JP5202978B2 - スラストころ軸受 - Google Patents

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Description

この発明は、スラストころ軸受に関し、より具体的には、トルクコンバータを含むオートマチックトランスミッションに用いられるスラストころ軸受に関するものである。
従来、自動車のオートマチックトランスミッションに作用するスラスト荷重を支持する軸受としては、例えば、特開2002−70872号公報(特許文献1)に記載されているようなスラストころ軸受が用いられる。
スラストころ軸受は、ころと保持器と軌道盤とで構成され、ころと軌道盤とが線接触する構造であるため、軸受容積が小さい割りに高負荷容量が得られる利点を有している。そして、そのスラストころ軸受は、高荷重、希薄潤滑下や高速回転下で運転され、過酷な使用条件で使用されている。
特開2002−70872号公報
近年、自動車メーカやオートマチックトランスミッションメーカ各社において、省エネルギー化の観点から従来オイルに添加剤を入れて使用する場合がある。添加剤入りのオイルは、軸受への潤滑性を従来より低下させるため、ころの差動すべりが大きい現行のスラストころ軸受では、表面起点型剥離等の表面損傷が問題となる。また、オートマチックトランスミッションの使用条件として、高荷重化の傾向が見られ、通常の荷重依存型の転動疲れによる内部起点型剥離も問題となる。
そこで、この発明の目的は、潤滑性の低下に伴う表面起点型剥離や転動疲れに伴う内部起点型剥離を防止して、長寿命のオートマチックトランスミッション用スラストころ軸受を提供することである。
請求項1に記載のスラストころ軸受は、ステータを挟んで互いに対面するインペラとタービンとを有するトルクコンバータを備えたトランスミッションにおいて、ステータとインペラとの間、およびステータとタービンとの間の少なくともいずれかに配置されてスラスト荷重を支持するスラストころ軸受である。このスラストころ軸受は、0.9wt%〜1.2wt%の炭素と、1.2wt%〜1.7wt%のクロムと、0.1wt%〜0.5wt%のマンガンと、0.15wt%〜0.35wt%のシリコンとを含有する高炭素鋼を冷間圧延して得られる表面粗さがRmax≦2μmのみがき帯鋼に熱処理を施して形成される軌道盤を備える。
上記の化学成分の炭素鋼を使用することにより、軌道盤の機械的性質が向上する。具体的には、焼入性の改善、転動疲労寿命や耐荷重性の向上、摩擦や摩耗の低減、硬さの向上、およびプレス加工等による軌道盤の損傷を防止することができる。
また、冷間圧延工程を経て製造された鋼板は、所望の寸法、表面の平滑性、および硬さを得ることができるので、軌道盤の製造工程中で寸法を調整する旋削工程や表面を平滑にする研削工程等を省略することができる。これにより、軌道盤の製造工程が簡素化されるので、スラストころ軸受の製造コストを低減することができる。さらに、熱処理によって得られた表面の窒素富化層が除去されることがない。
また、請求項2に記載の発明のように、軌道盤の表面の負荷長さ率tp(以下「TP値」という)は95%以上(切断レベルは0.3μm、最大高さRyに対する比は5%)とするのが好ましい。表面の負荷長さ率tpを上記範囲とすることにより、軌道盤の表面にある程度の凹みを形成することができる。この凹みは油溜まりとして機能し、油膜強度、潤滑性、および耐摩耗性が向上する。
また、請求項3に記載の発明のように、軌道盤の表面の窒素富化層における残留オーステナイト量を10%以下とすることにより、残留オーステナイトが焼戻マルテンサイトと微細な炭化物(粒径5μm以下)とに分解され、高荷重下での転動疲労寿命や耐荷重性が向上すると共に、摩擦や摩耗を低減することができる。
また、請求項4に記載の発明のように、軌道盤中心を通る径方向母線形状は、径方向内側領域と、径方向中央領域と、径方向外側領域とに区分される。そして、径方向中央領域は、径方向内側領域および径方向外側領域と比較して、断面高さが相対的に低くなっており、その最大高低差は30μm以下とするのが好ましい。最大高低差を上記範囲とすることにより、潤滑油の流れを阻害することなく、均一な油膜を形成することができ、潤滑性を向上させることができる。
また、請求項5に記載の発明のように、軌道盤の表面の窒素富化層における炭化物の面積率は、10%〜25%とするのが好ましい。転動疲労寿命および摺動特性を向上させる観点からは、球状化炭化物は多い程望ましいが、面積率が10%未満になると転動疲労寿命や摺動特性の向上効果はほとんど期待できず、また面積率が25%を超えると、炭化物の粗大化や凝集によって材料の靭性が劣化する。よって、表面の窒素富化層における炭化物の面積率を上記の範囲内とすることにより、転動疲労寿命および摺動特性が向上する。
また、請求項6に記載の発明のように、軌道盤は、厚み方向の一方側に平坦面と、この平坦面の縁から厚み方向深さが次第に大きくなるように傾斜する傾斜部とを有するのが好ましい。そして、平坦面の縁から径方向に最も離れて位置する傾斜部先端から、平坦面に向かって、径方向に0.3mm離れた計測位置における傾斜部の厚み方向深さは、0.02mm〜0.3mmである。
軌道盤の表面形状を上記のようにすることにより、潤滑性が向上すると共に、面圧低減による耐摩耗性や潤滑性が向上する。その結果、長寿命でかつコストを低減可能なスラストころ軸受を得ることができる。
また、請求項7に記載の発明のように、軌道盤は、厚み方向の一方側に軌道面を有し、他方側に第2の平坦面、および第2の平坦面の縁に第2の平坦面より厚み方向高さが高い縁部を有するのが好ましい。そして、第2の平坦面と縁部との厚み方向高さの差は、0.02mm以下である。軌道盤の表面形状を上記のようにすることにより、軌道盤の変形に伴うエッジ応力を緩和して、スムーズな回転を実現したスラストころ軸受を得ることができる。
また、請求項8に記載の発明のように、軌道盤は、ころと接触する厚み方向の一方側に第1の平坦面と、第1の平坦面の縁から厚み方向深さが次第に大きくなるように傾斜する傾斜部とを有し、他方側に第2の平坦面と、第2の平坦面の縁に第2の平坦面より厚み方向高さが高い縁部とを有するのが好ましい。そして、第1の平坦面の縁から径方向に最も離れて位置する傾斜部先端から、第1の平坦面に向かって、径方向に0.3mm離れた位置における傾斜部の厚み方向深さをδ、縁部から、第2の平坦面に向かって、径方向に0.3mm離れた位置における第2の平坦面と縁部との厚み方向高さの差をσとすると、|δ−20σ|<0.05mmを満たす。
傾斜部の厚み方向深さδが大きくなると、エッジ応力を下げることができるものの、全体としての接触面圧は増大する。一方、傾斜部の厚み方向深さδを小さくすると、全体の接触面圧を低減することができると共に、第2の平坦面と縁部との厚み方向高さの差σも小さくなる傾向がある。その結果、軌道盤に作用する荷重により、バックアップ面に軌道盤形状が倣う際、反対面端部に生じるカエリ(盛上り)の影響が小さくなる。その結果、軌道盤の変形を有効に防止することができる。
また、請求項9に記載の発明のように、軌道盤の厚み方向一方側および他方側の壁面それぞれに形成された窒素富化層における窒素濃度の差が0.2wt%以内であるのが好ましい。
なお、本明細書中「厚み方向の一方側壁面」または「厚み方向の他方側壁面」とは、軌道面または軌道面に対して厚み方向反対側の壁面を指すものとする。一方、「表面」とは、厚み方向一方側および他方側の壁面、外周面、および内周面等の軌道盤の表層面全体を指すものとする。
この発明によれば、所定の化学成分の炭素鋼を冷間圧延して得られた鋼板を出発材料として軌道盤を製造することにより、軌道盤の機械的性質が向上すると共に、低コストで転動疲労寿命、耐荷重性、および摺動特性が向上し、摩擦や摩耗を低減したスラストころ軸受を得ることができる。さらには、上記のトランスミッション用スラストころ軸受を採用することにより、長寿命で信頼性の高いトランスミッションを得ることができる。
また、軌道盤の製造工程において、熱処理後の研削工程を省略することにより、熱処理によって軌道盤の表面に形成された窒素富化層を除去することがない。その結果、窒素富化層における窒素濃度、残留オーステナイト量、および球状化炭化物の面積率が軌道盤の厚み方向の一方側壁面と他方側壁面とでほぼ均一とすることができる。
図8を参照して、この発明の一実施形態に係るトルクコンバータ20を説明する。トルクコンバータ20は、インペラ21と、ステータ22と、タービン23とを主に有している。
具体的には、エンジン(図示省略)の出力軸(トルクコンバータ20を中心にすると「入力軸」)に連結されるインペラ21と、自動変速機(図示省略)の入力軸(トルクコンバータ20を中心にすると「出力軸」)に連結されるタービン23とが互いに対向するように配置されている。また、ステータ22は、ケーシングに固定されたステータシャフトに一方向クラッチ24を介して取り付けられている。
このステータ22は、それぞれ椀状に形成されたインペラブレード21aとタービンブレード23aとの間で還流する流体を、これらの内径側でタービン23側からインペラ21側に指向させる。これにより、流体の流れ方向を変えてインペラ21に順方向の回転力を付与し、伝達トルクを増幅するものである。
上記のトルクコンバータ20は、入力軸および出力軸のいずれかの回転によりスラスト荷重を生じる。そこで、インペラ21とステータ22との間、および、ステータ22とタービン23との間に図1に示すようなこの発明の一実施形態に係るスラストころ軸受11が配置されている。
次に、図1〜図6を参照して、この発明の一実施形態に係るスラストころ軸受11およびスラストころ軸受11の軌道盤12,13の製造方法を説明する。なお、図1はスラストころ軸受11を示す図、図2は軌道盤12,13の出発材料となるみがき鋼板の主な製造工程を示すフロー図、図3は軌道盤12,13の主な製造工程を示すフロー図、図4は図1のP部の拡大図、図5は図1のR部の拡大図、図6は図1のQ部の拡大図である。
まず、図1を参照して、スラストころ軸受11は、複数のころ14と、複数のころ14を保持する保持器15と、複数のころ14を保持器15の厚み方向から挟持する一対の軌道盤12,13とを備える。なお、この実施形態における軌道盤12,13の厚み寸法は、3mm以下である。
上記構成のスラストころ軸受11は、単純な形式で負荷容量や剛性を大きくすることができる等の種々の利点を有する一方で、軌道盤12,13ところ14との間に差動滑りが生じる。ころ14は、その長さ方向中央部で純転がりとなり、両端に近づくにつれて相対滑りが直線的に増加する。特に、ころ14はころ長さが長いので、ころ14の両端部における周速の差が大きくなり、他の軸受に比べて滑り量が大きくなる。
このため、大きな差動滑りを生じる部分で軌道盤12,13の摩耗量が大きくなり、転走跡端部付近で表面起点型の剥離が生じる。特に、スラストころ軸受11は、ころ本数が多く、内部空間が狭いため、潤滑油が軌道面に行き渡りにくい。その結果、他の軸受に比べて潤滑不足による表面起点型の剥離が発生しやすい。
また、上記構成のスラストころ軸受11に採用される軌道盤12,13には、トルクコンバータ20の作動中に大きなスラスト荷重が負荷される。さらに、ころ14が転動する軌道面には、所定の硬さや表面平滑性が求められる。
そこで、図2を参照して、このような環境で使用される軌道盤12,13の出発材料となる鋼板の製造方法を説明する。まず素材として、0.9wt%〜1.2wt%の炭素(C)と、1.2wt%〜1.7wt%のクロム(Cr)と、0.1wt%〜0.5wt%のマンガン(Mn)と、0.15wt%〜0.35wt%のシリコン(Si)と、その他の不可避不純物および鉄(Fe)とを含む鋼片を用いる(S11)。また、鋼中の酸素濃度は0.0010wt%以下とする。酸素は、鋼中で酸化物を形成して非金属介在物として疲労破壊の起点となるので、転動疲労寿命や耐荷重性が低下すると共に、摩擦や摩耗が増大する。そこで、鋼中の酸素濃度は0.0010wt%以下とするのが望ましい。鋼中の酸素濃度を0.0010wt%以下とすることにより、軌道盤の転動疲労寿命や耐荷重性を向上することができる。
炭素(C)は、軌道盤12,13に必要な強度を確保するのに必要不可欠の元素である。なお、軌道盤12,13の表面および芯部の硬さをHRC58以上とするためには0.9wt%以上の炭素が必要となる。一方、炭素含有量が1.2wt%を超えると、軌道盤12,13の表面に大型の炭化物が生成して転動疲労寿命および耐荷重性が低下すると共に、摩擦や摩耗が増大する。そこで、炭素含有量は0.9wt%〜1.2wt%の範囲内とするのが望ましい。なお、「HRC」は、ロックウェル硬さを示す。
また、クロム(Cr)は、軌道盤12,13の焼入性や転動疲労寿命を改善し、炭化物による硬さを確保し、摩擦や摩耗を低減し、かつ耐荷重性を向上するのに必要不可欠な元素である。なお、所定の炭化物を得るためには1.2wt%以上のクロムが必要となる。一方、1.7wt%を超える量を添加しても著しい添加効果は認めらない。さらに、5.0wt%を超えると大型の炭化物を生成して転動疲労寿命や耐荷重性が低下すると共に、摩擦や摩耗が増大する。そこで、クロム含有量は1.2wt%〜1.7wt%の範囲内とするのが望ましい。
また、マンガン(Mn)は、鋼を製造する際の脱酸に用いられる元素であって、軌道盤12,13の出発材料としては必要不可欠の元素である。なお、鋼中の酸素を十分に除去するためには0.1wt%以上のマンガンが必要となる。一方、0.5wt%を超えると材料が脆くなり、プレス加工時に軌道盤12,13が損傷する恐れがある。そこで、マンガンの含有量は0.1wt%〜0.5wt%の範囲内とするのが望ましい。
また、シリコン(Si)は、鉄鋼材料に不可避の元素であり、含有量の下限値を0.15wt%としている。一方、0.35wt%を超えるとプレス加工時に軌道盤12,13が損傷する恐れがある。そこで、シリコンの含有量は0.15wt%〜0.35wt%の範囲内とするのが望ましい。
次に、熱間圧延加工によって上記の素材から鋼板を得る(S12)。加熱状態で圧延することにより、巨大な鋳造組織を微細かつ良質な圧延組織にすることができる。また、再結晶温度以上の温度領域で圧延することにより材料の加工硬化を防止することができるので、厚みを一気に薄くすることができる。
なお、熱間圧延工程の後に圧延加工された鋼板を焼鈍しする工程をさらに追加してもよい。焼鈍しによって結晶粒が微細化されると共に、結晶の方向性が調整されるので、表面の精度および加工性が向上する。
次に、防錆や鋼板の表面に付着した酸化被膜(スケール)の除去を目的として酸洗を行う(S13)。酸洗によって酸化被膜を除去しておくことにより、以降の工程における生産効率および製品品質を向上することができる。なお、酸洗液には、塩酸、硫酸、硝酸等があり、5wt%〜15wt%の希塩酸水を40℃〜50℃程度で使用することが多い。
次に、冷間圧延加工によって、所定の寸法の鋼板を得ると共に、軌道盤12,13に必要な硬さや表面平滑性等の機械的性質を得る(S14)。常温で圧延を行うことにより、正確に所定の板厚を得ることができると共に、高い平滑性が得られる。また、再結晶温度未満の温度領域で圧延を行うことにより鋼板が加工硬化するので、鋼板の硬度が向上する。
なお、軌道盤12,13の軌道面となる壁面は、ころ14の円滑な転動の観点からRmax≦1.6μmの表面粗さが要求される。後述するように、軌道盤12,13の形状加工後の表面仕上げ工程は、面粗さの山が取れる程度のバレル加工のみである。そのため冷間圧延工程後の表面粗さはRmax≦2μmとするのが望ましい。さらに、プレス成形時の損傷を防止する観点から、冷間圧延工程後の硬さはHv220以下とするのが望ましい。ここで、「Rmax」は最大高さを、「Hv」はビッカース硬さを示す。
ここで、冷間圧延工程によって得られる鋼板の表面粗さ、硬さ、および板厚は、圧延ロールの表面粗さ、圧延ロールの撓み、圧延率(圧延前後の板厚の比)、圧延ロール間の隙間(ギャップ)および回転速度等の影響を受ける。したがって、所望の表面粗さ、硬さ、および板厚を得るためには、これらの要素を適切に設定する必要がある。
また、上記の熱間圧延工程および冷間圧延工程は、それぞれ1回の圧延工程で所定の厚みを得ることとしてもよいが、粗圧延、中間圧延、および仕上圧延等、複数回に分けて所定の厚みを得ることとしてもよい。
次に、図3を参照して、この発明の一実施形態に係る軌道盤12,13を製造する方法を説明する。なお、図3は軌道盤12,13の主な製造工程を示すフロー図である。まず、図2を参照して説明した鋼板(みがき鋼板)を出発材料として採用する(S21)。
次に、プレス加工によって鋼板を軌道盤12,13の形状に成形する(S22)。上記の出発材料は、冷間圧延工程によって板厚や表面粗さ等が既に所望の状態にしているので、旋削加工等の工程を省略することが可能となる。その結果、製造工程を簡素化することができるので、スラストころ軸受11の製造コストを低減することが可能となる。なお、このプレス加工工程は、1度のプレス加工によって所望の形状としてもよいが、プレス加工を複数回行って所望の形状を得ることとしてもよい。また、プレス加工後にバリ取り加工を行ってもよい。
次に、軌道盤12,13に必要な機械的性質を得るために、浸炭窒化処理と焼戻温度を230℃〜280℃とする高温焼戻とを含む熱処理を施す(S23)。浸炭窒化処理を行うことにより、軌道盤12,13の表面層に窒素富化層が形成される。この窒素富化層は、転動疲労寿命や耐荷重性の向上、および摩擦や摩耗の低減に有効である。なお、「表面層」とは、軌道盤12,13の表面から厚さ50μmの層を指すものとする。
ここで、この表面の窒素富化層における窒素濃度は、0.1wt%〜0.9wt%の範囲内であることが望ましい。窒素濃度が0.1wt%未満となると上記の効果が低く、特に表面損傷寿命が低下する。一方、窒素濃度が0.9wt%を超えると、材料中にボイドと呼ばれる空孔を生じたり、残留オーステナイト量が多くなりすぎて硬度が低下し、短寿命となる。なお、窒素濃度は、例えば、EPMA(波長分散型X線マイクロアナライザ)で測定することができる。
また、高温焼戻を行うことにより、耐高温特性が向上するばかりでなく、残留オーステナイトが焼戻マルテンサイトと結晶粒の微細な炭化物(粒径5μm以下)とに分解される。これにより、特に高荷重条件での転動疲労寿命や耐荷重性の向上、および摩擦や摩耗の低減に有効である。
ここで、軌道盤の表面の窒素富化層における残留オーステナイト量を、10vol%以下とする。表面の窒素富化層における残留オーステナイト量を10vol%以下とすることにより、高荷重下での転動疲労寿命や耐荷重性が向上すると共に、摩擦や摩耗を低減することができる。
なお、残留オーステナイト量を10vol%以下とするためには焼戻温度を230℃以上とする必要がある。一方、焼戻温度が280℃以上になると、硬さHRC60以下となって軌道盤12,13に必要な硬さを維持できないおそれがある。そこで、230℃〜280℃の範囲内で高温焼戻を行うのが望ましい。軌道盤の硬さをHRC60より大きくすることにより、負荷される荷重によって軌道盤が変形するのを有効に防止することができる。軌道盤の硬さをHRC60より大きくする方法として、例えば、焼戻温度を280℃未満とすることが挙げられる。なお、残留オーステナイト量は、X線回折によるマルテンサイトα(211)と、残留オーステナイトγ(220)の回折強度の比較で測定することができる。
また、転動疲労寿命および摺動特性を向上させる観点からは、球状化炭化物は多い程望ましい。具体的には、表面の窒素富化層における球状化炭化物の面積率を10%〜25%の範囲内に設定する。表面の窒素富化層における炭化物の面積率を上記の範囲内とすることにより、転動疲労寿命および摺動特性が向上する。面積率が10%未満になると、転動疲労寿命や摺動特性の向上効果はほとんど期待できない。一方、面積率が25%を超えると、炭化物の粗大化や凝集によって材料の靭性が劣化する。なお、球状化炭化物の面積率は、研削後の転動面の表層50μmにおける値であって、材料表面をピクリン酸アルコール溶液(ピクラル)を用いて腐食させた後、光学顕微鏡(400倍)で観察することができる。また、本明細書中の「球状化炭化物」とは、炭化物のみならず窒化物をも含むものとする。
さらに、軌道盤12,13のみならず保持器15にも高温焼戻しを施すのが望ましい。これにより、保持器15の硬度をころ12よりも低くすることができるので、組込時にころ12の表面に凹みや傷が生じるのを防止することができる。
最後に、熱処理によって軌道盤12,13の表面に生じた酸化被膜(スケール)を除去する(S24)。スケール除去加工としては、バレル処理やブラストクリーニング等の機械的方法と、前述した酸洗等の化学的方法がある。
ここで、「バレル処理」とは、容器(バレル)に軌道盤12,13、コンパウンド、およびメディアを入れた状態で、容器を回転若しくは振動させる処理である。この方法によれば、スケールを除去することができると共に、軌道盤12,13のバリ取りや表面粗さの改善効果も期待できる。前述の通り軌道盤12,13の出発材料の表面粗さを冷間圧延工程後の段階でRmax≦2μmとなるように製作することにより、独立した研削工程を設けなくとも軌道盤12,13に必要な表面粗さRmax≦1.6μmを得ることができる。
また、上記工程を経て製造された軌道盤12,13の表面の負荷長さ率tp(以下「TP値」という)は95%以上としている。負荷長さ率tpを上記の範囲内とすることにより、潤滑性、油膜形成能力、潤滑性、および耐摩耗性が向上し、長寿命のスラスト軸受を得ることができる。また、表面粗さパラメータRskは、−2<Rsk<0としている。これにより、軌道盤12,13の表面にある程度の凹みを形成することができる。この凹みは油溜まりとして機能し、油膜強度、潤滑性、および耐摩耗性が向上する。
Rsk<0の状態とは軌道盤の表面に凸形状部が存在していない状態である。すなわち、スラストころ軸受11の接触面をそれぞれRsk<0とすれば、凸形状部同士の接触による応力集中を抑制することができる。一方、Rsk≦−2になると、凹み部の周囲に微小な凸部が発生し初期摩耗が生じやすくなる。そこで、Rskの値を上記範囲内とすることにより、油膜形成能力、潤滑性、および耐摩耗性が向上し、長寿命の軌道盤12,13を得ることができる。
なお、「負荷長さ率tp」は、JIS規格(Japanese Industrial
Standards:B 0601−1994)で規定される表面粗さを示すパラメータである。また、負荷長さ率tpの切断レベルを0.3μm、最大高さRyに対する比を5%とする。「Rsk」は、JIS規格(B 0601)で規定される表面粗さを示すパラメータである。
また、図4を参照して、軌道盤12の軌道盤中心を通る径方向母線形状は、径方向内側領域12bと、径方向中央領域12cと、径方向外側領域12dとに区分される。そして、径方向中央領域12cは、径方向内側領域12bおよび径方向外側領域12dと比較して、断面高さが相対的に低くなっており、その最大高低差は30μm以下に設定されている。なお、図4は縦方向を500倍、横方向を5倍に拡大した図である。また、図4の右側が図1のころ軸受11の中心側に対応し、図4の左側が図1のころ軸受の外周側に対応している。
このように、軌道盤12の径方向中央領域12cの断面高さをその他の部分より低くすることにより、潤滑油の流れを阻害することなく、均一な油膜を形成することができる。その結果、潤滑性に優れたスラストころ軸受11を得ることができる。さらに、軌道盤の一部で上記の関係が成立してもこの発明の効果を得ることができるが、軌道盤の全域において成立していれば、より高い効果が期待できる。
また、従来の製造工程によって製造された軌道盤のように、研削加工によって軌道面を完全な平坦面とした場合、取付誤差等によって接触部分にエッジ応力を生じるおそれがある。これは、軌道盤の内縁部および外縁部で特に顕著である。
一方、軌道盤12の表面を図4のような形状としたスラストころ軸受11に荷重が作用すると、軌道盤12の軌道面が弾性変形して、径方向内側領域12bと径方向外側領域12dとの最大高さの差が数μm(1μm〜9μm)程度に縮小する。その結果、局所的な接触面圧の低減、特に最も高い位置(図4では、「径方向内側領域12b」を指す)での接触面圧を低減することができる。
さらに、従来の製造工程によって製造された軌道盤は、熱処理によってうねりを生じる等、表面形状が不均一となっていた。これは、局所的な接触を助長させたり、潤滑油の流れを阻害したりするおそれがあった。しかし、図3に示したようなこの発明の一実施形態に係る製造工程によって製造された軌道盤12では、焼戻処理(S23)によって表面形状を均一な状態に矯正することができる。
なお、少なくとも軌道盤12の一方側の表面、すなわちころ14と接触する軌道面12aを上記の表面形状とすればこの発明の効果を得ることができる。また、軌道盤13の表面も同様であるので、説明は省略する。
また、図5を参照して、上記工程で製造された軌道盤12の表面には、厚み方向の一方側に第1の平坦面12eと、この第1の平坦面12eの縁から厚み方向深さが次第に大きくなるように傾斜する傾斜部12fとが形成されている。
そして、第1の平坦面12eの縁から径方向に最も離れて位置する傾斜部先端を点Aとし、第1の平坦面12eに向かって点Aから径方向に0.3mm離れた位置を計測位置とすると、この計測位置における傾斜部12fの厚み方向深さδが、0.02mm≦δ≦0.3mmとなるように設定する。好ましくは、軌道盤の全域において、計測位置における傾斜部の厚み方向深さは、0.02mm〜0.3mmである。軌道盤の一部、例えば、平坦面としての軌道面の外縁部、軌道面の内縁部、または軌道面に形成される穴の周縁部のいずれかのみで上記の関係が成立してもこの発明の効果を得ることができるが、軌道盤の全域において成立していれば、より高い効果が期待できる。軌道盤の表面形状を上記のようにすることにより、軌道盤の変形に伴うエッジ応力を緩和して、スムーズな回転を実現したスラストころ軸受を得ることができる。
上記数値範囲の最小値(0.02mm)は、想定される接触面圧のエッジ応力を最大接触面圧以下に緩和できる値である。一方、最大値(0.3mm)は、軌道盤12に作用する荷重により、バックアップ面に軌道盤形状が倣う際、反対面端部に生じるカエリ(盛上り)からの影響が及ばない値である。軌道盤の表面形状を上記のようにすることにより、潤滑性が向上すると共に、面圧低減による耐摩耗性や潤滑性が向上する。その結果、長寿命でかつコストを低減可能なスラストころ軸受を得ることができる。さらに望ましくは、0.15mm≦δ≦0.20mmとなるように設定する。また、軌道盤12の全周(全域)において、計測位置における傾斜部12fの厚み方向深さδのばらつきは、0.04mm以下に設定する。
なお、図1に示すスラストころ軸受11における第1の平坦面12eとは、軌道盤12のころ14と接触する軌道面12aを指す。また、傾斜部12fは、軌道面12aの内縁部および外縁部に形成される。さらには、軌道盤12に孔が形成されている場合には、その外縁部にも傾斜部が形成される。なお、軌道盤13も同様の構成であるので、説明は省略する。
さらに、図6を参照して、上記工程で製造された軌道盤12には、その厚み方向一方側に軌道面12aが形成され、他方側に軌道面12aに平行な第2の平坦面12gと、この第2の平坦面12gの縁に第2の平坦面12gより厚み方向高さの高い縁部12hとが形成される。すなわち、縁部は、平坦面の外縁部および内縁部に形成されている。
そして、第2の平坦面12gと縁部12hとの厚み方向高さの差σ(「カエリ量」という)を0.02mm以下に設定する。そして、軌道盤の全域において、平坦面と縁部との厚み方向高さの差は、0.02mm以下である。特に、第2の平坦面12gに向かって縁部12hから径方向に0.3mm離れた位置を計測位置とすると、この計測位置における縁部12hの厚み方向高さの差σが0.0075mm≦σ≦0.01mm(約8μm)となるように設定するのが望ましい。さらに、軌道盤12の全域において、縁部12hの厚み方向高さのばらつきを0.01mm以下に設定する。
プレス加工によって形成される軌道盤12において、縁部12hのカエリ量を0とするのは極めて困難である。しかし、このカエリ量が0.02mmより大きくなると、たわみによる取付け誤差の影響から、縁部12hのみが相手バックアップ面と接触する可能性が高くなる。この状態で荷重が負荷されると、軌道盤12が撓んで軌道面12aところ14との間のエッジ応力が増大し、回転不良やスラストころ軸受11の損傷の原因となる。そこで、上記の問題を解消するために、上記の数値範囲を満たすのが望ましい。
なお、図1に示すスラストころ軸受11における縁部12hとは、軌道面12aと反対側の面の内縁部および外縁部を指す。また、軌道盤13も同様の構成であるので、説明は省略する。
さらに、傾斜部12fの厚み方向深さδ、および第2の平坦面12gと縁部12hとの厚み方向高の差σとの関係を、|δ−20σ|<0.05mmを満たすように設定するのが望ましい。
(δ−20σ)≧0.05mmとなると、十分なエッジ応力の緩和効果は期待できるものの、全体としての接触面圧が大きくなり過ぎる。一方、(20σ−δ)≧0.05mmとなると、接触面圧を小さくすることはできるが、カエリ(盛上り)からの影響が無視できなくなる。そこで、上記の範囲内とすることにより、軌道盤12に作用する荷重によってバックアップ面に軌道盤形状が倣う際、反対面端部に生じるカエリ(盛上り)からの軌道盤変形の影響を小さくすることができる。なお、軌道盤13も同様の構成であるので、説明は省略する。
この発明によれば、軌道盤12,13の機械的性質が向上すると共に、転動疲労寿命、耐荷重性、潤滑性、油膜形成性、および潤滑性が向上し、摩擦や摩耗が低減される。その結果、長寿命で信頼性の高いトルクコンバータ20およびオートマチックトランスミッション(図示省略)を得ることができる。
また、出発材料の製造工程(図2に示す工程)に冷間圧延工程を含めることによって、軌道盤12,13に必要な板厚、硬さ、および表面粗さ等を得ることができる。そうすると、軌道盤12,13の製造工程(図3に示す工程)において、旋削加工や研削加工の工程を省略することが可能となる。その結果、軌道盤12,13の製造工程が簡素化され、軌道盤12,13の製造コストを低減することができる。
また、熱処理後の研削加工を省略したことにより、軌道盤12,13の表面層に形成された窒素富化層を除去してしまうことがない。その結果、転動疲労寿命や耐荷重性が向上すると共に、摩擦や摩耗を低減した軌道盤12,13を得ることができる。さらに、窒素富化層における窒素濃度、残留オーステナイト量、および球状化炭化物の面積率を軌道盤12,13の厚み方向の一方側壁面と他方側壁面とでほぼ均一とすることができる。具体的には、窒素濃度の差が0.2wt%以内、残留オーステナイト量の差が2vol%以内、そして球状化炭化物の面積率の差が5%以内とする。
なお、本明細書中「厚み方向の一方側壁面」または「厚み方向の他方側壁面」とは、軌道面または軌道面に対して厚み方向反対側の壁面を指すものとする。一方、「表面」とは、厚み方向一方側および他方側の壁面、外周面、および内周面等の軌道盤の表層面全体を指すものとする。
さらに、上記の実施形態においては、スラストころ軸受11をトルクコンバータ20に組み込んだ例を示したが、これに限ることなく、オートマチックトランスミッションの他の部分を支持する軸受としても使用することができる。
次に、図7および表1を参照して、この発明の効果を確認するための試験について説明する。なお、図7は効果確認試験の試験装置41の正面図(左側)および側面図(右側)、表1は試験片44の組成および試験結果を示す。
Figure 0005202978
まず、図7を参照して、試験装置41は、片持ち梁42にエアスライダ43を介して取り付けられている試験片44と、試験片44の下面に当接し、回転軸45の回転に伴って回転する回転部材46と、試験片44に荷重を負荷するウエイト47と、荷重を測定するロードセル48とを備える。なお、試験片44と回転部材46との当接部分には、50N(最大接触面圧0.49GPa)の荷重が負荷されている。
試験片44は、図2および図3の工程を経て製造される。具体的には、図3の熱処理工程で、浸炭窒化処理と280℃での焼戻処理とを施した実施例1、浸炭窒化処理と230℃での焼戻処理とを施した実施例2、浸炭窒化処理と180℃での焼戻処理とを施した比較例1、および普通熱処理と180℃での焼戻処理とを施した比較例2の4種類を各10個ずつ用意する。なお、各材料中の残留オーステナイト量(vol%)、窒素濃度(wt%)、および表面硬さ(HRC)は、表1に示す。
また、試験片44の表面は、表面粗さRaが0.10μm〜0.15μmの平坦面である。一方、回転部材46の表面は、曲率半径が60mmの曲面であって、表面粗さRaが0.05μmに設定されている。そして、試験片44の回転部材46との接触部分の形状は、長径0.63mm、短径0.31mmの楕円形状(「接触楕円」という)である。
さらに、回転部材46の下部は潤滑油に浸かっており、試験片44と回転部材46との当接部分を潤滑する。潤滑油としては、多目的油(VG68)を使用する。また、油膜パラメータΛは、約0.3に設定する。
上記の試験条件の下、直径が40mmの回転軸45を0.05m/sの速度(回転速度:24r/min)で60分間回転させたときの摩耗体積比を算出した。結果を表1に示す。なお、表1中の各値は10個の試験片の平均値を示す。また、摩耗体積比は比較例2を基準とした値を示す。
表1を参照して、試験片44中の残留オーステナイト量は、焼戻温度が高くなる程少なくなることが確認された。なお、比較例2の残留オーステナイト量が少ないのは、普通熱処理によるオーステナイト析出量が浸炭窒化処理と比較して少ないことに起因する。一方、表面硬さは、焼戻温度が高くなる程低くなった。これにより、焼戻は、230℃〜280℃の範囲内で、残留オーステナイト量を減少させる観点からは高温で、表面硬さを向上させる観点からは低温で焼戻処理を行うのが望ましい。
また、窒素濃度は、浸炭窒化処理を施した各材料(実施例1,2、比較例1)が0.3wt%〜0.4wt%であったのに対し、普通熱処理を施した比較例2が0wt%であった。
さらに、摩耗体積比は、浸炭窒化処理を施した各材料(実施例1,2、比較例1)が、普通熱処理を施した比較例2に対して低くなり、焼戻温度が高くなる程低くなった。これにより、浸炭窒化処理およびより高い温度での焼戻処理によって耐摩耗性が向上することが確認された。
次に、この発明の効果を確認するための他の試験について説明する。試験に用いた軸受は、ころ径3mm、軌道盤内径60mm、軌道盤外径85mm、軌道盤厚さ1.5mmのころ軸受であって、TP値およびRsk値を変更した7種類のころ軸受(実施例3,4、比較例3〜7)である。
また、試験は、60℃〜80℃の雰囲気中で、1000kgfの荷重を負荷した状態で、5000(r/min)で回転させたときの寿命比を比較例5を基準として測定した。さらに、潤滑油としては、多目的油VG2(油膜パラメータ0.1)を用いた。試験に用いたころ軸受のTP値、Rsk値、および試験結果を表2に示す。
Figure 0005202978
表2を参照して、TP値が大きくなる程、また、Rsk値が小さくなる程、軸受寿命が延伸されることが確認された。また、TP値が同一であれば、Rsk値が小さい程、軸受寿命は長くなる(実施例4、比較例3)。同様に、Rsk値が同一であれば、TP値が大きい程、軸受寿命は長くなる(実施例4、比較例4)。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明は、オートマチックトランスミッション用スラストころ軸受の軌道盤等の製造に有利に利用される。
この発明の一実施形態に係るオートマチックトランスミッション用スラストころ軸受を示す図である。 軌道盤を製造する主な工程を示すフロー図である。 鋼板から軌道盤を製造する主な工程を示すフロー図である。 図1のP部の拡大図である。 図1のR部の拡大図である。 図1のQ部の拡大図である。 この発明の効果を確認するための試験装置を示す図である。 図1に示すスラストころ軸受を採用したトルクコンバータを示す図である。
符号の説明
11 スラストころ軸受、12,13 軌道盤、12a,13a 軌道面、12b 径方向内側領域、12c 径方向中央領域、12d 径方向外側領域、12e,12g 平坦面、12f 傾斜面、12h 縁部、14 ころ、15 保持器、20 トルクコンバータ、21 インペラ、21a インペラブレード、22 ステータ、23 タービン、23a タービンブレード、41 試験装置、42 片持ち梁、43 エアスライダ、44 試験片、45 回転軸、46 回転部材、47 ウエイト、48 ロードセル。

Claims (8)

  1. ステータを挟んで互いに対面するインペラとタービンとを有するトルクコンバータを備えたトランスミッションにおいて、前記ステータと前記インペラとの間、および前記ステータと前記タービンとの間の少なくともいずれかに配置されてスラスト荷重を支持するスラストころ軸受であって、
    前記スラストころ軸受は、0.9wt%〜1.2wt%の炭素と、1.2wt%〜1.7wt%のクロムと、0.1wt%〜0.5wt%のマンガンと、0.15wt%〜0.35wt%のシリコンとを含有する高炭素鋼を冷間圧延して得られる表面粗さがRmax≦2μmのみがき帯鋼に熱処理を施して形成される軌道盤を備え
    前記軌道盤の軌道面は、径方向内側領域、径方向中央領域および径方向外側領域に区分され、前記径方向中央領域は、前記径方向内側領域および前記径方向外側領域と比較して相対的に断面高さが低く、その最大高低差は30μm以下である、スラストころ軸受。
  2. 前記軌道盤の表面の負荷長さ率tpを95%以上とした、請求項1に記載のスラストころ軸受。
  3. 前記軌道盤の表面の窒素富化層における残留オーステナイト量を10%以下とした、請求項1または2に記載のスラストころ軸受。
  4. 前記軌道盤の表面の窒素富化層における炭化物の面積率は、10%〜25%である、請求項1〜3のいずれかに記載のスラストころ軸受。
  5. 前記軌道盤は、厚み方向の一方側に平坦面と、この平坦面の縁から厚み方向深さが次第に大きくなるように傾斜する傾斜部とを有し、
    前記平坦面の縁から径方向に最も離れて位置する傾斜部先端から、前記平坦面に向かって、径方向に0.3mm離れた計測位置における前記傾斜部の厚み方向深さは、0.02mm〜0.3mmである、請求項1〜4のいずれかに記載のスラストころ軸受。
  6. 前記軌道盤は、厚み方向の一方側に軌道面を有し、
    他方側に第2の平坦面、および前記第2の平坦面の縁に前記第2の平坦面より厚み方向高さが高い縁部を有し、
    前記第2の平坦面と前記縁部との厚み方向高さの差は、0.02mm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のスラストころ軸受。
  7. 前記軌道盤は、ころと接触する厚み方向の一方側に第1の平坦面と、前記第1の平坦面の縁から厚み方向深さが次第に大きくなるように傾斜する傾斜部とを有し、他方側に第2の平坦面と、前記第2の平坦面の縁に前記第2の平坦面より厚み方向高さが高い縁部とを有し、
    前記第1の平坦面の縁から径方向に最も離れて位置する傾斜部先端から、前記第1の平坦面に向かって、径方向に0.3mm離れた位置における前記傾斜部の厚み方向深さをδ、前記縁部から、前記第2の平坦面に向かって、径方向に0.3mm離れた位置における前記第2の平坦面と前記縁部との厚み方向高さの差をσとすると、
    |δ−20σ|<0.05mmを満たす、請求項1〜6のいずれかに記載のスラストころ軸受。
  8. 前記軌道盤の厚み方向一方側および他方側の壁面それぞれに形成された窒素富化層における窒素濃度の差が0.2wt%以内である、請求項1〜7のいずれかに記載のスラストころ軸受。
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