JP7454176B2 - フルオレン化合物の製造方法並びにフルオレン化合物の用途 - Google Patents

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本発明は、ビニル基を有するフルオレン化合物の製造方法、並びに重合体などの原料(単量体)としての前記フルオレン化合物の用途に関する。
軽量で成形加工が容易な高屈折率樹脂が光学レンズなどの用途に利用されている。しかし、屈折率が1.6を越える光学レンズ用ポリマーは、逐次重合により合成されているため、汎用樹脂に比べて生産コストが格段に高い。一方、連鎖重合により合成される非晶質ポリシクロアルカン類は屈折率が1.3~1.5程度であり、光学レンズ用途には向いていない。高分子の屈折率を高めるには、チオール類や芳香環の導入が有用である。しかし、芳香環を導入すると、分子の配向により複屈折が大きくなる。そのため、芳香環を導入しつつ、分子配向を抑制する分子設計が求められる。
9,9-ビスアリールフルオレンは、4つの異なる方向に芳香環が配置されたカルド構造と称される配座を有し、屈折率を向上させつつ、分子配向しにくいポリマーを生成する性質がある。そのため、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が光学用途のポリマーの原料として注目されている。
例えば、J. Polymer Sci, Part A: Polymer Chem, 2010, 48, 4192-4199 (非特許文献1)には、9,9’-スピロビフルオレン-2,2’-ビス(N,N-ジメチルカルバモチオエート)とジフルオロアレーン(1,4-ビス(4-フルオロベンゾイル)ベンゼンなど)とを反応させ、9,9-スピロビフルオレン部位を含むポリ(アリーレンチオエーテル)を得たこと、この重合体が、屈折率1.69~1.73、ガラス転移温度210~270℃を有し、複屈折が認められず、透明で有機溶媒に可溶であることが記載されている。
Chem. Lett. 2019, 48(8), 894-897(非特許文献2)及び「高分子学会予稿集」第67回(2018年)高分子学会年次大会 67巻1号、講演番号2Pb024(非特許文献3)には、2,3-ビス(ヨードメチル)-1,3-ブタジエンとビスフェノールAとを反応させ、主鎖に1,3-ブタジエン骨格を有するポリマーを調製することが記載されている。「繊維学会予稿集」2018 73巻1号(年次大会)、講演番号2P205(非特許文献4)にも同様の報告がなされている。
Tetrahed. Lett. 44, 2033 (1988)(非特許文献5)には、パラジウム触媒又はロジウム触媒の存在下、2-ブロモヘプタ-1,6-ジエンを環化させて3,4-ジメチレンシクロペンタンを調製する環化反応の一例として、9-(2-ブロモプロペニル)-9-(2-プロペニル)フルオレンを環化させ、3,4-ジメチレンシクロペンタン-1-スピロ-9’-フルオレンを調製したことが記載されている。この文献には、原料となる9-(2-ブロモプロペニル)-9-(2-プロペニル)フルオレンを、9-(2-プロペニル)フルオレンと、フェニルリチウムと反応させた後、2,3-ジブロモプロペンと反応させて調製したことも記載されている。さらに、この文献5には、3,4-ジメチレンシクロペンタンがディールス・アルダー反応に利用できること、2-ブロモオクタ-1,7-ジエンの環化反応にも利用できることも記載されている。
Chem. Eur. J. 3, 1324 (1997)(非特許文献6)には、9-(2-ブロモプロペニル)-9-(2-プロピニル)フルオレンと、2等量のt-ブチルリチウムとを低温(-78℃)で反応させ、生成したジリチオ化合物と1当量のビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメチルクロライドとを低温(-78℃)から室温に温めて反応させて分子内環化させ、3,4-ジメチレンシクロペンタン-1-スピロ-9’-フルオレンを調製したことが記載されている。
J. Polymer Sci, Part A: Polymer Chem, 2010, 48, 4192-4199 Chem. Lett. 2019, 48(8), 894-897 「高分子学会予稿集」第67回(2018年)高分子学会年次大会 67巻1号、講演番号2Pb024 「繊維学会予稿集」2018 73巻1号(年次大会)、講演番号2P205 Tetrahed. Lett. 44, 2033 (1988) Chem. Eur. J. 3, 1324 (1997)
しかし、非特許文献1に記載の方法では、特殊な原料を用いる必要があり、スピロビフルオレン部位を含むポリ(アリーレンチオエーテル)を工業的に効率的に製造するのが困難である。非特許文献2~4の方法では、主鎖にジエン単位を有するポリマーを製造できるものの、屈折率及び耐熱性を高めることができない。
非特許文献5の方法では、所定の触媒を使用するため、温和にモノマーを合成できる。しかし、高価なパラジウム触媒又はロジウム触媒を必要とする。また、ディールス・アルダー反応により環状化合物を生成できるものの、用途が制限され、単量体として用いて高分子を調製することは記載されていない。
非特許文献6では、n-ブチルリチウムを使用して低温で反応させる必要があるとともに、特殊なジルコニウム化合物を使用するため、ビニル基を備えたスピロ環を有するフルオレン化合物を工業的に有利に製造できない。さらに、単量体として用いて高分子を調製することも記載されていない。
従って、本発明の目的は、スピロ環を有するフルオレン化合物を温和な条件で有利に製造できる方法、並びに生成したフルオレン化合物の用途を提供することにある。
本発明の他の目的は、ビニル基を備えたスピロ環を有するフルオレン化合物の製造方法、このフルオレン化合物を重合成分とするスピロ環を有する重合体、並びに前記重合体の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、光学特性、耐熱性及び溶解性に優れた重合体を製造するのに適したフルオレン化合物の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、フルオレンと、ジハロブタジエンとを反応させると、簡便かつ温和な条件で、フルオレンの9,9-位に、ビニル基を有するスピロ環が導入された化合物が生成すること、このフルオレン化合物のビニル基を利用して重合すると、光学特性に優れ、スピロ環を有する重合体が生成することを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明では、下記式(1)で表されるフルオレン化合物を製造する。
Figure 0007454176000001
(式中、Rは置換基を示し、nは0又は1~2の整数を示し、R2a、R2b及びR2cは同一又は異なるアルキレン基を示し、これらのアルキレン基は置換基を有していてもよく、mは0又は1を示す)
この方法において、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物との反応により、前記式(1)で表されるフルオレン化合物を製造できる。
Figure 0007454176000002
(式中、X及びXは同一又は異なるハロゲン原子を示し、R、n、R2a、R2b、R2c、mは前記式(1)に同じ)
前記式(1)(3)において、R2a及びR2bはC1-4アルキレン基であってもよく、R2cはC1-2アルキレン基であってもよく、mは0又は1であってもよい。
前記式(1)で表される化合物は、スピロ環とビニル基とを有するため、重合体を製造するのに有用である。本発明は、少なくとも前記フルオレン化合物を重合した重合体(例えば、スピロ環を有する重合体)も包含する。さらに、本発明は、少なくとも前記フルオレン化合物を重合させ、重合体を製造する方法も含む。この方法では、ラジカル重合などが利用できる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、「Cアルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
本発明では、フルオレン類と、ジハロジエン類との反応により、簡便かつ温和な条件で、フルオレンの9,9-位に、ビニル基を有するスピロ環が導入されたフルオレン化合物を有効に製造できる。また、このフルオレン化合物のビニル基のラジカル重合などを利用してスピロ環を有する重合体を製造できる。この重合体は、スピロ環を有する新規な重合体であり、屈折率及び耐熱性が高く、複屈折が小さいという特色を有するとともに、汎用の有機溶媒に対して可溶である。
図1は、実施例1で得られたフルオレン化合物のH-NMRスペクトルである。 図2は、実施例2で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。
[式(1)で表されるフルオレン化合物の製造方法]
前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、スピロ環と、このスピロ環に置換したビニル基、特に2つのビニル基を有している。このような式(1)で表されるフルオレン化合物は、下記反応式に示すように、下記式(2)で表される化合物(フルオレン化合物)と、下記式(3)で表される化合物(ジハロジエン化合物)との反応により調製できる。
Figure 0007454176000003
(式中、Rは置換基を示し、nは0又は1~2の整数を示し、R2a、R2b及びR2cは同一又は異なるアルキレン基を示し、これらのアルキレン基は置換基を有していてもよく、mは0又は1を示しX及びXは同一又は異なるハロゲン原子を示す)
式(2)において、Rで表される置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、及びシアノ基から選択された置換基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。好ましいハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシなどの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基、好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基、特に、メチル基又はエチル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5-10シクロアルキル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのC6-12アリール基などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリールC1-4アルキル基などが挙げられる。Rで表されるアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ-カルボニル基などが例示できる。なお、置換基Rがアリール基(特にフェニル基)であるとき、このアリール基はフルオレン環の少なくとも一方のベンゼン環に共縮合してベンゾフルオレン環(1,2-ベンゾフルオレン環、2,3-ベンゾフルオレン環など)又はジベンゾフルオレン環(13H-ジベンゾ[a,i]フルオレンなど)を形成してもよい。置換基Rの種類は、置換数nに応じて同一又は異なっていてもよい。好ましい置換基Rは、塩素原子などのハロゲン原子、メチル基などのC1-2アルキル基、カルボキシル基、C1-2アルコキシ-カルボニル基、ニトロ基、シアノ基である。
なお、置換基Rは、フルオレン環の適所に置換していてもよく、通常、フルオレン環の2,3,6及び/又は7位、特に、2,7位、又は3,6位に置換している場合が多い。
置換基Rの置換数nは、0又は1~2の整数を示し、好ましくは0、1若しくは2である。
式(1)で表される化合物(フルオレン類)としては、フルオレン、2,7-ジクロロフルオレン、3,6-ジクロロフルオレン、2,7-ジメチルフルオレン、3,6-ジメチルフルオレン、2,7-ジカルボキシフルオレン、2,7-ジシアノフルオレンなどが例示できる。好ましい化合物(フルオレン類)は、フルオレンである。
式(3)において、R2a、R2b及びR2cで表されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキレン基が挙げられる。これらのアルキレン基は同一又は異なっていてもよい。R2a及びR2bで表される好ましいアルキレン基は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基などのC1-4アルキレン基、特にC1-2アルキレン基である。R2cで表される好ましいアルキレン基は、C1-2アルキレン基(メチレン基、エチレン基)、特にメチレン基である。
これらのアルキレン基は置換基を有していてもよく、置換基としては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、s-ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基が例示できる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、s-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基が例示できる。好ましい化合物において、R2a、R2b及びR2cで表されるアルキレン基は置換基を有していなくてもよい。
mは0又は1を示し、mが0、すなわちR2cは直接結合を示してもよい。
及びXで表されるハロゲン原子としては、前記と同様のハロゲン原子、特に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、中でも臭素原子及びヨウ素原子が例示できる。なお、X及びXで表されるハロゲン原子は、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である。
前記式(3)で表される代表的な化合物としては、R2a及びR2bがメチレン基であり、mが0である化合物、例えば、2,3-ビス(クロロメチル)-1,3-ブタジエン、2,3-ビス(ブロモメチル)-1,3-ブタジエン、2,3-ビス(ヨードメチル)-1,3-ブタジエンなどの2,3-ビス(ハロメチル)-1,3-ブタジエン;R2aがメチレン基であり、R2bがエチレン基であり、mが0である化合物、例えば、2-クロロメチル-3-(2-クロロエチル)-1,3-ペンタジエン、2-ブロモメチル-3-(2-ブロモエチル)-1,3-ペンタジエン、2-ヨードメチル-3-(2-ヨードエチル)-1,3-ペンタジエンなどの2-ハロメチル-3-(ハロエチル)-1,3-ペンタジエン;R2a及びR2bがエチレン基であり、mが0である化合物、例えば、2,3-ビス(クロロエチル)-1,3-ヘキサジエン、2,3-ビス(ブロモエチル)-1,3-ヘキサジエン、2,3-ビス(ヨードエチル)-1,3-ヘキサジエンなどの2,3-ビス(ハロエチル)-1,3-ヘキサジエン;R2a、R2b及びR2cがメチレン基であり、mが1である化合物、例えば、1,4-ビス(クロロメチル)-1,4-ペンタジエン、2,3-ビス(ブロモメチル)-1,4-ペンタジエン、2,3-ビス(ヨードメチル)-1,4-ペンタジエンなどの2,3-ビス(ハロメチル)-1,4-ペンタジエン;R2a、R2b及びR2cがエチレン基であり、mが0である化合物、例えば、2,5-ビス(クロロメチル)-1,5-ヘキサジエン、2,5-ビス(ブロモメチル)-1,5-ヘキサジエン、2,5-ビス(ヨードメチル)-1,5-ヘキサジエンなどの2,5-ビス(ハロメチル)-1,5-ヘキサジエンが例示できる。これらのジエン成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
前記式(3)で表される化合物のうち、共役ジエン構造を有する化合物が好ましい。このような共役ジエン構造を有する化合物のうち、2,3-ビス(ハロメチル)-1,3-ブタジエン、好ましくは2,3-ビス(ブロモメチル)-1,3-ブタジエン、2,3-ビス(ヨードメチル)-1,3-ブタジエン、特に2,3-ビス(ヨードメチル)-1,3-ブタジエンが好ましい。
前記式(3)で表される化合物は、慣用の方法により合成でき、例えば、前記式(3)において、R2a及びR2bがメチレン基であり、mが0である共役ジエン化合物(2,3-ビス(ハロメチル)-1,3-ブタジエン)は、文献「Yehiel Gaoni, and Shoshana Sadeh , J. Org. Chem., 1980, 45 (5), 870-881」に記載の方法、及び実施例に記載の方法により調製できる。また、他のジエン化合物も、上記と同様の方法で調製できる。
前記反応により生成し、式(1)で表される好ましい化合物は、Rがハロゲン原子、アルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基であり;nが0~2の整数、特に0であり;R2a及びR2bが、C1-2アルキレン基、特にメチレン基であり;mが0である。特に、mが0である化合物は共役ジエン構造を有するため、ラジカル重合などの重合反応性、修飾化合物との反応性が高い。
前記式(1)で表される代表的なフルオレン化合物としては、フルオレン-9-スピロ-1’-(3,4-ジメチレンシクロペンタン)(若しくは3,4-ジメチレンシクロペンタン-1-スピロ-9’-フルオレン)、フルオレン-9-スピロ-1’-(3,4-ジメチレンシクロヘキサン)、フルオレン-9-スピロ-1’-(3,5-ジメチレンシクロヘキサン)などのフルオレン-9-スピロ-1’-(ジメチレンC4-10シクロアルカン)などが例示できる。
反応において、式(3)で表される化合物(総量)の使用量は、式(2)で表される化合物1モルに対して、0.5~5モル、好ましくは0.7~2.5モル、さらに好ましくは0.8~1.5モル、特に0.9~1.1モルである。なお、反応において、式(3)で表される化合物(ジエン化合物)は、式(2)で表される化合物(フルオレン化合物)を含む反応系に一括して仕込んでもよく、反応系に分割して添加(又は逐次添加)してもよい。
式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物との反応は、触媒の非存在下で行ってもよいが、触媒の存在下で行うのが有利である。触媒としては、塩基触媒が使用できる。塩基には、無機塩基及び有機塩基が含まれる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムt-ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなどが例示できる。有機塩基としては、トリエチルアミンなどの第3級アミン類、ピリジン、モルホリンなどの複素環式第3級アミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)などが挙げられる。触媒の使用量は、式(3)で表される化合物の総量1モルに対して、0.1~10モル、好ましくは0.5~5モル、さらに好ましくは1~2.5モル程度である。
反応は、溶媒の非存在下で行ってもよいが、好ましくは有機溶媒の存在下で行われる。有機溶媒は、反応に不活性で前記化合物を可溶であればよく、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、ニトリル類、スルホキシド類、アミド類などが挙げられる。炭化水素類としては、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、トリクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエタンなどが挙げられる。エステル類としては、酢酸エステルなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類;シクロペンチルメチルエーテルなどの脂環族エーテル類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類などが挙げられる。ニトリル類としては、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが例示できる。スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。アミド類としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
反応は、反応系の環流温度以下の温度、例えば、温度0℃~100℃、好ましくは10~75℃、さらに好ましくは20~50℃で行うことができ、温度20~25℃程度の室温で行ってもよい。不純物の生成を抑制するには、低温、例えば、20~50℃、好ましくは25~45℃、特に室温で反応させるのが有利である。反応時間は、特に制限されず、1~48時間、好ましくは2~24時間である。
反応は、空気中又は不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。また、反応は、減圧下で行ってもよいが、通常、加圧下又は常圧下で行う場合が多い。反応終了後、反応混合物(又は反応生成物)は、洗浄、濃縮、ろ過、再沈殿、晶析又は再結晶、抽出(分配)、カラムクロマトグラフィーなどの慣用の分離精製手段や、これらを組み合わせた方法により、単離・精製してもよい。
[式(1)で表されるフルオレン化合物の用途]
前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、2つのビニル基(又はジエン構造)を利用して種々の用途に使用できる。例えば、ハロゲン又はハロゲン化水素との付加反応によるハロゲン化物の調製、アミン、チオールなどとの付加反応(マイケル付加反応を含む)、ディールス・アルダー反応による環構造の形成、エンチオール反応などによる修飾化合物の調製、酸化反応によるエポキシ化合物の調製などに利用できる。また、前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、ラジカル重合性を有しているため、重合体を生成するための単量体、熱硬化性樹脂又は硬化性組成物の単量体として利用できるとともに、架橋剤として利用することもできる。
熱硬化性樹脂又は硬化性組成物は、熱重合開始剤を含んでいてもよい。熱重合開始剤としては、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、過酸エステル類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類などの有機過酸化物;アゾニトリル化合物などの慣用の重合開始剤が例示できる。
熱硬化性樹脂又は硬化性組成物は、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、重合禁止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、滑剤、安定剤(抗酸化剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、可塑剤、界面活性剤、溶解促進剤、着色剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、レベリング剤、分散剤、分散助剤、流動調整剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
前記式(1)で表されるフルオレン化合物を架橋剤として利用する場合、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、特にラジカル重合性成分の架橋剤として利用でき、ラジカル重合性成分としては、ラジカル重合性単量体又はラジカル重合性樹脂若しくはオリゴマーが例示できる。架橋剤としての前記フルオレン化合物(1)の使用量は、ラジカル重合性成分100質量部に対して、例えば、0.1~50質量部、好ましくは0.5~25質量部、さらに好ましくは1~10質量部である。
さらに、前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、ビニル基の反応性を利用して重合体(単独又は共重合性単量体との共重合体)の単量体として利用できる。
[重合体及びその製造方法]
前記式(1)で表される化合物は、ジエン構造を有しているため、ビニル重合を利用して重合体を製造でき、工業的に生産性に優れている。また、重合体の繰り返し単位を炭化水素のみで構成することもでき、耐薬品性などの化学的安定性にも優れている。さらに、共重合性単量体と共重合することも可能であり、重合体の特性(屈折率、複屈折などの光学特性、耐熱性などの熱的特性、有機溶媒に対する溶解性など)も調整可能である。そのため、前記式(1)で表される化合物は、単独重合体を形成してもよく、共重合性単量体との共重合体を形成してもよい。すなわち、重合体は、単量体として少なくとも前記式(1)で表される化合物を含む重合体であればよい。このような重合体は、前記式(1)で表される化合物に対応して、下記式(4)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
Figure 0007454176000004
(式中、実線と一点鎖線とで表される結合部位は一重結合又は二重結合を示し、R、n、R2a、R2b、R2c、mは前記に同じ)
共重合性単量体としては、エチレン、プロピレンなどのα-オレフィン;ブタジエン、イソプレンなどのジエン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基又はエポキシ基含有単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチルロール(メタ)アクリルアミドなどの窒素含有単量体などが例示できる。これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの共重合性単量体の使用量は、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、1~1000質量部、好ましくは5~500質量部、さらに好ましくは10~100質量部、特に25~75質量部である。
少なくとも前記式(1)で表される化合物を含む重合性単量体(又は重合性組成物)は、熱重合、ラジカル重合、紫外線、X線、電子線による重合などの活性エネルギー線による重合などの種々の重合方法で重合してもよい。また、前記重合性単量体は、溶媒の非存在下又は存在下で重合してもよく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの慣用の方法で重合してもよい。重合方法の例として、溶液重合法では、前記式(1)で表される化合物と、必要により共重合性単量体とを含む重合性単量体(又は単量体混合物)を、有機溶媒中、ラジカル重合開始剤(熱重合開始剤)の存在下で重合できる。有機溶媒としては、種々の溶媒、例えば、前記式(2)で表される化合物と、前記式(3)で表される化合物との反応で例示の有機溶媒が使用できる。これらの有機溶媒は単独で又は混合溶媒として使用できる。好ましい有機溶媒は、トルエンなどの芳香族炭化水素類である。
ラジカル重合開始剤としては、前記例示の熱重合開始剤、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジt-ブチルパーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。これらの重合開始剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して、0.1~10質量部、好ましくは0.5~5質量部である。
重合反応は、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。重合温度は、重合開始剤及び溶媒の種類に応じて、10~150℃、好ましくは30~100℃、さらに好ましくは50~80℃である。反応時間は特に制限されず、例えば、1~24時間である。
反応終了後、反応混合物(又は反応生成物)は、洗浄、濃縮、ろ過、沈殿又は析出、乾燥などの慣用の方法で精製してもよい。
重合体の分子量は特に制限されず、重合体の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定したとき、ポリスチレン換算で、例えば、500~100000、好ましくは700~50000、さらに好ましくは1000~25000であり、重合体は、オリゴマー領域、例えば、数平均分子量700~7000程度の分子量を有していてもよい。また、分子量分散度D(Mw/Mn)は、1~5程度の範囲から選択でき、好ましくは1~4、さらに好ましくは1~3、特に1~2である。
このような重合体は、スピロ環を有するフルオレン骨格を備えているため、屈折率が高く、複屈折も小さく、光学材料として適している。また、前記重合体は、高い耐熱性を有する。さらに、前記重合体は、前記例示の広範囲な有機溶媒、例えば、炭化水素類、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、エステル類、ケトン類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ニトリル類、スルフィド類、アミド類などにも可溶である。そのため、重合体は、コーティングなどの広い用途に利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における各評価方法及び使用した成分は以下の通りである。
[評価方法]
(融点)
融点は、MPA100型融点測定装置 Optimelt(Stanford Research Systems製)を用いて、昇温速度5℃/分で室温から160℃に昇温し測定した。
(NMRスペクトル)
核磁気共鳴(NMR)装置(ブルカー(株)製「AVANCE 400」および「AVANCE NEO」)を用いて26℃で測定した。測定溶媒は、重クロロホルムを用い、内部標準は、テトラメチルシランを用いた。また、試料の分析には、DOSY法(Three Dimensional-Diffusion-Ordered NMR Spectroscopy)を利用した。
(IRスペクトル)
赤外分光光度計(アジレント・テクノロジー(株)製「Cary 630 FTIR 分光光度計」)を用い、1回反射型全反射測定法にて測定した。
(分子量)
分子量(数平均分子量Mn)及び分子量分散度D(Mw/Mn)は、EXTREMAクロマトグラフ(日本分光(株)製)に40℃に加熱したサイズ排除カラム「PL-gel,Mixed C(300mm×7.5mm)」(アジレント・テクノロジー(株)製)を2本直列に装填し、溶出液としてテトラヒドロフラン(高速液体クロマトグラフ用,安定剤なし,富士フィルム和光純薬工業(株)製)を0.8mL/分で流して、紫外吸収分光計「UV-4070」(254nmで検出、日本分光(株)製)および示差屈折率計(RI-4030,日本分光)で検出したクロマトグラムを、標準ポリスチレン(東ソー(株)製,TSKゲルオリゴマーキット,Mn:1.03×10,3.89×10,1.82×10,3.68×10,1.63×10,5.32×10,3.03×10,8.73×10)による三次曲線で較正して評価した。
[使用した成分]
フルオレン:東京化成工業(株)製
2,3-ビス(ヨードメチル)-1,3-ブタジエン:下記合成例で調製した。
カリウムt-ブトキシド:富士フイルム和光純薬工業(株)製
合成例(2,3-ビス(ヨードメチル)-1,3-ブタジエン)の合成)
2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン(12.9g,0.157モル)の四塩化炭素(120mL)溶液に、臭素(25.2g,0.158モル)の四塩化炭素(60mL)溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、前記混合液に、N-ブロモコハク酸イミド(55.9g,0.314モル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(0.832g,5.07モル)、及び四塩化炭素(6.0mL)を加えて2時間還流した。反応終了後、反応混合液を吸引濾過し、濾液を0℃に冷却した。生じた黄色結晶を濾過により回収し、精製せずに次の反応に用いた(29.5g,粗収率47.3%)。得られた化合物は、褐色瓶にいれ、冷凍庫にて保管した。得られた化合物(1,4-ジブロモ-2,3-ブロモメチル-2-ブテン)の融点及びNMRデータを示す。
融点151.3~156.1℃;
H-NMR(400MHz,30℃,CDCl)δ(ppm)6.51(s,8H,CHBr);
13C-NMR(100MHz,30℃,CDCl)δ(ppm)137.5,28.2。
前記反応で得られた1,4-ジブロモ-2,3-ブロモメチル-2-ブテン(15.1g)にアセトン(55mL)を加えて撹拌し、さらにチオ硫酸ナトリウム(17.8g,113ミリモル)と、ヨウ化カリウム(18.7g,113ミリモル)とを加えて45℃で2時間激しく撹拌した。この懸濁液を氷水(85.2g)に投入し、水層をジエチルエーテル(120mL)で3回抽出した後、混合した有機層を飽和食塩水(120mL)で3回洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、石綿状淡黄色の化合物を得た(11.2g,89.7%)。得られた化合物をジエチルエーテルに溶解し、冷凍庫にて保管した(濃度0.122M)。得られた化合物は、H-NMRスペクトル及びIRスペクトルにより、目的の2,3-ビス(ヨードメチル)-1,3-ブタジエン(モノマーA)であることを確認した。得られた化合物の融点、NMRデータ及びIRデータを以下に示す。また、得られた化合物のH-NMRスペクトルを図1に示す。
融点86.6-87.5℃;
H-NMR(400MHz,30℃,DMSO-d)δ(ppm)4.20(s,4H,CHI),5.40(s,2H,=CH),5.63(s,2H,=CH);
IR(ATR)νmax/cm-1 3093(C-H),1584(C=C),904(C-I)。
実施例1
(式(1)のフルオレン化合物(R2a及びR2b=メチレン基;m=0;n=0である化合物)の合成)
下記反応式に従って反応させ、目的化合物を得た。
Figure 0007454176000005
すなわち、アルゴン雰囲気下、フルオレン(2-1)1.56g(9.39ミリモル)とカリウムt-ブトキシド2.32g(20.7ミリモル)とをアセトニトリル70mLに溶解し、この溶液に、2,3-ビス(ヨードメチル)-1,3-ブタジエン(モノマーA)(3-1)3.14g(9.39ミリモル)のアセトニトリル溶液30mLを滴下し、室温(約20℃)で24時間撹拌して反応させた。反応混合液を濃縮し、クロロホルム80mLに溶解し、0.2Mの塩酸水溶液(80mL)で3回洗浄した。このクロロホルム溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、真空乾燥し、粗生成物を得た。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:100%)で単離精製し、黄色固体の目的化合物(1-1)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃):δ(ppm)=7.71(d,J=7.5Hz,2H),7.44(d,J=7.5Hz,2H),7.34(t,J=7.5Hz,2H),7.27(t,J=7.5Hz,2H),5.63(s,2H),5.06(s,2H),2.89(s,2H)
NMRスペクトルを図1に示す。
NMRスペクトルにおいて、5.06ppm、5.63ppmにビニル基に帰属するシグナル、2.89ppmにアリル基に帰属するシグナル、及び7.71-7.27ppmに芳香族領域に帰属するシグナルが認められ、各シグナルの積分強度比から、生成物が式(1-1)で表される化合物であることが確認された。
実施例2
実施例1で得られた粗生成物0.15g(0.819ミリモル)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.020gをトルエン0.8mLに溶かし、試験管に秤量し、凍結脱気した。アルゴン雰囲気下、60℃で24時間反応させた。反応終了後、反応混合物をメタノール(20mL)に滴下し、固形物を遠心分離した。液相(溶液)をデカンテーションで除去し、沈殿をクロロホルム(1mL)に溶解し、ヘキサン(20mL)に滴下した。沈殿を遠心分離により回収し、真空乾燥して白色粉体45mgを得た。サイズ排除クロマトグラフィで測定したところ、数平均分子量Mn1200、及び数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwとに基づく分子量分散度又は分布D(Mw/Mn)が1.46であった。
NMRスペクトルを図2に示す。
H-NMRスペクトルから、モノマー由来のビニル基が消失し、新たに4.6ppm付近にシグナルが観察されていることから、1,-付加重合した骨格を有する重合体であることが判明した。
そのため、得られた重合体は、下記式(4a)で表される繰り返し単位を有していると推測される。
Figure 0007454176000006
本発明の方法で得られる前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、2つのビニル基(ジエン構造)を有しているため、ビニル基を修飾することにより、ハロゲン化物、アミン、チオールなどとの付加反応生成物、エポキシ化合物の調製などに利用できる。また、前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、重合体を生成するための単量体、熱硬化性樹脂又は硬化性組成物の単量体として利用できるとともに、架橋剤として利用することもできる。
また、本発明の重合体は、ビニル重合により重合体を製造できるため、工業的な生産性に優れている。繰り返し単位を炭化水素のみで構成できるため、重合体は化学的安定性に優れている。また、重合体は、フルオレン環とスピロ環とを有し、屈折率及び透明性が高いとともに、複屈折が小さく、光学特性に優れている。さらに、フルオレン環とスピロ環とを有するため、耐熱性も高い。しかも、汎用の広範な有機溶媒に対する溶解性にも優れている。また、共重合性単量体との共重合により、光学特性などの重合体の特性を調整することも可能である。さらには、各種成形法を適用でき、実用性が高く、種々の形態の成形体、例えば、日用品、容器、電気・電子機器部品、自動車などの車両部品、建築資材などを効率よく得ることができる。そのため、本発明の重合体は、光学レンズ、光学フィルム又は光学シート、ピックアップレンズ、ホログラム、液晶用フィルム、有機エレクトロルミネッセンス(EL)用フィルムなどに好適に利用できる。また、本発明の重合体は、塗料、インキ、接着剤、粘着剤;帯電トレイ、導電シート;保護膜(電子機器、液晶部材などの保護膜など);光学薄膜(液晶ディスプレイなどの反射防止膜の高屈折率層、反射板など);電子機器の封止材及び絶縁材、プリント配線基板;電気・電子材料(キャリア輸送剤、発光体、有機感光体、感熱記録材料、ホログラム記録材料);光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池、EMIシールドフィルム、フォトクロミック材料、有機EL素子、カラーフィルタなどの電気・電子部品又は機器用樹脂;自動車、航空・宇宙材料、センサ、摺動部材などの機械部品又は機器用樹脂などに利用できる。特に、本発明の重合体は、光学的特性に優れているため、光学フィルムなどの光学用途の成形体(光学用成形体)を形成するのに有用である。

Claims (4)

  1. 下記式(1)
    Figure 0007454176000007
    (式中、Rハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、及びシアノ基から選択された置換基を示し、nは0又は1~2の整数を示し、R2a 及び 同一又は異なるアルキレン基を示し、これらのアルキレン基は置換基を有していてもよ
    で表されるフルオレン化合物の製造方法であって、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを反応させ、前記(1)で表されるフルオレン化合物を製造する方法。
    Figure 0007454176000008
    (式中、X及びXは同一又は異なるハロゲン原子を示し、R、n、R2a、R 前記式(1)に同じ)
  2. 2a及びR2bがC1-4アルキレン基である請求項1記載の製造方法。
  3. 少なくとも下記式(4)で表される繰り返し単位を有する重合体。
    Figure 0007454176000009
    (式中、R 、n、R 2a 及びR 2b は請求項1記載の式(1)に同じ)
  4. 少なくとも請求項1又は2に記載の式(1)で表されるフルオレン化合物を重合させ、重合体を製造する方法。
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