JP6955548B2 - バルーンコーティング方法 - Google Patents

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Description

本発明は、バルーンカテーテルのバルーンの表面に薬剤をコーティングする方法に関する。
生体管腔内に生じた病変部(狭窄部)改善のため、バルーンカテーテルが広く用いられている。バルーンカテーテルは、通常、長尺なカテーテルシャフトと、このカテーテルシャフトの先端側に設けられて径方向に拡張可能なバルーンとを備えている。収縮されているバルーンを、細い生体管腔を経由して体内の目的場所まで到達させた後に拡張させることで、病変部を押し広げることができる。
一方、病変部をバルーンにより強制的に押し広げると、内皮細胞が過剰に増殖して病変部に新たな狭窄(再狭窄)を発症する場合がある。このため、最近では、バルーンの表面に狭窄を抑制するための薬剤をコーティングした薬剤溶出性バルーン(Drug Eluting Balloon;DEB)が用いられている。薬剤溶出性バルーンは、拡張することで表面にコーティングされている薬剤を病変部に放出し、薬剤を生体組織へ移行させることができ、これにより、再狭窄を抑制することができる。
バルーンに薬剤を含むコート層を形成する方法として、例えば、スプレー法、ドロップ法、糸引き法などがある。スプレー法は、薬剤を含むコーティング液を、バルーンに対して接触しないノズルから霧状に吹き付けた後、コーティング液を乾燥させて、バルーンの表面にコート層を形成する方法である。ドロップ法は、コーティング液を、バルーンに対して接触しないノズルから滴下した後、コーティング液を乾燥させて、バルーンの表面にコート層を形成する方法である。糸引き法は、コーティング液を、バルーンに接触する糸等を介してバルーンの表面上に供給した後、コーティング液を乾燥させて、バルーンの表面にコート層を形成する方法である。
上述した種々の方法によってバルーンにコーティング液を塗布する際には、バルーンを回転させつつ、コーティング液を供給するノズルや糸等の器具をバルーンの軸方向へ移動させることで、バルーンの表面の全体にコーティング液を塗布することができる(例えば特許文献1を参照)。
特許第4906926号明細書
バルーンに対する薬剤のコーティングにおいては、薬剤の結晶を所望の種類、サイズ、形状とするために、コーティング液の溶媒の種類、比率、量などの処方や、コーティング方法、温度や流量等のコーティングパラメータを正確にコントロールすることが必要である。
実際のコーティングにおいては、製造室の温度、気流などの環境における変動因子がある。また、作業員の手技のばらつきや、コーティング液やバルーンの個体差などの要因もあるため、結晶の形成過程でのばらつきが生じ、目的とする結晶を均一に形成できないことがあった。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、外的要因の影響を受けることなく、均一な結晶をバルーンの表面に形成するバルーンコーティング方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明に係るバルーンコーティング方法は、シャフトの先端部にバルーンを有するカテーテルにおける前記バルーンの表面にコート層を形成するバルーンコーティング方法であって、
前記カテーテルを前記シャフトの軸心を中心に回転させつつ、前記バルーンの表面に対し第1の供給部から薬剤を含むコーティング液を供給して塗布するステップと、
前記カテーテルの回転を維持したまま、前記コーティング液が乾燥する前に、当該コーティング液が塗布された前記バルーンの表面に対し、第2の供給部から結晶誘発剤を供給して塗布し、結晶化を促すステップと、
を有し、
前記第1の供給部と前記第2の供給部は、前記バルーンの軸方向に所定間隔で離隔し、前記第1の供給部が先行して並行移動しつつ、前記バルーンの表面に対して液を塗布する。
上記のように構成したバルーンコーティング方法は、コーティング液が塗布されてから一定の時間後に結晶誘発剤が添加されるので、バルーンの表面全域において結晶の形成速度を一定にすることができる。このため、外的要因に影響されることなく、結晶化を一定の条件で進行させることができる。これにより、結晶形状のばらつきを抑え、バルーンの表面に一定の形状及び大きさの結晶を安定的に形成することができる。
本発明のバルーンコーティング方法は、前記バルーンの表面に対し前記結晶誘発剤を塗布して薬剤の結晶を生成した後、前記コーティング液の溶媒及び結晶誘発剤を揮発させるステップを有する。このため、結晶誘発剤による結晶の生成後に溶媒及び結晶誘発剤が揮発するので、溶媒及び結晶誘発剤の揮発の条件によらず薬剤の結晶化を行うことができ、外的要因によらずバルーンの表面に均一に分散された薬剤結晶を形成することができる。
前記第1の供給部と前記第2の供給部は、前記バルーンの軸方向に所定間隔で離隔し、前記第1の供給部が先行して並行移動しつつ、前記バルーンの表面に対して液を塗布する。これにより、コーティング液が塗布されてから結晶誘発剤を添加するまでの時間をバルーンの全域で一定にすることができる。
前記第1の供給部と前記第2の供給部との前記バルーンの軸方向における距離を調整した上で、前記第1の供給部と前記第2の供給部から前記バルーンの表面に対して液を塗布するようにすれば、コーティング液の塗布から結晶誘発剤の塗布までの時間を変更できるので、バルーンの表面に形成される薬剤の結晶の形状及び大きさを調整することができる。
前記結晶誘発剤は、前記薬剤に対する貧溶媒である。これにより、コーティング液に結晶誘発剤を添加することで、薬剤の結晶形成が促される。
前記コーティング液に含まれる薬剤は、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、またはエベロリムスのいずれかであるようにすれば、血管内の狭窄部の再狭窄を良好に抑制できる。
前記結晶誘発剤は、水、ヘプタンのいずれかまたはこれらの混合物であるようにすれば、結晶誘発剤に対するパクリタキセルの溶解性が低いので、効果的にパクリタキセルの結晶形成を促進できる。
前記コーティング液に含まれる溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミドのいずれかであり、前記結晶誘発剤は、アセトニトリル、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン、水のいずれかである。これにより、結晶誘発剤を、コーティング液に含まれる溶媒と混和性を有し、コーティング液に含まれる溶媒、またはその混合液よりも水不溶性薬剤の溶解度が小さい、あるいは溶解性を有しないものとすることができる。
前記コーティング液に含まれる溶媒は、アセトニトリル、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフランのいずれかであり、前記結晶誘発剤は、水、ヘプタンのいずれかである。これにより、結晶誘発剤を、コーティング液に含まれる溶媒と混和性を有し、コーティング液に含まれる溶媒、またはその混合液よりも水不溶性薬剤の溶解度が小さい、あるいは溶解性を有しないものとすることができる。
バルーンカテーテルを示す正面図である。 バルーンカテーテルの先端部の断面図である。 バルーンの外表面の概略断面図である。 バルーンコーティング装置の全体構成図である。 バルーンに対し第1の供給部からの液の塗布を開始した状態のバルーン付近の拡大図である。 バルーンに対し第1の供給部及び第2の供給部からの液を塗布している状態のバルーン付近の拡大図である。 バルーンの折り畳み前状態(図7(a))、バルーンに羽根部を形成した状態(図7(b))、バルーンを折り畳んだ状態(図7(c))の断面図である。 バルーンカテーテルにより血管の狭窄部を押し広げた状態を示す断面図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
まず、カテーテル1の構造を説明する。図1,2に示すように、カテーテル1は、長尺なシャフト10と、シャフト10の先端部に設けられるバルーン11と、バルーン11の外表面に設けられる薬剤を含むコート層30と、シャフト10の基端に固着されたハブ12とを有している。
シャフト10は、先端および基端が開口した管体である外管20と、外管20の内部に配置される管体である内管21とを備えている。内管21は、外管20の中空内部に納められており、シャフト10は、先端部において二重管構造となっている。内管21の中空内部は、ガイドワイヤを挿通させるガイドワイヤルーメン23である。また、外管20の中空内部であって、内管21の外側には、バルーン11の拡張用流体を流通させる拡張ルーメン22が形成される。内管21は、開口部24において外部に開口している。内管21は、外管20の先端よりもさらに先端側まで突出している。
バルーン11は、基端側端部が外管20の先端部に固定され、先端側端部が内管21の先端部に固定されている。これにより、バルーン11の内部が拡張ルーメン22と連通している。拡張ルーメン22を介してバルーン11に拡張用流体を注入することで、バルーン11を拡張させることができる。拡張用流体は気体でも液体でもよく、例えばヘリウムガス、COガス、Oガス、Nガス、Arガス等の気体や、生理食塩水、造影剤等の液体を用いることができる。
バルーン11の軸心方向における中央部には、拡張させた際に外径が等しい円筒状のストレート部11a(拡張部)が形成され、ストレート部11aの軸心方向の両側に、外径が徐々に変化するテーパ部11bが形成される。そして、ストレート部11aの外表面の全体に、薬剤を含むコート層30が形成される。なお、バルーン11においてコート層30を形成する範囲は、ストレート部11aのみに限定されず、ストレート部11aに加えてテーパ部11bの少なくとも一部が含まれてもよく、または、ストレート部11aの一部のみであってもよい。
ハブ12は、外管20の拡張ルーメン22と連通して拡張用流体を流入出させるポートとして機能する基端開口部40が形成されている。
バルーン11の軸心方向の長さは特に限定されないが、好ましくは5〜500mm、より好ましくは10〜300mm、さらに好ましくは20〜200mmである。
バルーン11の拡張時の外径は、特に限定されないが、好ましくは1〜10mm、より好ましくは2〜8mmである。
バルーン11のコート層30が形成される前の外表面は、平滑であり、非多孔質である。バルーン11のコート層30が形成される前の外表面は、膜を貫通しない微小な孔があってもよい。または、バルーン11のコート層30が形成される前の外表面は、平滑であって非多孔質である範囲と、膜を貫通しない微小な孔がある範囲の両方を備えてもよい。微小な孔の大きさは、例えば、直径が0.1〜5μm、深さが0.1〜10μmであり、1つの結晶に対して、1つまたは複数の孔を有してもよい。また、微小な孔の大きさは、例えば、直径が5〜500μm、深さが0.1〜50μmであり、1つの孔に対して、1つまたは複数の結晶を有してもよい。
バルーン11は、ある程度の柔軟性を有するとともに、血管や組織等に到達した際に拡張されて、その外表面に有するコート層30から薬剤を放出できるようにある程度の硬度を有するものが好ましい。具体的には、バルーン11は、金属や、樹脂で構成されるが、コート層30が設けられるバルーン11の少なくとも外表面は、樹脂で構成されていることが好ましい。バルーン11の少なくとも外表面の構成材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ナイロンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。そのなかでも、好適にはポリアミド類が挙げられる。すなわち、薬剤をコートするバルーン11の外表面の少なくとも一部がポリアミド類である。ポリアミド類としては、アミド結合を有する重合体であれば特に制限されないが、例えば、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカノラクタム(ナイロン11)、ポリドデカノラクタム(ナイロン12)などの単独重合体、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)などの共重合体、アジピン酸とメタキシレンジアミンとの共重合体、またはヘキサメチレンジアミンとm,p−フタル酸との共重合体などの芳香族ポリアミドなどが挙げられる。さらに、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などをハードセグメントとし、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、または脂肪族ポリエステルなどをソフトセグメントとするブロック共重合体であるポリアミドエラストマーも、バルーン11の材料として用いられる。上記ポリアミド類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、バルーン11はポリアミドの滑らかな表面を有することが好ましい。
バルーン11は、その外表面上に、後述する方法によって、直接またはプライマー層等の前処理層を介してコート層30が形成される。コート層30は、図3に示すように、バルーン11の外表面に層状に配置される水溶性低分子化合物を含む添加剤110(賦形剤)と、独立した長軸を有して延在する水不溶性の薬剤結晶111とを有している。薬剤結晶111の端部は、バルーン11の外表面と直接接触してもよいが、直接接触せずに、薬剤結晶111の端部とバルーン11の外表面との間に添加剤110が存在してもよい。薬剤結晶111の端部が添加剤110の層の表面に位置して、薬剤結晶111が添加剤110から突出してもよい。複数の薬剤結晶111は、バルーン11の外表面に規則的に配置されてもよい。または、複数の薬剤結晶111は、バルーン11の外表面に不規則に配置されてもよい。
コート層30に含まれる薬剤量は、特に限定されないが、0.1μg/mm〜10μg/mm、好ましくは0.5μg/mm〜5μg/mmの密度で、より好ましくは0.5μg/mm〜3.5μg/mm、さらに好ましくは1.0μg/mm〜3μg/mmの密度で含まれる。コート層30の結晶の量は、特に限定されないが、好ましくは5〜500、000[crystal/(10μm)](10μm当たりの結晶の数)、より好ましくは50〜50、000[crystal/(10μm)]、さらに好ましくは500〜5、000[crystal/(10μm)]である。
薬剤結晶111は、各々独立した長軸を有する形態であってもよい。また、薬剤結晶111は、他の形態型であってもよい。複数の薬剤結晶111は、これらが組み合された状態で存在していてもよいし、隣接する複数の薬剤結晶111同士が異なる角度を形成した状態で接触して存在してもよい。複数の薬剤結晶111はバルーン表面上で空間(結晶を含まない空間)をおいて位置していてもよい。バルーン11の表面に、組み合された状態の複数の薬剤結晶111と、互いに離れて独立した複数の薬剤結晶111の両方が存在してもよい。複数の薬剤結晶111は、異なる長軸方向を有して円周状にブラシ状として配置されてもよい。各々の前記薬剤結晶111は独立して存在しており、ある長さを有し、その長さ部分の一端(基端)が、添加剤110またはバルーン11に固定されている。薬剤結晶111は隣接する薬剤結晶111と複合的な構造を形成せず、連結していない。前記結晶の長軸は、ほぼ直線状である。薬剤結晶111はその長軸が交わる基部が接する表面に対して所定の角度を形成している。
薬剤結晶111は、互いに接触せずに独立して立っていることが好ましい。薬剤結晶111の基部は、バルーン11の基材上で他の基部と接触していてもよい。または、薬剤結晶111の基部は、バルーン11の基材上で他の基部と接触せずに独立していてもよい。
薬剤結晶111は、中空である場合と、中実である場合がある。バルーン11の表面に、中空の薬剤結晶111と、中実の薬剤結晶111の両方が存在してもよい。薬剤結晶111は、中空である場合、少なくともその先端付近が中空である。薬剤結晶111の長軸に直角な(垂直な)面における薬剤結晶111の断面は中空を有する。当該中空を有する薬剤結晶111は長軸に直角な(垂直な)面における薬剤結晶111の断面が多角形である。当該多角形は、例えば3角形、4角形、5角形、6角形などである。したがって、薬剤結晶111は先端(または先端面)と基端(または基端面)とを有し、先端(または先端面)と基端(または基端面)との間の側面が複数のほぼ平面で構成された長尺多面体として形成される。この結晶形態型(中空長尺体結晶形態型)は基部が接する表面において、ある平面の全体または少なくとも一部を構成する。
長軸を有する薬剤結晶111の長軸方向の長さは5μm〜20μmが好ましく、9μm〜11μmがより好ましく、10μm前後であるのがさらに好ましい。長軸を有する薬剤結晶111の径は、0.01μm〜5μmであるのが好ましく、0.05μm〜4μmであるのがより好ましく、0.1μm〜3μmであるのがさらに好ましい。長軸を有する薬剤結晶111の長軸方向の長さと径の組み合わせの例として、長さが5μm〜20μmのときに径が0.01〜5μmである組み合わせ、長さが5〜20μmのときに径が0.05〜4μmである組み合わせ、長さが5〜20μmのときに径が0.1〜3μmである組み合わせが挙げられる。長軸を有する薬剤結晶111は、長軸方向に直線状であるが、曲線状に湾曲してもよい。バルーン11の表面に、直線状の薬剤結晶111と、曲線状の薬剤結晶111の両方が存在してもよい。
上述した長軸を有する結晶を有する結晶形態型は、バルーン11の外表面の薬剤結晶全体に対して50体積%以上、より好ましくは70体積%以上である。長軸を有する結晶粒子である薬剤結晶111は、バルーン11または添加剤110の外表面に対して寝ておらず立っているように形成される。添加剤110は、薬剤結晶111がある領域に存在し、薬剤結晶111がない領域にはなくてもよい。
添加剤110は、林立する複数の薬剤結晶111の間の空間に分配されて存在する。コート層30を構成する物質の割合は、水不溶性の薬剤結晶111の方が、添加剤110よりも大きい体積を占めることが好ましい。添加剤110は、マトリックスを形成しない。マトリックスとは、比較的高分子の物質(ポリマーなど)が連続して構成された層であり、網目状の三次元構造を形成し、その中に微細な空間が存在する。したがって、結晶を構成する水不溶性薬剤はマトリックス物質中に付着していない。結晶を構成する水不溶性薬剤は、マトリックス物質中に埋め込まれてもいない。なお、添加剤110は、マトリックスを形成してもよい。
添加剤110はバルーン11の外表面で溶媒に溶けた状態でコートされた後、乾燥して層として形成される。添加剤110はアモルファスである。添加剤110は、結晶粒子であってもよい。添加剤110は、アモルファスおよび結晶粒子の混合物として存在してもよい。図3の添加剤110は、結晶粒子及び/または粒子状アモルファスの状態である。または、添加剤110は、フィルム状アモルファスの状態であってもよい。添加剤110は、水不溶性薬剤を含んだ層として形成されている。または、添加剤110は、水不溶性薬剤を含まない独立した層として形成されてもよい。添加剤110の厚みは、0.1〜5μm、好ましくは0.3〜3μm、より好ましくは0.5〜2μmである。
長尺な結晶形態型の薬剤結晶111を含む層は、体内に送達する際に、毒性が低く、狭窄抑制効果が高い。中空長尺体結晶形態を含む水不溶性薬剤は、薬剤が組織に移行した時に結晶の一つの単位が小さくなるために組織への浸透性が良く、かつ、良好な溶解性を有するため、有効に作用して狭窄を抑制できる。また、薬剤が大きな塊として組織に残留することが少ないために毒性が低くなると考えられる。
また、長尺な結晶形態型の薬剤結晶111を含む層は、組織に移行する結晶の大きさ(長軸方向の長さ)が約10μmと小さい。そのために病変患部に均一に作用し、組織浸透性が高まる。さらに、移行する薬剤結晶111の寸法が小さいために過剰量の薬剤が、過剰時間、患部に留まることがなくなるために、毒性を発現することなく、高い狭窄抑制効果を示すことが可能であると考える。
バルーン11の外表面にコーティングされる薬剤は、非晶質(アモルファス)型を含んでもよい。薬剤結晶111や非晶質は、コート層30において規則性を有するように配置されてもよい。または、結晶や非晶質は、不規則に配置されてもよい。
次に、バルーン11にコート層30を形成するためのバルーンコーティング装置2について説明する。バルーンコーティング装置2により、バルーン11の表面に、コーティング液が塗布され、塗布されたコーティング液が乾燥することにより、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶が多数形成される。
次に、バルーン11にコート層30を形成するためのバルーンコーティング装置2について説明する。バルーンコーティング装置2は、バルーン11にコート層30を形成することができる。バルーンコーティング装置2は、図4に示すように、カテーテル1を回転させる回転機構50と、カテーテル1を支持する支持台70とを有する。バルーンコーティング装置2は、さらに、バルーン11の表面に薬剤を含むコーティング液を塗布するチューブ状の第1の供給部92と、結晶誘発剤を塗布するチューブ状の第2の供給部97とが設けられる塗布機構80と、第1の供給部92と第2の供給部97をバルーン11に対して移動させるための移動機構60と、バルーンコーティング装置2を制御する制御部100とを有する。
回転機構50は、カテーテル1のハブ12を保持し、内蔵されるモーター等の駆動源により、シャフト10の軸心を中心としてカテーテル1を回転させる。カテーテル1は、ガイドワイヤルーメン23内に芯材51が挿通されて保持されるとともに、芯材51によってコーティング液のガイドワイヤルーメン23内への流入が防止されている。また、カテーテル1は、拡張ルーメン22への流体の流通を操作するために、ハブ12の基端開口部40に、流路の開閉を操作可能な三方活栓が接続される。
支持台70は、シャフト10を内部に収容して回転可能に支持する管状の基端側支持部71と、芯材51を回転可能に支持する先端側支持部72とを備えている。なお、先端側支持部72は、可能であれば、芯材51ではなくシャフト10の先端部を回転可能に支持してもよい。
移動機構60は、バルーン11の軸心と平行な方向へ直線的に移動可能な移動台61と、第1の供給部92及び第2の供給部97がそれぞれ固定される第1のチューブ固定部62及び第2のチューブ固定部63とを備えている。移動台61は、内蔵されるモーター等の駆動源によって、直線的に移動可能である。移動台61が移動することで、第1の供給部92と第2の供給部97がシャフト10の軸心と平行な方向へ直線的に移動する。また、移動台61には、塗布機構80の第1の供給容器90及び第2の供給容器95などが載置されており、これらを軸心に沿う両方向へ直線的に移動させる。
塗布機構80は、バルーン11の表面に最初に塗布するコーティング液を供給し塗布するコーティング液塗布部81と、コーティング液の塗布後にバルーン11の表面に塗布される結晶誘発剤を供給し塗布する結晶誘発剤塗布部82とを有している。コーティング液塗布部81は、コーティング液を収容する第1の供給容器90と、任意の送液量でコーティング液を送液する第1の送液ポンプ91と、コーティング液をバルーン11に塗布する第1の供給部92とを備えている。結晶誘発剤塗布部82は、結晶誘発剤を収容する第2の供給容器95と、任意の送液量で結晶誘発剤を送液する第2の送液ポンプ96と、結晶誘発剤をバルーン11に塗布する第2の供給部97とを備えている。
第1の送液ポンプ91と第2の送液ポンプ96は、例えばシリンジポンプであり、制御部100によって制御される。第1の送液ポンプ91は、第1の供給容器90から吸引管93を介してコーティング液を吸引し、供給管94を介して第1の供給部92へコーティング液を任意の送液量で供給することができる。第2の送液ポンプ96は、第2の供給容器95から吸引管98を介して結晶誘発剤を吸引し、供給管99を介して第2の供給部97へ結晶誘発剤を任意の送液量で供給することができる。第1の送液ポンプ90と第2の送液ポンプ95は、移動台61に設置される。なお、第1の送液ポンプ90と第2の送液ポンプ95は、コーティング液や結晶誘発剤を送液可能であればシリンジポンプに限定されず、例えばチューブポンプや噴霧用の高圧ポンプであってもよい。
第1の供給部92は、供給管94と連通しており、第1の送液ポンプ91から供給管94を介して供給されるコーティング液を、バルーン11の表面へ吐出する。第1の供給部92は、円管状の部材である。第1の供給部92は、第1のチューブ固定部62に上端が固定されている。また、第1の供給部92は、第1のチューブ固定部62から鉛直方向下方へ延在し、下端に開口する第1の吐出口92aが形成されている。第2の供給部97は、供給管99と連通しており、第2の送液ポンプ96から供給管99を介して供給される結晶誘発剤を、バルーン11の表面へ吐出または噴霧する。第2の供給部97は、円管状の部材である。第2の供給部97は、第2のチューブ固定部63に上端が固定されている。また、第2の供給部97は、第2のチューブ固定部63から鉛直方向下方へ延在し、下端に開口する第2の吐出口あるいは噴霧口97aが形成されている。
第1の供給部92と第2の供給部97は、移動台61を移動させることで、移動台61に設置される第1の送液ポンプ91及び第2の送液ポンプ96と共に、カテーテル1の軸心方向に沿う両方向へ直線的に移動可能である。第1の供給部92と第2の供給部97は、バルーン11の軸方向において所定の間隔を有して離隔しており、移動台61による移動の際にもその間隔は維持される。
なお、第1の供給部92と第2の供給部97は、コーティング液や結晶誘発剤を供給可能であれば、円管状でなくてもよい。また、第1の供給部92と第2の供給部97は、吐出口あるいは噴霧口92a,97aからコーティング液や結晶誘発剤を吐出あるいは噴霧可能であれば、鉛直方向に延在していなくてもよい。
本実施形態において第1の供給部92と第2の供給部97は、バルーン11の表面に接触しないように配置される。第1の供給部92と第2の供給部97の材料は、柔軟あるいは硬質の様々な材料を用いることができる。バルーン11の表面における結晶化を促すために、第1の供給部92及び第2の供給部97について、バルーン11の表面に接触するように配置してもよい。この場合、第1の供給部92及び第2の供給部97の材料は、バルーン11への接触負担を低減し、かつバルーン11の回転に伴う接触位置の変化を撓みにより吸収できるように、柔軟な材料であることが好ましい。第1の供給部92及び第2の供給部97の構成材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素系樹脂等を適用できるが、可撓性を有して変形可能であれば、特に限定されない。また、第2の供給部97から結晶誘発剤を噴霧する場合においては、第2の供給部97の構成材料は、真鍮やステンレス等の金属あるいはポリプロピレンやポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の樹脂等を適用できる。
第1の供給部92と第2の供給部97の外径は、特に限定されないが、例えば0.1mm〜5.0mm、好ましくは0.15mm〜3.0mm、より好ましくは0.3mm〜2.5mmである。第1の供給部92と第2の供給部97の内径は、特に限定されないが、例えば0.05mm〜3.0mm、好ましくは0.1mm〜2.0mm、より好ましくは0.15mm〜1.5mmである。第1の供給部92と第2の供給部97の長さは、特に限定されないが、バルーン直径の5倍以内の長さであることがよく、例えば1.0mm〜50mm、好ましくは3mm〜40mm、より好ましくは5mm〜35mmである。また、第2の供給部97から結晶誘発剤を噴霧する場合においては、第2の供給部97の噴霧口径は、特に限定されないが、例えば0.1mm〜10.0mm、好ましくは0.1mm〜7.0mmである。噴霧角度は、特に限定されないが、例えば0°〜120°、より好ましくは0°〜90°である。
制御部100は、例えばコンピュータにより構成され、回転機構50、移動機構60及び塗布機構80を統括的に制御する。したがって、制御部100は、バルーン11の回転速度、第1の供給部92と第2の供給部97のバルーン11に対する軸心方向への移動速度、第1の供給部92と第2の供給部97からのコーティング液や結晶誘発剤の吐出速度あるいは噴霧する場合の噴霧流量等を、統括的に制御することができる。
第1の供給部92によりバルーン11の表面に供給されるコーティング液は、コート層30の構成材料を含む溶液または懸濁液であり、水不溶性薬剤、賦形剤、有機溶媒及び水を含んでいる。コーティング液がバルーン11の表面に供給された後、有機溶媒及び水が揮発することで、バルーン11の表面に、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶である多数の長尺体を有するコート層30が形成される。コーティング液の粘度は、0.2〜1500cP、好ましくは0.2〜500cP、より好ましくは0.2〜100cPである。
水不溶性薬剤とは、水に不溶または難溶性である薬剤を意味し、具体的には、水に対する溶解度が、pH5〜8で5mg/mL未満である。その溶解度は、1mg/mL未満、さらに、0.1mg/mL未満でもよい。水不溶性薬剤は脂溶性薬剤を含む。
いくつかの好ましい水不溶性薬剤の例は、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリンを含むシクロスポリン類、ラパマイシン等の免疫活性剤、パクリタキセル等の抗がん剤、抗ウイルス剤または抗菌剤、抗新生組織剤、鎮痛剤及び抗炎症剤、抗生物質、抗てんかん剤、不安緩解剤、抗麻痺剤、拮抗剤、ニューロンブロック剤、抗コリン作動剤及びコリン作動剤、抗ムスカリン剤及びムスカリン剤、抗アドレナリン作用剤、抗不整脈剤、抗高血圧剤、ホルモン剤ならびに栄養剤を含む。
水不溶性薬剤は、パクリタキセルおよびパクリタキセル誘導体、タキサン、ドセタキセルならびにラパマイシンおよびラパマイシン誘導体、例えば、バイオリムスA9、ピメクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、タクロリムス、ファスジルおよびエポチロンが好ましく、パクリタキセルおよびラパマイシン、ドセタキセル、エベロリムスが特に好ましい。本明細書においてラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エベロリムスとは、同様の薬効を有する限りそれらの類似体及び/またはそれらの誘導体を含む。例えば、パクリタキセルとドセタキセルは類似体の関係にある。ラパマイシンとエベロリムスは誘導体の関係にある。これらのうちでは、パクリタキセルがさらに好ましい。
添加剤110は、水溶性の低分子化合物を含む。水溶性の低分子化合物の分子量は、50〜2000であり、好ましくは50〜1000であり、より好ましくは50〜500であり、さらに好ましくは50〜200である。水溶性の低分子化合物は、水不溶性薬剤100質量部に対して、好ましくは5〜10000質量部、より好ましくは5〜200質量部、さらに好ましくは8〜150質量部である。水溶性の低分子化合物の構成材料は、セリンエチルエステル、クエン酸エステル、ポリソルベート、水溶性ポリマー、糖、造影剤、アミノ酸エステル、短鎖モノカルボン酸のグリセロールエステル、医薬として許容される塩および界面活性剤等、あるいはこれら二種以上の混合物等が使用できる。水溶性の低分子化合物は、親水基と疎水基を有し、水に溶解することを特徴とする。水溶性の低分子化合物は、非膨潤性または難膨潤性であることが好ましい。添加剤110は、バルーン11上でアモルファス(非晶質)であることが好ましい。水溶性の低分子化合物を含む添加剤110は、バルーン11の外表面上で水不溶性薬剤を均一に分散させる効果を有する。さらに、血管内でのバルーン11の拡張時に添加剤110が溶解しやすくなることで、バルーン11の外表面上の水不溶性薬剤の薬剤結晶111を放出しやすくなり、血管への薬剤結晶111の付着量を増加させる効果を有する。添加剤110は、ハイドロゲルでないことが好ましい。添加剤110は低分子化合物であることで、水溶液に接すると膨潤することなく速やかに溶解する。さらに、血管内でのバルーン11の拡張時に添加剤110が溶解しやすくなることで、バルーン11の外表面上の水不溶性の薬剤結晶111の粒子を放出しやすくなり、血管への薬剤結晶111の付着量を増加させる効果を有する。添加剤110がウルトラビスト(Ultravist)(登録商標)のような造影剤からなるマトリクスである場合、結晶粒子がマトリクスに埋め込まれ、バルーン11の基材上からマトリクスの外側に向かって結晶が生成しない。これに対し、本実施形態の薬剤結晶111は、バルーン11の基材の表面から添加剤110の外側まで延在することができる。
コーティング液に含まれる溶媒は、水不溶性薬剤を溶解できる溶媒またはそれを含む混合物である。このような溶媒は、特に限定されないが、テトラヒドロフラン、アセトン、グリセリン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、ヘキサン、エチルアセテート、水、中でもテトラヒドロフラン、エタノール、アセトン、水のうち、これらのいくつかの混合溶媒が好ましい。例えば、テトラヒドロフランと水、テトラヒドロフランとエタノールと水、テトラヒドロフランとアセトンと水、アセトンとエタノールと水、テトラヒドロフランとアセトンとエタノールと水といった組み合わせが挙げられる。
第2の供給部97によりバルーン11の表面に供給される結晶誘発剤は、コーティング液に含まれる薬剤の結晶を生成する物質であって、コーティング液に含まれる溶媒と混和性を有し、コーティング液に含まれる溶媒、またはその混合液よりも水不溶性薬剤の溶解度が小さい、あるいは溶解性を有しないものである。このような結晶誘発剤としては、コーティング液に含まれる薬剤の溶解度が小さい貧溶媒に相当する溶媒が挙げられる。貧溶媒をコーティング液に添加すると、コーティング液に含まれる薬剤を溶解させている溶媒と貧溶媒とが互いに溶解し、溶質である薬剤の溶解度が低下して、薬剤が結晶として析出される。また、結晶誘発剤は、薬剤が結晶化した後には揮発して残留しないことが望ましい。このような性質を有する物質として具体的には、水、ヘプタンのいずれかまたはこれらの混合物を用いることができる。
コーティング液に含まれる溶媒と結晶誘発剤は、貧溶媒添加法により薬剤が析出される組み合わせとする必要があり、代表的にはテトラヒドロフランと水の組み合わせが挙げられる。水不溶性薬剤がパクリタキセルである場合において、コーティング液に含まれる溶媒がジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミドの場合、結晶誘発剤はアセトニトリル、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン、水が挙げられる。また、コーティング液に含まれる溶媒がアセトニトリル、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフランの場合、結晶誘発剤は水、ヘプタンが挙げられる。具体的には、コーティング液に含まれる溶媒がテトラヒドロフラン、アセトン、およびエタノールであり、結晶誘発剤が水である組み合わせが挙げられる。また、具体的には、コーティング液に含まれる溶媒がジメチルスルホキシドであり、結晶誘発剤がアセトンおよび水である組み合わせが挙げられる。また、その他の組み合わせも可能である。
次に、上述したバルーンコーティング装置2を用いて、バルーン11の表面に水不溶性薬剤の結晶を形成する方法を説明する。
初めに、ハブ12の基端開口部40に接続した三方活栓を介して、拡張用の流体をバルーン11内に供給する。次に、バルーン11を拡張させた状態で三方活栓を操作して拡張ルーメン22を密封し、バルーン11を拡張させた状態を維持する。バルーン11は、血管内での使用時の圧力(例えば8気圧)よりも低い圧力(例えば4気圧)で拡張される。
次に、カテーテル1を支持台70に回転可能に設置し、ハブ12を回転機構50に連結する。次に、移動台61の位置を調節して、第1の供給部92をバルーン11に対して位置決めする。このとき、バルーン11においてコート層30を形成する最も先端側の位置に近接するように、第1の供給部92の第1の吐出口92aを位置決めする。コーティング液をバルーン11に塗布する第1の供給部92は、結晶誘発剤をバルーン11に塗布する第2の供給部97よりも、バルーン11の基端側に位置している。したがって、この状態において第2の供給部97は、バルーン11においてコート層30を形成する最も先端側の位置より先端側に位置し、バルーン11とは対向していない。
次に、図5に示すように、回転機構50によりカテーテル1をシャフト10の軸心方向に回転させると共に、移動台61を移動させながら、第1の供給部92からコーティング液をバルーン11に向かって吐出する。コーティング液の吐出量は、第1の送液ポンプ91により調整される。移動台61により、第1の供給部92は、バルーン11の先端側から基端側に向かって移動していく。バルーン11が回転及び直線移動することにより、コーティング液はバルーン11の表面に螺旋を描きつつ塗布される。
移動台61が移動すると、第2の供給部97は、第1の供給部92とのバルーン11の軸方向における距離を一定に保ったまま、第1の供給部92と共に移動する。第1の供給部92よりバルーン11の先端側に位置していた第2の供給部97が、コート層30を形成する領域に達したら、図6に示すように、第2の供給部97から結晶誘発剤をバルーン11に向かって吐出開始する。結晶誘発剤の吐出量あるいは噴霧流量は、第2の送液ポンプ96により調整される。
第1の供給部92によってコーティング液を塗布された位置に第2の供給部97が到達する時点で、コーティング液は乾燥しておらず、薬剤が結晶化していない状態である。この状態で第2の供給部97から結晶誘発剤が吐出あるいは噴霧されることによって、重ねて塗布される。コーティング液に対して結晶誘発剤が添加されることにより、コーティング液に含まれる薬剤の結晶が生成される。
バルーン11の表面に対し、コーティング液の塗布に追従するように結晶誘発剤を塗布することにより、コーティング液が塗布されてから一定の時間後に結晶誘発剤が添加されるので、バルーン11の表面全域において結晶の形成速度を一定にすることができる。このため、製造室の温度や気流、手技のばらつき、コーティング液やバルーン11の個体差などの外的要因に影響されることなく、結晶化を一定の条件で進行させることができる。これにより、結晶形状のばらつきを抑え、バルーン11の表面に一定の形状及び大きさの結晶を安定的に形成することができる。
バルーン11の表面に形成される結晶の形状及び大きさは、第1の供給部92と第2の供給部97のバルーン11の軸方向における距離と、結晶誘発剤の種類、吐出量あるいは噴霧量により調整することができる。
第1の供給部92と第2の供給部97の移動速度は、特に限定されないが、例えば0.01〜2mm/sec、好ましくは0.03〜1.5mm/sec、より好ましくは0.05〜1.0mm/secである。コーティング液及び結晶誘発剤の第1の供給部92及び第2の供給部97からの吐出量は、特に限定されないが、例えば0.01〜1.5μL/sec、好ましくは0.01〜1.0μL/sec、より好ましくは0.03〜0.8μL/secである。また、第2の供給部97が結晶誘発剤を噴霧する場合において、第2の供給部97からの噴霧流量は、特に限定されないが、例えば0.1〜5.0mL/sec、好ましくは0.1〜1.0μL/sec、より好ましくは0.1〜0.5mL/secである。バルーン11の回転速度は、特に限定されないが、例えば10〜300rpm、好ましくは30〜250rpm、より好ましくは50〜200rpmである。コーティング液及び結晶誘発剤を塗布する際のバルーン11の直径は、特に限定されないが、例えば1〜10mm、好ましくは2〜7mmである。
コーティング液をバルーン11の表面に塗布した後、結晶誘発剤がバルーン11の表面に塗布されると、コーティング液の溶媒である有機溶媒と結晶誘発剤とが互いに溶解し、薬剤の溶解度が低下して、薬剤が析出して結晶核から結晶が成長する。その後に、コーティング液に含まれる溶媒が揮発する。コーティング液を塗布してから結晶が成長するまでの時間は、有機溶媒の揮発による析出の場合、温度等の外的要因に左右されるが、前述のように、乾燥前のコーティング液に結晶誘発剤が添加されることにより、外的要因に関わらず結晶が生成される。
図3に示すように、バルーン11の表面には、結晶が各々独立した長軸を有する複数の薬剤結晶111を含む形態型(morphological form)の薬剤結晶が形成される。この状態の薬剤結晶111は、バルーン11の表面に対して立った状態となっている。薬剤結晶111の基端は、バルーン11の表面、添加剤110の表面または内部に位置する可能性がある。薬剤結晶が複数の薬剤結晶111として析出した後、水が有機溶媒よりもゆっくり蒸発し、水溶性低分子化合物を含む添加剤110が形成される。水が蒸発するまでの時間は、薬剤の種類、水溶性低分子化合物の種類、有機溶媒の種類、材料の比率、コーティング液の塗布量等に応じて適宜設定されるが、例えば、1〜600秒程度である。
そして、バルーン11を回転させつつ第1の供給部92及び第2の供給部97を徐々にバルーン11の軸心方向に沿って移動させることで、バルーン11の表面に、軸心方向へ向かってコート層30を徐々に形成する。バルーン11においてコート層30を形成する範囲の全体に、薬剤結晶111を有するコート層30が形成された後、回転機構50、移動機構60及び塗布機構80を停止させる。
この後、カテーテル1をバルーンコーティング装置2から取り外して、バルーン11のコーティングが完了する。
バルーン11は、図7(a)に示すように、内部に拡張用流体が注入された状態で断面略円形状を有する。この状態から、バルーン11は、突出する羽根部120が形成されることで、図7(b)に示すように、羽根部120の外側面を構成する羽根外側部120bと、羽根部120の内側面を構成する羽根内側部120aと、羽根外側部120bと羽根内側部120aの間に位置する中間部120cとが形成される。この状態から、図7(c)に示すように、径方向外側へ突出する羽根部120が、周方向へ折り畳まれる。バルーン11の羽根部120が折り畳まれると、羽根内側部120aと中間部120cが重なって接触し、バルーン11の外表面同士が対向して重なる重複部121が形成される。そして、中間部120cの一部および羽根外側部120bは、羽根内側部120aに覆われず、外側に露出する。また、バルーン11が折り畳まれた状態では、羽根部120の根元部と中間部120cとの間に、根元側空間部122が形成される。根元側空間部122の領域では、羽根部120と中間部120cとの間に、微小な隙間が形成される。一方、羽根部120の根元側空間部122よりも先端側の領域は、中間部120cに対して密接した状態となっている。羽根部120の周方向長さに対する根元側空間部122の周方向長さの割合は、1〜95%の範囲である。バルーン11の羽根外側部120bは、バルーン11を折り畳むためのブレードから周方向に擦れるような押圧力を受け、さらに加熱される。これにより、羽根外側部120bに設けられる長尺な薬剤結晶111がバルーン11の表面に倒れて寝やすい。なお、薬剤結晶111の全てが寝る必要はない。
また、バルーン11の重複部121において重なる外表面は、外部に露出しないため、折り畳む際に、ブレードから押圧力が間接的に作用する。このため、バルーン11の重複部121において重なる外表面に設けられる薬剤結晶111に作用する力を、強くなり過ぎないように調節することが容易である。したがって、バルーン11の重複部121において重なる外表面に設けられる薬剤結晶111を寝かせるために望ましい力を作用させることができる。また、互いに対向する羽根内側部120aと中間部120cの領域のうち、根元側空間部122に面する領域、すなわち羽根内側部120aと中間部120cとが密接しない領域では、薬剤結晶111は押圧力を受け難い。したがって、この領域では、薬剤結晶111が寝にくい。また、互いに対向する羽根内側部120aと中間部120cの領域のうち、根元側空間部122に面しない領域、すなわち羽根内側部120aと中間部120cとが密接している領域では、薬剤結晶111は押圧力を受けやすい。したがって、この領域では、薬剤結晶111が倒れて寝やすい。
ここで、薬剤溶出性のバルーン11を実際に作製した実施例について説明する。
実施例1は、結晶誘発剤滴下法により薬剤溶出性のバルーン11を作製する。
(1)コーティング溶液の調製
L−セリンエチルエステル塩酸塩(CAS No.26348−61−8)(56mg)およびパクリタキセル(CAS No.33069−62−4)(134.4mg)を量りとった。これに無水エタノール(1.1mL)、テトラヒドロフラン(0.4mL)、アセトン(1.6mL)、注射用水(0.9mL)をそれぞれ加えて溶解し、コーティング溶液を調製した。
(2)コーティング溶液の充填
コーティング溶液を吐出するための送液ライン(吸引チューブ93及び供給チューブ94)及びシリンジポンプ(第1の送液ポンプ91)に(1)で調製したコーティング溶液を充填した。
(3)結晶誘発剤の充填
結晶誘発剤を滴下し、コーティング溶液に添加するための送液ライン(吸引チューブ98及び供給チューブ99)及びシリンジポンプ(第2の送液ポンプ96)にヘプタン(CAS No.142−82−5)を充填した。
(4)バルーン11へのコーティング
バルーン11の拡張時サイズが直径6.0mm×長さ200mmのカテーテル1を準備した。拡張部であるバルーン11の素材はナイロンエラストマーである。パクリタキセル量が約3μg/mmとなるように、コーティング溶液を拡張したバルーン11にコートした。
(5)結晶誘発剤の添加
バルーン11の表面にコートされたコーティング溶液に、ヘプタンを滴下した。
(4)バルーン11へのコーティング及び(5)結晶誘発剤の添加において、具体的には、最先端に開口部を有しポリエチレンで形成されたディスペンシングチューブ(第1の供給部92)をカテーテル1に対して横方向(水平方向)から移動させ、ディスペンシングチューブの先端の側面の一部がバルーン11の外表面に沿って接触するように設置した。そして、コーティング溶液を吐出するためのディスペンシングチューブの進行方向の逆側に、ヘプタンを滴下するための金属ノズル(第2の供給部97)を、バルーン11の表面に接触しないように設置した。この状態で、薬剤の吐出方向に対して反対方向(逆方向)に、バルーン11の軸心を中心としてカテーテル1を回転させた。回転を維持したまま、常時、バルーン11の外表面にディスペンシングチューブの先端の側面を接触させながら、ディスペンシングチューブの先端開口部(第1の吐出口92a)からコーティング溶液を吐出させ、さらに吐出されたコーティング溶液に対し、金属ノズルの先端からヘプタンを滴下した。ディスペンシングチューブおよび金属ノズルのバルーン11の軸心方向への移動速度及びバルーン11の回転速度を調整し、回転開始とともに、コーティング溶液を0.547μL/secで吐出し、さらに、バルーン11の表面にコーティングされたコーティング溶液に対し、0.055μL/secでヘプタンを吐出させ、滴下した。その後、コーティング後のバルーン11を乾燥させ、薬剤溶出性のバルーン11を作製した。
実施例2は、結晶誘発剤噴霧法によりバルーン11を作製する。
(1)コーティング溶液の調製
L−セリンエチルエステル塩酸塩(CAS No.26348−61−8)(56mg)およびパクリタキセル(CAS No.33069−62−4)(134.4mg)を量りとった。これに無水エタノール(1.1mL)、テトラヒドロフラン(0.4mL)、アセトン(1.6mL)、注射用水(0.9mL)をそれぞれ加えて溶解し、コーティング溶液を調製した。
(2)コーティング溶液の充填
コーティング溶液を吐出するための送液ライン(吸引チューブ93及び供給チューブ94)及びシリンジポンプ(第1の送液ポンプ91)に(1)で調製したコーティング溶液を充填した。
(3)結晶誘発剤の充填
結晶誘発剤を噴霧し、コーティング溶液に添加するための送液ライン(吸引チューブ98及び供給チューブ99)及びシリンジポンプ(第2の送液ポンプ96)に水を充填した。
(4)バルーン11へのコーティング
バルーン11の拡張時サイズが直径6.0mm×長さ200mmのカテーテル1を準備した。拡張部であるバルーン11の素材はナイロンエラストマーである。パクリタキセル量が約3μg/mmとなるように、コーティング溶液を、拡張したバルーン11にコートした。
(5)結晶誘発剤の添加
バルーン11の表面にコートされたコーティング溶液に、水を噴霧した。
(4)バルーン11へのコーティング及び(5)結晶誘発剤の添加において、具体的には、最先端に開口部を有しポリエチレンで形成されたディスペンシングチューブ(第1の供給部92)をカテーテル1に対して横方向(水平方向)から移動させ、ディスペンシングチューブの先端の側面の一部がバルーン11の外表面に沿って接触するように設置した。そして、コーティング溶液を吐出するためのディスペンシングチューブの進行方向の逆側に、水を噴霧するためのスプレー(第2の供給部97)を、バルーン11の表面に接触しないように設置した。この状態で、薬剤の吐出方向に対して反対方向(逆方向)に、バルーン11の軸心を中心としてカテーテル1を回転させた。回転を維持したまま、常時、バルーン11の外表面にディスペンシングチューブの先端の側面を接触させながら、ディスペンシングチューブの先端開口部(第1の吐出口92a)からコーティング溶液を吐出させ、さらに吐出されたコーティング溶液に対し、スプレーから水を噴霧した。ディスペンシングチューブおよびスプレーのバルーン11の軸心方向への移動速度及びバルーン11の回転速度を調整し、回転開始とともに、コーティング溶液を0.547μL/secで吐出し、さらに、バルーン11の表面にコーティングされたコーティング溶液に対し、噴霧流量0.138mL/secで水を噴霧した。その後、コーティング後のバルーン11を乾燥させ、薬剤溶出性のバルーン11を作製した。
次に、カテーテル1の使用方法を、血管内の狭窄部を治療する場合を例として説明する。
まず、術者は、セルジンガー法等の公知の方法により、皮膚から血管を穿刺し、イントロデューサ(図示せず)を留置する。次に、カテーテル1のプライミングを行った後、ガイドワイヤルーメン23内にガイドワイヤ200(図8を参照)を挿入する。この状態で、ガイドワイヤ200およびカテーテル1をイントロデューサの内部より血管内へ挿入する。続いて、ガイドワイヤ200を先行させつつカテーテル1を進行させ、バルーン11を狭窄部へ到達させる。なお、カテーテル1を狭窄部300まで到達させるために、ガイディングカテーテルを用いてもよい。
次に、ハブ12の基端開口部40より、インデフレーターまたはシリンジ等を用いて拡張用流体を所定量注入し、拡張ルーメン22を通じてバルーン11の内部に拡張用流体を送り込む。これにより、図8に示すように、折り畳まれたバルーン11が拡張し、狭窄部300が、バルーン11によって押し広げられる。このとき、バルーン11の外表面に設けられるコート層30が、狭窄部300に接触する。
バルーン11を拡張させてコート層30を生体組織に押し付けると、コート層30に含まれる水溶性の低分子化合物である添加剤110が徐々にまたは速やかに溶けつつ、薬剤結晶111が生体へ送達される。コート層30の薬剤結晶111は、上述した製造方法によって、均一に形成されている。このため、薬剤を生体へばらつきなく良好に作用させることができる。
この後、拡張用流体をハブ12の基端開口部40より吸引して排出し、バルーン11を収縮させて折り畳まれた状態とする。この後、イントロデューサを介して血管よりガイドワイヤ200およびカテーテル1を抜去し、手技が終了する。
以上のように、本実施形態に係るバルーンコーティング方法は、シャフト10の先端部にバルーン11を有するカテーテル1におけるバルーン11の表面にコート層30を形成するバルーンコーティング方法であって、カテーテル1をシャフト10の軸心を中心に回転させつつ、バルーン11の表面に対し第1の供給部92から薬剤を含むコーティング液を供給して塗布するステップと、カテーテル1の回転を維持したまま、コーティング液が乾燥する前に、当該コーティング液が塗布されたバルーン11の表面に対し、第2の供給部97から結晶誘発剤を供給して塗布し、結晶化を促すステップと、を有する。このように構成したバルーンコーティング方法は、コーティング液が塗布されてから一定の時間後に結晶誘発剤が添加されるので、バルーン11の表面全域において結晶の形成速度を一定にすることができる。このため、外的要因に影響されることなく、結晶化を一定の条件で進行させることができる。これにより、結晶形状のばらつきを抑え、バルーン11の表面に一定の形状及び大きさの結晶を安定的に形成することができる。
また、本実施形態のバルーンコーティング方法は、バルーン11の表面に対し結晶誘発剤を塗布して薬剤の結晶を生成した後、コーティング液の溶媒及び結晶誘発剤を揮発させるステップを有する。このため、結晶誘発剤による結晶の生成後に溶媒及び結晶誘発剤が揮発するので、溶媒及び結晶誘発剤の揮発の条件によらず薬剤の結晶化を行うことができ、外的要因によらずバルーン11の表面に均一に分散された薬剤結晶を形成することができる。
また、第1の供給部92と第2の供給部97は、バルーン11の軸方向に所定間隔で離隔し、第1の供給部92が先行して並行移動しつつ、バルーン11の表面に対して液を塗布する。これにより、コーティング液が塗布されてから結晶誘発剤を添加するまでの時間をバルーン11の全域で一定にすることができる。
また、第1の供給部92と第2の供給部97とのバルーン11の軸方向における距離を調整した上で、第1の供給部92と第2の供給部97からバルーン11の表面に対して液を塗布するようにすれば、コーティング液の塗布から結晶誘発剤の塗布までの時間を変更できるので、バルーン11の表面に形成される薬剤の結晶の形状及び大きさを調整することができる。
また、結晶誘発剤は、薬剤に対する貧溶媒である。これにより、コーティング液に結晶誘発剤を添加することで、薬剤の結晶形成が促される。
また、コーティング液に含まれる薬剤は、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、またはエベロリムスのいずれかであるようにすれば、血管内の狭窄部の再狭窄を良好に抑制できる。
また、結晶誘発剤は、水、ヘプタンのいずれかまたはこれらの混合物であるようにすれば、結晶誘発剤に対するパクリタキセルの溶解性が低いので、効果的にパクリタキセルの結晶形成を促進できる。
また、コーティング液に含まれる溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミドのいずれかであり、結晶誘発剤は、アセトニトリル、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン、水のいずれかである。これにより、結晶誘発剤を、コーティング液に含まれる溶媒と混和性を有し、コーティング液に含まれる溶媒、またはその混合液よりも水不溶性薬剤の溶解度が小さい、あるいは溶解性を有しないものとすることができる。
コーティング液に含まれる溶媒は、アセトニトリル、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフランのいずれかであり、結晶誘発剤は、水、ヘプタンのいずれかである。これにより、結晶誘発剤を、コーティング液に含まれる溶媒と混和性を有し、コーティング液に含まれる溶媒、またはその混合液よりも水不溶性薬剤の溶解度が小さい、あるいは溶解性を有しないものとすることができる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述のバルーンカテーテル10は、ラピッドエクスチェンジ型(Rapid exchange type)であるが、オーバーザワイヤ型(Over−the−wire type)であってもよい。
上述の実施形態では、コーティング液を供給する第1の供給部92と、結晶誘発剤を供給する第2の供給部97が、移動台61により一体的に移動するようにしたが、第1の供給部92と第2の供給部97が独立して移動するようにしてもよい。この場合においても、バルーン11の表面において、結晶誘発剤はコーティング液が乾燥する前に塗布される。また、第1の供給部92と第2の供給部97が同位置に配置されていてもよい。
また、コーティング液及び結晶誘発剤の塗布方法は、上述の実施形態には限られず、スプレー法や糸引き法など他の方法を用いることができる。
本出願は、2017年3月16日に出願された日本特許出願番号2017−050829号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
1 カテーテル
2 バルーンコーティング装置
10 シャフト
11 バルーン
12 ハブ
30 コート層
50 回転機構
60 移動機構
61 移動台
70 支持台
80 塗布機構
81 前処理液塗布部
82 コーティング液塗布部
90 第1の供給容器
91 第1の送液ポンプ
92 第1の供給部
95 第2の供給容器
96 第2の送液ポンプ
97 第2の供給部
100 制御部

Claims (8)

  1. シャフトの先端部にバルーンを有するカテーテルにおける前記バルーンの表面にコート層を形成するバルーンコーティング方法であって、
    前記カテーテルを前記シャフトの軸心を中心に回転させつつ、前記バルーンの表面に対し第1の供給部から薬剤を含むコーティング液を供給して塗布するステップと、
    前記カテーテルの回転を維持したまま、前記コーティング液が乾燥する前に、当該コーティング液が塗布された前記バルーンの表面に対し、第2の供給部から結晶誘発剤を供給して塗布し、薬剤の結晶を生成するステップと、
    を有し、
    前記第1の供給部と前記第2の供給部は、前記バルーンの軸方向に所定間隔で離隔し、前記第1の供給部が先行して並行移動しつつ、前記バルーンの表面に対して液を塗布するバルーンコーティング方法。
  2. 前記バルーンの表面に対し前記結晶誘発剤を塗布して薬剤の結晶を生成した後、前記コーティング液の溶媒及び結晶誘発剤を揮発させるステップを有する請求項1に記載のバルーンコーティング方法。
  3. 前記第1の供給部と前記第2の供給部との前記バルーンの軸方向における距離を調整した上で、前記第1の供給部と前記第2の供給部から前記バルーンの表面に対して液を塗布する請求項1または2に記載のバルーンコーティング方法。
  4. 前記結晶誘発剤は、前記薬剤に対する貧溶媒である請求項1〜のいずれか1項に記載のバルーンコーティング方法。
  5. 前記コーティング液に含まれる薬剤は、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、またはエベロリムスのいずれかである請求項1〜のいずれか1項に記載のバルーンコーティング方法。
  6. 前記結晶誘発剤は、水、ヘプタンのいずれかまたはこれらの混合物である請求項1〜のいずれか1項に記載のバルーンコーティング方法。
  7. 前記コーティング液に含まれる溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミドのいずれかであり、前記結晶誘発剤は、アセトニトリル、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン、水のいずれかである請求項1〜のいずれか1項に記載のバルーンコーティング方法。
  8. 前記コーティング液に含まれる溶媒は、アセトニトリル、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフランのいずれかであり、前記結晶誘発剤は、水、ヘプタンのいずれかである請求項1〜のいずれか1項に記載のバルーンコーティング方法。
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