JP2012201933A - プラネタリーギヤ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】内輪部材の長寿命化と、ころの摩耗や焼き付き防止とを共に実現するプラネタリーギヤ装置を提供する。
【解決手段】下記(a)〜(d)の条件を満足するニードルローラ16を有するプラネタリーギヤ装置10である。(a)Siの含有率が0.3〜2.2質量%、Mnの含有率が0.3〜2.0質量%であり、且つSiの含有量とMnの含有量との比(Si/Mn)が5以下の合金鋼で構成されている。(b)浸炭窒化処理もしくは窒化処理により、表面の窒素濃度が0.2〜2.0質量%であり、Si・Mn系窒化物の面積率が1%以上10%未満である。(c)面積375μm中の0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物の個数が100個以上である。(d)表面硬さが750Hv以上、表面の残留オーステナイト率が5体積%以上45体積%以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、主に建機のトランスミッション用の旋回減速機、走行減速機に用いられるプラネタリーギヤ装置に関し、特に、高温高速回転で用いる場合に好適なプラネタリーギヤ装置に関する。
従来より、プラネタリーギヤ装置は、減速機、変速機等、種々の用途に使用されている。例えば、自動車の自動変速機に用いられているプラネタリーギヤ装置は、サンギヤ、ピニオンギヤ、リングギヤ、及びキャリヤの回転要素を備えている。これらの回転要素のうち、サンギヤ、リングギヤ、及びキャリヤは、前記キャリヤの内周面に設置される出力軸と同心に配置されている。前記キャリヤのプレートには、周状に複数のピニオンギヤが複数配設されている。各ピニオンギヤは前記サンギヤ及び前記リングギヤに噛合するように前記サンギヤと前記リングギヤとの間に配設される。これに用いられるケージアンドローラは転がり軸受の一種であるが、内輪に相当するシャフトが固定輪になるという特微がある。
一般に、転がり疲労に関しては、面圧と繰り返し数によってその苛酷さが異なってくる。プラネタリーギヤ装置の場合、面圧の高い内輪が固定輪となるため、しばしばシャフトの剥離寿命が問題となってくる。さらに、一般論として、軸受の外輪に相当するプラネタリーギヤの内径面は軸受外輪に比べて表面粗さが粗い場合が多い。この場合、前記ピニオンギヤに備えられるニードルローラの摩耗や疲労が進行しやすく、ニードルローラの表面形状が崩れると、面圧の高い内輪(シャフト)の疲労が急速に進行するので、これも軸受寿命低下の一因となっている。
シャフトの剥離形態は、潤滑不良や異物の噛み込みに起因した表面起点型剥離であり、これに関しては浸炭窒化などの手法により表面の硬度、及び残留オーステナイト率の増加が対策として考えられる。
ここで、特許文献1では、上記の技術に加えて、シャフトの曲がりによる応力集中も抑える技術が開示されている。具体的には、浸炭窒化処理を行った後に調質処理を行い、さらに表層面のみを高周波焼入れすることによって表面の残留オーステナイト率及び硬さを高くして転動疲労寿命特性を向上させ、且つ、心部の残留オーステナイト率を0体積%として塑性変形を防止する技術である。
一方、近年では、潤滑環境はさらに厳しくなる傾向にあり、さらに小型化の要求も高まっていることから、更なる長寿命化が求められている。長寿命化の手段としては、面圧の低減が最も効果的であり、サイズを変えずに面圧を低滅させる手段として、保持器を取り除き、ころの本数を増やす方法が挙げられる。ただし、この場合、前後のころの接触部において、ころが相対的に逆方向に回転しているため、非常に大きなすべりが発生する。このため、通常の潤滑条件では、ころが摩耗したり焼き付いたりする現象が生じることが問題点として挙げられる。
したがって、上記観点に基づくと、寿命を大幅に向上させるケージアンドローラの開発を行うためには、内輪に相当するシャフト(以下、内輪部材ということがある。)の長寿命化と、ころの摩耗や焼き付き防止とを共に実現する技術を開発する必要がある。
特開2002−4003公報
しかしながら、シャフトの長寿命化に関しては、ころの本数を増加させる手法を示したが、これでも十分とは言えず、その他の手法でも長寿命化を図る必要がある。シャフトの材料成分の変更等から特許文献1に記載されている方法に基づいて長寿命化することは可能であるが、高価な元素を添加する必要があり、現実的ではない。また、特許文献1に記載の技術からは、シャフトの長寿命化と共に、ころの摩耗や焼き付き防止を実現するには、未だ検討の余地があった。
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、内輪部材の長寿命化と、ころの摩耗や焼き付き防止とを共に実現するプラネタリーギヤ装置を提供することにある。
前記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を重ね、自身(例えば転動体)の圧痕起点型剥離寿命を十分に確保し、かつ自身の耐圧痕性・耐摩耗性を向上させ、表面粗さ・表面形状の悪化を抑制し、二物体間(転動体と軌道輪間)に作用する接線力を抑制して、相手部材(例えば軌道輪)の寿命を延長させる材料因子がないか検討を行った。
ここで、表面起点型剥離に関して、そのメカニズムを詳細に検討した結果、表面起点型剥離には転動体と軌道輪の間に発生する接線力が大きく寄与していることが明らかとなった。
特に、異物の噛み込みや摩耗によって、転動体の表面形状が劣化すると、接線力が増大し、潤滑条件が良好な場合に比べて、軌道輪の寿命を劣化させることも明らかにしている。逆に軌道輪の表面形状が劣化しても転動体の形状が良好であれば、軌道輪の寿命をそれほど低下させないことも明らかにした。
すなわち、過酷な潤滑条件であっても、転動体の表面形状が劣化しないような対策を施すことができれば、軌道輪の長寿命化を図ることができる。
その結果、耐圧痕性・耐摩耗性を向上させる材料因子としては、表面硬さのほかに、前述した残留オーステナイト、表面窒素濃度、表面に析出したSi・Mn系窒化物の面積率が関係していることを知見した。
一方、耐焼付性を向上させるためには、凝着摩耗を防ぐことが重要となってくる。凝着摩粍を防ぐためには、凝着部が容易に破断する性質が好ましく、材料組織の観点からは硬質の析出粒子が分散していることが望ましい。
発明者らは、浸炭窒化を基本に耐焼付性を向上させる手法を検討した結果、浸炭窒化により窒素を導入することで、Si・Mn系の窒化物を折出させると耐焼付性が著しく向上することを知見した。
以上の知見から、転動体に浸炭窒化を施し、Si・Mn系窒化物を析出させることにより、自身の耐焼付性を向上させると同時に、相手部材(この場合シャフト)の寿命を向上させることができ、保持器を除いて転動体数を増加させたケージアンドローラを製造できることを本発明者らが見出した。
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、上記課題を解決するための本発明の請求項1に係るプラネタリーギヤ装置は、キャリヤに固定した複数のピニオンシャフトの外周に複数のニードルローラを配設して、前記ピニオンシャフトに回転自在に支持されたピニオンギヤを複数有するプラネタリーギヤ装置において、
前記ニードルローラが下記(a)〜(d)の条件を満足することを特微としている。
(a)Siの含有率が0.3〜2.2質量%、Mnの含有率が0.3〜2.0質量%であり、且つSiの含有量とMnの含有量との比(Si/Mn)が5以下の合金鋼で構成されている。
(b)浸炭窒化処理もしくは窒化処理により、表面の窒素濃度が0.2〜2.0質量%であり、Si・Mn系窒化物の面積率が1%以上10%未満である。
(c)面積375μm中の0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物の個数が100個以上である。
(d)表面硬さが750Hv以上、表面の残留オーステナイト率が5体積%以上45体積%以下である。
また、本発明に係るプラネタリーギヤ装置は、ニードルローラの表面硬さが、850Hv以上であることが好ましい。
本発明によれば、内輪部材の長寿命化と、ころの摩耗や焼き付き防止とを共に実現するプラネタリーギヤ装置を提供することができる。
本発明に係るプラネタリーギヤ装置の一実施形態における構成を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は要部断面図である。 本実施例における窒素濃度とSi・Mn系窒化物の面積率との関係を示すグラフである 本実施例におけるSi・Mn系窒化物の面積率とL10寿命との関係を示すグラフである。 本実施例におけるSi・Mn系窒化物の個数と寿命比率との関係を示すグラフである。 本実施例における窒素濃度と焼き付き時間比との関係を示すグラフである。 本実施例における試験装置の構成を示す正面図である。 本実施例における表面硬さと寿命比率との関係を示すグラフである。 本実施例における残留オーステナイト率と寿命比率との関係を示すグラフである。 本実施例におけるSiの含有量とMnの含有量との比(Si/Mn)と、窒化物の面積率との関係を示すグラフである。
以下、本発明に係るプラネタリーギヤ装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るプラネタリーギヤ装置の一実施形態における構成を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は要部断面図である。
図1に示すように、本実施形態のプラネタリーギヤ装置10は、図示しない軸が挿通されたサンギヤ11と、該サンギヤ11と同心に配されたリングギヤ12と、ピニオンギヤ13と、キャリヤ14とを備えている。ピニオンギヤ13は、キャリヤ14に回転自在に支持され、複数のピニオンギヤ13(図1においては3個)がサンギヤ11及びリングギヤ12に噛み合うように配設されている。
ピニオンギヤ13は、キャリヤ14に固定されたピニオンシャフト15を介してキャリヤ14に支持されており、ピニオンシャフト15の外周面とピニオンギヤ13の内周面との間に配された複数の転動体であるニードルローラ16によって、ピニオンシャフト15を軸として回転自在とされている。
ニードルローラ16は下記(a)〜(d)の条件を満足する。これらの条件を満足することにより、相手部材であるピニオンシャフト15の寿命をより効果的に延長することができ、プラネタリーギヤ装置10全体として寿命を延長することが可能となる。
(a)Siの含有率が0.3〜2.2質量%、Mnの含有率が0.3〜2.0質量%で、且つSiの含有量とMnの含有量との比(Si/Mn)が5以下の合金鋼で構成されている。
(b)浸炭窒化処理もしくは窒化処理により、表面の窒素濃度が0.2〜2.0質量%以上で、Si・Mn系窒化物の面積率が1%以上10%未満である。
(c)0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物の面積375μm中の個数が100個以上である。
(d)表面硬さが750Hv以上、表面の残留オーステナイト率が5体積%以上45体積%以下である。
本発明者らは、異物混入潤滑下の寿命を支配する因子を鋭意研究した結果、以下に述べるメカニズムによって転がり寿命が影響を受けることを見出した。
異物混入潤滑下では、潤滑油に混入した異物の噛み込みによってピニオンシャフトの軌道面15aに圧痕が形成される。この圧痕上をニードルローラ16が繰返し通過すると、ニードルローラ16が弱い場合には、形状崩れを起こす。この形状が崩れたニードルローラ16がピニオンシャフトの軌道面15aに更に大きなダメージを与えて剥離に至る。したがって、異物混入潤滑下で寿命を延長するためには、従来のようにピニオンシャフトの軌道面15aの残留オーステナイトのみを増やして圧痕縁の応力を緩和させるだけでは寿命延長効果が小さい。効果を大きくするためには、ニードルローラ16表面の残留オーステナイト率を増やして、圧痕の形成自体を抑制できるようにニードルローラ16を強化する必要がある。
そこで、本実施形態では、ニードルローラ16にSi及びMnを多く添加した鋼を用い、浸炭窒化処理を施して窒素を高濃度化し、硬質なSiとMnとを含有する窒化物、すなわち、Si・Mn系窒化物を表面に析出させてニードルローラ16を強化し、ニードルローラ16の形状変化を著しく抑制しようとするものである。
また、ニードルローラ16の強さは、Si・Mn系窒化物が寄与するものである。圧痕の形成を抑制するためには、変形の抵抗を大きくすることが重要であり、析出物の大きさが大きくなると、強化の効果が低滅する。すなわち、表面を強化するためには、Si・Mn系窒化物を微細に分散させる必要がある。
そこで、本実施形態では、窒化物の面積率を1〜10%にして、十分に析出させると共に、1μm以下又は500nm以下の細かい析出物の個数を増やしたりすることによって表面を強化することができる。
また、ニードルローラ16の硬さを上げると共に、残留オーステナイト率を適正値に制御することによって、圧痕縁の盛り上がり量を小さくして、ピニオンシャフトの軌道面15aへのダメージを低減することができる。
ここで、上記(a)〜(d)で規定したニードルローラに関する数値の技術的意義について、以下に説明する。
<Siの含有率、Mnの含有率>
本実施形態のプラネタリーギヤ装置のニードルローラは、上記(a)に規定したように、Siの含有率が0.3〜2.2質量%であり、Mnの含有率が0.3〜2.0質量%である。
Si・Mn系窒化物を十分に析出させるためには、Si及びMnを多く含有した鋼を用いる必要がある。なお、JIS鋼種SUJ2(Si含有率0.25質量%、Mn含有率0.40質量%)では、浸炭窒化などで窒素を過剰に付与しても、Si・Mn系窒化物量が少ない。このため、Si及びMnの含有率は以下の値を臨界値とする。
[Siの含有率]
Si(ケイ素)は、本実施形態における窒化物の析出量に必要な元素であり、Mnの存在によって、0.3質量%以上の添加で、窒素と効果的に反応して顕著に析出する。
[Mnの含有率]
Mn(マンガン)は、本実施形態における窒化物の析出に必要な元素であり、Siとの共存によって、0.3質量%以上の添加でSi・Mn系窒化物の析出を促進させる作用がある。また、Mnはオーステナイトを安定化する働きがあるので、硬化熱処理後に残留オーステナイトが必要以上に増加するといった問題を防止するため、2.0質量%以下とする。
<Siの含有量とMnの含有量との比(Si/Mn)>
本実施形態のプラネタリーギヤ装置のニードルローラは、上記(a)に規定したように、Si/Mnが5以下である。
前記析出物は、焼戻しによる窒化物とは異なり、浸炭窒化処理時に侵入してきた窒素が、オーステナイト域でMnを取り込みながらSiと反応して形成される。従って、Si添加量に対してMn添加量が少ないと、十分に窒素を拡散させても、Si・Mn系窒化物の析出が促進されない。前述したSi及びMn添加量の範囲で、且つ窒素量を0.2質量%以上侵入させた場合、Si/Mn比率を5以下とすることによって、寿命廷長や耐摩耗性、耐焼付性向上に効果のある面積率1.0%以上のSi・Mn系窒化物の析出量を確保することができる。
<Cの含有率>
本実施形態のプラネタリーギヤ装置のニードルローラは、C(炭素)の含有率が0.3〜1.2質量%であることが好ましい。
炭素は、焼入によってマルテンサイト組織となり、基地組織を硬化させる作用がある。したがって、ニードルローラとして必要な心部硬さを得るために、炭素の下限値は0.3貿量%以上とすることが好ましい。浸炭窒化時間を短縮するためには、0.5質量%以上が好ましく、0.8質量%以上がより好ましく、0.95質量%以上が更に好ましい。
一方、過剰に添加すると、セメンタイトの析出が過剰となり、浸炭窒化処理によって粗大化して靭性が低下する。このため、Cの含有率は、上限値を1.2質量%とすることが好ましい。
[Crの含有率]
本実施形態のプラネタリーギヤ装置のニードルローラは、Cr(クロム)の含有率が0.5〜2.0質量%であることが好ましい。
クロムは、焼入性を向上させると同時に、炭化物形成元素であり、材料を強化する炭化物の析出を促進し、更に微細化させる。0.5質量%未満であると焼入性が低下して十分な硬さが得られなかったり、浸炭窒化時に炭化物が粗大化したりする。
一方、2.0質量%を超えると、浸炭窒化時に表面にCr酸化膜が形成されて、炭素及び窒素の拡散を阻害する。そのため、Crの含有率は0.5質量%以上2.0質量%以下とすることが好ましい。
[Moの含有率]
本実施形態のプラネタリーギヤ装置のニードルローラは、Mo(モリブデン)の含有率が0.2〜1.2質量%であることが好ましい。
モリブデンは、焼入性を向上させると同時に、炭化物形成元素であり、材料を強化する炭化物及び炭窒化物、窒化物の析出を促進し、更に微細化させる作用がある、その効果は、0.2質量%以上の添加で顕著になる。
一方、1.2質量%を超えると効果が飽和し、コストが高くなる。したがって、Moの含有率は0.2質量%以上1.2質量%以下とすることが好ましい。
<表面の窒素濃度、及びSi・Mn系窒化物の面積率>
本実施形態のプラネタリーギヤ装置のニードルローラは、上記(b)に規定したように、表面の窒素濃度が0.2〜2.0質量%以上で、析出したSi・Mn系窒化物の面積率が1%以上10%未満である。
Si及びMnを含有した析出物は、熱的に安定な窒化物であり、窒化物中におけるSiとMnとの塑性の比率が約5:1であり、基地組織に均一に分散し、硬さを向上させる特微がある。この効果によって、寿命延長、耐摩耗性、耐焼付性の向上を図ることができる。Si・Mn系窒化物の面積率が1%以上で寿命が著しく向上するため、下限値を1%以上とし、窒素濃度を0.2質量%とする。Si・Mn系窒化物の面積率が10%を超えると効果が飽和するので、上限値を10%、窒素濃度を2.0費量%とすることが好ましい。
<Si・Mn系窒化物の個数>
本実施形態のプラネタリーギヤ装置のニードルローラは、上記(c)に規定したように、面稜375μm中における0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物の個数が100個以上である。
ニードルローラの材料としては、1μmを超える窒化物が含まれていても材料の強化にあまり寄与せず、細かい窒化物が分散している方が強化される。
この理由としては、析出強化の理論において、析出物粒子問距離が小さい方が強化能に優れるので、窒化物の面積率が同じであっても、析出粒子数が多ければ、相対的に粒子間距離が短くなり、強化されることにある。
すなわち、Si及びMnの含有率が多い鋼を用い、Si・Mn系窒化物の面積率が1〜10%の範囲で、平均粒径が0.05μm以上1μm以下の微細な窒化物の個数を増やすのがよい。また、0.05〜0.50μmのSi・Mn系窒化物の個数の比率を20%以上とすることにより、更に強化することが可能になる。
面積375μmの範囲で、0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物を100個以上にする手法としては、浸炭窒化処理温度を800℃以上870℃以下とすることが好ましい。この温度を超えると、窒化物が粗大化して、微細なSi・Mn系窒化物の個数が減少する。また、この処理温度より温度が高くなると、窒素の固溶限が大きくなるため、窒化物の量が少なくなり、所望の面積率が得られなくなる。浸炭窒化工程の初期から、Rxガスとエンリッチガスのアンモニウムガスの混合ガス雰囲気とし、Cp値は1.2以上、アンモニアガスの流量はRxガスの少なくとも1/5以上とする。また、浸炭窒化後の焼入は、油温60〜120℃の範囲で行う。この温度より高いと、十分な硬さが得られない場合がある。焼戻しは、160〜270℃で行い、また、必要に応じて、焼入処理後にサブゼロ処理を行ってもよい。
<ニードルローラの表面硬さ>
本実施形態のプラネタリーギヤ装置のニードルローラは、上記(d)に規定したように、表面硬さが750Hv以上である。
ニードルローラの表面硬さは、ビッカース硬さ750Hv以上である。耐圧痕性を向上させるために最も有効な材料因子は硬さである。すなわち、ニードルローラの表面硬さを750Hv以上とすることで、耐摩耗性、耐圧痕性、静的強度が良好になる。なお、ニードルローラの表面硬さが、750Hv未満であると、潤滑不良などの油膜形成性が劣化する環境下で、ニードルローラの表面に圧痕が形成されやすくなる。また、ニードルローラの表面硬さは、800Hv以上が好ましく、820Hv以上がより好ましく、850Hv以上が特に好ましい。
<表面残留オーステナイト率>
本実施形態のプラネタリーギヤ装置のニードルローラは、上記(d)に規定したように、表面残留オーステナイト率が5体積%以上45体積%以下である。
本実施形態のプラネタリーギヤ装置においては、外輪に相当するピニオンギヤの内径面の粗さが一般的な軸受に比べて粗い。粗さの悪い部材は相手材(この場合ニードルローラ)にダメージを与えるので、ニードルローラ自身の強化が必要になる。相手材が粗い場合の破損形態はピーリング損傷であり、この抑制には残留オーステナイトが有効である。ニードルローラ自身の残留オーステナイト率5体積%以上にすることで、異物により生じる圧痕縁における応力集中を軽減することができるが、5体積%未満では、この応力集中軽減効果が不足して、転動疲労寿命が低下する。
一方、残留オーステナイトはマルテンサイトに比べて軟質組織であり、これが多すぎると、上記窒化物の硬さ向上効果を打ち消してしまう可能性がある。この場合、ニードルローラの表面形状が劣化しやすく、シャフトの長寿命化効果が得にくいため、ニードルローラの残留オーステナイトの体積率を、45体積%以下、好ましくは40体積%以下とする。
<寿命及び耐焼付性の評価>
ニードルローラの耐久性評価として、寿命及び耐焼付性の評価を行った。
耐久性評価対象となる試験片としては、窒素量とSi・Mn析出量及び性能との関係を明らかにするために、窒素濃度が異なる複数の試験片を作製した。具体的には、下記表1の材料を直径65mm厚さ6mmの円板に旋削加工し、820〜900℃で2〜10時問、Rxガス、プロパンガス、及びアンモニアガス流量を変化させて、種々の窒素濃度の試験片を作製した。熱処理後、表面を研磨・ラッピングして鏡面仕上げした。なお、下記表1中、鋼種1はJIS鋼種SUJ3、鋼種2はJIS鋼種SUJ2に相当する。
Figure 2012201933
<表面の窒化物の面積率及び窒素濃度の測定>
電界放射型走査型顕微鏡(FE−SEM)を用い、加速電圧10kVで各試験片表面の観察を行った。窒化物面積率については、倍率5000倍で最低3視野以上写真を搬影し、写真を二値化してから画像解折装置を用いて面積率を計算した。対象となる窒化物が微細なものであるので、測定借率5000倍、測定面積375μmとすると、0.05μm以上1μm以下の窒化物の数を測定することができる。窒素濃度の測定は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用い、加速電圧15kVで行った。
<寿命試験>
続いて、種々の試験片に対し、スラスト型寿命試験機により、異物混入潤滑下での試験を行った。試験条件は以下の通りである。
[試験条件]
試験荷重:5880N(600Kgf)
回転数:1000min−1
潤滑油:VG68
異物の硬さ:870Hv
異物の大きさ:74〜147μm
異物混入量:200ppm
各試験片における窒素濃度、面積率、寿命比を表2に示す。寿命比は、比較例1のL10寿命を1としたときの比率で示す。エネルギー分散型X線分散型分析装置で分析した窒化物の元素分析結果から、Si、Mn、Nのピークが出現しており、表面の窒化物はSi・Mn系窒化物であった。
Figure 2012201933
また、図2は、表2で示した実施例1〜9及び比較例1〜5の各試験片の窒素濃度とSi・Mn系窒化物の面積率との関係を示すグラフである。図2に示すように、Si・Mn系窒化物の面積率、すなわち析出量は、窒素濃度に比例して増大することがわかる。従って、Si、Mn添加量の多い鋼の方が同一窒素量で比較したときにSi・Mn系窒化物の析出量が多いことになる。
また、図3は、表2で示した実施例1〜9及び比較例1〜5の各試験片のSi・Mn系窒化物の面積率とL10寿命との関係を示すグラフである。図3に示すように、Si・Mn系窒化物の面積率が10%を越えると効果が飽和していることがわかる。
また、表3には、実施例10〜14、並びに比較例6及び比較例7の各試験片におけるSi・Mn系窒化物の面積率0.05〜1μmのSi・Mn系窒化物の個数、寿命試験結果を示す。また、図4は、表3で示した実施例10〜14、並びに比較例6及び比較例7の各試験片の0.05〜1μmのSi・Mn系窒化物の個数と寿命比率との関係を示すグラフである。表3及び図4に示すように、測定面積375μmの範囲内に、Si・Mn系窒化物を100個以上分散させることにより、基地組織が強化され、異物混入潤滑下での寿命が延長されることがわかる。
Figure 2012201933
<焼付試験>
次に、上記ニードルローラの耐久性評価と同様の平板形状をなす試験片を作製し、焼付試験を行った。焼付試験は、鋼球を押し付けて平板を回転させる方法で焼き付くまでの時間比(焼き付き時間比)で評価した。焼き付き試験の結果を表4及び図6に示す。なお、表4及び図6において、焼き付き時間比は、回転トルクが一定値に達した時間を調査し、比較例5の焼き付き時間を1として示す。なお、焼付試験の試験条件は以下のとおりである。
[試験条件]
試験荷重:98N(10kgf)
回転数:300min−1
潤滑油:S10を試験前に塗布
鋼球:SUJ2製ずぶ焼き鋼球 3/8inch 3個
すべり率:100%
Figure 2012201933
表4及び図6に示すように、実施例15〜18のように、窒素量が0.2%以上になると耐焼付特性が比較例8及び比較例9に比べて明らかに向上することが分かった。
<耐久試験>
次に、プラネタリーギヤ装置を作製し、以下の耐久試験を行った。プラネタリーギヤ装置は、表5に示す条件で作製したニードルローラを有する複数のプラネタリーギヤを作製した。また、作製した実施例19〜35及び比較例10〜17のプラネタリーギヤについて、図6に示す試験装置100により耐久試験を行った。具体的には、図6に示すニードルローラ110は、合金鋼を820〜900℃で2〜10時間、Rxガス、プロパンガス、及びアンモニアガスの混合ガス中で浸炭窒化処理後、油焼入を施し、その後、160〜250℃で2時間焼戻し処理を施した、さらに、熱処理後、表面粗さが0.05〜0.08Raとなるように仕上加工を行った。処理温度、処理時間、アンモニア流量を変化させて、種々の試験片を作製し、試験に用いた。
図6に示すように、試験装置100は内周にニードルローラ110を配することによってピニオンシャフト101に回転自在に支持された外輪102(ピニオンギヤ13に相当する)に、サポート軸受(図示せず)を介して荷重をかけながら回転させる。試験は、ラジアル荷重4kN、回転数8000min−1、油温150℃の条件で、剥離が生じるまでの時間を寿命として評価を行った。用いたニードルローラ110の外径は2mm、ピニオンシャフトの外径は8mmである。なお、耐久試験の前に、あらかじめ鉄粉を300ppm混入したグリースを軸受に封入して10分間運転し、軌道面及び転走面に圧痕を形成した後、洗浄を行ってから試験に用いることによって、表面疲労型剥離寿命の評価を行った。
各試験片における化学成分、Si/Mn比率、窒素濃度、Si・Mn系窒化物面積率、0.05〜1μmのSi・Mn系窒化物の個数、ニードルローラ表面の表面硬さと残留オーステナイト率、耐久試験結果を表5に示す。なお、表面硬さの測定にはビッカース硬度計を用い、残留オーステナイト率の測定にはX線回折を用いて、ニードルローラの表面を直接測定することによって行った。また、表5の「寿命比」は、比較例10のL10寿命を1としたときの比率で示している。
Figure 2012201933
表5の試験結果より明らかなように、本発明の鋼を用い、窒素濃度0.2質量%以上2.0質量%以下、Si・Mn系窒化物面積率1%以上10%以下、0.05〜1μmのSi・Mn系窒化物の個数が100個以上とし、さらにニードルローラの表面硬さと残留オーステナイト率とを通正にした実施例19〜35は、比較例10〜17に比べて寿命延長効果が大きい。
図7は、表5で示した実施例19〜35、及び比較例10〜17の各試験片の表面硬さと寿命比率との関係を示すグラフである。また、図8は、表5で示した実施例19〜35、及び比較例10〜17の各試験片の表面残留オーステナイト率と寿命比率の関係を示すグラフである。図7及び図8から明らかなように、ニードルローラ表面の硬さを750Hv以上、残留オーステナイト率を5〜45体積%にすることによって、寿命延長効果が大きいことがわかる。
また、図9は、表5で示した実施例19〜35、及び比較例10〜17の各試験片のSi/Mn比とSi・Mn系窒化物面積率との関係を示すグラフである。例えば、比較例13及び比較例14は、鋼種が上記条件(a)を満たし、窒素濃度を0.2質量%以上としているにもかかわらず、Si含有量に対してMn含有量が少なく、Si・Mn系窒化物の析出量が面積率で1%以下であり、0.05〜1μmの窒化物の個数も100未満である。すなわち、比較例13及び比較例14は、上記条件(a)〜(d)を満たしていないため、寿命比が基準となる比較例10と大差ない。このことから、Si/Mn比率を5以下にすることによって、Si・Mn系窒化物の析出を促進することができる。
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においても適宜変更可能である。例えば、実施例では総ころで試験を行っているが、保持器つきのケージ・ローラでも同様の効果が得られる。また、実施例ではニードルローラを1列で試験を行った例を示しているが、複数列のニードルローラを配したプラネタリーギヤ装置においても同様の効果が得られる。
10 プラネタリーギヤ装置
13 ピニオンギヤ
14 キャリヤ
15 ピニオンシャフト
16 ニードルローラ

Claims (1)

  1. キャリヤに固定した複数のピニオンシャフトの外周に複数のニードルローラを配設して、前記ピニオンシャフトに回転自在に支持されたピニオンギヤを複数有するプラネタリーギヤ装置において、
    前記ニードルローラが下記(a)〜(d)の条件を満足することを特微とするプラネタリーギヤ装置。
    (a)Siの含有率が0.3〜2.2質量%、Mnの含有率が0.3〜2.0質量%であり、且つSiの含有量とMnの含有量との比(Si/Mn)が5以下の合金鋼で構成されている。
    (b)浸炭窒化処理もしくは窒化処理により、表面の窒素濃度が0.2〜2.0質量%であり、Si・Mn系窒化物の面積率が1%以上10%未満である。
    (c)面積375μm中の0.05μm以上1μm以下のSi・Mn系窒化物の個数が100個以上である。
    (d)表面硬さが750Hv以上、表面の残留オーステナイト率が5体積%以上45体積%以下である。
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