本発明の有機リン化合物は上記式(1)で表される。
式(1)において、Arはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、又はフェナントレン環から選ばれる4価の芳香族環基を示す。芳香族環基は、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、又はフェナントレン環のみからなっていてもよく、置換基を有していてもよい。
置換基を有する場合の置換基は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、又は炭素数7〜11のアラルキルオキシ基であり、置換基が芳香族環を有する場合はその芳香族環は更にアルキル基又はアルコキシ基などで置換されていてもよい。
例えば、炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等が挙げられ、炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、シクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数6〜10のアリール基又はアリールオキシ基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられ、炭素数7〜11のアラルキル基又はアラルキルオキシ基としては、ベンジル基、フェネチル基、1−フェニルエチル基、ベンジルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基等が挙げられる。
好ましいArとしては、ベンゼン環基、メチル基置換ベンゼン環基、1−フェニルエチル基置換ベンゼン環基、ナフタレン環基、メチル基置換ナフタレン環基、又は1−フェニルエチル基置換ナフタレン環基がある。ここで、ベンゼン環基はベンゼン環から4個のHを除いて生じる基であり、ナフタレン環基はナフタレン環から4個のHを除いて生じる基であり、Hを除く位置は限定されない。
Zは上記式(a)で表されるリン含有基である。
式(a)において、R1及びR2はヘテロ元素を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、それぞれは異なっていても同一でも良く、直鎖状、分岐鎖状、環状であってもよい。また、R1とR2が結合して環状構造を形成してもよい。特に、ベンゼン環などの芳香族環基が好ましい。R1及びR2が芳香族環基の場合は置換基として、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基又は炭素数7〜11のアラルキルオキシ基を有してもよい。ヘテロ元素としては、酸素元素等が例示され、これは炭化水素鎖又は炭化水素環を構成する炭素間に含まれることができる。
n1及びn2は0又は1であり、相互に独立である。
上記式(a)で表されるリン含有基は、上記式(b1)又は(b2)で表されるものであることが好ましい。
式(b1)、(b2)において、R3、R4はそれぞれ独立に炭素数1〜11の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基が挙げられ、メチル基、フェニル基、ベンジル基が好ましい。m1はそれぞれ独立に0〜4の整数であり、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。m2はそれぞれ独立に0〜5の整数であり、0〜2が好ましく、0又は1がより好ましい。
式(a)で表されるリン含有基の他の好ましい例としては、下記式(a1)〜(a10)で表されるリン含有基が挙げられる。
本発明の有機リン化合物の製造方法は、上記式(2)で表される有機リン化合物1モルに対し、キノン化合物0.5モル以上1.0モル未満の範囲で使用し、有機リン化合物1モルに対して0.05〜0.5モルの水分を存在させた有機溶媒中で、100〜200℃で反応させる工程1を有する。この反応は還流状態で行うことが好ましい。この反応では、下記反応式(3)で示される反応が行われる。
上記工程1が終了後、次いで工程2に付して、反応混合物を良溶媒と混合して、目的の有機リン化合物を溶解させると共に、副生リン化合物(3)やリン化合物(4)を不溶性成分として取り除く。固形分分離後の溶液に存在するのは目的生成物である有機リン化合物(1)がほとんどだが、若干量の副生リン化合物(3)やリン化合物(4)が残存しているため、工程3に付して更に精製する。
工程3では、上記溶液を貧溶媒と混合して、目的生成物である有機リン化合物(1)の結晶を析出させる。そして、副生リン化合物類は貧溶媒溶液に中に溶解させる。
工程1の反応式の一例を次に示す。
下記反応式(3)は、リン化合物(2)とキノン化合物(q)との反応例である。この反応例では、本発明の有機リン化合物(1)の他に、副生リン化合物(3)やリン化合物(4)が副生し、更に原料リン化合物(2)が不純物として残存する例である。
ここで、[Ar]は下記反応式(4)が成立する芳香族環基である。
本明細書では、式(1)〜(4)、(1’)、(a)、(b1),(b2)、(2a)及び(2b)において、共通の記号は特に断りがない限り同義である。したがって、上記式(3)〜(4)におけるAr及びZは、式(1)のAr及びZと同義である。
上記反応式(3)について、具体的な化合物として、DOPO(2−2)とNQ(q)を使用した例を示すと、下記反応式(3−1)となる。
式(1)で表される有機リン化合物は、例えば、キノン化合物がBQの場合は3種類存在する。NQの場合は9種類存在するが、下記式(1’)で表される有機リン化合物が好ましい。
反応式(3)に示す反応では、本発明の有機リン化合物(1)と副生するリン化合物(3)及び(4)との競争反応が起こる。有機リン化合物の得量を高めるためには、リン化合物(2)に対するキノン化合物(q)のモル比を高くすることが好ましい。リン化合物1モルに対し、キノン化合物は0.5モル以上1.0モル未満の範囲であり、好ましくは0.75モル以上1.0モル未満であり、より好ましくは0.8モル以上1.0モル未満であり、更に好ましくは0.9モル以上1.0モル未満である。モル比が低い場合は、未反応のリン化合物の残存量が増え、反応効率が悪くなる。一方、モル比が1.0以上の場合は、本発明の有機リン化合物の生成に効果的ではあるが、反面で未反応の原料キノン化合物が残存しやすく、反応後に取り除くための複雑な処理工程が必須となり工業的に不利となる。
上記のモル比以外にも、反応温度が有機リン化合物の生成に影響を与える。反応温度は100〜200℃が好ましく、その温度で水と共沸していることがより好ましい。そのため、還流温度を100〜200℃に維持できる有機溶媒を使用することが好ましい。水分により還流温度が低下するため、沸点として、高めが好ましく、100〜220℃がより好ましく、110〜180℃が更に好ましい。また、還流温度を維持できれば、沸点の低い有機溶媒を併用してもよい。また有機溶媒の種類としては、有機リン化合物と反応性のあるケトン系有機溶媒は適さないが、それ以外の有機溶媒であり、上記条件を満たすものであれば特に限定されるものではない。しかし、原料及び目的の有機リン化合物を溶解する良溶媒が好ましい。
使用できる溶媒としては、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ベンジルアルコールアセテート等の酢酸エステル類や、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の安息香酸エステル類や、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類や、メチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類や、ジメトキシジエチレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類や、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの有機溶媒は単独でも2種類以上混合して使用してもよい。
また、有機リン化合物(1)の生成を促進するために反応系内水分量も重要である。原料リン化合物1モルに対して水分量を0.05〜0.5モルの範囲に調節することが効果的である。この有機リン化合物の生成が促進される要因については現状では未解明ではあるが、その反応機構についてはキノン化合物のC=O基に隣接する炭素へリン化合物が反応結合する際、水との親和性の良いリン化合物が2分子間で一部水素結合することでほぼ同時に付加反応が起こるものと推察される。原料リン化合物1モルに対する水分量は、0.1〜0.5モルがより好ましく、0.2〜0.4モルが更に好ましい。
また、本発明の製造方法で使用するキノン化合物は工業製品として純度が90%以上であれば問題なく使用できる。純度がこれ以下であると副生する不純物が多量になり、目的とする有機リン化合物の高純度化が難しくなる恐れがある。好ましい純度は96%以上であり、より好ましい純度は98%以上である。これらキノン化合物はその有害性から飛散防止用に予め含水状態で製造メーカより販売される場合がある。この場合、反応には予めこのキノン化合物中の水分量を考慮した調整が必要である。これらキノン化合物は単独でも2種類以上混合して使用してもよい。
本発明で使用するキノン化合物として、式(1)中のArがベンゼン環になる場合は、例えば、ベンゾキノン、メチル−ベンゾキノン、エチル−ベンゾキノン、ブチル−ベンゾキノン、ジメチル−ベンゾキノン、ジエチル−ベンゾキノン、ジブチル−ベンゾキノン、メチル−イソプロピル−ベンゾキノン、ジエトキシ−ベンゾキノン、メチル−ジメトキシ−ベンゾキノン、メチル−メトキシ−ベンゾキノン、フェニル−ベンゾキノン、トリル−ベンゾキノン、エトキシフェニル−ベンゾキノン、ジフェニル−ベンゾキノン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
式(1)中のArがナフタレン環になる場合は、例えば、ナフトキノン、メチル−ナフトキノン、シクロヘキシル−ナフトキノン、メトキシ−ナフトキノン、エトキシ−ナフトキノン、ジメチル−ナフトキノン、ジメチル−イソプロピル−ナフトキノン、メチル−メトキシ−ナフトキノン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
式(1)中のArがアントラセン環になる場合は、例えば、アントラキノン、メチル−アントラキノン、エチル−アントラキノン、メトキシ−アントラキノン、ジメトキシ−アントラキノン、ジフェノキシ−アントラキノン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
式(1)中のArがフェナントレン環になる場合は、例えば、フェナントレンキノン、メチル−フェナントレンキノン、イソプロピル−フェナントレンキノン、メトキシ−フェナントレンキノン、ブトキシ−フェナントレンキノン、ジメトキシ−フェナントレンキノン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
上記反応で使用する原料のリン化合物としては、例えば、ジメチルホスフィンオキシド、ジエチルホスフィンオキシド、ジブチルホスフィンオキシド、ジフェニルホスフィンオキシド、ジベンジルホスフィンオキシド、シクロオクチレンホスフィンオキシド、トリルホスフィンオキシド、ビス(メトキシフェニル)ホスフィンオキシド等や、フェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸エチル、トリルホスフィン酸トリル、ベンジルホスフィン酸ベンジル等や、DOPO、8−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、8−フェニル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、2,6,8−トリ−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、6,8−ジシクロヘキシル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等や、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジトリル、ホスホン酸ジベンジル、5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのリン化合物は単独でも2種類以上混合して使用してもよい。
反応終了後、反応溶液を有機溶媒と生成物にろ別した後、生成物から副生物を低減するために、上記工程2に付す。工程2では反応混合物を良溶媒と混合、溶解した後、不溶性の副生物をろ過等により取り除くことが好ましい。良溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサノン、ベンジルアルコール、酢酸エステル、及び安息香酸エステル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独でも2種類以上混合して使用してもよい。これらの溶媒の内、酢酸エステルが好ましく、酢酸ベンジルがより好ましい。
その後、溶液から本発明の有機リン化合物を高純度で得るために、上記工程3に付す。工程3では、貧溶媒と混合して、沈殿分離により生成物を得ることが好ましい。貧溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、及びアセトン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独でも2種類以上混合して使用してもよい。これらの溶媒の内、メタノール、エタノール、アセトンが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましい。これらの溶媒は含水品であってもよい。この場合、溶媒100質量部に対して水は100質量部まで含んでいてもよい。
また、これ以外の高純度化の手法として、抽出、洗浄、蒸留等の精製操作等を行うことも可能である。
このようにして得られた上記式(1)で表される好ましい有機リン化合物を例示すると、下記式(1−1)〜(1−4)表される有機リン化合物が挙げられる。
次に、本発明の硬化性樹脂組成物について、説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は本発明の有機リン化合物と熱硬化性樹脂とを含む。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、及びエポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂組成物等が挙げられ、エポキシ樹脂組成物が好ましい。
硬化性樹脂組成物の配合組成としては、特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂100質量部に対し、本発明の有機リン化合物は通常0.1〜100質量部であり、1〜50質量部が好ましく、5〜30質量部がより好ましい。また、この組成物には後述する無機充填材やリン系難燃剤を併用することが好ましい。なお、難燃性を考慮すると、有機リン化合物の配合量で管理するよりも、リン含有率で配合を決めることが好ましい。
上記エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を2個以上、好ましくは3個以上有しているものを使用することがよい。具体的には、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルアミン化合物、ポリグリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ化合物、その他変性エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよいし、同一系のエポキシ樹脂を2種類以上併用して使用しても良く、また、異なる系のエポキシ樹脂を組み合わせて使用してもよい。これらのエポキシ樹脂の中で、コスト面や耐熱性、難燃性等の特性面から特にフェノールノボラック型エポキシ樹脂が汎用性に優れており好ましい。
ポリグリシジルエーテル化合物としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、スチレン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、α−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
ポリグリシジルアミン化合物としては、具体的には、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
ポリグリシジルエステル化合物としては、具体的には、ダイマー酸型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、トリメリット酸型エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021(ダイセル化学工業株式会社製)等の脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
その他変性エポキシ樹脂としては、具体的には、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、ポリビニルアレーンポリオキシド(例えば、ジビニルベンゼンジオキシド、トリビニルナフタレントリオキシド等)、リン含有エポキシ樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
上記硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば特に限定されず、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、活性エステル系硬化剤、リン含有硬化剤等の硬化剤を使用することができる。これらの硬化剤は単独で使用してもよいし、同一系の硬化剤を2種類以上併用してもよく、また、異なる系の硬化剤を組み合わせて使用してもよい。これらのうち、ジシアンジアミド、フェノール系硬化剤が好ましい。
エポキシ樹脂組成物において、硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、硬化剤の活性水素基が0.2〜1.5モルとなる量である。エポキシ基1モルに対して活性水素基が、0.2モル未満又は1.5モルを超える場合は、硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。好ましい範囲は0.3〜1.5モルであり、より好ましい範囲は0.5〜1.5モルであり、更に好ましい範囲は0.8〜1.2モルである。例えば、フェノール系硬化剤やアミン系硬化剤や活性エステル系硬化剤を使用した場合はエポキシ基に対して活性水素基をほぼ等モル配合し、酸無水物系硬化剤を使用した場合はエポキシ基1モルに対して酸無水物基を0.5〜1.2モル、好ましくは、0.6〜1.0モル配合する。
本明細書でいう活性水素基とは、エポキシ基と反応性の活性水素を有する官能基(加水分解等により活性水素を生ずる潜在性活性水素を有する官能基や、同等な硬化作用を示す官能基を含む。)のことであり、具体的には、酸無水物基やカルボキシル基やアミノ基やフェノール性水酸基等が挙げられる。なお、活性水素基に関して、カルボキシル基(−COOH)やフェノール性水酸基(−OH)は1モルと、アミノ基(−NH2)は2モルと計算される。また、活性水素基が明確ではない場合は、測定によって活性水素当量を求めることができる。例えば、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ当量が既知のモノエポキシ樹脂と活性水素当量が未知の硬化剤を反応させて、消費したモノエポキシ樹脂の量を測定することによって、使用した硬化剤の活性水素当量を求めることができる。なお、本明細書中では、各当量の単位は「g/eq.」である。
フェノール系硬化剤としては、上記各種エポキシ樹脂変性剤として使用可能な多官能フェノール化合物が挙げられる。
これらフェノール系硬化剤の中でも、特に芳香族骨格を分子構造内に多く含むものが好ましく、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮合ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮合ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂が挙げられる。
また、加熱時開環してフェノール化合物となるベンゾオキサジン化合物も硬化剤として有用である。具体的には、ビスフェノールF型又はビスフェノールS型のベンゾオキサジン化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
酸無水物系硬化剤としては、具体的には、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、水素添加トリメリット酸無水物、無水メチルナジック酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等や、4,4’−オキシジフタル酸無水物、4,4’−ビフタル酸無水物、無水ピロメリット酸、水素添加ピロメリッ卜酸無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
アミン系硬化剤としては、上記各種エポキシ樹脂変性剤として使用可能なアミン化合物が挙げられる。その他には、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールや、ダイマージアミンや、ジシアンジアミド及びその誘導体や、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
ヒドラジド系硬化剤としては、具体的には、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
活性エステル系硬化剤としては、特許5152445号公報に記載されているような多官能フェノール化合物と芳香族カルボン酸類の反応生成物が挙げられ、市販品では、エピクロンHPC−8000−65T(DIC株式会社製)等があるがこれらに限定されるものではない。
その他の硬化剤としては、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン化合物や、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、テトラフェニルホスフォニウムブロミド等のホスホニウム塩類や、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類や、イミダゾール類とトリメリット酸、イソシアヌル酸、ホウ酸等との塩であるイミダゾール塩類や、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類や、ジアザビシクロ化合物、ジアザビシクロ化合物とフェノール化合物等との塩類や、3フッ化ホウ素とアミン類又はエーテル化合物等との錯化合物や、ヨードニウム塩類等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤を使用することができる。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール誘導体、第3級アミン類、ホスフィン類等の有機リン化合物、金属化合物、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら硬化促進剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール骨格を有する化合物であればよく、特に限定されない。例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のアルキル置換イミダゾール化合物や、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール等のアリール基やアラルキル基等の環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
第3級アミン類としては、例えば、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
ホスフィン類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
金属化合物としては、例えば、オクチル酸スズ等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
アミン錯塩としては、例えば、3フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、3フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、3フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、3フッ化ホウ素クロロフェニルアミン錯体、3フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、3フッ化ホウ素アニリン錯体、又はこれらの混合物等の3フッ化ホウ素錯体類等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらの硬化促進剤の内、ビルドアップ材料用途や回路基板用途として使用する場合には、耐熱性、誘電特性、耐ハンダ性等に優れる点から、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジンやイミダゾール類が好ましい。また、半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、トリフェニルホスフィンやDBUが好ましい。
硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂成分100質量部に対して、0.01〜15質量部が必要に応じて使用される。好ましくは0.01〜10質量部であり、より好ましくは0.05〜8質量部であり、更に好ましくは0.1〜5質量部である。硬化促進剤を使用することにより、硬化温度を下げることや、硬化時間を短縮することができる。
硬化性樹脂組成物には、得られる硬化物の難燃性の向上を目的に、信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲンを含有しない各種非ハロゲン系難燃剤を併用することができる。使用できる非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、本発明以外の有機リン化合物(リン系難燃剤)、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。これらの非ハロゲン系難燃剤は使用に際してもなんら制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数使用してもよく、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて使用することも可能である。
リン系難燃剤は、無機リン系化合物、有機リン系化合物のいずれも併用できる。無機リン系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の含窒素無機リン系化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(1)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(2)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(3)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明以外の有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、縮合リン酸エステル類、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物等の汎用有機リン系化合物や、含窒素有機リン系化合物や、ホスフィン酸金属塩等の他、リン元素に直結した活性水素基を有する有機リン化合物(例えば、DOPO、ジフェニルホスフィンオキシド等)やリン含有フェノール化合物(例えば、DOPO−HQ、10−(2,7−ジヒドロキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下、DOPO−NQと略す)、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル−1,4−ジオキシナフタリン、1,4−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール、1,5−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール等)等の有機リン系化合物や、それら有機リン系化合物をエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、リン系難燃剤がエポキシ樹脂や硬化剤を兼ねるリン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤である場合、それらに使用する反応性有機リン化合物としては、本発明の有機リン化合物や、それを同じ式(a)で表されるリン含有基を有する2価のリン化合物(3)や原料として使用されるリン化合物が好ましい。
併用できるリン含有エポキシ樹脂としては、例えば、エポトートFX−305、FX−289B、TX−1320A、TX−1328(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
使用できるリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは200〜800であり、より好ましくは300〜780であり、更に好ましくは400〜760である。リン含有率は、好ましくは0.5〜8質量%であり、より好ましくは1〜6質量%であり、更に好ましくは2〜3.5質量%である。
リン含有硬化剤としては、上記有機リン系化合物の他に、特表2008−501063号公報や特許第4548547号公報に示すような製造方法で、式(a)で表されるリン含有基を有するリン化合物を、アルデヒド類とフェノール化合物とを反応することでリン化合物を得ることができる。この場合、式(a)で表されるリン含有基を有するリン化合物は、フェノール化合物の芳香族環にアルデヒド類を介し縮合付加して分子内に組み込まれる。また、特開2013−185002号公報に示すような製造方法で、更に芳香族カルボン酸類の反応させることで、式(a)で表されるリン含有基を有するリン化合物フェノール化合物から、リン含有活性エステル化合物を得ることができる。また、WO2008/010429号公報に示すような製造方法で、式(a)で表されるリン含有基を有するリン含有ベンゾオキサジン化合物を得ることができる。
併用するリン系難燃剤の配合量は、リン系難燃剤の種類やリン含有率、硬化性樹脂組成物の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択される。リン系難燃剤が反応性の有機リン系化合物、即ち、原料リン化合物、副生リン化合物(3)、(4)や、リン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤の場合、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、リン含有率は、0.2〜6質量%以下が好ましく、0.4〜4質量%以下がより好ましく、0.5〜3.5質量%以下が更に好ましく、0.6〜3.3質量%以下が特に更に好ましい。リン含有率が少ないと難燃性の確保が難しくなる恐れがあり、多すぎると耐熱性に悪影響を与える恐れがある。なお、ここで言う硬化性樹脂組成物中のリン含有率には、併用できるリン系難燃剤のリン含有率だけでなく、本発明の有機リン化合物(1)のリン含有率も含む。
併用するリン系難燃剤が添加系の場合の配合量は、硬化性樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、赤リンを使用する場合は0.1〜2質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン系化合物を使用する場合は同様に0.1〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6質量部の範囲で配合することが好ましい。
また、本発明で硬化性樹脂組成物には、難燃助剤として、例えば、ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ素化合物、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛等を併用してもよい。
本発明においては、併用する難燃剤としてはリン系難燃剤が好ましいが、以下に記載する難燃剤を併用することもできる。
窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。窒素系難燃剤の配合量は、窒素系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。また窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
シリコーン系難燃剤としては、ケイ素元素を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。シリコーン系難燃剤の配合量は、シリコーン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。またシリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。無機系難燃剤の配合量は、無機系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属元素と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。有機金属塩系難燃剤の配合量は、有機金属塩系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物の固形分(不揮発分)100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
硬化性樹脂組成物には、粘度調整用として有機溶媒又は反応性希釈剤を使用することができる。
有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシジエチレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルジグリコール、パインオイル等のアルコール類や、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、ベンジルアルコールアセテート等の酢酸エステル類や、安息香酸メチル、安息香酸エチル等の安息香酸エステル類や、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類や、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
反応性希釈剤としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、トリルグリシジルエーテル等の単官能グリシジルエーテル類や、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等の二官能グリシジルエーテル類や、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテル類や、ネオデカン酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル類や、フェニルジグリシジルアミン、トリルジグリシジルアミン等のグリシジルアミン類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらの有機溶媒又は反応性希釈剤は、単独又は複数種類を混合したものを、不揮発分として90質量%以下で使用することが好ましく、その適正な種類や使用量は用途によって適宜選択される。例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶媒であることが好ましく、その使用量は不揮発分で40〜80質量%が好ましい。また、接着フィルム用途では、例えば、ケトン類、酢酸エステル類、カルビトール類、芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を使用することが好ましく、その使用量は不揮発分で30〜60質量%が好ましい。
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、特性を損ねない範囲で、充填材、熱可塑性樹脂や、シランカップリング剤、酸化防止剤、離型剤、消泡剤、乳化剤、揺変性付与剤、平滑剤、顔料等のその他の添加剤を配合することができる。
充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、硫酸バリウム、炭素等の無機充填材や、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、セラミック繊維等の繊維状充填材や、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴム等の有機ゴム成分や、微粒子ゴム等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の表面粗化処理に使用する過マンガン酸塩水溶液等の酸化性化合物によって分解又は溶解しないものが好ましく、特に溶融シリカや結晶シリカが微細な粒子が得やすいため好ましい。また、充填材の配合量を特に多くする場合には溶融シリカを使用することが好ましい。溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高めつつ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に使用する方がより好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。なお、充填材は、シランカップリング剤処理やステアリン酸等の有機酸処理を行ってもよい。一般的に充填材を使用する理由としては、硬化物の耐衝撃性の向上効果や、硬化物の低線膨張性化が挙げられる。また、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を使用した場合は、難燃助剤として作用し難燃性が向上する効果がある。導電ペースト等の用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填材を使用することができる。
充填材の配合量は、硬化物の低線膨張性化や難燃性を考慮した場合、多い方が好ましい。エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がより好ましく、10〜60質量%が更に好ましい。配合量が多過ぎると積層板用途として必要な接着性が低下する恐れがあり、更に硬化物が脆く、十分な機械物性を得られなくなる恐れがある。また配合量が少ないと、硬化物の耐衝撃性の向上等、充填材の配合効果がでない恐れがある。
また、無機充填材の平均粒子径は、0.05〜1.5μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。無機充填材の平均粒子径がこの範囲であれば、エポキシ樹脂組成物の流動性を良好に保てる。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。
熱可塑性樹脂を配合することは、特に、エポキシ樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成型する場合に有効である。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。エポキシ樹脂との相溶性の面からはフェノキシ樹脂が好ましく、低誘電特性面からはポリフェニレンエーテル樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。
その他の添加剤としては、例えば、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料や、酸化チタン、金属箔状顔料、防錆顔料等の無機顔料や、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤や、シラン系、チタン系等のカップリング剤や、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、ハジキ防止剤、消泡剤等の添加剤等が挙げられる。これらのその他の添加剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、0.01〜20質量%の範囲が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法で硬化することによって本発明の硬化物を得ることができる。硬化物を得るための方法としては、公知の硬化性樹脂組成物と同様の方法をとることができ、注型、注入、ポッティング、ディッピング、ドリップコーティング、トランスファー成形、圧縮成形等や、樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の形態とし積層して加熱加圧硬化することで積層板とする等の方法が好適に使用される。その際の硬化温度は通常、100〜300℃の範囲であり、硬化時間は通常、10分間〜5時間程度である。
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。エポキシ樹脂、硬化剤、更に必要により各種添加剤の配合されたエポキシ樹脂組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。硬化物としては、積層物、注型物、成型物、接着層、絶縁層、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
硬化性樹脂組成物、特にエポキシ樹脂組成物が使用される用途としては、回路基板用材料、封止材料、注型材料や、導電ペースト、接着剤等が挙げられる。回路基板用材料としては、プリプレグ、樹脂シート、樹脂付き金属箔、プリント配線板やフレキシルブル配線基板用の樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム、レジストインキ等が挙げられる。
これら各種用途のうち、プリント配線板材料や回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ、いわゆる電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として使用することができる。
これらの中でも、高難燃性、高耐熱性、低誘電特性、及び溶媒溶解性といった特性からプリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板(積層板)用材料及び半導体封止材料に使用することが好ましい。
エポキシ樹脂組成物を積層板等の板状とする場合、使用する充填材としては、その寸法安定性、曲げ強度等の点で、繊維状のものが好ましく、ガラス布、ガラスマット、ガラスロービング布がより好ましい。
硬化性樹脂組成物は繊維状の補強基材に含浸させることにより、プリント配線板等で使用されるプリプレグを作成することができる。繊維状の補強基材としてはガラス等の無機繊維や、ポリエステル樹脂等、ポリアミン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等の有機質繊維の織布又は不織布を使用することができるがこれに限定されるものではない。
硬化性樹脂組成物からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば、上記有機溶媒を含むワニス状のエポキシ樹脂組成物を、更に有機溶媒を配合して適切な粘度に調整した樹脂ワニスに作成し、その樹脂ワニスを上記繊維状基材に含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させることによって得られる。加熱温度としては、使用した有機溶媒の種類に応じ、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは100〜170℃である。加熱時間は、使用した有機溶媒の種類やプリプレグの硬化性によって調整を行い、好ましくは1〜40分間であり、より好ましくは3〜20分間である。この際、使用するエポキシ樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜80質量%となるように調整することが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、シート状又はフィルム状に成形して使用することができる。この場合、従来公知の方法を使用してシート化又はフィルム化することが可能である。
樹脂シートを製造する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、上記樹脂ワニスに溶解しない支持ベースフィルム上に、樹脂ワニスをリバースロールコータ、コンマコータ、ダイコーター等の塗布機を使用して塗布した後、加熱乾燥して樹脂成分をBステージ化することで得られる。また、必要に応じて、塗布面(接着剤層)に別の支持ベースフィルムを保護フィルムとして重ね、乾燥することにより接着剤層の両面に剥離層を有する接着シートが得られる。
支持ベースフィルムとしては、銅箔等の金属箔、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフインフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シリコンフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられ、これらの中では、つぶ等、欠損がなく、寸法精度に優れコスト的にも優れるポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、積層板の多層化が容易な金属箔、特に銅箔が好ましい。支持ベースフィルムの厚さは、特に限定されないが、支持体としての強度があり、ラミネート不良を起こしにくいことから10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。
保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、5〜50μmが一般的である。なお、成型された接着シートを容易に剥離するため、あらかじめ離型剤にて表面処理を施しておくことが好ましい。
また、樹脂ワニスを塗布する厚みは、乾燥後の厚みで、5〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。
加熱温度としては、使用した有機溶媒の種類に応じ、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは100〜170℃である。加熱時間は、使用した有機溶媒の種類やプリプレグの硬化性によって調整を行い、好ましくは1〜40分間であり、より好ましくは3〜20分間である。
このようにして得られた樹脂シートは通常、絶縁性を有する絶縁接着シートとなるが、エポキシ樹脂組成物に導電性を有する金属や金属コーティングされた微粒子を混合することで、導電性接着シートを得ることもできる。なお、上記支持ベースフィルムは、回路基板にラミネートした後に、又は加熱硬化して絶縁層を形成した後に、剥離される。接着シートを加熱硬化した後に支持ベースフィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。ここで、上記絶縁接着シートは絶縁シートでもある。
上記硬化性樹脂組成物により得られる樹脂付き金属箔について説明する。金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。厚みとして9〜70μmの金属箔を用いることが好ましい。本発明の有機リン化合物を含んでなる難燃性樹脂組成物及び金属箔から樹脂付き金属箔を製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば上記金属箔の一面に、上記有機リン化合物組成物を溶剤で粘度調整した樹脂ワニスを、ロールコーター等を用いて塗布した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して樹脂層を形成することにより得ることができる。樹脂成分を半硬化するにあたっては、例えば100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥することができる。ここで、樹脂付き金属箔の樹脂部分の厚みは5〜110μmに形成することが望ましい。
また、プリプレグや絶縁接着シートを硬化するには、一般にプリント配線板を製造するときの積層板の硬化方法を使用することができるがこれに限定されるものではない。例えば、プリプレグを使用して積層板を形成する場合は、一枚又は複数枚のプリプレグを積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加圧加熱することでプリプレグを硬化、一体化させて、積層板を得ることができる。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を使用することができる。
積層物を加熱加圧する条件としては、硬化性樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧の圧量があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成型性を満足する条件で加圧することが望ましい。加熱温度は、160〜250℃が好ましく、170〜220℃がより好ましい。加圧圧力は、0.5〜10MPaが好ましく、1〜5MPaがより好ましい。加熱加圧時間は、10分間〜4時間が好ましく、40分間〜3時間がより好ましい。加熱温度が低いと硬化反応が十分に進行しない恐れがあり、高いと硬化物の熱分解が起こる恐れがある。加圧圧力が低いと得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があり、高いと硬化する前に樹脂が流れてしまい、希望する厚みの積層板が得られない恐れがある。また、加熱加圧時間が短いと硬化反応が十分に進行しない恐れがあり、長いと硬化物の熱分解が起こる恐れがある。
更にこのようにして得られた単層樹脂付き金属箔の積層板を内層材として、多層板を作成することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の、片面又は両側の回路形成面に、プリプレグや樹脂シート、絶縁接着シートや樹脂付き金属箔にて絶縁層を形成するとともに、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板形成するものである。
また、プリプレグを使用して絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚又は複数枚を積層したものを配置し、更にその外側に金属箔を配置して積層体を形成する。そしてこの積層体を加熱加圧して一体成型することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成するとともに、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層板として使用される積層板に使用したものと同様のものを使用することができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。このようにして成形された多層積層板の表面に、更に、アディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を成型することができる。また、このプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、更に多層の多層板を形成することができる。
例えば、絶縁接着シートにて絶縁層を形成する場合は、複数枚の内層材の回路形成面に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。あるいは内層材の回路形成面と金属箔の間に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するとともに、内層材の多層化を形成する。あるいは内層材と導体層である金属箔の間に絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成する。ここで、金属箔としては、内層材として使用される積層板に使用したものと同様のものを使用することができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。
また、積層板に硬化性樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する場合は、硬化性樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で、好ましくは150〜200℃で、1〜120分間、好ましくは30〜90分間、加熱乾燥してシート状に形成する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で形成されるものである。乾燥後の厚みは5〜150μm、好ましくは5〜80μmに形成することが望ましい。なお、硬化性樹脂組成物の粘度は、十分な膜厚が得られ、塗装むらやスジが発生しにくいことから、25℃において10〜40000mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは200〜30000mPa・sである。このようにして形成された多層積層板の表面に、更に、アディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を形成することができる。また、このプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、更に多層の積層板を形成することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物を使用して得られる封止材としては、テープ状の半導体チップ用、ポッティング型液状封止用、アンダーフィル用、半導体の層間絶縁膜用等があり、これらに好適に使用することができる。例えば、半導体パッケージ成形としては、エポキシ樹脂組成物を注型、又はトランスファー成形機、射出成形機等を使用して成形し、更に50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより成形物を得る方法が挙げられる。
硬化性樹脂組成物を半導体封止材料用に調製するためには、エポキシ樹脂組成物に、必要に応じて配合される、無機充填材等の配合剤や、カップリング剤、離型剤等の添加剤を予備混合した後、押出機、ニーダ、ロール等を使用して均一になるまで充分に溶融混合する手法が挙げられる。その際、無機充填材としては、通常シリカが使用されるが、その場合、硬化性樹脂組成物中、無機充填材を70〜95質量%となる割合で配合することが好ましい。
このようにして得られた硬化性樹脂組成物を、テープ状封止材として使用する場合には、これを加熱して半硬化シートを作製し、封止材テープとした後、この封止材テープを半導体チップ上に置き、100〜150℃に加熱して軟化させ成形し、170〜250℃で完全に硬化させる方法を挙げることができる。
また、ポッティング型液状封止材として使用する場合には、得られた硬化性樹脂組成物を必要に応じて溶媒に溶解した後、半導体チップや電子部品上に塗布し、直接、硬化させればよい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、更にレジストインキとして使用することも可能である。この場合は、硬化性樹脂組成物に、エチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマーと、硬化剤としてカチオン重合触媒を配合し、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。この時の硬化温度は、20〜250℃程度の温度範囲が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物を作成し、加熱硬化により硬化物を評価した結果、従来の有機リン化合物を含む硬化性樹脂組成物から得られた硬化物と比較して、難燃性が良い。そのため、リン含有率を低く抑えることができることから、必要十分量のリン含有率の積層板において、耐熱性、吸水性が向上するので、より過酷な条件下で使用する積層板において有用である。
また、本発明の有機リン化合物は、エポキシ樹脂と反応して得られるリン含有エポキシ樹脂の原料として使用できる。
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。特に断りがない限り、部は質量部を表し、%は質量%を表す。
分析方法、測定方法を以下に示す。
(1)リン含有率:
試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン元素をオルトリン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩及びモリブデン酸塩を反応させ、生じたリンバナードモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線により求めたリン含有率を質量%で表した。積層板のリン含有率は、積層板の樹脂分に対する含有量として表した。ここで、積層板の樹脂分とは、エポキシ樹脂組成物に配合された成分のうち、溶媒を除く有機成分(エポキシ樹脂、硬化剤及び有機リン化合物等)に該当するものをいう。
(2)銅箔剥離強さ及び層間接着力:
JIS C6481、5.7に準じて、25℃の雰囲気下で測定した。なお、層間接着力は7層目と8層目の間で引きはがし測定した。
(3)ガラス転移温度(Tg):
IPC−TM−650 2.4.25.c規格に準じて示差走査熱量測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、EXSTA16000 DSC6200)にて20℃/分の昇温条件で測定を行ったときのDSC・Tgm(ガラス状態とゴム状態の接線に対して変異曲線の中間温度)の温度で表した。
(4)比誘電率及び誘電正接:
IPC−TM−650 2.5.5.9に準じてマテリアルアナライザー(AGILENT Technologies社製)を用い、容量法により周波数1GHzにおける誘電率及び誘電正接を求めることにより評価した。
(5)難燃性:
UL94規格に準じて、垂直法により評価した。評価はV−0、V−1、V−2で記した。なお、試験片がフィルム状の場合は、VTM−0、VTM−1、VTM−2で記した。但し、完全に燃焼したものは、Xと記した。
(6)GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:
本体(東ソー株式会社製、HLC−8220GPC)にカラム(東ソー株式会社製、TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフラン(THF)を使用し、1mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を使用した。測定試料はサンプル0.1gを10mLのTHFに溶解し、マイクロフィルターで濾過したものを50μL使用した。データ処理は、東ソー株式会社製GPC−8020モデルIIバージョン6.00を使用した。
(7)FT−IR:
フーリエ変換型赤外分光光度計(Perkin Elmer Precisely製、Spectrum One FT−IR Spectrometer 1760X)の全反射測定法(ATR法)により波数650〜4000cm−1の透過率を測定した。
(8)NMR:
フーリエ変換核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製、JNM−ECA400)を用いてTHF−d8を溶媒として、室温で1Hの液体測定を行った。
実施例及び比較例で使用した略号の説明は以下のとおりである。
[リン化合物]
DOPO:9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(活性水素当量216、リン含有率14.3%)
DPPO:ジフェニルホスフィンオキシド(活性水素当量202、リン含有率15.3%)
DOPO−NQ:10−(2,7−ジヒドロキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光化学株式会社製、製品名:HCA−NQ、水酸基当量:187、リン含有量8.2%)
PX−200:芳香族縮合リン酸エステル(大八化学工業株式会社製、製品名:PX−200、リン含有率9%)
[キノン化合物]
NQ:1,4−ナフトキノン(試薬、純度99%)
BQ:パラ−ベンゾキノン(試薬、純度99%)
[エポキシ樹脂]
PN−E:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、製品名:エポトートYDPN−638、エポキシ当量176)
DCPD−E:ジシクロペンタジエン/フェノール共縮合エポキシ樹脂(國都化学株式会社製、製品名:KDCP−130、エポキシ当量254)
BPA-E:ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、製品名:エポトートYD−903、エポキシ当量812)
OCN−E:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、製品名:エポトートYDCN−700−7、エポキシ当量202)
[硬化剤]
PN:フェノールノボラック樹脂(昭和電工株式会社製、製品名:ショウノールBRG−557、軟化点80℃、フェノール性水酸基当量105)
DICY:ジシアンジアミド(日本カーバイド工業株式会社製、製品名:DIHARD、活性水素当量21)
DCPD−P:ジシクロペンタジエン/フェノール共縮合樹脂(群栄化学株式会社製、GDP9140、フェノール性水酸基当量196)
[硬化促進剤]
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、製品名:キュアゾール2E4MZ)
[その他]
YP−50S:ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、製品名:フェノトートYP−50S、重量平均分子量=40000)
BMB:アルミナ1水和物(河合石灰工業株式会社製、製品名:BMB、平均粒子径1.5μm)
実施例1
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管及び水分離器を備えた反応装置に、室温下で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)を200部、DOPOを108部、水を4.2部(水/DOPOのモル比=0.47)仕込み、窒素雰囲気下で70℃まで昇温して完全に溶解した。そこに、NQ78.9部(NQ/DOPOのモル比=0.999)を30分かけて仕込んだ。仕込み終了後、還流が開始する145℃まで昇温し、還流温度を保ちながら5時間反応を継続した。
得られた生成物を室温まで冷却しで吸引濾過により濾別した。濾滓に2500部の酢酸ベンジルを加え加熱し完全に溶解した後、室温まで冷却し1日静置し、生成した沈殿物を吸引濾過により濾別した。濾液を39%含水メタノール中に投入し、生成した沈殿物を吸引濾過により濾別し、濾滓として有機リン化合物1(純度99%以上)を得た。図1にGPCチャートを、図2にFT−IRチャートを、図3にNMRチャートをそれぞれ示す。なお、図1〜図3によれば、得られたリン化合物1は上記式(1−1)で表される。
実施例2
合成例1と同様な装置に、室温下で、DOPOを108部、BQを53部(BQ/DOPOのモル比=0.98)、水を1.8部(水/DOPOのモル比=0.20)、PMAを200部仕込み、窒素雰囲気下で還流が開始する145℃まで昇温し、還流状態を保ちながら3時間反応を継続した。
得られた生成物を室温まで冷却しで吸引濾過により濾別した。濾滓に2500部の酢酸ベンジルを加え加熱し完全に溶解した後、室温まで冷却し1日静置し、生成した沈殿物を吸引濾過により濾別した。濾液を39%含水メタノール中に投入し、生成した沈殿物を吸引濾過により濾別し、濾滓として有機リン化合物2を得た。得られたリン化合物2は上記式(1−2)で表される。
実施例3
合成例1と同様な装置に、DPPOを101部、NQを78部(NQ/DPPOのモル比=0.99)、水を2.7部(水/DPPOのモル比=0.30)、PMAを200部仕込み、窒素雰囲気下で還流が開始する145℃まで昇温し、還流状態を保ちながら3時間反応を継続した。
得られた生成物を室温まで冷却しで吸引濾過により濾別した。濾滓に2500部の酢酸ベンジルを加え加熱し完全に溶解した後、室温まで冷却し1日静置し、生成した沈殿物を吸引濾過により濾別した。濾液を39%含水メタノール中に投入し、生成した沈殿物を吸引濾過により濾別し、濾滓として有機リン化合物3を得た。得られたリン化合物3は上記式(1−3)で表される。
実施例4
難燃剤として実施例1で得られた有機リン化合物1を25部、エポキシ樹脂としてPN−Eを100部、硬化剤としてDICYを6.0部、硬化促進剤として2E4MZを0.1部配合し、メチルエチルケトン(以下MEKと記す)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGMと記す)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと記す)で調整した混合溶媒に溶解して、不揮発分50%のエポキシ樹脂ワニスを得た。
得られた樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製、WEA2116、0.1mm厚)に含浸した。含浸したガラスクロスを150℃の熱風循環オーブン中で10分間乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ8枚と、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC−III、厚み35μm)を重ね、真空度0.5kPa、プレス圧力2MPa、及び130℃×15分+170℃×70分の温度条件で真空プレスを行い、1mm厚の積層板を得た。得られた積層板の銅箔部分をエッチング液に浸漬することで除去し、洗浄と乾燥を行った後に、127mm×12.7mmの大きさに切り出して難燃性測定用試験片とした。積層板の銅箔剥離強さ、層間接着力、ガラス転移温度(Tg)及び難燃性の結果を表1に示す。
実施例5〜6、及び比較例1〜2
表1に記載の配合比率(部)により、実施例4と同様の装置を使用して、同様の操作で、樹脂ワニスを得て、更に積層板、難燃性測定用試験片を得た。実施例4と同様の試験を行い、その結果を表1に示す。なお、表中の「−」は不使用を表す。
実施例7〜9、及び比較例3〜5
表2に記載の配合比率(部)により、実施例4と同様の装置を使用して、同様の操作で、樹脂ワニスを得て、更に積層板、難燃性測定用試験片を得た。実施例4と同様の試験を行い、その結果を表2に示す。なお、表中の「(A)/(B)」はエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の官能基の当量比(モル比)を表す。「*」は未測定を表す。
実施例10
難燃剤として実施例1で得られた有機リン化合物1を48部、エポキシ樹脂としてPN−Eを97部、硬化剤としてDICYを5部、硬化促進剤として2E4MZを0.2部、その他の成分としてYP−50Sを100部、BMBを50部配合し、MEK、PGM、DMFで調整した混合溶媒に溶解して、不揮発分50%の樹脂ワニスを得た。
得られた樹脂ワニスをセパレータフィルム(ポリイミドフィルム)上にロールコータを用いて塗布し、130℃のオーブン中で10分間乾燥して、厚さ60μmの樹脂フィルムを得た。セパレータフィルムから樹脂フィルムを剥がし、更に樹脂フィルムを200℃のオーブン中で120分間硬化させて硬化フィルムを得た。硬化フィルムから200mm×50mmの大きさに切り出して難燃性測定用試験片とした。硬化フィルムのTg及び難燃性の結果を表3に示す。
実施例11及び比較例6〜7
表3に記載の配合比率(部)により、実施例10と同様の装置を使用して、同様の操作で、樹脂ワニスを得て、更に硬化フィルム、難燃性測定用試験片を得た。実施例10と同様の試験を行い、その結果を表3に示す。
実施例10〜11(比較例6〜7)は、硬化フィルムにした時の例である。この場合でも、難燃性、耐熱性は向上した。なお、エポキシ樹脂(PN−E)の配合量は、硬化剤(DICY)に対する配合量を同量にし、更に難燃剤の官能基に対して当モルに相当する量のエポキシ樹脂を追加した配合量とした。