JP2001317551A - 円すいころ軸受 - Google Patents

円すいころ軸受

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JP2001317551A
JP2001317551A JP2000137386A JP2000137386A JP2001317551A JP 2001317551 A JP2001317551 A JP 2001317551A JP 2000137386 A JP2000137386 A JP 2000137386A JP 2000137386 A JP2000137386 A JP 2000137386A JP 2001317551 A JP2001317551 A JP 2001317551A
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roller bearing
tapered
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less
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Yuji Okamoto
裕二 岡本
Yasuhiro Shimizu
康宏 清水
Masanori Ueno
正典 上野
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Original Assignee
NTN Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 円すいころ軸受の耐焼付き性の向上に加えて
長寿命化や寸法安定性を向上させ、メンテナンス周期の
延長を可能にする。 【解決手段】 円すいころ軸受1の少なくとも内輪20
と円すいころ30を、合金元素として質量%で、Siを
0.3%以上3.0%以下含有し、かつ、Niを0.1
%以上3.0%以下、Vを0.05%以上1.0%以
下、Moを0.05%以上0.25%未満を単独または
複合して含有する鋼材で形成し、表面硬さをHRC58
以上とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は円すいころ軸受に関
し、たとえば鉄道車両の駆動装置用軸受に利用すること
ができる。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】図5
および図6に示すように、鉄道車両の駆動装置2は、主
電動機3の出力軸4から小歯車6と大歯車7を介して、
車輪9を支持した車軸8に動力を伝達するようになって
いる。小歯車6を取り付けた歯車軸5は、一対の円すい
ころ軸受1によって回転自在に支持されている。大歯車
7に比べて小歯車6の方が回転数が高く、負荷も大き
い。したがって、円すいころ軸受1は苛酷な環境下で使
用されることになるが、このような環境下でもすぐれた
転動疲労寿命と信頼性が要求される。従来、これらの円
すいころ軸受は高炭素クロム軸受鋼SUJ2を焼入れ処
理したものが用いられ、温度上昇時の寸法変化を防止す
るために、その使用温度よりも高温で焼戻し処理されて
いる。
【0003】また、鉄道車両の駆動装置に使用される円
すいころ軸受では、とくに冬季や寒冷地において、低温
起動性が問題になることがある。すなわち、駆動装置が
冷えた状態のうちに運転することで軸受内外輪温度差が
大きくなり、初期すきまがなくなって、ころとつばの接
触部で焼付が生ずる可能性がある。従来、寸法および形
状的効果による耐焼付き性向上について改善が図られて
きたが、近年、鉄道車両が高速化し、そのメンテナンス
周期も長期化する傾向にあり、耐焼付き性のみならず、
軸受の寿命や、寸法安定性についても考慮する必要が生
じてきた。
【0004】本発明は、耐焼付き性の向上に加えて長寿
命化や寸法安定性を向上させ、そうすることによってメ
ンテナンス周期の長期化を可能にした円すいころ軸受を
提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、外輪10と、
内輪20と、前記内外輪20,10間に組み込まれた複
数の円すいころ30を含む円すいころ軸受1であって、
前記内輪20および円すいころ30が、合金元素として
質量%で、Si(シリコン)を0.3%以上3.0%以
下含有し、かつ、Ni(ニッケル)を0.1%以上3.
0%以下、V(バナジウム)を0.05%以上1.0%
以下、Mo(モリブデン)を0.05%以上0.25%
未満を単独または複合して含有する鋼材で形成され、表
面硬さがHRC(ロックウエル硬さCスケール)58以
上であることを特徴とする少なくとも内輪20と円すい
ころ30を形成する鋼材の合金元素について、Si量を
0.3%以上3.0%以下含有させたのは、Siは高温
域での軟化を抑制し、円すいころ軸受1の耐熱性を改善
する作用があるためである。0.3%未満ではその効果
が得られず、Si量の増加に伴って耐熱性は向上する
が、3.0%を越えて多量に含有させてもその効果は飽
和し、かつ、熱間加工性や被削性が低下するので、上限
を3.0%に限定したものである。
【0006】Niを0.1%以上3.0%以下、Vを
0.05%以上1.0%以下、Moを0.05%以上
0.25%未満を単独または複合して含有させたのは以
下の理由による。
【0007】Niは、鋼中に固溶してマトリクスを強化
するとともに、特に円すいころ軸受1が高温下で使用さ
れた場合に、転動疲労過程における組織の変化を抑制
し、かつ、高温域での硬さの低下も抑制する。したがっ
て、Niは高温環境下での転動疲労特性と耐摩耗性、耐
表面損傷性を向上させる効果を有する。Niは耐食性を
改善する効果もある。これらの効果を得るためには、N
iを0.1%以上含有させる必要があるので、添加する
場合の下限を0.1%とした。しかし、3.0%を越え
てNiを含有させると、焼入れ処理時に多量の残留オー
ステナイトが生成して、所定の硬さが得られなくなり、
また、鋼材コストも高価になるので、上限を3.0%に
限定したものである。
【0008】Vは、炭素と結合して微細な炭化物を析出
させ、結晶粒を微細化して強度、靭性を改善するととも
に、高温焼戻し処理時の軟化を抑制し、さらに、高温域
での軟化も抑制する。したがって、上述したNiと同様
に、Vは高温環境下での転動疲労特性と耐摩耗性、耐表
面損傷性を向上させる効果を有する。この効果を得るた
めにV含有量の下限を0.05%としたものである。上
限を1.0%に限定したのは、1.0%を越えて多量に
含有させると、被削性と熱間加工性が低下するからであ
る。
【0009】Moは、鋼の焼入れ性を改善するととも
に、焼戻し脆性を防止し、さらに、高温域での軟化も抑
制する。したがって、Moも高温環境下での転動疲労特
性と耐摩耗性、表面損傷性を向上させる効果を有する。
この効果を得るために、Mo含有量の下限を0.05%
とした。しかし、Mo含有量を0.25%以上にすると
被削性が低下し、かつ、鋼材コストも上昇するので、上
限を0.25%未満に限定したものである。
【0010】上述した各合金元素の働きで、円すいころ
軸受1が高温で焼戻し処理を施されても、その表面硬さ
をHRC58以上とすることにより、すぐれた転動疲労
特性を確保した上で、耐摩耗性と耐表面損傷性を向上さ
せ、軸受の耐久寿命を延ばして鉄道車両用駆動装置のメ
ンテナンス周期を長くすることができる。
【0011】請求項2の発明は、請求項1に記載の円す
いころ軸受1において、前記鋼材に、合金元素として質
量%で、0.2%以上1.5%以下のMn(マンガ
ン)、0.3%以上5.0%以下のCr(クロム)を添
加したことを特徴とする。これにより、円すいころ軸受
1の転動疲労特性と耐摩耗性、耐表面損傷性をさらに向
上させることができる。すなわち、MnとCrはいずれ
も炭化物を形成して鋼を強化する。Mn含有量の下限を
0.2%、Cr含有量の下限を0.3%としたのはかか
る効果を得るためである。また、Mn含有量の上限を
1.5%に限定したのは被削性の低下を避けるためであ
り、Cr含有量の上限を5.0%に限定したのは大形の
炭化物の生成による脆化を防止するためである。
【0012】請求項3の発明は、請求項1または2に記
載の円すいころ軸受1において、少なくとも軌道輪1
0,20の表層に浸炭窒化層を形成し、この浸炭窒化層
の残留オーステナイト量を10体積%以上としたことを
特徴とする。これにより、軌道輪10,20の表面層に
高い靭性を付与して、亀裂の発生や進展を抑え、円すい
ころ軸受1の耐久寿命をさらに延ばすことができる。こ
こで、外輪10と内輪20を併せて軌道輪と総称する。
浸炭窒化処理で表面層の窒素含有量を高めると、表面層
のMs点(マルテンサイト変態開始温度)が低くなり、
これを焼入れすると、表面層に未変態のオーステナイト
が多く残留する。残留オーステナイトは高い靭性と加工
硬化特性を有し、亀裂の発生や進展を抑える働きをす
る。また、Ms点が低下した表面層は、マルテンサイト
変態が内部よりも遅れて始まり、かつ、変態量も内部よ
り少ないので、表面層には圧縮残留応力が形成され、表
面層の疲労強度が向上する。浸炭窒化層の残留オーステ
ナイト量を10体積%以上としたのは、これらの効果を
得るためである。一方、内部は高温焼戻しにより残留オ
ーステナイト量が減少するので、使用時の残留オーステ
ナイトの分解による寸法経年変化は抑えられる。
【0013】請求項4の発明は、請求項1ないし3のい
ずれかに記載の円すいころ軸受1において、前記内輪2
0が大径側に大つば面24を有し、前記大つば面24
が、円すいころ30の大端面32に接触する円すい面2
4aと、この円すい面24aの外側になめらかに連なり
円すいころ30の大端面32から離隔する方向に湾曲す
る逃げ面24bとで構成されたことを特徴とする。円す
いころ大端面32と接触する内輪大つば面24の円すい
面24aに、湾曲した逃げ面24bをなめらかに接続
し、接触領域の外縁近傍に鋭角の楔形すきまを形成する
ことにより、接触領域への潤滑油引込み作用を高めて、
十分な油膜を形成できるようにしたのである。また、な
めらかな逃げ面24bの形成で、円すいころ30のスキ
ュー時、内輪大つば面24との当たりによる疵付きを防
止することができる。円すいころ30の大端面32と内
輪20の大つば面24との間に潤滑油が引き込まれやす
くなる結果、当該接触部分に良好な潤滑状態が維持さ
れ、耐焼付き性が向上する。
【0014】なお、前記逃げ面24bの断面形状として
円弧を採用することにより、潤滑油引込み作用のすぐれ
た逃げ面を容易に加工することができる。また、前記円
すいころ大端面32の中央部に円形領域のぬすみ34を
設け、このぬすみ34の外周端を、前記内輪大つば面2
4の円すい面24aと逃げ面24bの境界近傍まで延ば
すことにより、前記楔形すきまの近くまで潤滑油を導い
て楔形すきまに十分な潤滑油を供給することができ、か
つ、円すいころ30の許容スキュー角もさらに大きくす
ることができる。さらに、前記内輪大つば面24の円す
い面24aと逃げ面24bの境界を、円すいころ軸受の
許容最大アキシャル荷重下で、前記円すいころ大端面3
2と内輪大つば面24との接触で生じる最大接触楕円S
の外縁近傍に設けることにより、円すいころ軸受のすべ
ての使用負荷レンジで、前記潤滑油を引き込む楔形すき
まを適切に形成することができる。
【0015】請求項5の発明は、請求項1ないし4のい
ずれかに記載の円すいころ軸受1において、前記円すい
ころ30の表面に、面粗さをパラメータRMSで表示し
たとき、軸方向および円周方向のいずれもRMS値が≧
0.10μmの値を有する凹凸を形成し、この凹凸の表
面粗さのパラメータSK値を≦−1.6となるようにし
たことを特徴とする。これにより、転動面の油膜形成率
が向上し、相手面の面粗さのいかんにかかわらず、相手
面にピーリング損傷や摩耗の発生がなく、長寿命を得る
ことができる。
【0016】請求項6の発明は、請求項1ないし5のい
ずれかに記載の円すいころ軸受1において、鉄道車両の
駆動装置用であることを特徴とする。上述のように本発
明の円すいころ軸受1は耐焼付き性の向上に加えて長寿
命化や寸法安定性を改善したものであるため、鉄道車両
の駆動装置に使用することにより、そのメンテナンス周
期の長期化が可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に従って詳細に説明する。
【0018】図1(a)に示す円すいころ軸受1は、外
輪10と、内輪20と、複数の円すいころ30と保持器
40を主要な構成要素としている。
【0019】外輪10は内周に円すい状の軌道面12を
有する。内輪20は外周に円すい状の軌道面22を有
し、この軌道面22の大径側に大つば面24、小径側に
小つば面26が設けられている。外輪10の軌道面12
と内輪20の軌道面22との間に複数の円すいころ30
が転動自在に配列される。複数の円すいころ30は保持
器40によって所定の円周方向間隔に保持される。円す
いころ30と、外輪10および内輪20の各軌道面1
2,22の各円すい角頂点は、図1(b)に示すよう
に、円すいころ軸受1の中心線上の一点Oで一致し、円
すいころ30が各軌道面12,22に沿って転がり運動
できるようになっている。
【0020】図2に拡大して示すように、内輪20の大
つば面24は、円すい面24aと、この円すい面24a
の外側になめらかに接続された円弧断面の逃げ面24b
とで構成され、逃げ面24bの外側に面取り24cが設
けられている。円すい面24aは、図1(b)に示した
O点を中心として形成されたものである。また、円すい
ころ30の大端面32は、O点から内輪20の大つば面
24までの距離R0 よりも適宜小さい曲率半径Rの球面
32aで形成され、この球面32aの中央部に円形領域
のぬすみ34が設けてある。ぬすみ34の外周縁は大つ
ば面24の円すい面24aと逃げ面24bの境界近傍ま
で延びている。
【0021】円すいころ30は軸受使用時に大端面32
が大つば面24に押し付けられながら転動するため、球
面32aの一部が円すい面24aと接触し、図2に断面
で示すように、両曲面間に接触楕円Sが生じる。逃げ面
24bと円すい面24aの境界は接触楕円Sの外縁近傍
に設けられ、逃げ面24bと球面32aとで接触楕円S
に近接する鋭角の楔形すきまが形成されるようになって
いる。接触楕円Sは軸受使用時のアキシャル荷重が高い
ほど大きくなる。この実施の形態の円すいころ軸受1で
は、許容最大アキシャル荷重下での最大接触楕円を想定
して、逃げ面24bと円すい面24aの境界が、この最
大接触楕円の外縁近傍となるように設計されており、潤
滑油を引き込む楔形すきまを、すべての使用負荷レンジ
で適切に形成できるようになっている。
【0022】円すいころ30は、表面がランダムな方向
の微小な凹凸に形成され、この微小な凹凸は、面粗さを
パラメータRMSで表示したとき、軸方向および円周方
向のいずれもRMS値が≧0.10μmの値を有するよ
うに形成し、かつ、表面粗さのパラメータSK値が軸方
向、円周方向とも≦−1.6になっている。このような
転動面の粗面条件を得るための表面加工処理としては、
特殊なバレル研磨によって、所望する仕上げ面を得るこ
とができる。この実施の形態では、円すいころ30の表
面を、ランダムな方向の微小な凹凸に形成し、外輪10
および内輪20の軌道面は標準研削仕上げになってい
る。
【0023】パラメータRMSとは、粗さ中心線から粗
さ曲線までの高さの偏差の自乗を測定長さの区間で積分
し、その区間で平均した値の平方根であり、別名自乗平
均平方根粗さともいう。RMSは拡大記録した断面曲
線、粗さ曲線から数値計算で求められ、粗さ計の触針を
ローラの幅方向および円周方向に移動させ測定する。パ
ラメータSK値とは、表面粗さの分布曲線の歪み度(S
KEWNESS)を指し、凹凸分布の非対称性を知る目
安の統計量であり、ガウス分布のような対称な分布で
は、SK値は0に近くなり、凹凸の凸部を削除した場合
では負、逆の場合は正の値をとることになる。SK値の
コントロールは、先に述べたバレル研磨機の回転速度、
加工時間、ワーク投入量、チップの種類と大きさ等を選
ぶことにより行なえ、パラメータSK値を幅方向、周方
向とも≦−1.6とした理由は、微小なくぼみが油溜り
となり、圧縮されても滑り方向、直角方向への油のリー
クは少なく、油膜形成にすぐれ、相手面の仕上げ面粗さ
の良否にかかわらず、油膜形成状況は良好で、金属接触
率は小さく、表面損傷を極力抑える効果がある。
【0024】油膜形成状況を確認するため、標準研削仕
上げ円すいころ(標準ころ)を用いた円すいころ軸受
と、ランダムな微小な凹凸に仕上げた円すいころ(本発
明ころ)を用いた円すいころ軸受とを用意し、スラスト
荷重条件での軸受回転トルクの比較を行なった。なお、
本発明ころ30は、内輪20の大つば面24に接触する
大端面32を含む外面全体にランダムな微小な凹凸が形
成されている。軸受回転トルクの測定結果を示す図3と
図4から明らかなように、本発明ころを用いた円すいこ
ろ軸受は、標準ころを用いた円すいころ軸受に比べて、
回転トルクが30%程度低下する。とくに、油膜の形成
しにくい低速、大荷重領域で効果が大きい。
【0025】図1に示した形態の円すいころ軸受1にお
いて、外輪10と内輪20と円すいころは、後の表1に
実施例として示す化学成分を有する鋼を素材として、8
40℃〜860℃に加熱したのち塩浴中へ焼入れし、3
50℃で焼戻ししたものである。一部の実施例では、焼
入れ前の加熱をアンモニアガスが添加された浸炭性雰囲
気中で行い、浸炭窒化処理も施した。浸炭窒化処理を施
したものについては、焼戻し温度を230℃とした。
【0026】実施例の円すいころ軸受1の外輪10およ
び内輪20は、サンプル抽出による検査の結果、いずれ
もHRC58以上の表面硬さを有し、浸炭窒化処理を施
したものは、浸炭窒化層の残留オーステナイト量が10
体積%以上になっていた。
【0027】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0028】表1に示す6種類の化学成分を有する鋼を
素材として、上述した焼入れ焼戻し処理を施した試験片
と軌道輪およびこの軌道輪を用いた円すいころ軸受(表
1中の実施例1〜6)を用意した。実施例1〜6に示し
た一部の鋼材に浸炭窒化処理を施した試験片、軌道輪お
よび円すいころ軸受(表1中の実施例7,8)も用意し
た。
【0029】比較例としては、鋼炭素クロム軸受鋼SU
J2および本発明の化学成分範囲を外れる2種類の化学
成分を有する鋼を焼入れ焼戻し処理した試験片と軌道輪
およびこの軌道輪を用いた円すいころ軸受(表1中の比
較例1〜3)を用意した。SUJ2を素材としたものに
ついては、浸炭窒化処理も施した試験片、軌道輪および
円すいころ軸受(表1中の比較例4)も用意した。
【0030】
【表1】
【0031】上記実施例および比較例の試験片、軌道輪
および円すいころ軸受のいずれかのサンプルについて、
寸法安定性試験、スミアリング試験および異物混入寿命
試験を実施した。各試験の概要と結果は以下のとおりで
ある。
【0032】寸法安定性試験350℃および230℃で
焼戻し処理した軸受内輪を、それぞれ250℃と150
℃で2500時間恒温保持し、内径の経年寸法変化率を
測定した。試験結果を表2に示す。収縮の変化率は負の
値で表示した。
【0033】
【表2】
【0034】実施例1〜6および比較例2の内輪は、寸
法変化率が0.01%以下であり、すぐれた寸法安定性
を示す。浸炭窒化処理を施した実施例7、8は、これら
よりもわずかに寸法変化率が大きいが、規格(0.01
5%以下)の範囲内におさまっている。比較例1は、寸
法変化率は小さいが、350℃焼戻し、250℃保持の
試験で収縮の寸法変化を示すため、内輪のはめあい応力
が過多となるおそれがある。また、CrとMoを多く含
有する比較例3は膨張率が高く、規格をはずれている。
【0035】スミアリング試験 スミアリングとは、軸受の軌道面、転動面、ころ端面、
つばのころ案内面などに生じる微小焼付きの集成によっ
て起こる表面の損傷をいう。転動面において転がり運転
中に滑りが混在するようなとき、潤滑剤の不足などの原
因で発生する局所的な凝着現象である。したがって、耐
焼付き性を向上させるためにはスミアリング特性を良く
する必要がある。スミアリング試験は、円筒部に緩やか
な曲率を有するリング状の試験片を駆動軸とこの駆動軸
に平行な従動軸に取り付け、両試験片の円筒面を互いに
押し当てて転動させることによって行なう。この試験の
場合は、従動軸が一定速度で回転駆動され、駆動軸は従
動軸と等速回転から徐々に増速される。また、従動軸側
試験片の円筒面が駆動軸側試験片と同じ表面粗さRma
x3μmに仕上げられている。スミアリング強度は、試
験片の円筒面にスミアリングが発生した時点の駆動軸と
従動軸の速度比で評価される。
【0036】実施例1、7および比較例1、2、4につ
いて、以下の試験条件でスミアリング試験を行なった。
なお、摺動するペアの試験片は同種のサンプルのものと
した。
【0037】 試験片の最大表面粗さ:3μm 接触面圧Pmax :2.1GPa 潤滑油 :タービン油VG46 駆動軸回転速度 :200rpmから100rpmずつ増速 従動軸回転速度 :200rpm一定 試験結果を表3に併せて示す。
【0038】
【表3】
【0039】表3から明らかなように、実施例の試験片
は、比較例1に対して、いずれも1.4倍以上の大きな
速度比までスミアリングが発生しない。比較例の各試験
片は、実施例の半分程度の速度差でスミアリングが発生
している。
【0040】異物混入寿命試験 実施例1,7ならびに比較例1,2,4の円すいころ軸
受を硬質異物が混入した油浴中の回転軸に取り付け、ラ
ジアル荷重を負荷して寿命試験を行なった。この試験で
は、サンプル数Nを6とし、耐久寿命はL10寿命(サ
ンプルの90%が破損しないで使える時間)で評価し、
寿命比は比較例1の焼戻し温度が180℃のもののL1
0寿命を基準値とした。 円すいころ軸受:内径30mm、外径62mm、幅16mm 回転速度 :2000rpm ラジアル荷重 :6.86kN 潤滑油 :タービン油VG56(25ccの油浴、油温60℃) 異物 :ガスアトマイズ金属粉(粒径100〜180μm、 硬さHV700〜800、混入量0.1g/リットル) 試験結果を表3に併せて示す。実施例の円すいころ軸受
は浸炭窒化処理なしの実施例1でも寿命比が2倍を越
え、浸炭窒化処理をした実施例7は寿命比が10倍近い
長寿命になっている。
【0041】以上の各試験結果より、実施例のものは、
すぐれた耐摩耗性と耐表面損傷性を有するとともに、異
物混入下でも耐久寿命が長く、かつ、使用中の寸法の経
年変化も少ないことがわかる。
【0042】さらに、寿命特性についても試験を行なっ
た。寿命特性については、表4に示す試験条件にて寿命
特性試験を行なった。試験結果を表5に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】表5の試験結果より、本発明の実施品はS
UJ2を使用した従来品に比べて7倍以上長寿命になる
ことが分かる。
【0046】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、内輪および円
すいころが、合金元素として質量%で、Siを0.3%
以上3.0%以下含有し、かつ、Niを0.1%以上
3.0%以下、Vを0.05%以上1.0%以下、Mo
を0.05%以上0.25%未満を単独または複合して
含有する鋼材で形成され、表面硬さがロックウエル硬さ
HRC58以上であるため、焼入れ焼戻し処理後の軸受の
材質と表面硬さを高温下でも安定して転動疲労特性と耐
摩耗性、耐表面損傷性にすぐれた円すいころ軸受が得ら
れる。したがって、たとえば請求項6の発明のように鉄
道車両の駆動装置に使用される円すいころ軸受に適用す
れば、より高速回転での使用が可能となり、メンテナン
ス周期の長期化が期待できる。
【0047】請求項2の発明のように、前記鋼材に、合
金元素として質量%で、0.2%以上1.5%以下のM
n、0.3%以上5.0%以下のCrを添加することに
より、前記転動疲労特性と耐摩耗性、耐表面損傷性をさ
らに向上させることができ、円すいころ軸受の耐久寿命
および信頼性をより一層向上させることができる。
【0048】請求項3の発明のように、前記軸受の少な
くとも軌道輪の表層に浸炭窒化層を形成し、この浸炭窒
化層の残留オーステナイト量を10体積%以上とするこ
とにより、表面層に高い靭性を付与して、亀裂の発生や
進展を抑え、鉄道車両の駆動装置等のメンテナンス周期
をさらに延ばすことができる。
【0049】請求項4の発明によれば、円すいころ大端
面と接触する内輪大つば面の円すい面に、湾曲した逃げ
面をなめらかに接続して、接触領域の外側に鋭角の楔形
すきまを形成し、接触領域への潤滑油引込み作用を高め
るようにしたので、両接触面間に十分な油膜を形成でき
るとともに、このなめらかな逃げ面の形成で、円すいこ
ろスキュー時の、内輪大つば面との当たりによる疵付き
を防止することができる。
【0050】請求項5の発明によれば、転動ローラの表
面をランダムな微小凹凸に形成し、この微小凹凸の粗さ
を一定範囲に抑えるようにしたので、転動面の油膜形成
に有利となり、相手面が粗面でも仕上げ面の良い相手に
対しても長寿命を得ることができ、相手面の摩耗やピー
リング損傷がないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】円すいころ軸受の断面図であって、aは縦断面
図、bは設計仕様を説明するための断面図である。
【図2】図1の円すいころ軸受の要部拡大図である。
【図3】本発明の円すいころ軸受の回転トルクの測定結
果を示すグラフである。
【図4】従来の円すいころ軸受の回転トルクの測定結果
を示すグラフである。
【図5】鉄道車両の駆動装置の斜視図である。
【図6】図5の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 円すいころ軸受 2 駆動装置 3 主電動機 4 出力軸 5 歯車軸 6 小歯車 7 大歯車 8 車軸 9 車輪 10 外輪 12 軌道面 20 内輪 22 軌道面 24 大つば面 24a 円すい面 24b 逃げ面 24c 面取り 26 小つば面 30 円すいころ 32 大端面 34 ぬすみ 40 保持器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 38/46 C22C 38/46 F16C 33/58 F16C 33/58 33/62 33/62 (72)発明者 上野 正典 三重県桑名市大字東方尾弓田3066 エヌテ ィエヌ株式会社内 Fターム(参考) 3J101 AA16 AA32 AA42 AA54 AA62 BA05 BA53 BA57 DA02 EA02 FA31 FA33 GA01 4K042 AA22 BA02 BA03 CA06 CA08 CA10 CA13 DA06

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外輪と、内輪と、前記内外輪間に組み込
    まれた複数の円すいころを含む円すいころ軸受であっ
    て、前記内輪および円すいころが、合金元素として質量
    %で、Siを0.3%以上3.0%以下含有し、かつ、
    Niを0.1%以上3.0%以下、Vを0.05%以上
    1.0%以下、Moを0.05%以上0.25%未満を
    単独または複合して含有する鋼材で形成され、表面硬さ
    がHRC58以上であることを特徴とする円すいころ軸
    受。
  2. 【請求項2】 前記鋼材に、合金元素として質量%で、
    0.2%以上1.5%以下のMn、0.3%以上5.0
    %以下のCrを添加したことを特徴とする請求項1に記
    載の円すいころ軸受。
  3. 【請求項3】 前記軸受の少なくとも軌道輪の表層に浸
    炭窒化層を形成し、この浸炭窒化層の残留オーステナイ
    ト量を10体積%以上としたことを特徴とする請求項1
    または2に記載の円すいころ軸受。
  4. 【請求項4】 前記内輪が大径側に大つば面を有し、前
    記大つば面が、円すいころの大端面に接触する円すい面
    と、この円すい面の外側になめらかに連なり円すいころ
    の大端面から離隔する方向に湾曲する逃げ面とで構成さ
    れたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記
    載の円すいころ軸受。
  5. 【請求項5】 前記円すいころの表面に、面粗さをパラ
    メータRMSで表示したとき、軸方向および円周方向の
    いずれもRMS値が≧0.10μmの値を有する凹凸を
    形成し、この凹凸の表面粗さのパラメータSK値を≦−
    1.6となるようにしたことを特徴とする請求項1ない
    し4のいずれかに記載の円すいころ軸受。
  6. 【請求項6】 鉄道車両の駆動装置用であることを特徴
    とする請求項1ないし5のいずれかに記載の円すいころ
    軸受。
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