JP2013181082A - 2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物、その製造法及びそれらを含有する光ラジカル重合性組成物並びにその重合物 - Google Patents

2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物、その製造法及びそれらを含有する光ラジカル重合性組成物並びにその重合物 Download PDF

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Abstract

【課題】高屈折なポリマーを合成することができるナフタレン骨格を有するアクリレート化合物であるとともに、その骨格の中に難燃性を有するリン原子を有する、新規な化合物を提供する。
【解決手段】2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物及び当該化合物と光ラジカル重合開始剤を含有する重合性組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ラジカル重合性化合物及びその重合物に関し、特に、2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物、その製造法、及び2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物を含有する光ラジカル重合性組成物並びにその重合物に関するものである。
近年、光学分野においてガラス代替材料としてプラスチックが盛んに用いられている。たとえば、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレート等がよく知られている。これらプラスチック材料は、軽量性、安全性、意匠性を有している反面、屈折率の面では無機ガラスより低く、分厚くなりやすいという欠点がある。そこで、近年、高屈折率を有するプラスチック材料に対する要望が高くなってきている。特に、高屈折率プラスチック材料の光学用物品への進出は著しく、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク、ホログラム、光ファイバー、光道波路等への検討が盛んに行われている。
プラスチックの屈折率とその原料となるモノマーの屈折率とは正の相関関係にあり、高屈折率のプラスチックを得るためには高分子を構成するモノマー部分が高屈折率を有するものであることが必要である。
モノマーとしての有機化合物の屈折率を高くする方法としては、分子構造中にハロゲン原子(フッ素を除く)や硫黄原子さらには芳香環を導入することが有用であることは既に良く知られている。たとえば、ハロゲン原子の有する高い固有屈折率を利用し、ビフェニル環にハロゲン原子を導入した高屈折率重合体が報告されている(特許文献1)。しかし、ハロゲン化によって、耐光性が著しく劣化し、また、高比重であるという欠点があった。又ハロゲン以外に高い固有屈折率を有する硫黄原子を有する単量体組成物も報告されている(特許文献2)。しかし、これらは高い屈折率、優れた耐衝撃性を有するものの、得られたポリマーの耐光性が著しく劣り、硫黄特有の不快臭が問題となる欠点があった。また、これらを用いたプラスチックが廃棄物として処理されるとき、有害なガスや化合物を生じることが懸念される。
芳香環の導入に関してはこれまで、ベンゼン環、ビフェニル環を有する高屈折率材料が知られており、これらは、軽く透明性にすぐれ、バランスの良い高屈折率材料となる(特許文献3等)。しかし、ベンゼン環を用いた場合、モノマーの屈折率は高くなるもののまだ十分ではなく、ビフェニル環を用いた場合は、ベンゼン環のモノマーに比べ、吸収が長波長側にシフトし、光硬化の場合には開始剤とUV吸収が重なるため、光開始効率が低下するという問題点があった。
一方、ナフタレン環を導入することにより高い屈折率が期待できることから、骨格にナフタレン化合物を含むアクリレート合物についても、近年、そのモノクリレート体、ジアクレート体などについて報告がなされている(特許文献4,5,6,7)。しかしながら、これらの1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物は、その硬化物が太陽光に晒された場合、茶色に着色するという問題があった。
また、プラスチックは加工性がよいが、金属やセラミック製品に比べ、燃えやすいという欠点がある。そのため、これらのプラスチックに対して、種々の難燃化が検討されている。一般的に、難燃化はハロゲンやリンなどの難燃化元素を有する化合物を添加することにより達成されるが、その結果として高分子の持つ優れた特徴が損なわれることも多く、高分子の持つ物性を損なうことが少ない、効率のよい難燃化剤が求められている。
難燃化剤の中でも、臭素系難燃化剤あるいは臭素系難燃化剤とアンチモン系難燃化剤との組み合わせは、少量添加で難燃化効果が得られるため多く使用されているが、環境問題から、難燃化剤も非ハロゲンや非アンチモン化に向けて、検討が進められている。
ハロゲン系、アンチモン系以外では金属水酸化物やリン系難燃化剤が幅広く使用されている。中でもリン酸エステル系難燃化剤が高分子の物性を損なうことが少ない難燃化剤として多く用いられている。リン酸エステル系難燃化剤においては、脂肪族系リン酸エステル化合物と芳香族系リン酸エステル化合物が用いられている。
これら難燃化剤は高分子材料に添加することによって用いられるが、その場合、添加した難燃化剤のブリードアウトや揮発によって高分子材料から分離し、金型の汚染や成型不良等の問題が発生する。この問題を解決するために、特に、電気・電子や自動車、建材等の用途では、高分子に組み込むことができる反応性をもった反応性リン酸エステル系難燃化剤が求められている。
この反応性リン酸エステル系難燃化剤として、ジアルキルホスホリル基又はジアリールホスホリル基が2位に置換した1,4−ハイドロキノン化合物や1,4−ジヒドロキシナフタレン化合物が有効であることはすでに知られている(特許文献 8、9)。
特開平05−170702号公報 特開2002−20433号公報 特開2003−064296号公報 特開1987−192340号公報 特開2001−276587号公報 特開2008−81682号公報 特開2010−138331号公報 特開2003−206350号公報 特開2011−084697号公報
本発明の目的は、耐光性があり、高屈折な重合物を製造することができるナフタレン骨格を有するアクリレート化合物であるとともに、その骨格の中に難燃性を有するリン原子を有する、新規な化合物を提供することにある。
本発明者は、ナフタレン化合物の構造と光重合性に関して鋭意検討した結果、2−ジ置換ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン化合物を(メタ)アクリロイル化して得られる、二官能アクリレートである2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物が、その構造の中にリン原子を含むことから難燃性が期待できると同時に、高圧水銀ランプで容易に重合し、かつ得られた重合物の屈折率が高く、その重合物の耐光性も優れていることを見出し、本発明を完成させた。
第1発明では、下記の一般式(1)で示される2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物を提供する。
(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Aはアルキル基又はアリール基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子又はアルコキシ基のいずれかを示す。)
第2発明では、第1の発明に記載の一般式(1)に示す2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物、及びラジカル重合開始剤を含有するラジカル重合性組成物を提供する。
第3発明では、第2の発明に記載のラジカル重合性組成物を重合してなる重合物を提供する。
第4発明では、一般式(2)に示す2−ジ置換ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレンを(メタ)アクリロイル化することよりなる第1の発明に記載の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物の製造方法を提供する。
(一般式(2)中、Aはアルキル基又はアリール基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子又はアルコキシ基のいずれかを示す。)
本発明において、(メタ)アクリル化とは、アクリル化またはメタクリル化を表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルまたはメタクリロイルを表す。
本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物は、高屈折率を示すとともに、その構造の中にリン原子とラジカル重合性を有するアクリロイル基を有する新規なナフタレン化合物であり、光ラジカル重合開始剤を用いることにより、もっとも一般的な光源である高圧水銀ランプにより容易に重合する工業的に有用な化合物であり、その重合物は耐光性に優れている。
本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物は一般式(1)に記載の構造を有する化合物である。
(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Aはアルキル基又はアリール基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子又はアルコキシ基のいずれかを示す。)
一般式(1)中、Aで表わされるアルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、アリール基としては、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
一般式(1)中、Xで表されるアルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子,臭素原子、ヨード原子が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等が挙げられる。
次に、一般式(1)に示す2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物の具体例を示す。たとえば、Xが水素原子の場合は、2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン等が挙げられる。
そして、Xがアルキル基の場合は、6−メチル−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−メチル−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−メチル−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ビスア(クリロイルオキシ)ナフタレン、6−メチル−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−メチル−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−メチル−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−メチル−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−メチル−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−エチル−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−エチル−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−エチル−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−エチル−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−エチル−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−エチル−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−エチル−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−エチル−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン等があげられ、
そしてまた、Xがハロゲン原子の場合は、6−クロロ−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−クロロ−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−クロロ−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−クロロ−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−クロロ−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−クロロ−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−クロロ−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−ブロモ−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−ブロモ−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−ブロモ−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−ブロモ−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−ブロモ−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−エチル−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−ブロモ−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−ブロモ−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン等が挙げられる。
そしてさらに、Xがアルコキシ基の場合は、6−メトキシ−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−メトキシ−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−メトキシ−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−メトキシ−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−メトキシ−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−メトキシ−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−メトキシ−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−メトキシ−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−エトキシ−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−エトキシ−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−エトキシ−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−エトキシ−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−エトキシ−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−エトキシ−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、6−エトキシ−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、6−エトキシ−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン等があげられる。
これらの化合物のうち、合成が容易で、特に好ましいものとしては、2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン、2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン、2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンが挙げられる。
[製造方法]
本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物は、一般式(2)に示す2−ジ置換ホスホリル−1,4−ジヒドロキシキシナフタレン化合物を(メタ)アクリロイル化することにより得ることができる。
(一般式(2)中、Aはアルキル基又はアリール基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子又はアルコキシ基のいずれかを示す。)
一般式(2)中、Aで表わされるアルキル基としては、一般式(1)と同様に、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、アリール基としては、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
一般式(2)中、Xで表されるアルキル基としては、一般式(1)と同様に、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子,臭素原子、ヨード原子が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等が挙げられる。
そして原料となる2−ジ置換ホスホリル−1,4−ジヒドロキシキシナフタレン化合物は、1,4−ナフトキノン化合物と亜リン酸ジエステルを反応させることにより得られる。文献8,9にあるように、ジアルキルホスフィンやジアリールホスフィンと1,4−ナフトキノンを反応させて、2−ジ置換ホスホリル−1,4−ジヒドロキシキシナフタレン化合物を得る方法は知られているが、同様の方法でジアルキルホスフィンやジアリールホスフィンの代わりに亜リン酸ジアルキルエステルや亜リン酸ジアリールエステルをもちいて反応させたところ、2−ジ置換ホスホリル−1,4−ジヒドロキシキシナフタレン化合物を収率よく得ることができなかった。そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、1,4−ナフトキノン化合物と亜リン酸ジエステルを特定のブレンステッド酸又はルイス酸等の酸の存在下、加熱することにより、2−ジ置換ホスホリル−1,4−ジヒドロキシキシナフタレン化合物が得られることを見出した。
反応性リン酸エステル系難燃化剤として知られているジアルキルホスホリル基又はジアリールホスホリル基が2位に置換した1,4−ジヒドロキシナフタレン化合物は、原料として高価なジアルキルホスフィンオキサイドやジアリールホスフィンオキサイドを用いているが、本発明の化合物は、より安価な亜リン酸ジアルキルや亜リン酸ジアリールを用いて、反応性リン酸エステル系難燃化剤として有用な新規な化合物を製造できるという点でも有利である。
原料の1,4−ナフトキノン化合物としては、たとえば、1,4−ナフトキノン、6−メチル−1,4−ナフトキノン、6−エチル−1,4−ナフトキノン、6−クロロ−1,4−ナフトキノン、6−ブロモ−1,4−ナフトキノン、6−メトキシ−1,4−ナフトキノン、6−エトキシ−1,4−ナフトキノン等が挙げられる。
亜リン酸ジエステルとしては亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジ−i−プロピル、亜リン酸ジフェニル等が挙げられる。
さらに、用いられる酸としては、硫酸、パラ−トルエンスルホン酸などのブレンステッド酸、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体、塩化亜鉛、塩化銅、塩化コバルトなどのルイス酸があげられる。
特に、硫酸、塩化亜鉛及び三フッ化ホウ素等のルイス酸が好ましい。
使用される触媒量は、用いる触媒によっても異なるが、原料の1,4−ナフトキノン化合物に対して好ましくは0.5モル%から30モル%、より好ましくは1モル%から10モル%を用いることができる。
使用される溶媒としては、原料に対する適当な溶解度があり、反応温度及び溶媒回収の観点から適当な沸点を有するもので、かつ触媒効果を損ねないようなものならば、いずれでも使用できる。具体的な例を挙げれば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メチルイソブチルケトンのようなケトン化合物、ジエトキシエタン、ジメトキシエタンのようなエーテル化合物、酢酸ブチルのようなエステル化合物、酢酸のようなカルボン酸化合物、2−メトキシエタノールのような複数官能基を有する化合物などである。
反応温度としては、好ましくは30℃から200℃、より好ましくは70℃から130℃
で行う。反応温度が低すぎると実用的な反応速度が得られず、一方、温度が高すぎると高次副生物の生成が多くなるなどの不利を招く。
亜リン酸ジエステルの使用量は、ナフトキノン化合物に対して、好ましくは30モル%から200モル%、より好ましくは50モル%から150モル%の範囲である。亜リン酸ジエステルの使用量が少なすぎると、未反応ナフトキノン化合物の量が多くなる。また亜リン酸ジエステルの量が多すぎると2個の亜リン酸ジエステル基がナフトヒドロキノン骨格に置換した逐次反応副生物がふえるなどの不利を招く。
次に、(メタ)アクリロイル化であるが、1,4−ナフトキノン化合物と亜リン酸ジエステルとの反応によって得られた一般式(2)で表される2−ジ置換ホスホリル−1,4−ジヒドロキシキシナフタレン化合物を、下記の反応式に示したように、塩基存在下、または塩基非存在下、(メタ)アクリロイル化剤と反応させることにより、対応する一般式(1)で表される2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物が得られる。
原料として用いられる一般式(2)で表される2−ジ置換ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン化合物としては、例えば、2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−メチル−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−メチル−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−メチル−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−メチル−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−エチル−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−エチル−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−エチル−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−エチル−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−クロロ−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−クロロ−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−クロロ−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−クロロ−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−ブロモ−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−ブロモ−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−ブロモ−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−ブロモ−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−メトキシ−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−メトキシ−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−メトキシ−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−メトキシ−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−エトキシ−2−ジメトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−エトキシ−2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−エトキシ−2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン、6−エトキシ−2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン等があげられる。
使用される(メタ)アクリロイル化剤としては、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、無水アクリル酸、無水メタクリル酸等が挙げられる。
2−ジ置換ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン化合物に対する(メタ)アクリロイル化剤の添加量は2モル倍から4モル倍、好ましくは2.5モル倍から3モル倍である。
反応で使用される塩基としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン等が挙げられる。
溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンのような芳香族系溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレンのようなハロゲン化炭素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンのようなエーテル系溶媒が好適に用いられる。
反応温度は0℃から80℃、好ましくは0℃から20℃である。反応時間は15分から60分程度である。
得られた化合物の同定は、HNMRスペクトル、IRスペクトル、Massスペクトルを用いて行い、2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物であることを確認した。
[ラジカル重合開始剤]
かくして得られた2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物は、ラジカル重合開始剤を用いることによりラジカル重合し、重合物とすることができる。ラジカル重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤を用いることができる。
熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ系化合物等のどちらでも使用可能である。有機過酸化物としては、例えばt−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート類等のパーオキシエステル類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類等を挙げることができる。またアゾ系化合物の開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリルや、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビ(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾニトリル類を挙げることができる。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−イソプロピルチオキサントン、2−t−ブチルアントラキノン等が挙げられる。実際の工業製品としてはBASF社製のイルガキュア651、イルガキュア184、ダロキュア1173、イルガキュア907、イルガキュア369が挙げられる(イルガキュア、ダロキュアはBASF社の登録商標)。
紫外線や可視光線等の活性エネルギー線による光ラジカル重合は、硬化が速く、特に本発明の化合物を光学用途に用いる場合は、光ラジカル重合が好ましい。
[ラジカル重合性組成物]
本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物及び上記ラジカル重合開始剤を混合することによりラジカル重合性組成物を調製したのち重合させることができる。
本発明のラジカル重合性組成物において、2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物を単独でホモポリマーとして重合させることもできるが、本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物とともに本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物以外のラジカル重合性化合物を加えて共重合性のラジカル重合性組成物とすることも出来る。このラジカル重合性化合物としては、例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレートさらには、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、p−トリルアクリレート、p−トリルメタクリレート、m−トリルアクリレート、m−トリルメタクリレート、o−トリルアクリレート、o−トリルメタクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、4−フェノキシフェニルアクリレート、4−フェノキシフェニルメタクリレート、2−フェノキシフェニルアクリレート、2−フェノキシフェニルメタクリレート等が挙げられる。
本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物は高屈折率を有する化合物であることから、トリメチロールプロパントリアクリレート等のラジカル重合性化合物と共重合することにより、得られる重合物の屈折率を高めることができる。また、本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物は、リン原子を含有しており、得られる重合物の難燃性を改善するという効果も期待できる。
本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物以外のラジカル重合性化合物として、フェノキシエチルアクリレートなどのモノアクリレート体を用いた共重合性のラジカル重合性組成物の場合は、本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物が架橋剤として作用し、重合物の硬度などの物性を改善するという効果も発揮する。
これらのラジカル重合性化合物に対する本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物の添加比率は、用いるラジカル重合性化合物に対する2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物の溶解度にもよるが、通常10%以上が好ましい。
本発明に用いられるラジカル重合開始剤の添加濃度は、本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物および必要に応じて併用されるラジカル重合性化合物の合計重量に対して0.1〜5重量%の範囲から選ばれ、好ましくは0.5〜2重量%である。0.1重量%より少ないと重合速度が遅く、5重量%より多いと重合物の物性が悪化するので好ましくない。
また、本発明のラジカル重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、希釈剤、着色剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
[重合]
当該ラジカル重合性組成物の重合はフィルム状で行うことも出来るし、塊状に硬化させることも可能である。フィルム状に重合させる場合は、液状の当該重合性組成物をたとえばポリエステルフィルムなどの基材に、たとえばバーコーターなどを用いて膜厚5〜300ミクロンになるように塗布する。本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物は、薄膜だけでなく厚膜においても容易に重合させることができる。
このようにして調製した塗布膜に活性エネルギー線を照射することにより重合させることができる。用いられる光源としては、使用する光ラジカル重合開始剤によって異なるが、250〜500nmの波長の活性エネルギー線が用いられる。したがって、上記の波長の活性エネルギー線を照射できる光源として、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、UV−LED、青色LED、白色LED等の光源が使用可能である。また、太陽光線を使用することもできる。特に、本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物は、UV硬化装置として最も広く用いられている光源である高圧水銀ランプ(波長366nm)をもちいて重合させることができることから、工業的に非常に有用な化合物である。
光重合の判定は、タック・フリーテスト(指触テスト)に基づいて行った。すなわち、光照射によりフィルム表面の光ラジカル重合性組成物のタック(べたつき)が取れるまでの時間を硬化時間とした。
このようにして得られた、2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物を重合させて得られるフィルム、シートもしくは塊状物は高い屈折率を示し、またその構造から、難燃性、紫外線吸収性、高い耐熱性、高硬度、高光沢性等が期待できる工業的に有用なものである。
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。特記しない限り、全ての部および百分率は重量基準である。
生成物の確認は下記の機器による測定によった。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)屈折計:エルマー社製 型式ER−7MWH
(3)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(4)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX FT NMR Spectorometer
(5)質量分析計:島津製作所社製質量分析計、型式GCMS−QP5000
<20%重量減少温度>
島津示差熱・熱重量同時測定装置(DTA−50)を用いて、空気雰囲気(空気流量:100ml/分)、昇温速度10℃/分で、得られたプレート状重合物の初期重量が20%減少した時の温度を測定した。この値が高いほど、熱安定性が高いことを意味し、難燃性効果の評価とした。
「合成例1」2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレンの合成
窒素ボックス中で、反応容器に1,4−ナフトキノン14.9g(94mmol)、亜リン酸ジエチル18.2g(132mmol)、触媒の濃硫酸920mg(9.4mmol)および溶媒のジエトキシエタン150mlを仕込んだ。次に、窒素ガス雰囲気中、油浴上で内温を100℃前後に保ち、10時間撹拌を続けた。室温に戻した後、抽出溶媒の酢酸エチルを加え、飽和重炭酸曹達水溶液を加えて全体のpHを弱塩基性にした。得られた酢酸エチル溶液をハイドロサルファイト水溶液と混ぜ合わせ、攪拌することで、未反応の1,4−ナフトキノンを1,4−ジヒドロキシナフタレンへ還元した。本操作により、有機層の着色低減が起こり、黒褐色溶液が赤褐色溶液になった。当該反応液を静置したところ水層と有機層の二層に分離したので、有機層を取り出し、当該有機層を水で洗浄した。得られた有機層から溶媒を減圧留去し、濃赤褐色油状物17.6gを得た。このものを高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、その組成は、2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン37.0%、1,4−ジヒドロキシナフタレン19.5%および未知化合物(UK)9.8%であった。粗収率は23mol%であった。
得られた濃赤褐色油状物をクロロホルムに溶かして放置すると1,4−ジヒドロキシナフタレンが優先的に析出した。この1,4−ジヒドロキシナフタレンが優先的に析出したクロロホルム溶液を濾過し、クロロホルムを留去したところ、油状物中の2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン含量は43%に増加した。このものからクロロホルムを溜去して得た濃赤褐色油状物の一部10.1gをシリカゲルを用いたカラムクロマト精製に付した。溶離液として酢酸エチル−ヘキサンを用いた際に得られたフラクションから、目的物を65%含む黒褐色固体1.3gを得た。これを酢酸エチル−ヘキサンから再結晶し、灰白色結晶0.6gを得た。このものは分析の結果、2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレンであり、純度は96%であった。
この化合物の融点、屈折率、IRスペクトル、H−NMRスペクトル、32P−NMRおよびMS−スペクトル測定値を以下に示す。
(1)融点:110.8−112.2℃
(2)屈折率:n=1.595
(3)IR(KBr,cm−1):3620、1700、1638、1602、1580、1478、1420、1395、1330、1218、1170、1150、1020、882、775、716
(4)H−NMR(270MHz、CDCl):δ=10.64(s、1H)、8.33(d、1H)、8.15(d、1H)、7.53−7.67(m、2H)、6.69(d、1H)、6.22(s、1H)、4.00−4.21(m、4H)、1.31(t、6H)
(5)32P−NMR(270MHz、CDCl):δ=24.51
(6)MS−スペクトル:M=296
「合成例2」2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレンの合成
窒素ボックス中で、反応容器に1,4−ナフトキノン6.0g(37.9mmol)、亜リン酸ジイソプロピル9.5g(56.9mmol),触媒の塩化亜鉛1.6g(11.4mmol)および溶媒のジエトキシエタン60mlを仕込んだ。次に、窒素ガス雰囲気中、油浴上で内温を105℃前後に保ち、11時間撹拌を続けた。室温に戻した後、抽出溶媒の酢酸エチルを加え、飽和重炭酸曹達水溶液を加えて全体のpHを弱塩基性にした。得られた酢酸エチル溶液をハイドロサルファイト水溶液と混ぜ合わせ、攪拌することで、未反応の1,4−ナフトキノンを1,4−ジヒドロキシナフタレンへ還元した。本操作により、有機層の着色低減が起こり、黒褐色溶液が赤褐色溶液になった。次に有機層と水層の二層を分離し、有機層を水で洗浄。得られた有機層から溶媒を減圧留去し、濃赤褐色油状物7.5gを得た。このものを高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、その組成は、2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン53.7%、1,4−ジヒドロキシナフタレン24.1%および未知化合物(UK−1)9.2%であった。粗収率は33mol%である。
この濃赤褐色油状物をクロロホルムに溶かして放置すると1,4−ジヒドロキシナフタレンが優先的に析出した。この1,4−ジヒドロキシナフタレンが優先的に析出したクロロホルム溶液を濾過し、クロロホルムを留去したところ、油状物中の2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン含量は61%に増加した。このクロロホルムを留去して得た濃赤褐色油状物の6.3gを用いて、シリカゲルを用いたカラムクロマト精製に付した。溶離液として酢酸エチル−ヘキサンを用いたフラクション−1から、2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレンを89%含む淡褐色の結晶2.1gを得た。これを酢酸エチル−ヘキサンから再結晶し、淡黄色結晶0.8gを得た。当該結晶の2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレンの純度は98%であった。
この化合物の融点、屈折率、IRスペクトル、H−NMRスペクトル、32P−NMRおよびMS−スペクトル測定値を以下に示す。また、カラムクロマト精製の際にフラクション−1を得た後に、酢酸エチルを溶離液として用いた時に得られたフラクション−2は、上記UK−1を74%含んでおり、溶媒溜去後、酢酸エチル−ヘキサンで再結晶することで無色透明結晶、0.3gを得た。LCで分析したところ、UK−1の純度は99.1%であった。各種スペクトル分析から、このものは2,3−ビス{ビス(i−プロポキシ)ホスホリル}−1,4−ジヒドロキシナフタレンであることが分かった。このものの融点、屈折率、IRスペクトル、H−NMRスペクトルおよび32P−NMRスペクトル測定値も併せて以下に示す。
フラクション−1:2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン
(1)融点:143.5−144.6℃
(2)屈折率:n=1.583
(3)IR(KBr,cm−1):3230、2990、1745、1640、1608、1584、1460、1340、1208、1165、1100、1078、1010、902、876、815、770、722
(4)H−NMR(270MHz、CDCl):δ=10.79(d、1H)、8.30−8.37(m、1H)、8.15(d、1H)、7.52−7.68(m、2H)、6.70(d、1H)、4.59−4.68(m、2H)、1.38(d、6H),
1.20(d、6H)
(5)MS−スペクトル:M=324
フラクション−2:2,3−ビス{ビス(i−プロポキシ)ホスホリル}−1,4−ジヒドロキシナフタレン
(1)融点:125.0−126.2℃
(2)屈折率:n=1.549
(3)IR(KBr,cm−1):3430、2980、1595、1462、1362、1185、1160、1105、1020、988、810、788
(4)H−NMR(270MHz、CDCl):δ=8.35−8.42(m、2H)、7.6(d、2H)、4.68−4.79(m、4H)、1.40(d、12H)、1.24(d、12H)
(5)32P−NMR(270MHz、CDCl):δ=23.0
「合成例3」2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン化合物の合成(1)
窒素ボックス中で、十分に窒素置換した反応容器に1,4−ナフトキノン8.0g(50.6mmol)、亜リン酸ジフェニル17.8g(75.9mmol),触媒の塩化亜鉛2.1g(15.2mmol)および溶媒のジエトキシエタン80mlを仕込んだ。次に、窒素ガス雰囲気中、油浴上で反応容器の内温を105℃前後に保ち、4時間撹拌を続けた。室温に戻した後、抽出溶媒の酢酸エチルを加え、飽和重炭酸曹達水溶液を加えて全体のpHを弱塩基性にした。得られた酢酸エチル溶液をハイドロサルファイト水溶液と混ぜ合わせ攪拌したところ、未反応の1,4−ナフトキノンの1,4−ジヒドロキシナフタレンへの還元および着色低減が起こり、黒褐色溶液が濃褐色溶液になった。当該反応液を静置したところ水層と有機層の二層に分離しので、有機層を取り出し、当該有機層を水で洗浄した。得られた有機層から溶媒を減圧留去することにより濃褐色油状物15.0gを得た。このものを高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、その組成は、2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン42.2%、1,4−ジヒドロキシナフタレン5.2%および亜リン酸ジフェニル、25.6%であった。粗収率は32%であった。
この反応粗体をシリカゲルを用いたカラムクロマト精製に付した。溶離液として先ずヘキサンを流し、次いで酢酸エチル−ヘキサンを流した。これによって亜リン酸ジフェニルが目的物より早く溶出する。酢酸エチル−ヘキサンで溶出する目的物を75〜84%含むフラクションから溶媒を溜去し、2.8gの赤褐色油状物を得た。これを酢酸エチル−ヘキサンから再結晶し、淡黄色結晶1.50gを得た。この結晶は分析の結果、2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレンであり、その純度は96%であった。
この化合物の融点、屈折率、IRスペクトル、H−NMRスペクトル、32P−NMRおよびMS−スペクトルを以下に示す。
(1)融点:141.8−142.4℃
(2)屈折率:n=1.656
(3)IR(KBr,cm−1):3270、1660、1610、1584、1497、1460、1337、1210、1188、1162、1102、1080、1030、852、884、777、760
(4)H−NMR(270MHz、CDCl):δ=10.38(s、1H)、8.30(d、1H)、8.12(d、1H)7.60−7.68(m,1H),7.49−7.58(m、1H)、7.08−7.28(m、10H)、6.88(d、1H)、5.58(s、1H)
(5)32P−NMR(270MHz、CDCl):δ=17.0
(6)MS−スペクトル:M=392
「合成例4」2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレンの合成(2)
窒素ボックス中で、反応容器に1,4−ナフトキノン8.4g(53.2mmol)、亜リン酸ジフェニル18.7g(79.7mmol),触媒の三フッ化ホウ素エーテラート0.75g(5.3mmol)および溶媒のジエトキシエタン100mlを仕込んだ。次に、窒素ガス雰囲気中、油浴上で、内温を100℃前後に保ち、1時間撹拌を続けた。室温に戻した後、抽出溶媒の酢酸エチルを加え、飽和重炭酸曹達水溶液を加えて全体のpHを弱塩基性にした。次に有機層と水層の二層を分離し、得られた有機層を水で洗浄した。得られた有機層から溶媒を減圧留去し、暗褐色油状物27.4gを得た。
このものを高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、その組成は、2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン42.8%、1,4−ナフトキノン4.5%および亜リン酸ジフェニル22.2%であった。粗収率は56%であった。
この反応粗体を合成例3と同様の方法で精製、再結晶することにより、淡黄色の結晶を得た。当該淡黄色の結晶のIRスペクトル、H−NMRスペクトル、32P−NMRおよびMS−スペクトルを測定した結果、合成例3と同様の2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレンであることが確認された。
「実施例1」2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン化合物の合成
十分に窒素置換した反応器に、合成例1と同様にして合成し再結晶精製した2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン600mg(2.0mmol)、トリエチルアミン1.02g(10.2mmol)及び溶媒のアセトニトリル10mlを仕込んで、攪拌下に溶解した。この溶液を氷水で冷やし、反応液の温度を10−15℃に保ち、窒素気流中、攪拌下に塩化アクリロイル550mg(6.1mmol)を13分かけて滴下した。滴下終了後、室温に戻して、更に20分間攪拌を続けて反応を終了した。当該反応液に抽出溶媒として酢酸エチルと、生成したトリエチルアミン・塩酸塩を除去するための水を加え、攪拌後、静置したところ水層と有機層の二層に分離した。この有機層を取りだし、水洗した後、溶媒を溜去することで生成物粗対体として紫色油状物0.75gを得た。このものを高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、その組成は、2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン87.7%であった。
この紫色油状物をシリカゲルを用いたカラムクロマト精製に付した。溶離液として酢酸エチル−ヘキサンを用いた際に得られたフラクションから、目的物の2−ジエトキシホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンを97.9%含む淡黄色油状物0.60gを得た。
この化合物の融点、屈折率、IRスペクトル、H−NMRスペクトル、32P−NMRおよびMS−スペクトルの測定値を以下に示す。
(1)融点:室温液状
(2)屈折率:n=1.584
(3)IR(neat,cm−1):3480、2990、1755、1637、1600、、1459、1410、1370、1338、1298、1240、1135、1020、975、800、765
(4)H−NMR(270MHz、CDCl):δ=7.87(d、1H)、7.81(d、1H)、7.27(d、1H)、7.57−7.66(m、2H)、6.70−6.80(m、2H)、6.43−6.56(m、2H)、6.12−6.17(m、2H)、4.03−4.21(m、4H)、1.22−1.33(m、6H)
(5)32P−NMR(270MHz、CDCl):δ=11.8
(6)MS−スペクトル:404(M
「実施例2」2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン化合物の合成
反応器に、合成例2と同様にして合成し再結晶精製した2−ビス(i―プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン1.10g(3.4mmol)、トリエチルアミン1.36g(13.6mmol)及び溶媒のアセトニトリル10mlを仕込んで、攪拌下に溶解した。この溶液を氷水で冷やし、反応液の温度を10−15℃に保ち、窒素気流中、攪拌下に塩化アクリロイル860mg(9.5mmol)を20分かけて滴下した。滴下終了後、室温に戻して、更に20分間攪拌を続けて反応を終了した。当該反応液に抽出溶媒として酢酸エチルと、生成したトリエチルアミン・塩酸塩を除去するための水を加え、攪拌後静置したところ水層と有機層の二層に分離した。この有機層を取りだし、水洗した後、溶媒を溜去することで生成物粗対体として紫色油状物1.22gを得た。このものを高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、その組成は、2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン89.4%であった。
この紫色油状物をシリカゲルを用いたカラムクロマト精製に付した。溶離液として酢酸エチル−ヘキサンを用いた際に得られたフラクションから、目的物の2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンを95.9%含む淡黄色油状物0.80gを得た。
この化合物の融点、屈折率、IRスペクトル、H−NMRスペクトル、32P−NMRおよびMS−スペクトルの測定値を以下に示す。
(1)融点:室温液状
(2)屈折率:n=1.542
(3)IR(neat,cm−1): 3090、2990、2940、1750、1636、1604、1460、1410、1370、1240、1140、1070、995、895、800、765
(4)H−NMR(270MHz、CDCl):δ=7.86−7.90(m、1H)、7.80−7.83(m、1H)、7.72(d、1H),7.56−7.64(m、2H),6.70−6.77(m、2H)、6.43−6.54(m、2H),6.05−6.09(m、2H),4.68−4.78(m、2H)、1.35(d、6H)、1.22(d、6H)
(5)32P−NMR(270MHz、CDCl):δ=7.3
(6)MS−スペクトル:432(M
「実施例3」2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン化合物の合成
十分に窒素置換した反応器に、合成例2と同様にして合成し再結晶精製した2−ビス(i―プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン1.50g(4.6mmol)、トリエチルアミン1.85g(18.5mmol)及び溶媒のアセトニトリル10mlを仕込んで、攪拌下に溶解した。この溶液を氷水で冷やし、反応液の温度を10−15℃に保ち、窒素気流中、攪拌下に塩化メタクリロイル1.36g(13.0mmol)を20分かけて滴下した。滴下終了後、室温に戻して、更に20分間攪拌を続けて反応を終了した。当該反応液に抽出溶媒として酢酸エチルと、生成したトリエチルアミン・塩酸塩を除去するための水を加え、攪拌後静置したところ水層と有機層の二層に分離した。この有機層を取りだし、水洗した後、溶媒を溜去することで生成物粗対体として淡褐色油状物1.89gを得た。このものを高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、その組成は、2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン86.3%であった。
この淡褐色油状物をを酢酸エチル−ヘキサンの混合溶液で再結晶精製を行い、目的物の2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンを98.6%含む白色結晶、1.2gを得た。
この化合物の融点、屈折率、IRスペクトル、H−NMRスペクトル、32P−NMRおよびMS−スペクトルの測定値を以下に示す。
(1)融点:127−128℃
(2)屈折率:n=1.555
(3)IR(KBr,cm−1): 3080、2990、2940、1746、1644、1605、1460、1382、1320、1298、1248、1115、990、810、770
(4)H−NMR(270MHz、CDCl):δ=7.86−7.89(m、1H)、7.77−7.82(m、1H)、7.72(d、1H)、7.54−7.63(m、2H)、6.48−6.56(m、2H)、5.84−5.88(m、2H)、4.62−4.82(m、2H)、2.12−2.19(m、6H),1.37−1.40(m、6H)、1.14−1.23(m、6H)
(5)32P−NMR(270MHz、CDCl):δ=7.7
(6)MS−スペクトル:460(M
「実施例4」2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン化合物の合成
十分に窒素置換した反応器に、合成例3と同様にして合成し再結晶精製した2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレン1.0g(2.5mmol)、トリエチルアミン1.27g(12.7mmol)及び溶媒のアセトニトリル10mlを仕込んで、攪拌下に溶解した。この溶液を氷水で冷やし、反応液の温度を10−15℃に保ち、窒素気流中、攪拌下に塩化メタクリロイル0.8g(7.6mmol)を20分かけて滴下した。滴下終了後、室温に戻して、更に20分間攪拌を続けて反応を終了した。当該反応液に抽出溶媒として酢酸エチルと、生成したトリエチルアミン・塩酸塩を除去するための水を加え、攪拌後静置したところ水層と有機層の二層に分離した。この有機層を取りだし、水洗した後、溶媒を溜去することで生成物粗対体として淡褐色油状物1.15gを得た。このものを高速液体クロマトグラフィー(LC)で分析したところ、その組成は、2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン76.1%であった。
この淡褐色油状物をシリカゲルを用いたカラムクロマト精製に付した。溶離液として酢酸エチル−ヘキサンを用いた際に得られたフラクションから、目的物の2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンを93.3%含む淡黄色油状物0.75gを得た。このものを酢酸エチル−ヘキサンから再結晶することにより、淡黄色結晶0.58gを得た。このものの2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン純度は96.1%であった。
この化合物の融点、屈折率、IRスペクトル、H−NMRスペクトル、32P−NMRおよびMS−スペクトルの測定値を以下に示す。
(1)融点:105−106℃
(2)屈折率:n=1.614
(3)IR(KBr,cm−1):3090、2990、2970、2930、1740、1640、1600、1590、1495、1460、1396、1318、1265、1218、1185、1165、1115、1010、948、910、805、764
(4)H−NMR(270MHz、CDCl):δ=7.83−7.94(m、3H)、7.62−7.70(m、2H)、7.08−7.53(m、10H)、6.51(d、2H)、6.83−6.90(m、2H)、2.10−2.17(m、6H)
(5)32P−NMR(270MHz、CDCl):δ=7.7
(6)MS−スペクトル:528(M
「実施例5」2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンとトリメチロールプロパントリアクリレートの共光重合
実施例2と同様にして合成した2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレン10部、トリメチロールプロパントリアクリレート90部に対し2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン(BASF社製イルガキュア369)0.5部を混合し、光ラジカル重合性組成物を調製した。得られた組成物をポリエステルフィルム(東レ製ルミラー、ルミラーは東レ株式会社の登録商標)の上に膜厚が12μmになるように塗布し、表面に高圧水銀ランプ(波長366nmにおける照射強度が1mW/cm)を照射したところ、10秒でベタつきが無くなり硬化した。
「実施例6」2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンとトリメチロールプロパントリアクリレートの共光重合
2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンを、実施例3と同様にして合成した2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンとした以外は、実施例5と同様に行ったところ、3分でベタつきが無くなり硬化した。
「実施例7」2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン化合物とトリメチロールプロパントリアクリレートの共光重合
2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンを、実施例4と同様にして合成した2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンとした以外は、実施例5と同様に行ったところ、1.3分でベタつきが無くなり硬化した。
「比較例1」トリメチロールプロパントリアクリレートの光重合
2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンを0部、トリメチロールプロパントリアクリレートを100部とした以外は、実施例5と同様に行ったところ、10秒でベタつきが無くなり硬化した。
「比較例2」1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンとトリメチロールプロパントリアクリレートの光共重合の試み
2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンを1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンとした以外は、実施例5と同様に行ったところ、10分でベタつきが無くならず硬化はしなかった。
「実施例8」2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン化合物とトリメチロールプロパントリアクリレートの共光重合と重合物の屈折率
実施例4と同様にして合成した2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン25部、トリメチロールプロパントリアクリレート75部に対し2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン((BASF社製イルガキュア369)0.5部を混合し、光ラジカル重合性組成物を調製した。得られた組成物をポリエステルフィルム(東レ製ルミラー)の上に膜厚が1mmになるように塗布し、表面に高圧水銀ランプ(波長366nmにおける照射強度が1mW/cm)を5分照射したところ、ベタつきが無くなり硬化した。その硬化物の屈折率は1.526であった。
「比較例3」トリメチロールプロパントリアクリレートの共光重合と重合物の屈折率
2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンを0部、トリメチロールプロパントリアクリレートを100部とした以外は、実施例8と同様に行ったところ、その硬化物の屈折率は1.513であった。
「実施例9」2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンとメタクリル酸メチルの共熱重合物の耐光性試験
実施例3と同様にして合成した2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン10部、メタクリル酸メチル90部に対しアゾビスイソブチルニトリル0.1部を混合し、窒素雰囲気下、80℃でシロップ状になるまで加熱し共重合させた。次に2枚のガラス板と塩ビ製ガスケットにより構成された厚さ2mm,20mm角のセルに当該のシロップ状重合物を注入し、70℃で3時間、ついで105℃で1時間重合させた。重合完了後セルを解体し無色透明のプレート状重合物を得た。そして、当該プレート状重合物を8月の晴天時の日光にさらした。一日6時間で連続4日間続け、合計24時間さらしたが、目視で着色は見られなかった。
「比較例4」1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンとメタクリル酸メチルの共熱重合物の耐光性試験
2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンを1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンとした以外は、実施例9と同様に行ったところ、日光をさらして3時間で黄色の着色が見られた。
「実施例10」2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンとメタクリル酸メチルの共熱重合物の熱重量減少温度測定
実施例9で得られたプレート状重合物10mgを、島津示差熱・熱重量同時測定装置(DTA−50)にて空気雰囲気(空気流量:100ml/分)、昇温速度10℃/分での20%重量減少温度を測定したところ、354℃であった。
「比較例5」1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンとメタクリル酸メチルの共熱重合物の熱重量減少温度測定
比較例4で得られたプレート状重合物を実施例10と同様に20%重量減少温度を測定したところ、315℃であった。
「比較例6」メタクリル酸メチルの熱重合物の熱重量減少温度測定
メタクリル酸メチルを100部,2−ビス(i−プロポキシ)ホスホリル−1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレン0部とした以外は、実施例9と同様にプレート状重合物得た後、実施例10と同様に20%重量減少温度を測定したところ、276℃であった。
実施例5乃至7及び比較例1,2を対比することにより、トリメチロールプロパントリアクリレートとの共重合反応において、本発明の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物は、ヒドロキシフェニルケトン系のような一般的な光重合開始剤を用い、一般的で最も広く用いられている高圧水銀ランプにより容易に共重合可能であることが分かる。また、実施例8及び比較例3を対比することにより、光重合により生成した重合物はトリメチロールプロパントリアクリレート単独の重合物より高い屈折率を示すことから、共重合における屈折率向上作用があることがわかる。更に、実施例9及び比較例4を対比することにより、光着色が少なく耐光性も高いこともわかる。更に又、重合物の重量が20%減少するときの温度を難燃性の尺度として比較した実施例10及び比較例5,6を対比することにより、メタクリル酸メチルの重合物や1,4−ジメタクリロイルオキシナフタレンとメタクリル酸メチルの共重合物に比べ、本発明の2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物を含有する重合物は、20%重量減少温度が極めて高く、本発明の2−ジフェノキシホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレンの難燃化効果が高いことがわかる。

Claims (4)

  1. 一般式(1)で示される2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物。

    (一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Aはアルキル基又はアリール基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子又はアルコキシ基のいずれかを示す。)
  2. 請求項1に示す2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物、及びラジカル重合開始剤を含有するラジカル重合性組成物。
  3. 請求項2に示すラジカル重合性組成物を重合してなる重合物。
  4. 一般式(2)に示す2−ジ置換ホスホリル−1,4−ジヒドロキシナフタレンを(メタ)アクリロイル化することよりなる請求項1に記載の2−ジ置換ホスホリル−1,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシナフタレン化合物の製造方法。

    (一般式(2)中、Aはアルキル基又はアリール基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子又はアルコキシ基のいずれかを示す。)
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