JP2006308019A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】潤滑油中に水が混入する環境下であっても良好な寿命延長効果が得られる転がり軸受を提供する。
【解決手段】内輪、外輪、及び複数の転動体のうちの少なくとも1つが、平均直径10μm以上の酸化物系非金属介在物の検出個数が検査対象面積3000mm2当たり20個以下である。内輪、外輪、及び複数の転動体のうちの少なくとも1つは、旧オーステナイト粒径最小値がJIS粒度番号7以上である。内輪、外輪、及び複数の転動体のうちの少なくとも1つの転動面に5nm〜100nmの酸化皮膜を有する。
【選択図】 図16
【解決手段】内輪、外輪、及び複数の転動体のうちの少なくとも1つが、平均直径10μm以上の酸化物系非金属介在物の検出個数が検査対象面積3000mm2当たり20個以下である。内輪、外輪、及び複数の転動体のうちの少なくとも1つは、旧オーステナイト粒径最小値がJIS粒度番号7以上である。内輪、外輪、及び複数の転動体のうちの少なくとも1つの転動面に5nm〜100nmの酸化皮膜を有する。
【選択図】 図16
Description
本発明は、潤滑油中に水分が混入されやすい環境で使用される転がり軸受、例えば、自動車のトランスミッション用軸受、鉄鋼機械のガイドロールやバックアップロール用軸受、鉄道車両用軸受、建設機械用、農業機械用、製紙機械のドライヤーロール用等の軸受に係り、特に車両のハブユニット用軸受に関する。
鉄鋼の連続鋳造設備のガイドロール用軸受や、圧延機のバックアップロール用軸受では、冷却水等の水が軸受内部の潤滑油に混入し易い。また、製紙用機械のドライヤーロールは水分を含んだ紙を乾燥させる過程で使用されるため、軸受内部の潤滑油に水蒸気が混入し易い。さらに自動車用のハブユニット軸受は、路面の雨水や泥水の影響で軸受内に水分が侵入しやすいため、潤滑油中に水分が混入し易い。
転がり軸受内部の潤滑油に水が混入すると、転がり寿命が大きく低下することは一般的に知られている。例えば非特許文献1によれば、潤滑油中に6%の水が混入すると、水の混入がない場合と比較して転がり寿命が数分の1から20分の1程度に低下することが報告されている。また、非特許文献2には、水の混入量が100ppm程度と微量であっても、転がり疲れ強さが32〜48%低下することが報告されている。そのため、従来は、接触ゴムシール等を設けることにより軸受内部に水が混入することを防止しているが、完全に水の混入を防止することは困難である。
潤滑油中に水が混入した際に短寿命となる要因として、鋼の清浄度、特に酸化物系非金属介在物があげられている。そこで、酸化物系非金属介在物を低減することを目的として、特許文献1には、少なくとも固定側軌道輪の酸素濃度を12ppm以下とした転がり軸受が提案されている。また、特許文献2には、少なくとも固定側軌道輪の軌道面上に平均直径100μmを超える酸化物系非金属介在物が存在しないことを保証した転がり軸受が提案されている。
一方、特許文献3には、軸受が高速回転かつ高荷重で使用されると、局部的に高温状態となった転動面の金属表面が触媒作用をすることによって、潤滑油やグリースが分解して水素が発生し、この水素が鋼中に侵入して水素脆化を引き起こし、早期に剥離が生じることが記載されている。この水素は、主に潤滑油やグリース中の水(元々含まれている水分あるいは保管時や使用時に混入した水)の分解によって生じると考えられる。特許文献3には、このような観点から、軸受の転走面に厚さ0.1〜2.5μmの酸化鉄皮膜を設けることにより、軸受の転走面を不活性にして触媒作用をなくし、水素の発生を防止することが記載されている。酸化鉄皮膜を形成する方法として「黒染め処理法」、酸化水溶液中で転走面を色が付く程度に腐食する方法等が例示されている。
「表面起点及び内部起点の転がり疲れについて」NSK Bearing Journal No. 636, pp1〜10, 1977,古村、城田、平川 「Effects of Water and Oxygen During Rolling Contact Lubrication」Wear, No.12, pp33〜342, 1968, P. Schatzberg, I. M. Felsen 特開2000−87974号公報
特開2000−110841号公報
特開平2−190615号公報
「表面起点及び内部起点の転がり疲れについて」NSK Bearing Journal No. 636, pp1〜10, 1977,古村、城田、平川 「Effects of Water and Oxygen During Rolling Contact Lubrication」Wear, No.12, pp33〜342, 1968, P. Schatzberg, I. M. Felsen
しかしながら、潤滑油中への水混入による早期剥離では、一般的な水素脆性剥離の特徴として知られる白色組織等の組織変化は見られず、有害と考えられる酸化物系非金属介在物と水素脆性との関わりも未だ不明瞭な点が多い。また、前述のように、転走面や転動面に酸化鉄皮膜を形成させることは、処理法によっては、処理中に水素が鋼中に吸蔵され、かえって転がり寿命を低下させることも懸念される。
本発明は上記の課題を解決するために成されたものであり、潤滑油中に水が混入する環境下であっても良好な寿命延長効果が得られる転がり軸受を提供することを目的とする。
本発明者らは、潤滑油に水が混入する環境下における早期剥離に関して鋭意検討した結果、次の(a)〜(d)の知見を得た。図1は、水混入潤滑環境における剥離メカニズムを説明するために鋼の組織をモデル化して示す模式図である。
(a)軸受が使用される際、軌道面には、転動体からの繰り返しのせん断応力をうける。せん断応力が作用する範囲に酸化物系非金属介在物が存在すると、その周囲にせん断応力の集中が生じる。
(b)軸受の転走面において水の分解によって水素が発生し、材料内部に侵入する。材料内部に侵入した水素は、酸化物系非金属介在物の周囲の応力集中部や、旧オーステナイト粒界に集積する。
(c)酸化物系非金属介在物の周囲の応力集中部において水素脆性による微小亀裂が発生する。この際平均直径10μm以上の酸化物系非金属介在物が大きく作用する。
(d)通常亀裂は粒内を進展するが、水素脆性によって特に粒界の脆化が著しい場合や、粒界への応力集中が大きい場合、粒界に沿って進展し、最終的に剥離に至る。
上記の知見から、潤滑油に水が混入する環境下における早期剥離を防止し、寿命延長効果を得るためには、(i)微小亀裂の発生源を減少させる、(ii)微小亀裂の進展を防止する、(iii)水素脆性を抑制する、ということが効果的であると考えられる。本発明は上記の知見に基づいて成されたものである。
上記課題を解決するために本発明は下記の構成を備えている。
(1)本発明に係る転がり軸受は、外部から潤滑材に水分が混入する潤滑環境下で使用される、内輪、外輪、及び複数の転動体から構成される鋼製の転がり軸受において、前記内輪、外輪及び転動体のうちの少なくとも1つが、平均直径10μm以上の酸化物系非金属介在物の検出個数が検査対象面積3000mm2当たり20個以下である。
(2)(1)において、内輪、外輪及び転動体のうちの少なくとも1つは旧オーステナイト粒径最小値がJIS粒度番号7以上である。
(3)(1)又は(2)において、内輪、外輪及び転動体のうちの少なくとも1つの転動面に5nm〜100nmの酸化鉄皮膜を有する。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1の軸受は、車輪用軸受である。
なお、本発明では、さらに極値統計法を用いて推定した推定面30000mm2中の酸化物系非金属介在物の最大寸法√areamaxを30μm以下とすることが好ましい。
(作用)
前述の通り、潤滑油に水が混入する環境下において寿命延長効果を得るためには、(i)微小亀裂の発生源を減少させること、(ii)微小亀裂の進展を防止すること、(iii)水素脆性を抑制すること、が効果的であると考えられる。
前述の通り、潤滑油に水が混入する環境下において寿命延長効果を得るためには、(i)微小亀裂の発生源を減少させること、(ii)微小亀裂の進展を防止すること、(iii)水素脆性を抑制すること、が効果的であると考えられる。
軸受の寿命には素材の清浄度が影響することが一般に知られているが、水が混入した場合にはその影響が顕著となる。本発明の軸受では、平均直径10μm以上の酸化物系非金属介在物の検出個数が検査対象面積3000mm2当たり20個以下に管理するため、良好な寿命が得られる。
さらに微小亀裂の発生には、平均直径10μm以上の酸化物系非金属介在物が作用することは先に述べた通りであるが、
(1)の発明によれば、内輪、外輪、及び複数の転動体から構成される鋼製の転がり軸受において、前記内輪、外輪及び転動体のうちの少なくとも1つは、平均直径10μm以上の酸化物系非金属介在物の検出個数が3000mm2当たり20個以下に管理されているので、微小亀裂の発生源が少なく、良好な寿命延長効果を有する。
(1)の発明によれば、内輪、外輪、及び複数の転動体から構成される鋼製の転がり軸受において、前記内輪、外輪及び転動体のうちの少なくとも1つは、平均直径10μm以上の酸化物系非金属介在物の検出個数が3000mm2当たり20個以下に管理されているので、微小亀裂の発生源が少なく、良好な寿命延長効果を有する。
(2)の発明によれば、(1)において、内輪、外輪及び転動体のうちの少なくとも1つの旧オーステナイト粒径がJIS粒度番号7以上とされているので、粒界への応力集中が小さく、良好な寿命延長効果を有する。粒界への応力集中が大きい場合は、亀裂は粒界に沿って進展するため、早期剥離を促進させるおそれがあるが、旧オーステナイト粒径をJIS粒度番号7以上にすると、粒界への応力集中が小さくなり、表2に示すように寿命が大幅に延長される。
(3)の発明によれば、(1)又は(2)において、前記内輪、外輪及び転動体のうちの少なくとも1つの転動面に、5nm〜100nmの酸化鉄皮膜が形成されているため、水の分解による水素の発生を防止し、表3に示すように良好な寿命延長効果が実現される。亀裂の発生や進展を促進する水素脆性を抑制するためには、水の分解よる、転走面での水素の発生を防止することが効果的であるからである。酸化鉄皮膜を形成させるためには、焼入れ、焼戻し後に、240℃以下で大気中、あるいはオゾン雰囲気において再加熱して行うことが好ましい。オゾン雰囲気において皮膜形成処理を行うことにより、低温、短時間で処理を行うことができるため、転がり寿命に必要な硬さの低下や、形状変化を防止することができる。
また、上記方法においては、アルカリ、酸溶液等での処理を必要としないため、これによる素材への水素吸蔵の可能性が無いため、より信頼製の高い転がり軸受を得ることができる。ハブユニット軸受は、路面の雨水や泥水の影響で使用されるため、場合によっては軸受内に水分が侵入することが考えられる。
ハブユニット軸受は、前述の転がり軸受と同様な作用が得られるため、潤滑油に水が混入する潤滑環境下において、良好な寿命延長効果を有する。
さらに、本発明では、極値統計法を用いて推定した推定面積S=30000mm2中の酸化物系非金属介在物の最大寸法√areamaxを30μm以下に管理することによって、さらに良好な寿命が得られる。
ここで「極値統計法」とは、複数の試験片からある単位面積S0内の介在物の中から最も大きな介在物の大きさを調査し、その後、統計処理を行うことにより、推定の必要な面積S内での最大介在物の大きさを推定する方法をいう。
極値統計法は、「金属疲労 微小欠陥と介在物の影響(村上敬宣著;養賢堂1993年3月8日第1版発行 233〜261頁)」に詳しく解説されている。極値統計法は以下のステップを経て最大介在物を推定する手法である。
先ず被検体試料から主応力方向に垂直な面を切り出す。この切り出し面(検査対象面)を研磨して鏡面に仕上げる。単位面積S0として、例えば光学顕微鏡やカメラなどの1視野とほぼ等しい検査基準面を定める。次いで、光学顕微鏡やカメラで検査対象面を観察して検査基準面積内での最大介在物を選び出し、この最大介在物の大きさとしての面積の平方根√areamaxを測定する。この最大介在物の√areamaxの測定を検査部分が重複しないようにn回繰り返し測定する。
測定したn個の√areamaxを小さいものから順に並べ、それぞれに番号j(j=1からn)を付ける。下式(1),(2)を用いて累積分布関数F1(%)および基準化変数y1を計算により求める。
F1={j/(n+1)}×100…(1)
y1=−ln[−ln{j/(n+1)}]…(2)
極値確率用紙の横軸に√areamaxをとり、かつ縦軸にF1とy1をとって、前記j=1からnまでの介在物のデータをこの極値確率用紙にプロットする。そして、基準化変数yおよび√areamaxについて最大介在物分布直線を計算する。この最大介在物分布直線は下式(3)〜(5)で与えられる。
y1=−ln[−ln{j/(n+1)}]…(2)
極値確率用紙の横軸に√areamaxをとり、かつ縦軸にF1とy1をとって、前記j=1からnまでの介在物のデータをこの極値確率用紙にプロットする。そして、基準化変数yおよび√areamaxについて最大介在物分布直線を計算する。この最大介在物分布直線は下式(3)〜(5)で与えられる。
√areamax=a×y+b …(3)
y=−ln[−ln{(T−1)/T}]…(4)
T=(S+S0)/S0 …(5)
ただし、y:基準化変数、T:再帰期間、S:予想を行う面積、S0:検査基準面積である。
y=−ln[−ln{(T−1)/T}]…(4)
T=(S+S0)/S0 …(5)
ただし、y:基準化変数、T:再帰期間、S:予想を行う面積、S0:検査基準面積である。
最大介在物の大きさを予想する面積Sを任意に設定し、上式(3)〜(5)を用いて当該面積Sにおける最大介在物の大きさとしての面積の平方根√areamaxを推定する。
このような極値統計法を用いて推定した推定面積S=30000mm2中の酸化物系非金属介在物の最大寸法√areamaxを30μm以下に管理することにより、早期剥離を有効に防止することができ、寿命のさらなる延長を図ることができる。
本発明の転がり軸受は、潤滑油中に水が混入する環境において、微小亀裂の発生、進展、及び水素脆性を有効に抑制するため、良好な寿命延長効果が得られる。
以下、添付の図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図2は、本発明を車輪用の玉軸受に適応した例として、玉軸受の部分縦断面を示す図である。本実施形態の玉軸受1は、外周面に内輪軌道面4aを有する内輪2(回転輪)と、内周面に外輪軌道面5aを有する外輪3(固定輪)と、両軌道面4a,5aの間に転動自在に設けられた複数の転動体6とで構成されている。
図2は、本発明を車輪用の玉軸受に適応した例として、玉軸受の部分縦断面を示す図である。本実施形態の玉軸受1は、外周面に内輪軌道面4aを有する内輪2(回転輪)と、内周面に外輪軌道面5aを有する外輪3(固定輪)と、両軌道面4a,5aの間に転動自在に設けられた複数の転動体6とで構成されている。
内輪2、外輪3及び転動体6は、極値統計法により推定した推定面積S=30000mm2中の酸化物系非金属介在物の最大寸法√areamaxが30μm以下であり、かつ平均直径10μm以上の酸化物系非金属介在物の検出個数が3000mm2当たり20個以下に管理された軸受鋼SUJ2を用いて製造されている。
これらの内輪2、外輪3及び転動体6は、焼入れ焼戻し、研削加工、超仕上げ加工を経て所定の形状とされた後、240℃以下で、大気中あるいはオゾン雰囲気中にて再加熱されることにより、内輪軌道面4a、外輪軌道面5a及び転動体6の表面にそれぞれ5nm〜100nmの酸化鉄皮膜が形成されている。
また、内輪2、外輪3及び転動体6の旧オーステナイト結晶粒度はJIS粒度番号7以上に管理されている。
(第2の実施形態)
図3は、本発明をハブユニット軸受に適用した例を示す軸受の部分縦断面図である。ハブユニット軸受10は、内方部材として第1の内輪12及び第2の内輪13を備え、外方部材として外輪14及び複数の転動体15を備えている。図中にて第1の内輪12の左端部には、車輪(図示せず)を固定するための車輪支持用フランジ16が設けられている。
図3は、本発明をハブユニット軸受に適用した例を示す軸受の部分縦断面図である。ハブユニット軸受10は、内方部材として第1の内輪12及び第2の内輪13を備え、外方部材として外輪14及び複数の転動体15を備えている。図中にて第1の内輪12の左端部には、車輪(図示せず)を固定するための車輪支持用フランジ16が設けられている。
第1の内輪12の外周面の中間部及び第2の内輪13の外周面には、それぞれ軌道面が形成され、第1及び第2の内輪軌道面17a,17bとされている。また、外輪14の内周面には第1及び第2の内輪軌道面17a,17bに対応する第1及び第2の外輪軌道面20a,20bがそれぞれ形成されている。
さらに、内輪軌道面17a,17bと外輪軌道面20a,20bとの間には、それぞれ複列の転動体15が転動自在に配列されている。また、外輪14の外周面には、車輪支持用フランジ16から離間する側の端部に、懸架装置支持用フランジ21が設けられている。
このように構成されたハブユニット軸受10において、第1の内輪12と外輪14は、極値統計法により推定した推定面積S=30000mm2中の酸化物系非金属介在物の最大寸法√areamaxが30μm以下であり、かつ平均直径10μm以上の酸化物系非金属介在物の検出個数が3000mm2当たり20個以下である、炭素鋼S53Cでつくられている。これらの内輪12と外輪14は、高周波誘導加熱による焼入れ焼戻し、研削加工、超仕上げ加工を経て所定の形状とされた後に、240℃以下で、大気中あるいはオゾン雰囲気中にて再加熱されることにより、内輪軌道面17a及び外輪軌道面20a,20bの表面にそれぞれ5nm〜100nmの酸化鉄皮膜が形成されたものとなる。
内輪13と転動体15は、平均直径10μm以上の酸化物系非金属介在物の検出個数が3000mm2当たり20個以下である、軸受鋼SUJ2でつくられている。この内輪13と転動体15は、焼入れ焼戻し、研削加工、超仕上げ加工を経て所定の形状とされた後、240℃以下で、大気中あるいはオゾン雰囲気中にて再加熱されることにより、内輪軌道面17b及び転動体15の表面にそれぞれ5nm〜100nmの酸化鉄皮膜が形成されたものとなる。また、内輪12、外輪14の軌道面(焼入れ硬化層)及び内輪13、転動体15の旧オーステナイト結晶粒度はJIS粒度番号7以上とされている。
以上のように構成された玉軸受1及びハブユニット軸受10は、潤滑油に水が混入する環境で使用されたとしても、前述の作用が得られるため、良好な寿命延長効果を奏する。
なお、上記の実施形態は本発明の例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
(実施例)
清浄度が異なる9種類の鋼種(A〜E;SUJ2、F〜I;S53C)を用いて、スラスト軸受51305を作製した。鋼種A〜鋼種Eは、芯部まで焼入れし、焼戻しを施した。一方、鋼種F〜鋼種Iは、高周波誘導加熱により軌道面のみを焼入れし、焼戻しを施した。熱処理を施した後、研削加工、超仕上げ加工を施し所定の形状とした。なお、旧オーステナイト結晶粒度はJIS粒度番号7以上となるようにした。
清浄度が異なる9種類の鋼種(A〜E;SUJ2、F〜I;S53C)を用いて、スラスト軸受51305を作製した。鋼種A〜鋼種Eは、芯部まで焼入れし、焼戻しを施した。一方、鋼種F〜鋼種Iは、高周波誘導加熱により軌道面のみを焼入れし、焼戻しを施した。熱処理を施した後、研削加工、超仕上げ加工を施し所定の形状とした。なお、旧オーステナイト結晶粒度はJIS粒度番号7以上となるようにした。
得られたスラスト軸受51305を次の条件で寿命試験を実施した。
アキシアル荷重:655kgf
回転速度 :1000rpm
潤滑 :VG10+水5%
寿命は、各サンプルをそれぞれ複数回ずつ試験して、試験機に取り付けた振動計の値が、試験開始時の3倍になった時点までの累積応力繰り返し回数(寿命)を調査してワイブルプロットを作成し、各ワイブル分布の結果から各々のL10寿命を求めた。
回転速度 :1000rpm
潤滑 :VG10+水5%
寿命は、各サンプルをそれぞれ複数回ずつ試験して、試験機に取り付けた振動計の値が、試験開始時の3倍になった時点までの累積応力繰り返し回数(寿命)を調査してワイブルプロットを作成し、各ワイブル分布の結果から各々のL10寿命を求めた。
その試験結果を表1に示す。試験結果の「寿命比」は、計算寿命に対する実測寿命の比率で示した。次に、2種類の手法によって各綱種の清浄度を評価した。まず、極値統計法により推定面積S=30000mm2中の酸化物系非金属介在物の最大寸法√areamaxを推定した。その結果を表1中、及び図4(鋼種A〜鋼種E)、図5(鋼種F〜J)にそれぞれ示す。また、図6には鋼種A〜Eおよび鋼種F〜Jにおける√areamax(μm)と寿命比との相関をそれぞれ示す。
図6から明らかなように、酸化物系非金属介在物の最大寸法√areamaxが30μm以下であると、水混入潤滑下においても計算寿命を満足することがわかる。特に√areamaxが20μm以下の材料においては、√areamaxと寿命比との関係がばらついており、酸化物系非金属介在物が水混入下における寿命に影響を及ぼしていることは明らかであるが、どのような酸化物系非金属介在物が寿命に影響を及ぼしているのか明らかにする必要がある。
そこで、√areamaxが30μm以下を満足する7種の鋼種(A〜D、F〜H)において被検面積3000mm2中に含まれる平均直径5μm以上の全ての酸化物系非金属介在物を検出し、個数分布図を作成した。各綱種における平均直径5μm以上の全ての酸化物系非金属介在物の個数分布図を図7〜図13にそれぞれ示す。
図14〜図16に、平均直径8μm以上の介在物の総数、9μm以上の介在物の総数、10μm以上の介在物の総数と寿命比との関係をそれぞれ示す。図14から明らかなように、平均直径8μm以上の介在物の総数が60個程度では、寿命との相関は見られない。また、図15から明らかなように、平均直径9μm以上の介在物の総数が30〜40個程度では、寿命との相関は見られるものの、ばらつきが大きい。
一方、図16から明らかなように、平均直径10μm以上の介在物の総数と寿命とに良好な相関が見られ、平均直径10μm以上の介在物の数が20個以下であると、水混入下においても計算寿命の1.5倍以上の寿命となる。
以上の結果から、水混入潤滑における早期剥離には、酸化物系非金属介在物が影響する個であるが、特に平均直径10μm以上の介在物が大きく作用していると考えられる。√areamax=が30μm以下であり、かつ平均直径10μm以上の介在物の総数を20個以下とすることで水混入潤滑において良好な寿命延長効果が得られる。
次に、水混入潤滑における寿命と旧オーステナイト結晶粒度の関係を調べるために、鋼種A及び鋼種Fを用いて、熱処理条件を変化させることで、旧オーステナイト結晶粒度を変化させたスラスト軸受51305を作成し、寿命試験を実施した。
図17より、旧オーステナイト結晶粒度をJIS粒度番号7以上とすることにより、結晶粒界への応力集中が軽減し、亀裂の進展が抑制されるため、水混入潤滑において良好な寿命延長効果が得られることがわかる。
次に、鋼種A及び鋼種Fを用いて、焼入れ焼戻し(鋼種Aは芯部まで焼入れ焼戻し、鋼種Fは高周波誘導加熱により焼入れ、焼戻し)を施し、研削加工、超仕上げ加工を施した後、表3に示す条件で酸化鉄皮膜形成処理を施したスラスト軸受51305を作成し、寿命試験を行った。なおオゾン雰囲気での酸化鉄皮膜形成処理は、オゾン濃度5〜100ppmの雰囲気で行った。なお、旧オーステナイト結晶粒度はJIS粒度番号7以上となるようにした。
図18から明らかなように、酸化鉄皮膜厚さを5nm〜100nmとすることで、水混入潤滑において良好な寿命延長効果が得られることが判明した。
表3中のサンプル番号26は、十分な厚さの酸化鉄皮膜が形成されておらず、十分な寿命延長効果が得られなかった。また、表3中のサンプル番号25は、酸化鉄皮膜が100nmより厚く、表面粗さが悪化したため十分な寿命延長効果が得られなかったと考えられる。表3中のサンプル番号32は、酸化鉄皮膜厚さは適正であるが、皮膜形成処理温度が300℃と高く、硬さの低下を生じたため短寿命であった。
表3の結果から明らかなように、酸化鉄皮膜形成処理は240℃以下で施されることが好ましいことが判明した。また、オゾン雰囲気で処理することにより低温、短時間で適正な酸化鉄皮膜を形成させることができることが判明した。
本発明は、潤滑油中に水分が混入されやすい環境で使用される転がり軸受として、例えば自動車のトランスミッション用軸受、鉄鋼機械のガイドロールやバックアップロール用軸受、鉄道車両用軸受、建設機械用、農業機械用、製紙機械のドライヤーロール用等の軸受、特に車両のハブユニット用軸受に利用される。
1…玉軸受、2…内輪、3…外輪、
4a…内輪軌道面、5a…外輪軌道面、6…転動体、
10…ハブユニット軸受、12…第1の内輪、13…第2の内輪、14…外輪、
15…転動体、16…車輪支持用フランジ、
17a…第1の内輪軌道面、17b…第2の内輪軌道面、
20a…第1の外輪軌道面、20b…第2の外輪軌道面、
21…懸架装置支持用フランジ。
4a…内輪軌道面、5a…外輪軌道面、6…転動体、
10…ハブユニット軸受、12…第1の内輪、13…第2の内輪、14…外輪、
15…転動体、16…車輪支持用フランジ、
17a…第1の内輪軌道面、17b…第2の内輪軌道面、
20a…第1の外輪軌道面、20b…第2の外輪軌道面、
21…懸架装置支持用フランジ。
Claims (4)
- 内輪、外輪、及び複数の転動体から構成される鋼製の転がり軸受において、前記内輪、外輪、及び複数の転動体のうちの少なくとも1つが、平均直径10μm以上の酸化物系非金属介在物の検出個数が検査対象面積3000mm2当たり20個以下であることを特徴とする転がり軸受。
- 前記内輪、外輪及び複数の転動体のうちの少なくとも1つは旧オーステナイト粒径最小値がJIS粒度番号7以上であることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
- 前記内輪、外輪及び複数の転動体のうちの少なくとも1つの転動面に5nm〜100nmの酸化鉄皮膜を有することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の転がり軸受。
- 車輪用軸受であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の転がり軸受。
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