JP6945856B2 - ショウガオール類が富化されたショウガ加工物を含有する組成物、及びショウガ加工物を抽出原料として得られる抽出物の製造方法 - Google Patents
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Description
ショウガは、生で未加工の状態では、下記に示す構造の化合物であるジンゲロール類が多く、ショウガオール類はわずかしか存在しないが、ジンゲロール類から水を脱離させる脱水反応によりショウガオール類を得ることができる。
また、特許文献3には、ショウガ抽出物をクエン酸、コハク酸及びリンゴ酸から選ばれる有機酸の存在下、110℃〜150℃で加熱する工程を含むショウガ抽出処理物の製造方法が開示されている。また、特許文献4には、ショウガ粉末と平均一次粒径d50が500μm以下の多価カルボン酸(クエン酸等)の乾燥粉末とを混合して混合粉末を得る混合工程と、前記混合粉末を加熱する加熱工程とを含むことを特徴とするショウガ粉末加工物の製造方法が開示されている。
また、特許文献5にはショウガ抽出物を、塩酸、硫酸、リン酸及びイノシトール6リン酸から選ばれる酸の存在下、系内の水分量が10〜50%の状態で、90〜150℃で加熱する工程を含む、ショウガ抽出処理物の製造方法が開示されている。
また、特許文献6の方法では、ショウガをそのまま原料として使用できるが、ジンゲロール類からのショウガオール類への変換に十分な加熱時間として120時間〜500時間加熱する必要があった。そのため、加熱のための時間が長くなり、生産性や製造コストの面で改善の余地があった。
<1> ショウガオール類が富化されたショウガ加工物(但し、ショウガ抽出物を除く。)であって、
6−ショウガオールの含有量が、ショウガ加工物1g(固形物換算)当たり、6.0mg以上であり、
6−ジンゲロール(G)に対する6−ショウガオール(S)の含有量の比(6S/6G)が2以上であり、
含水率が30重量%以下であるショウガ加工物。
<2> 6−ジンゲロール及び6−ショウガオールの合計含有量が、ショウガ加工物1g(固形物換算)当たり、10mg以上である<1>に記載のショウガ加工物。
<3> 6−ショウガオールの含有量が、ショウガ加工物1g(固形物換算)当たり、6.7mg以上である<1>または<2>に記載のショウガ加工物。
<4> 含水率が10重量%以下である<1>から<3>のいずれかに記載のショウガ加工物。
[1a] ショウガオール類が富化されたショウガ加工物(但し、ショウガ抽出物を除く。)を含有する組成物であって、
前記ショウガ加工物における、6−ショウガオールの含有量が、ショウガ加工物1g(固形物換算)当たり、6.0mg以上であり、
6−ジンゲロール(6G)に対する6−ショウガオール(6S)の含有量の比(6S/6G)が2以上であり、
含水率が30重量%以下である、組成物。
[2a] 機能性食品、食品添加剤又はサプリメントである[1a]に記載の組成物。
[3a] 化粧料組成物である[1a]に記載の組成物。
[4a] ショウガオール類が富化されたショウガ加工物を抽出原料として得られる抽出物であって、
前記ショウガ加工物における、6−ショウガオールの含有量が、ショウガ加工物1g(固形物換算)当たり、6.0mg以上であり、6−ジンゲロール(6G)に対する6−ショウガオール(6S)の含有量の比(6S/6G)が2以上であり、含水率が30重量%以下である、ショウガ加工物を抽出原料として得られる抽出物。
本発明は、ショウガオール類が富化されたショウガ加工物であって、当該ショウガ加工物1g(固形物換算)当たり、6−ショウガオールを6.0mg以上含有し、6−ジンゲロール(G)に対する6−ショウガオール(S)の含有量の比(6S/6G)が2以上であり、含水率が30重量%以下であるショウガ加工物に関する。
また、「ジンゲロール類」とは上述した式(1)で示す構造の化合物を意味する。ジンゲロール類として、具体的には、式(1)中、n=4,6,8に相当する6−ジンゲロール、8−ジンゲロール、10−ジンゲロールを意味する。
なお、本発明のショウガ加工物における6−ショウガオール及び6−ジンゲロールの含有量は、含有する水分量による影響を排除するために、脱水処理(含有水分の除去処理)を行った後の固形物換算で規定した値である。具体的な脱水処理法については、実施例で後述する。
そのため、本発明のショウガ加工物(二次加工物含む)やショウガ加工物を含む組成物は、以下に説明するようにボディーケア製品、機能性食品等の原料として好適に使用できる。なお、以下、機能性食品、食品添加物、サプリメント及び化粧料組成物について説明するが、本発明のショウガ加工物の用途はこれらの用途に限定されるものではなく、例えば、医薬品用途に使用してもよい。
本発明のショウガ加工物は、食品、飲料に含有させて機能性食品としてもよい。
ここでいう「機能性食品」とは、健康食品、栄養補助食品、栄養機能食品等、健康の維持の目的で摂取する食品または飲料を意味している。なお、機能性食品として製品化する場合には、食品に用いられる様々な添加剤、具体的には、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤漂白剤、防菌防黴剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料等を添加していてもよい。
また、本発明のショウガ加工物は、それ自体またはこれに他の成分を添加して食品添加剤として使用することも可能である。他の成分は、食品添加剤として使用可能であるならば特に制限はない。食品添加剤の添加対象となる飲料、食品についても任意であり、特に制限はない。添加量も添加対象に応じて任意である。
本発明のサプリメントは、本発明のショウガ加工物を含有する。本発明のサプリメントの形態は、特に制限されず、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、糖衣錠、フィルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液等の任意の形態でよい。
本発明のサプリメントは、本発明のショウガ加工物以外に、サプリメントとして通常使用される任意の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、アミノ酸,ペプチド;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンB、葉酸等のビタミン類;ミネラル類;糖類;無機塩類;クエン酸またはその塩;茶エキス;油脂;プロポリス、ローヤルゼリー、タウリン等の滋養強壮成分;ショウガエキス、高麗人参エキス等の生薬エキス;ハーブ類:コラーゲン等が挙げられる。
本発明の化粧料組成物は、上記ショウガ加工物を含有することを特徴とする。本発明のショウガ加工物は、各種化粧料基材及び化粧料添加物に対して任意に配合できる。
本発明のショウガ加工物は、以下に説明する製造方法(以下、「本発明の製造方法」と記載する場合がある。)によって好適に製造することができる。
すなわち、本発明の製造方法は、原料ショウガを冷凍処理する冷凍工程と、冷凍工程後のショウガを、ショウガに含まれるジンゲロール類の濃度より、ショウガオール類の濃度が高くなるまで、水蒸気共存下、温度100℃以上150℃以下の条件で加熱処理する蒸気加熱工程と、蒸気加熱工程後のショウガを脱水する脱水工程と、を有し、前記原料ショウガが、塊状のショウガであり、脱水工程における脱水処理方法が減圧脱水処理である、ショウガ加工物の製造方法である。
本発明に係るショウガ加工物の原料である「原料ショウガ」は、ショウガ科の植物であり、ショウガ目ショウガ科ショウガ属であるショウガ(Zingiber officinale)のことを示す。原料ショウガは、その大きさでの分類である大生姜、中生姜、小生姜のいずれも使用できる。原料ショウガの品種としては、例えば、金時ショウガ、三州ショウガ、黄金ショウガ、近江ショウガ、谷中ショウガ、静岡4号、黄生ショウガ、土生ショウガ、オタフクショウガなどが挙げられる。特にこれらの中でも、金時ショウガや三州ショウガや黄金ショウガはジンゲロール類を多く含有するため好ましい。
原料ショウガは、塊状のショウガが使用される。なお、ここでいう「塊状のショウガ」は、ショウガ丸ごとのみならず、3〜8cm角程度の大きさのものを含む。よりジンゲロール類及びショウガオール類の蒸散を抑制するためには、できる限り切断をしていない塊状のショウガが好ましい。処理せずに生のものを丸ごと使用してもよく、切断等の加工をしたものを使用することもできる。
原料ショウガの形態が、塊状のショウガであると、加工中(特には加熱中や脱水処理脱水中)でのジンゲロール類及びショウガオール類、さらにはショウガに含まれる微量成分の蒸散が抑制されるため好ましい。
原料ショウガは、冷凍工程に供される。冷凍工程での冷凍温度は、0℃以下であればよいが、−10℃以下であることが好ましく、−15℃以下がより好ましい。冷凍温度の下限は特に制限がないが、解凍に余計なエネルギーや時間が必要になるため、通常、−25℃以上である。
蒸気加熱工程は、冷凍工程に供された冷凍工程後のショウガを、ショウガに含まれるジンゲロール類の濃度より、ショウガオール類の濃度が高くなるまで水蒸気共存下、温度100℃以上150℃以下の条件で加熱処理する工程である。
また、冷凍設備において冷凍ショウガを保管し、これを冷凍工程とみなしてもよい。この場合、ショウガ加工物を生産するときに、冷凍した適当な量の冷凍ショウガを蒸気加熱工程に供して、ショウガ加工物を製造することができ、蒸気加熱工程の時間が実質的な製造時間となる。
例えば、本出願人による特許文献6の製造方法では、原料ショウガを発酵液と混合した後に、温度30℃〜90℃、湿度50%〜90%の条件下で加熱処理する際に、ジンゲロール類からのショウガオール類への変換するためには、120時間以上の加熱を必要としていたが、本発明の製造方法では、冷凍後のショウガを1時間以上の蒸気加熱工程に供することにより同程度の変換効率を得られるので、ショウガオール類が富化されたショウガ加工物をより生産性よく得ることができる。
脱水工程は、蒸気加熱工程後のショウガを脱水する工程である。本発明の製造方法において、脱水工程における脱水処理方法が減圧脱水処理であることに特徴のひとつがある。
減圧脱水処理にて脱水することにより、後述する実施例で示されるように、常圧での脱水処理と比較して、得られるショウガ加工物におけるショウガオールの含有量が増加する。
減圧脱水処理は、脱水対象物を入れた容器を減圧して水分を留去する脱水処理方法であり、減圧することで水蒸気分圧が下がり水分の沸点が低下し蒸発速度が加速され、対象物の脱水を速めることができる。このように水分の留去する時間(実質的な脱水時間)が減少するため、ショウガオールやジンゲロール等のショウガ由来の有効成分の蒸散を抑制することができるものと推測される。
減圧脱水時の圧力は、常圧(1気圧)での脱水処理の場合と比較して有意にショウガ由来の有効成分の残存量が多くなればよく、通常、0.2気圧以下、好適には0.1気圧以下である。なお、減圧脱水時の圧力は使用する装置に依存するが、0.03〜0.06気圧にすることが通常可能である。その時の水の沸点は25〜30℃程度となる。
水分量が多いと粉砕してもペースト状となりべとつきやすい等の問題もあるため、より流動性が高い状態(いわゆる、乾燥状態)とするためには、ショウガ加工物の含水率が10重量%以下であり、好適には6重量%以下、より好適には5重量%以下である。含水率は脱水方法や脱水装置、製造時や保管時の温度や湿度により適宜調整することができる。
ショウガ加工物の使用用途にもよるが、含水率が小さいほうが保存性がより向上するという利点もある。
冷却処理には、対象を0℃未満で冷却する「冷凍処理」と、0〜8℃で冷却する「冷蔵処理」が含まれる。
減圧脱水処理と冷凍処理とを繰り返す場合における好適な条件を例示すると、減圧加熱脱水の時間を1〜10時間、冷凍温度を5〜20時間として、これを目的とする水分量になるまで繰り返す(通常、2〜5回繰り返し)。これにより、ショウガ加工物の品質を劣化させることなく、水分量を所定量(好適には10重量%以下)とすることができる。
原料ショウガとして、高知県産の大ショウガの根茎を切断せず丸ごと、温度−18℃に維持された冷凍庫に14時間保管し、冷凍されたショウガを得た(冷凍工程1)。
次いで、冷凍されたショウガ(塊状)を蒸煮釜(SOS120/10SV、サムソン)にて、水蒸気共存下、温度121℃で4時間蒸気加熱処理し(蒸気加熱工程)、得られた蒸気加熱処理されたショウガを減圧乾燥器(南極防熱、特注品)で、圧力0.1気圧以下、温度80℃、4時間減圧脱水(脱水工程1)することで水分を除去した。得られた試料を実験例1のショウガ加工物とした。
上記(冷凍工程2)〜(脱水工程2)まで3回繰り返し、実験例2のショウガ加工物を得た。
冷凍工程2を温度が5℃〜7℃の冷蔵庫(HOSHIZAKI INVERTER)にて14時間冷蔵する工程(冷蔵工程)とした以外は実験例2と同様にして実験例3のショウガ加工物を得た(上記(冷蔵工程)〜(脱水工程2)まで3回繰り返し)。
高知県産の大ショウガの根茎を3mm程度にスライスしたこと以外は実験例1と同様にして実験例4のショウガ加工物を得た。
高知県産の大ショウガの根茎を3mm程度にスライスしたこと以外は実験例1と同様にして実験例5のショウガ加工物を得た。
高知県産の大ショウガの根茎を3mm程度にスライスしたこと以外は実験例1と同様にして実験例6のショウガ加工物を得た。
原料ショウガとして、高知県産の大ショウガの根茎を、2〜4cm角程度に切断した後に、温度−18℃に維持された冷凍庫(HOSHIZAKI INVERTER)に15時間保管し、冷凍されたショウガを得た(冷凍工程)。次いで、冷凍されたショウガをフタ自動開閉式高圧蒸気滅菌器(ハイクレーブHG−50、(株)平山製作所製)にて、水蒸気共存下、温度121℃、圧力0.15MPaで5時間蒸気加熱処理した(蒸気加熱工程)。次いで、蒸気加熱処理されたショウガを、乾燥器(コンパクト食品乾燥器SM7S−EH(株)木原製作所製)で、温度80℃、24時間脱水して乾燥させ(脱水工程)、実験例7のショウガ加工物を得た。
上記方法で得られた各ショウガ加工物をメタノール100%溶媒に、2時間浸漬し、その後3000rpmで10分間遠心し、上清を0.45μmフィルターで濾過処理をして抽出液を作製し、当該抽出液の6−ジンゲロール及び6−ショウガオールの含量を分析した。
分析は、ウォーターズ社製、Alliance HPLCシステムで行った。使用カラムはWakosil−II 5C18 HG、溶媒はアセトニトリルと水を用い、時間によって溶媒比率を変化させた。流速は1ml/minで行い、吸光度は、280nmで行った。6−ジンゲロール、6−ショウガオールのそれぞれのピーク面積と濃度比から検量線を作成し、定量分析した。
約10gの試料を、130℃にて1時間保持した後、デシケータ中で室温まで冷却した。加熱前後の試料質量から含水率(重量%)を求めた。なお、上記「固形物換算」における固形物は加熱後の試料を意味する。
含水率= (加熱前試料重量−加熱後試料重量)/加熱前試料重量 × 100
表1に各実験例のショウガ加工物1g(固形物換算)当たりの6−ジンゲロール及び6−ショウガオールの含有量、6−ジンゲロールと6−ショウガオールとの合計量(6G+6S)、6−ジンゲロールに対する6−ショウガオールの含有量の比(6S/6G)及び含水率を示す。
Claims (3)
- ショウガオール類が富化されたショウガ加工物(但し、ショウガ抽出物を除き、かつ、ショウガ以外の成分を含むものを除く。)を含有する組成物であって、
前記ショウガ加工物における、6−ショウガオールの含有量が、ショウガ加工物1g(固形物換算)当たり、6.0mg以上であり、
6−ジンゲロール(6G)に対する6−ショウガオール(6S)の含有量の比(6S/6G)が2以上であり、
含水率が30重量%以下であり、
機能性食品、食品添加剤又はサプリメントである組成物。 - ショウガオール類が富化されたショウガ加工物(但し、ショウガ抽出物を除き、かつ、ショウガ以外の成分を含むものを除く。)を含有する組成物であって、
前記ショウガ加工物における、6−ショウガオールの含有量が、ショウガ加工物1g(固形物換算)当たり、6.0mg以上であり、
6−ジンゲロール(6G)に対する6−ショウガオール(6S)の含有量の比(6S/6G)が2以上であり、
含水率が30重量%以下であり、
化粧料組成物である組成物。 - ショウガオール類が富化されたショウガ加工物(但し、ショウガ抽出物を除き、かつ、ショウガ以外の成分を含むものを除く。)を抽出原料として得られる抽出物の製造方法であって、
前記ショウガ加工物における、6−ショウガオールの含有量が、ショウガ加工物1g(固形物換算)当たり、6.0mg以上であり、
6−ジンゲロール(6G)に対する6−ショウガオール(6S)の含有量の比(6S/6G)が2以上であり、
含水率が30重量%以下である、ショウガ加工物を抽出原料として得られる抽出物の製造方法。
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