JP2019157978A - 転動装置、転がり軸受およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】サイズや形状によらず、転動部の油膜形成性が悪い状態で使用されても長寿命を実現できる転動装置、転がり軸受およびそれらの製造方法を提供する。【解決手段】転がり軸受1は、第1の転動部品である外輪11および内輪12と、第2の転動部品としての玉13とを備える。玉13は、外輪11および内輪12に接触する。第1の転動部品としての外輪11および内輪12の転動部の表面は等方性の凹凸が形成された表面部分を含む。表面部分上には鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜11B、12Bが形成されている。【選択図】図2
Description
本発明は、転動装置、転がり軸受およびそれらの製造方法に関し、特に、第1および第2の転動部品を備えた転動装置、転がり軸受およびそれらの製造方法に関するものである。
転がり軸受などの転動装置は、転動部の潤滑状態が悪いために転動部の油膜形成が不十分になる環境で使用されると、油膜形成不足に起因した表面損傷(ピーリングなど)が発生する。論文「ころ軸受の疲れ寿命に及ぼす潤滑の影響」(非特許文献1)には、転がり軸受に関して転動部の潤滑状態を表す指標である油膜パラメータΛが1.2以下となる条件では、転がり軸受の寿命は推定計算寿命より短くなることが記載されている。
上記の表面損傷は、たとえば外輪軌道面または内輪軌道面の表面粗さにおける突起と転動体の表面粗さにおける突起とが接触する突起接触部での応力集中が原因である。このような応力集中を抑制する方法としては「突起接触部での応力の緩和」、または「転動部の油膜形成力の向上」が効果的である。
これら2つを同時に成し得る方法として最も一般的なものは、超仕上げ等の機械加工によって転動部の表面粗さを十分に小さくすることである。しかし、転動部の形状や部品の寸法によっては、上記のような機械加工によっても十分に表面粗さを小さくできない場合がある。
これに対して、特開2016−196958号公報(特許文献1)には、運転中に転動部の表面粗さの突起が小さく、なめらかな形状に変化する現象(なじみ)を促進させることで、突起接触部の応力を緩和させ、転動部の表面損傷を抑制する転動装置が記載されている。この特開2016−196958号公報(特許文献1)では、転動部の表面粗さの突起のなじみを促進する方法として、黒染処理が用いられている。
また、特許第2997074号公報(特許文献2)には、針状ころ軸受の転動体または軌道輪の転動部に特定の表面粗さのパラメータの規格を達成するように微小なくぼみを形成することが開示されている。このような構成を採用することで、特許第2997074号公報(特許文献2)では、転動部での油膜形成能力を向上させて表面損傷を抑制できるとしている。
高田浩年、鈴木進、前田悦生、「ころ軸受の疲れ寿命に及ぼす潤滑の影響」、NSK Bearing Journal No.642、p.7−13
特開2016−196958号公報(特許文献1)に記載された方法では、黒染処理によって転動部に形成された酸化鉄被膜が脱離してしまうと、それ以降の運転期間中に再度突起のなじみが起こる事は期待できない。つまり、一度はなじみの促進によって転動部の表面粗さが改善されるが、たとえば転動部への異物の侵入とその咬み込み等、なんらかの原因により転動部の表面粗さが再度悪化した場合は、転動装置を長寿命化できない可能性が高い。
特許第2997074号公報(特許文献2)に記載された方法は、特殊なバレル研磨によって転動部に微小なくぼみを形成するが、処理部材のサイズが大きすぎると、バレル研磨時に処理部材同士の接触による打ち傷が発生する恐れがある。また、処理部材の形状によってはバレル研磨によって転動部に微小なくぼみを形成できない場合がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、サイズや形状によらず、転動部の油膜形成性が悪い状態で使用されても長寿命を実現できる転動装置、転がり軸受およびそれらの製造方法を提供することである。
本開示に従った転動装置は、第1の転動部品と、第2の転動部品とを備える。第2の転動部品は、第1の転動部品に接触する。第1の転動部品の転動部の表面は等方性の凹凸が形成された表面部分を含む。さらに、その表面部分上には鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜が形成されている。
本開示に従った転がり軸受は、上記転動装置により構成される転がり軸受であって、外輪と内輪と複数の転動体とを備える。外輪は内周面に外輪軌道面を有する。内輪は外周面に内輪軌道面を有する。複数の転動体は外輪軌道面と内輪軌道面との間で転動する。外輪および内輪は第1の転動部品からなり、転動体は第2の転動部品からなる。
本開示に従った転がり軸受は、上記転動装置により構成される転がり軸受であって、外輪と内輪と複数の転動体とを備える。外輪は内周面に外輪軌道面を有する。内輪は外周面に内輪軌道面を有する。複数の転動体は外輪軌道面と内輪軌道面との間で転動する。外輪および内輪は第2の転動部品からなり、転動体は第1の転動部品からなる。
本開示に従った転動装置の製造方法は、第1の転動部品および第2の転動部品を準備する工程と、第1の転動部品の転動部に接触するように第2の転動部品を配置する工程とを備える。第1の転動部品および第2の転動部品を準備する工程は、等方性の凹凸を形成する工程と、複合被膜を形成する工程とを含む。等方性の凹凸を形成する工程では、第1の転動部品の転動部の表面に等方性の凹凸を形成する。複合被膜を形成する工程では、第1の転動部品の転動部の表面において等方性の凹凸が形成された表面部分上に、鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜を形成する。
本開示に従った転がり軸受の製造方法は、上記転動装置の製造方法を用いた転がり軸受の製造方法であって、第1の転動部品が、転がり軸受の内輪および外輪と、転がり軸受の複数の転動体とのいずれか一方である。また、第2の転動部品が、内輪および外輪と、複数の転動体とのいずれか他方である。
本開示によれば、サイズや形状によらず、転動部の油膜形成性が悪い状態で使用されても長寿命を実現できる転動装置および転がり軸受が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
<転動装置(転がり軸受)の構成>
まず、本発明の実施の形態の転動装置の一例としての転がり軸受の構成について説明する。本実施の形態では、転がり軸受の一例として深溝玉軸受について説明する。
<転動装置(転がり軸受)の構成>
まず、本発明の実施の形態の転動装置の一例としての転がり軸受の構成について説明する。本実施の形態では、転がり軸受の一例として深溝玉軸受について説明する。
図1を参照して、本実施の形態の深溝玉軸受1は、環状の外輪11と、外輪11の内側に配置された環状の内輪12と、外輪11と内輪12との間に配置され、円環状の保持器14に保持された転動体としての複数の玉13とを備えている。外輪11は内周面に外輪軌道面11Aを有している。内輪12は外周面に内輪軌道面12Aを有している。つまり、外輪11の内周面には外輪軌道面11Aが形成されており、内輪12の外周面には内輪軌道面12Aが形成されている。そして、外輪軌道面11Aと内輪軌道面12Aとが互いに対向するように、外輪11と内輪12とは配置されている。
さらに、複数の玉13は外輪軌道面11Aと内輪軌道面12Aとの間で転動するように構成されている。複数の玉13は、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aに玉転動面13Aにおいて接触し、かつ保持器14により周方向に所定のピッチで配置されることにより、円環状の軌道上に転動自在に保持されている。また、玉13においては、その表面全体が玉転動面13Aである。以上の構成により、深溝玉軸受1の外輪11および内輪12は、互いに相対的に回転可能となっている。
外輪11および内輪12に挟まれる空間、より具体的には外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aに挟まれる空間である軌道空間には、図示しないグリース組成物が封入されている。このグリース組成物により外輪11および内輪12の各々と玉13との間に油膜が形成されている。
図2を参照して、深溝玉軸受1を構成する転動部品としての外輪11、内輪12および玉13について説明する。第1の転動部材としての外輪11および内輪12の各々に第2の転動部材としての玉13は接触している。外輪11、内輪12および玉13のいずれもJIS規格のJIS G 4805:2008に規定されている高炭素クロム軸受鋼からなっている。外輪11、内輪12および玉13の各々は焼入れ処理された後に焼き戻し処理されている。
外輪11および内輪12の転動部の表面は焼き戻し処理された後に、後述するように等方性の凹凸が形成された後、化成処理されている。化成処理によって、外輪11および内輪12の転動部の表面に鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜11B、12Bが形成されている。鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜11B、12Bは、外輪11および内輪12の転動部の表面の少なくとも一部に形成されている。鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜11B、12Bは、外輪11および内輪12の転動部の表面の全てに形成されていることが好ましい。
外輪11の転動部は外輪軌道面11Aを含む領域であって、外輪11の転動部の表面が外輪軌道面11Aを構成している。そして、外輪11の転動部の表面に等方性の凹凸が形成されている。図3に示すように、当該等方性の凹凸上に複合被膜11Bが形成されている。なお図3は、図2において点線四角枠で囲まれた外輪11の外輪軌道面11Aの一部を含む領域IIIの拡大断面模式図である。内輪12の転動部は内輪軌道面12Aを含む領域であって、内輪12の転動部の表面が内輪軌道面12Aを構成している。そして、内輪12の転動部の表面に等方性の凹凸が形成されている。当該等方性の凹凸上に複合被膜12Bが形成されている。玉13の転動部は玉転動面13Aを含む領域であって、玉13の転動部の表面が玉転動面13Aを構成している。
ここで、等方性の凹凸が形成された領域とは、図3に示すようにほぼ同等の大きさの凸部20が分散するように形成された領域を意味する。等方性の凹凸が形成された領域では、第1の方向において測定した第1の算術平均粗さRa1と、当該第1の方向と直交する第2の方向において測定した第2の算術平均粗さRa2との比Ra1/Ra2が0.5以上2以下である。なお、算術平均粗さRa1,Ra2の測定は、JIS規格B0633 2001に従って行うことができる。
また、等方性の凹凸が形成された領域では、表面性状のアスペクト比Strが0.5以上となっている。なお、StrはISO25178−2で定義されている面粗さパラメータであり、自己相関関数が最も早く特定の値へ減衰する方向の水平距離を、自己相関関数が最も遅く減衰する方向の水平距離で除したものである。
さらに、等方性の凹凸が形成された領域では、表面性状の高さ分布の対象性を表すパラメータであるSsqが0以上となっている。なお、SsqもISO25178−2で定義されている面粗さパラメータである。
外輪11および内輪12の転動部の表面に対する加工方法については後述する。玉13の転動部の表面は、回転砥石を用いた研削または研磨加工により仕上げられている。
外輪11と玉13のそれぞれとの間の領域、および内輪12と玉13のそれぞれとの間の領域における油膜パラメータΛの値が1.2以下となっている。油膜パラメータΛは、油膜厚さ(弾性流体潤滑理論で求められる、これらの領域に形成される最小油膜厚さ)と表面粗さ(相対する2面の二乗平均平方根粗さの二乗和の平方根)との比である。
<作用効果>
本開示に従った転動装置としての転がり軸受1は、第1の転動部品である外輪11および内輪12と、第2の転動部品としての玉13とを備える。玉13は、外輪11および内輪12に接触する。第1の転動部品としての外輪11および内輪12の転動部の表面は等方性の凹凸が形成された表面部分を含む。表面部分上には鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜11B、12Bが形成されている。
本開示に従った転動装置としての転がり軸受1は、第1の転動部品である外輪11および内輪12と、第2の転動部品としての玉13とを備える。玉13は、外輪11および内輪12に接触する。第1の転動部品としての外輪11および内輪12の転動部の表面は等方性の凹凸が形成された表面部分を含む。表面部分上には鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜11B、12Bが形成されている。
上記転動装置としての転がり軸受1において、等方性の凹凸が形成された表面部分(外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12A)では、たとえば軸受の回転軸方向である第1の方向において測定した第1の算術平均粗さRa1と、当該第1の方向と直交する第2の方向において測定した第2の算術平均粗さRa2との比Ra1/Ra2が0.5以上2以下である。また、この等方性の凹凸が形成された表面部分では、表面性状のアスペクト比Strが0.5以上となっている。さらに、この等方性の凹凸が形成された表面部分では、表面性状の高さ分布の対象性を表すパラメータであるSsqが0以上となっている。
このような第1の転動部品(外輪11および内輪12)と第2の転動部品(玉13)の組み合わせにすることで、玉13の転動部に存在する表面粗さの突起は、外輪11および内輪12の外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aに形成された等方性の凹凸との接触によって軽微な摩耗および塑性変形を起こし、その形状が滑らかになる。その結果、突起の先端曲率や頂点の高さのばらつきが小さくなる。なお、このような現象を本明細書においては突起のなじみと表現する。一般的に、2面の接触では表面粗さの突起の先端曲率や頂点の高さのばらつきが小さくなるほど、突起接触部での接触状態が弾性的になる。これは突起接触部の疲労の進行や摩耗量の低減に繋がる。したがって、玉13の転動部の突起先端曲率や頂点の高さのばらつきをなじみによって小さくすることで、外輪11、内輪12および玉13の転動部の表面損傷を抑制することができる。これにより、外輪11、内輪12または玉13の転動部の表面損傷による転動装置全体の寿命低下を抑制できる。
本開示に従った転がり軸受1は、上記転動装置により構成される転がり軸受であって、外輪11と内輪12と複数の転動体としての玉13とを備える。外輪11は内周面に外輪軌道面11Aを有する。内輪12は外周面に内輪軌道面12Aを有する。複数の玉13は外輪軌道面11Aと内輪軌道面12Aとの間で転動する。外輪11および内輪12は第1の転動部品からなり、玉13は第2の転動部品からなる。
この場合、転動体としての玉13の表面に存在する表面粗さの突起は、外輪11および内輪12の転動部である外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aに形成された等方性の凹凸との接触によって軽微な摩耗および塑性変形を起こし、その形状が滑らかになる。そのため、玉13の表面における表面粗さの突起の先端曲率や頂点の高さのばらつきが小さくなる。この結果、外輪11、内輪12および玉13における表面損傷を抑制することができる。したがって、潤滑不良によって外輪11および内輪12の各々と玉13との間の油膜形成性が悪くなる条件で転がり軸受1が使用されても、外輪軌道面11A、内輪軌道面12Aおよび玉13の転動部での表面損傷を抑制することができる。これにより、転がり軸受の一例である深溝玉軸受1の長寿命を実現することができる。
上記深溝玉軸受1において、外輪11と複数の玉13のそれぞれとの間の領域、および内輪12と複数の玉13のそれぞれとの間の領域における油膜パラメータの値が1.2以下である。
ここで、上記の突起のなじみという現象は、転動部品の油膜形成性が良好でない条件である油膜パラメータΛが1.2以下の条件において特に進行しやすい。また油膜パラメータΛが1.2以下の条件においては、第1の転動部品としての外輪11および内輪12の突起による接触によって第2の転動部品としての玉13の表面損傷による寿命低下が起こりやすい。このため油膜パラメータΛが1.2以下の条件であることにより、本来であれば寿命低下が起こりやすい条件において、外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aの微小な突起と玉13の突起との接触による転動部の表面の損傷を抑制する効果を発揮することができる。したがって、転がり軸受1の長寿命を実現することができる。
<転動装置(転がり軸受)の製造方法>
図1〜図3に示した深溝玉軸受の製造方法は、図4に示すように部品準備工程(S10)と組立工程(S20)とを主に備える。部品準備工程(S10)では、第1の転動部品としての外輪11および内輪12と、第2の転動部品としての複数の玉13と、保持器14とを準備する。組立工程(S20)では、外輪11の外輪軌道面11Aおよび内輪12の内輪軌道面12Aに接触するように複数の玉13を配置する。このとき、複数の玉13は保持器14に保持されている。
図1〜図3に示した深溝玉軸受の製造方法は、図4に示すように部品準備工程(S10)と組立工程(S20)とを主に備える。部品準備工程(S10)では、第1の転動部品としての外輪11および内輪12と、第2の転動部品としての複数の玉13と、保持器14とを準備する。組立工程(S20)では、外輪11の外輪軌道面11Aおよび内輪12の内輪軌道面12Aに接触するように複数の玉13を配置する。このとき、複数の玉13は保持器14に保持されている。
部品準備工程(S10)は、図5に示す第1の転動部品の製造工程を含む。図5に示す第1の転動部品の製造工程は、外輪11または内輪12の製造工程に対応する。
図5に示す第1の転動部品の製造工程では、まず素材準備工程(S11)を実施する。この工程(S11)では、第1の転動部品となるべき素材を準備する。当該素材は必要な硬度や組織を得るべく焼入れ処理や焼き戻し処理などの熱処理が施されていることが好ましい。
次に、等方性の凹凸を形成する工程(S12)を実施する。この工程S(12)では、まず第1化成処理工程(S121)を実施する。工程(S121)では、化成処理のために用意された処理剤を素材の表面に付着させて化成処理を実施する。なお、化成処理とは処理のために用意された処理剤中に被処理部材を浸漬する、もしくは処理剤を被処理部材に塗布することで被処理部材の表面に化学反応による被膜が形成される処理のことである。当該化成処理の結果、素材の表面に被膜(化成処理被膜)が形成される。また、被膜の下地である素材の表面には、優先的にエッチングされた部分が分散配置されることで等方性の凹凸が形成される。処理剤を素材の表面に付着させる方法は、任意の方法を用いることができる。たとえば、処理槽中に保持された処理剤に素材を浸漬する、あるいは素材の表面に処理剤を塗布する、といった方法を用いることができる。
次に、被膜除去工程(S122)を実施する。この工程S(122)では、上記第1化成処理工程S(121)において形成された被膜を除去する。工程(S122)では、被膜を除去するための処理剤を被膜に付着させる。当該処理剤を被膜を付着させる方法は任意の方法を採用できる。たとえば、処理槽中に保持された処理剤に被膜が形成された素材を浸漬する、あるいは被膜が形成された素材の表面に処理剤を塗布する、といった方法を用いることができる。この結果、素材において等方的な凹凸が形成された表面が露出する。
次に、複合被膜形成工程(S13)を実施する。この工程(S13)では、上記のように等方的な凹凸が形成された素材の表面上に複合被膜を形成する。複合被膜は鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜である。複合被膜を形成する方法としては任意の方法を用いることができるが、たとえば化成処理により複合被膜を形成してもよい。この場合、代表的には黒染処理を用いることができる。
次に、後処理工程(S14)を実施する。この工程(S14)では、たとえば洗浄処理や組立工程の準備のための機械加工などが実施される。このようにして、第1の転動部品が得られる。また、第2の転動部品としての玉13や保持器14については、従来周知の製造工程を実施することにより準備することができる。
<作用効果>
本開示に従った転動装置の製造方法は、第1の転動部品(外輪11、内輪12)および第2の転動部品(複数の玉13)を準備する工程である部品準備工程(S10)と、第1の転動部品の転動部に接触するように第2の転動部品を配置する工程である組立工程(S20)とを備える。工程(S10)は、等方性の凹凸を形成する工程(S12)と、複合被膜を形成する工程である被膜形成工程(S13)とを含む。等方性の凹凸を形成する工程(S12)では、第1化成処理工程(S121)により第1の転動部品としての外輪11、内輪12の転動部の表面、つまり外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aに等方性の凹凸を形成する。被膜形成工程(S13)では、第1の転動部品としての外輪11、内輪12の外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aにおいて等方性の凹凸が形成された表面部分上に、鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜を形成する。
本開示に従った転動装置の製造方法は、第1の転動部品(外輪11、内輪12)および第2の転動部品(複数の玉13)を準備する工程である部品準備工程(S10)と、第1の転動部品の転動部に接触するように第2の転動部品を配置する工程である組立工程(S20)とを備える。工程(S10)は、等方性の凹凸を形成する工程(S12)と、複合被膜を形成する工程である被膜形成工程(S13)とを含む。等方性の凹凸を形成する工程(S12)では、第1化成処理工程(S121)により第1の転動部品としての外輪11、内輪12の転動部の表面、つまり外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aに等方性の凹凸を形成する。被膜形成工程(S13)では、第1の転動部品としての外輪11、内輪12の外輪軌道面11Aおよび内輪軌道面12Aにおいて等方性の凹凸が形成された表面部分上に、鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜を形成する。
このようにすれば、図1〜図3に示した転動装置としての深溝玉軸受1を得ることができる。また、上記のように等方性の凹凸が形成された後、当該凹凸が形成された表面部分上に鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜を形成するので、凹凸が形成された表面部分における凸部の突起のなじみを促進できる。このため、転動装置における表面損傷を抑制し、当該転動装置の長寿命化を図ることができる。
上記転動装置の製造方法において、等方性の凹凸を形成する工程(S12)は、第1の転動部品の転動部となるべき部分に化成処理により被膜を形成する工程である第1化成処理工程(S121)と、当該被膜を除去する工程である被膜除去工程(S122)とを含む。上記被膜除去工程(S122)では、上記第1化成処理工程(S121)によって形成された被膜を除去するために用意した処理剤に、被処理部材としての素材を浸漬することが望ましい。このようにすることで、処理剤を保持する処理槽内に素材が収まりさえすれば当該素材のサイズや形状によらず素材の表面に等方性の凹凸を形成することができる。また、バレル研磨のように処理時に素材の表面に打ち傷が発生する危険性も低い。
上記転動装置の製造方法において、複合被膜形成工程(S13)では、化成処理により複合被膜11B、12Bを形成する。複合被膜11B、12Bを形成するために実施する化成処理は、表面調整工程を含まないことが望ましい。そのような化成処理の代表例としては、たとえば黒染処理が挙げられる。黒染処理の場合は、エッチングプロセスにおいて被処理部材としての素材の表面の突起部から優先的に溶出が起こると考えられる。そのため、エッチングプロセス後の表面形状ではエッチング前の表面形状よりも突起部が小さく、なめらかになる。その後、突起が小さくなめらかになった表面形状に沿って、反応過程で析出した難溶性の被膜が堆積する。このため、上記の複合被膜11B、12Bをコーティング、塗布等の方法で形成する場合よりも、転動中のなじみを安定して発生させることができる。
言い換えれば、複合被膜形成工程(S13)において化成処理によって複合被膜11B,12Bを形成した場合、複合被膜11B,12Bを形成する化成処理時に既に素材の表面の突起形状が改善されているため、転動中に複合被膜11B、12Bが剥がれたとしても転動部の突起先端曲率や頂点の高さのばらつきは小さくなる。また、化成処理では、前述の通り素材のサイズや形状によらず複合被膜11B,12Bの形成を行うことができ、処理時の打ち傷の発生リスクが小さい。
図1〜図3に示した転がり軸受の一例の深溝玉軸受1の製造方法は、上記転動装置の製造方法を用いた深溝玉軸受の製造方法であって、第1の転動部品が、内輪12および外輪11と、複数の転動体としての玉13とのいずれか一方である。また、第2の転動部品が、内輪12および外輪11と、複数の玉13とのいずれか他方である。このようにすれば、本開示に従った転がり軸受を得ることができる。なお、上述した実施の形態においては、第1の転動部品が内輪12および外輪11であり、第2の転動部品が複数の玉13である。
(実施の形態2)
<転動装置(転がり軸受)の構成>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。なお、特に言及しない限り、本実施形態の深溝玉軸受1は上記の本実施の形態1における深溝玉軸受1と同一の構成を備えているため、その説明を繰り返さない。
<転動装置(転がり軸受)の構成>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。なお、特に言及しない限り、本実施形態の深溝玉軸受1は上記の本実施の形態1における深溝玉軸受1と同一の構成を備えているため、その説明を繰り返さない。
図6を参照して、本発明の実施の形態2の深溝玉軸受1は、玉転動面13Aにモ鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜13Bが形成される一方、外輪11および内輪12には複合被膜は形成されていない。この点において、本実施の形態の深溝玉軸受1は、実施の形態1の深溝玉軸受1と異なっている。
<作用効果>
図6に示した転がり軸受の一例としての深溝玉軸受1は、実施の形態1における深溝玉軸受1と同様に上記転動装置により構成される転がり軸受であって、外輪11と内輪12と複数の転動体としての玉13とを備える。外輪11は内周面に外輪軌道面11Aを有する。内輪12は外周面に内輪軌道面12Aを有する。複数の玉13は外輪軌道面11Aと内輪軌道面12Aとの間で転動する。外輪11および内輪12は第2の転動部品からなり、玉13は第1の転動部品からなる。すなわち、玉13の表面は等方性の凹凸が形成された表面部分を含み、当該表面部分上には鉄の酸化物および化合物を主成分としる複合被膜13Bが形成されている。なお、玉13の表面全体に等方性の凹凸が形成されている。
図6に示した転がり軸受の一例としての深溝玉軸受1は、実施の形態1における深溝玉軸受1と同様に上記転動装置により構成される転がり軸受であって、外輪11と内輪12と複数の転動体としての玉13とを備える。外輪11は内周面に外輪軌道面11Aを有する。内輪12は外周面に内輪軌道面12Aを有する。複数の玉13は外輪軌道面11Aと内輪軌道面12Aとの間で転動する。外輪11および内輪12は第2の転動部品からなり、玉13は第1の転動部品からなる。すなわち、玉13の表面は等方性の凹凸が形成された表面部分を含み、当該表面部分上には鉄の酸化物および化合物を主成分としる複合被膜13Bが形成されている。なお、玉13の表面全体に等方性の凹凸が形成されている。
この場合、外輪11および内輪12の転動部である外輪軌道面11A、内輪軌道面12Aに存在する表面粗さの突起は、玉13の表面に形成された等方性の凹凸との接触によって軽微な摩耗および塑性変形を起こし、その形状が滑らかになる。そのため、外輪11および内輪12の外輪軌道面11A、内輪軌道面12Aにおける表面粗さの突起の先端曲率や頂点の高さのばらつきが小さくなる。この結果、内輪12、外輪11および玉13における表面損傷を抑制することができる。したがって、潤滑不良によって外輪11および内輪12の各々と玉13との間の油膜形成性が悪くなる条件で転がり軸受が使用されても、外輪軌道面11A、内輪軌道面12Aおよび玉13の転動部での表面損傷を抑制することができる。これにより、深溝玉軸受1の長寿命を実現することができる。
以上に述べた各実施の形態の構成による作用効果を調べるため、二円筒試験機を用いた突起のなじみ性の評価試験が行なわれた。
図7を参照して、転動疲労性能の評価試験に用いられた二円筒試験機200について説明する。図7は二円筒試験機200の概略図を示している。二円筒試験機200は、駆動側回転軸D1と、従動側回転軸F1とを有している。
駆動側回転軸D1は、図7の左右方向に延びる部材であり、図7における左側の末端部にモータMが接続されている。このモータMにより駆動側回転軸D1は、図7の左右方向に延びる中心軸C1に対して回転可能となるように構成されている。図7における駆動側回転軸D1の右側の先端部には駆動側試験片D2が取り付けられている。駆動側試験片D2は、第1の転動部品に相当する部材であり、駆動側回転軸D1の回転に伴い中心軸C1の周りに回転可能となるように、駆動側回転軸D1の右側の先端部に固定されている。
一方、従動側回転軸F1は、図7の左右方向に延びる部材であり、図7の左右方向に延びる中心軸C2の周りに回転可能となるように構成されている。図7において従動側回転軸F1は、駆動側回転軸D1とは逆に、左側が先端部に、右側が末端部になっている。図7における従動側回転軸F1の左側の先端部には従動側試験片F2が取り付けられている。従動側試験片F2は、第2の転動部品に相当する部材であり、従動側回転軸F1の回転に伴い中心軸C2の周りに回転可能となるように、従動側回転軸F1の左側の先端部に固定されている。
駆動側回転軸D1の先端部は図7の右側を、従動側回転軸F1の先端部は図7の左側を向いている。しかし駆動側回転軸D1の中心軸C1と従動側回転軸F1の中心軸C2とは軸方向に一致しておらず、駆動側回転軸D1の中心軸C1と従動側回転軸F1の中心軸C2とは図7の上下方向に間隔を有している。このため駆動側回転軸D1の先端部に固定された駆動側試験片D2と、従動側回転軸F1の先端部に固定された従動側試験片F2とは、駆動側回転軸D1および従動側回転軸F1のそれぞれの外径面同士が、これらの回転していない状態において外径面接触部DFにて互いに接触するように配置されている。なお互いに接触するように配置される駆動側試験片D2および従動側試験片F2は、これらの下に敷いている、給油用フェルトパッド203と接触している。
以上のように設置された二円筒試験機200の設備の駆動条件を表1に示す。
表1に示すように、二円筒試験機200には潤滑油として無添加ポリ−α−オレフィン油(VG6相当)が用いられた。この潤滑油は給油用フェルトパッド203内に含浸されており、そこから駆動側試験片D2および従動側試験片F2の外径面に供給された。また試験条件として、駆動側回転軸D1の中心軸C1周りの回転数は2000rpmとし、従動側試験片F2に加えられる荷重W(図7参照)の値は230kgfとされた。ここで荷重Wとは、駆動側回転軸D1の回転時に従動側回転軸F1が図7の矢印Wに示す方向すなわち駆動側回転軸D1に近づく方向に従動側試験片F2に対して加える荷重を意味する。駆動側回転軸D1がモータMにより中心軸C1周りに回転するのに伴い、従動側回転軸F1が中心軸C2周りに、駆動側回転軸D1とは互いに逆方向に回転した。これは駆動側試験片D2と従動側試験片F2とが互いに接触しているためである。
試験の途中、一定の負荷回数で試験を中断して駆動側試験片D2の表面粗さ測定を行った。最終的に従動側試験片F2に加わる総負荷回数が5万回に達した時点で試験が終了された。
試験は計2回行い、それぞれの試験において材質の異なる従動側試験片F2を用いた。2回の試験に用いられた駆動側試験片D2および従動側試験片F2のそれぞれの形状、寸法および材質について表2と表3に示す。ここで2種類の試験とは、本実施の形態の規格外の試験である比較例の試験と、本実施の形態の規格に沿った実施例の試験とを意味する。
駆動側試験片D2について、比較例、実施例ともにJIS−SUJ2製であり、一般的な焼入れ、焼戻しの方法によって端面のロックウェル硬度を、比較例では61.5HRC、実施例は62.9HRCになるようにした。
従動側試験片F2についても、比較例、実施例ともにJIS−SUJ2製であり、一般的な焼入れ、焼戻しの方法によって端面のロックウェル硬度を、比較例では61.5HRC、実施例は62.7HRCになるようにした。
全ての駆動側試験片D2は、上記の熱処理後に駆動側試験片D2の平面視における円形の外径面の軸方向に関する算術平均粗さRaの値が0.750±0.050μmとなるように研磨加工を行った。
全ての従動側試験片F2は、上記の熱処理後に従動側試験片F2の平面視における円形の外径面の軸方向に関する算術平均粗さRa1の値が0.015±0.005μmとなるように超仕上げを行った。
比較例の従動側試験片F2においては、上記の超仕上げ後の軸方向に関する算術平均粗さRa1は0.019μmとなった。また、周方向に関する算術平均粗さRa2は0.009μmとなっており、軸方向と周方向の算術平均粗さの比Ra1/Ra2は2.111であった。また表面性状のアスペクト比Strは0.024、表面性状のスキューネスSsqは−0.949となった。
実施例の従動側試験片F2においては、上記の超仕上げ後さらに等方性の凹凸の形成とそれを覆う酸化鉄を主成分とする複合被膜を形成するための処理(以後、この処理を等方性表面形成のための処理と呼ぶ)を行った。これによって、実施例における従動側試験片F2の平面視における円形の外径面の軸方向に関する算術平均粗さRa1の試験前の値は1.553μmとなった。また、周方向に関する算術平均粗さRa2は1.530μmとなっており、軸方向と周方向の算術平均粗さの比Ra1/Ra2は1.015であった。また表面性状のアスペクト比Strは0.950、表面性状のスキューネスSsqは0.135となった。
図8は、レーザー顕微鏡で測定した比較例の試験前の従動側試験片F2の転動部の表面形状を示す。図9は、レーザー顕微鏡で測定した実施例の試験前の従動側試験片F2の転動部の表面形状を示す。図9から分かるように、実施例において等方性の凹凸が形成されていることが確認できる。
実施例における等方性の凹凸を含む表面(等方性表面)形成のための処理には、日本パーカライジング社のケミブラスト処理を適用した。具体的には、超仕上げ加工後の従動側試験片F2を脱脂・洗浄した後に、化成処理によって鉄の化合物を主成分とする複合被膜を従動側試験片F2の表面に形成した。その後、専用の処理剤の中に浸漬することで、従動側試験片F2の表面に形成された複合被膜を除去した。その後さらに、黒染処理によって従動側試験片F2の表面に酸化鉄を主成分とする複合被膜を形成させた。
以上の各試験片を用いた比較例および実施例のそれぞれについて、第2の転動部品に相当する駆動側試験片D2の転動部の表面粗さの変化を調査した。
表面粗さの測定では、まずレーザーテック社製のレーザー顕微鏡OPTELICS HYBRIDを用いて表4に示す測定条件で駆動側試験片D2の転動部の三次元の表面形状を測定した。
測定した表面形状は面内のx, y方向に一定ピッチで離散化された高さz(x, y)の集合として表現される。表面形状の生データは、駆動側試験片D2の外径面の巨視的な形状と多くのノイズを含むため、図10に示す手順で補正し三次元粗さパラメータを測定した。以下、具体的に説明する。
図10に示すように、補正の工程としては、上述したようにレーザー顕微鏡による表面形状の測定工程(S110)を実施する。次に、円筒形状の補正工程(S120)を実施する。この工程では、工程(S110)で測定した表面形状に二次曲面補正を行うことで、マクロな円筒形状を除去する。
次に、LandMarkノイズカット工程(S130)を実施する。この工程(S130)では、明らかなノイズを除去するため、ノイズ判定の対象点の周辺3ピクセル四方の範囲に存在する測定点の平均高さと対象点の高さの差が0.3μm以上となった時に、対称点のデータはノイズとして判定され、周辺の測定点の高さを昇順に並べた時の中央値に置き換える。
次に、ローパススプラインフィルター工程(S140)を実施する。この工程(S140)では、転動面の加工目のエッジに発生するノイズを除去する。この時のフィルタサイズは1μmとした。
次に、ローパスガウシアンフィルター工程(S150)を実施する。この工程(S150)では、フィルタサイズ2.5μmのローパスガウシアンフィルター処理を行い、短波長の表面粗さ成分を除去する。
次に、三次元粗さパラメータの測定工程(S160)を実施する。この工程(S160)では、上記の方法で補正した表面形状を、三谷商事社製のソフトウェア「SurftopEye」を用いて解析し、三次元粗さパラメータの測定を行った。
図11に駆動側試験片D2の転動部の平均突起先端曲率の試験中の変化を示す。図11に示すグラフの横軸は負荷回数を示し、縦軸は平均突起先端曲率(単位:μm−1)を示す。ここでの平均突起先端曲率は、表面粗さ測定の測定範囲内に存在する全突起の先端近傍の曲率の平均値として示した。この結果から、実施例の場合の方が試験中の駆動側試験片D2の転動部の突起の先端曲率の低下の程度が大きい事がわかる。
図12に駆動側試験片D2の転動部の突起頂点高さの標準偏差の試験中の変化を示す。図12に示すグラフの横軸は負荷回数を示し、縦軸は突起頂点高さの標準偏差(単位:μm)を示す。図12に示すように、実施例の場合の方が、試験中に駆動側試験片D2の転動部の突起頂点高さの標準偏差(ばらつき)の低下の程度が大きい事がわかる。
これらの結果から、従動側試験片F2の転動部に等方性表面形成のための処理を施すことで、駆動側試験片D2の転動部表面に存在する突起のなじみを促進できることがわかる。
図13に、実施例における従動側試験片F2の転動部について、5000回負荷後の表面形状を示す。なお、試験前の当該部分の表面形状は図9に示されている。図13と図9とを対比することにより、試験後は、等方性の凹凸における凸部が失われ、凹部のみ残っている事がわかる。この結果から、従動側試験片F2の転動部の突起のなじみが進行していることが確認できる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
1 深溝玉軸受、6 シール部材、7 グリース、11 外輪、11A 外輪軌道面、11B,12B,13B 複合被膜、12 内輪、12A 内輪軌道面、13 玉、13A 玉転動面、14 保持器、20 凸部、200 二円筒試験機、203 フェルトパッド。
Claims (10)
- 第1の転動部品と、
前記第1の転動部品に接触する第2の転動部品とを備え、
前記第1の転動部品の転動部の表面は等方性の凹凸が形成された表面部分を含み、
前記表面部分上には鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜が形成されている、転動装置。 - 前記表面部分では、第1の方向において測定した第1の算術平均粗さRa1と、前記第1の方向と直交する第2の方向において測定した第2の算術平均粗さRa2との比Ra1/Ra2が0.5以上2以下であり、かつ、
表面性状のアスペクト比Strが0.5以上となっており、かつ、
表面性状のスキューネスSsqが0以上となっている、請求項1に記載の転動装置。 - 請求項1または請求項2に記載の転動装置により構成される転がり軸受であって、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間で転動する複数の転動体とを備え、
前記外輪および前記内輪は前記第1の転動部品からなり、前記転動体は前記第2の転動部品からなる、転がり軸受。 - 請求項1または請求項2に記載の転動装置により構成される、転がり軸受であって、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間で転動する複数の転動体とを備え、
前記外輪および前記内輪は前記第2の転動部品からなり、前記転動体は前記第1の転動部品からなる、転がり軸受。 - 前記外輪と複数の前記転動体のそれぞれとの間の領域、および前記内輪と複数の前記転動体のそれぞれとの間の領域における油膜パラメータの値が1.2以下である、請求項3または4に記載の転がり軸受。
- 第1の転動部品および第2の転動部品を準備する工程と、
前記第1の転動部品の転動部に接触するように前記第2の転動部品を配置する工程とを備え、
前記第1の転動部品および前記第2の転動部品を準備する工程は、
前記第1の転動部品の前記転動部の表面に等方性の凹凸を形成する工程と、
前記第1の転動部品の前記転動部の表面において前記等方性の凹凸が形成された表面部分上に、鉄の酸化物および化合物を主成分とする複合被膜を形成する工程とを含む、転動装置の製造方法。 - 前記等方性の凹凸を形成する工程は、
前記第1の転動部品の前記転動部となるべき部分に化成処理により被膜を形成する工程と、
前記被膜を除去する工程とを含む、請求項6に記載の転動装置の製造方法。 - 前記複合被膜を形成する工程では、化成処理により前記複合被膜を形成する、請求項6〜7のいずれか1項に記載の転動装置の製造方法。
- 前記化成処理が黒染処理である、請求項8に記載の転動装置の製造方法。
- 請求項6〜9のいずれか1項に記載の転動装置の製造方法を用いた転がり軸受の製造方法であって、
前記第1の転動部品が、前記転がり軸受の内輪および外輪と、前記転がり軸受の複数の転動体とのいずれか一方であり、
前記第2の転動部品が、前記内輪および前記外輪と、前記複数の転動体とのいずれか他方である、転がり軸受の製造方法。
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