JP2006316821A - プラネタリギヤ機構用転がり軸受 - Google Patents

プラネタリギヤ機構用転がり軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】プラネタリギヤ機構用軸受のピーリング寿命特性を向上させる。
【解決手段】プラネタリギヤ機構用転がり軸受20は、太陽歯車12と、太陽歯車12の外周を取り囲む内歯歯車15と、太陽歯車12と内歯歯車15の双方に噛み合う遊星歯車13とからなるプラネタリギヤ機構10の、遊星歯車13を回転可能に支持する転がり軸受であって、内輪(17)、外輪(13)および転動体18のうち少なくとも一つの軸受部品が窒素富化層を有し、窒素富化層におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号が11番以上であり、残留オーステナイト量が11%以上25%以下の範囲にあり、表面に無数の微小凹形状のくぼみをランダムに形成し、くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniを0.4以上1.0以下の範囲とし、くぼみを設けた面の面粗さパラメータSkを−1.6以下としてある。
【選択図】 図1

Description

この発明は、プラネタリギヤ機構用転がり軸受、より詳しくはプラネタリギヤ機構の遊星歯車を支持するための転がり軸受に関する。
軸受の転動疲労寿命特性を向上させる熱処理方法として、焼入れ加熱時の雰囲気RXガス中にさらにアンモニアガスを添加するなどして、軸受部品の表層部に浸炭窒化処理を施す例(特許文献1および2参照)がある。
また、ピーリング寿命特性を向上させる表面処理方法として、軸受の転動体表面に微小な凹凸を形成して油膜形成能力を向上させる例(特許文献3および4参照)があり、さらにその技術を遊星減速機用軸受に適用した例(特許文献5参照)もある。
特開平08−004774号公報 特開平11−101247号公報 特開平02−168021号公報 特開平06−042536号公報 特開平03−223548号公報
近年、自動車のオートマチック・トランスミッションなどで使用されるプラネタリギヤ機構は小型化や高出力化、潤滑油の低粘度化等により、使用環境が高荷重、高温化する傾向にある。このため、プラネタリギヤ機構に使用される軸受にとっては今まで以上に厳しい潤滑環境へと変化しており、潤滑不良による表面起点型剥離や高面圧化による疲労寿命低下、異物混入環境下での剥離が発生しやすくなってきている。
従来の表面処理方法では、ころ軸受のピーリング損傷等潤滑不良に起因する損傷の対策として、ころの転動面および/または内外輪の軌道面に微小凹形状のくぼみを設け、面粗さパラメータRqniで表示したとき、軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)の比の値Rqni(L)/Rqni(C)が1.0以下となり、かつ、面粗さパラメータSkが−1.6以下となるようにして、相手面が粗面でも仕上げのよい面でも長寿命となるようにしているが、低粘度、希薄潤滑下で油膜厚さが極端に薄い場合にはその効果が十分に発揮されない場合がある。
この発明の主要な目的は、低粘度過酷潤滑条件下でも寿命向上が図れるようにすることである。
この発明のプラネタリギヤ機構用転がり軸受は、太陽歯車と、前記太陽歯車の外周を取り囲む内歯歯車と、太陽歯車と内歯歯車の双方にかみ合う遊星歯車とからなるプラネタリギヤ機構の、前記遊星歯車を回転自在に支持する転がり軸受であって、内輪、外輪および転動体のうち少なくとも一つの軸受部品が窒素富化層を有し、前記窒素富化層におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号が11番以上であり、残留オーステナイト量が11%以上25%以下の範囲にあり、表面にランダムに形成した無数の微小凹形状のくぼみを有し、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniを0.4以上1.0以下の範囲とし、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータSkが−1.6以下であることを特徴とするものである。
ここで、上記内輪は遊星歯車軸と呼ばれることもあるが、ここでは内輪という用語に統一する。また、転がり軸受を構成する内輪と外輪と転動体を軸受部品と総称する。
オーステナイト結晶粒とは、焼入れ処理を行った後も焼入れ直前のオーステナイト結晶粒界の痕跡が残っており、その痕跡に基づいた結晶粒をいうものとする。少なくとも一つの軸受部品では、オーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超えて非常に微細であることより、転動疲労寿命を大幅に改善することができる。オーステナイト結晶粒の粒度番号が10番以下では転動疲労寿命の改善程度は小さい。オーステナイト結晶粒は細かいほど望ましいが、通常13番を超える粒度番号を得ることは難しい。オーステナイト結晶粒は、窒素富化層が存在する表層部でも、それより内部でもあまり大きく変化しない。したがって、上記粒度番号の範囲の対象となる位置は、表層部および/または内部とする。
少なくとも一つの軸受部品では、窒素富化層における残留オーステナイト量が11%以上25%以下の範囲にあることにより、耐表面損傷特性と耐経年寸法変化特性とのバランスをとることができる。残留オーステナイト量が11%以上であることにより、表面損傷寿命を大幅に改善することができる。残留オーステナイト量が11%未満では表面損傷寿命は大きく改善されない。残留オーステナイト量が25%を超えると、通常の浸炭窒化処理品における残留オーステナイト量との差異がなくなり、経年寸法変化は大きくなる。
残留オーステナイト量は、研削後の転動面や軌道面の表面下50μmにおける値であって、たとえばX線回折によるマルテンサイトα(211)と残留オーステナイトγ(220)の回折強度の比較で測定することができる。回折強度の比較はピーク値で比較してもよいし、ピークを含む近傍の面積値で比較してもよい。αは体心立方構造の鉄を、γは面心立方構造の鉄を表す。通常、マルテンサイトは炭素を固溶した状態では体心正方構造であるが、焼戻しにより炭素が移動して体心正方構造から体心立方構造に変わる。回折強度の比較からは残留オーステナイト量の体積%が得られる。α鉄とγ鉄の密度差は小さいので体積%と質量%とで大きな相違はない。
少なくとも一つの軸受部品の表面に、ランダムに無数の微小凹形状のくぼみを設けたことによって、油膜形成能力が向上し、低粘度希薄潤滑下で極端に油膜厚さが薄い条件下でも長寿命となる。さらに、くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniを0.4以上1.0以下の範囲とすることにより、希薄潤滑下でも油膜切れを防ぐことが可能である。
少なくとも一つの軸受部品の表面において、面粗さパラメータSkを−1.6以下とすることにより、希薄潤滑下でも油膜切れを防ぐことが可能である。
請求項2の発明は、請求項1のプラネタリギヤ機構用転がり軸受において、窒素富化層における窒素含有量が0.1質量%以上0.7質量%以下の範囲にあることを特徴とするものである。窒素富化層は表層に形成された窒素含有量を増加した層であって、たとえば浸炭窒化、窒化、浸窒などの処理によって形成することができる。窒素富化層における窒素含有量が0.1質量%より低いと耐表面損傷特性が低下し、寿命が短くなる。窒素含有量が0.7%より多いと、ボイドと呼ばれる空孔ができたり、残留オーステナイト量が多くなりすぎたりして硬度を確保できず、短寿命になる。窒素富化層の窒素含有量は、研削後の転動面や軌道面の表面下50μmにおける値であって、たとえばEPMA(波長分散型X線マイクロアナライザ)で測定することができる。
請求項3の発明は、請求項1または2のプラネタリギヤ機構用転がり軸受において、窒素富化層における表面硬さがHV653以上であることを特徴とするものである。表面硬さをHV653以上と高くすることにより、転動疲労寿命を大幅に改善することができる。表面硬さがHV653未満では、転動疲労寿命は大きく改善されず、かえって劣化するので、望ましくはHV720〜800とする。表面硬さは高いほど望ましいが、通常、HV900を超える表面硬さを得ることは難しい。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかのプラネタリギヤ機構用転がり軸受において、窒素富化層における球状化炭化物の面積率が10%以上25%以下の範囲にあることを特徴とするものである。球状化炭化物の面積率を10%以上とすることにより転動疲労寿命を大幅に改善することができる。球状化炭化物の面積率が10%未満では転動疲労寿命は大きく改善されない。球状化炭化物の面積率が25%を超えると球状化炭化物の粗大化・凝集により材料の靭性が劣化する。球状化炭化物の面積率は、研削後の転動面や軌道面の表面下50μmにおける値であって、ピクリン酸アルコール溶液(ピクラル)を用いて腐食させた後、光学顕微鏡(400倍)で観察することができる。ここで、簡易的に球状化炭化物と表現しているが、実際は炭化物と窒化物を合わせたものである。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかのプラネタリギヤ機構用転がり軸受において、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRymaxが0.4以上1.0以下の範囲にあることを特徴とするものである。これにより、希薄潤滑下でも油膜切れを防ぐことが可能である。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかのプラネタリギヤ機構用転がり軸受において、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRqniが0.05以上0.09以下の範囲にあることを特徴とするものである。これにより、希薄潤滑下でも油膜切れを防ぐことが可能である。
この発明によれば、プラネタリギヤ機構の軸受の少なくとも一つの軸受部品が窒素富化層を有し、超微細化したオーステナイト結晶粒および耐表面損傷特性と耐経年寸法変化特性とのバランスをとる適切な残留オーステナイト量範囲としたことにより、通常の荷重依存型の転動疲労寿命と、滑りや油膜切れが原因で生じる金属接触による表面損傷寿命とを、ともに改善することができる。また、窒素富化層において、窒素含有量、表面硬さおよび球状化炭化物面積率を上記範囲に設定することにより、さらに確実に耐久性を向上させることができ、また、軸受をコンパクト化することができる。
また、プラネタリギヤ機構の軸受の少なくとも一つの軸受部品の表面に、微小凹形状のくぼみをランダムに無数に設けることによって、油膜形成能力が向上し、低粘度・希薄潤滑下で極端に油膜厚さが薄い条件下でも長寿命となる。とくに、くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniやSkの範囲を規定したことにより、希薄潤滑下でも油膜切れを防ぐことができる。
以下、図面に従ってこの発明の実施の形態を説明する。ここで、図1にプラネタリギヤ機構の構成を概略的に示し、図2にプラネタリギヤ機構を組み込んだ自動変速機の構成を概略的に示す。
図1および図2に示すように、プラネタリギヤ機構10は、自動変速機内の太陽歯車軸11と内歯歯車軸16との間にあって、太陽歯車12と内歯歯車15と複数の遊星歯車13とを含んでいる。太陽歯車12は外周に歯が形成してあり、太陽歯車軸11と一体的な関係にある。内歯歯車15は内周面に歯が形成してあり、内歯歯車軸16と一体的な関係にある。各遊星歯車13は、太陽歯車12と内歯歯車15との間にあって、太陽歯車12および内歯歯車15の双方とかみあって、自転しながら太陽歯車12の外周を公転することが可能である。プラネタリギヤ機構10の歯車は常時かみあっており、太陽歯車12または遊星枠14または内歯歯車15のいずれかに駆動力を与えたり、いずれかをロックしたりすることによって、太陽歯車軸11に対する内歯歯車軸16の回転数、回転方向、トルクなどを変化させることができる。
遊星歯車13は、プラネタリギヤ機構10の転がり軸受20によって、遊星歯車軸17に対して回転可能に支持されている。なお、遊星歯車軸17は、軸を介して回転自在に遊星枠14に支持されている。周知のとおり、転がり軸受は内輪(内方部材)と外輪(外方部材)と転動体とで構成され、内輪の外側軌道と外輪の内側軌道との間で転動体が転動するようになっている。この実施の形態では、転がり軸受20は図3に示すようなラジアル型の針状ころ軸受であって、複数の針状ころ18が保持器19により一定の間隔で正しい位置に保持されている。そして、遊星歯車軸17の外周面が内側軌道を提供し、遊星歯車13の内周面が外側軌道を提供する。したがって、この場合、遊星歯車軸17と遊星歯車13が転がり軸受20の内方部材と外方部材を構成する。
なお、転がり軸受20の内方部材として、遊星歯車軸17とは別体の、遊星歯車軸17の外周に固定した内輪を使用してもよい。同様に、転がり軸受20の外方部材として、遊星歯車13とは別体の、遊星歯車13の内周に固定した外輪を使用してもよい。
転がり軸受20を構成する軸受部品、ここでは内方部材としての遊星歯車軸17、外方部材としての遊星歯車13、転動体としての針状ころ18のうち、少なくともいずれか一つが窒素富化層を有する。窒素富化層のオーステナイト結晶粒の粒度番号は11番以上であり、かつ、窒素富化層における残留オーステナイトは11%以上25%以下の範囲にある。
窒素富化層の窒素含有量は0.1質量%以上0.7質量%以下の範囲にあり、窒素富化層の表面硬さはHV653以上であり、窒素富化層における球状化炭化物の面積率は10%以上25%以下の範囲にある。
また、少なくとも一つの軸受部品の表面に、ランダムに無数の微小凹形状のくぼみを有し、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniを0.4以上1.0以下の範囲とし、面粗さパラメータSkを−1.6以下としてある。
前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRymaxを0.4以上1.0以下の範囲とし、面粗さパラメータRqniを0.05以上0.09以下としてある。
ここで、軸受部品の熱処理について述べる。図4および図5に軸受部品の熱処理方法を示す。図4は1次焼入れおよび2次焼入れを行う方法を示す熱処理パターンであり、図5は焼入れ途中で材料をA1変態点温度未満に冷却し、その後、再加熱して最終的に焼入れする方法を示す熱処理パターンである。
図4を参照すると、まず、軸受部品用の鋼がA1変態点を超える浸炭窒化処理温度(たとえば845℃)に加熱され、その温度で軸受部品用の鋼に浸炭窒化処理が施される。温度処理T1では鋼の素地に炭素や窒素が拡散され、また、炭素が鋼に十分に溶け込まされる。この後、軸受部品用の鋼は、処理T1の温度から油焼入れを施されて、A1変態点未満の温度に冷却される。次いで、180℃で焼戻しが行われるが、この焼戻しは省略することができる。
この後、軸受部品用の鋼がA1変態点以上の温度で上記の浸炭窒化処理の温度未満の温度(たとえば800℃)に再加熱され、その温度で保持することにより処理T2が施された後、処理T2の温度から油焼入れを施されて、A1変態点未満の温度に冷却される。次いで、180℃で焼戻しが行われる。
図5を参照すると、まず、軸受部品用の鋼がA1変態点を超える浸炭窒化処理温度(たとえば845℃)に加熱され、その温度で軸受部品用の鋼に浸炭窒化処理が施される。温度処理T1では鋼の素地に炭素や窒素が拡散され、また、炭素が鋼に十分に解け込まされる。この後、軸受部品用の鋼は焼入れされずにA1変態点以下の温度に冷却される。この後、軸受部品用の鋼がA1変態点以上の温度で上記の浸炭窒化処理の温度未満の温度(たとえば800℃)に再加熱され、その温度で保持することにより処理T2が施された後、処理T2の温度から油焼入れを施されて、A1変態点未満の温度に冷却される。次いで、180℃で焼戻しが行われる。
上記の熱処理は、普通焼入れ(すなわち浸炭窒化処理に引き続いてそのまま1回焼入れ)するよりも、表層部分を浸炭窒化しつつ、割れ強度を向上させ、経年寸法変化率を減少させることができる。上述したように、上記の熱処理方法によれば、オーステナイト結晶粒度の粒径を従来の2分の1以下となるミクロ組織を得ることができる。上記の熱処理を受けた軸受部品は、転動疲労特性が長寿命であり、割れ強度を向上させ、経年寸法変化率も減少させることができる。
なお、「普通焼入れ」とは、図4または図5に記載の「浸炭窒化処理」をしない焼入れをいう。また、図4に記載の「1次焼入れ」とは、浸炭窒化処理のための加熱温度T1に加熱し油冷によって急冷する1回目の焼入れをいう。図4に記載の「2次焼入れ」とは、図4に記載の1次焼入れ後で、普通焼入れのための加熱温度T2に加熱し油冷によって急冷する2回目の焼入れをいう。
図4に示す熱処理パターンを適用した軸受鋼のオーステナイト結晶粒度を図6(a)に示す。また、比較のため、従来の熱処理方法による軸受鋼のオーステナイト結晶粒度を図6(b)に示す。また、図7(a)および図7(b)に、上記図6(a)および図6(b)を図解したオーステナイト結晶粒度を示す。これらオーステナイト結晶粒度を示す組織より、従来のオーステナイト粒径はJIS(Japanese Industrial Standard)規格の粒度番号で10番であり、また本発明による熱処理方法によれば12番の細粒を得ることができる。また、図6(a)の平均粒径は、切片法で測定した結果、5.6μmであった。
次に、軸受部品の表面処理について述べる。転がり軸受は内輪と外輪と転動体とを主要な構成要素としている。そして、転動体の転動面および端面ならびに内外輪の軌道面の少なくとも一つに、無数の微小凹形状のくぼみをランダムに形成して微小粗面化してある。この微小粗面は、Ryniが0.4以上1.0以下の範囲にあり、くぼみの平均面積が30μm2以上100μm2以下の範囲であり、くぼみの面積率が5%以上20%以下の範囲であり、面粗さパラメータSkが−1.6以下であり、面粗さパラメータRymaxが0.4以上1.0以下の範囲であり、面粗さパラメータRqniが0.05以上0.09以下になっている。
パラメータSkとは、粗さ曲線の歪み度(スキューネス)を指し(ISO4287:1997)、凹凸分布の非対称性を知る目安となる統計量であり、ガウス分布のような対称な分布ではSk値は0に近くなり、凹凸の凸部を削除した場合は負、逆の場合は正の値をとることになる。Sk値のコントロールは、バレル研磨機の回転速度、加工時間、ワーク投入量、チップの種類と大きさ等を選ぶことにより行える。たとえば、Sk値を幅方向、円周方向とも−1.6以下とすることにより、微小凹形状のくぼみが油溜りとなり、圧縮されても滑り方向、直角方向への油のリークは少なく、油膜形成に優れ、油膜形成状況は良好で、表面損傷を極力抑える効果がある。
このようにすることで、極端に油膜厚さが薄い条件下でも、高い油膜形成効果を発揮することを可能とし、油膜パラメータΛ=0.13という非常に過酷な潤滑条件下でも十分な長寿命効果を得ることができる。このように微小粗面を得るための表面加工処理としては、特殊なバレル研磨によって所望の仕上げ面を得ることができるが、ショット等を用いてもよい。
これらのパラメータで表される表面性状を、転がり軸受の転動体や軌道輪といった構成要素について測定する場合、一ヶ所の測定値でも代表値として信頼できるが、たとえば直径方向に対向する2ヶ所を測定するとよい。
パラメータ算出規格:ガウシアン
測定長さ:5λ
カットオフ波長:0.25mm
測定倍率:×10000
測定速度:0.30mm/s
測定箇所:ころ中央部
測定数:2
測定装置:面粗さ測定器サーフコム400A(東京精密株式会社)
図8に転がり軸受の第1の例を示す。この転がり軸受1は転動体として針状ころ2を外輪3に組み込んだ針状ころ軸受であり、針状ころ2で相手軸4を支持するようになっている。数種類の針状ころ軸受を製作し、寿命試験を行った結果について説明する。寿命試験に用いた針状ころは、図9に示すように、外径Dr=33mm、内径dr=25mm、針状ころ2の直径D=4mm、長さL=25.8mmで、15本の針状ころを用いた保持器5付きの軸受である。試験軸受として針状ころの熱処理や表面仕上げの異なる5種類を製作した。各試験軸受の製造履歴は次のとおりである。
試験軸受No.1(実施例)
図4に示す熱処理パターンにおいて、浸炭窒化処理温度を850℃、保持時間を150分間とした。そのときの雰囲気を、RXガスとアンモニアガスとの混合ガスとした。その後、図4に示す熱処理パターンにおいて、浸炭窒化処理温度850℃から一次焼入れを行い、次いで浸炭窒化処理温度より低い温度800℃で20分間加熱して二次焼入れを行い、次いで、180℃で90分間焼戻しを行った。その後、表1に示す表面処理Aを施し、無数の微小凹形状のくぼみをランダムに形成した。
試験軸受No.2(比較例1)
図4に示す熱処理パターンにおいて、浸炭窒化処理温度を850℃、保持時間を150分間とした。そのときの雰囲気を、RXガスとアンモニアガスとの混合ガスとした。その後、図4に示す熱処理パターンにおいて、浸炭窒化処理温度850℃から一次焼入れを行い、次いで浸炭窒化処理温度より低い温度800℃で20分間加熱して二次焼入れを行い、次いで、180℃で90分間焼戻しを行った。その後、表1に示す表面処理Bを施し、無数の微小凹形状のくぼみをランダムに形成した。
試験軸受No.3(比較例2)
図4に示す熱処理パターンにおいて、浸炭窒化処理温度を850℃、保持時間を150分間とした。そのときの雰囲気を、RXガスとアンモニアガスとの混合ガスとした。その後、図4に示す熱処理パターンにおいて、浸炭窒化処理温度850℃から一次焼入れを行い、次いで浸炭窒化処理温度より低い温度800℃で20分間加熱して二次焼入れを行い、次いで、180℃で90分間焼戻しを行った。
試験軸受No.4(比較例3)
標準熱処理を行った。つまり、RXガス雰囲気中で、温度840℃、保持時間20分で加熱した後に焼入れを行い、次いで、180℃で90分間焼戻しを行った。
試験軸受No.5(比較例4)
浸炭窒化処理を行った。つまり、RXガスとアンモニアガスとの混合ガス雰囲気中で、温度850℃、保持時間150分間で加熱した後、850℃から焼入れを行い、次いで、180℃で90分間焼戻しを行った。
Figure 2006316821
各試験軸受の針状ころにおける仕上面状況を図10〜図12に示す。図10は表面処理A、図11は表面処理B、図12は表面処理なしでの表面粗さをそれぞれ示す。
使用した試験装置は図13に概略を示したようなラジアル荷重試験機6で、回転軸7の両側に試験軸受1を取り付け、回転と荷重を与えて試験を行うものである。試験に用いたインナレース(相手軸)の仕上げは研磨仕上げのRa0.10〜0.16μmである。アウタレース(外輪)も共通である。
軸受ラジアル荷重:2000kgf
回転数:4000rpm
潤滑油:クリセフオイルH8(試験条件で2cst)
前記製造方法で製作した試験片の材質調査およびピーリング試験結果を表2に示す。
Figure 2006316821
実施例は、無数の微小凹形状のくぼみをランダムに形成した比較例2と比べて1.5倍、表面処理なしの比較例2と比べて1.6倍、標準熱処理の比較例3と比べて2.9倍、浸炭窒化処理の比較例4と比べて2.1倍のピーリング強度となった。
(a)はプラネタリギヤ機構の正面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。 プラネタリギヤ機構を組み込んだ自動変速機の概略断面図である。 図1のプラネタリギヤ機構における転がり軸受の一部破断斜視図である。 軸受部品の熱処理方法を説明する図である。 図4の熱処理方法の変形例を説明する図である。 軸受部品のミクロ組織とくにオーステナイト粒を示す図であって、(a)は本発明例の軸受部品であり、(b)は従来の軸受部品である。 (a)は図6(a)を図解したオーステナイト粒界を示し、(b)は図6(b)を図解したオーステナイト粒界を示す。 針状ころ軸受の断面図である。 針状ころ軸受の断面図である。 粗さ線図である。 粗さ線図である。 粗さ線図である。 ラジアル荷重試験機の断面図である。
符号の説明
10 プラネタリギヤ機構
11 太陽歯車軸
12 太陽歯車
13 遊星歯車
14 遊星枠
15 内歯歯車
16 内歯歯車軸
18 針状ころ
20 針状ころ軸受(プラネタリギヤ機構用軸受)

Claims (6)

  1. 太陽歯車と、前記太陽歯車の外周を取り囲む内歯歯車と、太陽歯車と内歯歯車の双方にかみ合う遊星歯車とからなるプラネタリギヤ機構の、前記遊星歯車を回転自在に支持する転がり軸受であって、内輪、外輪および転動体のうち少なくとも一つの軸受部品が窒素富化層を有し、前記窒素富化層におけるオーステナイト結晶粒の粒度番号が11番以上であり、残留オーステナイト量が11%以上25%以下の範囲にあり、表面にランダムに形成した無数の微小凹形状のくぼみを有し、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniを0.4以上1.0以下の範囲とし、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータSkが−1.6以下である、プラネタリギヤ機構用転がり軸受。
  2. 前記窒素富化層における窒素含有量が0.1質量%以上0.7質量%以下の範囲にある、請求項1のプラネタリギヤ機構用転がり軸受。
  3. 前記窒素富化層における表面硬さがHV653以上である、請求項1または2のプラネタリギヤ機構用転がり軸受。
  4. 前記窒素富化層における球状化炭化物の面積率が10%以上25%以下の範囲にある、請求項1ないし3のいずれかのプラネタリギヤ機構用転がり軸受。
  5. 前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRymaxが0.4以上1.0以下の範囲にある、請求項1ないし4のいずれかのプラネタリギヤ機構用転がり軸受。
  6. 前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRqniが0.05以上0.09以下の範囲にある、請求項1ないし5のいずれかのプラネタリギヤ機構用転がり軸受。
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