[式(1)で表される単官能性フルオレン化合物及びその特性]
(式中、Zは芳香族炭化水素環を示し、R1及びR3はそれぞれ独立して非反応性基を示し、R2は炭化水素基を示し、R4は水素原子またはメチル基を示し、Aは直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示し、kはそれぞれ独立して0~8の整数を示し、mは0または1を示し、nは0以上の整数を示し、pは1以上の整数を示す)。
前記式(1)において、R1で表される置換基(非反応性基又は非ラジカル重合性基)としては、例えば、炭化水素基、具体的には、アルキル基、アリール基など;シアノ基;ハロゲン原子、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基が挙げられる。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基などのC6-10アリール基が挙げられる。
kが1以上である場合、これらの基R1のうち、アルキル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、さらに好ましくはアルキル基、なかでも、直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基、特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルキル基が好ましい。
基R1の置換数kは、例えば、0~7程度の整数、好ましい範囲としては、以下段階的に、0~6の整数、0~5の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0又は1、特に0である。kが2以上である場合、2以上の基R1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R1の置換位置は特に制限されず、例えば、kが2以上である場合、基R1はフルオレン環を形成する少なくとも一方のベンゼン環に置換していてもよく、双方のベンゼン環に置換していてもよい。代表的な基R1の置換位置としては、例えば、フルオレン環の2位ないし7位のいずれかの位置であってもよく、具体的には、2位、3位および/または7位などであってもよい。なお、フルオレン環を形成する2つのベンゼン環における置換数、置換位置および置換基の種類は、それぞれ互いに同一又は異なっていてもよい。
R2で表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基である。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基が挙げられる。アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)などのモノ乃至トリC1-4アルキル-フェニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
置換数mは0又は1のいずれであってもよいが、副反応や着色を抑制できる点から、1であるのが好ましい。mが1である場合、R2はアルキル基、フェニル基などのアリール基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基であってもよく、調製が容易で生産性を向上できる点から、アルキル基が好ましい。なかでも、炭素数が少ない炭化水素基が好ましく、例えば直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、より好ましい範囲としては、以下段階的に、直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルキル基、C1-2アルキル基であり、メチル基が特に好ましい。また、高い屈折率を維持しつつ、融点を低減して取り扱い性を向上できる点からは、R2は、アルキル基、シクロアルキル基などの脂肪族炭化水素基が好ましく、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、C5-10シクロアルキル基である。これらのうち、直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基などのアルキル基が好ましく、なかでも、直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルキル基が好ましく、特に好ましくはC1-2アルキル基であり、メチル基が最も好ましい。本発明では、R2が屈折率を向上し易いアリール基などの芳香族炭化水素環骨格を有する基でなくても、意外にも屈折率が高いため、高い屈折率と取り扱い性とをバランスよく両立できる。
Zで表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)は、ベンゼン環などの単環式アレーン環や多環式アレーン環(多環式芳香族炭化水素環)などが挙げられる。多環式アレーン環としては、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環、具体的には、ナフタレン環などの縮合二環式C10-16アレーン環など;縮合三環式アレーン環、具体的には、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10-16アレーン環が挙げられ、さらに好ましくは縮合多環式C10-14アレーン環が挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環集合アレーン環としては、例えば、ビアレーン環、具体的には、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環などのビC6-12アレーン環など;テルアレーン環、具体的には、テルフェニレン環などのテルC6-12アレーン環などが例示できる。前記フェニルナフタレン環としては、例えば、1-フェニルナフタレン環、2-フェニルナフタレン環などが挙げられる。好ましい環集合アレーン環としては、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環などのビC6-10アレーン環が挙げられ、特にビフェニル環が好ましい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、ナフタレン環骨格などの縮合多環式アレーン環骨格を含む環集合アレーン環は、環集合アレーン環に分類する。
環Zのうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環が好ましく、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環であり、生産性に優れ、着色を抑制しつつ、高い屈折率及び取り扱い性のバランスに優れる観点から、ベンゼン環が特に好ましい。
フルオレン環の9位に結合する環Zの置換位置としては、例えば、環Zがベンゼン環である場合、通常、環Zにおける(メタ)アクリロイル基含有基(すなわち、基[-C(=O)-(OA)p-O-C(=O)-CR4=CH2])の置換位置に対して、o位またはp位であるのが好ましく、p位がさらに好ましい。
R3で表される置換基(非反応性基又は非ラジカル重合性基)としては例えば、炭化水素基又は基[-Ra]、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基など;基[-ORa](式中、Raは前記炭化水素基を示す)、具体的には、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基など;基[-SRa](式中、Raは前記炭化水素基を示す)、具体的には、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基など;アシル基、具体的には、アセチル基などのC1-6アルキル-カルボニル基など;ニトロ基;シアノ基;モノ又はジ置換アミノ基、具体的には、ジアルキルアミノ基、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基などが挙げられる。
前記Raで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基が挙げられ、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基である。前記Raで表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基が挙げられる。前記Raで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基が挙げられる。アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)などのモノ乃至トリC1-4アルキル-フェニル基が挙げられる。前記Raで表されるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基が挙げられる。
前記基[-ORa]として具体的には、前記炭化水素基Raの例示に対応する基が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基が挙げられる。シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基が挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基が挙げられる。
前記基[-SRa]として具体的には、前記炭化水素基Raの例示に対応する基が挙げられる。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基が挙げられる。シクロアルキルチオ基としては、例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基が挙げられる。アリールチオ基としては、例えば、チオフェノキシ基(又はフェニルチオ基)などのC6-10アリールチオ基が挙げられる。アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基が挙げられる。
モノ又はジ置換アミノ基において、ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基が挙げられる。ビス(アルキルカルボニル)アミノ基としては、例えば、ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基が挙げられる。
これらの基R3のうち、代表的には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。nが1以上である場合、好ましい基R3としては、アルキル基、具体的には、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基;アリール基、具体的には、フェニル基などのC6-14アリール基;アルコキシ基、具体的には、メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基が挙げられ、なかでも、アルキル基、アリール基が好ましく、特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基、フェニル基などのC6-10アリール基が好ましい。なお、基R3がアリール基であるとき、基R3は、環Zとともに前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換数nが2以上である場合、環Zに置換する2以上の基R3の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
基R3の置換数nは、環Zの種類に応じて適宜選択でき、例えば0~8程度の整数であってもよく、好ましくは以下段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、さらに好ましくは0又は1、特に0である。基R3の置換位置は、特に制限されず、環Zとフルオレン環の9位との結合位置、及び環Zと(メタ)アクリロイル基含有基(すなわち、基[-C(=O)-(OA)p-O-C(=O)-CR4=CH2])との結合位置以外の位置に置換していればよい。
前記(メタ)アクリロイル基含有基は、環Zの適当な位置に置換でき、環Zがベンゼン環である場合には、好ましくは2位又は4位、さらに好ましくは4位である。
Aで表される直鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状C2-6アルキレン基が挙げられ、好ましくは直鎖状C2-4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2-3アルキレン基、特にエチレン基であり、分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、プロピレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基などの分岐鎖状C3-6アルキレン基が挙げられ、好ましくは分岐鎖状C3-4アルキレン基であり、特にプロピレン基が好ましい。これらのアルキレン基Aのうち、好ましくは以下段階的に、直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキレン基、直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基であり、なかでも、エチレン基、プロピレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。なお、繰り返し数pが2以上である場合、ポリオキシアルキレン基を形成する2以上の基Aの種類は、互いに異なっていてもよいが、同一であることが多い。
オキシアルキレン基(-OA-)の繰り返し数pは、例えば1~20程度の範囲の整数から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1~15、1~10、1~8、1~5、1~3、1~2であり、特に1であることが多い。なお、繰り返し数pは平均値(又は相加平均値、算術平均値)、すなわち、平均付加モル数であってもよく、その範囲は、好ましい態様を含めて前記整数の範囲と同様である。繰り返し数pの値が大きすぎると、高屈折率、高耐熱性などの特性が低下するおそれがある。
なお、繰り返し数pは、慣用の方法で測定することができ、例えば、原料のヒドロキシ化合物に所定のアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)を反応させて(ポリ)アルキレンオキシ基を形成する際に、ヒドロキシ化合物の量(又は水酸基価)と、反応で消費されるアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)の量との割合から、相加平均又は算術平均の値として算出する方法、例えば、特開2013-53310号公報記載の方法などにより測定できる。
R4は水素原子又はメチル基のいずれであってもよいが、屈折率や硬化性を向上し易い点から、通常、水素原子であることが多い。
式(1)で表される代表的な化合物としては、例えば、9-[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシカルボニルアリール]-9-アルキルフルオレン類、9-[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ)カルボニルアリール]-9-シクロアルキルフルオレン類、9-[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ)カルボニルアリール]-9-アリールフルオレン類、9-[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ)カルボニルアリール]-9-アラルキルフルオレン類などが挙げられる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「(ポリ)アルコキシ」は、アルコキシ基及びポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
9-[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシカルボニルアリール]-9-アルキルフルオレン類としては、例えば、9-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)カルボニルフェニル]-9-メチルフルオレン、9-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)カルボニルフェニル]-9-メチルフルオレン、9-[4-(4-(メタ)アクリロイルオキシブトキシ)カルボニルフェニル]-9-メチルフルオレン、9-[4-(2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)カルボニルフェニル]-9-メチルフルオレンなどの9-[(メタ)アクリロイルオキシ(モノ乃至デカ)C2-6アルコキシ)カルボニルC6-10アリール]-9-C1-6アルキル-フルオレンなどが挙げられる。
9-[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ)カルボニルアリール]-9-シクロアルキルフルオレン類としては、例えば、9-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)カルボニルフェニル]-9-シクロヘキシルフルオレンなどの9-[(メタ)アクリロイルオキシ(モノ乃至デカ)C2-6アルコキシ)カルボニルC6-10アリール]-9-C5-10シクロアルキル-フルオレンなどが挙げられる。
9-[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ)カルボニルアリール]-9-アリールフルオレン類としては、例えば、9-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)カルボニルフェニル]-9-フェニルフルオレンなどの9-[(メタ)アクリロイルオキシ(モノ乃至デカ)C2-6アルコキシ)カルボニルC6-10アリール]-9-C6-12アリール-フルオレンなどが挙げられる。
9-[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ)カルボニルアリール]-9-アラルキルフルオレン類としては、例えば、9-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)カルボニルフェニル]-9-ベンジルフルオレンなどの9-[(メタ)アクリロイルオキシ(モノ乃至デカ)C2-6アルコキシ)カルボニルC6-10アリール]-9-C6-12アリールC1-6アルキル-フルオレンなどが挙げられる。
好ましい式(1)で表される化合物としては、9-[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシカルボニルアリール]-9-アルキルフルオレン類、9-[(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシ)カルボニルアリール]-9-シクロアルキルフルオレン類であり、なかでも、9-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)カルボニルフェニル]-9-メチルフルオレンなどの9-[(メタ)アクリロイルオキシ(モノ乃至ヘキサ)C2-4アルコキシ)カルボニルフェニル]-9-C1-4アルキル-フルオレンが挙げられる。
式(1)で表される単官能性(メタ)アクリレートは、単官能性であっても(またはフルオレン骨格の9位に2つのアリール基が置換していなくても)高い屈折率を有し、かつ着色が抑制されている。
また、式(1)で表される単官能性(メタ)アクリレートの融点は、例えば、30~100℃であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、40~90℃、50~80℃、55~75℃、60~70℃、62~67℃であり、さらに好ましくは64~65℃である。融点が高すぎると、少しの加熱では十分な流動性が得られずに取り扱い性又は成形性が低下するおそれがあり、流動性を確保するために高温に加熱すると着色(又は黄変)するおそれもある。また、融点が低すぎると、常温で液状又は粘稠液状となり、使用時に計量し難く取り扱い性が低下するおそれがある。
[式(1)で表される単官能性フルオレン化合物の製造方法]
前記式(1)で表される化合物の製造方法は、特に制限されないが、代表的には、下記反応工程式などに従って調製できる。
(式中、X1はハロゲン原子、X2はヒドロキシル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示し、Z、R1、R2、R3、R4、A、k、m、n及びpは好ましい態様を含めて前記に同じである)。
(式(2b)で表される化合物の調製)
式(2b)で表される化合物は、例えば、(i)式(4)で表される化合物と、式(5a)で表される化合物とを反応させ、得られた式(2a)で表される化合物を加水分解する方法;(ii)式(4)で表される化合物と、式(5b)で表される化合物とを反応させる方法などにより調製してもよい。
式(5a)又は(5b)で表される化合物との反応に供する式(4)で表される化合物において、R2の置換数mは1であってもよいが、反応性を向上し易い点から、通常、0であることが多い。式(4)で表される化合物として、代表的には、9H-フルオレン、9-メチルフルオレン、9-フェニルフルオレンなどが挙げられ、好ましくは9H-フルオレンである。
式(5a)又は(5b)で表される化合物において、X1で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、通常、臭素原子又はヨウ素原子であることが多く、1置換体を選択的に調製し易い点から、臭素原子が好ましい。
式(5b)で表される化合物において、X2で表されるアルコキシ基としては、例えば、低級アルコキシ基、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基などが挙げられ、通常、t-ブトキシ基であることが多い。
また、X2で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、通常、塩素原子又は臭素原子であることが多い。なお、式(5b)で表される化合物において、式(2b)で表される化合物を容易に調製し易い点から、X2はアルコキシ基であるのが好ましい。
式(5a)又は(5b)で表される化合物において、環ZにおけるX1の置換位置は、前記式(1)の環Zにおけるフルオレンの9位との結合位置と好ましい態様を含めて同様であり、環Zにおけるシアノ基又は基[-C(=O)-X2]の置換位置は、それぞれ、前記式(1)の環Zにおける(メタ)アクリロイル基含有基との結合位置と好ましい態様を含めて同様であり、環ZにおけるR3の置換位置は、好ましい態様を含めて前記式(1)と同様である。
式(5a)で表される化合物として、代表的には、p-ブロモベンゾニトリル、p-ヨードベンゾニトリルなどのハロ-シアノC6-10アレーンなどが挙げられる。
式(5b)で表される化合物として、代表的には、X2がアルコキシ基である化合物、例えば、p-ブロモ安息香酸メチル、p-ブロモ安息香酸t-ブチル、p-ヨード安息香酸t-ブチルなどのハロ-(C1-4アルコキシ-カルボニル)C6-10アレーンなどが挙げられる。
式(5a)又は(5b)で表される化合物の使用割合は、式(4)で表される化合物1モルに対して、例えば、1~10モル程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.3~8モル、1.5~6モル、1.8~5モル、2~4.5モル、2.3~4モルであり、さらに好ましくは2.5~3.5モルである。
式(4)で表される化合物と、式(5a)又は(5b)で表される化合物との反応は、通常、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、例えば、アミン類、第4級アンモニウム金属アルコキシド、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物(グリニャール試薬)、有機酸塩などの有機塩基;金属炭酸塩又は炭酸水素塩、金属水酸化物、金属水素化物などの無機塩基などが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンなどが挙げられる。脂肪族アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンなどの脂肪族第3級アミンなどが挙げられる。芳香族アミンとしては、例えば、N,N-ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミンなどが挙げられる。複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、ルチジン、コリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、4-ピロリジノピリジン、1-メチルピペリジン、1-エチルピペリジン、1,2,2’,6,6’-ペンタメチルピペリジン、1-メチルピロリジン、イミダゾール、2,6-ジメチルピペラジン、4-メチルモルホリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなど)などが挙げられる。
前記第4級アンモニウム水酸化物としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの水酸化テトラアルキルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどが挙げられる。
前記金属アルコキシドとしては、例えば、カリウムt-ブトキシドなどのアルカリ金属C1-6アルコキシドなどが挙げられる。
前記有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウムなどのアルキルリチウム;フェニルリチウムなどのアリールリチウム;リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウム2,2,6,6-テトラメチルピペラジド(LiTMP)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)などのリチウムアミドなどが挙げられる。
前記有機マグネシウム化合物(グリニャール試薬)としては、例えば、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムブロミド、t-ブチルマグネシウムブロミドなどのアルキルマグネシウムハライド;シクロプロピルマグネシウムブロミド、シクロペンチルマグネシウムブロミドなどのシクロアルキルマグネシウムハライド;フェニルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムヨージドなどのアリールマグネシウムハライド;ベンジルマグネシウムブロミドなどのアラルキルマグネシウムハライドなどが挙げられる。
前記有機酸塩としては、例えば、酢酸ナトリウムなどの有機酸金属塩などが挙げられる。
前記金属炭酸塩又は炭酸水素塩としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩などが挙げられる。
前記金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物などが挙げられる。
前記金属水素化物としては、例えば、水素化ナトリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物などが挙げられる。
これらの塩基は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの塩基のうち、金属アルコキシド、なかでも、カリウムt-ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドが好ましい。
塩基の使用割合は、式(4)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.1~20モル程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.5~15モル、1~10モル、1.5~8モル、2~8モル、3~7モル、4~6モルであり、さらに好ましくは4.5~5.5モルである。また、塩基の使用割合は、式(4)で表される化合物100質量部に対して、例えば、10~1000質量部、50~800質量部、100~600質量部、150~530質量部、200~480質量部、250~430質量部、300~380質量部であり、さらに好ましくは330~350質量部である。塩基の割合が少なすぎると、反応が十分に進行しないおそれがあり、塩基の割合が多すぎると、mが0である場合、式(4)で表される化合物1つに対して式(5a)又は(5b)で表される化合物が複数反応した2置換体などの副生成物が増加して、目的物の1置換体(式(2a)又は(2b)で表される化合物)の収率が低下するおそれがある。
また、式(4)で表される化合物と、式(5a)又は(5b)で表される化合物との反応は、目的物の1置換体の収率を選択的に向上するために、通常、触媒の存在下で行われる。触媒としては、例えば、ハロゲン化亜鉛、ジアルキル亜鉛などの2価の亜鉛化合物が挙げられ、通常、これらの2価の亜鉛化合物から選択される少なくとも1種の亜鉛化合物の存在下で反応させることが多い。中でもハロゲン化亜鉛は、パラジウムや配位子を含む金属触媒などに比べて、有機層に溶け難く反応終了後に洗浄などにより除去し易いため、目的とするフルオレン化合物から金属不純物の含有量を有効に低減できる。
ハロゲン化亜鉛としては、例えば、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛などが挙げられる。ジアルキル亜鉛としては、例えば、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などのジC1-6アルキル亜鉛などが挙げられる。これらの触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
これらの亜鉛化合物のうち、ハロゲン化亜鉛が好ましく、なかでも、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛が好ましく、特に、塩化亜鉛が好ましい。
触媒の使用割合は、式(4)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.5~10モル程度、より具体的には0.55~9モル程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.6~8モル、0.65~7モル、0.7~6モル、0.75~5.5モル、0.8~5モル、0.85~4.5モル、0.9~4モル、0.95~3.5モル、1~3モル、1.1~2.5モル、1.2~2モル、1.3~1.8モルであり、さらに好ましくは1.4~1.6モルである。触媒の割合が少なすぎると、目的物の1置換体の収率が低下するおそれがある。2価の亜鉛化合物がハロゲン化亜鉛である場合、その使用割合が式(1)で表される化合物1モルに対して1モル以上であると、目的物の1置換体をより選択的に(効率よく)得易いようである。
また、2価の亜鉛化合物と塩基との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/0.5~1/20程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1/1~1/10、1/1.5~1/8、1/2~1/7、1/2.3~1/6.5、1/2.5~1/6、1/2.6~1/5.8、1/2.8~1/5.5であり、さらに好ましくは1/3~1/5.3である。塩基の割合が触媒に対して少なすぎると、反応が十分に進行しないおそれがある。塩基の割合が触媒に対して多すぎると、副反応が起き易くなるおそれがあり、特にmが0である場合、2置換体などの副生成物が増加するおそれがある。
式(4)で表される化合物と、式(5a)又は(5b)で表される化合物との反応は、溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、溶媒中で行うことが多い。溶媒としては、非プロトン性極性溶媒、例えば、エーテル類、ケトン類、エステル類、カーボネート類、アミド類、尿素類、ニトリル類、ニトロ化炭化水素類、ホスホルアミド類、スルホン類、スルホキシド類などが挙げられる。
前記エーテル類としては、例えば、鎖状エーテル類、環状エーテル類などが挙げられる。鎖状エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのジC1-6アルキルエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどの(モノ乃至ヘキサ)C2-4アルキレングリコールジC1-6アルキルエーテルなどが挙げられる。環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソランなどが挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、鎖状ケトン類、環状ケトン類などが挙げられる。鎖状ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのジC1-6アルキル-ケトンなどが挙げられる。環状ケトン類としては、例えば、シクロヘキサノンなどのC5-10シクロアルカノンなどが挙げられる。
前記エステル類としては、例えば、鎖状エステル類、環状エステル類(又はラクトン類)などが挙げられる。鎖状エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのC2-6アルカン酸C1-6アルキルエステルなどが挙げられる。ラクトン類としては、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン(又はγ-ヘキサノラクトン)などの5~7員環ラクトンなどが挙げられる。
前記カーボネート類としては、例えば、鎖状カーボネート類、環状カーボネート類などが挙げられる。鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(又は炭酸ジメチル)、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(又は炭酸ジエチル)などのジC1-6アルキル-カーボネートなどが挙げられる。環状カーボネート類としては、例えば、エチレンカーボネート(又は炭酸エチレン)、プロピレンカーボネート(又は炭酸プロピレン)などのジ乃至テトラメチレンカーボネートなどが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、鎖状アミド類、環状アミド類(又はラクタム類)などが挙げられる。鎖状アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)などのN,N-ジC1-6アルキル-C1-6アルカン酸アミドなどが挙げられる。環状アミド類としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドンなどの5~7員環ラクタムなどが挙げられる。
前記尿素類(又はウレア類)としては、例えば、鎖状尿素類、環状尿素類などが挙げられる。鎖状尿素類としては、例えば、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、テトライソプロピル尿素などのテトラC1-6アルキル-尿素などが挙げられる。環状尿素類としては、例えば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI又はN,N’-ジメチルエチレン尿素)、N,N’-ジメチル-N,N’-トリメチレン尿素(又はN,N’-プロピレン尿素)などのN,N’-ジC1-6アルキル-N,N’-ジ乃至テトラメチレン尿素などが挙げられる。
前記ニトリル類としては、例えば、シアン化炭化水素、具体的には、アセトニトリル、プロピオノニトリルなどのシアン化C1-6アルカン、ベンゾニトリルなどのシアン化アレーンなどが挙げられる。
前記ニトロ化炭化水素類としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパンなどのニトロC1-6アルカン、ニトロベンゼンなどのニトロアレーンなどが挙げられる。
前記ホスホルアミド類としては、例えば、ヘキサメチルホスホルアミドなどのヘキサC1-6アルキルホスホルアミドなどが挙げられる。
前記スルホン類としては、例えば、鎖状スルホン類、環状スルホン類などが挙げられる。鎖状スルホン類としては、例えば、エチルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホンなどのジC1-6アルキルスルホンなどが挙げられる。環状スルホン類としては、例えば、スルホラン(又はテトラメチレンスルホン若しくはテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド)などのトリ乃至ヘキサメチレンスルホン類などが挙げられる。
前記スルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのジC1-6アルキルスルホキシドなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、DMFなどのアミド類、DMSOなどのスルホキシド類、なかでも、DMFなどのアミド類がよく利用される。溶媒の使用量は、特に制限されず、反応系を均一に分散させて効率よく反応できる程度であればよく、例えば、式(4)で表される化合物100質量部に対して、100~10000質量部程度、好ましくは1000~5000質量部、さらに好ましくは2000~4000質量部である。
式(4)で表される化合物と、式(5a)又は(5b)で表される化合物との反応は、通常、窒素ガスや希ガスなど不活性雰囲気中で行ってもよく、常圧又は加圧下で行ってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよい。反応温度は、例えば、0~200℃程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、20~150℃、50~120℃、60~100℃、70~90℃、75~85℃である。反応温度が高すぎると副反応が起き易くなるおそれがあり、特にmが0である場合、2置換体などの副生成物の割合が増加するおそれがある。なお、反応温度が比較的低くても、効率よく反応が進行するようである。また、反応時間は、特に制限されず、例えば、30分~48時間程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、1~24時間、2~12時間、2.5~6時間である。
反応終了後の反応混合物(反応液又は反応混合液)は、慣用の精製又は分離手段、例えば、濾過、濃縮、抽出、中和、洗浄、乾燥、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなど手段や、これらを組み合わせた手段により精製してもよい。
(式(2a)で表される化合物の加水分解)
なお、前記方法(i)により、式(2a)で表される化合物を合成した場合、この化合物をさらに慣用の方法で加水分解、例えば、酸又は塩基の存在下で加水分解することにより式(2b)において、X2がヒドロキシル基である化合物を調製できる。
酸としては、例えば、無機酸;有機酸;三フッ化ホウ素エーテラート、四塩化スズなどのルイス酸;陽イオン交換樹脂などの固体酸触媒などが挙げられる。前記無機酸としては、例えば、強酸、具体的には、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸など;ホモ又はヘテロポリ酸、具体的には、タングストリン酸、モリブドリン酸、タングストケイ酸、モリブドケイ酸などが挙げられる。前記有機酸としては、例えば、スルホン酸、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのフッ化アルカンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸などが挙げられる。これらの酸触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
塩基としては、例えば、式(4)で表される化合物と、式(5a)又は(5b)で表される化合物との反応において例示した塩基などが挙げられ、これらの塩基は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
これらのうち、通常、塩基、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物などがよく利用される。酸又は塩基の割合は、式(2a)で表される化合物のシアノ基1モルに対して、例えば、1~100モル程度であってもよく、好ましくは10~70モル、さらに好ましくは30~50モルである。
なお、水の割合は、式(2a)で表される化合物のシアノ基1モルに対して、2モル以上であればよく、式(2a)で表される化合物100質量部に対して、100~5000質量部程度であってもよい。通常、水は、酸又は塩基の水溶液の形態で反応系に加えられることが多い。
加水分解反応は、相間移動触媒の存在下で行ってもよい。相間移動触媒としては、例えば、有機アンモニウム化合物(又は第4級アンモニウム化合物)、具体的には、テトラアルキルアンモニウムハライド、トリアルキルアラルキルアンモニウムハライドなどの有機アンモニウムハライド;テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、トリアルキルアラルキルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
前記テトラアルキルアンモニウムハライドとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどのテトラC1-8アルキルアンモニウムハライドなどが挙げられる。前記トリアルキルアラルキルアンモニウムハライドとしては、トリエチルベンジルアンモニウムクロリドなどのトリC1-8アルキル-C6-10アリールC1-4アルキルアンモニウムハライドなどが挙げられる。
前記テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラC1-8アルキルアンモニウムハライドなどが挙げられる。前記トリアルキルアラルキルアンモニウムヒドロキシドとしては、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシドなどのトリC1-8アルキル-C6-10アリールC1-4アルキルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
これらの相間移動触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの相間移動触媒のうち、有機アンモニウムハライド、具体的には、トリエチルベンジルアンモニウムクロリドなどのトリアルキルアラルキルアンモニウムハライドがよく利用される。
相間移動触媒の割合は、前記式(2a)で表される化合物のシアノ基1モルに対して、例えば、0.001~1モル程度であってもよく、好ましくは0.1~0.5モル、さらに好ましくは0.2~0.4モル程度である。
加水分解反応は、溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、溶媒中で行うことが多い。溶媒としては、例えば、アルコール類、具体的には、メタノール、エタノールなどのC1-4アルコール類などが挙げられる。溶媒の使用量は、反応が効率よく進行する程度であれば特に制限されない。
加水分解反応は、通常、窒素ガスや希ガスなど不活性雰囲気中で行ってもよく、常圧又は加圧下で行ってもよい。また、反応は、攪拌しながら行ってもよい。反応温度は、例えば、10~100℃程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、20~100℃、50~99℃、70~97℃、75~95℃、80~90℃である。なお、反応は還流温度で行ってもよい。また、反応時間は、特に制限されず、例えば、1~48時間程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、12~36時間、18~24時間である。
加水分解反応終了後の反応混合物(反応液又は反応混合液)は、慣用の精製又は分離手段、例えば、濾過、濃縮、抽出、中和、洗浄、乾燥、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなど手段や、これらを組み合わせた手段により精製してもよい。
(式(1)で表される化合物の調製)
式(1)で表される化合物は、式(2b)で表される化合物と、式(3)で表される化合物とを反応させる方法などにより調製してもよい。
式(2b)で表される化合物において、副反応や着色を抑制できる点から、mは1であるのが好ましい。なお、式(2a)又は(2b)においてmが0である場合、後述するように、式(2a)又は(2b)においてmが0である化合物と、R2の炭化水素基に対応するハロゲン化炭化水素とを反応させることによりR2を導入してもよい。
また、式(2b)で表される化合物において、X2はヒドロキシル基又はアルコキシ基であることが多い。なお、式(2b)におけるX2は、原料である式(5b)などに由来するX2と同様の基であってもよく、加水分解反応やエステル化反応などの慣用の化学反応により原料とは異なる基に変換されていてもよい。
代表的な式(2b)で表される化合物としては、前記例示の代表的な式(1)で表される化合物に対応する化合物が挙げられ、例えば、9-(4-カルボキシフェニル)-9-メチルフルオレンなどの9-(カルボキシアリール)-9-アルキルフルオレン、9-(4-t-ブトキシカルボニルフェニル)-9-メチルフルオレンなどの9-(アルコキシカルボニルアリール)-9-アルキルフルオレンなどが挙げられる。
代表的な式(3)で表される化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2-6アルキル(メタ)アクリレート又はそのC2-6アルキレンオキシド(又は対応するアルキレンカーボネートもしくはハロアルカノール)付加体などが挙げられる。好ましい式(3)で表される化合物は、pが1である化合物、なかでも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートである。
式(3)で表される化合物の使用割合は、式(2b)で表される化合物1モルに対して、例えば、1~2モル程度であればよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1~1.5モル、1~1.2モル、1~1.1モルである。
前記式(2b)において、X2がヒドロキシル基又はアルコキシ基である場合、反応は、慣用のエステル化触媒を使用してもよい。触媒としては、酸触媒;塩基触媒;チタン(IV)テトライソプロポキシドなどのチタン(IV)アルコキシドなどが挙げられる。前記酸触媒としては、例えば、前記加水分解の項に例示の酸などが挙げられる。これらの触媒のうち、塩基触媒を好適に使用できる。
前記塩基触媒としては、例えば、式(4)で表される化合物と、式(5a)又は(5b)で表される化合物との反応において例示の塩基などが挙げられる。これらの塩基触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの塩基触媒のうち、N,N-ジメチルアミノピリジンなどのアミン類などがよく利用される。
触媒の使用割合は、式(2b)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.01~1モル程度であればよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.05~0.5モル、0.1~0.4モル、0.15~0.3モルである。
反応は、縮合剤の存在下で行ってもよい。縮合剤としては、慣用の縮合剤、例えば、カルボジイミド類などが挙げられる。カルボジイミド類としては、例えば、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジ-t-ブチルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(WSC又はEDC)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(WSC・HCl又はEDC・HCl)、1,3-ビス(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イルメチル)カルボジイミド(BDDC)、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)-カルボジイミド メト-p-トルエンスルホネート(CMC)、ポリマー担持型カルボジイミドなどが挙げられる。
これらの縮合剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの縮合剤のうち、DCC、WSC、WSC・HClなどがよく利用される。縮合剤の使用割合は、式(2b)で表される化合物1モルに対して、例えば、1~3モル程度であればよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.1~2モル、1.2~1.8モル、1.3~1.5モルである。
加水分解反応は、溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、溶媒中で行うことが多い。溶媒としては、例えば、アルコール類、具体的には、メタノール、エタノールなどのC1-4アルコール類などが挙げられる。溶媒の使用量は、反応が効率よく進行する程度であれば特に制限されない。
反応は、熱重合禁止剤の存在下又は非存在下で行ってもよく、必要に応じて、反応終了後に熱重合禁止剤を添加してもよい。熱重合禁止剤としては、例えば、ベンゾキノン;ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、t-ブチルヒドロキノン、p-ベンゾキノンなどのヒドロキノン類;p-t-ブチルカテコール、2-メトキシフェノールなどのカテコール類;N,N-ジエチルヒドロキシルアミンなどのアミン類;1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル;トリ-p-ニトロフェニルメチル;フェノチアジンなどが挙げられる。熱重合禁止剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの熱重合禁止剤のうち、2-メトキシフェノールなどのカテコール類がよく利用される。
熱重合禁止剤の割合は、前記式(3)で表される化合物100質量部に対して、例えば、0.001~10質量部程度であってもよく、反応により得られる前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、例えば、0.0001~0.1質量部程度であってもよい。
反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など;ハロゲン化炭化水素類、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼンなど;エーテル類、具体的には、ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類など;ケトン類、具体的には、アセトン、メチルエチルケトンなど;スルホキシド類、具体的には、ジメチルスルホキシドなど;アミド類、具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなど;アセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの溶媒のうち、THFなどのエーテル類がよく利用される。溶媒の割合は特に制限されず、前記式(2b)で表される化合物及び前記式(3)で表される化合物の総量100質量部に対して、例えば、100~1000質量部程度であってもよく、通常、400~600質量部である。
反応は、空気中又は窒素ガス、希ガスなどの不活性雰囲気中、攪拌しながら行うことができ、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。また、反応時の不測の重合を効果的に防止するために、反応液中に空気を吹き込みながら行ってもよい。
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択でき、前記式(2b)においてX2がハロゲン原子である場合、反応温度は、例えば、-10℃~30℃、好ましくは0~20℃、さらに好ましくは2~10℃である。前記式(2b)においてX2がヒドロキシル基又はアルコキシ基である場合、反応温度は、例えば、50~150℃、好ましくは80~130℃、さらに好ましくは100~120℃であってもよく、縮合剤を用いる場合、例えば、10~70℃、好ましくは20~60℃、さらに好ましくは30~50℃である。なお、反応は、還流温度で行ってもよい。反応時間は、特に制限されず、例えば、1~48時間程度、好ましくは12~36時間である。
反応終了後、生成した前記式(1)で表される化合物は、慣用の方法、例えば、中和、洗浄、脱水、ろ過、吸着、濃縮、乾燥、抽出、晶析、再結晶、再沈殿、遠心分離、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段や、これらを組み合わせた手段により分離精製してもよい。
なお、式(1)におけるR1、R2、R3などの置換基は、前記反応工程式に記載のように原料である式(4)、(5a)及び/又は(5b)で表される化合物が有していてもよく、式(1)で表される化合物を調製するまでのいずれかの段階で化学反応により導入してもよい。例えば、R2の場合、式(2a)又は(2b)において、mが0である化合物と、式(6)R2-X3(式中、R2は炭化水素基、X3はハロゲン原子を示す)で表されるハロゲン化炭化水素とを反応させることにより、炭化水素基R2を導入してもよい。このように式(4)においてmが0である化合物を用い、後からR2を導入すると、R2の立体障害による式(5a)または(5b)で表される化合物との反応性低下を防止できる点で好ましい。
前記式(6)において、X3で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、ヨウ素原子であることが多い。代表的な式(6)で表される化合物としては、式(1)の項に例示した具体的な炭化水素基R2に対応するハロゲン化炭化水素が挙げられ、例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化シクロアルキル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アラルキルなどが挙げられる。これらのうち、ヨウ化メチルなどのハロゲン化アルキルがよく利用される。
式(6)で表されるハロゲン化炭化水素の使用割合は、式(2a)又は(2b)で表される化合物1モルに対して、例えば、1~20モル程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.5~10モル、2~5モル、2.5~3.5モルであり、通常、5~7モルであってもよい。
式(2a)又は(2b)で表される化合物と、式(6)で表される化合物との反応は、塩基の存在下で行ってもよい。塩基としては、例えば、式(4)で表される化合物と、式(5a)又は(5b)で表される化合物との反応において例示した塩基などが挙げられる。これらの塩基は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの塩基のうち、カリウムt-ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなどがよく利用される。
塩基の使用割合は、式(2a)又は(2b)で表される化合物1モルに対して、例えば、1~10モル程度であればよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.5~8モル、2~6モル、2.5~5.5モル、3~5モル、3.5~4.5モルである。
式(2a)又は(2b)で表されると、式(6)で表される化合物との反応は、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、例えば、式(4)で表される化合物と、式(5a)又は(5b)で表される化合物との反応において例示した非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、DMFなどのアミド類などがよく利用される。溶媒の使用割合は特に制限されず、例えば、前記式(2a)又は(2b)で表される化合物100質量部に対して、例えば、100~3000質量部程度であってもよく、好ましくは500~2000質量部である。
式(2a)又は(2b)で表されると、式(6)で表される化合物との反応は、通常、窒素ガス、希ガスなどの不活性雰囲気中、攪拌しながら行うことができ、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。反応温度は、例えば、0~100℃、好ましくは10~50℃、さらに好ましくは20~35℃である。反応時間は特に制限されず、例えば、1~48時間程度、好ましくは12~36時間である。反応終了後、反応生成物は、慣用の方法、例えば、中和、洗浄、脱水、ろ過、吸着、濃縮、乾燥、抽出、晶析、再結晶、再沈殿、遠心分離、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段や、これらを組み合わせた手段により分離精製してもよい。
[式(1)で表される化合物を含む組成物およびその重合体]
前記式(1)で表される単官能性フルオレン化合物は、融点が適度に低いため、室温下では固体状の形態をとることができ、かつ少しの加熱で容易に流動性を向上できるため、重合成分または反応性希釈剤などとして無溶剤系で用いることもできる。そのため、本発明は、前記式(1)で表される単官能性フルオレン化合物を含む重合性組成物(または硬化性組成物)およびその重合体(または硬化物)も包含する。
(重合性組成物)
前記重合性組成物は、少なくとも前記式(1)で表される化合物を含んでいればよく、他の重合成分(または共重合成分)を含んでいなくてもよく、必要に応じて含んでいてもよい。共重合成分としては、単官能性の重合成分であってもよく、多官能性の重合成分であってもよい。
前記単官能性の重合成分(又は反応性希釈剤)としては、特に制限されず、重合性基(又は重合性不飽和結合)、例えば、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、(メタ)アクリロイル基などを1つ有する化合物であればよく、具体的には、単官能性ビニル系モノマー;単官能性(メタ)アクリル系モノマーなどが挙げられる。単官能性ビニル系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレンなどのα-オレフィン系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;N-ビニルピロリドンなどが挙げられる。単官能性(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN-置換(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;単官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの単官能性の重合成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの単官能性の重合成分のうち、単官能性(メタ)アクリル系モノマー、なかでも、単官能性(メタ)アクリレートがよく利用される。
単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、脂肪族単官能性(メタ)アクリレート;脂環族単官能性(メタ)アクリレート;芳香族単官能性(メタ)アクリレート;硫黄原子を含有する単官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
脂肪族単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのC1-20アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
脂環族単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのC5-10シクロアルキル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの橋架け環式(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香族単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート、具体的には、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(o-フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのC6-12アリールオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど;ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体のモノ(メタ)アクリレートなどのビスフェノール類又はビフェノール類(又はそのアルキレンオキシド付加体)のモノ(メタ)アクリレート;9-(メタ)アクリロイルオキシメチルフルオレンなどのフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
硫黄原子を含有する単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキルチオ(メタ)アクリレート、アリールチオ(メタ)アクリレート、アラルキルチオ(メタ)アクリレート、アリールチオアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アルキルチオ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルチオ(メタ)アクリレートなどのC1-6アルキルチオ(メタ)アクリレートが挙げられる。アリールチオ(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニルチオ(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールチオ(メタ)アクリレートが挙げられる。アラルキルチオ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジルチオ(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールC1-6アルキルチオ(メタ)アクリレートが挙げられる。アリールチオアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニルチオエチル(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールチオC2-4アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
多官能性の重合成分としては、特に制限されず、通常、複数(2以上)の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性(メタ)アクリレートがよく利用される。1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数は、例えば、2~10、好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、なかでも、2~3、特に、2である。
多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート、脂環族エポキシ(メタ)アクリレート、芳香族エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ樹脂のポリ(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレート(ビニルエステル樹脂);ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート(2以上のヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールのポリ(メタ)アクリレート);アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;脂環族ジオールのジ(メタ)アクリレート;ビフェノール類もしくはビスフェノール類又はそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)付加体のジ(メタ)アクリレート;3~6個程度のヒドロキシル基を有する低分子量ポリオール化合物又はそのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)付加体のポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、市販品を利用してもよい。
前記脂肪族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記脂環族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルネンジメタノール、アダマンタンジオール、アダマンタンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノールなどのC5-15脂肪族炭化水素環を有するジオールに対応するエポキシ化合物(ジグリシジルエーテル)のジ(メタ)アクリレート;水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどの後述する芳香族エポキシ(メタ)アクリレートに記載のビスフェノール類もしくはビフェノール類又はそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)付加体の水添物のジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記芳香族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどの、ビスフェノール類もしくはビフェノール類又はそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)付加体のジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールSが挙げられる。ビフェノール類としては、例えば、p,p’-ビフェノール、m,m’-ビフェノール、o,o’-ビフェノールが挙げられる。
前記アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのC2-10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ乃至ヘキサC2-10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記脂環族ジオールのジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルネンジメタノール、アダマンタンジオール、アダマンタンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノールなどのC5-15脂肪族炭化水素環を有するジオールに対応するジ(メタ)アクリレート;水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートなどの前記芳香族エポキシ(メタ)アクリレートに記載のビスフェノール類もしくはビフェノール類又はそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)付加体の水添物のジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記3~6個程度のヒドロキシル基を有する低分子量ポリオール化合物又はそのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)付加体のポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
(重合成分以外の成分)
硬化性組成物は、重合成分(又はモノマー成分)の他に、必要に応じて、重合開始剤、溶媒、添加剤などをさらに含んでいてもよい。
重合開始剤は熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)であってもよく、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。
熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、ジ-t-ブチルパーオキシドなどのジアルキルパーオキシド類;ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキシド類;t-ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、過酢酸t-ブチルなどの過酸(又は過酸エステル)類;ケトンパーオキシド類;パーオキシカーボネート類;パーオキシケタール類が挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)などのアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物が挙げられる。これらの熱重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンなどのアセトフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノアミノプロパノン-1などのアミノアセトフェノン類;アントラキノン、2-メチルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;キサントン類などが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合開始剤(熱及び/又は光重合開始剤)の割合は、重合成分の総量100質量部に対して0.1~15質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~8質量部、さらに好ましくは2~5質量部である。
また、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤として代表的には、第3級アミン類、例えば、トリアルキルアミン;トリエタノールアミンなどのトリアルカノールアミン;ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、具体的には、p-(ジメチルアミノ)安息香酸エチルなどのN,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルや、p-(ジメチルアミノ)安息香酸アミルなどのN,N-ジメチルアミノ安息香酸アミルなど;4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン;4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノンなどの慣用の光増感剤が挙げられる。これらの光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
光増感剤の割合は、前記重合開始剤100質量部に対して、1~200質量部、好ましくは5~150質量部、さらに好ましくは10~100質量部である。
硬化性組成物は、溶媒を含んでいなくてもよいが、取り扱い性を調整するために、必要に応じて溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、特に限定されず、例えば、炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など;ハロゲン化炭化水素類、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼンなど;エーテル類、具体的には、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類など;ケトン類、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのジアルキルケトン類、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など;エステル類、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など;グリコールエーテルアセテート類、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類など;スルホキシド類、具体的には、ジメチルスルホキシドなど;アミド類、具体的には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなど;ニトリル類、具体的には、アセトニトリルなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせた混合溶媒として使用することもできる。
溶媒の割合は特に制限されず、固形分(溶媒以外の成分)の濃度が、硬化性組成物全体に対して、例えば、0.1~50質量%程度となるように含有させてもよい。
硬化性組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、界面活性剤、可塑剤、硬化剤、重合禁止剤などを含んでいてもよい。前記安定剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
添加剤の割合は、硬化性組成物全体に対して、例えば、30質量%以下、好ましい範囲としては、以下段階的に、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下である。なお、前記割合は、0.001~15質量%、具体的には、0.01~3質量%であってもよい。
(重合体)
本発明の重合体(または硬化物)は、少なくとも下記式(1A)で表される構成単位を含んでいればよい。
(式中、Z、R1、R2、R3、R4、A、k、m、nおよびpは、好ましい態様を含めて前記式(1)に同じ)。
前記重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。重合体において、前記式(1A)で表される構成単位の割合は、構成成分全体に対して、例えば、10モル%程度以上、具体的には30~90モル%程度であってもよい。好ましい範囲としては、以下段階的に、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上であり、通常、100モル%(単独重合体)であることが多い。
また、前記重合体は、ほぼ線状の分子構造を有する重合体(または熱可塑性樹脂)であってもよく、3次元網目状構造を有する重合体(硬化性樹脂)であってもよい。通常、線状の分子構造を有する重合体であることが多い。
前記重合体(または硬化物)は、前記重合性組成物(または硬化性組成物)に活性エネルギー(又は活性エネルギー線)を付与することで容易に硬化させ生成できる。前記活性エネルギーは、熱エネルギー及び/又は光エネルギー、例えば、紫外線、X線などが有用である。
熱エネルギーを利用して加熱処理する場合、加熱温度としては、例えば、50~200℃、好ましくは60~150℃、さらに好ましくは70~120℃である。
また、光エネルギー(例えば、紫外線など)を利用して光照射する場合、光照射エネルギー量は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、50~10000mJ/cm2、好ましくは70~8000mJ/cm2、さらに好ましくは100~5000mJ/cm2、特に、500~3000mJ/cm2である。
硬化物の形状は、特に制限されず、レンズ状、管状などの三次元構造の硬化物であってもよく、フィルム状、シート状、板状などの二次元構造の硬化物(又は硬化膜)、線状又は繊維状、棒状などの一次元構造の硬化物であってもよい。
硬化物の製造方法は、特に限定されず、例えば、硬化物の形状に応じて、前記硬化性組成物を成形又は所定の型内に注型(注入)した後、硬化処理(加熱及び/又は光照射)して製造してもよい。また、二次元構造の硬化物の場合、例えば、前記硬化性組成物を基材又は基板、例えば、アルミニウムなどの金属;酸化チタン、ガラス、石英などの無機材料又はセラミックス;環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂など有機材料又はプラスチック;木材などの多孔質体などに塗布してフィルム状の塗膜(又は薄膜)を形成させた後、硬化処理を施すことにより製造してもよい。
本発明の硬化物は、前記式(1A)で表される構成単位を含むため、高い屈折率を示す。硬化物の温度25℃、波長589nmにおける屈折率(硬化後屈折率)nDは、例えば、1.55~1.7程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.56~1.68、1.57~1.67、1.58~1.66、1.59~1.65、1.6~1.64、1.605~1.635、1.61~1.63であり、さらに好ましくは1.615~1.625である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下に、評価項目及び原料の詳細について示す。
[評価方法]
(HPLC)
HPLC(高性能又は高速液体クロマトグラフ)装置として(株)島津製作所製「LCMS―2020」を用い、カラムとして(株)島津製作所製「KINTEX XB-C18」を用いて、移動相:アセトニトリル/水(体積比)=50/50から95/5まで10分間かけて変化させ、その後95/5で5分保持の条件で測定し、HPLC純度[面積%]を算出した。
(屈折率nD)
得られた化合物を用いて硬化膜(重合体またはポリマー)を作製した後、反射分光膜厚計(大塚電子(株)製「FE-3000」)を用いて、温度25℃、波長589nmにおいて屈折率を測定した。
なお、硬化膜(重合体またはポリマー)は以下のように調製した。得られた化合物100質量部に対して、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア184)を3質量部の割合で添加し、温度65℃で混合した重合性組成物を調製し、得られた重合性組成物を石英ガラス上に塗布し、厚み約100μmの塗膜を形成した。得られた塗膜に、紫外線照射機(H015-L31:アイグラフィックス(株)製)を用いて500mJ/cm2の条件で紫外線を照射し、硬化膜を得た。
(融点)
BUCHI社製「Melting point M-565」を使用して、得られた化合物の融点を測定した。
(1H-NMR)
BRUKER社製「ULTRA SHIELD(登録商標)300」を使用し、溶媒としての重クロロホルム(CDCl3)、標準物質としてのテトラメチルシラン(TMS)を用いて、1H-NMRスペクトルを測定した。
[実施例1]
(9-(4-シアノフェニル)フルオレンの合成)
磁気撹拌子及び三方コックを装着した反応器に、9H-フルオレン(7.61g、45.8mmol)、p-ブロモベンゾニトリル(25.0g、137mmol)、カリウムt-ブトキシド(t-BuOK;25.7g、229mmol)及び塩化亜鉛(ZnCl2;9.36g、68.7mmol)を仕込んで窒素置換した後、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF;230mL)を添加して30分撹拌して分散させた。次いで80℃で3時間撹拌した後、室温まで冷却した。薄層クロマトグラフィー(TLC)分析により、反応終了を確認した。塩化アンモニウム水溶液で中和した後、酢酸エチルを使用して抽出操作を行い、得られた有機層を乾燥することで茶色の固形物を得た。その固形物をHPLCにより分析して、9H-フルオレンの9位に4-シアノフェニル基が1つ置換した目的物(1置換体)が90面積%、前記基が9,9位に2つ置換した9,9-2置換体が3面積%、前記9,9-2置換体とは異なる2置換体が2面積%の割合で含むことを確認した。
油回転ポンプによる減圧下、反応混合物を75℃に加熱してDMFを留去した後、精製水(1200mL)及び酢酸エチル(800mL)を添加して、30分間撹拌してから分液した。水層を酢酸エチル(3×200mL)で抽出した後、有機層を集めて精製水(3×400mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られたろ液(有機層)にシリカゲル(関東化学(株)製「シリカゲル60N 球状中性」;45g)を添加して室温で5分間撹拌後、減圧下(油回転ポンプ)、50℃で濃縮乾固して粗体吸着済シリカゲル(52.2g)を得た。カラムにシリカゲル(関東化学(株)製「シリカゲル60N 球状中性」;244g)、得られた粗体吸着済シリカゲル(52.2g)および硫酸ナトリウム(10g)をこの順序で仕込み、ヘキサン/酢酸エチル(体積比)=85/15を移動相とするクロマトグラフィーにより、9-(4-シアノフェニル)フルオレン(1置換体;5.14g、収率42.0%)が得られた。
(9-(4-シアノフェニル)-9-メチルフルオレンの合成)
磁気撹拌子及び三方コックを装着した反応器に、9-(4-シアノフェニル)フルオレン(4.33g、16.2mmol)を仕込んで窒素置換した後、DMF(60mL)を添加して溶解し、次いで30分間窒素を吹き込んだ。水冷下、カリウムt-ブトキシド(7.44g、66.3mmol)を添加して30分間溶解及び分散させ、次いで、水冷下、ヨウ化メチル(14.4g、101mmol)を5分間かけて滴下し、室温で23時間撹拌した。反応液に精製水(120mL)を添加して撹拌分散させるとともに、塩酸で反応液のpHを3程度に調整した後、クロロホルム(120mL)を添加して15分間撹拌した。分液して水層をクロロホルム(3×20mL)で抽出し、有機層を合わせて精製水(3×200mL)で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ別し、シリカゲル(7.0g)を添加して、60℃で5分間撹拌した後、減圧下(油回転ポンプ)、60℃で濃縮乾固することにより粗体吸着済シリカゲル(11.6g)を得た。カラムにシリカゲル(62.0g)、粗体吸着済シリカゲル(11.6g)及び硫酸ナトリウム(10g)をこの順序で仕込み、ヘキサン/酢酸エチル(体積比)=80/20を移動相とするクロマトグラフィーにより、微黄褐色固体状の9-(4-シアノフェニル)-9-メチルフルオレン(3.22g、収率70.6%)が得られた。
(9-(4-カルボキシフェニル)-9-メチルフルオレンの合成)
磁気撹拌子及び三方コックを装着した反応器に、9-(4-シアノフェニル)-9-メチルフルオレン(3.22g、11.4mmol)、塩化トリエチルベンジルアンモニウム(0.870g、3.82mmol)、エタノール(93mL)及び5N 水酸化ナトリウム水溶液を仕込んで空間部分を窒素置換(窒素ガスでパージ)した後、85℃で19時間撹拌還流させ、室温まで冷却した。反応液に塩酸を添加してpHを2程度に調整した後、減圧下(ダイアフラムポンプ)、50℃でエタノールを留去し、次いでメチルt-ブチルエーテル(150mL)を添加して分液した。水層をメチルt-ブチルエーテル(3×150mL)で抽出した後、有機層を合わせて精製水(3×200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ別し、減圧下(油回転ポンプ)、60℃で濃縮乾固することにより微褐色固体状の9-(4-カルボキシフェニル)-9-メチルフルオレン(3.38g、収率98.3%)を得た。
(9-[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)カルボニルフェニル]-9-メチルフルオレンの合成)
磁気撹拌子を装着した反応器に、9-(4-カルボキシフェニル)-9-メチルフルオレン(4.36g、14.5mmol)及びテトラヒドロフラン(THF;35mL)を仕込んで撹拌溶解させ、次いで2-ヒドロキシエチルアクリレート(1.73g、14.9mmol)及びN,N-ジメチルアミノピリジン(0.386g、3.16mmol)を添加して撹拌溶解させ、次いで、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(3.86g、20.2mmol)を添加して、40℃で22時間撹拌し、室温まで冷却した。減圧下(ダイアフラムポンプ)、50℃でTHFを留去した後、精製水(800mL)及びクロロホルム(200mL)を添加して30分間撹拌した。分液して、水層をクロロホルム(3×200mL)で抽出し、有機層を合わせて精製水(3×500mL)で洗浄し、次いで、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ別した後、シリカゲル(10.1g)を添加して、45℃で5分間撹拌し、減圧下(油回転ポンプ)、45℃で乾固することにより粗体吸着済みシリカゲル(15.1g)を得た。カラムにシリカゲル(100g)、粗体吸着済シリカゲル(15.1g)及び硫酸ナトリウム(10g)をこの順序で仕込み、ヘキサン/酢酸エチル(体積比)=80/20を移動相とするクロマトグラフィーにより精製し、微黄色粘稠液体が得られた。得られた粘稠液体を室温で1週間静置したところ、白色固体状の9-[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)カルボニルフェニル]-9-メチルフルオレン(3.22g、収率70.6%;下記式(1-1)で表される化合物)が得られた。得られた化合物の融点は64~65℃であった。また、1H-NMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3、300MHz):δ(ppm)=7.88(2H、d)、7.73(2H、d)、7.37(2H、m)、7.22(6H、m)、6.42(1H、d)、6.13(1H、m)、5.84(1H、d)、4.48(4H、m)、1.90(3H、s)。
また、上記式(1-1)で表される化合物を用いて得られた硬化膜(重合体またはポリマー)の屈折率(硬化後屈折率)nDは1.62であり、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有していないにもかかわらず、意外にも高い屈折率を示した。