JP2004156071A - 高周波焼入れ用成形部品および軸受け部品 - Google Patents
高周波焼入れ用成形部品および軸受け部品 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】焼入れによっての転動疲労寿命が極めて優れたものになる高周波焼入れ用成形部品、特に、軸受け部品の提供
【解決手段】C、Si、Mn、Cr、V、S、Al、Nを含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のTiが0.003%以下、Oが0.0015%以下、Pが0.020%以下である成形部品であって、表層領域における初析フェライトの平均短径が8μm以下で、下記の(1)式で表されるA値が0.80以上であり、アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数が2個/mm2以下であることを特徴とする高周波焼入れ用成形部品。但し、(1)式中のMnMINは表層領域におけるMn濃度の下限値(質量%)、MnAVEはMn濃度の平均値(質量%)を意味する。これに高周波焼入れを施せば、転動疲労寿命に優れた部品となる。
A=(MnMIN/MnAVE) …(1)
【選択図】なし
【解決手段】C、Si、Mn、Cr、V、S、Al、Nを含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のTiが0.003%以下、Oが0.0015%以下、Pが0.020%以下である成形部品であって、表層領域における初析フェライトの平均短径が8μm以下で、下記の(1)式で表されるA値が0.80以上であり、アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数が2個/mm2以下であることを特徴とする高周波焼入れ用成形部品。但し、(1)式中のMnMINは表層領域におけるMn濃度の下限値(質量%)、MnAVEはMn濃度の平均値(質量%)を意味する。これに高周波焼入れを施せば、転動疲労寿命に優れた部品となる。
A=(MnMIN/MnAVE) …(1)
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハブユニット、等速ジョイントなどの自動車用部品の素材となる成形部品およびその成形部品の全体または一部に高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施して得た軸受け部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の部品であるハブユニットや等速ジョイントには、引張強さ、回転曲げ疲労強度、靱性などの特性と、転動疲労特性とが求められている。この要求を達成すべく、従来、これらの部品は、非調質鋼または調質鋼などの回転曲げ疲労強度、靭性などに優れた鋼材を転動部以外の部分に用い、JIS規格のSUJ2鋼などの転動疲労特性に優れた軸受け用鋼を転動部に用いて製造されてきた。
【0003】
しかし、近年、部品の軽量化、コストダウンの要望が強くなってきており、この要望を達成するためには、1つの鋼材に多くの機能を持たせることが必要になってきている。これを達成すべく、例えば、JIS−S55C、SAE1065等のC含有量の高い鋼材に高周波焼入れ、さらに必要に応じて焼戻しを施すことが試みられているが、部品の小型化の進展に伴い、転動部分にこれまでより高い面圧がかかるようになり、これらの鋼材では転動疲労寿命が不十分になってきている。このため、下記に示すような種々の技術が提案されている。
【0004】
特許文献1には、化学組成、または更に所定の式から得られる炭素当量の範囲を特定した高強度高周波焼入用鋼が提案されている。この鋼は、鍛造上がりの硬さ上昇を最小限に抑え、被削性、冷間加工性を確保しながら、非硬化部の疲労強度、硬化部の耐転がり強度、転がり寿命、耐ピッチング強度、耐摩耗性、疲労強度等を向上させた鋼であるとされている。
【0005】
しかし、転動疲労特性は、酸化物系介在物の大きさ、硬さおよび偏析の影響を受けやすく、更には高周波焼入れのような短時間熱処理の場合には熱処理前の組織の影響を受けやすいが、特許文献1に記載の発明では酸化物系介在物、偏析、および焼入れ前の組織について考慮されていない。このため、転動部分の転動疲労寿命など性能が不安定である。
【0006】
特許文献2には、化学組成および特定種類の介在物の個数を限定した加工性および転動疲労性に優れた軸受用鋼が提案されている。しかし、この発明は、球状化焼鈍または焼きなまし処理を施すことを前提としたものであるため、高周波焼入れのような短時間での焼入れを施す場合には、安定して優れた転動疲労寿命を得ることができない。また、この発明では、引張強さ、回転曲げ疲労強度、靭性の特性については何ら考慮されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−226938号公報
【特許文献2】
特開平5−117804号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は高周波焼入れを施さない部分は、通常並み以上の特性を有し、高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施した部分は、その転動疲労寿命が量産においても安定して優れる軸受け部品、およびその部品に好適な成形部品を提供することである。
【0009】
なお、既に述べたように、転動部分には高い面圧が繰り返し作用するので、後述の実施例の条件における転動疲労試験で、2.0×107以上の転動疲労寿命を有することを目標とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高周波焼入れを施す部分、または高周波焼入れおよび焼戻しを施す部分の焼入れ前の組織、偏析および介在物が転動疲労寿命に与える影響について調査・研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
【0011】
(a)高周波焼入れでは、表層領域のみに焼きが入るので、転動疲労寿命を改善するためには、この領域のみに着目すればよい。
【0012】
(b)高周波焼入れのような短時間焼入れの場合、数10〜数100μmの大きさで存在する偏析、いわゆるミクロ偏析が転動疲労寿命に大きく影響し、偏析が激しいと転動疲労寿命が低下する。
【0013】
(c)介在物の組成や硬さは、製鋼方法や化学成分によって変化する。介在物のアスペクト比と介在物の硬さとは相関関係があり、例えば、アスペクト比が小さい介在物は硬質であると判断できる。そこで、アスペクト比が小さい介在物の大きさおよび個数と転動疲労寿命との関係を調べたところ、極めてよい相関が得られた。
【0014】
(d)初析フェライト中のC濃度は極めて低いため、高周波焼入れのような短時間の焼入れの場合、初析フェライトがある大きさ以上になると、オーステナイト域に加熱している間にC濃度が平均含有量の値に達せず、その部分の焼入れ後の硬度が低くなって転動疲労寿命が大きく低下する。オーステナイト化したときの初析フェライトであった部分へのCの拡散は、周囲のパーライトであった部分から生じるため、初析フェライトの平均粒径ではなく、短径をある値以下にすればよい。
【0015】
(e)優れた転動疲労寿命を得るためには、高周波焼入れを施した部分の硬度の平均値が高いことは、当然必要であるが、上記(d)で説明した高周波焼入れ前の初析フェライトに起因すると考えられる局所的に軟質な領域があると、転動疲労寿命が大きく低下する。そのため微小領域の硬度のバラツキと転動疲労寿命とは密接な関係がある。
【0016】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記の▲1▼に示す成形部品および▲2▼に示す軸受け部品を要旨とする。
【0017】
▲1▼質量%で、C:0.5〜0.7%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Cr:0〜1.5%、V:0〜0.10%、S:0.002〜0.05%、Al:0.01〜0.04%、N:0.005〜0.012%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のTiが0.003%以下、Oが0.0015%以下、Pが0.020%以下である成形部品であって、表層領域において、初析フェライトの平均短径が8μm以下で、下記の(1)式で表されるA値が0.80以上であり、アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数が2個/mm2以下であることを特徴とする高周波焼入れ用成形部品。
【0018】
A=(MnMIN/MnAVE) …(1)
但し、(1)式中の各記号の意味は下記のとおりである。
MnMIN:表層領域におけるMn濃度の下限値(質量%)
MnAVE:Mn濃度の平均値(質量%)
▲2▼質量%で、C:0.5〜0.7%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Cr:0〜1.5%、V:0〜0.10%、S:0.002〜0.05%、Al:0.01〜0.04%、N:0.005〜0.012%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のTiが0.003%以下、Oが0.0015%以下、Pが0.020%以下である成形部品の全体または一部に高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施した軸受け部品であって、表層領域において、下記の(1)式で表されるA値が0.80以上で、アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数が2個/mm2以下であり、高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施した部分の表層領域において、圧痕の対角線長さが15μm以下となる荷重で測定したときの平均ビッカース硬度が650以上で、且つビッカース硬度の標準偏差のσ値が10以下であることを特徴とする軸受け部品。
【0019】
A=(MnMIN/MnAVE) …(1)
但し、(1)式中の各記号の意味は下記のとおりである。
MnMIN:表層領域におけるMn濃度の下限値(質量%)
MnAVE:Mn濃度の平均値(質量%)
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」、「母材」は高周波焼入れが施されない部分、「焼入れ部」は高周波焼入れが施される部分をそれぞれ意味する。
【0021】
1.化学組成
C:0.5〜0.7%
Cは、母材および焼入れ部の機械的性質を向上させるのに有効な元素である。しかし、Cの含有量が0.5%未満では、焼入れ部のビッカース硬度が650に達せず、他の条件を満足していても、所望の転動疲労寿命(後述の実施例における転動疲労試験で2.0×107以上の転動疲労寿命。以下、同じ。)が得られない。一方、Cの含有量が0.7%を超えると、母材の靭性が著しく低下する。従って、Cの含有量を0.5〜0.7%とした。
【0022】
Si:0.1〜1.5%
Siは、母材の引張強さ、回転曲げ疲労強度および焼入れ部の転動疲労寿命を高めるのに有効な元素であるとともに、脱酸剤として必要な元素でもある。また、鋼の切削性を向上させる元素でもある。しかし、その含有量が0.1%未満ではこれらの効果が得られない。一方、Siの含有量が1.5%を超えると、その効果が飽和し、むしろ母材の靭性が低下する。従って、Siの含有量を0.1〜1.5%とした。
【0023】
Mn:0.2〜1.5%
Mnは、母材の引張強さを高め、焼入れ性を向上させると同時に、Sによる熱間脆性の防止に必要な元素である。これらの効果を発揮させるためにはMnを0.2%以上含有させる必要がある。しかし、その含有量が1.5%を超えるとMnの偏析が顕著になり、転動疲労寿命が著しく低下する。なお、均質化熱処理を行えば転動疲労寿命は向上するが、コストアップにつながる。従って、Mn含有量を0.2〜1.5%とした。
【0024】
Cr:0〜1.5%
Crは添加しなくてもよい。添加すれば、鋼の焼入れ性を向上させると同時に、転動疲労寿命を向上させる。この効果を確実に得るためには、0.3%以上含有することが望ましい。しかし、Crは炭化物に濃化しやすい元素であり、炭化物を安定化する。このため、その含有量が1.5%を超えると、焼入れ部に炭化物が多量に残存して鋼の硬度が低下し、転動疲労寿命が低下する。従って、Cr含有量を0〜1.5%とした。
【0025】
V:0〜0.10%
Vも添加しなくてもよい。添加すれば、母材中に微細な窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物として析出し、母材の引張強さ、回転曲げ疲労強度を向上させる。この効果を確実に得るためには、0.02%以上含有することが望ましい。一方、Vの含有量が0.10%を超えると、粗大な窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物が残存し、焼入れ部で所望の転動疲労寿命が得られなくなる。従って、V含有量を0〜0.10%とした。
S:0.002〜0.05%
SはMnと結合してMnSを形成し、切削加工性を向上させる元素であるが、その含有量が0.002%未満ではこの効果が得られない。切削加工性を更に向上させるためには、0.02%を超えて含有させることが好ましい。一方、その含有量が0.05%を超えると、粗大なMnSを形成しやすくなり転動疲労寿命が著しく低下する。粗大なMnSは焼入れ部の転動疲労寿命を低下させる傾向があるからである。より長い転動疲労寿命である3.0×107以上を得るためには、その含有量を0.015%以下にすることが好ましい。従って、Sの含有量を0.002〜0.05%とした。切削性改善のためには、その含有量を0.02%を超え0.05%以下とすることが好ましく、転動疲労寿命の向上の観点からは、0.002〜0.015%とすることが好ましい。
Al:0.01〜0.04%
Alは脱酸作用を有するとともに、Nと結合してAlNを形成しやすく、焼入れ部の結晶粒微細化に有効である。この効果を得るためには、Alは0.01%以上含有されている必要がある。しかし、Alは硬質でアスペクト比が小さな非金属系介在物を形成するため、その含有量が0.04%を超えると、粗大な非金属系介在物を形成して転動疲労寿命が著しく低下する。従って、Alの含有量を0.01〜0.04%とした。
N:0.005〜0.012%
Nは、Ti、AlおよびVと結合して窒化物を形成しやすく、これらの窒化物の中でAlNは焼入れ部の結晶粒を微細化し、VNは母材の引張強さを高め、回転曲げ疲労強度を向上させる。これらの効果を得るためには、N含有量を0.005%以上とする必要がある。しかし、その含有量が0.012%を超えると、粗大なTiNが形成されて焼入れ部の転動疲労寿命が低下する。従って、Nの含有量を0.005〜0.012%とした。
本発明の成形部品および軸受け部品は、上記の化学組成を有し、残部はFeおよび不純物からなるが、不純物元素としてのTi、O(酸素)およびPの含有量については下記のとおりに制限する。
Ti:0.003%以下
Tiは、Nと結合してTiNを形成し、転動疲労寿命を低下させる。特に、その含有量が0.003%を超えると、転動疲労寿命の低下が著しくなる。従って、Tiの含有量を0.003%以下で、できるだけ少なくすることが望ましい。
O:0.0015%以下
Oは、酸化物系介在物を形成し、その多くはアスペクト比が3以下のものであるため、転動疲労寿命を低下させるため、その含有量はできるだけ少ないことが望ましい。特に、その含有量が0.0015%を超えると転動疲労寿命の低下が著しくなるので、Oの含有量を0.0015%以下とした。
【0026】
P:0.020%以下
Pは粒界偏析して粒界を脆化させやすい元素であり、その含有量が0.020%を超えると、母材の靭性が大きく低下し、所望のシャルピー衝撃試験での衝撃値(後述の実施例における衝撃試験で、30J/cm2以上の衝撃値)が得られなくなる。従って、P含有量を0.020%以下とした。
【0027】
2.表層領域の偏析
本発明の成形部品および軸受け部品は、下記の(1)式で表されるA値が0.80以上であることが必要である。但し、(1)式中のMnMINは表層領域におけるMn濃度の下限値(質量%)、MnAVEはMn濃度の平均値(質量%)を意味する。
【0028】
A=(MnMIN/MnAVE) …(1)
なお「表層領域」とは、成形部品では表面から深さが2mmまでの領域、軸受け部品では、表面から深さが1mmまでの領域と定義する。
【0029】
ここで、偏析しやすい元素としては、C、Mn、Cr等の元素が知られている。しかし、Cは、軽元素であり、一般的な測定機器であるEPMAでは測定精度が低くなりやすく、Crは、本発明の成形部品および軸受け部品には添加されない場合もある。このため、本発明者らは、Mnの表層領域における濃度に着目して下記の実験を行った。
【0030】
表1に示す鋼EおよびHを電気炉でそれぞれ3ton溶解して鋳造し、インゴットままで放冷した。なお溶解の際、不純物元素が十分低減するように原料の選定、精錬に十分注意を払った。比較的大型のインゴットを放冷したため、50〜200kgのインゴットを放冷したものや、連続鋳造で凝固を制御したものに較べ、偏析は激しいと考えられる。このインゴットを分塊圧延により155mm角のビレットにした後、熱間圧延により直径40mmの棒鋼にした。
【0031】
【表1】
【0032】
この棒鋼を6ヶに分割して、均質化熱処理の条件を変えることにより、偏析レベルの異なる棒鋼を作製した。この棒鋼を、加熱温度1150℃、仕上温度1050℃の条件の熱間鍛造後、放冷することにより直径13mmとした。その後、切削加工によって直径12mm、長さ22mmの試験片(以下、この項において「φ12mm成形試験片」と呼ぶ)を作製した。加熱温度、鍛造仕上がり温度共に、一般的な鍛造条件より低温のため、通常より組織は微細と考えられる。φ12mm成形試験片に最高加熱温度950〜1000℃、硬化深さ約2mmとなる条件で高周波焼入れを施し、さらに通常の熱処理炉を用いて160℃で1時間の焼戻しを施した後、表面を鏡面に研磨して試験片(以下、この項において「φ12mm焼入れ試験片」と呼ぶ)を作製した。
【0033】
φ12mm成形試験片およびφ12mm焼入れ試験片について、表層領域を横断面方向からMnについてEPMAによる線分析を行った。この分析を3回実施し、最も低かったMn濃度(以下、MnMINと呼ぶ)と最も高かったMn濃度(以下、MnMAXと呼ぶ)を記録した。このとき、MnMAXについてはMnSに起因すると考えられるものは除いた。また転動疲労試験は、φ12mm焼入れ試験片を用いて実施した。均質化処理条件、転動疲労寿命および表層領域のMn濃度を表2に示す。なお、表中の「母材」はφ12mm成型試験片の試験結果を示し、「焼入れ部」はφ12mm焼入れ試験片の試験結果を示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2に示すように、同じ鋼の間では、Mn偏析が低減すると転動疲労寿命が改善されるが、異なる鋼の間では、Mn濃度の絶対値と転動疲労寿命は相関がないことが分かる。これらの関係を図を使って説明する。
【0036】
図1は、「(表層領域のMn濃度上限値)/(Mn濃度平均値)」、即ち、「MnMAX/MnAVE」と転動疲労寿命との関係を示す図であり、図2は、「(表層領域のMn濃度下限値)/(Mn濃度平均値)」、即ち、「MnMIN/MnAVE」と転動疲労寿命との関係を示す図である。
【0037】
図1に示す例でも「MnMAX/MnAVE」が小さくなれば、転動疲労寿命が向上し、一応の相関関係が認められるが、図2に示す例の方がその相関関係は明瞭である。このため、Mnの偏析としては「MnMIN/MnAVE」に着目することとした。図2に示すように、「MnMIN/MnAVE」が0.80以上であれば、常に目標とする転動疲労寿命が得られる。従って、本発明の成形部品および軸受け部品は、「MnMIN/MnAVE」、即ち、上記の(1)式で表されるA値が0.80以上であることが必要である。
【0038】
3.介在物の形態、大きさおよび個数
本発明の成形部品および軸受け部品は、表層領域において、アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数が2個/mm2以下であることが必要である。本発明者らは、介在物の形態、大きさおよび個数に着目して下記の実験を行った。
【0039】
上記の表1に示した鋼Uおよび鋼a〜fを真空溶解にて180kg溶解して鋳造し、鋼Tを電気炉で3ton溶解して鋳造した。また、鋼Uは鋳型に耐火物が損傷しているものを用い、意図的に耐火物が混入するようにした。鋼Uおよび鋼a〜fのインゴットについては熱間鍛造により直径40mmの棒鋼にし、鋼Tについては分塊圧延により155mm角のビレットにした後、通常の熱間圧延により直径40mmの棒鋼にした後、この棒鋼に1250℃での10時間均質化熱処理を施して偏析を十分に低減した。
【0040】
続いて、この棒鋼を、加熱温度1150℃、仕上温度1050℃の条件の熱間鍛造後、放冷することより直径13mmとした後、切削加工によって直径12mm、長さ22mmの試験片(以下、この項において「φ12mm成形試験片」と呼ぶ)を作製した。加熱温度、仕上温度共に、一般的な鍛造条件より低温のため、通常より組織は微細と考えられる。この試験片に最高加熱温度950〜1000℃、硬化深さ約2mmとなる条件で高周波焼入れを施し、さらに通常の熱処理炉を用いて160℃で1時間の焼戻しを施した後、表面を鏡面に研磨して試験片(以下、この項において「φ12mm焼入れ試験片」と呼ぶ)を作製した。
【0041】
φ12mm焼入れ試験片を用いて転動疲労試験を実施し、寿命に到った試験片の破壊起点を詳細に観察し、表層領域に介在物が存在していた試験片については介在物のアスペクト比も測定した。この結果を図3に示す。
【0042】
図3は、破壊起点となった介在物の短径と長径との関係を示す図である。図3に示すように、破壊起点となった介在物は、いずれもアスペクト比が3以下であり、短径が10μm以上になっていた。また、破壊起点となった介在物の種類をEPMAによって同定したことろ、TiN、VN、Al2O3、SiO2の介在物が観察され、MnSの介在物は破壊起点とならなかった。この理由は、MnSが他の介在物に較べて軟質であるためと考えられる。
【0043】
長径および短径は、図4に示すように、途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線を長径(L1)と定義し、それと垂直な直線で粒内に最も長い引ける直線を短径(L2)と定義した。アスペクト比はL1/L2と定義した。
【0044】
φ12mm成形試験片およびφ12mm焼入れ試験片について、先に定義した表層領域を縦断面方向から光学顕微鏡によって観察した。観察は倍率200倍で10視野行い、各視野中で介在物のアスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるものの個数を測定した。なお、観察した面積は10視野の合計で3.0mm2である。また、MnSについては、光学顕微鏡で観察した際の介在物の濃淡差から他の介在物と区別して、測定から除外した。各試験片のアスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数および転動疲労寿命を表3に示す。なお、表中の「母材」はφ12mm成型試験片の試験結果を示し、「焼入れ部」はφ12mm焼入れ試験片の試験結果を示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3に示すように、アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数が2以下の場合に、目標とする転動疲労寿命を達成した。従って、成形部品および軸受け部品の「表層領域におけるアスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物」の個数を2個/mm2以下とした。
【0047】
なお、介在物の形状と大きさは、介在物の組成、凝固速度、凝固偏析などの影響を受け、更に製鋼の設備の影響も受ける。このため、上記のMnS以外の介在物の条件を満足するように製造条件を設定することは難しいが、例えば、以下の条件を満たように調整すれば、多くの場合、目標とする介在物の形状と大きさが得られる。
【0048】
(1)鋼中の含有量をAlは0.04%以下、Oは0.0015%以下、Tiは0.003%以下、Nは0.012%以下にすること。
【0049】
(2)取鍋、タンディッシュ等の耐火物の溶損や鋳造時のスラグ及びパウダーの巻き込みを防止すること。
【0050】
(3)鋳造を小断面のインゴット又はブルームで行うこと。実施例などに用いた180kgのインゴットの場合は、上記の(1)および(2)の条件を満たしていれば、目標とする介在物の形状と大きさを得られた。連続鋳造で例えば400mm角といった大断面のブルームを製造する場合には、溶鋼の電磁攪拌や凝固末期軽圧下を適用すればよい。
【0051】
4.初析フェライトの大きさ
本発明の成形部品の表層領域における初析フェライトの平均短径は8μm以下であることが必要である。これは、オーステナイト化したときの初析フェライトであった部分へのC拡散は周囲のパーライトであった部分から生じるため、初析フェライトの平均粒径ではなく、短径をある値以下にすれば、高周波焼入れのような短時間加熱からの焼入れでも、初析フェライトであった部分も十分硬化して転動疲労寿命が低下しないことから定めたものである。以下、その実験方法と結果を示す。
【0052】
表1に示す鋼EおよびHを電気炉で3ton溶解して鋳造し、これらのインゴットを分塊圧延により155mm角のビレットにした後、通常の熱間圧延により直径40mmの棒鋼にした。その後、この棒鋼に1250℃での6時間均質化熱処理を施して偏析を十分低減した。
【0053】
引き続き、表4に示す条件で鍛造後、放冷することにより直径13mmにした後、切削加工によって直径12mm、長さ22mmの試験片(以下、この項において「φ12mm成形試験片」と呼ぶ)を作製した。この試験片に最高加熱温度950〜1000℃、硬化深さ約2mmとなる条件で高周波焼入れを施し、さらに通常の熱処理炉を用いて160℃で1時間の焼戻しを施した後、表面を鏡面に研磨して試験片(以下、この項において「φ12mm焼入れ試験片」と呼ぶ)を作製した。
【0054】
φ12mm成形試験片の横断面(即ち、長さ方向に直角な切断面)を鏡面研磨した後、ナイタールで腐食し、光学顕微鏡を用いて倍率400倍で表層領域を各20視野撮影し、各初析フェライト粒の短径、長径を測定し、その平均値を求めた。なお観察した面積は20視野は合計で0.75mm2である。また、転動疲労試験は、φ12mm焼入れ試験片を用いて実施した。
【0055】
図5は、初析フェライトの平均長径または平均短径と転動疲労寿命との関係を示す図である。図5に示すように、初析フェライトの平均長径と転動疲労寿命の間には明確な相関は認められないが、初析フェライトの平均短径と転動疲労寿命の間には明確な相関があり、平均短径が8μmの場合、常に目標とする転動疲労寿命に達していた。
【0056】
なお、初析フェライトの大きさは、化学組成(特に、C含有量)、加熱温度、加工温度、冷却速度などの影響を受けるため、初析フェライトの平均短径を8μm以下にする製造条件を設定することは難しいが、例えば、鍛造後の形状が直径10〜50mmの棒鋼の場合、以下の条件を満たように調整すれば、目標とする初析フェライトの平均短径が得られることが多い。
【0057】
(1)C含有量が0.60〜0.70%の場合は、加熱温度を1250〜850℃、加工温度を1200〜800℃として鍛造した後、放冷すること。
【0058】
(2)C含有量が0.55〜0.60%の場合は、加熱温度を1250〜1050℃、加工温度を1150〜800℃として鍛造した後、放冷すること。
【0059】
(3)C含有量が0.50〜0.55%の場合は、加熱温度を1200〜1050℃、加工温度を1150〜800℃として鍛造した後、放冷すること。
【0060】
5.ビッカース硬度の平均値および標準偏差
本発明の軸受け部品は、高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施した部分の表層領域において、圧痕の対角線長さが15μm以下となる荷重で測定したときの平均ビッカース硬度が650以上で、且つビッカース硬度の標準偏差のσ値が10以下であることが必要である。
【0061】
上記4で説明したφ12mm焼入れ試験片の表層領域を横断面方向からビッカース硬度を測定した。微小な領域の硬度を測定したいため、圧痕の対角線長さが15μm以下となる荷重で、各試料について50ヶ所測定した。なお、圧痕の対角線長さの下限については特に規定しないが、硬度を精度よく測定するためには、圧痕の対角線長さが5μm以上であることのが好ましい。熱間鍛造の条件および試験結果を表4に示す。なお、表中の「母材」はφ12mm成型試験片の試験結果を示し、「焼入れ部」はφ12mm焼入れ試験片の試験結果を示す。
【0062】
【表4】
【0063】
表4に示すように、ビッカース硬度の標準偏差が10を超える場合、目標とする転動疲労寿命を達しなかった。また後段の実施例の表6および8に示すように、平均のビッカース硬度が650未満の場合、目標とする転動疲労寿命に達しなかった。従って、高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施した部分の表層領域において、圧痕の対角線長さが15μm以下となる荷重で測定したときの平均ビッカース硬度を650以上で、且つビッカース硬度の標準偏差のσ値を10以下とした。
【0064】
なお、平均ビッカース硬度650以上を得るためには、C含有量を0.50%以上としてマルテンサイト組織にすればよく、標準偏差を10未満にするためには、初析フェライトの平均短径を8μm以下にするとよい。
【0065】
【実施例】
前掲の表1に示す化学組成を有する鋼A〜Uを溶解した。この内、鋼E、HおよびTは電気炉で3ton溶解して鋳造し、鋼A〜D、F、GおよびI〜Uは真空溶解にて180kg溶解して鋳造した。表1における鋼B、D〜F、H、J、L、TおよびUは、本発明で規定される化学組成を満足するを満足するものであり、鋼A、C、G、I、KおよびM〜Sは、成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れたものである。また、鋼Uは鋳型に耐火物が損傷しているものを用い、意図的に耐火物が混入するようにした。
【0066】
電気炉で3ton溶解して鋳造した鋼E、H、およびTはインゴットを分塊圧延により155mm角のビレットにした後、通常の熱間圧延により直径40mmの棒鋼にし、真空溶解にて180kg溶解して鋳造した鋼A〜D、F、GおよびI〜Uについては、通常の熱間鍛造により直径40mmの棒鋼にした。
【0067】
これらの棒鋼の一部については表5および7に示した条件で均質化熱処理を施し、これらを熱間鍛造後、放冷することにより直径30mmの棒鋼と直径13mmの棒鋼を作製した。この直径30mmの棒鋼からJIS 4号の引張試験片、JIS 3号の衝撃試験片および平行部が直径8mm、長さ25mm、コーナー部が25mmRの平滑回転曲げ疲労試験片(以下、単に「平滑回転曲げ疲労試験片」と呼ぶ)を作製した。また、直径13mmの棒鋼から切削加工によって直径12mm、長さ22mmの試験片(以下、この項において「φ12mm成形試験片」と呼ぶ)を作製した。この試験片に最高加熱温度950〜1000℃、硬化深さ約2mmとなる条件で高周波焼入れを施し、さらに通常の熱処理炉を用いて160℃で1時間の焼戻しを施した後、表面を鏡面に研磨して試験片(以下、この項において「φ12mm焼入れ試験片」と呼ぶ)を作製した。
【0068】
表層領域のMn濃度の下限値は、次の方法により測定した。φ12mm成形試験片については、試験片の横断面で表面から深さ2mmの範囲、およびφ12mm焼入れ試験片については、試験片の横断面で表面から深さ1mmの範囲で、通常のEPMAによる線分析で各3回測定し、Mnが最も低くなった濃度を求めた。
【0069】
初析フェライトの短径は、次の方法で測定した。φ12mm成形試験片の横断面(即ち、長さ方向に直角な切断面)を鏡面研磨した後、ナイタールで腐食し、光学顕微鏡を用いて倍率400倍で表層領域を各20視野撮影し、各初析フェライト粒の短径を測定し、その平均値を求めた。
【0070】
引張強さは、JIS 4号の試験片を用い、通常の方法により室温で引張試験を行い、各2回の引張強さの平均値を求めた。JIS規格で規定されているS55Cの一般的な値を上回る850MPa以上を合格、これ未満を不合格とした。
【0071】
衝撃値は、JIS 3号の試験片を用い、通常の方法により室温で衝撃試験を行い、各2回の衝撃値の平均値を求めた。衝撃値が30J/cm2以上を合格、これ未満を不合格とした。
【0072】
回転曲げ疲労強度は、平滑回転曲げ疲労試験片を用い、通常の方法により小野式回転曲げ疲労試験を行い、繰り返し数1.0×107回の応力を回転曲げ疲労強度とした。JIS規格で規定されているS55Cの一般的な値を上回る350MPa以上を合格、これ未満を不合格とした。
【0073】
高周波焼入れ・焼戻し部の平均ビッカース硬度およびその標準偏差は次の方法で測定した。φ12mm焼入れ試験片を用い、試験片の横断面で表層から1mmの深さの位置まで範囲で、荷重200gでランダムに50ヶ所のビッカース硬度を測定した。なお、標準偏差は下式から求めた。ここでHviは50ヶ所の内、i番目の測定箇所における硬度で、Hvmは50ヶ所測定した硬度平均値である。
【0074】
【数1】
転動疲労試験における転動疲労寿命は次の方法で測定した。
【0075】
試験機:円筒式ラジアル型転動疲労試験機
最大面圧:6200MPa
試験片回転数:46000回/分
試験片数:各12個
転動疲労寿命は、各条件に付き12個のφ12mm焼入れ試験片の各転動疲労寿命を縦軸に累積破損確率、横軸に転動疲労寿命をとったワイブル確率紙にプロットして、それに対する線形近似直線を引き、累積頻度破損確率が10%になる転動疲労寿命(以後L10寿命と称する)を求めた。L10寿命が2.0×107以上を合格、これ未満を不合格とした。
【0076】
アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数は次の方法で測定した。φ12mm成形試験片については、試験片の縦断面で表面から深さ2mmの範囲で、φ12mm焼入れ試験片については、試験片の縦断面で表面から深さ1mmの範囲で、倍率200倍で10視野観察し、通常の画像解析の手法を用いて、各視野中で介在物のアスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるもの個数を測定した。またMnSについては、光学顕微鏡で観察した際の、介在物の濃淡差から他の介在物と区別して、測定から除外した。
【0077】
これらの製造条件および測定結果を表5〜8に示す。なお、表中の「母材」はφ12mm成型試験片の試験結果を示し、「焼入れ部」はφ12mm焼入れ試験片の試験結果を示す。
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
表5〜8に示すように、化学組成、脱炭層厚さ、A値、介在物個数、初析フェライトの短径、ならびに焼入れ後の平均硬度および標準偏差のいずれか1つ以上の条件が本発明で規定される範囲を外れる比較例No.1、2、6〜8、14〜17、20、22、25、26、30〜34、36、38、39、43〜45および48〜65は、転動疲労寿命が2.0×107未満と短いか、衝撃値が目標値に達せず、母材の靱性が劣化した。
一方、本発明例No.3〜5、9〜13、18、19、21、23、24、27〜29、35、37、40〜42、46および47は、転動疲労寿命が2.0×107回以上で、且つ非高周波焼入れ部の衝撃値が30J/cm2以上で、転動疲労寿命、および靭性が良好であった。また、本発明例はいずれも、引張強さ、回転曲げ疲労強度も通常以上である。
【0083】
【発明の効果】
本発明の成形部品および軸受け部品は、焼入れしない部分の特性は通常並み以上を確保しつつ、高周波焼入れ、さらに必要に応じて焼戻しを施した部分の転動疲労寿命が安定して極めて優れているので、自動車の部品であるハブユニット、等速ジョイントなどに用いられる鋼材および部品に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】「MnMAX/MnAVE」と転動疲労寿命との関係を示す図である。
【図2】「MnMIN/MnAVE」と転動疲労寿命との関係を示す図である。
【図3】破壊起点となった介在物の短径と長径との関係を示す図である。
【図4】介在物の長径および短径の定義を示す図である。
【図5】初析フェライトの平均長径または平均短径と転動疲労寿命との関係を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハブユニット、等速ジョイントなどの自動車用部品の素材となる成形部品およびその成形部品の全体または一部に高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施して得た軸受け部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の部品であるハブユニットや等速ジョイントには、引張強さ、回転曲げ疲労強度、靱性などの特性と、転動疲労特性とが求められている。この要求を達成すべく、従来、これらの部品は、非調質鋼または調質鋼などの回転曲げ疲労強度、靭性などに優れた鋼材を転動部以外の部分に用い、JIS規格のSUJ2鋼などの転動疲労特性に優れた軸受け用鋼を転動部に用いて製造されてきた。
【0003】
しかし、近年、部品の軽量化、コストダウンの要望が強くなってきており、この要望を達成するためには、1つの鋼材に多くの機能を持たせることが必要になってきている。これを達成すべく、例えば、JIS−S55C、SAE1065等のC含有量の高い鋼材に高周波焼入れ、さらに必要に応じて焼戻しを施すことが試みられているが、部品の小型化の進展に伴い、転動部分にこれまでより高い面圧がかかるようになり、これらの鋼材では転動疲労寿命が不十分になってきている。このため、下記に示すような種々の技術が提案されている。
【0004】
特許文献1には、化学組成、または更に所定の式から得られる炭素当量の範囲を特定した高強度高周波焼入用鋼が提案されている。この鋼は、鍛造上がりの硬さ上昇を最小限に抑え、被削性、冷間加工性を確保しながら、非硬化部の疲労強度、硬化部の耐転がり強度、転がり寿命、耐ピッチング強度、耐摩耗性、疲労強度等を向上させた鋼であるとされている。
【0005】
しかし、転動疲労特性は、酸化物系介在物の大きさ、硬さおよび偏析の影響を受けやすく、更には高周波焼入れのような短時間熱処理の場合には熱処理前の組織の影響を受けやすいが、特許文献1に記載の発明では酸化物系介在物、偏析、および焼入れ前の組織について考慮されていない。このため、転動部分の転動疲労寿命など性能が不安定である。
【0006】
特許文献2には、化学組成および特定種類の介在物の個数を限定した加工性および転動疲労性に優れた軸受用鋼が提案されている。しかし、この発明は、球状化焼鈍または焼きなまし処理を施すことを前提としたものであるため、高周波焼入れのような短時間での焼入れを施す場合には、安定して優れた転動疲労寿命を得ることができない。また、この発明では、引張強さ、回転曲げ疲労強度、靭性の特性については何ら考慮されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−226938号公報
【特許文献2】
特開平5−117804号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は高周波焼入れを施さない部分は、通常並み以上の特性を有し、高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施した部分は、その転動疲労寿命が量産においても安定して優れる軸受け部品、およびその部品に好適な成形部品を提供することである。
【0009】
なお、既に述べたように、転動部分には高い面圧が繰り返し作用するので、後述の実施例の条件における転動疲労試験で、2.0×107以上の転動疲労寿命を有することを目標とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高周波焼入れを施す部分、または高周波焼入れおよび焼戻しを施す部分の焼入れ前の組織、偏析および介在物が転動疲労寿命に与える影響について調査・研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
【0011】
(a)高周波焼入れでは、表層領域のみに焼きが入るので、転動疲労寿命を改善するためには、この領域のみに着目すればよい。
【0012】
(b)高周波焼入れのような短時間焼入れの場合、数10〜数100μmの大きさで存在する偏析、いわゆるミクロ偏析が転動疲労寿命に大きく影響し、偏析が激しいと転動疲労寿命が低下する。
【0013】
(c)介在物の組成や硬さは、製鋼方法や化学成分によって変化する。介在物のアスペクト比と介在物の硬さとは相関関係があり、例えば、アスペクト比が小さい介在物は硬質であると判断できる。そこで、アスペクト比が小さい介在物の大きさおよび個数と転動疲労寿命との関係を調べたところ、極めてよい相関が得られた。
【0014】
(d)初析フェライト中のC濃度は極めて低いため、高周波焼入れのような短時間の焼入れの場合、初析フェライトがある大きさ以上になると、オーステナイト域に加熱している間にC濃度が平均含有量の値に達せず、その部分の焼入れ後の硬度が低くなって転動疲労寿命が大きく低下する。オーステナイト化したときの初析フェライトであった部分へのCの拡散は、周囲のパーライトであった部分から生じるため、初析フェライトの平均粒径ではなく、短径をある値以下にすればよい。
【0015】
(e)優れた転動疲労寿命を得るためには、高周波焼入れを施した部分の硬度の平均値が高いことは、当然必要であるが、上記(d)で説明した高周波焼入れ前の初析フェライトに起因すると考えられる局所的に軟質な領域があると、転動疲労寿命が大きく低下する。そのため微小領域の硬度のバラツキと転動疲労寿命とは密接な関係がある。
【0016】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記の▲1▼に示す成形部品および▲2▼に示す軸受け部品を要旨とする。
【0017】
▲1▼質量%で、C:0.5〜0.7%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Cr:0〜1.5%、V:0〜0.10%、S:0.002〜0.05%、Al:0.01〜0.04%、N:0.005〜0.012%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のTiが0.003%以下、Oが0.0015%以下、Pが0.020%以下である成形部品であって、表層領域において、初析フェライトの平均短径が8μm以下で、下記の(1)式で表されるA値が0.80以上であり、アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数が2個/mm2以下であることを特徴とする高周波焼入れ用成形部品。
【0018】
A=(MnMIN/MnAVE) …(1)
但し、(1)式中の各記号の意味は下記のとおりである。
MnMIN:表層領域におけるMn濃度の下限値(質量%)
MnAVE:Mn濃度の平均値(質量%)
▲2▼質量%で、C:0.5〜0.7%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Cr:0〜1.5%、V:0〜0.10%、S:0.002〜0.05%、Al:0.01〜0.04%、N:0.005〜0.012%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のTiが0.003%以下、Oが0.0015%以下、Pが0.020%以下である成形部品の全体または一部に高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施した軸受け部品であって、表層領域において、下記の(1)式で表されるA値が0.80以上で、アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数が2個/mm2以下であり、高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施した部分の表層領域において、圧痕の対角線長さが15μm以下となる荷重で測定したときの平均ビッカース硬度が650以上で、且つビッカース硬度の標準偏差のσ値が10以下であることを特徴とする軸受け部品。
【0019】
A=(MnMIN/MnAVE) …(1)
但し、(1)式中の各記号の意味は下記のとおりである。
MnMIN:表層領域におけるMn濃度の下限値(質量%)
MnAVE:Mn濃度の平均値(質量%)
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」、「母材」は高周波焼入れが施されない部分、「焼入れ部」は高周波焼入れが施される部分をそれぞれ意味する。
【0021】
1.化学組成
C:0.5〜0.7%
Cは、母材および焼入れ部の機械的性質を向上させるのに有効な元素である。しかし、Cの含有量が0.5%未満では、焼入れ部のビッカース硬度が650に達せず、他の条件を満足していても、所望の転動疲労寿命(後述の実施例における転動疲労試験で2.0×107以上の転動疲労寿命。以下、同じ。)が得られない。一方、Cの含有量が0.7%を超えると、母材の靭性が著しく低下する。従って、Cの含有量を0.5〜0.7%とした。
【0022】
Si:0.1〜1.5%
Siは、母材の引張強さ、回転曲げ疲労強度および焼入れ部の転動疲労寿命を高めるのに有効な元素であるとともに、脱酸剤として必要な元素でもある。また、鋼の切削性を向上させる元素でもある。しかし、その含有量が0.1%未満ではこれらの効果が得られない。一方、Siの含有量が1.5%を超えると、その効果が飽和し、むしろ母材の靭性が低下する。従って、Siの含有量を0.1〜1.5%とした。
【0023】
Mn:0.2〜1.5%
Mnは、母材の引張強さを高め、焼入れ性を向上させると同時に、Sによる熱間脆性の防止に必要な元素である。これらの効果を発揮させるためにはMnを0.2%以上含有させる必要がある。しかし、その含有量が1.5%を超えるとMnの偏析が顕著になり、転動疲労寿命が著しく低下する。なお、均質化熱処理を行えば転動疲労寿命は向上するが、コストアップにつながる。従って、Mn含有量を0.2〜1.5%とした。
【0024】
Cr:0〜1.5%
Crは添加しなくてもよい。添加すれば、鋼の焼入れ性を向上させると同時に、転動疲労寿命を向上させる。この効果を確実に得るためには、0.3%以上含有することが望ましい。しかし、Crは炭化物に濃化しやすい元素であり、炭化物を安定化する。このため、その含有量が1.5%を超えると、焼入れ部に炭化物が多量に残存して鋼の硬度が低下し、転動疲労寿命が低下する。従って、Cr含有量を0〜1.5%とした。
【0025】
V:0〜0.10%
Vも添加しなくてもよい。添加すれば、母材中に微細な窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物として析出し、母材の引張強さ、回転曲げ疲労強度を向上させる。この効果を確実に得るためには、0.02%以上含有することが望ましい。一方、Vの含有量が0.10%を超えると、粗大な窒化物、炭化物、あるいは炭窒化物が残存し、焼入れ部で所望の転動疲労寿命が得られなくなる。従って、V含有量を0〜0.10%とした。
S:0.002〜0.05%
SはMnと結合してMnSを形成し、切削加工性を向上させる元素であるが、その含有量が0.002%未満ではこの効果が得られない。切削加工性を更に向上させるためには、0.02%を超えて含有させることが好ましい。一方、その含有量が0.05%を超えると、粗大なMnSを形成しやすくなり転動疲労寿命が著しく低下する。粗大なMnSは焼入れ部の転動疲労寿命を低下させる傾向があるからである。より長い転動疲労寿命である3.0×107以上を得るためには、その含有量を0.015%以下にすることが好ましい。従って、Sの含有量を0.002〜0.05%とした。切削性改善のためには、その含有量を0.02%を超え0.05%以下とすることが好ましく、転動疲労寿命の向上の観点からは、0.002〜0.015%とすることが好ましい。
Al:0.01〜0.04%
Alは脱酸作用を有するとともに、Nと結合してAlNを形成しやすく、焼入れ部の結晶粒微細化に有効である。この効果を得るためには、Alは0.01%以上含有されている必要がある。しかし、Alは硬質でアスペクト比が小さな非金属系介在物を形成するため、その含有量が0.04%を超えると、粗大な非金属系介在物を形成して転動疲労寿命が著しく低下する。従って、Alの含有量を0.01〜0.04%とした。
N:0.005〜0.012%
Nは、Ti、AlおよびVと結合して窒化物を形成しやすく、これらの窒化物の中でAlNは焼入れ部の結晶粒を微細化し、VNは母材の引張強さを高め、回転曲げ疲労強度を向上させる。これらの効果を得るためには、N含有量を0.005%以上とする必要がある。しかし、その含有量が0.012%を超えると、粗大なTiNが形成されて焼入れ部の転動疲労寿命が低下する。従って、Nの含有量を0.005〜0.012%とした。
本発明の成形部品および軸受け部品は、上記の化学組成を有し、残部はFeおよび不純物からなるが、不純物元素としてのTi、O(酸素)およびPの含有量については下記のとおりに制限する。
Ti:0.003%以下
Tiは、Nと結合してTiNを形成し、転動疲労寿命を低下させる。特に、その含有量が0.003%を超えると、転動疲労寿命の低下が著しくなる。従って、Tiの含有量を0.003%以下で、できるだけ少なくすることが望ましい。
O:0.0015%以下
Oは、酸化物系介在物を形成し、その多くはアスペクト比が3以下のものであるため、転動疲労寿命を低下させるため、その含有量はできるだけ少ないことが望ましい。特に、その含有量が0.0015%を超えると転動疲労寿命の低下が著しくなるので、Oの含有量を0.0015%以下とした。
【0026】
P:0.020%以下
Pは粒界偏析して粒界を脆化させやすい元素であり、その含有量が0.020%を超えると、母材の靭性が大きく低下し、所望のシャルピー衝撃試験での衝撃値(後述の実施例における衝撃試験で、30J/cm2以上の衝撃値)が得られなくなる。従って、P含有量を0.020%以下とした。
【0027】
2.表層領域の偏析
本発明の成形部品および軸受け部品は、下記の(1)式で表されるA値が0.80以上であることが必要である。但し、(1)式中のMnMINは表層領域におけるMn濃度の下限値(質量%)、MnAVEはMn濃度の平均値(質量%)を意味する。
【0028】
A=(MnMIN/MnAVE) …(1)
なお「表層領域」とは、成形部品では表面から深さが2mmまでの領域、軸受け部品では、表面から深さが1mmまでの領域と定義する。
【0029】
ここで、偏析しやすい元素としては、C、Mn、Cr等の元素が知られている。しかし、Cは、軽元素であり、一般的な測定機器であるEPMAでは測定精度が低くなりやすく、Crは、本発明の成形部品および軸受け部品には添加されない場合もある。このため、本発明者らは、Mnの表層領域における濃度に着目して下記の実験を行った。
【0030】
表1に示す鋼EおよびHを電気炉でそれぞれ3ton溶解して鋳造し、インゴットままで放冷した。なお溶解の際、不純物元素が十分低減するように原料の選定、精錬に十分注意を払った。比較的大型のインゴットを放冷したため、50〜200kgのインゴットを放冷したものや、連続鋳造で凝固を制御したものに較べ、偏析は激しいと考えられる。このインゴットを分塊圧延により155mm角のビレットにした後、熱間圧延により直径40mmの棒鋼にした。
【0031】
【表1】
【0032】
この棒鋼を6ヶに分割して、均質化熱処理の条件を変えることにより、偏析レベルの異なる棒鋼を作製した。この棒鋼を、加熱温度1150℃、仕上温度1050℃の条件の熱間鍛造後、放冷することにより直径13mmとした。その後、切削加工によって直径12mm、長さ22mmの試験片(以下、この項において「φ12mm成形試験片」と呼ぶ)を作製した。加熱温度、鍛造仕上がり温度共に、一般的な鍛造条件より低温のため、通常より組織は微細と考えられる。φ12mm成形試験片に最高加熱温度950〜1000℃、硬化深さ約2mmとなる条件で高周波焼入れを施し、さらに通常の熱処理炉を用いて160℃で1時間の焼戻しを施した後、表面を鏡面に研磨して試験片(以下、この項において「φ12mm焼入れ試験片」と呼ぶ)を作製した。
【0033】
φ12mm成形試験片およびφ12mm焼入れ試験片について、表層領域を横断面方向からMnについてEPMAによる線分析を行った。この分析を3回実施し、最も低かったMn濃度(以下、MnMINと呼ぶ)と最も高かったMn濃度(以下、MnMAXと呼ぶ)を記録した。このとき、MnMAXについてはMnSに起因すると考えられるものは除いた。また転動疲労試験は、φ12mm焼入れ試験片を用いて実施した。均質化処理条件、転動疲労寿命および表層領域のMn濃度を表2に示す。なお、表中の「母材」はφ12mm成型試験片の試験結果を示し、「焼入れ部」はφ12mm焼入れ試験片の試験結果を示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2に示すように、同じ鋼の間では、Mn偏析が低減すると転動疲労寿命が改善されるが、異なる鋼の間では、Mn濃度の絶対値と転動疲労寿命は相関がないことが分かる。これらの関係を図を使って説明する。
【0036】
図1は、「(表層領域のMn濃度上限値)/(Mn濃度平均値)」、即ち、「MnMAX/MnAVE」と転動疲労寿命との関係を示す図であり、図2は、「(表層領域のMn濃度下限値)/(Mn濃度平均値)」、即ち、「MnMIN/MnAVE」と転動疲労寿命との関係を示す図である。
【0037】
図1に示す例でも「MnMAX/MnAVE」が小さくなれば、転動疲労寿命が向上し、一応の相関関係が認められるが、図2に示す例の方がその相関関係は明瞭である。このため、Mnの偏析としては「MnMIN/MnAVE」に着目することとした。図2に示すように、「MnMIN/MnAVE」が0.80以上であれば、常に目標とする転動疲労寿命が得られる。従って、本発明の成形部品および軸受け部品は、「MnMIN/MnAVE」、即ち、上記の(1)式で表されるA値が0.80以上であることが必要である。
【0038】
3.介在物の形態、大きさおよび個数
本発明の成形部品および軸受け部品は、表層領域において、アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数が2個/mm2以下であることが必要である。本発明者らは、介在物の形態、大きさおよび個数に着目して下記の実験を行った。
【0039】
上記の表1に示した鋼Uおよび鋼a〜fを真空溶解にて180kg溶解して鋳造し、鋼Tを電気炉で3ton溶解して鋳造した。また、鋼Uは鋳型に耐火物が損傷しているものを用い、意図的に耐火物が混入するようにした。鋼Uおよび鋼a〜fのインゴットについては熱間鍛造により直径40mmの棒鋼にし、鋼Tについては分塊圧延により155mm角のビレットにした後、通常の熱間圧延により直径40mmの棒鋼にした後、この棒鋼に1250℃での10時間均質化熱処理を施して偏析を十分に低減した。
【0040】
続いて、この棒鋼を、加熱温度1150℃、仕上温度1050℃の条件の熱間鍛造後、放冷することより直径13mmとした後、切削加工によって直径12mm、長さ22mmの試験片(以下、この項において「φ12mm成形試験片」と呼ぶ)を作製した。加熱温度、仕上温度共に、一般的な鍛造条件より低温のため、通常より組織は微細と考えられる。この試験片に最高加熱温度950〜1000℃、硬化深さ約2mmとなる条件で高周波焼入れを施し、さらに通常の熱処理炉を用いて160℃で1時間の焼戻しを施した後、表面を鏡面に研磨して試験片(以下、この項において「φ12mm焼入れ試験片」と呼ぶ)を作製した。
【0041】
φ12mm焼入れ試験片を用いて転動疲労試験を実施し、寿命に到った試験片の破壊起点を詳細に観察し、表層領域に介在物が存在していた試験片については介在物のアスペクト比も測定した。この結果を図3に示す。
【0042】
図3は、破壊起点となった介在物の短径と長径との関係を示す図である。図3に示すように、破壊起点となった介在物は、いずれもアスペクト比が3以下であり、短径が10μm以上になっていた。また、破壊起点となった介在物の種類をEPMAによって同定したことろ、TiN、VN、Al2O3、SiO2の介在物が観察され、MnSの介在物は破壊起点とならなかった。この理由は、MnSが他の介在物に較べて軟質であるためと考えられる。
【0043】
長径および短径は、図4に示すように、途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線を長径(L1)と定義し、それと垂直な直線で粒内に最も長い引ける直線を短径(L2)と定義した。アスペクト比はL1/L2と定義した。
【0044】
φ12mm成形試験片およびφ12mm焼入れ試験片について、先に定義した表層領域を縦断面方向から光学顕微鏡によって観察した。観察は倍率200倍で10視野行い、各視野中で介在物のアスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるものの個数を測定した。なお、観察した面積は10視野の合計で3.0mm2である。また、MnSについては、光学顕微鏡で観察した際の介在物の濃淡差から他の介在物と区別して、測定から除外した。各試験片のアスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数および転動疲労寿命を表3に示す。なお、表中の「母材」はφ12mm成型試験片の試験結果を示し、「焼入れ部」はφ12mm焼入れ試験片の試験結果を示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3に示すように、アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数が2以下の場合に、目標とする転動疲労寿命を達成した。従って、成形部品および軸受け部品の「表層領域におけるアスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物」の個数を2個/mm2以下とした。
【0047】
なお、介在物の形状と大きさは、介在物の組成、凝固速度、凝固偏析などの影響を受け、更に製鋼の設備の影響も受ける。このため、上記のMnS以外の介在物の条件を満足するように製造条件を設定することは難しいが、例えば、以下の条件を満たように調整すれば、多くの場合、目標とする介在物の形状と大きさが得られる。
【0048】
(1)鋼中の含有量をAlは0.04%以下、Oは0.0015%以下、Tiは0.003%以下、Nは0.012%以下にすること。
【0049】
(2)取鍋、タンディッシュ等の耐火物の溶損や鋳造時のスラグ及びパウダーの巻き込みを防止すること。
【0050】
(3)鋳造を小断面のインゴット又はブルームで行うこと。実施例などに用いた180kgのインゴットの場合は、上記の(1)および(2)の条件を満たしていれば、目標とする介在物の形状と大きさを得られた。連続鋳造で例えば400mm角といった大断面のブルームを製造する場合には、溶鋼の電磁攪拌や凝固末期軽圧下を適用すればよい。
【0051】
4.初析フェライトの大きさ
本発明の成形部品の表層領域における初析フェライトの平均短径は8μm以下であることが必要である。これは、オーステナイト化したときの初析フェライトであった部分へのC拡散は周囲のパーライトであった部分から生じるため、初析フェライトの平均粒径ではなく、短径をある値以下にすれば、高周波焼入れのような短時間加熱からの焼入れでも、初析フェライトであった部分も十分硬化して転動疲労寿命が低下しないことから定めたものである。以下、その実験方法と結果を示す。
【0052】
表1に示す鋼EおよびHを電気炉で3ton溶解して鋳造し、これらのインゴットを分塊圧延により155mm角のビレットにした後、通常の熱間圧延により直径40mmの棒鋼にした。その後、この棒鋼に1250℃での6時間均質化熱処理を施して偏析を十分低減した。
【0053】
引き続き、表4に示す条件で鍛造後、放冷することにより直径13mmにした後、切削加工によって直径12mm、長さ22mmの試験片(以下、この項において「φ12mm成形試験片」と呼ぶ)を作製した。この試験片に最高加熱温度950〜1000℃、硬化深さ約2mmとなる条件で高周波焼入れを施し、さらに通常の熱処理炉を用いて160℃で1時間の焼戻しを施した後、表面を鏡面に研磨して試験片(以下、この項において「φ12mm焼入れ試験片」と呼ぶ)を作製した。
【0054】
φ12mm成形試験片の横断面(即ち、長さ方向に直角な切断面)を鏡面研磨した後、ナイタールで腐食し、光学顕微鏡を用いて倍率400倍で表層領域を各20視野撮影し、各初析フェライト粒の短径、長径を測定し、その平均値を求めた。なお観察した面積は20視野は合計で0.75mm2である。また、転動疲労試験は、φ12mm焼入れ試験片を用いて実施した。
【0055】
図5は、初析フェライトの平均長径または平均短径と転動疲労寿命との関係を示す図である。図5に示すように、初析フェライトの平均長径と転動疲労寿命の間には明確な相関は認められないが、初析フェライトの平均短径と転動疲労寿命の間には明確な相関があり、平均短径が8μmの場合、常に目標とする転動疲労寿命に達していた。
【0056】
なお、初析フェライトの大きさは、化学組成(特に、C含有量)、加熱温度、加工温度、冷却速度などの影響を受けるため、初析フェライトの平均短径を8μm以下にする製造条件を設定することは難しいが、例えば、鍛造後の形状が直径10〜50mmの棒鋼の場合、以下の条件を満たように調整すれば、目標とする初析フェライトの平均短径が得られることが多い。
【0057】
(1)C含有量が0.60〜0.70%の場合は、加熱温度を1250〜850℃、加工温度を1200〜800℃として鍛造した後、放冷すること。
【0058】
(2)C含有量が0.55〜0.60%の場合は、加熱温度を1250〜1050℃、加工温度を1150〜800℃として鍛造した後、放冷すること。
【0059】
(3)C含有量が0.50〜0.55%の場合は、加熱温度を1200〜1050℃、加工温度を1150〜800℃として鍛造した後、放冷すること。
【0060】
5.ビッカース硬度の平均値および標準偏差
本発明の軸受け部品は、高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施した部分の表層領域において、圧痕の対角線長さが15μm以下となる荷重で測定したときの平均ビッカース硬度が650以上で、且つビッカース硬度の標準偏差のσ値が10以下であることが必要である。
【0061】
上記4で説明したφ12mm焼入れ試験片の表層領域を横断面方向からビッカース硬度を測定した。微小な領域の硬度を測定したいため、圧痕の対角線長さが15μm以下となる荷重で、各試料について50ヶ所測定した。なお、圧痕の対角線長さの下限については特に規定しないが、硬度を精度よく測定するためには、圧痕の対角線長さが5μm以上であることのが好ましい。熱間鍛造の条件および試験結果を表4に示す。なお、表中の「母材」はφ12mm成型試験片の試験結果を示し、「焼入れ部」はφ12mm焼入れ試験片の試験結果を示す。
【0062】
【表4】
【0063】
表4に示すように、ビッカース硬度の標準偏差が10を超える場合、目標とする転動疲労寿命を達しなかった。また後段の実施例の表6および8に示すように、平均のビッカース硬度が650未満の場合、目標とする転動疲労寿命に達しなかった。従って、高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施した部分の表層領域において、圧痕の対角線長さが15μm以下となる荷重で測定したときの平均ビッカース硬度を650以上で、且つビッカース硬度の標準偏差のσ値を10以下とした。
【0064】
なお、平均ビッカース硬度650以上を得るためには、C含有量を0.50%以上としてマルテンサイト組織にすればよく、標準偏差を10未満にするためには、初析フェライトの平均短径を8μm以下にするとよい。
【0065】
【実施例】
前掲の表1に示す化学組成を有する鋼A〜Uを溶解した。この内、鋼E、HおよびTは電気炉で3ton溶解して鋳造し、鋼A〜D、F、GおよびI〜Uは真空溶解にて180kg溶解して鋳造した。表1における鋼B、D〜F、H、J、L、TおよびUは、本発明で規定される化学組成を満足するを満足するものであり、鋼A、C、G、I、KおよびM〜Sは、成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れたものである。また、鋼Uは鋳型に耐火物が損傷しているものを用い、意図的に耐火物が混入するようにした。
【0066】
電気炉で3ton溶解して鋳造した鋼E、H、およびTはインゴットを分塊圧延により155mm角のビレットにした後、通常の熱間圧延により直径40mmの棒鋼にし、真空溶解にて180kg溶解して鋳造した鋼A〜D、F、GおよびI〜Uについては、通常の熱間鍛造により直径40mmの棒鋼にした。
【0067】
これらの棒鋼の一部については表5および7に示した条件で均質化熱処理を施し、これらを熱間鍛造後、放冷することにより直径30mmの棒鋼と直径13mmの棒鋼を作製した。この直径30mmの棒鋼からJIS 4号の引張試験片、JIS 3号の衝撃試験片および平行部が直径8mm、長さ25mm、コーナー部が25mmRの平滑回転曲げ疲労試験片(以下、単に「平滑回転曲げ疲労試験片」と呼ぶ)を作製した。また、直径13mmの棒鋼から切削加工によって直径12mm、長さ22mmの試験片(以下、この項において「φ12mm成形試験片」と呼ぶ)を作製した。この試験片に最高加熱温度950〜1000℃、硬化深さ約2mmとなる条件で高周波焼入れを施し、さらに通常の熱処理炉を用いて160℃で1時間の焼戻しを施した後、表面を鏡面に研磨して試験片(以下、この項において「φ12mm焼入れ試験片」と呼ぶ)を作製した。
【0068】
表層領域のMn濃度の下限値は、次の方法により測定した。φ12mm成形試験片については、試験片の横断面で表面から深さ2mmの範囲、およびφ12mm焼入れ試験片については、試験片の横断面で表面から深さ1mmの範囲で、通常のEPMAによる線分析で各3回測定し、Mnが最も低くなった濃度を求めた。
【0069】
初析フェライトの短径は、次の方法で測定した。φ12mm成形試験片の横断面(即ち、長さ方向に直角な切断面)を鏡面研磨した後、ナイタールで腐食し、光学顕微鏡を用いて倍率400倍で表層領域を各20視野撮影し、各初析フェライト粒の短径を測定し、その平均値を求めた。
【0070】
引張強さは、JIS 4号の試験片を用い、通常の方法により室温で引張試験を行い、各2回の引張強さの平均値を求めた。JIS規格で規定されているS55Cの一般的な値を上回る850MPa以上を合格、これ未満を不合格とした。
【0071】
衝撃値は、JIS 3号の試験片を用い、通常の方法により室温で衝撃試験を行い、各2回の衝撃値の平均値を求めた。衝撃値が30J/cm2以上を合格、これ未満を不合格とした。
【0072】
回転曲げ疲労強度は、平滑回転曲げ疲労試験片を用い、通常の方法により小野式回転曲げ疲労試験を行い、繰り返し数1.0×107回の応力を回転曲げ疲労強度とした。JIS規格で規定されているS55Cの一般的な値を上回る350MPa以上を合格、これ未満を不合格とした。
【0073】
高周波焼入れ・焼戻し部の平均ビッカース硬度およびその標準偏差は次の方法で測定した。φ12mm焼入れ試験片を用い、試験片の横断面で表層から1mmの深さの位置まで範囲で、荷重200gでランダムに50ヶ所のビッカース硬度を測定した。なお、標準偏差は下式から求めた。ここでHviは50ヶ所の内、i番目の測定箇所における硬度で、Hvmは50ヶ所測定した硬度平均値である。
【0074】
【数1】
転動疲労試験における転動疲労寿命は次の方法で測定した。
【0075】
試験機:円筒式ラジアル型転動疲労試験機
最大面圧:6200MPa
試験片回転数:46000回/分
試験片数:各12個
転動疲労寿命は、各条件に付き12個のφ12mm焼入れ試験片の各転動疲労寿命を縦軸に累積破損確率、横軸に転動疲労寿命をとったワイブル確率紙にプロットして、それに対する線形近似直線を引き、累積頻度破損確率が10%になる転動疲労寿命(以後L10寿命と称する)を求めた。L10寿命が2.0×107以上を合格、これ未満を不合格とした。
【0076】
アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数は次の方法で測定した。φ12mm成形試験片については、試験片の縦断面で表面から深さ2mmの範囲で、φ12mm焼入れ試験片については、試験片の縦断面で表面から深さ1mmの範囲で、倍率200倍で10視野観察し、通常の画像解析の手法を用いて、各視野中で介在物のアスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるもの個数を測定した。またMnSについては、光学顕微鏡で観察した際の、介在物の濃淡差から他の介在物と区別して、測定から除外した。
【0077】
これらの製造条件および測定結果を表5〜8に示す。なお、表中の「母材」はφ12mm成型試験片の試験結果を示し、「焼入れ部」はφ12mm焼入れ試験片の試験結果を示す。
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
表5〜8に示すように、化学組成、脱炭層厚さ、A値、介在物個数、初析フェライトの短径、ならびに焼入れ後の平均硬度および標準偏差のいずれか1つ以上の条件が本発明で規定される範囲を外れる比較例No.1、2、6〜8、14〜17、20、22、25、26、30〜34、36、38、39、43〜45および48〜65は、転動疲労寿命が2.0×107未満と短いか、衝撃値が目標値に達せず、母材の靱性が劣化した。
一方、本発明例No.3〜5、9〜13、18、19、21、23、24、27〜29、35、37、40〜42、46および47は、転動疲労寿命が2.0×107回以上で、且つ非高周波焼入れ部の衝撃値が30J/cm2以上で、転動疲労寿命、および靭性が良好であった。また、本発明例はいずれも、引張強さ、回転曲げ疲労強度も通常以上である。
【0083】
【発明の効果】
本発明の成形部品および軸受け部品は、焼入れしない部分の特性は通常並み以上を確保しつつ、高周波焼入れ、さらに必要に応じて焼戻しを施した部分の転動疲労寿命が安定して極めて優れているので、自動車の部品であるハブユニット、等速ジョイントなどに用いられる鋼材および部品に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】「MnMAX/MnAVE」と転動疲労寿命との関係を示す図である。
【図2】「MnMIN/MnAVE」と転動疲労寿命との関係を示す図である。
【図3】破壊起点となった介在物の短径と長径との関係を示す図である。
【図4】介在物の長径および短径の定義を示す図である。
【図5】初析フェライトの平均長径または平均短径と転動疲労寿命との関係を示す図である。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.5〜0.7%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Cr:0〜1.5%、V:0〜0.10%、S:0.002〜0.05%、Al:0.01〜0.04%、N:0.005〜0.012%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のTiが0.003%以下、Oが0.0015%以下、Pが0.020%以下である成形部品であって、表層領域において、初析フェライトの平均短径が8μm以下で、下記の(1)式で表されるA値が0.80以上であり、アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数が2個/mm2以下であることを特徴とする高周波焼入れ用成形部品。
A=(MnMIN/MnAVE) …(1)
但し、(1)式中の各記号の意味は下記のとおりである。
MnMIN:表層領域におけるMn濃度の下限値(質量%)
MnAVE:Mn濃度の平均値(質量%) - 質量%で、C:0.5〜0.7%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Cr:0〜1.5%、V:0〜0.10%、S:0.002〜0.05%、Al:0.01〜0.04%、N:0.005〜0.012%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のTiが0.003%以下、Oが0.0015%以下、Pが0.020%以下である成形部品の全体または一部に高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施した軸受け部品であって、表層領域において、下記の(1)式で表されるA値が0.80以上で、アスペクト比が3以下で、且つ短径が10μm以上であるMnS以外の介在物の個数が2個/mm2以下であり、高周波焼入れ、または高周波焼入れおよび焼戻しを施した部分の表層領域において、圧痕の対角線長さが15μm以下となる荷重で測定したときの平均ビッカース硬度が650以上で、且つビッカース硬度の標準偏差のσ値が10以下であることを特徴とする軸受け部品。
A=(MnMIN/MnAVE) …(1)
但し、(1)式中の各記号の意味は下記のとおりである。
MnMIN:表層領域におけるMn濃度の下限値(質量%)
MnAVE:Mn濃度の平均値(質量%)
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