JP7457318B2 - フルオレン化合物及びその重合体並びにそれらの製造方法 - Google Patents

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本発明は、ビニル基を有する新規なフルオレン化合物、このフルオレン化合物を用いた重合体、並びにそれらの製造方法に関する。
軽量で成形加工が容易な高屈折率樹脂が光学レンズなどの用途に利用されている。しかし、屈折率が1.6を越える光学レンズ用ポリマーは、逐次重合により合成されているため、汎用樹脂に比べて生産コストが格段に高い。一方、連鎖重合により合成される非晶質ポリシクロアルカン類は屈折率が1.3~1.5程度であり、光学レンズ用途には向いていない。高分子の屈折率を高めるには、チオール類や芳香環の導入が有用である。しかし、芳香環を導入すると、分子の配向により複屈折が大きくなる。そのため、芳香環を導入しつつ、分子配向を抑制する分子設計が求められる。
9,9-ビスアリールフルオレンは、4つの異なる方向に芳香環が配置されたカルド構造と称される配座を有し、屈折率を向上させつつ、分子配向しにくいポリマーを生成する性質がある。そのため、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が光学用途のポリマーの原料として注目されている。
例えば、J. Polymer Sci, Part A: Polymer Chem, 2010, 48, 4192-4199 (非特許文献1)には、9,9’-スピロビフルオレン-2,2’-ビス(N,N-ジメチルカルバモチオエート)とジフルオロアレーン(1,4-ビス(4-フルオロベンゾイル)ベンゼンなど)とを反応させ、9,9-スピロビフルオレン部位を含むポリ(アリーレンチオエーテル)を得たこと、この重合体が、屈折率1.69~1.73、ガラス転移温度210~270℃を有し、複屈折が認められず、透明で有機溶媒に可溶であることが記載されている。
J. Am, Soc. Sci., 125, 8712 (2003) (非特許文献2)には、フルオレンと2,3-ジブロモプロペンとを反応させて9,9-ビス(2-ブロモプロペニル)フルオレンを生成させ、2-ビフェニルマグネシウムブロマイドとカップリングさせて、9,9-ビス(2-(ビフェニル)プロペニル)フルオレンを生成させ、酸触媒で分子内環化させて3つのフルオレン単位の9位がメチレン基で連結されたポリフルオレンを調製することが記載されている。この文献では、スタッキングにより電子輸送現象が認められたことが記載されている。
特開2011-236415号公報(特許文献1)には、9,9-ビス(1-アリルオキシフェニル)フルオレンと、ジチオール化合物とのエン-チオール反応により熱可塑性樹脂を得ることが記載され、特開2011-225644号公報(特許文献2)には、9,9-ビス(6-アリルオキシ-2-ナフチル)フルオレンと、ジチオール化合物とのエン-チオール反応により熱可塑性樹脂を得ることが記載されている。骨格を有するジアリル化合物
特開2011-236415号公報 特開2011-225644号公報
J. Polymer Sci, Part A: Polymer Chem, 2010, 48, 4192-4199 J. Am, Soc. Sci., 125, 8712 (2003)
しかし、非特許文献1に記載の方法では、特殊な原料を用いる必要があり、スピロビフルオレン部位を含むポリ(アリーレンチオエーテル)を工業的に効率的に製造するのが困難である。非特許文献2に記載の方法は段階的な有機合成反応に基づいており、ポリフルオレンの調製において、フルオレン単位の繰り返し数が大きくなるにつれて、数多くの工程を必要とする。また、中間体である9,9-ビス[2-(2-ビフェニル)アリル]フルオレンは重合活性なスチリル骨格を有するものの、ビニル基周辺の立体障害が大きく、高分子を生成させるための単量体としては適していない。また、その合成には高価なパラジウム触媒と禁水性物質であるグリニャール試薬を使用するため、工業的な大量合成には不向きである。
特許文献1及び特許文献2の方法では、エン-チオール反応を利用できるものの、有機溶媒に対する溶解性を向上できず、重合体の用途が制約される。また、芳香環の密度を向上できず、屈折率を高めるには制限がある。
従って、本発明の目的は、溶解性に優れた重合体を製造するのに適したフルオレン化合物、及びこのフルオレン化合物を重合成分とする重合体、並びに前記フルオレン化合物及び重合体の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、スピロ環を有し、光学特性に優れた重合体を製造するのに適したフルオレン化合物、及びこのフルオレン化合物を重合成分とするスピロ環を有する重合体、並びに前記フルオレン化合物及び重合体を少ない工程で製造できる方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、フルオレンと、α-ブロモメチルスチレンとの反応により、フルオレンの9,9-位にビニル基が導入された化合物が生成すること、このフルオレン化合物のビニル基とチオール基との反応(エン-チオール反応を含む)を利用すると、溶解性並びに光学特性に優れ、スピロ環を有する重合体が生成することを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明のフルオレン化合物は、下記式(1)で表される。
(式中、R1a及びR1bは、同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基から選択された置換基を示し、これらのR1a及びR1bは置換基を有していてもよく、m1及びm2は同一又は異なって1~10の整数を示し、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基から選択された置換基を示し、nは0又は1~2の整数を示す)
前記式(1)において、R1a及びR1bはアリール基であってもよく、m1及びm2は1~4の整数であってもよい。前記式(1)で表される化合物は、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3-1)及び(3-2)で表される化合物との反応により調製することができる。
(式中、Ha及びHaは同一又は異なるハロゲン原子を示し、R1a、R1b、m1、m2、R、nは前記式(1)に同じ)
前記式(1)で表される化合物は、スピロ環を有する重合体を製造するのに有用である。本発明は、このような重合体も包含する。前記重合体は、下記式(4)で表される繰り返し単位を含んでいる。
Figure 0007457318000003
(式中、R3a及びR3bは、同一又は異なって、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基を示し、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO-)、アルキレン基又はアルキリデン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、又は下記式(4-1)
Figure 0007457318000004
で表される基を示し、pは0又は1~10の整数を示し、Yは、式:
Figure 0007457318000005
(R4aは、アルキレン基を示し、硫黄原子に結合している)を示し、Yは、式:
(R4bは、アルキレン基を示し、硫黄原子に結合している)を示し、q1及びq2は、同一又は異なって、0又は1を示し、R1a、R1b、m1、m2、R、nは前記式(1)に同じ)
前記式(4)で表される繰り返し単位を含む重合体は、前記式(1)で表される化合物と、下記式(5)で表されるジチオール化合物とを反応させることにより調製できる。
Figure 0007457318000007
(式中、R1a、R1b、m1、m2、R、n、R3a、R3b、X、p、Y、Y、q1及びq2は前記に同じ)
なお、前記ジチオール化合物は、芳香環を含むジチオール化合物、例えば、下記式(5-1)で表される化合物であってもよい。
Figure 0007457318000008
(式中、Z1a及びZ1bは同一又は異なるアレーン環を示し、R5a及びR5bは置換基、r1及びr2は0又は1以上の整数を示し、X、p、Y、Y、q1及びq2は前記に同じ)
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、「Cアルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
本発明のフルオレン化合物は、ビニル基を有する新規な化合物であり、ラジカル重合反応、ジチオール化合物との反応を利用して、汎用の有機溶媒に対する溶解性に優れた重合体を製造できる。特に、ジチオール化合物との反応によりスピロ環を有する新規な重合体を得ることができる。この重合体は、屈折率が高く、複屈折が小さいという特色も有する。
図1は、実施例1で得られたフルオレン化合物のH-NMRスペクトルである。 図2は、実施例1で得られたフルオレン化合物の13C-NMRスペクトルである。 図3は、実施例2で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。 図4は、実施例2で得られた重合体のDEPTスペクトルである。
[式(1)で表されるフルオレン化合物及びその製造方法]
前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、ビニル基、特に2つのビニル基を有しており、新規な化合物である。
式(1)において、R1a及びR1bで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5-10シクロアルキル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのC6-12アリール基などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリールC1-4アルキル基などが挙げられる。
1a及びR1bの種類はそれぞれ同一又は異なっていてもよい。好ましいR1a及びR1bは、アリール基、特にフェニル基などのC6-10アリール基である。
これらのR1a及びR1bは置換基を有していてもよい。このような置換基としては、R1a及びR1bの種類に応じて、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシル基、アミノ基、置換アミノ基などが挙げれらる。置換アミノ基としては、アルキルアミノ基、アシルアミノ基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。好ましいハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子である。アルキル基としては、前記と同様の直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基、好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基、特に、メチル基又はエチル基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基などが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基などのC1-6アルキル-カルボニル基などが挙げられる。アルキルアミノ基としては、ジアルキルアミノ基、例えば、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基などが挙げられ、アシルアミノ基としては、ジアシルアミノ基、例えば、ジアセチルアミノ基などのジC1-4アシルアミノ基などが挙げられる。
これらの置換基の種類も、R1a及びR1bの種類に応じて、同一又は異なっていてもよい。好ましい置換基は、ハロゲン原子、アルキル基などであり、R1a及びR1bとしてのアリール基に置換している場合が多い。
m1及びm2は同一又は異なって1~10の整数、好ましくは1~6の整数、さらに好ましくは1~4の整数、特に1又は2である。
フルオレン環に置換する置換基Rのうち、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基としては、好ましい態様も含め、前記と同様のハロゲン原子及び置換基が例示できる。Rで表されるアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ-カルボニル基などが例示できる。なお、置換基Rがアリール基(特にフェニル基)であるとき、このアリール基はフルオレン環の少なくとも一方のベンゼン環に共縮合してベンゾフルオレン環(1,2-ベンゾフルオレン環、2,3-ベンゾフルオレン環など)又はジベンゾフルオレン環(13H-ジベンゾ[a,i]フルオレンなど)を形成してもよい。置換基Rの種類は、置換数nに応じて同一又は異なっていてもよい。好ましい置換基Rは、塩素原子などのハロゲン原子、メチル基などのC1-2アルキル基、カルボキシル基、C1-2アルコキシ-カルボニル基、ニトロ基、シアノ基である。
なお、置換基Rは、フルオレン環の適所に置換していてもよく、通常、フルオレン環の2-,3-,6-及び/又は7-位、特に、2,7-位、又は3,6-位に置換している場合が多い。
置換基Rの置換数nは、0又は1~2の整数を示し、好ましくは0、1若しくは2である。
式(1)で表される好ましい化合物は、R1a及びR1bが、置換基としてハロゲン原子又はアルキル基を有していてもよいアリール基、特にフェニル基であり;m1及びm2が1~3の整数、特に1又は2であり;Rがハロゲン原子、アルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基であり;nが0~2の整数、特に0である。
前記式(1)で表される代表的なフルオレン化合物としては、9,9-ビス(2-フェニル-2-プロペニル)フルオレン、9,9-ビス(3-フェニル-3-ブテニル)フルオレン、9,9-ビス(4-フェニル-4-ペンテニル)フルオレンなどの9,9-ビス(C6-10アリール-C2-6アルケニル)フルオレンなどが例示できる。
前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、下記反応式に示すように、下記式(2)で表される化合物(フルオレン化合物)と、下記式(3-1)及び(3-2)で表される化合物(ハロビニル化合物)との反応により調製できる。そのため、本発明の方法では、前記非特許文献2と異なり、複雑な工程を必要とせず、2つの成分を反応させる簡単な方法で目的化合物を調製できる。
Ha及びHaで表されるハロゲン原子としては、前記と同様のハロゲン原子、特に、塩素原子、臭素原子が例示できる。R1a、R1b、m1、m2、R、及びnは、好ましい態様を含め、前記と同様である。
なお、式(3-1)で表される化合物と、式(3-2)で表される化合物とは、R1a又はR1b、m1又はm2、Ha又はHaが互いに異なる化合物であってもよいが、式(3-1)で表される化合物及び式(3-2)で表される化合物としては、好ましくは同じ化合物が使用される。
反応において、式(3-1)及び(3-2)で表される化合物(総量)の使用量は、式(2)で表される化合物1モルに対して、0.5~10モル、好ましくは0.7~5モル、さらに好ましくは1.2~3モル程度である。なお、反応において、式(3-1)及び(3-2)で表される化合物(ハロビニル化合物)は、式(2)で表される化合物(フルオレン化合物)を含む反応系に一括して仕込んでもよく、反応系に分割して添加、又は逐次添加してもよい。
式(2)で表される化合物と、式(3-1)及び(3-2)で表される化合物との反応は、触媒の非存在下で行ってもよいが、触媒の存在下で行うのが有利である。触媒としては、塩基触媒が使用できる。塩基には、無機塩基及び有機塩基が含まれる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムt-ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなどが例示できる。有機塩基としては、トリエチルアミンなどの第3級アミン類、ピリジン、モルホリンなどの複素環式第3級アミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)などが挙げられる。触媒の使用量は、式(3-1)及び(3-2)で表される化合物の総量1モルに対して、0.01~5モル、好ましくは0.1~3モル、さらに好ましくは0.5~1.5モル程度である。
反応は、溶媒の非存在下で行ってもよいが、好ましくは有機溶媒の存在下で行われる。有機溶媒は、反応に不活性で前記化合物を可溶であればよく、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、ニトリル類、スルホキシド類、アミド類などが挙げられる。炭化水素類としては、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、トリクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエタンなどが挙げられる。エステル類としては、酢酸エステルなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類;シクロペンチルメチルエーテルなどの脂環族エーテル類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類などが挙げられる。ニトリル類としては、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが例示できる。スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。アミド類としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。なお、必要であれば、酢酸などのカルボン酸を反応溶媒として利用してもよい。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて混合溶媒として使用できる。
反応は、反応系の環流温度以下の温度、温度0℃~100℃、好ましくは10~75℃、さらに好ましくは20~50℃で行うことができ、室温(温度20~25℃)で行ってもよい。不純物の生成を抑制するには、低温、例えば、20~50℃、好ましくは25~45℃で反応させるのが有利である。反応時間は、特に制限されず、1~48時間、好ましくは2~24時間である。
反応は、空気中又は不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。また、反応は、減圧下で行ってもよいが、通常、加圧下又は常圧下で行う場合が多い。反応終了後、反応混合物(又は反応生成物)は、洗浄、濃縮、ろ過、再沈殿、晶析、再結晶、抽出(分配)、カラムクロマトグラフィーなどの慣用の分離精製手段や、これらを組み合わせた方法により、単離・精製してもよい。
なお、再結晶溶媒としては、貧溶媒と良溶媒との混合溶媒などが使用できる。貧溶媒としては、メタノールなどの水溶性アルコールなどが挙げられ、良溶媒としては、トルエンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類などの非水溶性溶媒が挙げられる。また、抽出溶媒も前記と同様の良溶媒であってもよい。
[式(1)で表されるフルオレン化合物の用途]
前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、2つのビニル基を利用して種々の用途に使用できる。例えば、ハロゲン又はハロゲン化水素との付加反応によるハロゲン化物の調製、アミン、チオールなどとの付加反応(マイケル付加反応を含む)などによる修飾化合物の調製、酸化反応によるエポキシ化合物の調製などに利用できる。上記付加反応はマイケル付加反応を含む。また、前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、ラジカル重合性を有しているため、重合体を生成するための単量体又は硬化性組成物の単量体として利用できるとともに、架橋剤として利用することもできる。
硬化性組成物は、熱重合開始剤を含んでいてもよい。熱重合開始剤としては、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、過酸エステル類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類などの有機過酸化物;アゾニトリル化合物などの慣用の重合開始剤が例示できる。
硬化性組成物は、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、重合禁止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、滑剤、安定剤、可塑剤、界面活性剤、溶解促進剤、着色剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、レベリング剤、分散剤、分散助剤、流動調整剤などを含んでいてもよい。前記安定剤としては、抗酸化剤、熱安定剤、耐光安定剤などが例示できる。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
前記式(1)で表されるフルオレン化合物を架橋剤として利用する場合、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、特にラジカル重合性成分(ラジカル重合性単量体又はラジカル重合性樹脂若しくはオリゴマー)の架橋剤として利用できる。架橋剤としての前記フルオレン化合物の使用量は、ラジカル重合性成分100質量部に対して、例えば、0.1~50質量部、好ましくは0.5~25質量部、さらに好ましくは1~10質量部であってもよい。
前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、ビニル基の反応性を利用して重合体(単独又は共重合性単量体との共重合体)を得るための単量体、チオールとの反応(エンチオール反応を含む)を利用して重合体を得るための単量体として利用できる。そのため、簡単な方法で重合体を調製できる。共重合性単量体、チオールとの反応により、重合体の特性(耐熱性などの熱的特性、屈折率などの光学特性、化学的安定性など)を調整してもよい。共重合性単量体としては、エチレン、プロピレン、ブテンなどのα-オレフィン;ブタジエン、イソプレンなどのジエン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基又はその酸無水物基含有単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基又はエポキシ基含有単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチルロール(メタ)アクリルアミドなどの窒素含有単量体;アルキルビニルエーテル類:ビニルケトン類などが例示できる。これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの共重合性単量体の使用量は、前記式(1)で表されるフルオレン化合物100質量部に対して、1~1000質量部、好ましくは5~500質量部、さらに好ましくは10~100質量部、特に25~75質量部であってもよい。
前記式(1)で表されるフルオレン化合物の単独重合、前記式(1)で表されるフルオレン化合物と共重合性単量体との共重合は、トルエンなどの前記例示の有機溶媒の存在下で行ってもよく、熱重合開始剤、光重合開始剤などのラジカル発生剤(又は重合開始剤)の存在下で行ってもよい。また、重合反応には、重合開始剤を用いて又は重合開始剤を用いることなく、電子線などの活性エネルギー線を利用してもよい。さらに、重合反応は、空気中、特に、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気で行ってもよく、低温又は加熱下で行ってもよい。
[重合体及びその製造方法]
下記反応式で表されるように、前記式(1)で表される化合物は、下記式(5)で表されるジチオール化合物との反応(エン-チオール反応を含む)により、下記式(4)で表される繰り返し単位を有する重合体を調製するのに有用である。この反応では、ビニル基とチオール基とのエン-チオール反応とともに環化反応が生じ、スピロ環を形成するようである。
(式中、R3a及びR3bは、同一又は異なって、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基を示し、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO-)、アルキレン基(又はアルキリデン基)、シクロアルキレン基、アリーレン基、又は下記式(4-1)
Figure 0007457318000012
で表される基を示し、pは0又は1~10の整数を示し、Y及びYは、それぞれ、基-R4a-C(=O)-O-及び-O-C(=O)-R4b-(R4a及びR4bは、それぞれ、同一又は異なるアルキレン基を示す)を示し、q1及びq2は、同一又は異なって、0又は1を示し、R1a、R1b、m1、m2、R、nは前記に同じ)
3a及びR3bで表されるアルキレン基(アルキリデン基を含む)としては、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-10アルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基である。
シクロアルキレン基としては、1,1-シクロペンチレン基(シクロペンチリデン基)、1,3-シクロペンチレン基、1,1-シクロヘキシレン基(シクロヘキシリデン基)、1,2-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基などのC5-10シクロアルキレン基などが挙げられる。好ましいシクロアルキレン基は、C5-8シクロアルキレン基、さらに好ましくはC5-6シクロアルキレン基である。
アリーレン基としては、フェニレン基(1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基など)、ナフチレン基(1,5-ナフチレン基、1,6-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、2,7-ナフチレン基など)などのC6-12アリーレン基が例示できる。好ましいアリーレン基は、フェニレン基、ナフチレン基である。
なお、R3a及びR3bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一である。好ましいR3a及びR3bは、屈折率を高めるのに有用なアリーレン基である。なお、複屈折を低減するためにはシクロアルキレン基が有利である。
Xで表されるアルキレン基(又はアルキリデン基)、シクロアルキレン基、アリーレン基としては、好ましい態様も含め、前記R3a及びR3bで表される基と同様である。好ましいXは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO-)、アルキレン基(又はアルキリデン基)、又は前記式(4-1)で表される基(フルオレン-9,9-ジイル基など)である。
pは、0又は1~10の整数、好ましくは0又は1~5の整数、さらに好ましくは0又は1~3の整数である。
及びYで表される基(-R4a-C(=O)-O-及び-O-C(=O)-R4b-)において、R4a及びR4bで表されるアルキレン基(アルキリデン基を含む)としては、R3a及びR3bで表されるアルキレン基と同様に、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-10アルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、特にC2-3アルキレン基である。なお、R4a及びR4bは、式(4)及び(5)において、硫黄原子に結合している。
q1及びq2は、0又は1のいずれであってもよく、屈折率及び耐熱性を高めるためには、q1及びq2は0であるのが好ましく、可撓性を高めるためには、q1及びq2は1であるのが好ましい。
1a、R1b、m1、m2、R、nは、好ましい態様も含め、前記と同様である。
重合体の屈折率を高めるためには、式(5)で表されるジチオール化合物は、式(5-1)で表される化合物を含むのが好ましい。
Figure 0007457318000013
(式中、Z1a及びZ1bは同一又は異なるアレーン環を示し、R5a及びR5bは置換基、r1及びr2は0又は1以上の整数を示し、X、p、Y、Y、q1及びq2は前記に同じ)
1a及びZ1bで表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環、環集合アレーン環などが挙げられる。多環式アレーン環としては、ナフタレン環などの縮合二環式アレーン環、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式アレーン環などの縮合多環式C10-14アレーン環が挙げられ、特にナフタレン環が好ましい。環集合アレーン環としては、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環などのビC6-12アレーン環、ターフェニル環などのテルC6-12アレーン環などが挙げられる。好ましい環集合アレーン環はビフェニル環である。
なお、環Z1a及び環Z1bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。好ましい環Z1a及び環Z1bは、ベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、さらに好ましくはベンゼン環である。
5a及びR5bで表される置換基としては、ハロゲン原子;アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基;アルコキシ基;アシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基などが挙げられる。これらの置換基のうち、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アシル基及び置換アミノ基としては、好ましい態様も含め、前記R1a及びR1bの項に記載の原子及び置換基が例示できる。なお、R5a及びR5bで表される置換基は、同一又は異なっていてもよい。
好ましいR5a及びR5bは、直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、シクロヘキシル基などのC5-8シクロアルキル基、C6-14アリール基、メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基であり、メチル基、エチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルキル基、特にメチル基が好ましい。
5a及びR5bの置換数q1及びq2は、0又は1~2の整数、好ましくは0又は1である。なお、置換数q1及びq2は、互いに同一又は異なっていてもよい。
ジチオール化合物(5)としては、脂肪族ジチオール化合物、脂環族ジチオール化合物、芳香族ジチオール化合物が含まれる。
脂肪族ジチオール化合物には、例えば、アルカンジチオール(又はジメルカプトアルカン、ポリチオキシアルキレンジチオール、ジメルカプト(ポリ)オキサアルカンなどが含まれる。アルカンジチオールとしては、1,2-エタンジチオール、1,1-ジルカプトエタン、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオールなどのC2-20アルカンジチオール、好ましくはC2-10アルカンジチオール、さらに好ましくはC2-6アルカンジチオール、特にC2-4アルカンジチオールが挙げられる。ポリチオキシアルキレンジチオールとしては、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタンなどのポリチオキシC2-10アルカンジチオール、好ましくはポリチオキシC2-6アルカンジチオール、さらに好ましくはポリチオキシC2-4アルカンジチオール)が挙げられる。ジメルカプト(ポリ)オキサアルカンとしては、1,5-ジメルカプト-3-オキサペンタン、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオールなどのジメルカプトモノ乃至テトラオキサC2-20アルカン、好ましくはジメルカプトモノ乃至トリオキサC2-16アルカン、さらに好ましくはジメルカプトモノ又はジオキサC2-10アルカンなどが例示できる。
脂環族ジチオール化合物は、シクロアルカンジチオール、ジメルカプトアルキルチアン、複素環を含むジチオールを含む。シクロアルカンジチオールとしては、例えば、1,4-ジメルカプトシクロヘキサン、1,3-ジメルカプトシクロヘキサン、1,2-ジメルカプトシクロヘキサンなどのC5-8シクロアルカンジチオールが挙げられる。複素環を含むジチオールには、ヘテロ原子として硫黄原子を含む6員環飽和複素環を含む化合物が含まれ、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1-チアン、2,5-ビス(2-メルカプトエチル)-1-チアンなどのジ(メルカプト-C1-4アルキル)チアン;2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアンなどのジ(メルカプト)ジチアン;2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(2-メルカプトエチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(メルカプトメチル)-2,5-ジメチル-1,4-ジチアンなどのジ(メルカプト-C1-4アルキル)ジチアンなどが挙げられる。
芳香族ジチオール化合物としては、芳香族同素環又は芳香族複素環を含むジチオール化合物が含まれ、芳香族同素環を含むジチオール化合物には、ジメルカプトアレーン、ジ(メルカプトアルキル)アレーン;ジ(メルカプトアリール)エーテル、ジ(メルカプトアルキル-アリール)エーテル;ジ(メルカプトアリール)スルフィド、ジ(メルカプトアルキル-アリール)スルフィド;ジ(メルカプトアリール)ケトン、ジ(メルカプトアルキル-アリール)ケトン;ジ(メルカプトアリール)スルホキシド、ジ(メルカプトアルキル-アリール)スルホキシド;ジ(メルカプトアリール)スルホン、ジ(メルカプトアルキル-アリール)スルホン;ジ(メルカプトアリール)アルカン、ジ(メルカプトアルキル-アリール)アルカン;ジ(メルカプトアリール)シクロアルカン、ジ(メルカプトアルキル-アリール)シクロアルカンなどが含まれる。
ジメルカプトアレーンとしては、例えば、1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,5-ジメルカプトナフタレン、2,6-ジメルカプトナフタレンなどのジメルカプトC6-12アレーン、好ましくはジメルカプトC6-10アレーンなど;4,4’-ジメルカプトビフェニル、4,4”-ジメルカプトターフェニルなどのジメルカプトビ又はテルC6-12アレーン、好ましくはジメルカプトビ又はテルC6-10アレーンなどが例示できる。ジ(メルカプトアルキル)アレーンとしては、例えば、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(2-メルカプトエチル)ベンゼンなどのジ(メルカプトC1-4アルキル)C6-12アレーン、好ましくはジ(メルカプト-C1-4アルキル)C6-10アレーン;4,5-ビス(メルカプトメチル)-o-キシレンなどのアレーン環にメチル基などの置換基が置換したジ(メルカプト-C1-4アルキル)C6-10アレーンなどが挙げられる。
ジ(メルカプトアリール)エーテルとしては、例えば、ビス(4-メルカプトフェニル)エーテルなどのジ(メルカプト-C6-10アリール)エーテルなどが例示でき;ジ(メルカプトアルキル-アリール)エーテルとしては、例えば、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)エーテルなどのジ(メルカプトC1-4アルキルC6-10アリール)エーテルなどが例示できる。
ジ(メルカプトアリール)スルフィドとしては、例えば、ビス(4-メルカプトフェニル)スルフィドなどのジ(メルカプトC6-10アリール)スルフィドなどが挙げられ;ジ(メルカプトアルキル-アリール)スルフィドとしては、例えば、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)スルフィドなどのジ(メルカプトC1-4アルキルC6-10アリール)スルフィドなどが例示できる。
ジ(メルカプトアリール)ケトンとしては、例えば、ビス(4-メルカプトフェニル)ケトンなどのジ(メルカプトC6-10アリール)ケトンなどが挙げられ;ジ(メルカプトアルキル-アリール)ケトンとしては、例えば、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)ケトンなどのジ(メルカプトC1-4アルキルC6-10アリール)ケトンなどが挙げられる。
ジ(メルカプトアリール)スルホキシドとしては、例えば、ビス(4-メルカプトフェニル)スルホキシドなどのジ(メルカプトC6-10アリール)スルホキシドなどが挙げられ;ジ(メルカプトアルキル-アリール)スルホキシドとしては、例えば、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)スルホキシドなどのジ(メルカプトC1-4アルキルC6-10アリール)スルホキシドなどが挙げられる。
ジ(メルカプトアリール)スルホンとしては、例えば、ビス(4-メルカプトフェニル)スルホナなどのジ(メルカプトC6-10アリール)スルホンなどが挙げられ;ジ(メルカプトアルキル-アリール)スルホンとしては、例えば、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)スルホンなどのジ(メルカプトC1-4アルキルC6-10アリール)スルホンなどが挙げられる。
ジ(メルカプトアリール)アルカンとしては、例えば、2,2-ビス(4-メルカプトフェニル)プロパンなどのジ(メルカプトC6-10アリール)C1-10アルカン、好ましくはジ(メルカプトC6-10アリール)C1-6アルカンなどが挙げられ;ジ(メルカプトアルキル-アリール)アルカンとしては、例えば、ビス(4-メルカプトフェニル)メタン、1,1-ビス(4-メルカプトフェニル)エタン、2,2-ビス(4-メルカプトメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メルカプトフェニル)ブタンなどのジ(メルカプトC1-4アルキルC6-10アリール)C1-10アルカン、好ましくはジ(メルカプトC1-2アルキルC6-10アリール)C1-6アルカンなどが挙げられる。
ジ(メルカプトアリール)シクロアルカンとしては、例えば、1,1-ビス(4-メルカプトフェニル)シクロヘキサンなどが挙げられ;ジ(メルカプトアルキル-アリール)シクロアルカンとしては、例えば、1,1-ビス(4-メルカプトメチルフェニル)シクロヘキサンなどが例示できる。
芳香族複素環ジチオール化合物としては、例えば、チオフェンジチオール(3,4-チオフェンジチオールなど)、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールなどが挙げられる。
式(4-1)で表される基を有するジチオール化合物(式(5-1)のXがフルオレン-9,9-ジイル基などであるフルオレン骨格を有するジチオール化合物)としては、前記式(5-1)において、p=0である化合物及びp=1以上(例えば、1~4)である化合物が含まれる。
前記式(5-1)において、p=0である化合物としては、例えば、9,9-ビス(メルカプト-フェニル)フルオレン、9,9-ビス(メルカプト-アルキルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(アリール-メルカプトフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(メルカプト-フェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-メルカプトフェニル)フルオレンなどのビス(メルカプトC6-10アリール)フルオレンなどが挙げられ、9,9-ビス(メルカプト-アルキルフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-メルカプト-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-メルカプト-3,5-ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(メルカプト-C1-4アルキルC6-10アリール)フルオレンなどが挙げられる。9,9-ビス(アリール-メルカプトフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-メルカプト-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(メルカプトC6-10アリール-フェニル)フルオレンなど]などが挙げられる。
前記式(5-1)において、p=1以上(例えば、1~4)である化合物には、9,9-ビス(メルカプトアルコキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(メルカプト-アルコキシ-アルキルフェニル)フルオレンなどが含まれる。9,9-ビス(メルカプトアルコキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[4-(2-メルカプトエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-メルカプトプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(メルカプトC2-4アルコキシ)C6-10アリール]フルオレンなどが挙げられ;9,9-ビス(メルカプト-アルコキシ-アルキルフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[4-(2-メルカプトエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-メルカプトエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[(メルカプトC2-4アルコキシ)-C1-4アルキルC6-10アリール]フルオレンなどが例示できる。
なお、式(5)及び(5-1)において、q1及びq2が1である化合物は、慣用の方法、例えば、特開平8-59775号公報に記載の方法などを利用して、対応するジヒドロキシ化合物とメルカプトアルカン酸(3-メルカプトプロピオン酸など)とのチオエステル形成反応により調製できる。
前記式(5)で表されるジチオール化合物の使用割合は、前記式(1)で表される化合物1モルに対して、0.5~2モル、好ましくは0.7~1.5モル、さらに好ましくは0.8~1.2モル、特に0.9~1.1モル程度である。なお、ジチオール化合物の使用量が少なすぎても多すぎても重合体の分子量が低下し、少なすぎると、重合体の末端にビニル基を導入しやすく、多すぎると重合体の末端にチオール基を導入しやすくなる。
反応は、触媒の非存在下又は存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用の触媒、例えば、酸触媒が使用でき、酸触媒としては、硫酸、ヘテロポリ酸などの無機酸、スルホン酸(ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸など)などの有機酸、イオン交換樹脂などが利用できる。触媒の使用量は、前記式(1)で表される化合物及び式(5)で表されるジチオール化合物の総量に対して、0.1~10質量%、好ましくは0.5~5質量%、さらに好ましくは1~3質量%程度であってもよい。
前記式(1)で表される化合物と前記式(5)で表されるジチオール化合物との反応(重合反応)は、溶媒の非存在下で行ってもよく、溶媒の存在下で行ってもよい。特に、生成した重合体が広範な溶媒に可溶であるため、溶媒の存在下でも円滑に反応が進行する。溶媒としては、反応に不活性な種々の溶媒、例えば、前記式(2)で表される化合物と、前記式(3-1)及び(3-2)で表される化合物との反応で例示の有機溶媒が使用できる。具体的には、このような溶媒としては、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エステル類、ケトン類、ニトリル類、スルホキシド類、アミド類などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は混合溶媒として使用できる。好ましい有機溶媒は、トルエンなどの芳香族炭化水素類である。
前記式(1)で表される化合物と前記式(5)で表されるジチオール化合物との反応(重合反応)は、10~150℃程度の温度、例えば、溶媒の環流温度以下の温度で反応させることができ、チオールとの反応を利用するため、低温でも円滑に進行する。そのため、反応温度は、10~120℃、好ましくは20~100℃、さらに好ましくは25~75℃であってもよい。反応時間は特に制限されず、1~24時間程度であってもよい。
反応は、空気中又は不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。反応終了後、反応混合物(又は反応生成物)は、洗浄、濃縮、ろ過、沈殿又は析出、乾燥などの慣用の方法で精製してもよい。
重合体の分子量は特に制限されず、重合体の数平均分子量は、、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で測定したとき、ポリスチレン換算で、例えば、500~100000、好ましくは700~50000、さらに好ましくは1000~25000であってもよく、重合体は、オリゴマー領域、例えば、数平均分子量700~7000程度の分子量を有していてもよい。また、分子量分散度D(Mw/Mn)は、1~5程度の範囲から選択でき、好ましくは1~4、さらに好ましくは1~3、特に1~2である。
このような重合体は、フルオレン骨格を有していても、汎用の有機溶媒(前記ジチオールとの反応で例示の広範囲な有機溶媒)に対して高い溶解性を示す。そのため、重合体は、コーティングなどの広い用途に利用できる。また、重合体は、フルオレン骨格を有し、かつカルド構造を形成するため、屈折率が高く、複屈折も小さく、光学材料として適している。また、前記重合体には、高い耐熱性を有する。さらに、重合体には、前記のように、ビニル基及び/又はメルカプト基を導入することもでき、このようなビニル基及び/又はメルカプト基は重合体の末端に導入してもよい。
なお、重合体は、少量(20質量%以下、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下)であれば、下記式(4b)で表される繰り返し単位(スピロ環を含まない単位)を有するオリゴマー又は重合体(エン-チオール反応による生成物)を含んでいてもよい。
Figure 0007457318000014
(式中、R1a、R1b、m1、m2、R、n、R3a及びR3b、X、p、Y及びY、q1及びq2は前記に同じ)
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における各評価方法及び使用した成分は以下の通りである。
[評価方法]
(融点)
低分子化合物の融点はMPA100型融点測定装置 Optimelt(Stanford Research Systems製)を用いて、昇温速度5℃/分で室温から80℃に昇温し測定した。
(ガラス転移温度Tg及び分解温度)
示差走査熱量分析装置(DSC、リガク(株)製、「Rigaku Thermo plus EVO2 示差走査熱量計 DSCvesta」)を用いて、窒素気流下、昇温速度10℃/分で50℃から160℃に昇温し、160℃で5分間保持してから、降温速度10℃/分で50℃まで冷却するサイクルを3回繰り返してガラス転移温度Tgを測定した。また、熱重量示差走査熱量分析装置(TG-DTA、リガク(株)製、「Rigaku 示差熱天秤Thermo plus EVO2」試料観察TG-DTA)を用いて、窒素気流下、昇温速度10℃/分で室温から500℃に昇温し、10%重量分解温度(Td10)を測定した。
(NMRスペクトル)
核磁気共鳴(NMR)装置(ブルカー(株)製「AVANCE 400」および「AVANCE NEO」)を用いて25℃で測定した。測定溶媒は、重クロロホルムを用い、内部標準は、テトラメチルシランを用いた。また、試料の分析には、DOSY法(Three Dimensional-Diffusion-Ordered NMR Spectroscopy)を利用した。
(分子量)
分子量(数平均分子量Mn)及び分子量分散度D(Mw/Mn)は、EXTREMAクロマトグラフ(日本分光(株)製)に40℃に加熱したサイズ排除カラム「PL-gel,Mixed C(300mm×7.5mm)」(アジレント・テクノロジー(株)製)を2本直列に装填し、溶出液としてテトラヒドロフラン(高速液体クロマトグラフ用,安定剤なし,富士フィルム和光純薬工業(株)製)を0.8mL/分で流して、紫外吸収分光計「UV-4070」(254nmで検出、日本分光(株)製)および示差屈折率計(RI-4030,日本分光)で検出したクロマトグラムを、標準ポリスチレン(東ソー(株)製,TSKゲルオリゴマーキット,Mn:1.03×10,3.89×10,1.82×10,3.68×10,1.63×10,5.32×10,3.03×10,8.73×10)による三次曲線で較正して評価した。
[使用した成分]
フルオレン:東京化成工業(株)製
ジチオフェノール:東京化成工業(株)製
カリウムt-ブトキシド:富士フイルム和光純薬工業(株)製
実施例1
(式(1)のフルオレン化合物(R1a及びR1b=フェニル基;m1及びm2=1;n=0である化合物)の合成)
Figure 0007457318000015
上記反応式に従って反応させ、目的化合物を得た。すなわち、アルゴン雰囲気下、フルオレン(2a)36.1モルと、α-ブロモメチルスチレン(3a)79.4モルとを、カリウムt-ブトキシド79.4モルの存在下、テトラヒドロフラン中、室温(約20℃)で1日撹拌して反応させた。なお、反応を薄層クロマトグラフィで追跡したところ、5時間経過した時点で原料のフルオレンが消失していた。
反応混合液を濃縮し、ヘキサン50mLで希釈し、水50mLで洗浄した後、水層をさらにヘキサン50mLで2回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して黄色粉末状の固体(化合物1a-1)を得た。この黄色粉末固体を、ヘキサンを溶離液とするシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(Rf=0.07)によって単離精製して化合物(1a-2)を得た(収率58%)。この単離物をメタノール/酢酸エチル混合溶媒(メタノール:酢酸エチル=10/1(体積比))に還流条件下で溶解し、室温に冷却することにより再結晶し、無色透明な立方体型の結晶(化合物(1a-2))を得た。
融点:69.7~70.4℃
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃):δ(ppm)=7.48(d,J=7.5Hz,2H),7.10(td,J=7.5Hz,J=1.0Hz,2H),7.03-6.99(m,8H),6.87(td,J=7.5Hz,J=1.0Hz,2H),6.79-6.76(m,4H),4.70(d,J=1.8Hz,2H),4.37(br,2H),3.16(br,2H)
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃):δ(ppm)=148.2,145.4,143.5,141.2,127.6,126.7,126.5,126.4,126.0,124.9,119.2,116.8,55.7,45.2
H-NMRスペクトルを図1に、13C-NMRスペクトルを図2に示す。
実施例2
上記反応式に従って重合させ、重合体を得た。すなわち、アルゴン雰囲気下、実施例1で得られた化合物(再結晶前の化合物(1a-1)又は再結晶後の化合物(1a-2))(0.399ミリモル)と、4,4’-チオビス(ベンゼンチオール)(ビス(4-メルカプトフェニル)スルフィド)(5a)(0.399ミリモル)とを、下記溶媒0.4mL中、室温(約20℃)で24時間撹拌した。反応混合物をジエチルエーテル15mLに滴下し、デカンテーションにより沈殿物を回収し、真空乾燥することにより、式(4a)で表される繰り返し単位を有する白色固体の重合体を得た。なお、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒として用いた例では、再沈殿操作をすることなく、反応混合液を濃縮して真空乾燥することにより、前記重合体を得た。
得られた重合体の数平均分子量Mn、及び数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwとに基づく分子量分散度又は分布D(Mw/Mn)を測定した。結果を下表に示す。なお、実施例2-4、2-5、2-6、及び2-8においては、再結晶前の化合物(1a-1)を用いた重合体のデータ(数平均分子量Mn及び分布D)を示す。
*:チャートのピークトップに対応する分子量を示す。数平均分子量Mn、及び分子量分散度又は分布D(Mw/Mn)の欄において、再結晶前の化合物(1a-1)を用いた重合体と、再結晶後の化合物(1a-2)を用いた重合体とを、前者/後者として、スラッシュ「/」で区分して示している。
また、溶媒としてトルエンを用い、再結晶後の化合物(1a-2)を用いて得られた重合体(実施例2-7)のH-NMRデータを下記に示し、H-NMRスペクトルを図3に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃):δ(ppm)=7.85-6.41(m,26H),4.66-4.60(m,0.26H),3.16-2.35(m,10H)
なお、化合物(1a-2)と4,4’-チオビス(ベンゼンチオール)(5a)との反応により、下記式(4b-1)で表される繰り返し単位を有する重合体が生成することが予想される。
一方、式(1a-2)で表される化合物の一方のビニル基と4,4’-チオビス(ベンゼンチオール)(5a)との反応に続いて、隣接するビニリデン基(CH=C=)の炭素原子と連鎖的に閉環すると、上記式(4a)で表される繰り返し単位を有する重合体が生成することが予想される。
そこで、13C-NMRスペクトル、13C-NMRスペクトルでの炭素の級数を観察するDEPT(Distortionless Enhancement by Polarization Transfer)スペクトル(135°))、H2BC(Hetero- nuclear 2-Bond Correlation)スペクトル、HSQC(Heteronuclear Single Quantum Correlation)スペクトル、ROESY(Rotating frame nuclear Overhauser effect spectroscopy)スペクトル及びCOSY(Correlation Spectroscopy)スペクトルを測定した。
DEPTスペクトル(135°)では、13C-NMRスペクトルの脂肪族領域において、1級及び3級炭素では正のシグナル、2級炭素では負のシグナルが観察され、4級炭素ではシグナルが観察されないことを利用して、13C-NMRスペクトルと対比した。図4に示されるように、13C-NMRスペクトルとの対比から、DEPTスペクトル(135°)には47-76ppmにかけて、負の向きのシグナル(すなわち、2級炭素のみのシグナル)が観測された。また、13C-NMRスペクトルで観測された4級炭素に帰属する所定のシグナル(52.2ppm,53.7ppm,76.2ppmでのシグナル)が、DEPTスペクトル(135°)では消失していることから、4級炭素原子が存在することが確認された。なお、図4の下段には13C-NMRスペクトルを示し、上段にはDEPTスペクトル(135°)を示している。
また、2結合離れたCHを検出するH2BCスペクトルでは、CH相関(H-13Cの相関)において、隣接する炭素が4級炭素であるときには相関(4級13C核とH核との相関)が出ない。このことを利用してH2BCスペクトルを観察したところ、相関(4級13C核とH核との相関)が認められなかったことから、分子内で環をまいた骨格、すなわち、2級炭素の両隣に4級炭素が結合していることが判明した。
脂肪族領域でのH-NMRの帰属ができるHSQCスペクトル(C-Hの相関)において、各CHHシグナルから、環構造の形成(アキシアル位とエカトリアル位の発生)が示唆された。また、ROESYスペクトルを測定したところ、b-f,b-dの相関が見られ、異なる炭素に結合しているプロトン同士の相関が確認されたことから、それぞれのプロトンが環におけるアキシアル位であり、相関のないシグナル(他の位置のシグナル)はエカトリアル位のシグナルであると考えられる。さらに、COSYスペクトルによるH-Hの相関から、6員環内のジェミナルカップリングが明確に観測された。
これらのことから、生成した重合体が、式(4a)で表されるように、スピロ環を含む繰り返し単位を有することが明らかとなった。
なお、図3に示すNMRスペクトルに関し、混合試料から各成分のスペクトルを分離するためのDOSY法(Three Dimensional-Diffusion-Ordered NMR Spectroscopy)によるスペクトルにおいて、4.2-4.8ppmに観測された末端ビニル基に由来するシグナルと、脂肪族領域に観察されたシグナルとの拡散係数がほぼ同じであることから、スピロ環を形成していない末端ビニル基が認められた。
前記式(1)で表される本発明のフルオレン化合物は、2つのビニル基を有しているため、ビニル基を修飾することにより、ハロゲン化物、アミン、チオールなどとの付加反応生成物、エポキシ化合物の調製などに利用できる。また、前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、重合体を生成するための単量体又は硬化性組成物の単量体として利用できるとともに、架橋剤として利用することもできる。
また、本発明の重合体は、汎用の広範な有機溶媒に可溶である。また、重合体は、フルオレン環とスピロ環とを有し、屈折率及び透明性が高いとともに、複屈折が小さく、光学特性に優れている。さらに、熱可塑性樹脂とすることもでき、耐熱性も改善することもできる。そのため、流延法、コーティング法、押出成形、射出成形などの各種成形法を適用でき、実用性が高く、種々の形態の成形体、例えば、日用品、容器、電気・電子機器部品、自動車などの車両部品、建築資材などを効率よく得ることができる。そのため、本発明の重合体は、光学レンズ、光学フィルム又は光学シート、ピックアップレンズ、ホログラム、液晶用フィルム、有機エレクトロルミネッセンス(EL)用フィルムなどに好適に利用できる。また、本発明の重合体は、塗料、インキ、接着剤、粘着剤;帯電トレイ、導電シート;保護膜(電子機器、液晶部材などの保護膜など);光学薄膜(液晶ディスプレイなどの反射防止膜の高屈折率層、反射板など);電子機器の封止材及び絶縁材、プリント配線基板;電気・電子材料(キャリア輸送剤、発光体、有機感光体、感熱記録材料、ホログラム記録材料);光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池、EMIシールドフィルム、フォトクロミック材料、有機EL素子、カラーフィルタなどの電気・電子部品又は機器用樹脂;自動車、航空・宇宙材料、センサ、摺動部材などの機械部品又は機器用樹脂などに利用できる。特に、本発明の重合体は、光学的特性に優れているため、光学フィルムなどの光学用途の成形体(光学用成形体)を形成するのに有用である。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表されるフルオレン化合物。
    Figure 0007457318000019
    (式中、R1a及びR1bは同一又は異なって、C6-10アリール基を示し、これらの置換基R1a及びR1bは置換基を有していてもよく、m1及びm2は同一又は異なって1~10の整数を示し、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基から選択された置換基を示し、nは0又は1~2の整数を示す。但し、R 1a 及びR 1b は2-ビフェニリル基ではない
  2. 1a及びR1bがフェニル基又はナフチル基であり、m1及びm2が1~4の整数である請求項1記載のフルオレン化合物。
  3. 下記式(2)で表される化合物と、下記式(3-1)及び(3-2)で表される化合物とを反応させ、下記式(1)で表されるフルオレン化合物を製造する方法。
    Figure 0007457318000020
    (式中、Ha及びHaは同一又は異なるハロゲン原子を示し、R1a、R1bは同一または異なって、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基から選択された置換基を示し、これらの置換基R1a及びR1bは置換基を有していてもよく、m1、m2、R、nは請求項1に同じ)
  4. 下記式(4)で表される繰り返し単位を含む重合体。
    Figure 0007457318000021
    (式中、R3a及びR3bは、同一又は異なって、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基を示し、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO-)、アルキレン基又はアルキリデン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、又は下記式(4-1)
    Figure 0007457318000022
    で表される基を示し、pは0又は1~10の整数を示し、Yは、式:
    Figure 0007457318000023
    (R4aは、アルキレン基を示し、硫黄原子に結合している)を示し、Yは、式:
    Figure 0007457318000024
    (R4bは、アルキレン基を示し、硫黄原子に結合している)を示し、q1及びq2は、同一又は異なって、0又は1を示し、R1a及びR1bは同一又は異なって、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基から選択された置換基を示し、これらの置換基R1a及びR1bは置換基を有していてもよく、m1、m2、R、nは請求項1に同じ)
  5. 3a及びR3bがアリーレン基であり、Xが、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO-)、アルキレン基又はアルキリデン基、前記式(4-1)で表される基であり、pは0又は1~3の整数である請求項4記
    載の重合体。
  6. 下記式(1)で表される化合物と、下記式(5)で表されるジチオール化合物とを反応させ、請求項4又は5記載の重合体を製造する方法。
    Figure 0007457318000025
    (式中、R1a及びR1bは請求項4に同じで、m1、m2、R、nは請求項1に同じで、R3a、R3b、X、p、Y、Y、q1及びq2は請求項4に同じ)
  7. 前記式(5)で表されるジチオール化合物が、下記式(5-1)で表される化合物を含む
    請求項6記載の方法。
    Figure 0007457318000026
    (式中、Z1a及びZ1bは同一又は異なるアレーン環を示し、R5a及びR5bは置換基、r1及びr2は0又は1以上の整数を示し、X、p、Y、Y、q1及びq2は請求項4に同じ)
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