JP4935401B2 - 転がり軸受 - Google Patents

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本発明は、転がり軸受に係り、特に、ワークロール用転がり軸受や車輪支持用転がり軸受のように、潤滑剤に水が混入され易い環境下で用いられる転がり軸受に関する。
近年、燃費を向上させるために自動車の軽量化が要求されており、そのため車輪支持用転がり軸受のユニット化が進んでいる。
一方、転がり軸受においては、潤滑剤中に水が混入すると転がり疲れ寿命が大幅に低下することが知られている。例えば、水の混入量が100ppmという微量であっても、軸受材料の転がり疲れ強さは32〜48%も低下する。
そのため、自動車等に用いられる車輪支持用転がり軸受(ハブ軸受)のように、水と接触しやすい環境下で使用される転がり軸受においては、接触ゴムシール等の密封部材を装着して、潤滑剤が封入された軸受内部への水の侵入を防止する対策が採られている。あるいは、軸受材料の高清浄化や合金成分添加による高機能化により、寿命を向上させる対策も取られている。ただし、これらの対策は、転がり軸受の生産性低下やコストアップが生じるおそれがあるという問題点を有している。
軸受材料の変更を伴わずに寿命を向上させる手段としては、転がり寿命とメタルフローとの関係を利用するものが知られている。すなわち、転がり軸受の軌道面のメタルフロー方向と転がり方向とのなす角度が90°に近いほど、非金属介在物の並び方が影響して寿命延長効果が大きくなる。
また、特許文献1では、少なくとも固定側の軌道輪において、仕上げ加工が施された後の軌道面に存在する酸化物系非金属介在物の最大長さの平均値を100μm以下にすることが提案されている。そして、酸化物系非金属介在物の最大長さを小さくする方法としては、真空アーク再溶解法やエレクトロスラグ再溶解法等の特殊溶解法で鋼を製造することがあげられている。
特開2000−110841号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術には、潤滑剤に水が混入した潤滑環境下(以降は、水混入潤滑下と記す)での転がり疲れ寿命を向上させるという点で更なる改善の余地がある。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、水混入潤滑下で使用されても長寿命な転がり軸受を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項1の転がり軸受は、互いに対向配置される軌道面を有する内輪及び外輪と、前記対向する軌道面の間に転動自在に配置される複数の転動体と、を備え、潤滑剤に水が混入した潤滑環境下で使用される転がり軸受において、前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方が、下記の3つの条件を満足することを特徴とする。
条件A:前記軌道面のうち、接触角が初期接触角の−5°以上+5°以下である場合に前記転動体と接触する接触部分に存在する表面孔及び酸化物系非金属介在物の最大長さLが、それぞれ80μm以下であり、その最大長さLと最大深さDとの比L/Dが2.0以上である。
条件B:鋼製の円柱状素材を鍛造で成形して得たものである。
条件C:前記軌道面のうち前記接触部分は、前記円柱状素材の径方向中心を0%、径方向外端を100%とした場合に、前記円柱状素材のうち40%以上85%以下の円筒状範囲に含まれる部分で形成されている。
また、本発明に係る請求項2の転がり軸受は、互いに対向配置される複列の軌道面を有する内輪及び外輪と、前記対向する軌道面の間に転動自在に配置される複数の転動体と、を備え、潤滑剤に水が混入した潤滑環境下で使用される転がり軸受において、前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方が、下記の4つの条件を満足することを特徴とする
条件ア:前記軌道面のうち、接触角が初期接触角の−5°以上+5°以下である場合に前記転動体と接触する接触部分に存在する表面孔及び酸化物系非金属介在物の最大長さLが、それぞれ80μm以下であり、その最大長さLと最大深さDとの比L/Dが2.0以上である。
条件イ:鋼製の円柱状素材を鍛造で成形して得たものである。
条件ウ:径方向外方に突出するフランジが外周面に設けられており、該フランジが設けられた軸方向位置は、前記複列の軌道面の列間部分以外の位置である。
条件エ:前記フランジから最も離れた軌道面のうち前記接触部分は、前記円柱状素材の径方向中心を0%、径方向外端を100%とした場合に、前記円柱状素材のうち60%以上85%以下の円筒状範囲に含まれる部分で形成されている。
発明者らが、微量の水の混入が転がり軸受の転がり寿命に与える影響について鋭意検討を行った結果、以下のことが明らかになった。
(1)酸化物系非金属介在物を起点とする軌道輪の応力腐食割れは、転動体との転がり接触時に水が存在する場合に見られる現象であり、酸化物系非金属介在物と水のうち一方だけでは発生しない。
(2)潤滑剤中に水が混入せず油膜が十分に形成された良好な潤滑環境下では、剥離の起点となるのは酸化物系非金属介在物であるが、その存在位置は軌道面の表面下であり、応力腐食割れを発生させることはない。応力腐食割れの起点となるのは、軌道面の表面に存在する酸化物系非金属介在物であり、軌道面の表面下に酸化物系非金属介在物が存在していても、水が供給されなければ応力腐食割れは発生しない。
(3)応力腐食割れは、最大長さが100μmよりも小さな酸化物系非金属介在物を起点としても生じ得る。
(4)酸化物系非金属介在物の脱落痕や、研削,超仕上げで除去できなかった旋削痕や、研削加工時の表面のむしれによって形成された空洞状の欠陥(いわゆる孔)の存在によっても、応力腐食割れが著しく加速される。
すなわち、軌道面の表面に存在する酸化物系非金属介在物の最大長さを100μm以下としただけでは、水混入潤滑下では十分な転がり寿命は得られないことが分かった。
そして、本発明者らがさらに検討を重ねた結果、特殊溶解法により鋼中の酸素量を極端に低下させた高価な素材を用いなくても、軌道面の表面に存在する酸化物系非金属介在物の最大長さを制御できることを見出した。すなわち、量産法で製造された通常の酸素量の素材を用いても、鍛造方法を工夫することによって、素材中の清浄度が良好な部位で軌道面が形成されるようにすれば、軌道面の表面の酸化物系非金属介在物の最大長さLを小さくすることができる。つまり、素材のうち清浄度が良好な部分で軌道面を形成するように鍛造を行えば、軌道面に存在する酸化物系非金属介在物の最大長さLを小さくすることができる。その結果、水混入潤滑下においても、転がり軸受の寿命延長を図ることができることが分かった。
一般的な量産鋼においては、素材の中心に近い部位は、製鋼時の凝固過程で冷却速度が遅いため、介在物が残存しやすく清浄度は低い。一方、素材の表面に近い部位は、製鋼時の凝固過程で冷却速度が速いため、比較的大きく重い介在物がトラップされ清浄度が低くなる。すなわち、円柱状素材の中心部及び表層部は清浄度が低く、前記両部の間の中間部は比較的清浄度が高い。
したがって、軌道輪の素材として鋼製の円柱状素材を用い、清浄度が低い中心部及び表層部で軌道面が形成されないようにし、清浄度が高い円筒状の中間部で軌道面が形成されるように鍛造すれば、軌道面に存在する酸化物系非金属介在物の数を低減し且つ最大長さLを小さくすることができる。
円柱状素材の径方向中心を0%、径方向外端を100%とすると、清浄度が低い中心部は40%未満の範囲であり、清浄度が低い表層部は85%超過の範囲である。よって、清浄度が高い中間部は円柱状素材のうち40%以上85%以下の円筒状範囲であるので、この円筒状範囲に含まれる部分で軌道面のうち前記接触部分が形成されるように、円柱状素材を鍛造すればよい。
ただし、軌道輪の形状(例えば、フランジが形成される軸方向位置)によっては、素材の表面に近い部分で軌道面が形成されやすい場合がある。よって、フランジが設けられた軸方向位置が複列の軌道面の列間部分以外の位置である場合には、フランジから最も離れた軌道面のうち前記接触部分は、円柱状素材のうち60%以上85%以下の円筒状範囲に含まれる部分で形成されるように、円柱状素材を鍛造する必要がある。そうすれば、他の軌道面の前記接触部分は、円柱状素材のうち40%以上85%未満の円筒状範囲に含まれる部分で形成されることとなるから、全ての軌道面の前記接触部分を清浄度の高い部分で形成することができる。
このとき、前記表面孔及び前記酸化物系非金属介在物については、その最大長さLと最大深さDとの比L/Dが2.0以上であることが好ましい。そうすれば、応力腐食割れをより生じ難くできるので、本発明の転がり軸受は、水混入潤滑下で使用されても転がり疲れ寿命がより優れている。
なお、本発明の転がり軸受は、その製造工程において、内輪及び外輪の少なくとも一方について、その軌道面に仕上げ加工を施した後に超音波探傷検査等の非破壊検査を行って、その軌道面の特定の部分に欠陥が存在しないもの、或いは、存在する欠陥が前述した許容範囲内(80μm以下)に限定されたものを選別することによって得ることができる。前述したように、軌道面の前記特定の部分(前記接触部分)が円柱状素材の前記円筒状範囲に含まれる部分で形成されるように鍛造したので、非破壊検査で発生する不良品を減少させることができる。
例えば、超音波探傷検査を用いて、軌道面の特定の部分に存在する欠陥を検出するためには、周波数10MHz以上20MHz未満の横波を用いて、入射角30°以上40°以下で斜角探傷検査を行うことが好ましい。通常、横波を用いた場合には、欠陥の検出限界は波長の1/2であることから、本発明のように最大80μmの欠陥を検出するためには、理論上は周波数20MHz以上の横波を用いる必要がある。しかしながら、仕上げ加工が施された軌道面は、表面粗さがRa(算術平均粗さ)で0.3μm以下になっている場合がほとんどであるため、周波数が20MHz未満の横波を用いて斜角探傷検査を行った場合でもノイズが生じず、最大長さ50μmの欠陥まで検出することができる。
また、本発明において「表面孔」とは、酸化物系非金属介在物の脱落痕や、研削加工,超仕上げ加工で除去できなかった旋削痕や、研削加工時の表面の剥離により表面に形成される孔を指す。
さらに、本発明において「酸化物系非金属介在物」とは、例えばAl2 3 ,SiO2 ,MgO,CaOの単体又はこれらのうち2種以上が複合したB系介在物及びD系介在物を指す。
さらに、本発明において「最大長さ」とは、図1の(a)及び(b)に示すように、表面孔10Aや酸化物系非金属介在物10Bの軌道面aに平行な方向の長さのうち最大なものを指し、「最大深さ」とは、表面孔10Aや酸化物系非金属介在物10Bの軌道面aに垂直な方向の長さのうち最大なものを指す。
このため、予め酸化物系非金属介在物の反射エコー強度を測定した後に、破壊検査により酸化物系非金属介在物の実際の最大長さLと最大深さDとを求めて、酸化物系非金属介在物の寸法(最大長さL、最大深さD)と反射エコー強度との関係を示す検量線を作成し、この検量線を用いて、得られた反射エコー強度から、酸化物系非金属介在物の最大長さL及び最大深さDを算出することが好ましい。
また、前述した許容範囲から外れる表面孔10Aが存在すると、この表面孔10Aに水が侵入して金属素地が腐食し、表面孔10Aの内周面に応力集中が作用することで亀裂kが生じ易くなる(図1の(a)を参照)。
さらに、前述した許容範囲外の酸化物系非金属介在物10Bが存在すると、前述したように酸化物非金属介在物10Bの周囲に生じた空隙bに水が侵入することで亀裂kが生じ易くなる(図1の(b)を参照)。また、前述した許容範囲外の酸化物系非金属介在物10Bが存在する場合に、軌道面aから介在物10Bが少しづつ脱落し、軌道面aから介在物10Bが完全に脱落して表面孔10Aと同じ状態になると、急速に亀裂kが生じ易くなる。
本発明の転がり軸受は、水混入潤滑下で使用されても長寿命である。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明に係る転がり軸受の一実施形態である車輪支持用転がり軸受の構造を示す断面図である。この車輪支持用転がり軸受は、外周面に軌道面1aを有する二つの内輪1,1と、軌道面1a,1aに対向する複列の軌道面2a,2aを内周面に有する外輪2と、対向する両軌道面1a,2aの間に転動自在に配置される複数の玉(転動体)3と、玉3を転動自在に保持する保持器4,4と、から構成されている。
この車輪支持用転がり軸受の内輪1は車軸5を内嵌するハブ6に固定され、外輪2は車体側の懸架装置7に固定されている。そして、ハブ6に一体成形された車輪取付用フランジ6aに車輪(図示せず)を取り付けることにより、車輪を懸架装置7に対して回転自在に支持している。
この内輪1及び外輪2は、以下に示す手順で製造した。まず、中炭素鋼(S53CG)製の円柱状素材を、熱間鍛造で所定形状に加工した。このとき、円柱状素材の直径,長さ,熱間鍛造時の目抜き位置,厚み等を調節することにより、軌道面1a,2aのうち、接触角が初期接触角の−5°以上+5°以下である場合に玉3と接触する接触部分に出現する円柱状素材の部位を調整した。すなわち、軌道面1a,2aのうち前記接触部分が、円柱状素材のうちの特定部分で形成されるようにした。この特定部分は、円柱状素材の径方向中心を0%、径方向外端を100%とした場合に、円柱状素材のうち40%以上85%以下の円筒状範囲に含まれる部分である。そして、得られた内輪及び外輪に、高周波焼入れ及び焼戻しを施した。
次に、製造した全ての内輪及び外輪について超音波探傷検査を行い、その軌道面のうち前記接触部分に存在する欠陥(表面孔及び酸化物系非金属介在物)を調査した。超音波探傷用探触子としては、周波数が100MHzで、入射角が30°以上40°以下で、振動子径が6mmの焦点型斜角探触子を用いた。そして、超音波探傷検査を行った内輪及び外輪の中から、その軌道面の前記接触部分に欠陥が存在しないもの、或いは、前記接触部分に存在する欠陥の最大長さLが80μm以下のものを選別した。なお、その欠陥の最大長さLと最大深さDとの比L/Dは、2.0以上であることがより好ましい。
また、玉3は、SUJ2からなる素材を所定形状に加工した後に、焼入れ及び焼戻しを施して作製した。
このような本実施形態の車輪支持用転がり軸受は、水混入潤滑下で使用された場合であっても転がり疲れ寿命が長い。
なお、本実施形態では、車輪取付用フランジ6aが内輪1や外輪2と別体に設けられた、所謂第一世代の車輪支持用転がり軸受に本発明を適用した場合について説明したが、車輪支持用転がり軸受の構成はこれに限定されるものではない。例えば、車輪取付用フランジ又は懸架装置取付用フランジが外輪と一体に設けられた、所謂第二世代の車輪支持用転がり軸受に適用してもよいし、車輪取付用フランジ及び懸架装置取付用フランジがそれぞれ内輪及び外輪のいずれかと一体に設けられた、所謂第三世代の車輪支持用転がり軸受に適用してもよい。本発明を第二世代又は第三世代の車輪支持用転がり軸受に適用する場合には、円柱状素材を中炭素鋼(例えばS53CG)製とすることが好ましい。
まず、円柱状素材における酸化物系非金属介在物の分布状態を調査した。直径60mmのS53CG製の丸棒を用意し、その破断面を光学顕微鏡で観察することにより、酸化物系非金属介在物の数を測定した。測定は、丸棒の破断面の径方向位置10カ所(径方向中心を0%、径方向外端を100%とした場合に、20〜90%の位置)において行い、各径方向位置においては、合計で300mm2 の領域について光学顕微鏡で観察し、その領域に存在する直径10μm以上の酸化物系非金属介在物の数を測定した。結果を表1及び図3のグラフに示す。
Figure 0004935401
表1及び図3のグラフから分かるように、円柱状素材の中心部(40%未満の範囲)及びは表層部(85%超過の範囲)は、酸化物系非金属介在物の数が多く清浄度が低かった。一方、中心部と表層部の間の中間部(40%以上85%以下の範囲)は、酸化物系非金属介在物の数が少なく清浄度が高かった。
よって、円柱状素材のうち40%以上85%以下の円筒状範囲に含まれる部分で、軌道面のうち前記接触部分が形成されるように、円柱状素材を鍛造すればよい。
また、軌道輪がフランジを有し、フランジが設けられた軸方向位置が複列の軌道面の列間部分以外の位置である場合(すなわち、軸方向両端の軌道面よりも軸方向端部側の位置にフランジが設けられている場合)には、フランジから最も離れた軌道面のうち前記接触部分が、円柱状素材のうち60%以上85%以下の円筒状範囲に含まれる部分で形成されるように、円柱状素材を鍛造するとよい。そうすれば、他の軌道面については、その前記接触部分は、必然的に円柱状素材のうち40%以上85%未満の円筒状範囲に含まれる部分で形成されることとなるから、全ての軌道面の前記接触部分が円柱状素材のうち清浄度の高い部分で形成されることとなる。
次に、本発明の効果を検証した結果について詳細に説明する。本実施例では、転がり軸受の外輪を以下に示す手順で作製した。まず、日本精工株式会社製の呼び番号28BWK19の車輪支持用転がり軸受(内径:28mm,外径:62.5mm,幅:25mm,初期接触角:35°)用の外輪(図4を参照)を、S53CG製の円柱状素材を熱間鍛造で成形することにより作製した。この外輪は、2列の軌道面を有するとともに、径方向外方に突出するフランジが外周面に設けられている。そして、フランジが設けられた軸方向位置は、前記2列の軌道面の列間部分以外の位置である。
この外輪の軌道面のうち、玉との接触角が30°以上40°以下である場合に玉と接触する接触部分(長径が1.10mmの楕円状の部分)に研磨加工を施して、その接触部分の表面粗さ(算術平均粗さ)Raを0.05μm以上0.15μm以下に仕上げた。
なお、熱間鍛造においては、目抜き位置を調節することにより、円柱状素材のどの部分(径方向位置)で軌道面のうち前記接触部分が形成されるかを調整し、円柱状素材の種々の部分で前記接触部分が形成された外輪を作製した。
このようにして得られた外輪について、超音波探傷検査装置を用いて以下の条件で超音波探傷検査(非破壊検査)を行った。すなわち、超音波探傷用探触子として、周波数が100MHzで、入射角が30°以上40°以下で、振動子径が6mmの焦点型斜角探触子を用いた。そして、外輪の2列の軌道面のうちフランジから遠い方の軌道面において、前述の研磨加工を施した部分(玉との接触角が30°以上40°以下である場合に玉と接触する接触部分)を探傷検査して、その接触部分に存在する酸化物系非金属介在物の最大長さLと最大深さDとを測定した。得られた測定結果を、表2に示す。
Figure 0004935401
次に、この外輪と、呼び番号28BWK19の車輪支持用転がり軸受用のS53CG製内輪及びSUJ2製玉とを用いて、転がり軸受を組み立てて、水混入潤滑下での寿命試験を行った。
この寿命試験においては、5質量%の水が混入された潤滑油(VG10)に転がり軸受全体を浸漬し、アキシャル荷重8820Nを付与した状態で、回転速度1000min-1で回転させた。このとき、転がり軸受に生じる振動を振動計で常時測定した。
この寿命試験では、振動計の測定値が一定値を超えるまでの転がり軸受の回転時間を寿命とし、ワイブル分布関数に基づくL10寿命を算出した。寿命試験の結果を表2及び図5のグラフに示す。なお、表2及び図5のグラフのL10寿命の数値は、比較例1のL10寿命を1とした場合の相対値で示してある。
表2及び図5のグラフに示すように、実施例1〜7及び参考例1,2は、フランジから遠い方の軌道面のうち前記接触部分が、円柱状素材のうち40%以上85%以下の円筒状範囲に含まれる部分で形成されており、且つ、酸化物系非金属介在物の最大長さLが80μm以下と小さいので、水混入潤滑下においても長寿命であった。また、実施例1〜7は、酸化物系非金属介在物の最大長さLと最大深さDとの比L/Dが2.0以上であるので、より長寿命であった。
なお、本実施例においては、外輪をS53CGで構成した場合を示したが、外輪の素材はS53CGに限定されるものではなく、SUJ2,SAE1070等のような炭素の含有量が0.48質量%以上1.2質量%以下の中炭素鋼や高炭素鋼で外輪を構成した場合も、同様の結果が得られる。
また、本実施例においては、本発明を外輪に適用した場合について示したが、内輪及び外輪の少なくとも一方に本発明を適用すれば、本発明の効果を得ることができる。
本発明において検出する欠陥について示す図であり、(a)は欠陥として検出する表面孔を示す説明図、(b)は欠陥として検出する酸化物系非金属介在物を示す説明図である。 本発明に係る転がり軸受の一実施形態である車輪支持用転がり軸受の構造を示す断面図である。 円柱状素材における酸化物系非金属介在物の分布状態を示すグラフである。 実施例において用いた車輪支持用転がり軸受の外輪の構造を示す断面図である。 寿命試験の結果を示すグラフである。
符号の説明
1 内輪
1a 軌道面
2 外輪
2a 軌道面
3 玉(転動体)
10A 表面孔(欠陥)
10B 酸化物系非金属介在物(欠陥)

Claims (2)

  1. 互いに対向配置される軌道面を有する内輪及び外輪と、前記対向する軌道面の間に転動自在に配置される複数の転動体と、を備え、潤滑剤に水が混入した潤滑環境下で使用される転がり軸受において、前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方が、下記の3つの条件を満足することを特徴とする転がり軸受。
    条件A:前記軌道面のうち、接触角が初期接触角の−5°以上+5°以下である場合に前記転動体と接触する接触部分に存在する表面孔及び酸化物系非金属介在物の最大長さLが、それぞれ80μm以下であり、その最大長さLと最大深さDとの比L/Dが2.0以上である。
    条件B:鋼製の円柱状素材を鍛造で成形して得たものである。
    条件C:前記軌道面のうち前記接触部分は、前記円柱状素材の径方向中心を0%、径方向外端を100%とした場合に、前記円柱状素材のうち40%以上85%以下の円筒状範囲に含まれる部分で形成されている。
  2. 互いに対向配置される複列の軌道面を有する内輪及び外輪と、前記対向する軌道面の間に転動自在に配置される複数の転動体と、を備え、潤滑剤に水が混入した潤滑環境下で使用される転がり軸受において、前記内輪及び前記外輪の少なくとも一方が、下記の4つの条件を満足することを特徴とする転がり軸受。
    条件ア:前記軌道面のうち、接触角が初期接触角の−5°以上+5°以下である場合に前記転動体と接触する接触部分に存在する表面孔及び酸化物系非金属介在物の最大長さLが、それぞれ80μm以下であり、その最大長さLと最大深さDとの比L/Dが2.0以上である。
    条件イ:鋼製の円柱状素材を鍛造で成形して得たものである。
    条件ウ:径方向外方に突出するフランジが外周面に設けられており、該フランジが設けられた軸方向位置は、前記複列の軌道面の列間部分以外の位置である。
    条件エ:前記フランジから最も離れた軌道面のうち前記接触部分は、前記円柱状素材の径方向中心を0%、径方向外端を100%とした場合に、前記円柱状素材のうち60%以上85%以下の円筒状範囲に含まれる部分で形成されている。
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