JP6964400B2 - 転がり軸受、転動装置および転動装置の製造方法 - Google Patents

転がり軸受、転動装置および転動装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は転がり軸受、転動装置および転動装置の製造方法に関し、特に第1および第2の転動部品を備えた転がり軸受、転動装置および転動装置の製造方法に関するものである。
転がり軸受などの転動装置は、転動部の潤滑状態が悪いために油膜形成が不十分になる環境下で使用されると、ピーリング、焼き付きなどの表面損傷およびこの表面損傷を起点とした剥離が転動部の表面に発生する。これによりその転動装置の寿命は低下する。たとえば論文「ころ軸受の疲れ寿命に及ぼす潤滑の影響」(非特許文献1)には、転がり軸受における内外輪と転動体との間で、潤滑状態の過酷さを示す油膜パラメータΛの値が約1.2以上になる条件では転がり軸受の寿命は長くなるが、油膜パラメータΛの値が約1.2未満になる条件では転がり軸受の転動部に表面起点型の剥離が起きるため転がり軸受の寿命は低下することが記載されている。
油膜形成性が悪い状態で使われる転がり軸受の表面損傷対策として、たとえば特開2006−161887号公報(特許文献1)には、針状ころ軸受のころまたは内外輪の転動部に微小凹部を形成し、その凹部に固体潤滑剤を被覆する方法が記載されている。またたとえば特開平4−265480号公報(特許文献2)には、転動部に微小凹部をランダムに形成し、油膜形成能力を高める方法が記載されている。さらにこれらの他に、表面損傷対策として、たとえば超仕上げ加工、バレル研磨加工またはバニシング加工などによって転がり軸受の転動部の表面粗さを表面損傷が起きない程度まで小さくする方法がある。
特開2006−161887号公報 特開平4−265480号公報
高田浩年、鈴木進、前田悦生、「ころ軸受の疲れ寿命に及ぼす潤滑の影響」、NSK Bearing Journal No.642、p.7−13
上記各特許文献に記載された方法はいずれも転動部に微小凹部を形成するが、その加工工程が複雑である。また超仕上げ加工などによる転がり軸受の転動部の表面粗さを小さくする方法を用いた場合、処理部材の形状および寸法によっては加工が難しいため、十分に表面粗さを小さくすることができない場合や加工そのものが不可能な場合がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、転動部の油膜形成性が悪い状態で使用されても表面損傷を抑制し長寿命を容易に実現可能な転がり軸受、転動装置および転動装置の製造方法を提供することである。
本発明の転動装置は、高炭素クロム軸受鋼からなる第1の転動部品と、第1の転動部品に接触し、高炭素クロム軸受鋼からなる第2の転動部品とを備えている。第1の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さ(Ra)は、第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さよりも大きい。第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さは0.07μm以上0.20μm以下である。
このようにすれば、第1の転動部品の転動部の表面に存在する微細な突起が第2の転動部品の転動部の表面と接触することにより、第1の転動部品の微細な突起は摩擦や塑性変形によってその形状が滑らかになり、その突起の傾斜が小さくなるように変形する。このような現象を本明細書においては突起のなじみと表現する。このため第1および第2の転動部品の転動部の表面における突起同士が接触する部分の局所面圧が低下する。したがって、第1および第2の転動部品の転動部の突起同士の接触による第2の転動部品の転動部の表面の損傷を抑制することができる。これにより第2の転動部品の転動部の表面の損傷による転動装置の寿命低下を抑制することができ、転動装置の長寿命を実現することができる。
上記の転動装置においては、第1の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さは0.70μm以下であることが好ましい。このようにすれば、第1の転動部品の転動部の表面の突起のなじみによりその突起の傾斜を小さくすることができ、第2の転動部の表面の損傷を抑制することができる。
また、第1および第2の転動部品の形状および寸法のために、超仕上げ加工等の表面粗さを改善する加工が行なえず、これらの転動部品の転動部の表面の算術平均粗さを小さくしにくい場合でも、第1および第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さを上記の組み合わせにすることで、第1の転動部品の転動部の表面の微小な粗さ突起の傾斜を十分に小さくすることができる。これにより、第2の転動部品の転動部の表面損傷(特にピーリング)による転動装置の寿命の低下を抑制することができる。
上記の転動装置においては、第2の転動部品の転動部の表面の二乗平均平方根傾斜は0.074以上0.100以下であることが好ましい。このようにすれば、上記と同様に、第1の転動部品の転動部の表面の突起のなじみによりその突起の傾斜を小さくすることができ、第2の転動部品の表面の損傷を抑制することができる。
上記の転動装置においては、第1の転動部品の転動部のロックウェル硬度は、第2の転動部品の転動部のロックウェル硬度よりも低く、かつ、第2の転動部品の転動部のロックウェル硬度が61.5HRC以上であることが好ましい。このようにすれば、第1の転動部品の転動部と第2の転動部品の転動部との硬度の間に上記の関係が成り立たない場合に比べて、第1の転動部品の転動部の表面の微小な粗さ突起が第2の転動部品の転動部の表面に接触することによる、第2の転動部品の転動部の表面における疲労の進行を抑制することができる。
上記において、第1の転動部品の転動部のロックウェル硬度は第2の転動部品の転動部のロックウェル硬度より0.5HRC以上低いことが好ましい。またここで第1の転動部品の転動部および第2の転動部品の転動部とは、それぞれ第1の転動部品の転動部の表面および第2の転動部品の転動部の表面を含んでいる。
上記の転動装置においては、第1の転動部品の転動部の表面上には鉄の酸化物または化合物の少なくともいずれかを含む皮膜を有することが好ましい。これにより、第1の転動部品の転動部の表面が第2の転動部品の転動部の表面に接触した際に、第1の転動部品の転動部表面の微小な突起が脆い性質に変化する。このため、第1の転動部品の転動部の表面上に皮膜を有さずこれが通常の鋼により形成される場合に比べて、転動による突起のなじみが促進される。
上記の転動装置における皮膜は、四三酸化鉄を含むことが好ましい。このため、第1の転動部品の転動部の表面の微小な粗さ突起の材質を脆くすることができる。したがって、第1の転動部品の転動部の表面の微小な粗さ突起が第2の転動部品の転動部の表面に接触することにより、第1の転動部品の微細な突起の傾斜を容易に十分に小さくすることができる。
本発明の転がり軸受は、上記の転動装置としての転がり軸受である。当該転がり軸受は、複数の転動体と、複数の転動体の外側において複数の転動体に接触するように配置され、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、複数の転動体の内側において複数の転動体に接触するように配置され、外周面に内輪軌道面を有する内輪とを備える。外輪および内輪は第1の転動部品であり、複数の転動体は第2の転動部品である。
外輪および内輪のそれぞれと転動体との間の潤滑状態が良好でなく油膜形成性が良好でない条件で転がり軸受が使用されても、外輪軌道面と内輪軌道面の微小な突起と転動体の突起との接触による転動体の転動部の表面の損傷を抑制することができる。これにより、転がり軸受の長寿命を実現することができる。
本発明の転がり軸受は、上記の転動装置としての転がり軸受である。当該転がり軸受は、複数の転動体と、複数の転動体の外側において複数の転動体に接触するように配置され、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、複数の転動体の内側において複数の転動体に接触するように配置され、外周面に内輪軌道面を有する内輪とを備える。外輪および内輪は第2の転動部品であり、複数の転動体は第1の転動部品である。
外輪および内輪のそれぞれと転動体との間の潤滑状態が良好でなく油膜形成性が良好でない条件で転がり軸受が使用されても、外輪軌道面と内輪軌道面の微小な突起と転動体の突起との接触による外輪および内輪の転動部の表面の損傷を抑制することができる。これにより、転がり軸受の長寿命を実現することができる。
本発明の転がり軸受は、外輪と複数の転動体のそれぞれとの間の領域、および内輪と複数の転動体のそれぞれとの間の領域における油膜パラメータの値が1.2以下であることが好ましい。
上記の突起のなじみという現象は、転動部品の油膜形成性が良好でない油膜パラメータΛが1.2以下の条件において進行する。また油膜パラメータΛが1.2以下の条件において、第1の転動部品の突起による第2の転動部品の表面損傷による寿命低下が起こりやすい。このため油膜パラメータΛが1.2以下の条件であることにより、本来であれば寿命低下が起こりやすい条件において、外輪軌道面および内輪軌道面の微小な突起と転動体の突起との接触による転動体の転動部の表面の損傷を抑制する効果を発揮することができる。したがって、突起のなじみによる転がり軸受の長寿命を実現することができる。
本発明の転動装置の製造方法においては、まず高炭素クロム軸受鋼からなる第1の転動部品が準備される。第1の転動部品に接触し、高炭素クロム軸受鋼からなる第2の転動部品が準備される。第1の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さは、第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さよりも大きくなるように第1および第2の転動部品が加工される。第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さは0.07μm以上0.20μm以下となるように第2の転動部品が加工される。このようにすれば、上記のように突起のなじみによる転動装置の長寿命を実現することができる。
上記の転動装置の製造方法においては、第1および第2の転動部品は焼入れ処理された後に焼戻し処理されることが好ましい。
上記の転動装置の製造方法においては、第1の転動部品は、焼戻し処理の後に化成処理され、化成処理により第1の転動部品の転動部の表面には鉄の酸化物または化合物の少なくともいずれかを含む皮膜が形成されることが好ましい。第1の転動部品の転動部の表面上に皮膜を有さずこれが通常の鋼により形成される場合に比べて、転動による突起のなじみが促進される。
上記の転動装置の製造方法においては、第1の転動部品は第2の転動部品よりも高温および/または長時間の加熱条件により焼戻し処理されることが好ましい。すなわち第1の転動部品は第2の転動部品よりも高温でありかつ長時間の加熱条件により焼戻し処理されてもよい。このように第1および第2の転動部品の焼入れ処理の後になされる焼戻し処理の条件が調整される。このように調整されることにより、第1の転動部品の転動部のロックウェル硬度は、第2の転動部品の転動部のロックウェル硬度よりも低く、かつ、第2の転動部品の転動部のロックウェル硬度が61.5HRC以上となるように第1および第2の転動部品が加工される。このようにすれば、第1の転動部品の転動部と第2の転動部品の転動部との硬度の間に上記の関係が成り立たない場合に比べて、第1の転動部品の転動部の表面の微小な粗さ突起が第2の転動部品の転動部の表面に接触することによる、第2の転動部品の転動部の表面における疲労の進行を抑制することができる。第1の転動部品と第2の転動部品との間に上記の硬度差を設けるため、突起のなじみと疲労進行の抑制との2つの効果により、転動装置の長寿命を実現することができる。
上記の転動装置の製造方法において、第1の転動部品の転動部のロックウェル硬度は第2の転動部品の転動部のロックウェル硬度より0.5HRC以上低いことが好ましい。またここで第1の転動部品の転動部および第2の転動部品の転動部とは、それぞれ第1の転動部品の転動部の表面および第2の転動部品の転動部の表面を含んでいる。
上記の転動装置の製造方法においては、第1の転動部品の転動部の表面には、超仕上げ加工、バレル研磨加工、およびバニシング加工のいずれもなされなくてもよい。つまりこれらの加工を行なわなくても、転動部の表面粗さを表面損傷が起きない程度まで十分に小さくすることができる。
上記の転動装置の製造方法においては、第1の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さは0.70μm以下となるように第1の転動部品が加工される。また第2の転動部品の転動部の表面の二乗平均平方根傾斜は0.074以上0.100以下となるように第2の転動部品が加工される。これにより、上記と同様に、第1の転動部品の転動部の表面の突起のなじみによりその突起の傾斜を小さくすることができ、第2の転動部品の表面の損傷を抑制することができる。
本発明によれば、転動部品の転動部の表面の微細な突起がなじみ、それらの突起同士が接触する部分の局所面圧が低下することにより、転動部品の転動部の表面の損傷およびこれに伴う寿命低下を抑制することができる。
本実施の形態における深溝玉軸受の構成を示す概略断面図である。 図1中の鎖線で囲まれた領域IIの構成を示す概略拡大断面図である。 本実施の形態における転動装置に含まれる第1および第2の転動部品の製造方法を概略的に示すフローチャートである。 第1の転動部品の処理工程を示すフローチャート(A)と、第2の転動部品の処理工程を示すフローチャート(B)とである。 本実施例における二円筒試験機の構成を示す概略図である。 実施例1における本実施の形態の比較例の条件による試験片の転動部の表面の、耐ピーリング性能評価試験後の顕微鏡拡大写真(A)と、本実施の形態の条件による試験片の転動部の表面の、耐ピーリング性能評価試験後の顕微鏡拡大写真(B)とである。 実施例1における本実施の形態の比較例の条件による試験片の転動部の表面の、耐ピーリング性能評価試験後の3次元形状(A)と、本実施の形態の条件による試験片の転動部の表面の、耐ピーリング性能評価試験後の3次元形状(B)とである。 実施例2における各試験例の条件による試験片の転動部の表面の、耐ピーリング性能評価試験後の顕微鏡拡大写真である。
以下、図面を参照して、本実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
まず図1および図2を用いて、本実施の形態の転動装置の一例としての転がり軸受の構成について説明する。なおここでは、転がり軸受の一例として深溝玉軸受について説明するが、深溝玉軸受以外の種類の転がり軸受についても以下と同様に本実施の形態を適用可能である。
図1を参照して、本実施の形態の深溝玉軸受1は、環状の外輪11と、中心線Cに関して外輪11の内側に配置された環状の内輪12と、外輪11と内輪12との間に配置された転動体としての複数の玉13と、外輪11、内輪12および複数の玉13を保持する円環状の保持器14とを有している。
外輪11は、複数の玉13の外側において複数の玉13に接触するように配置されている。外輪11は、中心線Cに関する内側に形成される内周面に、外輪軌道面11Aを有している。内輪12は、複数の玉13の内側において複数の玉13に接触するように配置されている。内輪12は、中心線Cに関する外側に形成される外周面に、内輪軌道面12Aを有している。外輪軌道面11Aと内輪軌道面12Aとが互いに対向するように、外輪11と内輪12とが配置されている。
複数の玉13は球形を有し、その表面に玉転動面13Aを有している。言い換えれば複数の玉13のそれぞれはその表面全体が玉転動面13Aである。複数の玉13は外輪軌道面11Aと内輪軌道面12Aとの間で転動するように構成されている。複数の玉13は玉転動面13Aにおいて、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aに接触し、かつ保持器14により周方向にある間隔のピッチを有するように複数並んで配置される。これにより複数の玉13のそれぞれは、円環状の軌道上に転動自在に保持されている。以上の構成により、深溝玉軸受1の外輪11および内輪12は、互いに相対的に回転可能となっている。
外輪11および内輪12に挟まれる空間、より具体的には外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aに挟まれる空間である軌道空間には、図示しないグリース組成物が封入されている。このグリース組成物により外輪11および内輪12の各々と玉13との間に油膜が形成されており、外輪11および内輪12の各々と玉13との間の潤滑状態が良好に保たれている。また外輪11と複数の玉13のそれぞれとの間の領域、および内輪12と複数の玉13のそれぞれとの間の領域における油膜パラメータΛの値が1.2以下となっている。
図2を参照して、深溝玉軸受1を構成する転動部品としての外輪11、内輪12および玉13について説明する。第1の転動部品としての外輪11および内輪12のそれぞれに第2の転動部品としての玉13が接触している。外輪11、内輪12および玉13のいずれも高炭素クロム軸受鋼である、たとえばJIS規格SUJ2からなっている。
本実施の形態においては、外輪11の転動部は外輪軌道面11Aを含む領域であって、外輪11の転動部の表面が外輪軌道面11Aを構成している。また内輪12の転動部は内輪軌道面12Aを含む領域であって、内輪12の転動部の表面が内輪軌道面12Aを構成している。玉13の転動部は玉転動面13Aを含む領域であって、玉13の転動部の表面が玉転動面13Aを構成している。
本実施の形態においては、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの算術平均粗さ(Ra)は、玉転動面13Aの算術平均粗さよりも大きく、具体的には、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの算術平均粗さは0.70μm以下であり、玉転動面13Aの算術平均粗さは0.07μm以上0.20μm以下である。また玉転動面13Aの二乗平均平方根傾斜(RΔq)は0.074以上0.100以下である。
また本実施の形態においては、第1の転動部品の転動部の表面すなわち外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aのロックウェル硬度(HRC)は、第2の転動部品の転動部の表面すなわち玉転動面13Aのロックウェル硬度よりも0.5HRC以上低い。また、玉転動面13Aのロックウェル硬度は61.5HRC以上である。
そして外輪11の転動部の表面上には皮膜11Bが形成されている。そして内輪12の転動部の表面上には皮膜12Bが形成されている。この皮膜11B,12Bは鉄の酸化物または化合物の少なくともいずれかを含み、特にここでは四三酸化鉄を含んでいることが好ましい。つまり、外輪11の転動部の表面に形成された皮膜11Bおよび内輪12の転動部の表面に形成された皮膜12Bのそれぞれは黒染加工により形成されていることが好ましい。
次に図3および図4を用いて、以上の外輪11、内輪12および玉13のそれぞれの加工方法について説明する。
図3を参照して、JIS規格SUJ2からなる第1の転動部品としての外輪11および内輪12が準備される(S01)。またJIS規格SUJ2からなる第2の転動部品としての玉13が準備される(S02)。
図4(A)を参照して、第1の転動部品としての外輪11および内輪12については、材料であるJIS規格SUJ2が焼入れ処理(S11)された後に焼戻し処理(S12)される。その後、外輪11の外輪軌道面11Aおよび内輪12の内輪軌道面12Aの算術平均粗さは、玉13の玉転動面13Aの算術平均粗さよりも大きくなるように加工される。具体的には、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの算術平均粗さは0.70μm以下に加工される(S13)。この後さらに化成処理(S14)がなされる。この化成処理により、外輪11の転動部の表面となる外輪軌道面11Aおよび内輪12の転動部の表面となる内輪軌道面12Aに、鉄の酸化物および化合物の少なくともいずれかの皮膜11B,12Bが形成される。
図4(B)を参照して、第2の転動部品としての玉13については、材料であるJIS規格SUJ2が焼入れ処理(S21)された後に焼戻し処理(S22)され、その後玉13の玉転動面13Aの算術平均粗さは、外輪11の外輪軌道面11Aおよび内輪12の内輪軌道面12Aの算術平均粗さよりも小さくなるように加工される。具体的には、玉転動面13Aの算術平均粗さが0.07μm以上0.20μm以下であり、かつ、玉転動面13Aの二乗平均平方根傾斜(RΔq)が0.074以上0.100以下となるように加工される(S23)。その後の化成処理はなされない。
ここで、外輪11および内輪12の焼戻し処理(S12)と玉13の焼戻し処理(S22)との条件を比較すると、焼戻し処理(S12)の方が焼戻し処理(S22)よりも高温および/または長時間の加熱条件により焼戻し処理される。すなわち焼戻し処理(S12)の方が焼戻し処理(S22)よりも高温でありかつ長時間の加熱条件により焼戻し処理されてもよいし、焼戻し処理(S12)の方が焼戻し処理(S22)よりも高温であるが長時間ではない条件、または高温ではないが長時間の条件により焼戻し処理されてもよい。
焼戻し処理の条件の調整により、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aのロックウェル硬度は、玉転動面13Aのロックウェル硬度よりも低く、かつ、玉転動面13Aのロックウェル硬度が61.5HRC以上となるように、外輪11、内輪12および玉13が加工される。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態の深溝玉軸受1は、外輪11の転動部の表面としての外輪軌道面11Aおよび内輪12の転動部の表面としての内輪軌道面12Aの算術平均粗さが、玉13の転動部の表面としての玉転動面13Aの算術平均粗さよりも大きくなっている。具体的には、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの算術平均粗さは0.70μm以下であり、玉転動面13Aの算術平均粗さは0.07μm以上0.20μm以下である。また玉転動面13Aの二乗平均平方根傾斜は0.074以上0.100以下である。具体的な算術平均粗さなどを上記の数値範囲の組み合わせとすることにより、たとえば玉転動面13Aの算術平均粗さの値が0.07μm未満の場合に比べて、算術平均粗さの値が玉転動面13Aより大きい外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aに多数含まれる微小な突起がなじみやすくなる。また、外輪11および内輪12の各々の転動部の表面上に化成処理により鉄の酸化物および化合物の少なくともいずれかを含む皮膜11B,12Bが形成されている。このため、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aは化成処理を行なわない場合に比べて脆い性質に変化しており、このため外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの粗さをさらに微小な突起がなじみやすいようにすることができる。
上記2つの作用により、深溝玉軸受1の運転開始から短時間経過後において、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aが玉転動面13Aと接触することにより、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの微小な突起の傾斜を小さくすることができる。これにより、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの微小な突起と、この突起に接触する玉転動面13Aの平坦面または微小な突起との局所的な接触面圧が低下する。このため、たとえば外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの微小な突起に起因する玉転動面13Aの損傷の発生を抑制することができる。したがって、たとえば外輪軌道面11Aなどの表面に微小な凹部をランダムに形成してそこへ固体潤滑剤を被覆するなどの方法を用いなくても、玉転動面13Aの損傷による深溝玉軸受1の寿命の低下を抑制することができる。よって、深溝玉軸受1の長寿命を実現することができる。
また本実施の形態の深溝玉軸受1は、外輪軌道面11A、内輪軌道面12Aのロックウェル硬度は玉転動面13Aのロックウェル硬度よりも相対的に低く調整される。さらに、玉転動面13Aのロックウェル硬度が61.5HRC以上に調整される。このようにすれば、たとえ深溝玉軸受1が外輪11および内輪12と玉13との間の潤滑状態が良好でないために油膜形成性が良好でない条件で使用され、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの微小な突起が玉転動面13Aに接触しても、玉転動面13Aの損傷または疲労進行を抑制することができる。これにより、深溝玉軸受1のさらなる長寿命を実現することができる。外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aは玉転動面13Aよりも高温および/または長時間の加熱条件により焼戻し処理されることにより、外輪軌道面11A、内輪軌道面12Aおよび玉転動面13Aの硬度が上記の条件となるように加工することができる。
さらに本実施の形態の深溝玉軸受1においては、外輪11と複数の玉13のそれぞれとの間の領域、および内輪12と複数の玉13のそれぞれとの間の領域における油膜パラメータΛの値が1.2以下である。油圧パラメータΛの値が1.2以下の条件であれば、外輪11と玉13との微小な粗さ突起同士、および内輪12と玉13との微小な粗さ突起同士の接触頻度が大きくなるため、外輪11および内輪12の転動部の微小な粗さ突起のなじみが起きる。したがって、玉転動面13Aに表面起点型の剥離が起きるために深溝玉軸受1の寿命が低下しやすい条件において、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの微小な突起との接触による玉転動面13Aの損傷を抑制することができる。これにより、効果的に深溝玉軸受1の長寿命を実現することができる。
以上の手法により玉転動面13Aの損傷が抑制されるため、本実施の形態においては、外輪軌道面11A、内輪軌道面12Aおよび玉転動面13Aに超仕上げ加工、バレル研磨加工、およびバニシング加工のいずれもなされる必要がなくなる。このため深溝玉軸受1の加工工程を簡略化させることができ、そのコストを低減させることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態の深溝玉軸受1は、基本的に実施の形態1の深溝玉軸受1と同一の図面を用いて同様に説明可能であるため詳細な説明を省略する。ただし本実施の形態の深溝玉軸受1は、玉13が第1の転動部品として、外輪11および内輪12が第2の転動部品として、それぞれ配置されている。この点において本実施の形態の深溝玉軸受1は、実施の形態1の深溝玉軸受1と異なっている。
したがって本実施の形態においては、玉転動面13Aの算術平均粗さが外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの算術平均粗さよりも大きく、玉転動面13Aの算術平均粗さは0.70μm以下、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの算術平均粗さは0.07μm以上0.20μm以下となっている。また玉13は焼戻し処理の後に化成処理されている。さらに本実施の形態においては、玉転動面13Aのロックウェル硬度(HRC)は外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aのロックウェル硬度よりも低く、かつ外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aのロックウェル硬度が61.5HRC以上である。玉転動面13Aのロックウェル硬度(HRC)は外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aのロックウェル硬度よりも0.5HRC以上低いことが好ましい。
本実施の形態においても、基本的に実施の形態1と同様に、この場合は第2の転動部品である外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aへの損傷を抑制する効果を高めることができる。
以上に述べた各実施の形態の構成による作用効果を調べるため、3種類の試験片を用いて3種類の耐ピーリング性能評価試験が行なわれた。実施例1では特に、第1および第2の転動部品の転動部の表面の粗さ条件に着目した試験がなされた。以下、図5〜図7を用いてこの試験の内容および結果について説明する。
図5を参照して、これは耐ピーリング性能評価試験に用いられた二円筒試験機2を示している。二円筒試験機2は、駆動側回転軸D1と、従動側回転軸F1とを有している。
駆動側回転軸D1は、図5の左右方向に延びる部材であり、図5における左側の末端部にモータMが接続されている。このモータMにより駆動側回転軸D1は、図5の左右方向に延びる中心軸C1に対して回転可能となっている。図5における駆動側回転軸D1の右側の先端部には駆動側試験片D2が取り付けられている。駆動側試験片D2は、上記の各実施の形態における第1の転動部品に相当する部材であり、駆動側回転軸D1の回転に伴い中心軸C1の周りに回転可能となるように、駆動側回転軸D1の右側の先端部に固定された。
一方、従動側回転軸F1は、図5の左右方向に延びる部材であり、図5の左右方向に延びる中心軸C2に対して回転可能となっている。図5において従動側回転軸F1は、駆動側回転軸D1とは逆に、左側が先端部に、右側が末端部になっている。図5における従動側回転軸F1の左側の先端部には従動側試験片F2が取り付けられている。従動側試験片F2は、上記の各実施の形態における第2の転動部品に相当する部材であり、従動側回転軸F1の回転に伴い中心軸C2の周りに回転可能となるように、従動側回転軸F1の左側の先端部に固定された。
駆動側回転軸D1の先端部は図5の右側を、従動側回転軸F1の先端部は図5の左側を向いている。しかし駆動側回転軸D1の中心軸C1と従動側回転軸F1の中心軸C2とは一致しておらず、両者は図5の上下方向に間隔を有している。このため駆動側回転軸D1の先端部に固定された駆動側試験片D2と、従動側回転軸F1の先端部に固定された従動側試験片F2とは、駆動側回転軸D1および従動側回転軸F1のそれぞれの外径面同士が、これらの回転していない状態において外径面接触部DFにて互いに接触するように配置されている。なお互いに接触するように配置される駆動側試験片D2および従動側試験片F2は、これらの下に敷いている、給油用フェルトパッド3と接触している。
以上のように設置された二円筒試験機2の設備の駆動条件を表1に示す。
Figure 0006964400
表1に示すように、二円筒試験機2には潤滑油として無添加ポリ−α−オレフィン油(VG5相当)が用いられた。この潤滑油は給油用フェルトパッド3内に含浸されており、そこから駆動側試験片D2および従動側試験片F2の外径面に供給された。また試験条件として、駆動側回転軸D1の中心軸C1周りの回転数は2000rpmとし、従動側試験片F2に加えられる荷重W(図5参照)の値は230kgfとされた。ここで荷重Wとは、駆動側回転軸D1の回転時に従動側回転軸F1が図5の矢印Wに示す方向すなわち駆動側回転軸D1に近づく方向に従動側試験片F2に対して加える荷重を意味する。駆動側回転軸D1がモータMにより中心軸C1周りに回転するのに伴い、従動側回転軸F1が中心軸C2周りに、駆動側回転軸D1とは互いに逆方向に回転した。これは駆動側試験片D2と従動側試験片F2とが互いに接触しているためである。
そして試験時間は100分間とし、従動側試験片F2に加わる総負荷回数が20万回に達した時点で試験が終了された。以上の条件は、従動側試験片F2の転動部の表面にピーリングと呼ばれる微小な剥離が発生しやすい条件とした。
次に3種類の試験のそれぞれに用いられた駆動側試験片D2および従動側試験片F2のそれぞれの形状および寸法等について表2および表3を用いて説明する。ここで3種類の試験とは、本実施の形態の規格外の試験である比較例、本実施の形態に基づく試験である試験例1、および本実施の形態に基づく試験の試験例1とは異なる変形例としての試験例2を意味する。まず表2を用いて、3種類の試験のそれぞれに用いられた駆動側試験片D2の寸法等の条件について説明する。
Figure 0006964400
表2に示すように、駆動側試験片D2は、これがセットされる駆動側回転軸D1をその先端側から平面視したときに円形を有する円筒形状である。その外径の直径は、3種類の試験すなわち比較例、試験例1、試験例2のいずれにおいても同一の40mm、その内径の直径は上記3種類のいずれも20mmである。以下同様に、上記3種類のいずれも軸方向の寸法に相当する幅が12mm、軸方向副曲率半径が60mmである。
駆動側試験片D2の材質は、上記3種類のいずれもJIS規格SUJ2である。表2に示すように比較例および試験例1の駆動側試験片D2の幅面(外径面であり、転動部の表面に相当)のロックウェル硬度は62.2HRCであるが、このようにするために以下の処理がなされた。まずSUJ2の鋼材が840℃で40分保持された後、80℃の油中に投入され冷却されることにより焼入れされ、その後180℃に加熱され3時間の焼戻し処理がなされた。また表2に示すように試験例2の駆動側試験片D2の幅面のロックウェル硬度は60.5HRCであるが、このようにするために以下の処理がなされた。まずSUJ2の鋼材が850℃で80分保持された後、80℃の油中に投入され冷却されることにより焼入れされ、その後220℃に加熱され100時間の焼戻し処理がなされた。
その後、比較例、試験例1および試験例2のいずれの試験片D2についても、駆動側試験片D2の平面視における円形の外径面の軸方向に関する算術平均粗さRaの値が0.650μm、当該駆動側試験片D2の円形の外径面の軸方向に関する二乗平均平方根傾斜RΔqの値が0.270となるように仕上げられた。駆動側試験片D2の外径面は、駆動側試験片D2の転動部の表面に相当する。
比較例においては、駆動側試験片D2の外径面の焼入れ処理および焼戻し処理の後に四三酸化鉄の皮膜処理は行なわれなかった。これに対し、試験例1および試験例2の駆動側試験片D2は、その外径面の焼入れ処理および焼戻し処理の後に四三酸化鉄の皮膜処理が行なわれた。具体的には、焼入れ処理および焼戻し処理の後に駆動側試験片D2の外径面の算術平均粗さが比較例と同様の値となるように研磨加工された。その後、駆動側試験片D2に対して四三酸化鉄皮膜処理がなされた。具体的には、140±5℃に加熱された水酸化ナトリウムを主成分とするアルカリ性溶液中に駆動側試験片D2を30分間浸漬させた。この皮膜処理の前後で駆動側試験片D2の外径面の算術平均粗さなどの変化はほとんどなかった。
次に表3を用いて、3種類の試験のそれぞれに用いられた従動側試験片F2の寸法等の条件について説明する。
Figure 0006964400
表3に示すように、従動側試験片F2は、これがセットされる従動側回転軸F1をその先端側から平面視したときに円形を有する円筒形状である。上記3種類のいずれもその外径の直径は40mm、その内径の直径は20mmであり、軸方向の寸法に相当する幅が12mmであるが、軸方向副曲率半径を有さないものとした。
従動側試験片F2の材質は、上記3種類のいずれもJIS規格SUJ2である。表3に示すように比較例および試験例1の従動側試験片F2の幅面のロックウェル硬度は62.2HRCであるが、このようにするために以下の処理がなされた。まずSUJ2の鋼材が840℃で40分保持された後、80℃の油中に投入され冷却されることにより焼入れされ、その後180℃に加熱され3時間の焼戻し処理がなされた。また表3に示すように試験例2の従動側試験片F2の幅面のロックウェル硬度は63.0HRCであるが、このようにするために以下の処理がなされた。まずSUJ2の鋼材が850℃で80分保持された後、80℃の油中に投入され冷却されることにより焼入れされ、その後180℃に加熱され4時間の焼戻し処理がなされた。
なお比較例の試験片については焼戻し処理の後に研磨加工および超仕上げ加工がなされ、その外径面の算術平均粗さRaが0.020μm、二乗平均平方根傾斜RΔqが0.013となるように仕上げられた。また試験例1においては、従動側試験片F2の外径面に対しては、焼入れ処理および焼戻し処理の後に研磨加工がなされ、その外径面の算術平均粗さRaが0.200μm、二乗平均平方根傾斜RΔqが0.100となるように仕上げられた。また試験例2においては、従動側試験片F2の外径面に対しては、焼入れ処理および焼戻し処理の後に研磨加工および超仕上げ加工がなされ、その外径面の算術平均粗さRaが0.070μm、二乗平均平方根傾斜RΔqが0.074となるように仕上げられた。従動側試験片F2の外径面は、従動側試験片F2の転動部の表面に相当する。
以上の各試験片を用いた比較例および各試験例のそれぞれの試験を行なった後の、第2の転動部品に相当する従動側試験片F2の転動部である外径面の平面形状の顕微鏡拡大写真を図6(A),(B)に示す。図6(A),(B)を参照して、比較例の従動側試験片F2の転動部の表面上には多くのピーリングが発生したが、試験例1および試験例2の従動側試験片F2の転動部の表面上にはピーリングが発生しなかった。
次に以上の各試験片を用いた比較例および各試験例のそれぞれの試験を行なった後の、第1の転動部品に相当する駆動側試験片D2の転動部の軸方向の二乗平均平方根傾斜RΔqの測定結果を表4に示す。
Figure 0006964400
表4より、比較例の駆動側試験片D2に比べて、試験例1および試験例2の駆動側試験片D2の方が二乗平均平方根傾斜RΔqの値が小さくなった。
さらに、以上の各試験片を用いた比較例および各試験例のそれぞれの試験を行なった後の、第1の転動部品に相当する駆動側試験片D2の転動部である外径面に対してレーザー顕微鏡を用いて3次元形状の測定を行なった結果を図7に示す。図7を参照して、比較例に比べて、試験例1および試験例2の転動部の微小な突起の方が丸みをおびていることが確認できた。
これらの結果から、転動部の表面粗さの値がより大きい駆動側試験片D2に対して四三酸化鉄皮膜処理を行ない、それよりも転動部の表面粗さの値が小さい従動側試験片F2の軸方向の算術平均粗さRaを0.07μm以上0.20μm以下とする、このような試験片の組み合わせを適用することにより、駆動側試験片D2の転動部の粗さ突起の傾斜が小さくなり、ピーリングを抑制できることが分かった。
実施例2では特に、第1および第2の転動部品の転動部の硬度条件に着目した試験がなされた。
本実施例においても実施例1と同様に図5に示す二円筒試験機2が用いられた。まず表5を用いて、本実施例における駆動側試験片D2、従動側試験片F2の形状および寸法の条件、および二円筒試験機2の設備の駆動条件について説明する。
Figure 0006964400
表5に示すように、駆動側試験片D2は、本実施例で行なわれるいずれの試験例においても同一の寸法であり、外径の直径40mm、内径の直径20mm、軸方向の寸法に相当する幅が12mm、幅方向副曲率半径が60mmの円筒形状である。また駆動側試験片D2の平面視における円形の外径面の軸方向に関する表面粗さは、いずれの試験例においても同一であり、算術平均粗さRaの値が約0.650μm、二乗平均平方根傾斜RΔqの値が約0.270となるように研磨加工がなされた。
また表5に示すように、従動側試験片F2は、本実施例で行なわれるいずれの試験例においても同一の寸法であり、外径の直径40mm、内径の直径20mm、軸方向の寸法に相当する幅が12mmであるが、幅方向副曲率半径を有さない円筒形状である。また従動側試験片F2の平面視における円形の外径面の軸方向に関する表面粗さは、いずれの試験例においても同一であり、算術平均粗さRaの値が約0.020μm、二乗平均平方根傾斜RΔqの値が約0.013となるように研磨加工および超仕上げ加工がなされた。この表面粗さの値は表3の比較例および図6(A)と同じであり、従動側試験片F2の転動部の表面にピーリング(微小な剥離)が発生しやすい条件とした。
二円筒試験機2の設備の駆動条件(潤滑油、回転数、荷重、試験時間、負荷回数)は、表5に示すとおりである。具体的には、試験時間が5分間であり、従動側試験片F2に加わる総負荷回数が1万回に達した時点で試験が終了された。それ以外の各条件は実施例1と同様である。また本実施例での二円筒試験機2への駆動側試験片D2および従動側試験片F2の固定態様および回転態様は実施例1と同様であり、図5を用いて説明可能であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、本実施例において9種類の試験のそれぞれに用いられた駆動側試験片D2および従動側試験片F2の加工の条件およびその加工により最終的に得られた硬度等について表6を用いて説明する。なお本実施例においては実施例1と異なり、本実施の形態に基づく試験であるか本実施の形態の規格外の試験であるかにかかわらず、9種類の試験のそれぞれを試験例3〜11で示している。
Figure 0006964400
表6に示すように、試験例3〜11のいずれについても、駆動側試験片D2および従動側試験片F2を構成する鋼材はJIS規格SUJ2である。またすべての試験例において、駆動側試験片D2および従動側試験片F2は、850℃で80分均熱された後に80℃の油中に投入され冷却されることにより焼入れされている。
ただしその後の焼戻しの条件は試験例および試験片ごとに異なる。具体的には、試験例3〜5の駆動側試験片D2は250℃で7.5時間焼戻し処理がされ、試験片6〜8の駆動側試験片D2は230℃で7.5時間、試験片9〜11の駆動側試験片D2は200℃で3時間、焼戻し処理された。また試験例3,6,9の従動側試験片F2は250℃で7.5時間焼戻し処理がされ、試験片4,7,10の従動側試験片F2は230℃で7.5時間、試験片5,8,11の従動側試験片F2は200℃で3時間、焼戻し処理された。これらの焼戻し条件によって、駆動側試験片D2および従動側試験片F2の幅面(転動部の表面に相当)のロックウェル硬度が測定された。当該ロックウェル硬度は、約59.5HRC、約60.5HRCまたは約61.5HRC(±0.2HRC程度の誤差を含む)のいずれかになるよう、概ね3種類に分類された。ただし試験例3〜11は、すべて駆動側試験片D2と従動側試験片F2との幅面のロックウェル硬度の値(上記分類)の組み合わせが異なるように準備された。
以上の硬度の組み合わせが異なる9種類の試験片を用いた各試験例において耐ピーリング性能評価試験が行なわれた。それぞれの試験を行なった後の、第2の転動部品に相当する従動側試験片F2の転動部である外径面の顕微鏡写真におけるき裂発生部を図8に示し、その面積率(%)を表7に示している。面積率は、各実施例において市販の画像処理ソフトを用いて図8の写真をモノクロ画像化し、画像に2値化処理を施すことによりき裂発生部のみを塗りつぶすことで算出された。
Figure 0006964400
図8および表7を参照して、第1の転動部品としての駆動側試験片D2が第2の転動部品としての従動側試験片F2よりも幅面のロックウェル硬度(単位はHRC)が低い場合、すなわち表6中の硬度差の値が正である試験例4,5,8において、その他の試験例に比べて明らかにピーリングの初期段階であるき裂の発生数が少なかった。また表6中の硬度差の値がゼロである試験例3,7,11においてはき裂が発生しているが、これらの中でも試験例11は試験例3,7に比べてき裂の数が少なかった。これは試験例11においては従動側試験片F2の幅面のロックウェル硬度が61.4HRC(約61.5HRC)であるためであると考えられる。なお上記の試験片5,8はいずれも従動側試験片F2の幅面のロックウェル硬度が61.5HRCとなっている。
以上の結果から、転動部の表面粗さが大きい駆動側試験片D2を従動側試験片F2よりも相対的に低硬度にすることにより、従動側試験片F2の転動部の表面の疲労進行を抑制でき、ピーリングを抑制できることがわかった。また上記の硬度差に加え、従動側試験片F2の幅面のロックウェル硬度を61.5HRC以上(少なくとも61.4HRC以上)とすることにより上記の疲労進行の抑制効果をさらに高めることができることが分かった。
今回開示された各実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
1 深溝玉軸受、2 二円筒試験機、3 給油用フェルトパッド、11 外輪、11A 外輪軌道面、11B,12B 皮膜、12 内輪、12A 内輪軌道面、13 玉、13A 玉転動面、14 保持器、D1 駆動側回転軸、D2 駆動側試験片、DF 外径面接触部、F1 従動側回転軸、F2 従動側試験片。

Claims (8)

  1. 高炭素クロム軸受鋼からなる第1の転動部品と、
    前記第1の転動部品に接触し、高炭素クロム軸受鋼からなる第2の転動部品とを備え、
    前記第1の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さは、前記第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さよりも大きく、
    前記第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さは0.07μm以上0.20μm以下であり、
    前記第1の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さは0.70μm以下であり、
    前記第2の転動部品の転動部の表面の二乗平均平方根傾斜は0.074以上0.100以下であり、
    前記第1の転動部品の転動部のロックウェル硬度は、前記第2の転動部品の転動部のロックウェル硬度よりも低く、かつ、前記第2の転動部品の転動部のロックウェル硬度が61.5HRC以上であり、
    前記第1の転動部品の転動部の表面上には鉄の酸化物または化合物の少なくともいずれかを含む皮膜を有する、転動装置。
  2. 前記皮膜は四三酸化鉄を含む、請求項に記載の転動装置。
  3. 請求項1または2に記載の転動装置としての転がり軸受であって、
    複数の転動体と、
    複数の前記転動体の外側において複数の前記転動体に接触するように配置され、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
    複数の前記転動体の内側において複数の前記転動体に接触するように配置され、外周面に内輪軌道面を有する内輪とを備え、
    前記外輪および前記内輪は前記第1の転動部品であり、複数の前記転動体は前記第2の転動部品である、転がり軸受。
  4. 請求項1または2に記載の転動装置としての転がり軸受であって、
    複数の転動体と、
    複数の前記転動体の外側において複数の前記転動体に接触するように配置され、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
    複数の前記転動体の内側において複数の前記転動体に接触するように配置され、外周面に内輪軌道面を有する内輪とを備え、
    前記外輪および前記内輪は前記第2の転動部品であり、複数の前記転動体は前記第1の転動部品である、転がり軸受。
  5. 前記外輪と複数の前記転動体のそれぞれとの間の領域、および前記内輪と複数の前記転動体のそれぞれとの間の領域における油膜パラメータの値が1.2以下である、請求項またはに記載の転がり軸受。
  6. 高炭素クロム軸受鋼からなる第1の転動部品を準備する工程と、
    前記第1の転動部品に接触し、高炭素クロム軸受鋼からなる第2の転動部品を準備する工程とを備え、
    前記第1の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さは、前記第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さよりも大きくなるように前記第1および第2の転動部品が加工され、
    前記第2の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さは0.07μm以上0.20μm以下となるように前記第2の転動部品が加工され
    前記第1および第2の転動部品は焼入れ処理された後に焼戻し処理され、
    前記第1の転動部品は、前記焼戻し処理の後に化成処理され、前記化成処理により前記第1の転動部品の転動部の表面には鉄の酸化物または化合物の少なくともいずれかを含む皮膜が形成され、
    前記第1の転動部品の転動部の表面の算術平均粗さは0.70μm以下となるように前記第1の転動部品が加工され、
    前記第2の転動部品の転動部の表面の二乗平均平方根傾斜は0.074以上0.100以下となるように前記第2の転動部品が加工され、
    前記第1の転動部品の転動部のロックウェル硬度は、前記第2の転動部品の転動部のロックウェル硬度よりも低く、かつ、前記第2の転動部品の転動部のロックウェル硬度が61.5HRC以上となるように前記第1および第2の転動部品が加工される、転動装置の製造方法。
  7. 前記第1の転動部品は前記第2の転動部品よりも高温および/または長時間の加熱条件により前記焼戻し処理される、請求項に記載の転動装置の製造方法。
  8. 前記第1の転動部品の転動部の表面には、超仕上げ加工、バレル研磨加工、およびバニシング加工のいずれもなされない、請求項6または7に記載の転動装置の製造方法。
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