正を完了した。この位相シフトマスクを欠陥検査したところ、エッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が完全に除去されていることを確認した。また、この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、残渣修正前の値から変動していないことを確認した。
(実施例7)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる位相シフト膜を59nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素からなる遮光膜を20nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=85:15(原子%比)であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと酸素からなる反射防止膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと酸素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=35:65(原子%比)であった。また、分光光度計にてこの反射防止膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、3.0であった。
この反射防止膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜を13nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
このようにして、石英基板の上にケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる位相シフト膜、タンタルと窒素からなる遮光膜、タンタルと酸素からなる反射防止膜、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚150nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、反射防止膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、遮光膜を平均5nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して下層の反射防止膜及び遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均2nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、反射防止膜を除去した。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均15nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は8.1%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、3nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより7%改善することを確認した。
次に、上述のエッチングマスク膜の除去工程の前にSi3N4からなる粒子をマスク表面に撒布し、エッチングマスク膜の除去工程を行い、洗浄にて粒子を除去することにより、意図的に反射防止膜上にエッチングマスク膜の残渣を発生させた。次に、反射マスク検査を行い、この残渣を検出することを確認した。次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。次に、検出した残渣発生領域をSEMにて観察したところ、残渣が完全に除去されていることを確認した。
(実施例8)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる位相シフト膜を59nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にイオンスパッタ装置を用いて、ルテニウム化合物からなる下層遮光膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはルテニウム・ニオブ合金を用い、スパッタガスはキセノンを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ru:Nb=85:15(原子%比)であった。
この下層遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素からなる上層遮光膜を12nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=85:15(原子%比)であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと酸素からなる反射防止膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと酸素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=35:65(原子%比)であった。また、分光光度計にてこの反射防止膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、3.0であった。
この反射防止膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜を13nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
このようにして、石英基板の上にケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる位相シフト膜、ルテニウム化合物からなる下層遮光膜、タンタルと窒素からなる上層遮光膜、タンタルと酸素からなる反射防止膜、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚150nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、反射防止膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、遮光膜を平均5nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して下層の反射防止膜及び上層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層遮光膜に対して下層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均2nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、反射防止膜を除去した。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均15nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜を除去した。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は8.1%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、3nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより8%改善することを確認した。上層遮光膜が薄くなったため、実施例7より改善率が高くなっている。
次に、上述のエッチングマスク膜の除去工程の前にSi3N4からなる粒子をマスク表面に撒布し、エッチングマスク膜の除去工程を行い、洗浄にて粒子を除去することにより、意図的に反射防止膜上にエッチングマスク膜の残渣を発生させた。次に、反射マスク検査を行い、この残渣を検出することを確認した。次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。次に、検出した残渣発生領域をSEMにて観察したところ、残渣が完全に除去されていることを確認した。
(実施例9)
石英基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素と窒素からなる位相シフト膜を64nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと窒素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:N=50:50(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素と酸素からなる遮光膜を30nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素と酸素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N:O=85:10:5(原子%比)であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと酸素からなる反射防止膜を6nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと酸素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=30:70(原子%比)であった。また、分光光度計にてこの反射防止膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、3.0であった。
この反射防止膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜を4nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
このようにして、石英基板の上にケイ素と窒素からなる位相シフト膜、タンタルと窒素と酸素からなる遮光膜、タンタルと酸素からなる反射防止膜、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚80nmでスピンコートし、パターンをドーズ量37μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、反射防止膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、遮光膜を平均5nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して下層の反射防止膜及び遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均1nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、反射防止膜を除去した。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均8nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は6.8%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、4nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより3%改善することを確認した。
次に、上述のエッチングマスク膜の除去工程の前にSi3N4からなる粒子をマスク表面に撒布し、エッチングマスク膜の除去工程を行い、洗浄にて粒子を除去することにより、意図的に反射防止膜上にエッチングマスク膜の残渣を発生させた。次に、反射マスク検査を行い、この残渣を検出することを確認した。次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。次に、検出した残渣発生領域をSEMにて観察したところ、残渣が完全に除去されていることを確認した。
(実施例10)
石英基板の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素と窒素からなる位相シフト膜を64nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと窒素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:N=50:50(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にイオンスパッタ装置を用いて、ルテニウム化合物からなる下層遮光膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはルテニウムを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ru:N=80:20(原子%比)であった。
この下層遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素と酸素からなる上層遮光膜を23nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素と酸素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N:O=85:10:5(原子%比)であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと酸素からなる反射防止膜を6nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと酸素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=30:70(原子%比)であった。また、分光光度計にてこの反射防止膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、3.0であった。
この反射防止膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜を4nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
このようにして、石英基板の上にケイ素と窒素からなる位相シフト膜、ルテニウム化合物からなる下層遮光膜、タンタルと窒素と酸素からなる上層遮光膜、タンタルと酸素からなる反射防止膜、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚80nmでスピンコートし、パターンをドーズ量37μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で60秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、反射防止膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、遮光膜を平均5nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して下層の反射防止膜及び上層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層遮光膜に対して下層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均1nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、反射防止膜を除去した。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均8nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜を除去した。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は6.8%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、4nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより5%改善することを確認した。上層遮光膜が薄くなったため、実施例9より改善率が高くなっている。
次に、上述のエッチングマスク膜の除去工程の前にSi3N4からなる粒子をマスク表面に撒布し、エッチングマスク膜の除去工程を行い、洗浄にて粒子を除去することにより、意図的に反射防止膜上にエッチングマスク膜の残渣を発生させた。次に、反射マスク検査を行い、この残渣を検出することを確認した。次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。次に、検出した残渣発生領域をSEMにて観察したところ、残渣が完全に除去されていることを確認した。
(実施例11)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたRFスパッタ装置を用いて、ケイ素と酸素からなる位相シフト膜を169nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:O=33:67(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素からなる遮光膜を48nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=85:15(原子%比)であった。また、分光光度計にてこのエッチングマスク膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、2.9であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素と炭素からなるエッチングマスク膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素と炭素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N:C=85:10:5(原子%比)であった。
このようにして、石英基板の上に、ケイ素と酸素からなる位相シフト膜、タンタルと窒素からなる遮光膜、クロムと窒素と炭素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚120nmでスピンコートし、パターンをドーズ量36μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で70秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して下層の遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均2nm掘り込んだ時点で停止した
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は98%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクの位相差をマスク全面で測定したところ、パターン依存やマスク位置依存による位相差誤差が生じていないことを確認した。また、位相シフト膜の黒欠陥を意図的に配置したプログラム欠陥部を電子線修正したところ、形状良く修正できることを確認した。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、2nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより2%改善することを確認した。
次に、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣を検出した本実施例の位相シフトマスクの上にポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって残渣部周辺のみに描画を行った。その後、現像を行い、残渣部周辺のみが開口したレジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、本実施例の位相シフトマスクのエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣修正を完了した。この位相シフトマスクを欠陥検査したところ、エッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が完全に除去されていることを確認した。
(実施例12)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたRFスパッタ装置を用いて、ケイ素と酸素からなる位相シフト膜を169nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:O=33:67(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にイオンスパッタ装置を用いて、ルテニウム化合物からなる下層遮光膜を20nmの厚さで成膜した。ターゲットはルテニウムを用い、スパッタガスはキセノン及び窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ru:N=90:10(原子%比)であった。
この下層遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素からなる上層遮光膜を32nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=85:15(原子%比)であった。また、分光光度計にてこのエッチングマスク膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、2.9であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素と炭素からなるエッチングマスク膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素と炭素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N:C=85:10:5(原子%比)であった。
このようにして、石英基板の上に、ケイ素と酸素からなる位相シフト膜、ルテニウム化合物からなる下層遮光膜、タンタルと窒素からなる上層遮光膜、クロムと窒素と炭素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚120nmでスピンコートし、パターンをドーズ量36μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で70秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して上層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層遮光膜に対して下層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均2nm掘り込んだ時点で停止した
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜を除去した。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は98%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクの位相差をマスク全面で測定したところ、パターン依存やマスク位置依存による位相差誤差が生じていないことを確認した。また、位相シフト膜の黒欠陥を意図的に配置したプログラム欠陥部を電子線修正したところ、形状良く修正できることを確認した。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、2nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより4%改善することを確認した。上層遮光膜が薄くなったため、実施例11より改善率が高くなっている。
次に、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣を検出した本実施例の位相シフトマスクの上にポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって残渣部周辺のみに描画を行った。その後、現像を行い、残渣部周辺のみが開口したレジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜を除去した。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、本実施例の位相シフトマスクのエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣修正を完了した。この位相シフトマスクを欠陥検査したところ、エッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が完全に除去されていることを確認した。
(実施例13)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる第1の位相シフト膜を56nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。続いて、第1の位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素と酸素からなる第2の位相シフト膜を8nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:O=33:67(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素からなる遮光膜を20nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=85:15(原子%比)であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと酸素からなる反射防止膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと酸素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=35:65(原子%比)であった。また、分光光度計にてこの反射防止膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、2.9であった。
この反射防止膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜を13nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
このようにして、石英基板の上にケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる第1の位相シフト膜、ケイ素と酸素からなる第2の位相シフト膜、タンタルと窒素からなる遮光膜、タンタルと酸素からなる反射防止膜、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚150nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、反射防止膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、遮光膜を平均5nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して下層の反射防止膜及び遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、第1と第2の位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均2nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、反射防止膜を除去した。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均15nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は9.3%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、3nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより7%改善することを確認した。
次に、上述のエッチングマスク膜の除去工程の前にSi3N4からなる粒子をマスク表面に撒布し、エッチングマスク膜の除去工程を行い、洗浄にて粒子を除去することにより、意図的に反射防止膜上にエッチングマスク膜の残渣を発生させた。次に、反射マスク検査を行い、この残渣を検出することを確認した。次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。次に、検出した残渣発生領域をSEMにて観察したところ、残渣が完全に除去されていることを確認した。
次に、上述の遮光膜の除去工程の後に追加のドライエッチングを加えた位相シフトマスクを作製した。追加したドライエッチングのエッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは60Wに設定した。このエッチング条件では石英基板が2nmのダメージを受けることを事前の評価で確認してある。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、追加のドライエッチングを行っていない位相シフトマスクの値から変動していないことを確認した。
(実施例14)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる第1の位相シフト膜を56nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。続いて、第1の位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、ケイ素と酸素からなる第2の位相シフト膜を8nmの厚さで成膜した。ターゲットはケイ素を用い、スパッタガスはアルゴンと酸素を用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:O=33:67(原子%比)であった。
この位相シフト膜の上にイオンスパッタ装置を用いて、ルテニウム化合物からなる下層遮光膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはルテニウムを用い、スパッタガスはキセノン及び窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ru:N=80:20(原子%比)であった。
この下層遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと窒素からなる上層遮光膜を11nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと窒素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:N=85:15(原子%比)であった。また、分光光度計にてこのエッチングマスク膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、2.9であった。
この遮光膜の上にDCスパッタ装置を用いて、タンタルと酸素からなる反射防止膜を10nmの厚さで成膜した。ターゲットはタンタルを用い、スパッタガスはキセノンと酸素を用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Ta:O=35:65(原子%比)であった。また、分光光度計にてこの反射防止膜と遮光膜と位相シフト膜を合わせたArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での光学濃度(OD値)を測定したところ、2.9であった。
この反射防止膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜を13nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと窒素を用いた。このエッチングマスク膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:N=90:10(原子%比)であった。
このようにして、石英基板の上にケイ素とモリブデンと酸素と窒素からなる第1の位相シフト膜、ケイ素と酸素からなる第2の位相シフト膜、ルテニウム合金からなる下層遮光膜、タンタルと窒素からなる上層遮光膜、タンタルと酸素からなる反射防止膜、クロムと窒素からなるエッチングマスク膜が積層された位相シフトマスクブランクを得た。
次に、このエッチングマスク膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚150nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。このレジストパターンの解像性をHMDS処理したケイ素化合物のエッチングマスク膜上に同様の処理を施したレジストパターンと比較したところ、レジストパターンの倒れが10nm改善していることを確認した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、反射防止膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、遮光膜を平均5nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層のエッチングマスク膜に対して下層の反射防止膜及び上層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜をパターニングした。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。このドライエッチングの処理後に、上層遮光膜に対して下層遮光膜のラインパターンの寸法が細くなるアンダーカットは発生しなかった。
次に、ドライエッチング装置を用いて、第1と第2の位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均2nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ポジ型レジスト膜をスピンコートし、レーザー描画装置によって描画を行った。その後、現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、反射防止膜を除去した。エッチングガスはCF4と酸素を用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは20Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均15nm掘り込んだ時点で停止した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、上層遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、ドライエッチング装置を用いて、下層遮光膜を除去した。エッチングガスは酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥離洗浄し、位相シフトマスクを得た。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、ArFエキシマレーザーの露光波長(193nm)での石英基板の透過率に対する位相シフト膜部の透過率は9.3%、位相差は180度であった。また、この位相シフトマスクのパターン寸法のパターン粗密依存性を従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクと比較したところ、3nmの改善を確認した。また、この位相シフトマスクを複数枚作製し、欠陥検査にてエッチングマスク膜及び遮光膜の残渣が発生する確率を調査したところ、従来のケイ素化合物膜をエッチングマスク膜とする位相シフトマスクより8%改善することを確認した。上層遮光膜が薄くなったため、実施例13より改善率が高くなっている。
次に、上述のエッチングマスク膜の除去工程の前にSi3N4からなる粒子をマスク表面に撒布し、エッチングマスク膜の除去工程を行い、洗浄にて粒子を除去することにより、意図的に反射防止膜上にエッチングマスク膜の残渣を発生させた。次に、反射マスク検査を行い、この残渣を検出することを確認した。次に、ドライエッチング装置を用いて、エッチングマスク膜の残渣を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。次に、検出した残渣発生領域をSEMにて観察したところ、残渣が完全に除去されていることを確認した。
次に、上述の遮光膜の除去工程の後に追加のドライエッチングを加えた位相シフトマスクを作製した。追加したドライエッチングのエッチングガスは塩素とヘリウムを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは60Wに設定した。このエッチング条件では石英基板が2nmのダメージを受けることを事前の評価で確認してある。この位相シフトマスクの透過率と位相差をレーザーテック社製MPM193で測定したところ、追加のドライエッチングを行っていない位相シフトマスクの値から変動していないことを確認した。