以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。また、本明細書では、バルーンカテーテル10の生体管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
まず、本実施形態のバルーンカテーテルについて説明する。バルーンカテーテル10は、図1に示すように、長尺で中空状のカテーテルシャフト11と、カテーテルシャフト11の先端側端部に設けられるバルーン12と、バルーン12の表面に設けられる薬剤を含むコート層30と、カテーテルシャフト11の基端側端部に固着されたハブ13とを有している。コート層30が設けられたバルーン12は、使用されるまで、保護シース15により覆われて保護される。
バルーン12の軸心方向の長さは特に限定されないが、好ましくは5〜500mm、より好ましくは10〜300mm、さらに好ましくは20〜200mmである。
バルーン12の拡張時の外径は、特に限定されないが、好ましくは1〜10mm、より好ましくは2〜8mmである。
バルーン12のコート層30が形成される前の表面は、平滑であり、非多孔質であるが、膜を貫通しない微小な孔があってもよい。微小な孔のサイズは、例えば、直径が0.1〜5μm、深さが0.1〜10μmであり、1つの結晶に対して、1つまたは複数の孔を有してもよい。また、微小な孔のサイズは、例えば、直径が5〜500μm、深さが0.1〜50μmであり、1つの孔に対して、1つまたは複数の結晶を有してもよい。
このバルーンカテーテル10は、長尺なカテーテルシャフト11を生体器官内に挿通させ、その遠位側に設けられたバルーン12を病変部で拡張させることで、病変部を押し広げて治療を行うことができるものである。
次に、カテーテルシャフト11の先端部及びバルーン12の構造について説明する。図2に示すように、カテーテルシャフト11は、中空状の外管20と、中空状の内部支持体である内管21とを有している。内管21は、外管20の中空内部に納められており、カテーテルシャフト11は、先端部において二重管構造となっている。内管21の中空内部は、ガイドワイヤ14を挿通させるガイドワイヤルーメン23を形成する。また、外管20の中空内部であって、内管21の外側には、バルーン12の拡張用流体を流通させる拡張ルーメン22が形成される。内管21は、開口部24において外部に開口している。内管21は、外管20の先端よりもさらに先端側まで突出している。
バルーン12は、基端側端部が外管20の先端部に固定され、先端側端部が内管21の先端部に固定されている。これにより、バルーン12の内部が拡張ルーメン22と連通している。拡張ルーメン22を介してバルーン12に拡張用流体を注入することで、バルーン12を拡張させることができる。拡張用流体は気体でも液体でもよく、例えばヘリウムガス、CO2ガス、O2ガス等の気体や、生理食塩水、造影剤等の液体を用いることができる。なお、図2において、バルーン12は拡張した状態である。
バルーン12の軸心方向における中央部には、拡張させた際に外径が等しい円筒状のストレート部12a(拡張部)が形成され、ストレート部12aの軸心方向の両側に、外径が徐々に変化するテーパ部12bが形成される。そして、ストレート部12aの表面の全体に、薬剤を含むコート層30が形成される。なお、バルーン12においてコート層30を形成する範囲は、ストレート部12aのみに限定されず、ストレート部12aに加えてテーパ部12bの少なくとも一部が含まれてもよく、または、ストレート部12aの一部のみであってもよい。
外管20及び内管21は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されるのが好ましい。そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が挙げられる。
バルーン12は、ある程度の柔軟性と血管や組織等に到達した際に拡張されて、その表面に有するコート層30から薬剤を放出できるようにある程度の硬度を有するものが好ましい。具体的には、金属や、樹脂で構成されるが、コート層30が設けられるバルーン12の少なくとも表面は、樹脂で構成されていることが好ましい。バルーン12の少なくとも表面の構成材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ナイロンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。そのなかでも、好適にはポリアミド類が挙げられる。すなわち、薬剤をコートする医療機器の拡張部の表面の少なくとも一部がポリアミド類である。ポリアミド類としては、アミド結合を有する重合体であれば特に制限されないが、例えば、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカノラクタム(ナイロン11)、ポリドデカノラクタム(ナイロン12)などの単独重合体、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/ 66)などの共重合体、アジピン酸とメタキシレンジアミンとの共重合体、またはヘキサメチレンジアミンとm,p−フタル酸との共重合体などの芳香族ポリアミドなどが挙げられる。さらに、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などをハードセグメントとし、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、または脂肪族ポリエステルなどをソフトセグメントとするブロック共重合体であるポリアミドエラストマーも、本発明に係る医療用具の基層として用いられる。上記ポリアミド類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
バルーン12には、その表面上に、後述する方法によって、直接またはプライマー層等の前処理層を介してコート層30が形成される。コート層30は、図3、4に示すように、バルーン12の表面31に層状に配置される水溶性低分子化合物を含む基層32(賦形剤)と、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶である複数の長尺体33とを有している。
コート層30に含まれる薬剤量は、特に限定されないが、0.1μg/mm2〜10μg/mm2、好ましくは0.5μg/mm2〜5μg/mm2の密度で、より好ましくは0.5μg/mm2〜3.5μg/mm2、さらに好ましくは1.0μg/mm2〜3μg/mm2の密度で含まれる。また、コート層30の結晶の量は、特に限定されないが、5〜500000crystal/10μm2(10μm2当たりの結晶の数)、好ましくは50〜50000crystal/10μm2、より好ましくは500〜5000crystal/10μm2である。
長尺体33は、中空である場合と、中実である場合がある。長尺体33は、中空である場合、少なくともその先端付近が中空である。長尺体33の長軸に直角な(垂直な)面における長尺体33の断面は中空を有する。当該中空を有する長尺体33は長軸に直角な(垂直な)面における長尺体33の断面が多角形である。当該多角形は、例えば3角形、4角形、5角形、6角形などである。したがって、長尺体33は先端(または先端面)と基端(または基端面)とを有し、先端(または先端面)と基端(または基端面)との間の側面が複数のほぼ平面で構成された長尺多面体として形成される。この結晶形態型(中空長尺体結晶形態型)は基層表面において、ある平面の全体または少なくとも一部を構成する。
長軸を有する長尺体33の軸方向の長さは5μm〜20μmが好ましく、9μm〜11μmがより好ましく、10μm前後であるのがさらに好ましい。長軸を有する長尺体33の径は、0.01μm〜5μmであるのが好ましく、0.05μm〜4μmであるのがより好ましく、0.1μm〜3μmであるのがさらに好ましい。長軸を有する長尺体33の軸方向の長さと径の組み合わせの例として、長さが5μm〜20μmのときに径が0.01〜5μmである組み合わせ、長さが5〜20μmのときに径が0.05〜4μmである組み合わせ、長さが5〜20μmのときに径が0.1〜3μmである組み合わせが挙げられる。長軸を有する長尺体33は、長軸方向に略直線状であるが、曲線状に湾曲していてもよい。
コーティング後であってバルーン12が折り畳まれる前の長軸を有する長尺体33は、バルーン12の表面に対して寝ることなく立っているように形成される。この際の長尺体33は、バルーン12のプリーティング(バルーンに羽根部40を形成するステップ)またはフォールディング(羽根部40を折り畳むステップ)により長尺体33の角度が変わり、バルーン12の表面に対する長尺体33の長軸の角度を変化させることができる。したがって、最初からバルーン12の表面に寝たように形成される結晶は、バルーン12の表面や隣接する長尺体33に固着(固定)されるのに対し、立っている長尺体33は、バルーン12の表面や隣接する長尺体33と物理的に固定されて形成されていない。このため、立っている長尺体33は、例えばバルーン12の表面や隣接する長尺体33に接触するように位置付けられている(配置されている)だけであり、三次元的に位置を変更可能である。したがって、コーティング後の長尺体33は、バルーン12のプリーティングやフォールディングの前後で角度や位置が変わり得るように形成されている。長尺体33の一部は、バルーン12の表面に埋め込まれていてもよい。
基層32は、林立する複数の長尺体33の間の空間に分配されて存在する。コート層30を構成する物質の割合は、水不溶性薬剤の結晶の方が、基層32よりも大きい体積を占めることが好ましい。基層32を構成する賦形剤は、マトリックスを形成しない。マトリックスとは、比較的高分子の物質(ポリマーなど)が連続して構成された層であり、網目状の三次元構造を形成し、その中に微細な空間が存在する。したがって、結晶を構成する水不溶性薬剤はマトリックス物質中に付着していない。結晶を構成する水不溶性薬剤は、マトリックス物質中に埋め込まれてもいない。
基層32はバルーン12の表面で水溶液の状態でコートされた後、乾燥して層として形成される。基層32はアモルファス、結晶粒子、または、その混合物として存在する。図4の基層32は、結晶粒子及び/または粒子状アモルファスの状態である。基層32は、水不溶性薬剤を含んだ層として形成されてもよいし、または、水不溶性薬剤を含まない独立した層として形成されてもよい。基層32の厚みは、0.1〜5μm、好ましくは0.3〜3μm、より好ましくは0.5〜2μmである。
中空長尺体の形態型の長尺体33を有するコート層30は、体内に送達する際に、毒性が低く、狭窄抑制効果が高い。中空長尺体結晶形態を含む水不溶性薬剤は、薬剤が組織に移行した時に結晶の一つの単位が小さくなるために組織への浸透性が良く、かつ、良好な溶解性を有するため、有効に作用して狭窄を抑制できる。また、薬剤が大きな塊として組織に残留することが少ないために毒性が低くなると考えられる。
また、中空長尺体結晶形態型を含む層は、複数の、長軸を有するほぼ均一な長尺体33であり、かつ基層表面に規則性を有してほぼ均一に並び立っている形態型である。したがって、組織に移行する結晶の大きさ(長軸方向の長さ)が約10μmと小さい。そのために病変患部に均一に作用し、組織浸透性が高まる。さらに、移行する結晶の寸法が小さいために過剰量の薬剤が、過剰時間、患部に留まることがなくなるために、毒性を発現することなく、高い狭窄抑制効果を示すことが可能であると考えられる。
バルーン12の表面にコーティングされる薬剤は、非結晶質(アモルファス)型を含んでもよい。結晶や非晶質は、コート層30において規則性を有するように配置されてもよいが、不規則に配置されてもよい。
薬剤結晶である長尺体33の、バルーン12の表面における状態についてさらに説明する。図3に示すように、長尺体33が形成された状態では、各長尺体33は、バルーン12の表面に対して立った状態となっている。これに対し、バルーン12の表面に外部から力を加えることにより、図5に示すように長尺体33を交差傾倒した状態とすることができる。長尺体33が交差傾倒した状態とは、長尺体33が隣接する長尺体33と交差状に重なりあうように傾倒している状態を言う。この場合、交差する長尺体33同士は、互いに絡み合い、傾倒した状態を維持している。バルーン12が拡張されると、バルーン12の表面は張力が加わって膨張するため、交差する長尺体33は、互いの距離が大きくなるように移動する。これにより、少なくとも一部の交差する長尺体33は、互いに絡みあった状態が解除され、長尺体33は傾倒した状態から立ち上がって、図3に示す立った状態となる。
交差する一方の長尺体33は、概ねバルーン12の表面に沿う第1の方向D1を向いており、交差する他方の長尺体33は、概ねバルーン12の表面に沿う第1の方向D1と異なる方向である第2の方向D2を向いている。交差傾倒した状態となっている長尺体33は、根元部が折れていてもよいし、また折れていなくてもよい。
バルーン12は、図6(a)に示すように、内部に拡張用流体が注入された状態で断面略円形状を有する。この状態から、後述するプリーティング部120により、バルーン12は図6(b)に示すような羽根部40を有する形態とされる。この状態において、バルーン12の表面は、カテーテルシャフト11の周方向に沿う周面部41の領域と、外周側に突出する羽根部40の領域とに分けられる。また、羽根部40は、折り畳まれることで周面部41に向かう面となる羽根内側部40aと、折り畳まれることで外周側に向かう面となる羽根外側部40bとを有している。
図6(b)の状態から、後述するフォールディング部130により、バルーン12は図6(c)に示すような折り畳まれた形態とされる。この状態において、周面部41は、羽根部40の羽根内側部40aと対向する対向面部41aと、外周側に向かう外周構成面部41bとに分けられる。また、バルーン12が折り畳まれた状態では、羽根部40の根元部と周面部41との間に、根元側空間部42が形成される。根元側空間部42の領域では、羽根部40と周面部41との間に、微小な隙間が形成される。一方、羽根部40の根元側空間部42よりも先端側の領域は、周面部41に対して密接した状態となっている。羽根部40の周方向長さに対する根元側空間部42の周方向長さの割合は、1〜95%の範囲である。
図6(c)の状態で、バルーン12の外周側に向かう面は、羽根部40の羽根外側部40bと、周面部41の外周構成面部41bである。本実施形態では、薬剤結晶の長尺体33は、バルーン12の表面のうち、収縮した状態(図6(c)の状態)の羽根外側部40bにおいて、50体積%以上、好ましくは70体積%以上が交差傾倒した状態となっている。
バルーン12が生体管腔内を挿入されていく際に、バルーン12の表面が生体管腔の内壁面に接触すると、薬剤結晶の長尺体33は生体管腔の内壁面に摺接する。この場合に、長尺体33が立った状態であると、長尺体33が内壁面に引っ掛かり、折れるなどしてコート層30から剥離する可能性がある。本実施形態の薬剤結晶の長尺体33は、バルーン12の表面において交差傾倒しているので、生体管腔の内壁面に引っ掛かりにくく、バルーン12の表面から剥離することを抑制できる。
バルーン12が病変部で拡張されると、バルーン12の表面には張力が加わり、前述のように、交差傾倒している長尺体33は互いに離れる方向に移動し、少なくとも一部の長尺体33は立ち上がる。立ち上がった状態の長尺体33は、凹凸のある病変部の内壁面に対して付着しやすいので、薬剤を病変部に移行させやすくすることができる。
このように、薬剤結晶の長尺体33が、バルーン12の表面のうち羽根外側部40bにおいて交差傾倒していることにより、折り畳まれたバルーン12が生体管腔を挿入されていく際には、長尺体33が絡み合って傾倒していることにより、バルーン12からの剥離が抑制され、一方でバルーン12が病変部で拡張された際には、長尺体33が立ち上がって病変部への移行性を良好にすることができる。
次に、上述したバルーン12上のコート層30を形成するためのバルーンコーティングシステムを説明する。本システムは、バルーン12にコート層30を形成するためのバルーンコーティング装置50(図7を参照)と、コート層30が形成されたバルーン12を折り畳むためのバルーン折り畳み装置100(図9を参照)とを備えている。バルーンコーティング装置50を用いることで、バルーン12の表面に、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶である複数の長尺体が形成される。この後、バルーン折り畳み装置100によりバルーン12を折り畳むことで、バルーン12の表面の一部の領域において、長尺体33が立った状態から交差傾倒した状態となる。
まず、バルーンコーティング装置50について説明する。バルーンコーティング装置50は、図7、8に示すように、バルーンカテーテル10を回転させる回転機構部60と、バルーンカテーテル10を支持する支持台70とを有する。バルーンコーティング装置50は、さらに、バルーン12の表面にコーティング溶液を塗布するディスペンシングチューブ94が設けられる塗布機構部90と、ディスペンシングチューブ94をバルーン12に対して移動させるための移動機構部80と、バルーンコーティング装置50を制御する制御部99とを有する。
回転機構部60は、バルーンカテーテル10のハブ13を保持し、内蔵されるモーター等の駆動源により、バルーン12の軸心を中心としてバルーンカテーテル10を回転させる。バルーンカテーテル10は、ガイドワイヤルーメン23内に芯材61が挿通されて保持されるとともに、芯材61によってコーティング溶液のガイドワイヤルーメン23内への流入が防止されている。また、バルーンカテーテル10は、拡張ルーメン22への流体の流通を操作するために、ハブ13の基端開口部13aに、流路の開閉を操作可能な三方活栓が接続される。
支持台70は、カテーテルシャフト11を内部に収容して回転可能に支持する管状の基端側支持部71と、芯材61を回転可能に支持する先端側支持部72とを備えている。なお、先端側支持部72は、可能であれば、芯材61ではなしにカテーテルシャフト11の先端部を回転可能に支持してもよい。
移動機構部80は、バルーン12の軸心と平行な方向へ直線的に移動可能な移動台81と、ディスペンシングチューブ94が固定されるチューブ固定部83とを備えている。移動台81は、内蔵されるモーター等の駆動源によって、直線的に移動可能である。チューブ固定部83は、ディスペンシングチューブ94の上端を移動台81に対して固定している。したがって、移動台81が移動することで、ディスペンシングチューブ94がバルーン12の軸心と平行な方向へ直線的に移動する。また、移動台81には、塗布機構部90が載置されており、塗布機構部90を軸心に沿う両方向へ直線的に移動させる。
塗布機構部90は、バルーン12の表面にコーティング溶液を塗布する部位である。塗布機構部90は、コーティング溶液を収容する容器92と、任意の送液量でコーティング溶液を送液する送液ポンプ93と、コーティング溶液をバルーン12に塗布するディスペンシングチューブ94とを備えている。
送液ポンプ93は、例えばシリンジポンプであり、制御部99によって制御されて、容器92から吸引チューブ91を介してコーティング溶液を吸引し、供給チューブ96を介してディスペンシングチューブ94へコーティング溶液を任意の送液量で供給することができる。送液ポンプ93は、移動台81に設置され、移動台81の移動により直線的に移動可能である。なお、送液ポンプ93は、コーティング溶液を送液可能であればシリンジポンプに限定されず、例えばチューブポンプであってもよい。
ディスペンシングチューブ94は、供給チューブ96と連通しており、送液ポンプ93から供給チューブ96を介して供給されるコーティング溶液を、バルーン12の表面へ吐出する部材である。ディスペンシングチューブ94は、可撓性を備えた円管状の部材である。ディスペンシングチューブ94は、チューブ固定部83に上端が固定されており、チューブ固定部83から鉛直方向下方へ延在し、下端である吐出端97に開口部95が形成されている。ディスペンシングチューブ94は、移動台81を移動させることで、移動台81に設置される送液ポンプ93とともに、バルーンカテーテル10の軸心方向に沿う両方向へ直線的に移動可能である。ディスペンシングチューブ94は、バルーン12に押し付けられて撓んだ状態で、コーティング溶液をバルーン12の表面に供給可能である。
なお、ディスペンシングチューブ94は、コーティング溶液を供給可能であれば、円管状でなくてもよい。また、ディスペンシングチューブ94は、開口部95からコーティング溶液を吐出可能であれば、鉛直方向に延在していなくてもよい。
ディスペンシングチューブ94は、バルーン12への接触負担を低減し、かつバルーン12の回転に伴う接触位置の変化を撓みにより吸収できるように、柔軟な材料であることが好ましい。ディスペンシングチューブ94の構成材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素系樹脂等を適用できるが、可撓性を有して変形可能であれば、特に限定されない。
ディスペンシングチューブ94の外径は、特に限定されないが、例えば0.1mm〜5.0mm、好ましくは0.15mm〜3.0mm、より好ましくは0.3mm〜2.5mmである。ディスペンシングチューブ94の内径は、特に限定されないが、例えば0.05mm〜3.0mm、好ましくは0.1mm〜2.0mm、より好ましくは0.15mm〜1.5mmである。ディスペンシングチューブ94の長さは、特に限定されないが、バルーン直径の5倍以内の長さであることがよく、例えば1.0mm〜50mm、好ましくは3mm〜40mm、より好ましくは5mm〜35mmである。
制御部99は、例えばコンピュータにより構成され、回転機構部60、移動機構部80及び塗布機構部90を統括的に制御する。したがって、制御部99は、バルーン12の回転速度、ディスペンシングチューブ94のバルーン12に対する軸心方向への移動速度、ディスペンシングチューブ94からの薬剤吐出速度等を、統括的に制御することができる。
ディスペンシングチューブ94によりバルーン12に供給されるコーティング溶液は、コート層30の構成材料を含む溶液または懸濁液であり、水不溶性薬剤、賦形剤、有機溶媒及び水を含んでいる。コーティング溶液がバルーン12の表面に供給された後、有機溶媒及び水が揮発することで、バルーン12の表面に、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶である複数の長尺体を有するコート層30が形成される。コーティング溶液の粘度は、0.5〜1500cP、好ましくは1.0〜500cP、より好ましくは1.5〜100cPである。
水不溶性薬剤とは、水に不溶または難溶性である薬剤を意味し、具体的には、水に対する溶解度が、pH5〜8で5mg/mL未満である。その溶解度は、1mg/mL未満、さらに、0.1mg/mL未満でもよい。水不溶性薬剤は脂溶性薬剤を含む。
いくつかの好ましい水不溶性薬剤の例は、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリンを含むシクロスポリン類、ラパマイシン等の免疫活性剤、パクリタキセル等の抗がん剤、抗ウイルス剤または抗菌剤、抗新生組織剤、鎮痛剤及び抗炎症剤、抗生物質、抗てんかん剤、不安緩解剤、抗麻痺剤、拮抗剤、ニューロンブロック剤、抗コリン作動剤及びコリン作動剤、抗ムスカリン剤及びムスカリン剤、抗アドレナリン作用剤、抗不整脈剤、抗高血圧剤、ホルモン剤ならびに栄養剤を含む。
水不溶性薬剤は、好ましくは、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エベロリムスからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。本明細書においてラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エベロリムスとは、同様の薬効を有する限りそれらの類似体及び/またはそれらの誘導体を含む。例えば、パクリタキセルとドセタキセルは類似体の関係にある。ラパマイシンとエベロリムスは誘導体の関係にある。これらのうちでは、パクリタキセルがさらに好ましい。
賦形剤は、バルーン12上で基層32を構成する。賦形剤は、水溶性の低分子化合物を含む。水溶性の低分子化合物の分子量は、50〜2000であり、好ましくは50〜1000であり、より好ましくは50〜500であり、さらに好ましくは50〜200である。水溶性の低分子化合物は、水不溶性薬剤100質量部に対して、好ましくは5〜10000質量部、より好ましくは5〜200質量部、さらに好ましくは8〜150質量部である。水溶性の低分子化合物の構成材料は、セリンエチルエステル、クエン酸エステル、ポリソルベート、水溶性ポリマー、糖、造影剤、アミノ酸エステル、短鎖モノガルボン酸のグリセロールエステル、医薬として許容される塩及び界面活性剤等、あるいはこれら二種以上の混合物等が使用できる。水溶性の低分子化合物は、親水基と疎水基を有し、水に溶解することを特徴とする。水溶性の低分子化合物は、非膨潤性または難膨潤性であることが好ましい。賦形剤は、バルーン12上でアモルファス(非晶質)であることが好ましい。水溶性の低分子化合物を含む賦形剤は、バルーン12の表面上で水不溶性薬剤を均一に分散させる効果を有する。さらに、血管内でのバルーン12の拡張時に基層32が溶解しやすくなることで、バルーン12の表面上の水不溶性薬剤の長尺体33を放出しやすくなり、血管への薬剤の付着量を増加させる効果を有する。
有機溶媒は、特に限定されないが、テトラヒドロフラン、アセトン、グリセリン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、ヘキサン、エチルアセテート、水、中でもテトラヒドロフラン、エタノール、アセトン、水のうち、これらのいくつかの混合溶媒が好ましい。例えば、テトラヒドロフランと水、テトラヒドロフランとエタノールと水、テトラヒドロフランとアセトンと水、アセトンとエタノールと水、テトラヒドロフランとアセトンとエタノールと水といった組み合わせが挙げられる。
次に、上述したバルーンコーティング装置50を用いてバルーン12の表面に水不溶性薬剤の結晶を形成する方法を説明する。
初めに、バルーンカテーテル10の基端開口部13aに接続した三方活栓を介して、拡張用の流体をバルーン12内に供給する。次に、バルーン12を拡張させた状態で三方活栓を操作して拡張ルーメン22を密封し、バルーン12を拡張させた状態を維持する。バルーン12は、血管内での使用時の圧力(例えば8気圧)よりも低い圧力(例えば4気圧)で拡張される。なお、バルーン12を拡張させずに、バルーン12の表面にコート層30を形成することもでき、その場合には、拡張用の流体をバルーン12内に供給する必要はない。
次に、ディスペンシングチューブ94がバルーン12の表面と接触しない状態で、バルーンカテーテル10を支持台70に回転可能に設置し、ハブ13を回転機構部60に連結する。
次に、移動台81の位置を調節して、ディスペンシングチューブ94を、バルーン12に対して位置決めする。このとき、バルーン12においてコート層30を形成する最も先端側の位置に、ディスペンシングチューブ94を位置決めする。一例として、ディスペンシングチューブ94の延在方向(吐出方向)は、バルーン12の回転方向と逆方向である。したがって、バルーン12は、ディスペンシングチューブ94を接触させた位置において、ディスペンシングチューブ94からのコーティング溶液の吐出方向と逆方向に回転する。これにより、コーティング溶液に刺激を与え、薬剤結晶の核の形成を促すことができる。そして、ディスペンシングチューブ94の開口部95へ向かう延在方向(吐出方向)が、バルーン12の回転方向と逆方向であることで、バルーン12の表面に形成される水不溶性薬剤の結晶は、結晶が各々独立した長軸を有する複数の長尺体を含む形態型(morphological form)を含んで形成されやすい。なお、ディスペンシングチューブ94の延在方向は、バルーン12の回転方向と逆方向でなくてもよく、したがって同方向とすることができ、または垂直とすることもできる。
次に、送液ポンプ93により送液量を調節しつつコーティング溶液をディスペンシングチューブ94へ供給し、回転機構部60によりバルーンカテーテル10を回転させるとともに、移動台81を移動させて、ディスペンシングチューブ94をバルーン12の軸心方向に沿って徐々に基端方向へ移動させる。ディスペンシングチューブ94の開口部95から吐出されるコーティング溶液は、ディスペンシングチューブ94がバルーン12に対して相対的に移動することで、バルーン12の外周面に螺旋を描きつつ塗布される。
ディスペンシングチューブ94の移動速度は、特に限定されないが、例えば0.01〜2mm/sec、好ましくは0.03〜1.5mm/sec、より好ましくは0.05〜1.0mm/secである。コーティング溶液のディスペンシングチューブ94からの吐出速度は、特に限定されないが、例えば0.01〜1.5μL/sec、好ましくは0.01〜1.0μL/sec、より好ましくは0.03〜0.8μL/secである。バルーン12の回転速度は、特に限定されないが、例えば10〜300rpm、好ましくは30〜250rpm、より好ましくは50〜200rpmである。コーティング溶液を塗布する際のバルーン12の直径は、特に限定されないが、例えば1〜10mm、好ましくは2〜7mmである。
この後、バルーン12の表面に塗布されたコーティング溶液に含まれる有機溶媒が、水よりも先に揮発する。したがって、バルーン12の表面に、水不溶性薬剤、水溶性低分子化合物及び水が残された状態で、有機溶媒が揮発する。このように、水が残された状態で有機溶媒が揮発すると、水不溶性の薬剤が、水を含む水溶性低分子化合物の内部で析出し、結晶核から結晶が徐々に成長して、バルーン12の表面に、結晶が各々独立した長軸を有する複数の長尺体33を含む形態型(morphological form)の薬剤結晶が形成される。なお、この状態の長尺体33は、バルーン12の表面に対して立った状態となっている。長尺体33の基端は、バルーン12の表面、基層32の表面または内部に位置する可能性がある(図4を参照)。有機溶媒が揮発して薬剤結晶が複数の長尺体33として析出した後、水が有機溶媒よりもゆっくり蒸発し、水溶性低分子化合物を含む基層32が形成される。水が蒸発する時間は、薬剤の種類、水溶性低分子化合物の種類、有機溶媒の種類、材料の比率、コーティング溶液の塗布量等に応じて適宜設定されるが、例えば、1〜600秒程度である。
そして、バルーン12を回転させつつディスペンシングチューブ94を徐々にバルーン12の軸心方向へ移動させることで、バルーン12の表面に、軸心方向へ向かってコート層30を徐々に形成する。バルーン12のコーティングする範囲の全体に、長尺体33を有するコート層30が形成された後、回転機構部60、移動機構部80及び塗布機構部90を停止させる。
この後、バルーンカテーテル10をバルーンコーティング装置50から取り外して、バルーン12のコーティングが完了する。
次に、バルーン折り畳み装置100について説明する。バルーン折り畳み装置100は、バルーン12を内管21に対し巻き付けるように折り畳むことのできる装置である。
バルーン折り畳み装置100は、図9に示すように、台状に形成された基台110に、プリーティング部120、フォールディング部130及び支持台140が配置されている。プリーティング部120は、バルーン12に径方向に突出する羽根部40を形成できる。フォールディング部130は、バルーン12に形成された羽根部40を周方向に寝かせて畳むことができる。支持台140は、バルーンカテーテル10を載置して保持できる。バルーン12に形成される羽根部40は、バルーン12の略軸心方向に延びる折り目によって形成され、バルーン12の軸心に対して垂直な断面で見たとき、折り目がバルーン12の長軸から周方向に突出するように形成される。羽根部40の長軸方向の長さは、バルーン12の長さを超えない。羽根部40がカテーテルシャフト11から周方向に突出する方向の長さは、1〜8mmである。羽根部40の数は特に限定されず、2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚のいずれかから選択することができるが、本実施形態では3枚である。
基台110には、プリーティング部120に対して第1フィルム155及び第2フィルム156を供給するフィルム供給部150が、プリーティング部120に隣接して配置されている。また、基台110には、フォールディング部130に対して第1フィルム181及び第2フィルム182を供給するフィルム供給部180が、フォールディング部130に隣接して配置されている。
プリーティング部120は、基台110に対して垂直な前面板121を有し、前面板121はバルーンカテーテル10の先端部を挿入可能な挿入孔121aを有している。また、フォールディング部130は、基台110に対して垂直な前面板131を有し、前面板131はバルーンカテーテル10の先端部を挿入可能な挿入孔131aを有している。フォールディング部130の前面板131は、プリーティング部120の前面板121が面する方向に対して所定角度異なる方向に向かって面している。
支持台140のプリーティング部120及びフォールディング部130から離れた側には、基台110から上方に突出する支持軸111が枢着している。支持台140は、支持軸111を中心に基台110の上面をスライド移動することで、プリーティング部120の前面板121に対向する位置及びフォールディング部130の前面板131に対向する位置に、位置決めできる。
支持台140は、基台110に載置される基部141と、基部141上を水平移動可能な保持台部142とを有している。基部141は、基台110の上面を摺動可能である。保持台部142は、基部141の上面をスライド移動し、プリーティング部120またはフォールディング部130へ向かって前進または後退可能である。
保持台部142の上面には、バルーンカテーテル10のカテーテルシャフト11を載置可能な溝状の載置部142aが形成されている。また、保持台部142には、載置部142aに載置されたカテーテルシャフト11を保持する保持部143が設けられる。なお、バルーンカテーテル10を固定できるのであれば、他の方法によりバルーンカテーテル10を固定してもよい。
支持台140がプリーティング部120の前面板121に対向している状態において、保持台部142の載置部142aの延長線上に、前面板121に形成される挿入孔121aの中心が位置する。このため、載置部142aにカテーテルシャフト11が載置されたバルーンカテーテル10は、プリーティング部120に対し挿入孔121aの中心位置から内部に挿入される。支持台140がフォールディング部130の前面板131に対向している状態では、保持台部142の載置部142aの延長線上に、前面板131に形成される挿入孔131aの中心が位置する。このため、載置部142aにカテーテルシャフト11が載置されたバルーンカテーテル10は、保持台部142を基部141上でスライド移動させることで、フォールディング部130に対し挿入孔131aの中心位置から内部に挿入される。
次に、プリーティング部120の構造について説明する。図10に示すように、プリーティング部120は、内部に3つの羽根形成用のブレード122を有している。各ブレード122は、挿入されるバルーンカテーテル10の軸心方向に沿う各位置における断面形状が、同形状で形成される板状の部材である。ブレード122は、バルーン12が挿通される中心位置を基準として、それぞれが120度の角度をなすように配置されている。すなわち、各ブレード122は、周方向において等角度毎に配置されている。ブレード122は、外周端部付近に回動中心部122aを有し、この回動中心部122aを中心として回動することができる。また、ブレード122は、回動中心部122aより内周側に、軸心方向に延びる移動ピン122dを有している。移動ピン122dは、プリーティング部120内で回転可能な回転部材124に形成される嵌合溝124aに嵌合している。回転部材124は、略水平方向に延びる梁部126に連結されている。回転部材124は、油圧シリンダーやモーター等の駆動源125から力を受けて傾く梁部126から回転力を受けて回動可能である。回転部材124が回転すると、嵌合溝124aに嵌合する移動ピン122dが周方向へ移動し、これにより、各々のブレード122が回動中心部122aを中心として回動する。3つのブレード122が回動することにより、ブレード122に囲まれた中心部の空間領域を狭めることができる。なお、ブレード122の数は、2つ以上であれば、特に限定されない。
ブレード122は、図11に示すように、回動中心部122aと反対側の内周端部に、略弧状の第1形状形成部122bと第2形状形成部122cとを有している。第1形状形成部122bは、ブレード122が回動するのに伴い、プリーティング部120内に挿通されるバルーン12の表面に当接して、バルーン12に径方向に突出する羽根部40を形成することができる。第2形状形成部122cは、ブレード122が回動するのに伴い、バルーン12に形成される羽根部40に当接し、その羽根部40を所定方向に湾曲させることができる。また、プリーティング部120は、ブレード122を加熱するためのヒーター(図示しない)を有している。ブレード122のバルーンカテーテル10の軸心方向に沿う長さは、バルーン12の長さよりも長い。また、ブレード122の第1形状形成部122b及び第2形状形成部122cの長さは、ブレード122の全長に渡っていてもよいし、渡っていなくてもよい。
ブレード122には、フィルム供給部150から樹脂製の第1フィルム155及び第2フィルム156が供給される。各フィルムを案内するため、プリーティング部120内には複数の回転軸部123が設けられている。第1フィルム155は、第1フィルム保持部151から回転軸部123を介して、上部に配置されているブレード122の表面に係っている。また、第1フィルム155は、ブレード122から回転軸部123を経て、図示しないモーター等の駆動源により回転駆動されるフィルム巻取部153に至っている。第2フィルム156は、第2フィルム保持部152から回転軸部123を介して、下部に配置されている2つのブレード122に係っている。また、第2フィルム156は、回転軸部123を経て、フィルム巻取部153に至っている。これらにより、バルーン12が挿通されるプリーティング部120の中心位置は、第1フィルム155と第2フィルム156に囲まれた状態となっている。
第1フィルム155と第2フィルム156は、バルーン12がプリーティング部120に挿入され、ブレード122が回動してバルーン12に羽根部40を形成する際に、バルーン12がブレード122の表面に直接接触しないように保護する機能を有する。バルーン12の羽根部40を形成した後、第1フィルム155と第2フィルム156はフィルム巻取部153に所定長さが巻き取られる。すなわち、第1フィルム155及び第2フィルム156のバルーン12に一度接触した部分は、再度バルーン12に接触せず、バルーン12が挿入される度に新しい部分がプリーティング部120の中心位置に供給される。
図11に示すように、バルーン12の挿入前の状態において、3つのブレード122の第1形状形成部122b及び第2形状形成部122cは、それぞれ離隔した状態となっている。ブレード122間の中心領域は、それぞれ略弧状の第1形状形成部122bに囲まれており、折り畳み前のバルーン12を挿入することができる。
次に、フォールディング部130の構造について説明する。図12に示すように、フォールディング部130は、内部に10個の羽根畳み用のブレード132を有している。各ブレード132は、挿入されるバルーンカテーテル10の軸心方向に沿う各位置における断面形状が、同形状で形成される板状の部材である。ブレード132は、バルーンが挿通される中心位置を基準として、それぞれが36度の角度をなすように配置されている。すなわち、各ブレード132は、周方向において等角度毎に配置されている。ブレード132は、略中央付近に回動中心部132aを有し、この回動中心部132aを中心として回動することができる。また、各ブレード132は、略外周端部付近に、軸方向に延びる移動ピン132cを有している。移動ピン132cは、フォールディング部130内で回転可能な回転部材133に形成される嵌合溝133aに嵌合している。回転部材133は、略水平方向に延びる梁135に連結されている。回転部材133は、油圧シリンダーやモーター等の駆動源134から力を受けて傾く梁135から回転力を受けて回動可能である。回転部材133が回転すると、嵌合溝133aに嵌合する移動ピン132cが周方向へ移動し、これにより、各々のブレード132が回動中心部132aを中心として回動する。10個のブレード132が回動することにより、ブレード132に囲まれた中心部の空間領域を狭めることができる。なお、ブレード132の数は、10個に限定されない。
ブレード132は、先端側が屈曲すると共に、先端部132bは尖った形状を有している。先端部132bは、ブレード132が回動するのに伴い、フォールディング部130内に挿通されるバルーン12の表面に当接して、バルーン12に形成された羽根部40を周方向に寝かせるように畳むことができる。また、フォールディング部130は、ブレード132を加熱するためのヒーター(図示しない)を有している。
ブレード132には、フィルム供給部180から樹脂製の第1フィルム181及び第2フィルム182が供給される。各フィルムの供給構造は、プリーティング部120の場合と同様である。第1フィルム181と第2フィルム182は、ブレード132によって囲まれた中央の空間領域を挟むように対向配置される。これら第1フィルム181と第2フィルム182により、フォールディング部130に挿入されたバルーン12は、ブレード132の表面に直接接触しないようにすることができる。第1フィルム181と第2フィルム182は、ブレード132を経て、図示しないモーター等の駆動源により回転駆動されるフィルム巻取部183に至っている。
図13に示すように、バルーン12の挿入前の状態において、各ブレード132の先端部132bは、それぞれ周方向に離隔した状態となっている。ブレード132に囲まれた中心領域であって第1フィルム181と第2フィルム182の間には、羽根部40を形成されたバルーン12を挿入することができる。
次に、バルーン折り畳み装置100を用いて、バルーンコーティング装置50により薬剤の結晶が表面に形成されたバルーン12を折り畳む方法を説明する。
まず、バルーン12に羽根部40を形成するために、カテーテルシャフト11を、支持台140の載置部142aに載置して保持部143により保持する。バルーン12には、ハブ13に取り付けられる三方活栓、ハブ13及び内管21を通じて拡張用流体が注入され、バルーン12はある程度拡張した状態とされる。また、プリーティング部120のブレード122が加熱される。ガイドワイヤルーメン23には、芯材61が挿入される。この芯材61によって、カテーテルシャフト11の自重による撓みが抑制される。
次に、図14に示すように、保持台部142を基部141上でスライド移動させて、バルーンカテーテル10を挿入孔121aからプリーティング部120に挿入する。
次に、駆動源125を作動させて回転部材124(図10を参照)を回転させると、図15に示すように、ブレード122が回動し、各ブレード122の第1形状形成部122bが互いに近づき、ブレード122間の中心領域が狭まる。これに伴い、ブレード122間の中心領域に挿入されたバルーン12は、第1形状形成部122bによって内管22に対し押し付けられる。バルーン12のうち第1形状形成部122bによって押圧されない部分は、ブレード122の先端部と、当該ブレード122に隣接するブレード122の第2形状形成部122cとの間の隙間に押し出され、一方に湾曲した羽根部40が形成される。ブレード122によりバルーン12は約50〜60度に加熱されるので、形成された羽根部40はそのままの形を維持することができる。このようにして、バルーン12に周方向3枚の羽根部40が形成される。
このとき、各ブレード122のバルーン12と接触する表面は、第1フィルム155及び第2フィルム156によって覆われており、バルーン12はブレード122の表面に直接接触することはない。バルーン12に羽根部40を形成した後、ブレード122を元の位置に戻すように回動させ、バルーン12はプリーティング部120から引き抜かれる。なお、プリーティングの過程において、バルーン12の内部の体積が減少するため、それに合わせて、三方活栓を調節して拡張用流体を外部に排出し、バルーン12を収縮(deflate)させることが好ましい。これにより、バルーン12に過剰な力が作用することを抑制できる。
バルーン12は、突出する羽根部40が形成されることで、図15及び図6(b)に示すように、第2形状形成部122cに押圧されて羽根部40の外周側に向かう面を構成する羽根外側部40bと、ブレード122の先端部に押圧されて羽根部40の周面部41と対向する面を構成する羽根内側部40aと、第1形状形成部122bに押圧されて内管21の周面に沿う周面部41とが形成される。
プリーティングの過程では、羽根部40を形成するためにバルーン12を収縮させつつブレード122で押圧するため、ブレード122による強い押圧力は必要としない。したがって、ブレード122によりバルーン12が押圧されても、バルーン12の表面に形成された結晶の構造はほとんど変化しない。すなわち、バルーン12の表面に形成された長尺体33は、プリーティングの工程を通して立設状態を維持する。なお、プリーティングの過程において、バルーン12を過拡張させた後に、少し収縮(deflate)させるステップ、または、バルーン12を過拡張とならない程度に拡張させた後に、少し収縮させるステップを有していてもよい。
次に、保持台部142を基部141の上面で移動させてプリーティング部120から離間させ、バルーンカテーテル10をプリーティング部120から引き抜く。次に、支持台140の向きを変化させ、フォールディング部130の前面板131に対向する位置に、支持台140を位置決めする。この後、保持台部142を基部141の上面で移動させて、図16に示すように、バルーンカテーテル10を挿入孔131aからフォールディング部130内に挿入する。フォールディング部130のブレード132は、予め50〜60度程度に加熱されている。
羽根部40が形成されたバルーン12をフォールディング部130に挿入した後、図17に示すように、駆動源134を作動させて回転部材133を回転させると、ブレード132が回動し、各ブレード132の先端部132bが互いに近づき、ブレード132間の中心領域が狭まる。これに伴い、ブレード132間の中心領域に挿入されたバルーン12は、各ブレード132の先端部132bによって羽根部40が周方向に寝かされた状態となる。ブレード132は、バルーン12の挿入前に予め加熱されており、ブレード132によってバルーン12が加熱されるので、ブレード132により周方向に寝かされた羽根部40は、そのままの形を維持することができる。このとき、各ブレード132のバルーン12と接触する表面は、第1フィルム181及び第2フィルム182によって覆われており、バルーン12はブレード132の表面に直接接触することはない。
バルーン12の羽根部40が折り畳まれると、図17及び図6(c)に示すように、羽根部40のうち羽根内側部40aと、周面部41のうち対向面部41aとが重なって接触し、バルーン12の表面同士が対向して重なりあう。また、羽根部40のうち羽根外側部40bと、周面部41のうち外周構成面部41bとは、外周側に露出する。折り畳まれた状態で外周側に露出する羽根外側部40bと外周構成面部41bは、ブレード132に押圧される第1フィルム181と第2フィルム182から周方向に擦れるような押圧力を受け、さらに加熱される。
ブレード132によりバルーン12の表面を周方向に沿って押圧しながら、カテーテルシャフト11を保持する保持台部142がスライド移動する。保持台部142は、一方向にまず移動し、次いで元の位置に戻るように往復移動する。フォールディング部130内に挿入されるバルーンカテーテル10には、図16に示すように芯材61が挿通されており、その先端部はフォールディング部130によって保持されている。また、芯材61の保持部分は、カテーテルシャフト11の長さ方向に沿って移動可能となっており、保持台部142がスライド移動するのに合わせて移動する。これによって、バルーン12がフォールディング部130内において軸方向に沿って移動できる。このように保持台部142及び芯材61の先端部が移動することで、フォールディング部130内のバルーン12は、軸方向に沿って往復動する。バルーン12が一方向に移動したら、ブレード132による押圧を一旦解除し、再度、ブレード132でバルーン12を押圧しながら、バルーン12を逆方向に移動させるようにしてもよい。
図18(a)に示すように、薬剤結晶の長尺体33は、ブレード132による押圧前の状態で、それぞれ立った状態である。バルーン12の表面が、ブレード132によって周方向D3に沿った力を受けつつ、バルーン12の軸方向D4に沿う方向への移動が加わることで、図18(b)に示すように、薬剤結晶の長尺体33の一部は、バルーン12の周方向D3及び軸方向D4の両方と所定角度を有する第1の方向D1に向かって傾倒する。さらに、バルーン12の軸方向D4に沿う他方向への移動により、図18(c)に示すように、薬剤結晶の長尺体33の一部は、第1の方向D1と異なる第2の方向D2に向かって傾倒する。結果的に、第1の方向D1に向かって傾倒した長尺体33と、第2の方向D2に向かって傾倒した長尺体33とが、互いに交差し、多くの長尺体33が交差傾倒した状態とされる。
なお、バルーン12の表面の長尺体33を所定方向に沿って傾倒させるためには、ブレード132によるバルーン12に対する押圧力、押圧時間及び加熱温度を適切に設定することが必要である。
また、互いに対向して重なりあう羽根内側部40aと対向面部41aは、外部に露出しないため、ブレード132からの押圧力が間接的に作用する。また、羽根内側部40aと対向面部41aは、互いに完全には密着した状態となっていない。このため、これらの領域においては、長尺体33は立った状態を維持し、傾倒した状態とはならない。
バルーン12の羽根部40を畳んだら、ブレード132を元の位置に戻すように回動させる。次に、把持部110からバルーンカテーテル10を取り外し、バルーン12をフォールディング部130から引き抜く。次に、保持部143によるカテーテルシャフト11の保持を解除し、バルーン12を筒状の保護シース15(図1を参照)で覆って、バルーンカテーテル10におけるバルーン12の折り畳みが完了する。保護シース15は、バルーン12からの薬剤の脱落を抑制する部材であり、バルーンカテーテル10を使用する前に取り除かれる。
これらの工程により、バルーン12が折り畳まれると共に、バルーン12表面のうち外周側に露出する領域の長尺体33を、立った状態から交差傾倒した状態とすることができる。
次に、本実施形態に係るバルーンカテーテル10の使用方法を、血管内の狭窄部を治療する場合を例として説明する。
まず、術者は、セルジンガー法等の公知の方法により、皮膚から血管を穿刺し、イントロデューサ(図示せず)を留置する。次に、バルーンカテーテル10の保護シース15を外し、プライミングを行った後、ガイドワイヤルーメン23内にガイドワイヤ200(図19を参照)を挿入する。この状態で、ガイドワイヤ200及びバルーンカテーテル10をイントロデューサの内部より血管内へ挿入する。続いて、ガイドワイヤ200を先行させつつバルーンカテーテル10を進行させ、バルーン12を狭窄部300へ到達させる。なお、バルーンカテーテル10を狭窄部300まで到達させるために、ガイディングカテーテルを用いてもよい。
バルーン12を血管内で移動させる際、折り畳まれた状態のバルーン12は、外周側に露出する領域において薬剤結晶の長尺体33が交差傾倒しているので、長尺体33は剥離しにくい。すなわち、バルーン12の挿入中における薬剤の逸失を抑え、目的の位置まで薬剤を効果的に送達させることができる。
バルーン12を狭窄部300に配置した後には、ハブ13の基端開口部13aより、インデフレーターまたはシリンジ等を用いて拡張用流体を所定量注入し、拡張ルーメン22を通じてバルーン12の内部に拡張用流体を送り込む。これにより、図19に示すように、折り畳まれたバルーン12が拡張し、狭窄部300が、バルーン12によって押し広げられる。バルーン12が拡張すると、前述のように、薬剤結晶の長尺体33のうち交差傾倒した長尺体33は立ち上がる。そして、コート層30が狭窄部300に接触することで、コート層30は生体組織に押し付けられる。
コート層30が生体組織に押し付けられることで、コート層30に含まれる低分子化合物である基層32が徐々にまたは速やかに溶けつつ、薬剤が生体へ移行される。バルーン12の拡張に伴い立ち上がった状態の長尺体33は、凹凸のある病変部の内壁面に対して付着しやすいので、薬剤を病変部に移行させやすくすることができる。すなわち、狭窄部300に対し薬剤が効果的に移行される。したがって、狭窄部300の再狭窄が、効果的に抑制される。
この後、拡張用流体をハブ13の基端開口部13aより吸引して排出し、バルーン12を収縮させて折り畳まれた状態とする。この後、イントロデューサを介して血管よりガイドワイヤ200及びバルーンカテーテル10を抜去し、手技が終了する。
以上のように、本実施形態に係るバルーンカテーテル10は、カテーテルシャフト11の先端部にバルーン12を有し、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶である複数の長尺体33がバルーン12の表面に設けられているバルーンカテーテル10であって、バルーン12の表面は、50体積%以上の長尺体33が隣接する長尺体33と交差状に重なりあうように傾倒している領域を有する。これにより、折り畳まれたバルーン12が生体管腔を挿入されていく際には、長尺体33が絡み合って傾倒していることにより、バルーン12からの剥離が抑制され、一方でバルーン12が病変部で拡張された際には、長尺体33が立ち上がって病変部への移行性を良好にすることができる。つまり、薬剤を病変部に効果的に送達しつつ、病変部における薬剤の移行も効果的に行うことができる。
また、隣接する長尺体33と重なりあうように傾倒している長尺体33のうち、一方はバルーン12の表面に沿う第1の方向D3に向かい、他方は第1の方向D3と異なる第2の方向D4に向かっている。これにより、長尺体33同士が絡みあうように交差し合い、バルーン12の表面が生体管腔の内壁面を摺接しても、長尺体33が剥離することをより抑制することができる。
また、収縮状態のバルーン12は、周方向に複数の羽根部40と、カテーテルシャフト11の周方向に沿う周面部41とを有すると共に、羽根部40はバルーン12の周方向に沿って折り畳まれ、バルーン12の表面のうち、羽根部40の外周側に向かう面に、50体積%以上の長尺体33が、隣接する長尺体33と交差状に重なりあうように傾倒している領域を有するようにすれば、生体管腔の内壁面に摺接する面に、互いに交差する長尺体33を有する領域を設けることとなり、バルーン12の挿入時における長尺体33の剥離を効果的に抑制できる。
また、水不溶性薬剤は、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、またはエベロリムスであるようにすれば、血管内の狭窄部の再狭窄を良好に抑制できる。
また、本実施形態に係るバルーンカテーテル10の製造方法は、独立した長軸を有して延在する水不溶性薬剤の結晶である複数の長尺体33がバルーン12の表面に設けられているバルーンカテーテル10の製造方法において、バルーン12の表面に長尺体33を形成するステップと、バルーン12に径方向に突出する羽根部40を形成するステップと、バルーン12に形成された羽根部40を周方向に沿って寝かせるステップと、を有し、バルーン12に羽根部40を形成するステップ、またはバルーン12の羽根部40を寝かせるステップのいずれかにおいて、バルーン12を変形させるために作用させる力によって、バルーン12の表面を第1の方向D3に押圧し、さらに第1の方向D3と異なる第2の方向D4に押圧することにより、バルーン12の表面の長尺体33を傾倒させ、少なくとも50体積%以上の長尺体33が、隣接する長尺体33と交差状に重なりあうように傾倒した領域を形成する。これにより、バルーン12に羽根部40を形成するステップ、または羽根部40を折り畳むステップにおいてバルーン12に作用する力を利用して、バルーン12の表面において、長尺体33同士を交差させつつ傾倒させることができる。
また、バルーン12の表面を押圧する際に、バルーン12を軸方向に沿う2方向に移動させることで、バルーン12を変形させるために作用させる力によりバルーン12の表面を第1の方向D3に押圧し、さらに第2の方向D4に押圧するようにすれば、バルーン12を軸方向に移動させるだけで、バルーン12の表面を第1の方向D3向かってに押圧し、次いで第2の方向D4に向かって押圧することができ、互いに交差して傾倒する長尺体33をバルーン12の表面に形成することができる。
また、本実施形態に係る処置方法は、バルーンカテーテル10を使用して生体管腔内の病変部に薬剤を送達する処置方法であって、バルーン12を生体管腔内に挿入して病変部へ到達させるステップと、バルーン12を拡張させて長尺体33を生体組織に押し付けるステップと、バルーン12を収縮させて生体管腔から抜去するステップと、を有する。これにより、折り畳まれた状態のバルーン12を血管内で移動させる際に、バルーン12の外周側に露出する領域では薬剤結晶の長尺体33が交差傾倒しているので、長尺体33の剥離を抑制でき、また、病変部でのバルーン12の拡張時には、薬剤結晶の長尺体33が立った状態となり、生体組織への移行を効果的に行うことができる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、例えば、上述の実施形態に係るバルーンカテーテル10は、ラピッドエクスチェンジ型(Rapid exchange type)であるが、オーバーザワイヤ型(Over−the−wire type)であってもよい。
また、本実施形態では、バルーン12のフォールディングの過程において、バルーン12の表面に形成された長尺体33を交差傾倒した状態となるように傾倒させているが、プリーティングの過程において、ブレード122による押圧により長尺体33を傾倒させてもよい(図15を参照)。
本実施形態では、バルーン12の羽根外側部40aに長尺体33が交差傾倒した領域を形成したが、長尺体33が交差傾倒した領域は、バルーン12の表面の任意の領域に形成することができ、上記領域に限られない。例えば、バルーン12の周面部41のうち外周構成面部41bに長尺体33が交差傾倒した領域を形成することもできるし、また、ブレード132による押圧力を調整することにより、羽根内側部40aや対向面部41aにも、長尺体33が交差傾倒した領域を形成することができる。
前述のように、基層32は、アモルファス、結晶粒子、または、その混合物として存在する。図4の基層32は、結晶粒子及び/または粒子状アモルファスの状態であるが、図20に示すように、基層32がフィルム状アモルファスの状態であってもよい。
また、本実施形態において、折り畳まれたバルーン12の羽根部40は、先端が隣接する羽根部40に達しないが、図21に示す2つの例のように、先端が隣接する羽根部40に達していてもよい。図21(a)の例では、羽根部40の根元側と周面部41との間に根元側空間部42が形成され、羽根部40の先端側と周面部41との間に先端側空間部43が形成される。図21(b)の例では、羽根部40の根元側から隣接する羽根部40までの領域の全体において、羽根部40と周面部41との間に空間部44が形成されている。