JP2023122572A - フルオレン化合物ならびにその製造方法およびその重合体 - Google Patents

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真賢 大山
Masatoshi Oyama
理恵 安田
Rie Yasuda
裕嗣 鞍谷
Hirotsugu Kuratani
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Abstract

【課題】高い耐熱性を示す樹脂を形成可能な化合物、およびその製造方法、ならびに前記化合物を重合成分として含む樹脂を提供する。【解決手段】下記式(1)で表されるフルオレン化合物を調製する。TIFF2023122572000018.tif34153式(1)において、R1が炭化水素基または酸素原子であり、R2aおよびR2bが炭化水素基であり、m1が0~2の整数であり、m2が0~2の整数であり、R3が水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、基[-CHR6-OH]または基[-CHR6-O-C(=O)-R7](各式中、R6およびR7は独立して、水素原子、または置換されていてもよい炭化水素基を示す。)であり、R4およびR5が水素原子、炭化水素基またはハロゲン原子であってもよい。【選択図】なし

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和4年3月9日 日本化学会 第102春季年会(2022)講演予稿集(C202-3pm-05) 公益社団法人日本化学会に発表 2.令和4年3月25日 公益社団法人日本化学会 日本化学会 第102春季年会(2022)オンライン開催にて発表 3.令和4年5月10日 高分子学会予稿集71巻1号(2P3D004) 公益社団法人高分子学会に発表 4.令和4年5月26日 公益社団法人高分子学会 第71回高分子学会年次大会オンライン開催にて発表
本発明は、アクリロイル系骨格(またはビニルケトン系骨格)を有するフルオレン化合物(ビニルフルオレニルケトン系化合物)およびその製造方法、ならびにこのフルオレン化合物を重合成分として含む重合体(樹脂またはポリマー)に関する。
コールタールから産出されるフルオレンは、π共役系を有する芳香族化合物であって、剛直で対称性に優れた化学構造を有するとともに、反応性にも富むユニークな炭化水素である。そのため、このような特徴から様々なファインケミカル材料の出発物質として利用され、その用途も液晶材料、光機能材料(または光学材料)、有機EL色素など多岐に亘っており、モノマーなどとして利用されることが多い。主鎖状にフルオレン骨格が繰り返し表れるポリフルオレンなどは、有機半導体または発光材料などとして利用されている。また、9位に2つの芳香環を有するフルオレン化合物も機能性モノマーとして有用であり、得られる重合体(樹脂またはポリマー)が光学的特性や耐熱性などに優れることから、光学材料または光学部材に利用されている。
特開2021-127317号公報(特許文献1)には、高い耐熱性を示す樹脂を形成可能な化合物として下記式で表されるフルオレン化合物が開示されるとともに、このフルオレン化合物を重合成分として含む樹脂も開示されている。
Figure 2023122572000001
なお、韓国公開特許第10-2017-0136698号公報(特許文献2)では光活性化合物(または光ラジカル重合開始剤)について開示され、その前駆体(または中間体)を調製するために下記式で表される反応を経由したことが記載されている。
Figure 2023122572000002
特開2021-127317号公報 韓国公開特許第10-2017-0136698号公報
特許文献1の実施例では、前記フルオレン化合物を重合成分とする樹脂として、特定のフルオレン化合物を含むジエン成分と、特定のジチオール成分とのチオール-エン反応による重付加により重合体(樹脂またはポリマー)を調製しており、得られた重合体の10%質量減少温度が243.5~316℃であったことが記載されている。特許文献1で得られたこれらの樹脂は高い耐熱性を示すものの、より一層高い耐熱性が要求される場合もある。また、この文献の実施例で得られた樹脂は、いずれも高い耐溶剤性を示しているが、溶媒に対する溶解性が低すぎるため、用途によっては取り扱い性または成形性の点で劣る場合もある。
なお、特許文献2にはフルオレン骨格を有する化合物は記載されているものの、ビニルフルオレニルケトン骨格を有する化合物については何ら記載も示唆もされていない。
従って、本発明の目的は、高い耐熱性を示す樹脂を形成可能な化合物、およびその製造方法、ならびに前記化合物を重合成分として含む樹脂を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の化学構造(ビニルフルオレニルケトン骨格)を有するフルオレン化合物を重合成分とすると、得られる樹脂が主鎖としてのビニル基由来の炭素鎖と、(主鎖ではなく)側鎖としてのフルオレン骨格(フルオレニル基)とを有するためか、高い耐熱性を示す樹脂を形成できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記態様を包含していてもよい。
態様[1]:下記式(1)で表されるフルオレン化合物(ビニルフルオレニルケトン系化合物)。
Figure 2023122572000003
(式中、Rは置換基(1価または2価の置換基)を示し、kは0~2の整数を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示し、
2aおよびR2bは独立して非重合性置換基を示し、m1は0~3の整数を示し、m2は0~4の整数を示し、
、RおよびRは独立して水素原子または非重合性置換基を示す。)
態様[2]:前記式(1)において、Rは炭化水素基または酸素原子であり、
2aおよびR2bは炭化水素基であり、m1は0~2の整数であり、m2は0~2の整数であり、
が水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、基[-CHR-OH]または基[-CHR-O-C(=O)-R](各式中、RおよびRは独立して、水素原子、または置換されていてもよい炭化水素基を示す。)であり、
およびRは水素原子、炭化水素基またはハロゲン原子である態様[1]記載のフルオレン化合物。
態様[3]:前記式(1)において、Rはアルキル基であり、kは0または2であり、
2aおよびR2bはアルキル基であり、m1は0~1の整数であり、m2は0~1の整数であり、
が水素原子、アルキル基、基[-CHR-OH]または基[-CHR-O-C(=O)-R](各式中、RおよびRは独立して、水素原子またはアルキル基である)であり、
およびRは水素原子またはアルキル基である態様[1]または[2]記載のフルオレン化合物。
態様[4]:前記式(1)において、Rがアルキル基であり、kが2である態様[1]~[3]のいずれかに記載のフルオレン化合物。
態様[5]:下記式(2)で表される化合物を脱離反応に供し、態様[1]~[4]のいずれかに記載の前記式(1)で表されるフルオレン化合物を製造する方法。
Figure 2023122572000004
(式中、XおよびXのうち、いずれか一方が脱離基、他方が水素原子を示し、
、k、R2aおよびR2b、m1およびm2、R、RおよびRならびに実線と破線との二重線は、それぞれ前記式(1)に同じ。)
態様[6]:前記式(1)で表されるフルオレン化合物を重合成分に含む樹脂。
態様[7]:熱可塑性樹脂である態様[6]記載の樹脂。
態様[8]:前記式(1)で表されるフルオレン化合物に由来する構成単位の割合(前記式(1)で表されるフルオレン化合物の割合)が、構成単位全体(重合成分全体)に対して10モル%程度以上である態様[6]または[7]記載の樹脂。
態様[9]:数平均分子量Mnが5000~500000であり、ガラス転移温度Tgが100~300℃であり、5%質量減少温度Td5が250~450℃である態様[6]~[8]のいずれかに記載の樹脂。
態様[10]:態様[6]~[9]のいずれかに記載の樹脂を含む成形体。
態様[11]:光学部材である態様[10]記載の成形体。
態様[12]:フィルム状、シート状またはレンズ状である態様[10]または[11]記載の成形体。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、「Cアルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
本発明のアクリロイル系骨格(またはビニルケトン系骨格)を有するフルオレン化合物(ビニルフルオレニルケトン系化合物)は、特定の化学構造を有しているため、高い耐熱性を示す樹脂を容易にまたは効率よく形成できる。また、前記樹脂は、前記特許文献1の実施例で得られた樹脂とは異なって、意外にも溶媒に対する溶解性も高く、高い耐熱性と、高い溶解性とを両立できる。
図1は、実施例1(i)で得られた化合物[2-(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレン]の(a)H-NMRスペクトルおよび(b)13C-NMRスペクトルである。 図2は、実施例1(ii)で得られた化合物(2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン)の(a)H-NMRスペクトルおよび(b)13C-NMRスペクトルである。 図3は、実施例1(ii)で得られた化合物(2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン)の精製直後および室温(25℃)、大気下、遮光条件で650日間保存後のH-NMRスペクトルである。 図4は、実施例2で得られた樹脂[ポリ(2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン)のH-NMRスペクトルである。 図5は、実施例2で得られた樹脂のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のチャートである。 図6は、実施例2で得られた樹脂の熱重量示差熱分析(TG-DTA)のチャートである。 図7は、実施例3で得られた化合物(2-[α-(ヒドロキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレン)のH-NMRスペクトルである。 図8は、実施例4で得られた化合物(2-[α-(アセチルオキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレン)のH-NMRスペクトルである。 図9は、実施例5(i)で得られた化合物[2-(3-クロロプロパノイル)-9H-フルオレン]の(a)H-NMRスペクトルおよび(b)13C-NMRスペクトルである。 図10は、実施例5(ii)で得られた化合物(2-アクリロイル-9H-フルオレン)の(a)H-NMRスペクトルおよび(b)13C-NMRスペクトルである。 図11は、実施例6における重合反応前後のH-NMRスペクトルである。
[式(1)で表されるフルオレン化合物]
アクリロイル系骨格(またはビニルケトン系骨格、すなわち、基[-C(=O)-CR=CR])を有するフルオレン化合物(ビニルフルオレニルケトン系化合物)は下記式(1)で表される。
Figure 2023122572000005
(式中、Rは置換基を示し、kは0~2の整数を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示し、
2aおよびR2bは独立して非重合性置換基を示し、m1は0~3の整数を示し、m2は0~4の整数を示し、
、RおよびRは独立して水素原子または非重合性置換基を示す。)
前記式(1)において、Rで表される1価または2価の置換基(または非ラジカル重合性置換基)としては、例えば、炭化水素基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアリール基、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換アミノ基、ハロゲン原子などの1価の基、酸素原子(またはオキソ基[=O])などの2価の基などが挙げられる。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびこれらの炭化水素基を2種以上組み合わせた(結合した)基などが挙げられ、飽和炭化水素基であるのが好ましい。
アルキル基(直鎖状または分岐鎖状アルキル基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-20アルキル基などが挙げられ、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-12アルキル基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基などが挙げられ、好ましくはC5-8シクロアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基(1-ナフチル基、2-ナフチル基)、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基などのC6-14アリール基、好ましくはC6-10アリール基が挙げられる。
炭化水素基を2種以上組み合わせた(結合した)基としては、例えば、アルキルアリール基、アラルキル基などが挙げられる。アルキルアリール基としては、例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)などのモノまたはジC1-6アルキルC6-10アリール基などが挙げられる。アラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2-フェニルエチル基(フェネチル基)などのC6-10アリールC1-6アルキル基などが挙げられる。
ヒドロキシアリール基としては、例えば、ヒドロキシフェニル基、アルキルヒドロキシフェニル基、アリールヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基などの置換されていてもよいヒドロキシC6-12アリール基などが挙げられ、置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基などの炭化水素基などが挙げられる。
ヒドロキシフェニル基としては、例えば、4-ヒドロキシフェニル基などが挙げられる。
アルキルヒドロキシフェニル基としては、例えば、4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル基、4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル基などの(モノまたはジ)C1-4アルキルヒドロキシフェニル基などが挙げられる。
アリールヒドロキシフェニル基としては、例えば、4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル基(または6-ヒドロキシ-3-ビフェニリル基)などのフェニルヒドロキシフェニル基(またはヒドロキシビフェニリル基)が挙げられる。
ヒドロキシナフチル基としては、例えば、6-ヒドロキシ-2-ナフチル基、5-ヒドロキシ-1-ナフチル基などが挙げられる。
ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール基としては、例えば、上記ヒドロキシアリール基で例示した具体的な基に対応して、ヒドロキシル基をヒドロキシ(ポリ)アルコキシ基に置き換えた基、すなわち、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル基、アルキルヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル基、アリールヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル基などの置換されていてもよいヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシC6-12アリール基などが挙げられる。置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基などの炭化水素基などが挙げられる。
ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル基としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル基、4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル基、4-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)フェニル基などのヒドロキシ(モノないしデカ)C2-3アルコキシ-フェニル基などが挙げられる。
アルキルヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル基としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル基、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル基などの(モノまたはジ)C1-4アルキル-ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-3アルコキシ-フェニル基などが挙げられる。
アリールヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル基としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル基[または6-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-ビフェニリル基]などのフェニル-ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-3アルコキシ-フェニル基[またはヒドロキシ(モノないしデカ)C2-3アルコキシ-ビフェニリル基]などが挙げられる。
ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル基としては、例えば、6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル基、5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル基などのヒドロキシ(モノないしデカ)C2-3アルコキシ-ナフチル基などが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基などのC2-6アルコキシ-カルボニル基などが挙げられる。
置換アミノ基としては、例えば、アルキルアミノ基、アシルアミノ基などが挙げられる。アルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基などのモノまたはジアルキルアミノ基が挙げられ、アシルアミノ基としては、例えば、ジアセチルアミノ基などのモノまたはジアシルアミノ基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
溶解性や保存安定性に優れる点から、好ましいRとしては1価の炭化水素基、なかでも、アルキル基などの飽和炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などのC1-12アルキル基、さらに好ましくは以下段階的に、C1-10アルキル基、C1-8アルキル基、C1-6アルキル基、C1-4アルキル基、C1-3アルキル基、C1-2アルキル基、メチル基である。
なお、Rが前記2価の基である場合、Rはフルオレン環の9位に二重結合で結合し、kは1であり;Rが1価の基である場合、Rはフルオレン環の9位に単結合で結合し、kは1または2であり;kが0(無置換)である場合、フルオレン環の9位には水素原子が結合する。また、kが2である場合、2つのR(1価の基)の種類は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
の係数kは、0~2のいずれの整数であってもよく、0または2が好ましく、2がさらに好ましい。特に、kが2であり、Rが1価の炭化水素基、好ましくはアルキル基などの飽和炭化水素基であると、溶解性や保存安定性を向上し易い点で好ましい。
2aおよびR2bで表される非重合性置換基(エチレン性不飽和結合を有しない非ラジカル重合性置換基)としては、アクリロイル系骨格を有しない置換基(すなわち、基[-C(=O)-CR=CR]とは異なる置換基)であり、例えば、アルキル基、アリール基などの炭化水素基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基などのC6-10アリール基などが挙げられる。
m1、m2が1以上である場合、好ましいR2a、R2bとしては、アルキル基などの飽和炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基などのアルキル基、特にメチル基などのC1-3アルキル基が好ましい。
2a、R2bの置換数m1、m2は、それぞれ、例えば0~2程度の整数、好ましくは0または1、さらに好ましくは0である。m1およびm2は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、m1およびm2が1以上である場合、フルオレン骨格を構成する異なるベンゼン環に置換するR2aおよびR2bの種類は、互いに同一または異なっていてもよく、m1、m2が2以上である場合、同一のベンゼン環に置換する2以上のR2a、R2bの種類は、それぞれ互いに同一または異なっていてもよい。また、R2a、R2bの置換位置は、特に制限されず、R2aについては、基[-C(=O)-CR=CR]の置換位置以外の位置に置換していればよい。
で表される非重合性置換基(エチレン性不飽和結合を有しない非ラジカル重合性置換基)としては、例えば、アルキル基などの炭化水素基、ハロゲン原子、基[-CHR-OH]または基[-CHR-O-C(=O)-R](各式中、RおよびRは独立して、水素原子、または置換されていてもよい炭化水素基を示す)などが挙げられる。
が炭化水素基、ハロゲン原子である場合、具体的には、Rの項で例示した炭化水素基およびハロゲン原子と同様の基などが挙げられる。Rが炭化水素基である場合、アルキル基などの炭化水素基(飽和炭化水素基)であってもよく、好ましくは以下段階的に、直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基、直鎖状または分岐鎖状C1-3アルキル基であり、特にメチル基などのC1-2アルキル基が好ましい。
また、基[-CHR-OH]、基[-CHR-O-C(=O)-R]において、R、Rは独立して、水素原子、または置換されていてもよい1価の炭化水素基であり、この炭化水素基としてはRの項で例示した炭化水素基と同様の基、例えば、直鎖状または分岐鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびこれらを2種以上組み合わせた基などが挙げられる。また、この炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換アミノ基、ニトロ基などが挙げられ、ハロゲン原子および置換アミノ基としては、Rの項の例示と同様の基などが挙げられる。なお、基[-CHR-O-C(=O)-R]において、RおよびRの種類は互いに同一または異なっていてもよい。
好ましいRは、水素原子、直鎖状または分岐鎖状アルキル基である。この直鎖状または分岐鎖状アルキル基として好ましくは以下段階的に、C1-6アルキル基、C1-4アルキル基、C1-3アルキル基、C1-2アルキル基、メチル基である。なかでも、特に好ましいRは水素原子である。
好ましいRは、水素原子、直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、より好ましくは直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、さらに好ましくは以下段階的に、C1-6アルキル基、C1-4アルキル基、C1-3アルキル基であり、特にメチル基などのC1-2アルキル基が好ましい。
代表的な基[-CHR-OH]としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシヘキシル基などの1-ヒドロキシアルキル基;1-ヒドロキシ-シクロヘキシルメチル基などの1-ヒドロキシ-シクロアルキルメチル基;1-ヒドロキシ-フェニルメチル基(1-ヒドロキシベンジル基)などの1-ヒドロキシ-アリールメチル基などが挙げられる。好ましい基[-CHR-OH]としては、1-ヒドロキシアルキル基であり、さらに好ましくは以下段階的に、1-ヒドロキシC1-6アルキル基、1-ヒドロキシC1-4アルキル基、1-ヒドロキシC1-3アルキル基であり、特に、ヒドロキシメチル基などの1-ヒドロキシC1-2アルキル基である。
代表的な基[-CHR-O-C(=O)-R]としては、例えば、アセチルオキシメチル基、1-アセチルオキシエチル基、1-アセチルオキシヘキシル基、プロピオニルオキシメチル基、(シクロヘキシルカルボニルオキシ)メチル基、(ベンゾイルオキシ)メチル基などの1-(アシルオキシ)アルキル基などが挙げられる。好ましい基[-CHR-O-C(=O)-R]は以下段階的に、1-(C1-12アシルオキシ)C1-6アルキル基、1-(C1-8アシルオキシ)C1-4アルキル基、1-(C1-7アシルオキシ)C1-3アルキル基であり、さらに好ましくはアセチルオキシメチル基、プロピオニルオキシメチル基、(シクロヘキシルカルボニルオキシ)メチル基、(ベンゾイルオキシ)メチル基などの1-(C1-7アシルオキシ)メチル基、特に1-(C1-4アシルオキシ)メチル基である。
好ましいRとしては、水素原子、炭化水素基(または飽和炭化水素基)、ハロゲン原子、基[-CHR-OH]または基[-CHR-O-C(=O)-R]であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、基[-CHR-OH]または基[-CHR-O-C(=O)-R]であり、さらに好ましくは水素原子またはアルキル基、特に好ましくは水素原子である。
なお、Rの種類はR~Rの種類と互いに同一または異なっていてもよい。
およびRで表される非重合性置換基(エチレン性不飽和結合を有しない非ラジカル重合性置換基)としては、例えば、アルキル基などの炭化水素基、ハロゲン原子、具体的には、Rの項で例示した炭化水素基およびハロゲン原子と同様の基などが挙げられる。RおよびRの種類は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
また、RおよびRが置換基である場合、アルキル基などの炭化水素基(または飽和炭化水素基)またはハロゲン原子であってもよく、好ましくは以下段階的に、炭化水素基(飽和炭化水素基)、アルキル基、直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基、直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基、直鎖状または分岐鎖状C1-3アルキル基であり、特にメチル基などのC1-2アルキル基である。
好ましいRおよびRとしては、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくは水素原子または炭化水素基(または飽和炭化水素基)、なかでも水素原子またはアルキル基、特に水素原子である。
基[-C(=O)-CR=CR]の置換位置は特に制限されないが、好ましくは2位(または7位)である。
前記式(1)で表される代表的なフルオレン化合物(ビニルフルオレニルケトン系化合物)としては、Rが水素原子、アルキル基、基[-CHR-OH]または基[-CHR-O-C(=O)-R]、RおよびRが水素原子であるフルオレン化合物などが挙げられ、例えば、2-アクリロイルフルオレン、2-メタクリロイルフルオレンなどの(メタ)アクリロイルフルオレン;2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン、2-メタクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンなどの(メタ)アクリロイル-9,9-ジアルキルフルオレン;2-[α-(ヒドロキシメチル)アクリロイル]フルオレンなどの[α-(ヒドロキシアルキル)アクリロイル]フルオレン;2-[α-(ヒドロキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレンなどの[α-(ヒドロキシアルキル)アクリロイル]-9,9-ジアルキルフルオレン;2-[α-(アセチルオキシメチル)アクリロイル]フルオレン、2-[α-(プロピオニルオキシメチル)アクリロイル]フルオレン、2-[α-(シクロヘキシルカルボニルオキシメチル)アクリロイル]フルオレン、2-[α-(ベンゾイルオキシメチル)アクリロイル]フルオレンなどの[α-(アシルオキシアルキル)アクリロイル]フルオレン;2-[α-(アセチルオキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレン、2-[α-(プロピオニルオキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレン、2-[α-(シクロヘキシルカルボニルオキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレン、2-[α-(ベンゾイルオキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレンなどの[α-(アシルオキシアルキル)アクリロイル]-9,9-ジアルキルフルオレンなどが挙げられる。
これらのうち、(メタ)アクリロイル-9,9-ジアルキルフルオレン、[α-(ヒドロキシアルキル)アクリロイル]-9,9-ジアルキルフルオレン、[α-(アシルオキシアルキル)アクリロイル]-9,9-ジアルキルフルオレンが好ましく、なかでも、(メタ)アクリロイル-9,9-ジアルキルフルオレンが好ましい。
好ましい(メタ)アクリロイル-9,9-ジアルキルフルオレンは以下段階的に、(メタ)アクリロイル-9,9-ジC1-12アルキルフルオレン、(メタ)アクリロイル-9,9-ジC1-8アルキルフルオレン、(メタ)アクリロイル-9,9-ジC1-4アルキルフルオレン、(メタ)アクリロイル-9,9-ジC1-2アルキルフルオレン、2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンである。
好ましい[α-(ヒドロキシアルキル)アクリロイル]-9,9-ジアルキルフルオレンは以下段階的に、[α-(ヒドロキシC1-12アルキル)アクリロイル]-9,9-ジC1-12アルキルフルオレン、[α-(ヒドロキシC1-8アルキル)アクリロイル]-9,9-ジC1-8アルキルフルオレン、[α-(ヒドロキシC1-4アルキル)アクリロイル]-9,9-ジC1-4アルキルフルオレン、[α-(ヒドロキシC1-2アルキル)アクリロイル]-9,9-ジC1-2アルキルフルオレン、[α-(ヒドロキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレンである。
好ましい[α-(アシルオキシアルキル)アクリロイル]-9,9-ジアルキルフルオレンは以下段階的に、[α-(C1-12アシルオキシC1-12アルキル)アクリロイル]-9,9-ジC1-12アルキルフルオレン、[α-(C1-10アシルオキシC1-8アルキル)アクリロイル]-9,9-ジC1-8アルキルフルオレン、[α-(C1-8アシルオキシC1-4アルキル)アクリロイル]-9,9-ジC1-4アルキルフルオレン、[α-(C1-7アシルオキシC1-2アルキル)アクリロイル]-9,9-ジC1-2アルキルフルオレン、[α-(C1-4アシルオキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレンである。
前記式(1)で表される化合物の融点(mp)は、例えば50~200℃、好ましくは80~180℃、さらに好ましくは100~170℃である。また、Rが水素原子である場合の融点は、例えば80~120℃、さらに好ましくは90~110℃であり、Rが基[-CHR-OH]である場合の融点は、例えば130~180℃、さらに好ましくは140~170℃である。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、融点(mp)は、融点測定装置を用いて測定でき、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定できる。
前記式(1)で表される化合物は、意外にも溶媒に対する溶解性に優れており、取り扱い性または成形性を向上できる。溶媒としては、例えば、炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など;ハロゲン化炭化水素類、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼンなど;エーテル類、具体的には、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類などが挙げられ、これらの溶媒から選択された少なくとも一種に溶解(完溶)可能、好ましくはトルエンなどの芳香族炭化水素類に溶解(完溶)可能であってもよく、例えば0~70℃、好ましくは10~50℃、さらに好ましくは20~30℃(特に、25℃)において、例えば1~50質量%、好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは10~20質量%の濃度で溶解(完溶)可能であってもよい。
また、前記式(1)で表される化合物は、意外にも保存安定性に優れており、例えば、大気下、室温(25℃)、遮光条件において、300日以上(例えば1~10年)、好ましくは500日以上(例えば600~700日程度)保存しても、劣化を有効に抑制でき安定である。
[式(1)で表されるフルオレン化合物の製造方法]
前記式(1)で表されるジオール化合物の製造方法は特に制限されないが、例えば、下記式(2)で表される化合物を脱離反応、例えば、脱ハロゲン化水素反応に供する方法などによって調製してもよく、代表的な方法としては、下記式(3)で表される化合物を出発原料として、下記反応工程により調製できる。
Figure 2023122572000006
(式中、XおよびXのうち、いずれか一方が脱離基、他方が水素原子を示し、
はハロゲン原子を示し、
、k、R2aおよびR2b、m1およびm2、R、RおよびRならびに実線と破線との二重線は、それぞれ好ましい態様を含めて前記式(1)に同じ。)
(式(2)で表される化合物の調製)
前記式(2)で表される化合物は、前記式(3)で表される化合物と、前記式(4)で表される化合物とをフリーデル・クラフツ アシル化反応させることにより合成できる。
前記式(3)で表される代表的な化合物としては、例えば、9H-フルオレン、9,9-ジメチルフルオレンなどの9,9-ジアルキルフルオレンなどが挙げられる。
前記式(4)[および式(2)]において、XまたはXで表される脱離基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カーボネート基[-O-C(=O)-O-R]、カルバメート基[-O-C(=O)-N(R]、スルホ基[-SOH](またはスルホキシル基)などが挙げられる。なお、カーボネート基およびカルバメート基におけるRは、それぞれ独立して水素原子または炭化水素基を示す。
ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基などが挙げられる。
アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基などのC2-10アシルオキシ基などが挙げられる。
カーボネート基[-O-C(=O)-O-R]およびカルバメート基[-O-C(=O)-N(R]において、Rで表される炭化水素基としては、例えば、前記式(1)の項でRとして例示されたアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびこれらの炭化水素基を2種以上組み合わせた基と同様の基が挙げられる。
カーボネート基[-O-C(=O)-O-R]としては、例えば、メトキシカルボニルオキシ基などのC1-10アルコキシカルボニルオキシ基などが挙げられる。
カルバメート基[-O-C(=O)-N(R]としては、例えば、カルバモイルオキシ基;N-メチルカルバモイルオキシ基、N,N-ジメチルカルバモイルオキシ基などの(モノまたはジ)アルキル-カルバモイルオキシ基などが挙げられる。
またはXにおける好ましい脱離基はハロゲン原子、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カーボネート基、カルバメート基、スルホ基が挙げられ、さらに好ましくはハロゲン原子であり、特に塩素原子である。
なお、XおよびXのいずれが脱離基であってもよいが、Rが水素原子である場合、Xが脱離基、Xが水素原子であるのが好ましく、Rがメチル基などの炭化水素基である場合、Xが脱離基、Xが水素原子であるのが好ましい。
また、前記式(4)において、Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子または臭素原子である。
前記式(4)で表される代表的な化合物としては、例えば、Rが水素原子である化合物などが挙げられ、具体的には、3-クロロプロピオニルクロリドなどの3-ハロプロピオニルハライドなどが挙げられる。
前記式(4)で表される化合物の使用割合は、前記式(3)で表される化合物1モルに対して、例えば0.5~1.5モル、好ましくは0.8~1.2モル、さらに好ましくは0.9~1.1モル、特に0.95~1モルである。前記式(4)で表される化合物の割合が多すぎると、前記式(2)で表される化合物を選択的に調製し難くなるおそれがあり、逆に少なすぎると、効率よく調製できないおそれがある。
フリーデル・クラフツ アシル化反応は、ルイス酸の存在下で行われる。ルイス酸としては、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウム、塩化鉄(III)などのハロゲン化鉄(III)、塩化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、塩化スズ(II)などのハロゲン化スズ(II)、三フッ化ホウ素またはその錯体、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体などの三フッ化ホウ素エーテル錯体などが挙げられる。
これらのルイス酸は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。好ましいルイス酸は、塩化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウムである。ルイス酸の使用割合は、前記式(3)で表される化合物1モルに対して、例えば0.8~5モル、好ましくは0.9~2.5モル、さらに好ましくは1~1.5モル、特に1~1.1モルである。
フリーデル・クラフツ アシル化反応は、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であればよく、例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ハロゲン化アルカン、具体的にはジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどの塩素化アルカン、ニトロベンゼンなどが挙げられる。これらの溶媒のうち、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素が好ましい。溶媒の使用割合は、特に制限されず、前記式(3)および(4)で表される化合物、ならびにルイス酸の総量100質量部に対して、例えば10~1000質量部程度、好ましくは100~500質量部であってもよい。
反応は、不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば-20℃~50℃、好ましくは-10℃~40℃、さらに好ましくは0~30℃である。反応時間は特に制限されず、例えば1~48時間程度であってもよく、好ましくは12~24時間である。反応終了後、クエンチング(クエンチ処理)してもよく、例えば、氷水と濃塩酸との混合物などを添加してクエンチ処理してもよい。
反応終了後、必要に応じて、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、ろ過、脱水、濃縮、乾燥、デカンテーション、再結晶、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
このようにして得られる前記式(2)で表される代表的な化合物としては、例えば、2-(3-クロロプロパノイル)フルオレンなどの2-(3-ハロプロパノイル)フルオレン;2-(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレンなどの2-(3-ハロプロパノイル)-9,9-ジアルキルフルオレンなどが挙げられる。
(式(1)で表される化合物の調製1)
前記式(1)で表されるフルオレン化合物[(メタ)アクリロイル化合物またはビニルフルオレニルケトン系化合物]は、前記式(2)で表される化合物を脱離反応させることにより合成できる。脱離反応としては、E2反応またはE1cB反応であるのが好ましく、E1cB反応がさらに好ましい。E2反応、E1cB反応は、塩基の存在下で反応させる。塩基としては、例えば、無機塩基、有機塩基に大別できる。
無機塩基としては、例えば、金属水酸化物、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物など;金属炭酸塩、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩など;金属炭酸水素塩、具体的には、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸水素塩などが挙げられる。
有機塩基としては、例えば、アミン類、具体的には、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの芳香族第3級アミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、イミダゾール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5‐ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)などの複素環式アミンなどが挙げられる。
これらの塩基は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。これらの塩基のうち、アミン類、例えば、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミンなどがよく利用される。塩基の使用割合は、例えば、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば0.5~5モル、好ましくは1.5~3.5モル、さらに好ましくは2~3モルである。
E1cB反応などの脱離反応は、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であればよく、例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエンやベンゼンなどの芳香族炭化水素、ハロゲン化アルカン、具体的にはジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどの塩素化アルカン、テトラヒドロフランなどのエーテル類などが挙げられる。これらの溶媒のうち、クロロホルムなどの塩素化アルカンが好ましい。溶媒の使用割合は、特に制限されず、前記式(2)で表される化合物100質量部に対して、例えば50~5000質量部程度であってもよく、好ましくは100~1000質量部である。
なお、脱離反応は、必要に応じて、重合禁止剤の存在下または非存在下で行ってもよい。重合禁止剤としては、例えば、キノン類、t-ブチルカテコールなどのカテコール類、ジフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジルなどのアミン類、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物などが挙げられる。これらの重合禁止剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの重合禁止剤のうち、キノン類が好ましい。キノン類としては、例えば、p-ベンゾキノンなどのヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、メトキノン(または4-メトキシフェノール)、トルキノン(またはメチル-p-ベンゾキノン)、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノンなどが挙げられ、4-メトキシフェノールが好ましい。
重合禁止剤の割合は、前記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば1×10-5~1×10-2モル、好ましくは1×10-4~1×10-3モルである。
反応は、不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば0~100℃、好ましくは10~40℃、さらに好ましくは20~35℃である。反応時間は特に制限されず、例えば10分~1時間程度であってもよく、好ましくは15~30分である。この反応は、比較的迅速に、かつ定量的に進行するようである。
反応終了後、必要に応じて、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、中和、洗浄、抽出、ろ過、脱水、濃縮、乾燥、デカンテーション、晶析(再結晶)、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。反応混合物は、洗浄、抽出などの分液操作のみであっても精製可能なようである。
なお、必要に応じて保存安定性を向上するために、得られた前記式(1)で表される化合物に重合禁止剤を添加してもよく、重合禁止剤の存在下で脱離反応させて前記式(1)で表される化合物を調製(反応)してもよい。重合禁止剤としては、例えば、ベンゾキノン;ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、t-ブチルヒドロキノン、p-ベンゾキノンなどのヒドロキノン類;p-t-ブチルカテコール、2-メトキシフェノールなどのカテコール類;N,N-ジエチルヒドロキシルアミンなどのアミン類;1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル;トリ-p-ニトロフェニルメチル;フェノチアジンなどが挙げられる。重合禁止剤は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。これらの重合禁止剤のうち、4-メトキシフェノールなどがよく利用される。重合禁止剤の割合は、前記式(1)で表される化合物(または対応する原料、例えば、前記式(2)で表される化合物)100質量部に対して、例えば0.001~10質量部程度、好ましくは0.01~1質量部であってもよく、前記式(1)で表される化合物に対して500質量ppm程度であってもよい。
(式(1)で表される化合物の調製2)
前記式(1)で表される化合物は、上記(式(1)で表される化合物の調製1)の項に記載の方法により、Rが水素原子である化合物を調製した後、この化合物を化学的に修飾(または変換)することにより、Rが置換基である化合物[前記式(1)に包含される異なる化合物]を調製してもよい。
前記修飾(または変換)に利用する化学反応は特に制限されず、目的とするRの種類に応じて適宜選択でき、例えば、Rが基[-CHR-OH]である化合物の調製には、森田-Baylis-Hillman反応(MBH反応)を利用してもよい。
MBH反応では、Rが水素原子である前記式(1)の化合物と、Rに対応するアルデヒド類とを反応させる。
に対応するアルデヒド類としては、R-CHO(式中、Rは好ましい態様を含めて前記に同じ)で表されるアルデヒド化合物であり、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド、シクロヘキサンカルバルデヒドなどの脂環族アルデヒド、ベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなどが挙げられ、ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドが好ましい。
に対応するアルデヒド類の使用割合は、Rが水素原子である前記式(1)の化合物1モルに対して、例えば1~10モル、好ましくは1.3~5モル、さらに好ましくは1.5~3モルであってもよく、特に1.8~2.2モルである。
MBH反応は、触媒の存在下で反応させる。触媒は特に制限されず、MBH反応の慣用の触媒を利用してもよく、例えば、3級アミン類、3級ホスフィン類などが挙げられ、好ましくは3級アミン類であり、さらに好ましくは環式3級アミン類(環状3級アミン類)である。
環式3級アミン類としては、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(またはキヌクリジン)、キヌクリジン-3-オールなどのアザビシクロ[2.2.2]オクタン類;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)などの環状アミジン類などが挙げられる。
これらの触媒は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。好ましい触媒は、環式3級アミン類であり、DABCOなどのアザビシクロ[2.2.2]オクタン類がさらに好ましい。触媒の使用割合は、Rが水素原子である前記式(1)の化合物1モルに対して、例えば0.5~10モル、好ましくは0.8~5モル、さらに好ましくは0.9~1.5モルであってもよく、特に1~1.1モルである。
反応は、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であればよく、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、テトラヒドロフランなどのエーテル類、水が好ましい。溶媒の合計割合は、特に制限されず、Rが水素原子である前記式(1)の化合物、Rに対応するアルデヒド類および触媒の総量100質量部に対して、例えば10~1000質量部程度であってもよく、好ましくは300~500質量部である。
反応は、大気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよい。反応温度は、例えば-50℃~50℃、好ましくは0~40℃、さらに好ましくは10~30℃である。反応時間は特に制限されず、例えば1時間~100日程度であってもよく、好ましくは3時間~10日、さらに好ましくは6~72時間であってもよく、特に1~3時間であってもよい。
反応終了後、必要に応じて、反応混合物を、慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、ろ過、脱水、乾燥、濃縮、デカンテーション、晶析(再結晶)、カラムクロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
(式(1)で表される化合物の調製3)
上記(式(1)で表される化合物の調製2)の項に記載のMBH反応を利用した方法により、Rが基[-CHR-OH]である化合物に対して、さらに化学修飾(または変換)を施してもよい。
例えば、前記基[-CHR-OH]中のヒドロキシル基を利用して化学修飾してもよく、具体的には、Rに対応するカルボン酸類と反応させてエステル化することで、Rが基[-CHR-O-C(=O)-R]である化合物を調製してもよい。
に対応するカルボン酸類としては、R-COOH(式中、Rは好ましい態様を含めて前記に同じ)で表されるカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
なお、前記エステル形成性誘導体としては、例えば、メチルエステル、t-ブチルエステルなどの低級アルキルエステル、酸クロリド、酸ブロミドなどの酸ハライド、酸無水物などが挙げられる。エステル形成性誘導体としては、酸無水物が好ましい。
代表的なRに対応するカルボン酸類としては、酢酸、プロピオン酸などの脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族カルボン酸、安息香酸などの芳香族カルボン酸、これらのエステル形成性誘導体などが挙げられ、酢酸などの脂肪族カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、特に無水酢酸が好ましい。
に対応するカルボン酸類の割合は、Rが基[-CHR-OH]である前記式(1)の化合物1モルに対して、例えば1~10モル、好ましくは2~5モル、さらに好ましくは2.2~2.5モルである。
に対応するカルボン酸類として、酸ハライドや酸無水物を用いる場合、無機塩基、有機塩基などの塩基の存在下で反応させてもよい。無機塩基としては、例えば、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属炭酸水素塩などの金属化合物などが挙げられ、前記金属化合物中の金属としては、例えば、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属などが挙げられる。有機塩基としては、例えば、アミン類、具体的には、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの芳香族第3級アミン、ピリジン、N-メチルモルホリンなどの複素環式アミンなどが挙げられる。塩基は、単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。これらの塩基のうち、アミン類、例えば、ピリジンなどの複素環式アミンなどがよく利用される。塩基の使用量は、特に限定されないが、Rに対応するカルボン酸類(酸ハライド、酸無水物)1モルに対して、例えば0.8~1.2モル、好ましくは0.9~1.1モル、さらに好ましくは等モルである。
に対応するカルボン酸類として、カルボン酸やアルキルエステルを用いる場合、酸触媒、塩基触媒、金属触媒などの慣用のエステル化触媒の存在下で反応させてもよく、酸触媒を好適に使用してもよい。酸触媒としては、特に限定されず、無機酸;有機酸;三フッ化ホウ素エーテラート、四塩化スズなどのルイス酸;陽イオン交換樹脂などの固体酸触媒などが挙げられる。これらの酸触媒は、単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。また、これらの酸触媒は、水和物であってもよい。前記無機酸としては、例えば、強酸、具体的には、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸など;ホモまたはヘテロポリ酸、具体的には、タングストリン酸、モリブドリン酸、タングストケイ酸、モリブドケイ酸などが挙げられる。前記有機酸としては、例えば、スルホン酸、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのフッ化アルカンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸などが挙げられる。エステル化触媒の割合は、特に限定されず、Rが基[-CHR-OH]である前記式(1)の化合物1モルに対して、例えば、0.001~1モル、好ましくは0.01~0.5モルである。
反応は、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など;ハロゲン化炭化水素類、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼンなど;エーテル類、具体的には、ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類など;ケトン類、具体的には、アセトン、メチルエチルケトンなど;スルホキシド類、具体的には、ジメチルスルホキシドなど;アミド類、具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなど;アセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。これらの溶媒のうち、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類が好ましい。溶媒の割合は特に制限されず、Rが基[-CHR-OH]である前記式(1)の化合物、Rに対応するカルボン酸類および塩基またはエステル化触媒の総量100質量部に対して、例えば10~1000質量部、好ましくは100~300質量部である。
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類などに応じて適宜選択でき、Rに対応するカルボン酸類が酸ハライドや酸無水物である場合、反応温度は、例えば-10℃~50℃、好ましくは0~40℃、さらに好ましくは10~30℃であり;Rに対応するカルボン酸類がカルボン酸またはアルキルエステルである場合、反応温度は、例えば50~150℃、好ましくは80~130℃、さらに好ましくは100~120℃である。反応時間は、特に制限されず、例えば1~24時間程度、好ましくは2~12時間である。
反応は、空気中または窒素ガス、希ガスなどの不活性ガス雰囲気中、攪拌しながら行うことができ、常圧下、加圧下または減圧下で行ってもよい。
反応終了後、慣用の方法、例えば、中和、洗浄、脱水、ろ過、吸着、濃縮、抽出、晶析(再結晶)、再沈殿、遠心分離、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段や、これらを組み合わせた手段により分離精製してもよい。
[式(1)で表されるフルオレン化合物を重合成分として含む樹脂]
前記式(1)で表されるフルオレン化合物は、ビニルケトン系骨格[-C(=O)-CR=CR]のエチレン性不飽和結合を利用した付加重合により樹脂(ポリマーまたは重合体)を調製できるため、重合成分(モノマー)として好適に利用できる。そのため、本発明は、前記式(1)で表されるフルオレン化合物を重合成分(モノマー)に含む樹脂(ポリマーまたは重合体)を包含する。
(重合成分(または樹脂の構成単位))
前記樹脂は、前記式(1)で表されるフルオレン化合物に由来する構成単位として、下記式(1P)で表される構成単位を少なくとも含んでいればよい。
Figure 2023122572000007
(式中、R、k、R2aおよびR2b、m1、m2、R、RおよびRならびに実線と破線との二重線は、それぞれ好ましい態様を含めて前記式(1)に同じ)。
前記樹脂は、前記式(1)で表されるフルオレン化合物のみを重合成分とする単独重合体(ホモポリマー)であってもよく、共重合成分との共重合体(コポリマー)であってもよい。共重合成分としては、単官能性の重合成分であってもよく、多官能性の重合成分であってもよい。
前記単官能性の重合成分(または反応性希釈剤)としては、特に制限されず、重合性基(エチレン性不飽和結合または重合性不飽和結合)、例えば、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、(メタ)アクリロイル基などを1つ有する化合物であればよく、具体的には、単官能性ビニル系モノマー;単官能性(メタ)アクリル系モノマーなどが挙げられる。単官能性ビニル系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレンなどのα-オレフィン系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;N-ビニルピロリドンなどが挙げられる。単官能性(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリルアミド;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN-置換(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;単官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、脂肪族単官能性(メタ)アクリレート;脂環族単官能性(メタ)アクリレート;芳香族単官能性(メタ)アクリレート;硫黄原子を含有する単官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
脂肪族単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのC1-20アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
脂環族単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのC5-10シクロアルキル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの橋架け環式(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香族単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート、具体的には、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(o-フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのC6-12アリールオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど;ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体のモノ(メタ)アクリレートなどのビスフェノール類又はビフェノール類(又はそのアルキレンオキシド付加体)のモノ(メタ)アクリレート;9-(メタ)アクリロイルオキシメチルフルオレンなどのフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
硫黄原子を含有する単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキルチオ(メタ)アクリレート、アリールチオ(メタ)アクリレート、アラルキルチオ(メタ)アクリレート、アリールチオアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アルキルチオ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルチオ(メタ)アクリレートなどのC1-6アルキルチオ(メタ)アクリレートが挙げられる。アリールチオ(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニルチオ(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールチオ(メタ)アクリレートが挙げられる。アラルキルチオ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジルチオ(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールC1-6アルキルチオ(メタ)アクリレートが挙げられる。アリールチオアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニルチオエチル(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールチオC2-4アルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
多官能性の重合成分としては特に制限されず、複数(2以上)の重合性基を有していればよく、複数(2以上)の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性(メタ)アクリレートがよく利用される。1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数は、例えば2~10、好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4、なかでも2~3、特に2である。
多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート、脂環族エポキシ(メタ)アクリレート、芳香族エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ樹脂のポリ(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレート(ビニルエステル樹脂);ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート(2以上のヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールのポリ(メタ)アクリレート);(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;脂環族ジオールのジ(メタ)アクリレート;ビフェノール類もしくはビスフェノール類またはそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体のジ(メタ)アクリレート;3~6個程度のヒドロキシル基を有する低分子量ポリオール化合物またはそのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体のポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記脂肪族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記脂環族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルネンジメタノール、アダマンタンジオール、アダマンタンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノールなどのC5-15脂肪族炭化水素環を有するジオールに対応するエポキシ化合物(ジグリシジルエーテル)のジ(メタ)アクリレート;水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどの後述する芳香族エポキシ(メタ)アクリレートに記載のビスフェノール類もしくはビフェノール類またはそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体の水添物のジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記芳香族エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどの、ビスフェノール類もしくはビフェノール類またはそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体のジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールSが挙げられる。ビフェノール類としては、例えば、p,p’-ビフェノール、m,m’-ビフェノール、o,o’-ビフェノールが挙げられる。
前記(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどのC2-10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジないしヘキサC2-10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記脂環族ジオールのジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルネンジメタノール、アダマンタンジオール、アダマンタンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノールなどのC5-15脂肪族炭化水素環を有するジオールに対応するジ(メタ)アクリレート;水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートなどの前記芳香族エポキシ(メタ)アクリレートに記載のビスフェノール類もしくはビフェノール類またはそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体の水添物のジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
前記3~6個程度のヒドロキシル基を有する低分子量ポリオール化合物またはそのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体のポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリないしヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの共重合成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。
樹脂は、前記式(1)で表されるフルオレン化合物および多官能性の共重合成分を重合成分として含むことにより、3次元網目状の硬化物(熱または光硬化性樹脂)であってもよく(前記式(1)で表されるフルオレン化合物および多官能性の共重合成分を含む硬化性組成物を形成してもよく);主として単官能の重合成分で形成された線状の化学構造を有する熱可塑性樹脂であってもよい。溶解性または成形性の観点から、樹脂は熱可塑性樹脂であるのが好ましい。
樹脂中の前記式(1P)で表される構成単位の割合[前記式(1)で表されるフルオレン化合物の割合]は、樹脂の構成単位全体(重合成分全体)に対して、例えば10モル%以上であってもよく、好ましくは以下段階的に30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上、特に100モル%である。前記式(1P)で表される構成単位の割合が少なすぎると、耐熱性や溶解性、光学的特性などが低下するおそれがある。
(重合成分以外の成分)
付加重合して樹脂を形成するための重合性組成物(または硬化性組成物)は、前記重合成分の他、必要に応じて、重合開始剤、溶媒、添加剤などをさらに含んでいてもよい。
重合開始剤は特に制限されず、付加重合としてラジカル重合がよく利用されることから、熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)であってもよく、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。
熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、ジ-t-ブチルパーオキシドなどのジアルキルパーオキシド類;ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキシド類;t-ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、過酢酸t-ブチルなどの過酸(又は過酸エステル)類;ケトンパーオキシド類;パーオキシカーボネート類;パーオキシケタール類が挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)などのアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物が挙げられる。これらの熱重合開始剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンなどのアセトフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノアミノプロパノン-1などのアミノアセトフェノン類;アントラキノン、2-メチルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;キサントン類などが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合開始剤(熱および/または光重合開始剤)の割合は、重合成分の総量100質量部に対して0.1~15質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~8質量部、さらに好ましくは2~5質量部である。
また、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤として代表的には、第3級アミン類、例えば、トリアルキルアミン;トリエタノールアミンなどのトリアルカノールアミン;ジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、具体的には、p-(ジメチルアミノ)安息香酸エチルなどのN,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルや、p-(ジメチルアミノ)安息香酸アミルなどのN,N-ジメチルアミノ安息香酸アミルなど;4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン;4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノンなどの慣用の光増感剤が挙げられる。これらの光増感剤は、単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。光増感剤の割合は、前記重合開始剤100質量部に対して、1~200質量部、好ましくは5~150質量部、さらに好ましくは10~100質量部である。
重合性組成物(または硬化性組成物)は、溶媒を含んでいなくてもよいが、重合方法などに応じて、または取り扱い性を調整するために溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、特に限定されず、例えば、炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など;ハロゲン化炭化水素類、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼンなど;エーテル類、具体的には、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類など;ケトン類、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのジアルキルケトン類、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など;エステル類、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など;グリコールエーテルアセテート類、具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類など;スルホキシド類、具体的には、ジメチルスルホキシドなど;アミド類、具体的には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなど;ニトリル類、具体的には、アセトニトリルなどが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせた混合溶媒として使用することもできる。これらの溶媒のうち、炭化水素類が好ましく、トルエンなどの芳香族炭化水素類がさらに好ましい。
溶媒の割合は特に制限されず、固形分(溶媒以外の成分)の濃度が、重合性組成物(または硬化性組成物)全体に対して、例えば、0.1~50質量%程度となるように含有させてもよい。
重合性組成物(または硬化性組成物)は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、界面活性剤、可塑剤、硬化剤、重合禁止剤などを含んでいてもよい。前記安定剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの添加剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
添加剤の合計割合は、重合性組成物全体に対して、例えば、30質量%以下、好ましくは以下段階的に、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下である。なお、前記合計割合は0.001~15質量%、具体的には0.01~3質量%であってもよい。
なお、これらの添加剤は必ずしも重合性組成物中に含まれていなくてもよく、重合した樹脂に対して後から添加または配合してもよい。
(樹脂の製造方法)
樹脂は、重合性組成物(または硬化性組成物)を用いて付加重合することで調製できる。付加重合の方法は特に制限されず、イオン重合であってもよいが、ラジカル重合であるのが好ましい。ラジカル重合としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられ、溶液重合が好ましい。溶液重合では、重合性組成物が、重合成分以外の成分として、前記溶媒を含んでいてもよい。
樹脂は、前記重合性組成物(または硬化性組成物)に活性エネルギー(または活性エネルギー線)を付与することで容易に重合できる。前記活性エネルギーは、熱エネルギーおよび/または光エネルギーであってもよい。
熱エネルギーを利用して加熱処理する場合、加熱温度(重合温度)としては、重合方法に応じて選択でき、例えば20~200℃、好ましくは以下段階的に、30~150℃、40~100℃、50~80℃、60~70℃である。重合時間は特に制限されず、例えば1~48時間、好ましくは10~30時間である。
また、紫外線、X線などの光エネルギーを利用してもよいが、熱エネルギーを利用するのが好ましい。
重合は、不活性ガス、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気中で行ってもよい。また、反応は、常圧下、減圧下または加圧下で行うこともできる。
反応終了後、生成した樹脂は、慣用の方法、例えば、洗浄、抽出、濃縮、乾燥、再沈殿、遠心分離、ろ過、カラムクロマトグラフィー、吸着などの分離精製手段や、これらを組み合わせた手段により分離精製してもよい。
(樹脂の特性および成形体)
樹脂は、構成単位(重合成分)として前記式(1P)で表される構成単位を含むため、高い耐熱性を示す。
樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば100~300℃程度、好ましくは130~250℃、さらに好ましくは150~200℃、特に160~180℃である。
樹脂は、結晶性または非晶性樹脂であってもよい。
また、樹脂の5%質量減少温度Td5は、例えば250~450℃、好ましくは300~430℃、さらに好ましくは330~400℃、特に360~380℃である。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ガラス転移温度Tgおよび5%質量減少温度Td5は、熱重量示差熱分析(TG-DTA)や示差走査熱量分析(DSC)を用いて測定でき、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定できる。
また、樹脂の数平均分子量Mnは、例えば5000~500000程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、10000~200000、30000~100000、40000~80000、50000~60000である。樹脂の分子量分散度D(Mw/Mn)は、例えば1~10程度であってもよく、好ましく以下段階的に、1.5~5、2~4.5、3~4である。数平均分子量Mnや分子量分散度Dは、樹脂の用途などに応じて適宜調整してもよい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、数平均分子量Mnおよび分子量分散度D(Mw/Mn)は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
樹脂が熱可塑性樹脂である場合、意外にも溶媒に対する溶解性に優れており、取り扱い性または成形性を向上できる。溶媒としては、例えば、炭化水素類、具体的には、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類など;ハロゲン化炭化水素類、具体的には、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼンなど;エーテル類、具体的には、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類などが挙げられ、これらの溶媒から選択された少なくとも一種に溶解(完溶)可能であってもよく、例えば0~70℃、好ましくは10~50℃、さらに好ましくは20~30℃(特に、25℃)において、例えば1~50質量%(例えば10~40質量%、20~30質量%など)、好ましくは1~40質量%(例えば3~30質量%)、さらに好ましくは1~25質量%(例えば5~10質量%)の濃度で溶解(完溶)可能であってもよい。
また、樹脂は、フルオレン骨格を有するためか、光学的特性にも優れており、例えば、透明性、高屈折率などの特性を備えていてもよい。
前記樹脂は、高い耐熱性や、透明性などの光学的特性を備えた成形体を形成できるため、本発明は、前記樹脂を含む成形体も包含する。
成形体は、少なくとも前記樹脂を含んでいればよく、他の樹脂や慣用の添加剤を含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、充填剤または補強剤、染顔料などの着色剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、加水分解抑制剤、炭素材、安定剤、低応力化剤などを含んでいてもよい。安定剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。低応力化剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の合計割合は、前記樹脂100質量部に対して、例えば50質量部以下、好ましくは以下段階的に、30質量部以下、0~10質量部であり、0.1~5質量部程度であってもよい。
成形体は、慣用の成形法で成形すればよく、樹脂が熱可塑性樹脂である場合、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
成形体の形状は、特に限定されず、例えば、線状、繊維状、糸状などの一次元的構造、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造、凹または凸レンズ状などのレンズ状、棒状、中空状(管状)などの三次元的構造などが挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における各評価方法は以下のとおりである。
[評価方法]
(NMRスペクトル)
核磁気共鳴(NMR)装置(ブルカー(株)製「AVANCE NEO」)を用いて25℃で測定した。測定溶媒は、重クロロホルムまたはジメチルスルホキシド-dを用い、化学シフト値はテトラメチルシラン(TMS)および溶媒の信号で較正した。
(分子量)
ポリマーの分子量(数平均分子量Mn)および分子量分散度D(Mw/Mn)は、EXTREMAクロマトグラフ(日本分光(株)製)に40℃に加熱したサイズ排除カラム「HK-404L」(昭和電工(株)製)を2本直列に装填し、溶出液としてテトラヒドロフラン(サイズ排除クロマトグラフ用、安定剤あり、富士フイルム和光純薬(株)製)を0.6mL/分で流して、紫外吸収分光計「UV-4070」(254nmで検出、日本分光(株)製)および示差屈折率計(RI-4035,日本分光(株)製)で検出したクロマトグラムを、標準ポリスチレン(東ソー(株)製、TSKゲルオリゴマーキット、Mn:1.03×10、3.89×10、1.82×10、3.68×10、1.63×10、5.32×10、3.03×10、8.73×10)による三次曲線で較正して評価した。
(ガラス転移温度Tgおよび5%重量分解温度Td5
熱重量示差走査熱量分析装置(TG-DTA、リガク(株)製、「Rigaku 示差熱天秤Thermo plus EVO2 試料観察TG-DTA」)を用いて、窒素気流下、昇温速度10℃/分で室温から500℃に昇温し、ガラス転移温度Tgおよび5%重量分解温度(5%質量減少温度またはTd5)を測定した。
(低分子化合物の融点(mp))
MPA100型融点測定装置 Optimelt(Stanford Research Systems製)を用いて、キャピラリー管に入れた試料粉末を大気雰囲気で昇温速度10℃/分で室温から融解が観測されるまで加熱し、おおよその融点を見積もった。次に、新しいキャピラリー管に試料粉末を詰め、見積もった融点より5℃低い温度まで予備加熱し、温度が安定してから昇温速度1℃/分で加熱した。融点幅は融点測定装置に備え付けの自動観察機能を用いて決定した。
[実施例1]
(i)2-(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレンの合成
Figure 2023122572000008
本実験で用いたジクロロメタンは水素化カルシウムで脱水し、予め蒸留したものを用いた。500mLの3つ口フラスコに塩化アルミニウム(12.0g,90.1mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下でジクロロメタン(23mL)を加えて混濁させた。氷浴中で3-クロロプロピオニルクロリド(11.4g,87.6mmol)のジクロロメタン(22mL)溶液を10分かけて滴下し、45分間攪拌させ塩化アルミウムを溶解させた。その後、9,9-ジメチルフルオレン(17.9g,89.8mmol)のジクロロメタン(45mL)溶液を15分かけて滴下して反応を開始した。氷浴中で1時間反応させ、その後、室温(25℃)で17時間反応させた。氷(100g)に濃塩酸(20mL)を加えて調製した試薬に反応溶液を加えて処理し、ジクロロメタン層を回収した。飽和重曹水(飽和炭酸水素ナトリウム水溶液)(300mL×4回)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ濃縮し粗生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(体積比)=1/8,R=0.23)で精製を行い、2-(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレンを無色結晶として単離した(17.8g,収率79.9%,融点(mp)88.5-89.5℃)。
得られた2-(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレンのH-NMRスペクトルデータを図1(a)および以下に示す。
H-NMR(400MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:8.05(d,J=1.4Hz,1H),7.96(dd,J=8.0Hz,J=1.6Hz,1H),7.80-7.77(m,2H),7.49-7.45(m,1H),7.43-7.35(m,2H),3.97(t,J=6.9Hz,2H),3.53(t,J=6.9Hz,2H),1.52(s,6H)。
得られた2-(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレンの13C-NMRスペクトルデータを図1(b)および以下に示す。
13C-NMR(100MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:196.47,154.89,154.02,144.65,137.74,135.27,128.82,127.89,127.34,122.90,122.30,121.11,119.97,47.09,41.44,39.00,26.96。
(ii)2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンの合成
Figure 2023122572000009
100mLナスフラスコに2-(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレン(5.70g,20.0mmol)、重合禁止剤として4-メトキシフェノール(1mg,8×10-3mmol)を入れ、クロロホルムに溶解させた。大気雰囲気下、トリエチルアミン(4.08g,40.4mmol)のクロロホルム(20mL)溶液を10分かけて滴下し反応を開始した。室温(25℃)で30分反応させた後、1M塩酸(40mL×2回)、飽和重曹水(40mL×2回)、蒸留水(40mL×2回)、飽和塩化ナトリウム水溶液(40mL×1回)で洗浄し、硫酸ナトリウムでクロロホルム層を乾燥した。濃縮、真空乾燥を経て2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンを無色結晶として単離した(4.61g,収率92.8%,融点(mp)100.8-101.3℃)。
得られた2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンのH-NMRスペクトルデータを図2(a)および以下に示す。
H-NMR(400MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:8.06(d,J=1.2Hz,1H),7.97(dd,J=8.0Hz,J=1.6Hz,1H),7.82-7.75(m,2H),7.50-7.44(m,1H),7.42-7.34(m,2H),7.26(dd,J=17.2Hz,J=10.4Hz,1H),6.48(dd,J=17.2Hz,J=1.7Hz,1H),5.93(dd,J=10.4Hz,J=1.7Hz,1H),1.52(s,6H)。
得られた2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンの13C-NMRスペクトルデータを図2(b)および以下に示す。
13C-NMR(100MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:190.66,154.86,154.00,144.21,137.90,136.19,132.62,129.73,128.51,127.30,123.04,122.88,121.04,119.88,47.07,26.99。
得られた2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンは、トルエンに対して、室温(約25℃)および65℃において、濃度25質量%で溶解(完溶)可能であった。得られた2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンを室温(約25℃)、大気下、遮光条件で650日間保存し、H-NMRスペクトルを測定した。結果を図3に示す。図3(上段)精製直後および図3(下段)室温大気下で650日間保存後のH-NMRスペクトルを比較すると、ほとんど変化が見られなかった。そのため、室温大気下であっても安定して保存可能な高い保存安定性を備えていることが分かった。
[実施例2]2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンのラジカル重合
Figure 2023122572000010
10mLナスフラスコに2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン(0.993g,4.00mmol)と2,2-アゾビスイソブチロニトリル(13mg,0.0080mmol)を入れて、トルエン(4mL)に溶解させた。アルゴン雰囲気下で凍結脱気を3回行った後、65℃に加熱して重合を開始した。21時間後、反応溶液をメタノール(200mL)に滴下し、生じた沈殿を回収、真空乾燥してポリ(2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン)を淡黄色固体として得た(1.001g,収率100%)。なお、重合中には、反応溶液から沈殿が生じることはなく、終始溶解していた。
得られたポリ(2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン)の数平均分子量Mnは56900、分子量分散度D(Mw/Mn)は3.88であった。得られたポリ(2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン)のH-NMRスペクトルデータを図4に示す。
また、ガラス転移温度Tgは170℃、5%重量分解温度Td5は367℃であり、高い耐熱性を示した。なお、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および熱重量示差熱分析(TG-DTA)の測定結果を図5および6にそれぞれ示す。
また、特開2021-127313号公報(特許文献1)の実施例の重合体は溶媒に対する溶解性が低いのに対して、得られたポリ(2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン)は、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフランに対してそれぞれ室温(約25℃)において、濃度1~25質量%で完全に溶解(完溶)可能であり、溶解性に優れていた。
さらに、ポリ(2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン)(50mg)をジクロロメタン(0.5mL)に溶解した溶液を、ポリパーフルオロエチレン製シャーレの上にキャストし、室温(25℃)で24時間乾燥して、キャストフィルムを調製した。得られたキャストフィルムは透明性に優れていた。
[実施例3]2-[(2-ヒドロキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレンの合成
Figure 2023122572000011
大気雰囲気下、100mLナスフラスコ中で2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン(2.49g,10.0mmol)をテトラヒドロフラン(20mL)に溶解させ、そこに37質量%ホルムアルデヒド水溶液(1.62g,20.0mmol)を加えた後、室温(25℃)で1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(1.13g,10.1mmol)加えて反応を開始した。80分後に1M塩酸(50mL)を混濁させ、クロロホルムで抽出した。有機層を蒸留水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後,濃縮,真空乾燥を経て白色固体として2-[α-(ヒドロキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレンを得た(収量2.70g,収率96.7%,融点(mp)145.0-146.5℃)。
得られた2-[α-(ヒドロキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレンのH-NMRスペクトルデータを図7および以下に示す。
H-NMR(400MHz,25℃,DMSO-d)δ/ppm:7.97(d,J=1.2Hz,1H),7.95-7.91(m,2H),7.78(dd,J=7.9Hz,J=1.5Hz,1H),7.64-7.59(m,2H),6.07(d,J=1.2Hz,1H),5.65(d,J=1.2Hz,1H),5.18(t,J=5.3Hz,1H),4.33(d,J=4.6Hz,2H),1.48(s,6H)。
[実施例4]2-[2-(アセチルオキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレンの合成
Figure 2023122572000012
大気雰囲気下、10mLナスフラスコに2-[(2-ヒドロキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレン(1.39g,4.99mmol)を入れ、ジクロロメタン(5mL)を加えて混濁させ、さらにピリジン(483μL,5.99mmol)を加えた。氷浴中、無水酢酸(566μL,5.99mmol)を加え反応を開始した。5分後氷浴を外し、25分後にピリジン(483μL,5.99mmol)、無水酢酸(566μL,5.99mmol)を追加したところ、白濁が解消した。そのまま室温(25℃)で反応させ、最初に無水酢酸を加えてから3時間後に、ジクロロメタン(7mL)を加えて希釈し、2M塩酸、重曹水(炭酸水素ナトリウム水溶液)、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。濃縮、真空乾燥を経て粗生成物を得た。Biotageによるフラッシュカラムクロマトグラフィーによって目的物である2-[α-(アセチルオキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレンを単離した(酢酸エチル/ヘキサン(体積比)=1/2,R=0.53,収量1.42g,収率83.4%)。
得られた2-[α-(アセチルオキシメチル)アクリロイル]-9,9-ジメチルフルオレンのH-NMRスペクトルデータを図8および以下に示す。
H-NMR(400MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:7.90-7.88(m,1H),7.82-7.73(m,3H),7.50-7.44(m,1H),7.42-7.34(m,2H),6.09(s,1H),5.87(s,1H),5.02(s,2H),2.12(s,3H),1.52(s,6H)。
[実施例5]
(i)2-(3-クロロプロパノイル)-9H-フルオレンの合成
Figure 2023122572000013
ジクロロメタンに水素化カルシウムを加えて一晩攪拌して脱水し、蒸留した。500mLの3つ口フラスコに塩化アルミニウム(10.7g,80.3mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下でジクロロメタン(23mL)を加えて混濁させた。氷浴中で3-クロロプロピオニルクロリド(10.2g,80.3mmol)のジクロロメタン(22mL)溶液を15分かけて滴下し、20分間攪拌して塩化アルミウムを溶解させた。その後、9H―フルオレン(13.3g,80.0mmol)のジクロロメタン(45mL)溶液を15分かけて滴下して反応を開始した。以降の操作は実施例1の(i)と同様に行って粗生成物を得た。トルエン(178mL)/ヘキサン(420mL)混合溶媒で再結晶し、2-(3-クロロプロパノイル)フルオレンを褐色結晶として得た(収量16.1g,収率78.4%)。
得られた2-(3-クロロプロパノイル)-9H-フルオレンの(a)H-NMRおよび(b)13C-NMRスペクトルデータを図9および以下に示す。
H-NMR(400MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:8.13(m,1H),7.99(d,J=8.4Hz,1H),7.85-7.83(m,2H),7.59(d,J=6.8Hz,1H),7.44-7.37(m,2H),3.97-3.94(m,4H),3.50(t,J=6.8Hz,2H)。
13C-NMR(100MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:196.46,146.87,144.57,143.45,140.34,134.76,128.23,127.44,127.15,125.31,124.71,120.99,119.80,41.40,39.00,36.90。
(ii)2-アクリロイル-9H-フルオレンの合成
Figure 2023122572000014
200mLナスフラスコに2-(3-クロロプロパノイル)フルオレン(7.70g,30.0mmol)、重合禁止剤として4-メトキシフェノール(1mg,8×10-3mmol)を入れ、クロロホルム(80mL)に溶解させた。大気雰囲気下、トリエチルアミン(7.29g,72.0mmol)を10分かけて滴下し反応を開始した。室温(25℃)で2時間反応させた後、1M塩酸(100mL×2回)、飽和重曹水(100mL×2回)、蒸留水(100mL×2回)、飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL×1回)で洗浄し、硫酸ナトリウムでクロロホルム層を乾燥した。濃縮、真空乾燥を経て2-アクリロイル-フルオレンを褐色結晶として単離した(収量6.32g,収率95.6%)。
得られた2-アクリロイル-9H-フルオレンの(a)H-NMRおよび(b)13C-NMRスペクトルデータを図10および以下に示す。
H-NMR(400MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:8.14(s,1H),7.99(d,J=8.0Hz,1H),7.84(d,J=8.0Hz,2H),7.56(d,J=6.6Hz1H),7.44(m,2H),7.24(dd,J=17.0Hz,J=10.6Hz,1H),6.47(dd,J=17.0Hz,J=1.8Hz,1H),5.92(dd,J=10.6Hz,J=1.8Hz,1H),3.94(s,2H)。
13C-NMR(100MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:190.64,146.48,144.54,143.42,140.49,135.71,132.56,129.72,128.12,128.10,127.10,125.42,125.29,120.93,119.76,36.91。
得られた2-アクリロイル-9H-フルオレンは、トルエンに対して、室温(約25℃)において、濃度25質量%で一部可溶であり、65℃において、濃度25質量%で溶解(完溶)可能であった。
[実施例6]2-アクリロイル-9H-フルオレンのラジカル重合
Figure 2023122572000015
モノマーを2-アクリロイルフルオレン(1.10g、5.00mmol)とした以外は実施例2と同様に実施した。反応中に沈殿が生じたため、反応液をトルエン(5mL)で希釈し、メタノール(200mL)に注ぐと新たに沈殿が生じた。これらの沈殿をろ過によって回収し、真空乾燥して褐色固体(収量1.01g,収率92.0%)を得た。
得られたポリ(2-アクリロイル-9H-フルオレン)のテトラヒドロフラン可溶部の数平均分子量Mnは8100、分子量分散度D(Mw/Mn)は2.93であった。テトラヒドロフラン不溶部は、より高分子量であると推測される。反応前後のH-NMRスペクトルを図11に示す。反応後(ポリ(2-アクリロイル-9H-フルオレン)の可溶部のスペクトル)では、反応前(モノマーのスペクトル)に観測されたビニル水素、アリル水素の信号は完全に消失し、新たに主鎖に帰属可能な信号が4-0.5ppmに観測されたことから、ラジカル重合の進行が示唆された。
また、特開2021-127313号公報(特許文献1)の実施例の重合体は溶媒に対する溶解性が低いのに対して、得られたポリ(2-アクリロイル-9H-フルオレン)は、クロロホルム、テトラヒドロフランに対して、それぞれ65℃で一部可溶であった。
本発明のフルオレン骨格およびアクリロイル系骨格(またはビニルケトン系骨格、すなわち、基[-C(=O)-CR=CR])を有するフルオレン化合物(ビニルフルオレニルケトン系化合物)は、高い耐熱性や、透明性などの優れた光学的特性を示す樹脂を形成できるため、耐熱性部材や光学部材などに加え、様々な用途で利用できる。前記光学材料の形状としては、例えば、フィルムまたはシート状、板状、レンズ状、管状などであってもよい。
本発明の樹脂の代表的な用途としては、黒鉛化前駆体;COガス分離膜などのガス分離膜;燃料電池用膜;有機EL用発光材料などの発光材料;有機半導体;光学用接着剤、光学用粘着剤などの接着剤または粘着剤;コート剤(コーティング剤)、具体的には、LED(発光ダイオード)用素子のコート剤などの光学用オーバーコート剤またはハードコート剤、インク材料など;レンズ、具体的には、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)用ピックアップレンズなどのピックアップレンズ、液晶プロジェクター用マイクロレンズなどのマイクロレンズ、眼鏡レンズなど;フィルムまたはシート、特に、光学フィルムまたは光学シート、具体的には、液晶ディスプレイ用偏光膜などの偏光膜、表示デバイス用反射防止フィルムなどの反射防止フィルム(又は反射防止膜)、タッチパネル用フィルム、フレキシブル基板用フィルム、ディスプレイ用フィルム、詳細には、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)、VFD(真空蛍光ディスプレイ)、SED(表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)、FED(電界放出ディスプレイ)、NED(ナノ・エミッシブ・ディスプレイ)、ブラウン管、電子ペーパーなどのディスプレイ、特に薄型ディスプレイにおけるフィルタや保護フィルム、プリズムシートなど;光ファイバー;光導波路;ホログラムなどに使用してもよい。

Claims (12)

  1. 下記式(1)で表されるフルオレン化合物。
    Figure 2023122572000016
    (式中、Rは置換基を示し、kは0~2の整数を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示し、
    2aおよびR2bは独立して非重合性置換基を示し、m1は0~3の整数を示し、m2は0~4の整数を示し、
    、RおよびRは独立して水素原子または非重合性置換基を示す。)
  2. 前記式(1)において、Rが炭化水素基または酸素原子であり、
    2aおよびR2bが炭化水素基であり、m1が0~2の整数であり、m2が0~2の整数であり、
    が水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、基[-CHR-OH]または基[-CHR-O-C(=O)-R](各式中、RおよびRは独立して、水素原子、または置換されていてもよい炭化水素基を示す。)であり、
    およびRが水素原子、炭化水素基またはハロゲン原子である請求項1記載のフルオレン化合物。
  3. 前記式(1)において、Rがアルキル基であり、kが0または2であり、
    2aおよびR2bがアルキル基であり、m1が0~1の整数であり、m2が0~1の整数であり、
    が水素原子、アルキル基、基[-CHR-OH]または基[-CHR-O-C(=O)-R](各式中、RおよびRは独立して、水素原子またはアルキル基である)であり、
    およびRが水素原子またはアルキル基である請求項1または2記載のフルオレン化合物。
  4. 前記式(1)において、Rがアルキル基であり、kが2である請求項1または2記載のフルオレン化合物。
  5. 下記式(2)で表される化合物を脱離反応に供し、請求項1または2に記載の式(1)で表されるフルオレン化合物を製造する方法。
    Figure 2023122572000017
    (式中、XおよびXのうち、いずれか一方が脱離基、他方が水素原子を示し、
    、k、R2aおよびR2b、m1およびm2、R、RおよびRならびに実線と破線との二重線は、それぞれ前記式(1)に同じ。)
  6. 請求項1または2記載の式(1)で表されるフルオレン化合物を重合成分に含む樹脂。
  7. 熱可塑性樹脂である請求項6記載の樹脂。
  8. 前記式(1)で表されるフルオレン化合物に由来する構成単位の割合が、構成単位全体に対して10モル%以上である請求項6記載の樹脂。
  9. 数平均分子量Mnが5000~500000であり、ガラス転移温度Tgが100~300℃であり、5%質量減少温度Td5が250~450℃である請求項6記載の樹脂。
  10. 請求項6記載の樹脂を含む成形体。
  11. 光学部材である請求項10記載の成形体。
  12. フィルム状、シート状またはレンズ状である請求項10記載の成形体。
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