JP6950173B2 - 立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置 - Google Patents

立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置に関する。
ラピッドプロトタイプの造形装置による歯科用補綴物の製造は型を必要とせず、精密な構造の補綴物が得られることなどの特徴を有することから歯科分野に限らず様々な分野で検討されている。
前記ラピッドプロトタイプの造形方法としては、粉体層もしくはこれに準じた材料の薄層に接着剤を添加する方法や、液体層に硬化性光線を照射して立体形状を造形する方法などが知られている。
例えば、ベース材に着色した樹脂を積層し、硬化させる3Dインクジェットプリンターのような造形装置による製造方法で、より自然歯に近い構成の歯を得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
本発明は、焼結体の密度が高く、かつ高強度であって、より審美性の高い立体造形物を簡便かつ効率良く製造することができる立体造形物の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の立体造形物の製造方法は、第一の立体造形用材料を用いて第一の立体造形用材料層を形成する層形成工程と、造形される立体造形物の表層を構成する前記第一の立体造形用材料層の第一領域に、第二の立体造形用液体材料を付与する第二の立体造形用液体材料付与工程と、前記第一領域以外の前記立体造形物の内部を構成する第二領域に第三の立体造形用液体材料を付与する第三の立体造形用液体材料付与工程と、を複数回繰り返す。
本発明によると、焼結体の密度が高く、かつ高強度であって、より審美性の高い立体造形物を簡便かつ効率良く製造することができる立体造形物の製造方法を提供することができる。
図1は、立体造形物の一例を示す模式図である。 図2は、立体造形物の製造装置の一例を示す概略図である。 図3は、立体造形物の製造装置の他の一例を示す概略図である。 図4は、焼結後の立体造形物の2層間がほぼ密着している状態を示す写真である。 図5は、焼結後の立体造形物の2層間に空隙が発生している状態を示す写真である。
(立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置)
本発明の立体造形物の製造方法は、第一の立体造形用材料を用いて第一の立体造形用材料層を形成する層形成工程と、造形される立体造形物の表層を構成する前記第一の立体造形用材料層の第一領域に、第二の立体造形用液体材料を付与する第二の立体造形用液体材料付与工程と、前記第一領域以外の前記立体造形物の内部を構成する第二領域に第三の立体造形用液体材料を付与する第三の立体造形用液体材料付与工程と、を複数回繰り返し、除去工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の立体造形物の製造方法は、従来の3Dインクジェットプリンターのような造形装置による製造方法では、人工歯に対して、グラデーションをほとんど付加することができないという問題があるという知見に基づくものである。
従来から、歯科用補綴物は、隣接する歯と詳細に比較されるため、限りなく自然歯に近い構造のものが望まれるという非常に高い審美性が要求されるが、歯の構造や色合いは人種、性別、年齢等の諸要因で様々に変化する上に、従来の方法で自然歯と同一構成の補綴物を作製することは非常に困難であり、歯科医や歯科技工士などの技術や経験のみに支えられてきたのが実情であった。
また、従来の歯科補綴物の作製方法では、人工歯に対して、グラデーションをほとんど付加することができないが、インクジェット方式であれば、立体造形用液体に色材を含有させることができるため、任意な着色が可能であり、更なる高付加価値の付与が期待できる。
図1は、歯の構成の一例を示す模式図である。歯の表面10にはほとんど透明なエナメル質層が歯の一部もしくは全部を覆う構造となっており、内部20には象牙質層や歯肉がある。前記象牙質層や歯肉は着色していて、その色は人種、性別、住環境、年齢、体調などにより個体差が大きい。内部の色は、エナメル質層の歯の先端(歯端)にも微かに反映されるが、従来のCAD/CAMなどの切削加工によるZrセラミックスの場合は非常に際立った白色を呈するため、そのままでは隣接する歯の色とは明らかに異なり浮いてしまうため、審美性を著しく損なうことになっていた。
そこで、歯科技工士等の手作業によって追加工として表面に着色したガラスを修飾する築盛工程を経て、より自然歯に近い色を再現していたが、バラツキが大きいことや、元々の歯の構成や着色部分の位置が異なるために隣接する歯との違和感を指摘されており、自然歯と同じ構成の歯科補綴物が要求されている。
本発明の立体造形物の製造装置は、第一の立体造形用材料層を保持するための立体造形用材料層保持手段と、第一の立体造形用材料を用いて第一の立体造形用材料層を形成する層形成手段と、造形される立体造形物の表層を構成する前記第一の立体造形用材料層の第一領域に、第二の立体造形用液体材料を付与する第二の立体造形用液体材料付与手段と、前記第一領域以外の前記立体造形物の内部を構成する第二領域に第三の立体造形用液体材料を付与する第三の立体造形用液体材料付与手段と、を有し、除去手段を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の手段を有する。
前記立体造形物の製造方法としては、歯科用補綴物を製造することが好ましい。
<層形成工程、及び層形成手段>
前記層形成工程は、第一の立体造形用材料を用いて第一の立体造形用材料層を形成する工程であり、更に必要に応じてその他の処理を含む。
前記層形成手段は、第一の立体造形用材料を用いて第一の立体造形用材料層を形成する手段であり、更に必要に応じてその他の部材を含む。
前記層形成工程は、前記層形成手段により好適に実施することができる。
−第一の立体造形用材料−
前記第一の立体造形用材料としては、無機粒子、有機化合物A、溶剤を含むスラリーであることが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有した液体状態であることが好ましい。
前記第一の立体造形用材料は、粉末であってもよいが、立体造形物の精度を担保するために小粒径化した粉末である無機粒子を用いた場合、流動性が著しく悪化し、搬送できなくなる場合もあるために、溶媒中に分散した泥漿(スラリー)形態であることが好ましい。
−−無機粒子−−
前記無機粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セラミックス粒子、金属粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、生体適合性を有することが好ましい。
−−−セラミックス粒子−−−
前記セラミックス粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、シリカ粒子、二ケイ酸リチウム粒子等の酸化物粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジルコニア粒子が好ましい。
前記セラミックス粒子としては、ジルコニア粒子を用いる場合は、安定化剤としてイットリアやセリア等を含有してもよい。
前記セラミックス粒子の体積平均粒径としては、5μm未満が好ましく、1μm未満がより好ましい。前記体積平均粒径が、5μm未満であると、グリンシート又はグリン体の密度が低くなることを防止し、良好に焼結することができ、力学的強度を向上できる。前記セラミックス粒子の体積平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の粒径測定装置を選択することができ、例えば、マルチサイザーIII(コールターカウンター社製)やFPIA−3000(シスメックス株式会社製)などを用いて、公知の方法に従って測定することができる。なお、前記グリンシート又はグリン体は、泥漿とバインダーの混錬物であるコンパウンドを射出成型したシート又は成型体である。
前記ジルコニア粒子としては、極めて高い融点を持つことから、体積平均粒径を小さくしないと焼結できない傾向にある。理想とする体積平均粒径は数十nmオーダーであり、1μm以上になると、粒子間隙が多く残存するため、焼結することが困難となることがある。通常の積層造形を行う上では、ジルコニア粒子を含む材料を供給槽から印字槽へ搬送する必要があるが、前記材料を構成する粒子のサイズが小さいと、粒子間力が強く働き、流動性が著しく悪化してしまう傾向にある。したがって、焼結性を保持しつつ流動性を向上させるためには、体積平均粒径を数百nmオーダー以下で維持しながら泥漿化し、ハンドリングできるようにすることが好ましい。
前記ジルコニア粒子中の前記安定化剤(イットリア、セリア等)の含有量としては、前記第一の立体造形用材料全量に対して、2質量%以上6質量%以下が好ましく、3質量%以上5質量%以下がより好ましい。前記含有量が、2質量%以上6質量%以下であると、安定化剤としての機能が十分に発揮され、焼成時にクラックが生じることが少なくなる。前記ジルコニア粒子中の前記安定化剤の含有量は、例えば、ICP発光分光分析法により測定することができる。
前記ジルコニア粒子の単斜晶相率としては、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。前記単斜晶相率が、30%以下であると、正方晶相率が適切となり、力学的強度が良好である。前記無機粒子の単斜晶相率は、例えば、X線粉末回折装置を用いて、所定の条件で測定することができる。
前記セラミックス粒子の製造方法としては、公知の方法が利用でき、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱分解法、共沈法、加水分解法などが挙げられる。これらの中でも、ジルコニア粒子においては熱分解法、共沈法などが好ましい。
前記熱分解法としては、例えば、オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウム水溶液を所定量混合し、塩化ナトリウム(又は塩化カリウム)をオキシ塩化ジルコニウム全量に対して、0.1質量%以上1質量%以下添加し、混合する方法などが挙げられる。この混合液を噴霧乾燥法等の瞬間乾燥を行い、乾燥粉末が得られる。
前記瞬間乾燥とは、10秒間以内に乾燥できる手法であり、乾燥温度は200℃以上の加熱空気中にて行うことが好ましい。次に、前記乾燥粉末を空気中で800℃以上1,200℃以下の温度で熱分解させることにより、酸化物仮焼粉末を得ることができる。前記酸化物仮焼粉末を湿式粉砕法にて粉砕径を2μm以下になるように粉砕し、水洗する。
前記水洗の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メンブレンフィルターを使用した連続式洗浄ろ過法が好ましい。
前記水洗により、無機粒子中のナトリウム(又はカリウム)濃度が酸化物に換算した量として10ppm以上100ppm以下の範囲になるように十分に水洗する。前記水洗後の泥漿を乾燥させることにより、無機粒子(ジルコニア粉末)を得ることができる。
前記共沈法としては、例えば、オキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウム水溶液を混合する方法などが挙げられる。ここで、特にオキシ塩化ジルコニウムと塩化イットリウムからのそれぞれの水和物が析出するpHを一定にするように金属錯体を形成させるため、硫酸ナトリウム(又は硫酸カリウム)をジルコニアに対し、モル比が、好ましくは0.3以上0.7以下となるように添加し、50℃以上100℃以下の温度で数時間以上反応させる。この混合液に水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリ水溶液を撹拌しながら加え、水溶液のpHを8以上10以下とする。得られた共沈水和物粒子を十分水洗し、酸化物に換算したときのナトリウム(又はカリウム)が10ppm以上100ppm以下の範囲となっていることを確認する。水洗後の水和物粒子を脱水及び乾燥させ、空気中で800℃以上1,200℃以下の温度で焼成することで酸化物仮焼粉末を得る。得られた酸化物仮焼粉末を2μm以下まで湿式粉砕し、乾燥することにより無機粒子(ジルコニア粉末)が得られる。
−−−金属粒子−−−
前記金属粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン粒子、チタン合金粒子、コバルト/クロム合金粒子、ステンレス合金粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、チタン粒子、チタン合金粒子が好ましい。
前記金属粒子の体積平均粒径としては、50μm未満が好ましく、10μm未満がより好ましい。前記体積平均粒径が、50μm未満であると、粒子間隙を少なくでき、グリンシート又はグリン体の密度を高くできることで、焼結時の焼成収縮を小さくでき、寸法精度を向上できる。前記金属粒子の体積平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の粒径測定装置を選択することができ、例えば、マルチサイザーIII(コールターカウンター社製)やFPIA−3000(シスメックス株式会社製)などを用いて、公知の方法に従って測定することができる。
前記無機粒子の含有量としては、前記第一の立体造形用材料100質量部に対して、20質量部以上70質量部以下が好ましい。前記含有量が、20質量部以上であると、揮発する溶媒量が相対的に少なくでき、グリンシート又はグリン体の密度を高くすることができ、70質量部以下であると、泥漿としての流動性を向上でき、ドクターブレード等による泥漿液の搬送を良好に行うことができる。
−−有機化合物A−−
前記有機化合物Aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性樹脂などが挙げられる。
また、前記有機化合物Aとしては、塩基性官能基と反応性を有する酸性官能基を有することが好ましい。
前記酸性官能基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基などが挙げられる。前記酸性官能基を有する有機化合物Aとしては、例えば、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、塩基性官能基との反応性が高い点から、ポリアクリル酸が好ましい。
前記ポリアクリル酸の重量平均分子量(Mw)としては、400,000以上が好ましく、400,000以上1,000,000以下がより好ましく、600,000以上800,000以下が特に好ましい。前記重量平均分子量(Mw)が、400,000以上であると、塩基性官能基を有する前記第二の立体造形用液体材料又は第三の立体造形用液体材料中の有機化合物Bとの架橋反応が容易となり、立体造形物の硬化時間が適切である。一方、前記重量平均分子量(Mw)が、1,000,000以下であると、泥漿液(スラリー液)の粘度が適切であり、得られる泥漿中での無機粒子のバラツキがより生じない傾向にある。前記重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって、単離したポリアクリル酸の分子量分布を求めて、これを基に重量平均分子量を算出することができる。
前記有機化合物Aの含有量としては、前記無機粒子100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下が好ましい。前記含有量が、5質量部以上であると、結着効果を十分に得ることができ、泥漿中での無機粒子の分散状態が良好になり、分散安定性を向上できる。一方、前記含有量が、30質量部以下であると、泥漿液の粘度を低くでき、ドクターブレード等による泥漿の搬送を良好に行うことができる。前記有機化合物Aの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の熱分析装置を選択することができ、例えば、DSC−200(セイコーインスツル株式会社製)などを用いて、公知の方法に従って測定することができる。
−−溶媒−−
前記溶媒としては、前記有機化合物Aを溶解することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、メタノール、エタノール、トルエン(沸点:110.6℃)等の極性溶媒などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、グリンシート又はグリン体造形の生産性を向上の点から、沸点が低い有機溶剤が好ましく、沸点が80℃以下である有機溶剤がより好ましい。
前記沸点が80℃以下である有機溶剤としては、例えば、エタノール(沸点:78.37℃)、メタノール(沸点:64.7℃)、酢酸エチル(沸点:77.1℃)、アセトン(沸点:56℃)、塩化メチレン(沸点:39.6℃)などが挙げられる。
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散剤、可塑剤、焼結助剤などが挙げられる。前記第一の立体造形用材料が、前記分散剤を含むと、前記無機粒子の分散性を改善し、静止時の沈降を抑制することができる点で好ましく、グリンシート又はグリン体を造形する際に無機粒子が連続して存在しやすくなる。また、前記可塑剤を含むと、前記第一の立体造形用材料からなるグリンシート又はグリン体前駆体が乾燥した際に亀裂が入りにくくなる点で好ましい。前記焼結助剤を含むと、得られた積層造形物につき焼結処理を行う場合において、より低温での焼結が可能となる点で好ましい。
前記第一の立体造形用材料層としては、支持体(立体造形用材料層保持手段)上に積層されることが好ましい。
−支持体−
前記支持体(立体造形用材料層保持手段)としては、前記第一の立体造形用材料を保持することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記第一の立体造形用材料の載置面を有する台、特開2000−328106号公報の図1に記載の装置におけるベースプレート、などが挙げられる。前記支持体の表面、即ち、前記第一の立体造形用材料を載置する載置面としては、例えば、平滑面であってもよいし、粗面であってもよく、また、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
[第一の立体造形用材料層の形成]
前記第一の立体造形用材料を前記支持体上に配置させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、第一の立体造形用材料を薄層に配置させる方法としては、特許第3607300号公報に記載の選択的レーザー焼結方法に用いられる、公知のカウンター回転機構(カウンターローラ)などを用いる方法、前記第一の立体造形用材料をブラシ、ローラ、ブレード等の部材を用いて薄層に拡げる方法、前記第一の立体造形用材料層の表面を押圧部材を用いて押圧して薄層に拡げる方法、公知の粉末積層造形装置を用いる方法などが好適に挙げられる。
前記カウンター回転機構(カウンターローラ)、前記ブラシ乃至ブレード、前記押圧部材などを用いて、前記支持体上に前記第一の立体造形用材料を載置させるには、例えば、以下のようにして行うことができる。即ち、例えば、外枠(「型」、「中空シリンダー」、「筒状構造体」などと称されることもある)内に、前記外枠の内壁に摺動しながら昇降可能に配置された前記支持体上に前記第一の立体造形用材料を、前記カウンター回転機構(カウンターローラ)、前記ブラシ、ローラ又はブレード、前記押圧部材などを用いて載置させる。このとき、前記支持体として、前記外枠内を昇降可能なものを用いる場合には、前記支持体を前記外枠の上端開口部よりも少しだけ下方の位置に配し、即ち、前記第一の立体造形用材料層の厚み分だけ下方に位置させておき、前記支持体上に前記第一の立体造形用材料を載置させる。以上により、前記第一の立体造形用材料を前記支持体上に薄層に載置させることができる。
前記第一の立体造形用材料層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一層当たりの平均厚みで、3μm以上200μm以下が好ましく、10μm以上100μm以下がより好ましい。前記平均厚みが、3μm以上であると、立体造形物が得られるまでの時間が適正であり、焼結等の処理乃至取扱い時に型崩れ等の問題が生じることがない。一方、前記平均厚みが、200μm以下であると、立体造形物の寸法精度が充分に得られる。なお、前記平均厚みは、公知の方法に従って測定することができる。
<第二の立体造形用液体材料付与工程、及び第二の立体造形用液体材料付与手段>
前記第二の立体造形用液体材料付与工程は、造形される立体造形物の表層を構成する前記第一の立体造形用材料層の第一領域に、第二の立体造形用液体材料を付与する工程であり、更に必要に応じてその他の処理を含む。
前記第二の立体造形用液体材料付与手段は、造形される立体造形物の表層を構成する前記第一の立体造形用材料層の第一領域に、第二の立体造形用液体材料を付与する手段であり、更に必要に応じてその他の部材を有する。
前記第二の立体造形用液体材料付与工程は、前記第二の立体造形用液体材料付与手段により好適に実施することができる。
−第二の立体造形用液体材料−
前記第二の立体造形用液体材料は、第一の立体造形用材料の所定領域を硬化できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記第一の立体造形用材料中に含まれる前記有機化合物Aに対して反応性を示す有機化合物B、水系溶媒、アルコール化合物を含むことが好ましく、更に必要に応じて、pH調整剤、粘度調整剤、界面活性剤、無機顔料等のその他の成分を含有する。また、活性エネルギー線硬化型組成物を用いることもできる。
−−有機化合物B−−
前記有機化合物Bとしては、前記有機化合物Aに対して反応性を示す材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記有機化合物Bとしては、水溶性樹脂が好ましい。
前記有機化合物Bとしては、前記有機化合物Aに含有される酸性官能基と反応性を有する塩基性官能基を有することが好ましい。
前記塩基性官能基としては、例えば、アミノ基などが挙げられる。
前記アミノ基を有する有機化合物Bとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸性官能基との反応性の点から、カチオン密度が高いポリエチレンイミンが好ましい。
前記ポリエチレンイミンの重量平均分子量(Mw)としては、1,800以上が好ましく、1,800以上70,000以下がより好ましく、3,000以上20,000以下が特に好ましい。前記重量平均分子量(Mw)が、1,800以上であると、酸性官能基を持つ前記第一の立体造形用材料中の有機化合物Aとの架橋構造の構築が容易であり、立体造形物の硬化時間が適切である。一方、前記重量平均分子量(Mw)が、70,000以下であると、立体造形用液体の粘度をより適切にでき、安定した吐出を実現できる。前記重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。
前記有機化合物Bの含有量としては、前記第二の立体造形用液体材料100質量部に対して、3質量部以上20質量部以下が好ましい。前記含有量が、3質量部以上であると、前記第一の立体造形用材料中の有機化合物Aとの架橋構造を十分に構築でき、得られるグリンシート又はグリン体の強度を向上できる。一方、前記含有量が、20質量部以下であると、第二の立体造形用液体材料の粘度を低くでき、吐出安定性を向上できる。前記有機化合物Bの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の熱分析装置を選択することができ、例えば、DSC−200(セイコーインスツル株式会社製)などを用いて、公知の方法に従って測定することができる。
−−水系溶媒−−
前記水系溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール等のアルコール、エーテル、ケトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。なお、前記水性媒体は、前記水が前記アルコール等の水以外の成分を若干量含有するものであってもよい。
−−アルコール化合物−−
前記アルコール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール化合物、グリコールエーテル化合物などが挙げられる。
前記ジオール化合物としては、下限値としては炭素数8以上が好ましく、上限値としては炭素数11以下が好ましい。
前記アルコール化合物の効果としては、以下の2点である。
1つは、前記第一の立体造形用材料層に対して、前記第二の立体造形用液体材料の浸透速度を上げ、造形時間を短縮すると共に、造形槽内への不要な拡散を防止し、造形精度を向上することができる。
もう1つは、前記第二の立体造形用液体材料により歯の外周部分を造形した場合に、前記アルコール化合物を含む方が、観察光を散乱する要因をバルク中へ流し出し、歯端部の透明性がさらに改善することができる。
前記炭素数8〜11のジオール化合物としては、例えば、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチルー1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記グリコールエーテル化合物としては、例えば、多価アルコールアルキルエーテル化合物、多価アルコールアリールエーテル化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多価アルコールアルキルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
前記アルコール化合物の含有量としては、第二の立体造形用液体材料100質量部に対して、下限値としては0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、上限値としては10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、例えば、顔料等の色材、防腐剤、安定化剤、pH調整剤、粘度調整剤などが挙げられる。
前記第二の立体造形用液体材料の前記第一の立体造形用材料層への付与の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディスペンサ方式、スプレー方式、インクジェット方式などで用いられている液体吐出手段などが挙げられる。本発明においては、複雑な立体形状を精度良くかつ効率よく形成し得る点で、前記インクジェット方式で用いられる液体吐出手段(圧電アクチュエーター等の振動素子を用い、複数ノズルから液滴を吐出するもの)が好ましい。
前記工程にて薄層に載置した前記第一の立体造形用材料に対し、インクジェットヘッドを用いて立体造形用液体を作用させると硬化が生ずる。本発明ではこのときに少なくとも2種以上の前記立体造形用液体材料を用意し、まずは、前記立体造形物の外周部分(表面部分)に前記第二の立体造形用液体を吐出し硬化した後に、色材を含む前記第三の立体造形用液体材料を吐出硬化するものである。これにより表面層部分が透明性を保持した混色の無い状態で内部に任意の色を付けた自然歯に近い二層構造の人工歯がプロトタイピングで造形し得る。
<第三の立体造形用液体材料付与工程、及び第三の立体造形用液体材料付与手段>
前記第三の立体造形用液体材料付与工程は、前記第一領域以外の前記立体造形物の内部を構成する第二領域に第三の立体造形用液体材料を付与する工程であり、更に必要に応じてその他の処理を含む。
前記第三の立体造形用液体材料付与手段は、前記第一領域以外の前記立体造形物の内部を構成する第二領域に第三の立体造形用液体材料を付与する手段であり、更に必要に応じてその他の部材を有する。
前記第三の立体造形用液体材料付与工程は、前記第三の立体造形用液体材料付与手段により好適に実施することができる。
前記第三の立体造形用液体材料付与工程としては、前記第二の立体造形用液体材料付与工程の後に行うことが好ましい。
−−第三の立体造形用液体材料−−
前記第三の立体造形用液体材料は、前記第一の立体造形用材料の所定領域を硬化できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記第二の立体造形用液体材料と同様に前記有機化合物Aに対して反応性を示す有機化合物B、水系溶媒を含むことが好ましく、更に造形部位に応じて色材として無機顔料を分散し、界面活性剤で表面張力を調製したものを用いることが好ましく、更に必要に応じて、pH調整剤、粘度調整剤、防黴剤等のその他の成分を含有する。また、活性エネルギー線硬化型組成物を用いることもできる。
前記有機化合物Bとしては、前記第二の立体造形用液体材料における有機化合物Bと同様のものを用いることができる。
前記水系溶媒としては、前記第二の立体造形用液体材料における水系溶媒と同様のものを用いることができる。
−−−色材−−−
前記色材としては、その工程上焼結後に発色できる無機顔料が好適に用いられ、特に窯業用顔料と呼ばれる材料がより好ましく用いられる。前記色材は、1種を単独で用いることが多いが、2種以上を適宜混合して用いることも可能である。ただし、前記歯科用補綴物の実用上の安全性を鑑みて、人体に特に有害な元素(例えばCd,Se,Pb等)を含まないものが好ましい。
前記色材としては、二酸化チタンが好適に用いることができる。
−−−界面活性剤−−−
前記界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記界面活性剤は、有機化合物Bと反応せず、有機化合物Aと接触した際に固化反応を助長するための仕様である。これらの中でも、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
前記立体造形用液体を通常のインクジェットヘッドで正しい位置に吐出するには、前記第三の立体造形用液体材料の表面張力が、30mN/m以下が好ましく、前記カチオン性もしくはノニオン性界面活性剤の含有量を適宜調整することで達成される。
前記界面活性剤の種類によって異なるが、前記カチオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤の含有量としては、第三の立体造形用液体材料全量に対して、0.1%質量以上加えることで達成される。
前記界面活性剤には、前記作用以外に特に前記無機顔料を加えた前記立体造形用液体に対し、高分子量のノニオン性界面活性剤(以下、「分散剤ポリマー」とも称することがある)を用いることが好ましく、具体的には、前記ノニオン性界面活性剤が体積平均分子量3,000以上12,000未満の分散剤ポリマーが好ましく、特に、体積平均分子量が3,000以上10,000以下であることが好ましい。この理由として前記条件を満たす分散剤ポリマーを用いると前記分散剤ポリマーの立体障害性に起因して、前記無機顔料分子同士が距離を保った弱い凝集状態(ソフトケーキ状態)を形成するものと考えられる。
前記第三の立体造形用液体材料の前記第一の立体造形用材料層への付与の方法としては、前記第二の立体造形用液体材料の前記第一の立体造形用材料層への付与の方法と同様のものを用いることができる。
<除去工程>
前記除去工程は、立体造形物を造形後に、前記立体造形物を第四の立体造形用液体材料に浸漬することにより第一の立体造形用材料の未硬化部位を除去する工程であり、更に必要に応じてその他の処理を含む。
前記除去手段は、立体造形物を造形後に、前記立体造形物を第四の立体造形用液体材料に浸漬することにより第一の立体造形用材料の未硬化部位を除去する手段であり、更に必要に応じてその他の部材を有する。
前記除去工程は、前記除去手段により好適に実施することができる。
前記浸漬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜、浸漬時間、浸漬温度等を選択することができる。
前記浸漬時間としては、5秒間以上60分間以下が好ましい。
前記浸漬温度としては、常圧下では0℃以上100℃以下が好ましい。
−第四の立体造形用液体材料−
前記第四の立体造形用液体材料は、前記造形物の未硬化部に対して作用し、余剰の第一の立体造形用材料を除去し、前記立体造形物を効率よく取り出すものが用いられる。
前記第四の立体造形用液体材料としては、水系溶媒を含有することが好ましい。
前記水系溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール等のアルコール、エーテル、ケトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。なお、前記造形物未硬化部位の除去性を促進するために、前記水系溶媒中に界面活性剤等の水以外の成分を含有するものであってもよい。
なお、本発明においては代表的に第二、第三、第四の立体造形用液体材料を例示した内容に留めたが、複数の色を用いる場合やその他の機能賦与のニーズに応じ、第五以上の立体造形用液体材料を用いる場合や、さらに第一の立体造形用材料と反応するものであれば樹脂粉などの固体材料を用いることもできる。
<その他の工程、及びその他の手段>
前記その他の工程としては、活性エネルギー線照射工程、層乾燥工程、焼結工程、表面保護工程、塗装工程などが挙げられる。
前記その他の手段としては、活性エネルギー線照射手段、層乾燥手段、焼結手段、表面保護手段、塗装手段などが挙げられる。
前記その他の工程は、その他の手段により好適に実施することができる。
<<層乾燥工程、及び層乾燥手段>>
前記層乾燥工程は、前記層形成工程後、前記第二の立体造形用液体材料付与工程、及び第三の立体造形用液体材料付与工程前において、得られた第一の立体造形用材料層を乾燥させる工程であり、層乾燥手段により行われる。もちろん自然乾燥を行ってもよい。前記層乾燥工程において、前記第一の立体造形用材料層中に含まれる水分(溶媒)を揮発させることができる。なお、前記層乾燥工程としては、第一の立体造形用材料層から溶媒をすべて除去せず、半乾燥状態とすることが好ましい。前記層乾燥手段としては、例えば、公知の乾燥機などが挙げられる。
前記層乾燥工程における乾燥時間は適宜変更することができる。前記乾燥時間を長くすれば、前記層乾燥工程後の各立体造形用液体材料付与工程で付与される各立体造形用液体材料の横方向への染み出しが抑制され、造形精度が向上するが、層間の接着力が弱くなる傾向にある。一方、前記乾燥時間を短くすれば、層間での粒子移動が起こり、層間の接着力が強くなるが、前記層乾燥工程後の各立体造形用液体材料付与工程で付与される各立体造形用液体材料の横方向への染み出しが発生し、造形精度が悪化する傾向にある。これは用いる材料種によって適宜選択すればよい。
<<焼結工程、及び焼結手段>>
前記焼結工程は、前記層形成工程と前記各立体造形用液体材料付与工程とを順次繰り返して形成した立体造形物(積層造形物)を焼結する工程であり、焼結手段により行われる。前記焼結工程を行うことにより、前記硬化物を一体化された成形体(焼結体)とすることができる。
前記焼結手段としては、例えば、公知の焼結炉などが挙げられる。
前記焼結工程としては、前記のように硬化物を得てから焼結する方法以外にも、第一の立体造形用材料を積層する段階で焼結する方法がある。前記第一の立体造形用材料を積層する段階で焼結する方法は、前記第一の立体造形用材料層にレーザー照射及び電子線照射のいずれかを行い、前記第一の立体造形用材料層を焼結する方法である。
<<表面保護工程、及び表面保護手段>>
前記表面保護工程は、前記立体造形用液体材料付与工程、又は前記焼結工程において形成した立体造形物に保護層を形成する工程である。前記表面保護工程を行うことにより、前記立体造形物を、例えば、そのまま使用等することができる耐久性等を前記立体造形物の表面に与えることができる。
前記保護層としては、例えば、耐水性層、耐候性層、耐光性層、断熱性層、光沢層などが挙げられる。
前記表面保護手段としては、公知の表面保護処理装置、例えば、スプレー装置、コーティング装置などが挙げられる。
<<塗装工程、及び塗装手段>>
前記塗装工程は、前記立体造形物に塗装を行う工程である。この塗装工程を行うことにより、前記立体造形物に所望の色に着色させることができる。前記塗装手段としては、公知の塗装装置、例えば、スプレー、ローラ、カーテン、刷毛、浸漬等公知の塗装装置が好適に用いることができる。
前記立体造形物の表層は、天然歯におけるエナメル質層に対応するものであるが、図1でも明らかなように、その形は板状ではなく部位によって様々であり、様々な構成要因の影響を受ける。
基本的には、表層と内部の屈折率や厚み、光拡散性などの因子が混在して透明性を形成すると考えられ、とりわけ光拡散性では表層部はほとんど作用しないが、内部はほぼ全方位に亘って拡散反射する。
従って、天然歯においては、透過率は天然歯の内部よりも表層部で高くなることが多い。
前記立体造形物の表層の透過率としては、前記立体造形物の内部の透過率よりも高いことが好ましい。
前記透過率は、例えば、歯科用測色計クリスタルアイ(オリンパス株式会社製)などを用いて測定することができる。
ここで、図2は、立体造形物の製造装置の一例を示す概略図である。この図2の立体造形物の製造装置は、造形側立体造形材料貯留槽1と供給側立体造形材料貯留槽2とを有し、これらの立体造形材料貯留槽は、それぞれ上下に移動可能なステージ3を有し、該ステージ上に第一の立体造形用材料からなる層を形成する。
造形側立体造形材料貯留槽1の上には、該立体造形材料貯留槽内の第一の立体造形用材料に向けて立体造形用液体材料(第二の立体造形用液体材料、又は第三の立体造形用液体材料)4を吐出するインクジェットヘッド5を有し、更に、供給側立体造形材料貯留槽2から造形側立体造形材料貯留槽1に第一の立体造形用材料を供給すると共に、造形側立体造形材料貯留槽1の第一の立体造形用材料層表面を均す、均し機構6(以下、リコーターということがある)を有する。
造形側立体造形材料貯留槽1の第一の立体造形用材料上にインクジェットヘッド5から立体造形用液体材料4を滴下する。このとき、前記立体造形用液体材料4を滴下する位置は、最終的に造形したい立体形状を複数の平面層にスライスした二次元画像データ(スライスデータ)により決定される。
一層分の描画が終了した後、供給側立体造形材料貯留槽2のステージ3を上げ、造形側立体造形材料貯留槽1のステージ3を下げる。その差分の第一の立体造形用材料を、前記均し機構6によって、造形側立体造形材料貯留槽1へと移動させる。
このようにして、先に描画した第一の立体造形用材料層面上に、新たな第一の立体造形用材料層が一層形成される。このときの第一の立体造形用材料層一層の厚みは、数十μm以上100μm以下程度である。前記新たに形成された第一の立体造形用材料層上に、更に二層目のスライスデータに基づく描画を行い、この一連のプロセスを繰り返して立体造形物を得、図示しない加熱手段で加熱乾燥させることで立体造形物が得られる。
図3に、立体造形物の製造装置の他の一例を示す概略図である。図3の立体造形物の製造装置に用いられる立体造形物の製造方法は、原理的には図2と同じものであるが、第一の立体造形用材料の供給機構が異なる。即ち、供給側立体造形材料貯留槽2は、造形側立体造形材料貯留槽1の上方に配されている。一層目の描画が終了すると、造形側立体造形材料貯留槽1のステージ3が所定量降下し、供給側立体造形材料貯留槽2が移動しながら、所定量の第一の立体造形用材料を造形側立体造形材料貯留槽1に落下させ、新たな第一の立体造形用材料層を形成する。その後、均し機構6で、第一の立体造形用材料層を圧縮し、かさ密度を上げると共に、第一の立体造形用材料層の高さを均一に均す。
図3に示す構成の立体造形物の製造装置によれば、2つの立体造形材料貯留槽を平面的に並べる図2の構成に比べて、装置をコンパクトにできる。
(立体造形物)
前記立体造形物(積層造形物)は、本発明の立体造形物の製造方法により製造される。
前記立体造形物としては、口腔内の咀嚼力に長期間耐えることができ、審美性を有している点から、人工歯であることが好ましい。
前記人工歯は、う蝕、外傷、歯周病などにより失った天然歯の代わりに、その機能を回復するために作られた人工の歯であり、ブリッジ、クラウン等の歯科用補綴物も含まれる。
本発明の立体造形物の製造方法及び本発明の立体造形物の製造装置によれば、複雑な立体形状の造形物を、簡便かつ効率良く、焼結等の前に型崩れが生ずることなく、寸法精度良く製造することができる。こうして得られた立体造形物(硬化物)は、細胞毒性がなく、充分な強度を有し、寸法精度に優れ、微細な凹凸、曲面なども再現できるので、美的外観にも優れ、高品質であり、各種用途に好適に使用される。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
<第一の立体造形用材料の調製>
ジルコニア粒子(商品名:TZ−3Y−E、東ソー株式会社)30.0質量部、重量平均分子量(Mw)が800,000であるポリアクリル酸(PAA、株式会社日本触媒製、AS−58)5.0質量部、可塑剤としてのフタル酸ベンジルブチル10.0質量部、セラミックス分散剤(高分子ポリカルボン酸、マリアリム、日油株式会社製、AKM−0531)1.5質量部、及びエタノール(和光純薬工業株式会社製)60.0質量部を混合し、直径3mmのジルコニアビーズにて3時間ビーズミル分散することでスラリー状の第一の立体造形用材料を得た。組成を下記表1に示す。
得られた第一の立体造形用材料中のジルコニア粒子の体積平均粒径について、以下のように測定した。
−ジルコニア粒子の体積平均粒径−
前記第一の立体造形用材料1中における前記ジルコニア粒子の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920型(株式会社堀場製作所)を用いて測定した。なお、測定及び解析条件は、以下のように設定した。
[測定及び解析条件]
・データ取り込み回数:15回
・相対屈折率:1.20
・循環:5
・超音波強度:7
前記方法により得られた第一の立体造形用材料中のジルコニア粒子の体積平均粒径は0.2μmであった。
Figure 0006950173
(立体造形用液体材料の原液の調製例)
<立体造形用液体材料の原液の調製>
水88.0質量部と、重量平均分子量(Mw)が10,000であるポリエチレンイミン(PEI、株式会社日本触媒製、SP−200)12.0質量部と、界面活性剤としてTween20(東京化成工業株式会社製)0.5質量部とを、ホモミキサーを用いて30分間分散させて、立体造形用液体材料の原液を調製した。組成を下記表2に示す。
Figure 0006950173
(第二の立体造形用液体材料の調製例1)
<第二の立体造形用液体材料1の調製>
前記立体造形用液体材料原液1 95.0質量部に対して、アルコール化合物として2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(東京化成工業株式会社製)5.0質量部を添加したものをマグネットスターラーで20分間撹拌して、第二の立体造形用液体材料1を得た。
(第二の立体造形用液体材料の調製例2)
<第二の立体造形用液体材料2の調製>
第二の立体造形用液体材料の調製例1において、前記立体造形用液体材料の原液1 99.5質量部に対して、アルコール化合物として2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(東京化成工業株式会社製)0.5質量部を添加した以外は、第二の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第二の立体造形用液体材料2を得た。
(第二の立体造形用液体材料の調製例3)
<第二の立体造形用液体材料3の調製>
第二の立体造形用液体材料の調製例1において、前記立体造形用液体材料の原液1 99.85質量部に対して、アルコール化合物としてエチレングリコールモノブチルエーテル(東京化成工業株式会社製)0.15質量部を添加した以外は、第二の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第二の立体造形用液体材料3を得た。
(第二の立体造形用液体材料の調製例4)
<第二の立体造形用液体材料4の調製>
前記立体造形用液体材料の原液1 91.5質量部に対して、アルコール化合物として2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(東京化成工業株式会社製)5.0質量部と、白色顔料として酸化チタン顔料(商品名:GTR−100、堺化学工業株式会社製)3.0質量部、及び分散剤ポリマー0.5質量部(商品名:アロンA305L、東亞合成株式会社製)を添加したものを直径3mmのジルコニアビーズを用い3時間ビーズミル分散して、第二の立体造形用液体材料4を得た。
(第二の立体造形用液体材料の調製例5)
<第二の立体造形用液体材料5の調製>
第二の立体造形用液体材料の調製例4において、前記立体造形用液体材料の原液1 84.5質量部に対して、アルコール化合物として2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(東京化成工業株式会社製)12.0質量部を添加したものをメカニカルスターラー(プライミクス株式会社製、プラネタリミキサ HIVIS DISPER MIX Model 3D−2型)にて多段階に合計65分間撹拌した以外は、第二の立体造形用液体材料の調製例4と同様にして、第二の立体造形用液体材料5を得た。
得られた第二の立体造形用液体材料1〜5の組成を下記表3に示す。
Figure 0006950173
(第三の立体造形用液体材料の調製例1)
<第三の立体造形用液体材料1の調製>
前記立体造形用液体材料の原液94.5質量部に対して、無機顔料としてZr−V系顔料1(商品名:Z−300、日陶顔料工業株式会社製)5.0質量部と、及び分散剤ポリマーとして商品名:アロンA305L(東亞合成株式会社製)0.5質量部を添加したものをしたものを直径3mmのジルコニアビーズを用いて3時間ビーズミル分散して、第三の立体造形用液体材料1を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例2)
<第三の立体造形用液体材料2の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をZr−V系顔料2(商品名:Z−500、日陶顔料工業株式会社製)に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料2を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例3)
<第三の立体造形用液体材料3の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をZr−Si−Pr系顔料(商品名:P−40、日陶顔料工業株式会社製)に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料3を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例4)
<第三の立体造形用液体材料4の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をSn−V系顔料(商品名:M−600、日陶顔料工業株式会社製)に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料4を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例5)
<第三の立体造形用液体材料5の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をFe−Cr−Zn−Al系顔料1(商品名:M−13、日陶顔料工業株式会社製)に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料5を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例6)
<第三の立体造形用液体材料6の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をFe−Cr−Zn−Al系顔料2(商品名:M−309、日陶顔料工業株式会社製)に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料6を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例7)
<第三の立体造形用液体材料7の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をSn−Ca−Si−Cr系顔料(商品名:SP−72、日陶顔料工業株式会社製)に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料7を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例8)
<第三の立体造形用液体材料8の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をSn−Cr系顔料(商品名:M−797、日陶顔料工業株式会社製)に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料8を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例9)
<第三の立体造形用液体材料9の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をCo−Si系顔料(商品名:No.10、日陶顔料工業株式会社製)に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料9を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例10)
<第三の立体造形用液体材料10の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をCr−Al系顔料(商品名:M−55、日陶顔料工業株式会社製)に変更し、分散剤ポリマーである商品名:アロンA305Lを商品名:アロンA6114(東亞合成株式会社、重量平均分子量(Mw:10,000)0.5質量部に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料10を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例11)
<第三の立体造形用液体材料11の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をFe−Cr系顔料(商品名:M−252、日陶顔料工業株式会社製)に変更し、分散剤ポリマーである商品名:アロンA305Lを商品名:アロンA210(東亞合成株式会社、重量平均分子量(Mw):3,000)0.5質量部に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料11を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例12)
<第三の立体造形用液体材料12の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をSn−Sb系顔料(商品名:B−83、日陶顔料工業株式会社製)に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料12を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例13)
<第三の立体造形用液体材料13の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をFe−Cr−Zn−Mn系顔料(商品名:M−2、日陶顔料工業株式会社製)に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料13を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例14)
<第三の立体造形用液体材料14の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をZr−Si−Fe系顔料(商品名:M−663、日陶顔料工業株式会社製)に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料14を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例15)
<第三の立体造形用液体材料15の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、Zr−V系顔料1をCr−Fe−Co−Ni系顔料(商品名:M−800、日陶顔料工業株式会社製)に変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料15を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例16)
<第三の立体造形用液体材料16の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、分散剤ポリマーである商品名:アロンA305LをアロンA6114(東亞合成株式会社、重量平均分子量(Mw)10,000)の更に重合を進めて重量平均分子量を12,000まで高めた分散剤ポリマーAに変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料16を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例17)
<第三の立体造形用液体材料17の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、分散剤ポリマーとして商品名:アロンA305L(東亞合成株式会社製)の含有量を0.4質量部とし、表面張力29.3mN/mを30.2mN/mに変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料17を得た。
(第三の立体造形用液体材料の調製例18)
<第三の立体造形用液体材料18の調製>
第三の立体造形用液体材料の調製例1において、分散剤ポリマーとして商品名:アロンA305L(東亞合成株式会社製)の含有量を調整し、表面張力29.3mN/mを32.4mN/mに変更した以外は、第三の立体造形用液体材料の調製例1と同様にして、第三の立体造形用液体材料の調製例18を得た。
得られた第三の立体造形用液体材料1〜18の組成を下記表4〜6に示す。
Figure 0006950173
Figure 0006950173
Figure 0006950173
(実施例1)
得られた第一の立体造形用材料1、第二の立体造形用液体材料1、及び第三の立体造形用液体材料1を組み合わせて立体造形材料セット1とした。
前記立体造形材料セット1を用いて、以下(1)〜(4)の手順に従って、立体造形物を作製した。
(1)まず、図2に示したような立体造形物の製造装置を用いて、供給側粉末貯留槽から造形側粉末貯留槽に前記第一の立体造形用材料1を移送し、支持体上に平均厚みが100μmの前記第一の立体造形用材料からなる薄層(第一の立体造形用材料層)を形成した。
(2)次に、形成した第一の立体造形用材料層の表面に、前記第二の立体造形用液体材料1を、インクジェットプリンター(装置名:SG7100、株式会社リコー製)を用いてノズルから付与(吐出)し、最終的に立体造形物の表面を構成する部分(第一領域)の前記第一の立体造形用材料層を一部硬化させた。
常温放置にて数分間乾燥し、前記第二の立体造形用液体材料1の溶媒を一部揮発させた後、前記第三の立体造形用液体材料1を、前記インクジェットプリンターの別のノズルから吐出し、前記第一領域以外の前記立体造形物の内部を構成するする部分(第二領域)の前記第一の立体造形用材料層を硬化させた。
(3)次に、前記(1)及び前記(2)の操作を繰り返し、硬化した前記第一の立体造形用材料からなる薄層を順次積層して所定の5mmの総平均厚みになるまで継続し、所望の硬化物を得た。得られた硬化物を常温放置にて乾燥し、溶媒を揮発させて、立体造形物を製造した。得られた立体造形物を第四の立体造形用液体材料である水中に浸漬することにより、未硬化の第一の立体造形用材料部位を除去したところ、前記造形物が型崩れを生ずることはなく、立体造形物は強度、及び寸法精度に優れていた。
(4)前記立体造形物を、焼結炉内で空気環境下、1,500℃での焼結処理を行った。立体造形物の焼結体は完全に一体化された構造体であり、硬質の床に叩きつけても破損等が生じなかった。
(実施例2〜20、及び比較例1〜2)
実施例1において、下記表7に示す第一の立体造形用材料、第二の立体造形用液体材料、及び第三の立体造形用液体材料からなる立体造形材料セットに変更した以外は、実施例1と同様にして、焼結後の立体造形物を得た。
得られた立体造形物を用いて、下記のようにして、「焼結後の曲げ強度」、「焼結後の密度」、「力学的強度」、及び「審美性(色再現性、歯端部透明性、並びに層間密着性及び混色)」を評価した。結果を下記表7に示す。
(曲げ強度)
次に、得られた焼結後の立体造形物の焼結体について、ISO−6871に基づいて、卓上形精密万能試験機(装置名:AUTOGRAPH−AGS−J、株式会社島津製作所製)を用いて、「焼結後の曲げ強度」を測定した。
(密度)
得られた焼結後の立体造形物の焼結体について、アルキメデス法により、密度測定装置(装置名:BM−22型、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、浸漬溶媒としてアマニ油を用いて測定した。
(力学的強度)
また、前記焼結後の曲げ強度の測定結果から、下記評価基準に基づいて、立体造形物の力学的強度を評価した。
−評価基準−
○:焼結後の曲げ強度が、840MPa以上
△:焼結後の曲げ強度が、700MPa以上840MPa未満
×:焼結後の曲げ強度が、700MPa未満
(色再現性)
造形物の色再現性を、同一条件で作製した3個のサンプルを目視にて観察し、下記評価基準に基づいて、「色再現性」を評価した。
−評価基準−
○:サンプル間に大きな色調の差はなく、色ムラもない
△:サンプル間で多少色調に差が見られるが、大きな色ムラはなかった
×:サンプル間で色調に差があり、さらに同一サンプル中でも色ムラが存在した
(端部透明性)
造形物端部の透明性を、歯科用マイクロスコープ(装置名:Crystal Eye、オリンパス株式会社製)を用いて、端部の透過率を測定し、下記評価基準に基づいて、「端部透明性」を評価した。
−評価基準−
○:端部透過率が、80%以上
△:端部透過率が、60%以上80%未満
×:端部透過率が、60%未満
(層間密着性)
前記焼結後の立体造形物をダイヤモンドカッターにて研磨し、破壊後の第一領域と第二領域との2層間の密着状態を簡易走査型電子顕微鏡(装置名:VE−7800、株式会社キーエンス製)にて確認し、下記評価基準に基づいて、「層間密着性」を評価した。2層間がほぼ密着している状態を図4に示すまた、2層間に空隙が発生している状態を図5に示す。図4及び図5中の実線部分が、2層間の境界線である。なお、図5中の実線より上部に空隙が発生していることが分かる。
−評価基準−
○:2層が十分に密着して造形されている
△:2層間の一部に空隙が存在する
×:空隙が発生している、又は2層間の境界が存在しない
(混色)
前記焼結後の造形物をダイヤモンドカッターで研磨し、破壊後の第一領域と第二領域との2層間の混色の有無を目視で確認し、下記評価基準に基づいて、「混色」を評価した。
−評価基準−
○:混色が見られない
△:内部の色が表面に混ざった状態のいずれかが発生している
×:混色が発生している、又は2層間の境界が存在しない
Figure 0006950173
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 第一の立体造形用材料を用いて第一の立体造形用材料層を形成する層形成工程と、
造形される立体造形物の表層を構成する前記第一の立体造形用材料層の第一領域に、第二の立体造形用液体材料を付与する第二の立体造形用液体材料付与工程と、
前記第一領域以外の前記立体造形物の内部を構成する第二領域に第三の立体造形用液体材料を付与する第三の立体造形用液体材料付与工程と、
を複数回繰り返すことを特徴とする立体造形物の製造方法である。
<2> 前記第二の立体造形用液体材料、及び前記第三の立体造形用液体材料の少なくともいずれかが、前記第一の立体造形用材料に対して反応性を示すことを特徴とする前記<1>に記載の立体造形物の製造方法である。
<3> 前記第二の立体造形用液体材料付与工程の後に、前記第三の立体造形用液体材料付与工程を行うことを特徴とする前記<1>から<2>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<4> 前記第一の立体造形用材料が、無機粒子を含むことを特徴とする前記<1>から<3>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<5> 前記無機粒子が、金属粒子、及びセラミックス粒子の少なくともいずれかであることを特徴とする前記<4>に記載の立体造形物の製造方法である。
<6> 前記セラミックス粒子が、ジルコニア粒子であることを特徴とする前記<5>に記載の立体造形物の製造方法である。
<7> 前記第一の立体造形用材料が、溶媒を含むスラリーであることを特徴とする前記<1>から<6>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<8> 立体造形物を造形後に、前記立体造形物を第四の立体造形用液体材料に浸漬することにより第一の立体造形用材料の未硬化部位を除去する除去工程をさらに含むことを特徴とする前記<1>から<7>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<9> 前記第四の立体造形用液体材料が、水であることを特徴とする前記<8>に記載の立体造形物の製造方法である。
<10> 前記第二の立体造形用液体材料が、アルコール化合物を含むことを特徴とする前記<1>から<9>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<11> 前記アルコール化合物が、炭素数8以上のジオール化合物、及びグリコールエーテル化合物の少なくともいずれかであることを特徴とする前記<10>に記載の立体造形物の製造方法である。
<12> 前記第三の立体造形用液体材料の表面張力が、30mN/m以下であることを特徴とする前記<1>から<11>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<13> 前記立体造形物の表層の透過率が、前記立体造形物の内部の透過率よりも高いことを特徴とする前記<1>から<12>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<14> 歯科用補綴物を製造することを特徴とする前記<1>から<13>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<15> 前記第一の立体造形用材料が、有機化合物Aをさらに含むことを特徴とする前記<1>から<14>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<16> 前記有機化合物Aが、ポリアクリル酸であることを特徴とする前記<15>に記載の立体造形物の製造方法である。
<17> 前記第二の立体造形用液体材料が、前記第一の立体造形用材料中に含まれる前記有機化合物Aに対して反応性を示す有機化合物Bをさらに含むことを特徴とする前記<15>から<16>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<18> 前記有機化合物Bが、ポリエチレンイミンであることを特徴とする前記<17>に記載の立体造形物の製造方法である。
<19> 前記ポリエチレンイミンの重量平均分子量が、1,800以上であることを特徴とする前記<18>に記載の立体造形物の製造方法である。
<20> 前記第三の立体造形用液体材料が、無機顔料をさらに含むことを特徴とする前記<1>から<19>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<21> 第一の立体造形用材料層を保持するための立体造形用材料層保持手段と、
第一の立体造形用材料を用いて第一の立体造形用材料層を形成する層形成手段と、
造形される立体造形物の表層を構成する前記第一の立体造形用材料層の第一領域に、第二の立体造形用液体材料を付与する第二の立体造形用液体材料付与手段と、
前記第一領域以外の前記立体造形物の内部を構成する第二領域に第三の立体造形用液体材料を付与する第三の立体造形用液体材料付与手段と、を有することを特徴とする立体造形物の製造装置である。
前記<1>から<20>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法、及び前記<21>に記載の立体造形物の製造装置は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
特開2003−507120号公報

Claims (11)

  1. 第一の立体造形用材料を用いて第一の立体造形用材料層を形成する層形成工程と、
    造形される立体造形物の表層を構成する前記第一の立体造形用材料層の第一領域に、液体である第二の立体造形用材料を付与する第二の立体造形用材料付与工程と、
    前記第一領域以外の前記立体造形物の内部を構成する第二領域に液体である第三の立体造形用材料を付与する第三の立体造形用材料付与工程と、
    を複数回繰り返すことを特徴とする立体造形物の製造方法であって、
    前記第二の立体造形用材料付与工程と前記第三の立体造形用付与工程は、インクジェット方式で用いられる液滴吐出手段を用い、
    前記第一の立体造形用材料は、酸性官能基を有する有機化合物Aを含み、
    前記第二の立体造形用材料は、前記酸性官能基と反応性を示す塩基性官能基を有する有機化合物Bと、グリコールエーテル化合物及びジオール化合物の少なくともいずれかであるアルコール化合物とを含み、
    前記アルコール化合物の含有量は、当該第二の立体造形用材料100質量部に対して0.5質量部以上、10質量部以下であり、
    前記第三の立体造形用材料は、前記酸性官能基と反応性を示す塩基性官能基を有する有機化合物Bと、白色以外の無機顔料とを含むことを特徴とする立体造形物の製造方法。
  2. 前記第二の立体造形用材料付与工程の後に、前記第三の立体造形用材料付与工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の立体造形物の製造方法。
  3. 前記第一の立体造形用材料が、無機粒子を含むことを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
  4. 前記無機粒子が、金属粒子、及びセラミックス粒子の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の立体造形物の製造方法。
  5. 前記第一の立体造形用材料が、溶媒を含むスラリーであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
  6. 立体造形物を造形後に、前記立体造形物を第四の立体造形用液体材料に浸漬することにより第一の立体造形用材料の未硬化部位を除去する除去工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
  7. 前記第三の立体造形用材料の表面張力が、30mN/m以下であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
  8. 前記立体造形物の表層の透過率が、前記立体造形物の内部の透過率よりも高いことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
  9. 歯科用補綴物を製造することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
  10. 前記第三の立体造形用材料が、前記アルコール化合物を含まないことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
  11. 第一の立体造形用材料層を保持するための立体造形用材料層保持手段と、
    第一の立体造形用材料を用いて第一の立体造形用材料層を形成する層形成手段と、
    造形される立体造形物の表層を構成する前記第一の立体造形用材料層の第一領域に、液体である第二の立体造形用材料を付与する第二の立体造形用材料付与手段と、
    前記第一領域以外の前記立体造形物の内部を構成する第二領域に液体である第三の立体造形用材料を付与する第三の立体造形用材料付与手段と、を有し、
    前記第二の立体造形用材料付与手段と前記第三の立体造形用材料付与手段は、インククジェット方式で用いられる液滴吐出手段を用いる立体造形物の製造装置であって、
    前記第一の立体造形用材料は、酸性官能基を有する有機化合物Aを含み、
    前記第二の立体造形用材料は、前記酸性官能基と反応性を示す塩基性官能基を有する有機化合物Bと、グリコールエーテル化合物及びジオール化合物の少なくともいずれかであるアルコール化合物とを含み、前記アルコール化合物の含有量は、当該第二の立体造形用材料100質量部に対して0.5質量部以上、10質量部以下であり、
    前記第三の立体造形用材料は、前記酸性官能基と反応性を示す塩基性官能基を有する有機化合物Bと、白色以外の無機顔料とを含むことを特徴とする立体造形物の製造装置。
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